説明

ロボット

【課題】電動モータの駆動力の増大を抑制した態様にて、ロボットの伸縮動作を確保すること。
【解決手段】フレーム間の相互変位に応じて伸縮可能に構成されたロボット100であって、ロボット100の基端側から先端側へ順に配置されるべきフレーム14、13、15と、電動モータ1から供給される駆動力に基づいてフレーム13を先端側へ駆動する駆動手段と、駆動手段と協調してフレーム13を先端側へ付勢する付勢手段と、駆動手段及び付勢手段によるフレーム13の先端側への搬送に同調して、前記フレーム13からみてフレーム14、15を互いに逆方向へ搬送する搬送機構と、を備える。例えば、付勢手段は、ガススプリングから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットに関し、特に伸縮可能に構成されたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、製造現場等にて幅広く活用されている。特許文献1には、テレスコピック構造の多段フレームを相対変位させることで伸縮自在に構成されたロボットが開示されている。特許文献1に開示のロボットでは、次の原理に基づいて、フレームらを上方変位させている。1段目フレームに対して設けられたネジ軸を電動モータによって回転させ、ネジ軸上にてナットを上方へ変位させる。これにより、ナットに対して固定された2段目フレームが上方変位する。2段目フレームの上方変位を駆動力として、3段目フレームを上方変位させる。3段目フレームの上方変位を駆動力として、4段目フレームを上方変位させる。なお、2段目フレームに対する3段目フレームの変位は、例えば、特許文献1の図18及び図19に示す手段によって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−70487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、1つの電動モータによって複数のフレーム段を上方変位させ、この状態を維持する場合、電動モータの駆動力を大きく設定することが要求される場合がある。電動モータで生じる駆動力によって、2段目〜4段目フレームの自重、ロボットに装着されるワークの自重等を保持する必要があるためである。
【0005】
しかしながら、電動モータの駆動力を増大させると、様々な問題が生じるおそれがある。例えば、電動モータの駆動力の増大に伴って、ロボットの作動に要する電力が増加してしまうおそれがある。また、電動モータの駆動力の増大に応じてロボットがハイパワー化してしまうことへの対処(例えば、ロボットの安全性能を高めること)が必要になるおそれがある。具体的には、ロボットのハイパワー化に伴って、ロボットと物体とが強接触してしまうことを回避するため、ロボットの周囲にある物体を事前に検出する検出機構をロボットに具備させることが対処方法として要求されるおそれがある。しかしながら、このような安全対策を施したとしても、結局のところ、検出ミス等の可能性を考慮すると十分なものとは言えず、ロボットのハイパワー化に伴う問題を根本的に解決する策とは成り得ない。
【0006】
上述の説明から明らかなように、電動モータの駆動力の増大を抑制した態様にて、ロボットの伸縮動作を確保することが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロボットは、フレーム間の相互変位に応じて伸縮可能に構成されたロボットであって、当該ロボットの基端側から先端側へ順に配置されるべき第1乃至第3フレームと、駆動源から供給される駆動力に基づいて前記第2フレームを先端側へ駆動する駆動手段と、前記駆動手段と協調して前記第2フレームを先端側へ付勢する付勢手段と、前記駆動手段及び前記付勢手段による前記第2フレームの先端側への搬送に同調して、前記第2フレームからみて前記第1及び第3フレームを互いに逆方向へ搬送する搬送機構と、を備える。
【0008】
前記付勢手段は、ガススプリングを含む、と良い。前記搬送機構は、前記第2フレームによって軸支された回転子と、当該回転子に対して回し掛けられた帯体と、を含み、前記第1及び第3フレームは、前記帯体を介して、互いに係合している、と良い。
【0009】
前記帯体は、前記第1フレームに対して一端側が固定され、前記第3フレームに対して他端側が固定された有端ベルトであり、かつ前記第2フレームによって外部への露出が妨げられている、と良い。
【0010】
前記駆動源は、電動モータである、と良い。
【0011】
前記第1フレームと第2フレーム間の相対変位を当該ロボットの伸縮方向に規制する第1ガイド機構と、前記第2フレームと前記第3フレーム間の相対変位を前記伸縮方向に規制する第2ガイド機構と、を更に備える、と良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動モータの駆動力の増大を抑制した態様にて、ロボットの伸縮動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な斜視図である。
