説明

ローラの製造方法

【課題】重力注入でも効率良く高粘度の液体原料をモールド中に注入することができるローラの製造方法を提供する。
【解決手段】円柱形状のローラを、液体原料をモールド中に重力注入して得るローラの製造方法において、液体原料を同時に複数のモールドに注入する。具体的には、液体原料22を貯留するタンク21に複数のモールド25に対応した分岐注入口27−1、27−2を設け、各分岐注入口の前段に流量調整部30−1、30−2を設け、液体原料を同時かつ均等にモールドに注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱形状のローラを、液体原料をモールド中に重力注入して得るローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置として、静電潜像を保持した感光体等の画像形成体にトナーを供給し、トナーを潜像に付着させて可視化する画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、トナーを担持した現像部材を、静電潜像を保持した画像形成体に接触させて、トナーを画像形成体の潜像に付着させることにより画像形成を行っている。そのため、現像部材を導電性と弾性を有する導電性弾性体で形成する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−357950号公報
【0003】
図3は従来の画像形成装置の一例の構成を説明するための図である。図3に示す例において、トナー57を供給するためのトナー塗布用ローラ55と静電潜像を保持した画像形成体56との間に、トナー57を表面に担持して画像形成体56に供給するための現像部材としての現像ローラ51が配設されている。トナー塗布用ローラ55、現像ローラ51、画像形成体56をそれぞれ図中矢印方向に回転させることで、トナー57がトナー塗布用ローラ55、現像ローラ51を介して画像形成体56に供給される。なお、図中58は現像ローラ51の表面上のトナー57を均一な薄層に整えるための成層ブレードである。また、図中59は転写部であり、ここで紙などの記録媒体にトナー画像を転写する。転写後、画像形成体56の表面に残存するトナー57は、クリーニング部60に装置されたクリーニングブレード61により、除去される。
【0004】
上述した従来の画像形成装置で用いる導電性の現像ローラ55等のローラは、直径が例えば20mmと小さく幅が例えばA4の用紙幅よりも若干大きい細長い円柱形状を有