【図2】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な側面図である。
【図3】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な底面図である。
【図4】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図5】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図6】実施の形態1にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図7】実施の形態1にかかる伸長状態のロボットの概略的な斜視図である。
【図8】実施の形態1にかかる伸長状態のロボットの概略的な側面図である。
【図9】実施の形態1にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図10】実施の形態1にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図11】実施の形態1にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図12】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な斜視図である。
【図13】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な側面図である。
【図14】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な底面図である。
【図15】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図16】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図17】実施の形態2にかかる収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図18】実施の形態2にかかる伸長状態のロボットの概略的な斜視図である。
【図19】実施の形態2にかかる伸長状態のロボットの概略的な側面図である。
【図20】実施の形態2にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図21】実施の形態2にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図22】実施の形態2にかかる伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【図23】実施の形態3にかかるロボットの概略的な模式図である。
【図24】実施の形態3にかかるロボットの概略的な模式図である。
【図25】実施の形態3にかかる収縮状態のロボットの概略的な模式図である。
【図26】実施の形態3にかかる伸長状態のロボットの概略的な模式図である。
【図27】実施の形態4にかかるロボットの概略的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各実施形態は互いに独立したものではなく、相互に組み合わせることができるものとする。なお、図面は説明のため適宜簡略化されている。原則として、上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視することを前提とする。
【0015】
実施の形態1
以下、図1乃至図11を参照して、実施の形態1について説明する。図1は、収縮状態のロボットの概略的な斜視図である。図2は、収縮状態のロボットの概略的な側面図である。図3は、収縮状態のロボットの概略的な底面図である。図4〜図6は、収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。図7は、伸長状態のロボットの概略的な斜視図である。図8は、伸長状態のロボットの概略的な側面図である。図9は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。図10は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。図11は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【0016】
図1と図7の対比から明らかなように、ロボット100は、多段構成されたフレーム13〜15を備え、y軸方向に沿って伸縮可能に構成されている。図1に示すとき、ロボット100は、収縮状態にある。図7に示すとき、ロボット100は、伸長状態にある。フレーム13〜15を多段構成として、y軸方向に沿ってフレーム14に対してフレーム13を上方変位させ、フレーム13に対してフレーム15を上方変位させることによって、収縮時のロボットの小型化を図りつつ、十分なストローク長を確保することが可能になる。なお、図1に示すとき、フレーム13、15は、フレーム14内に収納されている(以下、この状態を収納状態と呼ぶこともある)。図7に示すとき、フレーム13は、フレーム14よりも上方に位置し、フレーム15は、フレーム13よりも上方に位置している(以下、この状態を展開状態と呼ぶこともある)。
【0017】
本実施形態では、後述の説明から明らかなように、フレーム13は、バネ力と駆動力に応じて上方へ搬送され、フレーム13の上方変位に同調してフレーム15がフレーム13よりも上方へ搬送される。ロボット100が伸長状態のとき、バネ力によってフレーム13、及びフレーム15は好適に下方から支持される。従って、フレーム13を上方に搬送/維持するための駆動力を小さくすることができる。この場合、フレーム13を駆動するための電動モータを小型化したとしても、フレーム13は、駆動力に加えてバネ力によっても上方へ付勢されているため、ロボットの展開状態は損なわれない。駆動力に加えてバネ力に基づいてフレーム13を搬送することによって、好適に、ロボット100のローパワー化を図ることができる。この際、ロボット自体の消費電力も低減され、またロボット自体の安全性を高めることができる。
【0018】
以下、ロボット100の構成及び動作について、より具体的に説明する。なお、バネ力を生じさせる手段、駆動力を生じさせる駆動源の具体的構成は任意であり、以下の開示に限定されるべきではない。各フレームの具体的形状、各フレームの材質、各フレームの配置態様等は任意である。
【0019】
ロボット100は、図1に示す部材(電動モータ(駆動源)1、固定板22、減速機2、プーリ(回転子)3、プーリ4、ベルト(帯体)5、フレーム13、14、15、端面板96、軸保持板24)、図3に示す部材(ガイド溝部31、ガイド突部32、ガイド溝部33、ガイド突部34)、図4に示す部材(ベース板90、ベルト固定部16)、図5に示す部材(プーリ6、プーリ7、ベルト8、ベルト固定部17、18)、および図6に示す部材(ガススプリング9、連結棒10、ブランケット11、連結部12)を有する。
【0020】
図1及び図7に示すように、各フレーム13〜15は、上面視矩形状の筒状部材である。各フレームの構成材料は、例えば、強化プラスチック、金属等である。フレーム14は、フレーム13内に配置されている。フレーム15は、フレーム14内に配置されている。各フレーム13〜15のy軸方向の高さは、同じ程度となっている。これによって、ロボット100の小型化と大ストロークとを好適に両立することが可能になる。
【0021】
図1に示すように、フレーム14には、フレーム13を上方へ変位させるための搬送機構が設けられている。具体的には、フレーム14の下端には、プーリ(駆動プーリ)3が設けられている。フレーム14の上端には、プーリ(従動プーリ)4が設けられている。各プーリ3、4には、ベルト5が回し掛けられている。プーリ4は、軸保持板24によって軸支され、軸保持板24を介してフレーム14の外周面に対して固定されている。図3に示すように、プーリ3は、フレーム14に設けられた軸保持部によって軸支されている。なお、ベルト5は、可撓性を有する無端ベルトであり、例えば、金属、強化ゴム等から構成される。図2に示すように、ロボット100を側面視すると、プーリ3は、フレーム14から半分程度突出している。プーリ4についても同様である。これによって、好適に、ロボット100の小型化が図られている。
【0022】
図1に示すように、プーリ3の回転軸に対して、減速機2を介して、電動モータ1の回転力が伝達する構成となっている。プーリ3は、減速機2を介して伝達される電動モータ1の回転力に応じてyz平面にて回転する。電動モータ1は、固定板22を介してフレーム14の外周側面に対して固定されている。減速機2は、電動モータ1から伝達される回転力を減じて高いトルクを得るために設けられている。減速機2の種類は任意である。フレーム13を上下に駆動する駆動機構(駆動手段)は、電動モータ1、減速機2、プーリ3、プーリ4、及びベルト5によって構成される。なお、減速機2を省略しても構わない。また、プーリ、ベルトによる搬送機構(力伝達機構)に代えて、他の搬送機構を採用しても良い。駆動源として機能する電動モータの具体的な種類は任意である。
【0023】
図3に示すように、フレーム14の内周側面には、ガイド溝部31a(31)、及びガイド溝部31b(31)が設けられている。フレーム13の外周側面には、ガイド突部32a(32)、及びガイド突部32b(32)が設けられている。ガイド溝部31aは、y軸方向を長手方向として延在し、ガイド突部32aを受け入れ、これを保持する。ガイド溝部31bも、ガイド溝部31aと同様である。ただし、ガイド溝部31aとは異なり、ガイド溝部31bは、ガイド突部32bを受け入れ、これを保持する。フレーム13、14を上述のガイド機構(ガイド溝部、ガイド突部)を介して係合することによって、フレーム14に対するフレーム13の移動方向をy軸方向に規制することができる。
【0024】
図3に示すように、フレーム13の内周側面には、ガイド溝部33が設けられている。フレーム15の外周側面には、ガイド突部34が設けられている。ガイド溝部33は、y軸方向を長手方向として延在し、ガイド突部34を受け入れ、これを保持する。フレーム13、15を上述のガイド機構(ガイド溝部、ガイド突部)を介して係合することによって、フレーム13に対するフレーム15の移動方向をy軸方向に規制することができる。
【0025】
図4に図3のIV−IVにおける概略断面模式図を示す。図5に図3のV−Vにおける概略断面模式図を示す。
【0026】
図4に示すように、フレーム14の内側において、フレーム13は、ベルト固定部16によってベルト5に対して固定されている。ベルト固定部16は、上層16a、中層16b、及び下層16cの3層から積層体である。上層16aのベルト接触面には、図4に示すように、凹凸がy軸方向に沿って設けられている。上層16aと中層16b間には、ベルト5が配置される。中層16bと下層16c間には、フレーム13が配置される。上層16a、ベルト5、中層16b、フレーム13、および下層16cが順に積層された状態で、ネジ等によって各層を強固に連結する。これによって、ベルト5とフレーム13間を強固定することができる。フレーム13の上方変位時、プーリ3は、図4を正面視して左回転する。フレーム13の下方変位時、プーリ3は、図4の正面視して右回転する。なお、フレーム13の下方変位は、フレーム13、フレーム15の自重によって行い、電動モータ1を回転させなくても良い。
【0027】
図5に示すように、フレーム13の下端には、プーリ6が設けられ、フレーム13の上端にはプーリ7が設けられている。各プーリ6、7には、ベルト8が回し掛けられている。プーリ7は、軸保持板23aによって軸支され、軸保持板23aを介してフレーム13に対して固定されている。プーリ6は、軸保持板23bによって軸支され、軸保持板23bを介してフレーム13に対して固定されている。なお、ベルト8は、ベルト5と同様、無端ベルトであり、例えば、金属、強化ゴム等から構成される。
【0028】
図5に示すように、フレーム14は、ベルト固定部17によってベルト8に対して固定されている。フレーム15は、ベルト固定部18によってベルト8に対して固定されている。各ベルト固定部17、18の具体的な構成は、ベルト固定部16と同様である。ベルト固定部17の上層17a、中層17b、下層17cは、各々、ベルト固定部16の上層16a、中層16b、下層16cに対応する。ベルト固定部18の上層18a、中層18b、下層18cは、各々、ベルト固定部16の上層16a、中層16b、下層16cに対応する。
【0029】
図6に図5のVI−VIにおける概略的な断面模式図を示す。図6に示すように、フレーム15内には、ガススプリング9が配置されている。ガススプリング9は、その伸縮方向がy軸方向に一致するように配置されている。ガススプリングは、シリンダ9a、及びロッド9bを有する。なお、ガススプリング9は、一般的に入手可能なガススプリングであり、ロック機能を具備するものとする。ガススプリング9は、縮んだ状態でロックされたり、伸びた状態でロックされたりする。ロックボタンは、ガススプリングのロッド9bの下端に設けられており、適宜、オン、オフが可能なようにされている。
【0030】
ガススプリング9のロッド9bの先端部(取り付け部とも呼ぶ)9cは、ベース板90に設けられた開口90cに対して嵌入され、ベース板90に対して固定される。ガススプリング9のシリンダ9aの先端部(取り付け部とも呼ぶ)9dには、連結棒10が固定されている。詳細には、シリンダ9aの先端部9dに設けられた開口に対して連結棒10が挿通固定されている。連結棒10の左端は、ブランケット11aが固定され、連結棒10の右端には、ブランケット11bが固定されている。連結棒10とブランケット11間の連結方法は任意であるが、ここでは、ブランケット11の開口に連結棒10を挿入固定して両者を固着している。なお、連結棒10は、x軸方向に延在する円柱状部材であり、例えば、軽量金属等から構成される。
【0031】
ブランケット11は、板状部材であり、連結部12aを介してフレーム14に対して連結している。具体的には、ブランケット11aは、連結部12aを介してフレーム14に対して連結している。ブランケット11bは、連結部12bを介してフレーム14に対して連結している。連結部12とブランケット間の連結方法、及び連結部12とフレーム14間の連結方法は任意である。ここでは、図6に模式的に示すように、複数のネジによって、ブランケット11を連結部12の側面に対して固定している。同様に、複数のネジによって、フレーム13を連結部12に対して固定している。図6に示すように、フレーム15は、ブランケット11とフレーム13の間に配置され、連結部12上に配置される。ブランケット11の構成材料は任意であるが、例えば、金属、強化プラスチック等から構成される。
【0032】
ロボット100の収縮状態(図1乃至図6参照)とロボット100の伸長状態(図7乃至図11参照)とを比較して説明する。
【0033】
ロボット100が収縮状態のとき、図4に示すように、ベルト固定部16は、ベルト5上にてプーリ3近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部16は、フレーム14の下端側に位置する。図5に示すように、ベルト固定部17は、ベルト8上にてプーリ7近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部17は、フレーム14の上端側に位置する。ベルト固定部18は、ベルト8上にてプーリ6近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部17は、フレーム14の下端側に位置する。図6に示すように、ガススプリング9は収縮状態(バネが縮んだ状態)にあり、シリンダ9a内にロッド9bが収納されている。
【0034】
ロボット100が伸長状態のとき、図9に示すように、ベルト固定部16は、ベルト5上にてプーリ4近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部16は、フレーム14の上端側に位置する。図10に示すように、ベルト固定部18は、ベルト8上にてプーリ7近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部17は、フレーム13の上端側に位置する。ベルト固定部17は、ベルト8上にてプーリ6近傍に位置する。換言すると、ベルト固定部17は、フレーム13の下端側に位置する。図11に示すように、ガススプリング9は伸長状態(バネが伸びた状態)にあり、シリンダ9aからロッド9bが飛び出ている。
【0035】
上述の比較説明から明らかなように、フレーム13は、電動モータ1の回転力に応じて上方変位し、かつガススプリング9のバネ力に応じて上方変位する。図4を参照して説明すると、電動モータ1の回転に応じてプーリ3が左回転し、これに応じて、プーリ3とプーリ4間に回し掛けられたベルト5が反時計回りに送られる。ベルト5の送りに応じて、ベルト5に対してベルト固定部16を介して固定されたフレーム13は上方変位する。このフレーム13の上方変位に連動して、フレーム13は、ガススプリング9によって上方へ付勢される。ガススプリング9のシリンダ9aが、連結棒10とブランケット11を介して、フレーム13に対して連結させているためである。
【0036】
上述のようにフレーム13が上方変位すると、当然、フレーム13に対して固定されたプーリ6、プーリ7も上方変位する。図5を参照して説明すれば、プーリ6、プーリ7は、フレーム13の上方変位に応じて反時計回りに回転し、これに応じて、プーリ6とプーリ7に回し掛けられたベルト8は、反時計回りに送られる。ベルト8の送りに応じて、ベルト固定部17を介してベルト8に対して固定されたフレーム14は下方変位する。他方、ベルト8の送りに応じて、ベルト固定部18を介してベルト8に対して固定されたフレーム15は上方変位する。ロボット100は、このように、フレーム13の上方変位に応じて、フレーム14は下方変位し、フレーム15が上方変位するように構成されている。換言すると、ロボット100は、フレーム13の上方搬送に応じて、フレーム14、15が互いに逆方向に搬送されるように構成されている。これによって、収縮時のy軸方向の長さの3倍のストロークを好適に確保することができる。
【0037】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、電動モータ1で生じる駆動力に加えて、ガススプリング9で生じるバネ力を活用してフレーム13を上方搬送する。特に、フレーム13を付勢する付勢手段としてガススプリングを活用することによって、フレーム13〜15の相対変位を安定化させることができる。ガススプリング9は、長いストロークにわたり略一定のバネ力を発生することができ、かつ減衰作用を有しているためである。この結果、ロボット100を収縮状態から伸長状態とする場合、フレーム13〜15らを緩慢に相互変位させることができる。ロボット100を伸長状態から収縮状態とする場合も同様である。また、ロボット100が伸長状態のとき、ガススプリング9に対して加わるロボット100の構成部品の自重は、ガススプリング9のガス反力によって保持される。換言すると、ガススプリング9のガス反力は、ロボット100が伸長状態の時にガススプリング9に対して加わるロボット100の構成部品の自重を保持することが可能なように設定されている。これによって、ロボット100が伸長状態のときに要する電動モータ1の駆動力を低減することが可能になる。このようにして、小型電動モータが採用可能となり、ロボット100の作動に要する電力の低減を図り、並びにロボット100の安全性を高めることが達成される。また、ガススプリング9のガス反力と電動モータ1の駆動力とを相互調整することによって、様々な用途に適する特性のロボット100を提供することも可能となる。
【0038】
実施の形態2
以下、図12乃至図22を参照して、実施の形態2について説明する。図12は、収縮状態のロボットの概略的な斜視図である。図13は、収縮状態のロボットの概略的な側面図である。図14は、収縮状態のロボットの概略的な底面図である。図15乃至図17は、収縮状態のロボットの概略的な断面模式図である。図18は、伸長状態のロボットの概略的な斜視図である。図19は、伸長状態のロボットの概略的な側面図である。図20は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。図21は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。図22は、伸長状態のロボットの概略的な断面模式図である。
【0039】
本実施形態では、実施の形態1に示したロボット100をカバーにて外装する。このような場合であっても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、カバーにて外装することによって、機構部品(プーリ、ベルト等)の露出を回避し、ロボット100の安全性を効果的に高めることができる。以下、具体的に説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0040】
図12、図13に示すように、ロボット100の外観は、カバー41、カバー43によって覆われている。カバー41の開口部分からは、固定板22と電動モータ1が外部へ露出している。
【0041】
図15に図14のXV−XVにおける概略断面模式図を示す。図16に図14のXVI−XVIにおける概略断面模式図を示す。図15及び図16に示すように、カバー41、カバー42、カバー43は、z軸方向において順に配置されている。図17に示すように、カバー41は、フレーム14に対して面接触し、フレーム14上に固定されている。カバー42は、連結部品を介して、フレーム13に対して固定されている。カバー43は、連結部品を介して、フレーム15に対して固定されている。
【0042】
ロボット100が収縮状態(図12乃至図17参照)から伸長状態(図18乃至図22参照)へと変化すると、実施の形態1で説明した各フレームの相互変位と同様に、各フレームに対して固定された各カバーも相互変位する。具体的には、カバー42は、フレーム13と共に上方へ変位する。上述のように、フレーム14は、フレーム13の上方変位に応じて、下方へ変位する。従って、カバー41は、フレーム13の上方変位に応じて、フレーム14共に下方変位する。上述のように、フレーム15は、フレーム13の上方変位に応じて、フレーム13よりも更に上方へ変位する。従って、カバー43は、フレーム13の上方変位に応じて、フレーム13よりも更に上方へフレーム15共に変位する。
【0043】
ロボット100が収縮状態のとき(図12乃至図17参照)、カバー42は、カバー43により完全に覆われ、カバー41は、カバー42により部分的に覆われている。このように、互いに隣り合うカバー間にて、ロボット100の下方側のカバー開口径よりも、ロボット100の上方側のカバーの開口径のほうが大きくなるように構成されている。ロボット100が伸長状態のとき(図18乃至図22参照)、カバー41は、カバー42により部分的に覆われている。カバー42は、カバー43によって部分的に覆われている。このように外側カバーが内側カバーに対して上方変位する構成とすることによって、ロボット100に内蔵される駆動部品(プーリ、ベルト等)の外部露出を回避し、ロボット100の安全性を効果的に高めることができる。
【0044】
実施の形態3
以下、図23乃至図26を参照して実施の形態3について説明する。図23、24は、ロボットの概略的な模式図である。図25は、収縮状態のロボットの概略的な模式図である。図26は、伸長状態のロボットの概略的な模式図である。
【0045】
本実施形態では、実施の形態1に示したプーリ3、プーリ4、及びベルト5の搬送機構に代えて、図23に模式的に示すボールねじ部61を活用してフレーム13を上方へ搬送させる。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態1に示したプーリ6、プーリ7、及びベルト8の搬送機構に代えて、図25、図26に模式的に示すように、プーリ72、ベルト74から構成される搬送機構を採用する。このような構成を採用することによって、上述の実施形態よりも簡素な搬送機構とし、かつ、後述のように、ロボット100の外観を改善、かつその安全性を高めることができる。
【0046】
図25、図26に示すように、ベルト74の一端73は、フレーム15の下端部分に対して固定され、ベルト74の他端は、フレーム14の上端部分に対して固定されている。ボールねじ部61の駆動に応じてフレーム13が上方変位することに応じて、フレーム13に対して固定されたプーリ72も上方変位する。プーリ72がベルト74の下端側から先端側へ移動するに応じて、フレーム15は、フレーム13に対して上方変位する。図26から明らかなように、ベルト74は、フレーム13によって外側への露出が妨げられている。このような構成を採用することによって、上述の実施形態よりも簡素な搬送機構としつつ、また、ロボット100の外観を改善、かつその安全性を高めることができる。
【0047】
なお、ボールねじ部61は、図23に示すように汎用されているタイプを用いる。図23に示すように、ネジ棒61bの上端は、固定部61aによってフレーム14の上端に固定されている。ネジ棒61bの下端は、固定部61cによってフレーム14の下端に固定されている。ネジ棒61bには、フレーム13が連結したナット部61dが設けられている。プーリ72に対して駆動装置を具備させ、プーリ72を回転制御しても良い。これによって、図26に示す状態から図25に示す状態への復帰が好適に行うことが可能になる。
【0048】
実施の形態4
以下、図27を参照して実施の形態4について説明する。図27(a)は、伸長状態のロボットの概略的な模式図であり、図27(b)は収縮状態のロボットの概略的な模式図である。本実施形態では、実施の形態1〜3のいずれかに示したロボット100の先端に対してアームを取り付ける。このようにして、アーム位置を調整可能に構成されたアーム付きロボット200を提供することができる。なお、ロボット200の下面には、複数の車輪90〜92が取り付けられており、平面移動可能に構成されている。ロボット200は、実施の形態2に示したカバー41〜43に対応するカバー81〜83を備える。カバー41〜43とは異なり、カバー81〜83は、上側の横幅が狭く構成されているが、このような場合であっても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
図27(a)に示すように、カバー83の先端には、アーム基部84、アーム胴部85、アーム先端部86、把持部87、連結部88、および連結部89が設けられている。アーム基部84とアーム胴部85とは、連結部88を介して回動可能に接続されている。アーム胴部85とアーム先端部86とは、連結部89を介して回動可能に接続されている。把持部87は、アーム先端部86の先端に対して取り付けられている。連結部88、89に対して電動モータ等を含む制御機構を組み込むことによって、アームの自由な運動を確保することができる。ロボットの収縮に応じて、図27(a)から図27(b)に示すようにアーム位置が低くなる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、フレーム段数は任意であり、4以上としても良い。搬送機構の具体的な構成は任意である。ベルトに代えて、チェーン等を採用しても良い。
【符号の説明】
【0051】
100 ロボット

13-15 フレーム
41-43 カバー
1 電動モータ
2 減速機
3 プーリ
4 プーリ
5 ベルト
6 プーリ
7 プーリ
8 ベルト
9 ガススプリング
10 連結棒
11 ブランケット
12 連結部
16 ベルト固定部
17 ベルト固定部
18 ベルト固定部
22 固定板
24 軸保持板
25 軸保持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム間の相互変位に応じて伸縮可能に構成されたロボットであって、
当該ロボットの基端側から先端側へ順に配置されるべき第1乃至第3フレームと、
駆動源から供給される駆動力に基づいて前記第2フレームを先端側へ駆動する駆動手段と、
前記駆動手段と協調して前記第2フレームを先端側へ付勢する付勢手段と、
前記駆動手段及び前記付勢手段による前記第2フレームの先端側への搬送に同調して、前記第2フレームからみて前記第1及び第3フレームを互いに逆方向へ搬送する搬送機構と、を備える、ロボット。
【請求項2】
前記付勢手段は、ガススプリングを含むことを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記第2フレームによって軸支された回転子と、当該回転子に対して回し掛けられた帯体と、を含み、
前記第1及び第3フレームは、前記帯体を介して、互いに係合していることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記帯体は、前記第1フレームに対して一端側が固定され、前記第3フレームに対して他端側が固定された有端ベルトであり、かつ前記第2フレームによって外部への露出が妨げられていることを特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記駆動源は、電動モータであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
前記第1フレームと第2フレーム間の相対変位を当該ロボットの伸縮方向に規制する第1ガイド機構と、
前記第2フレームと前記第3フレーム間の相対変位を前記伸縮方向に規制する第2ガイド機構と、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−96321(P2012−96321A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246199(P2010−246199)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】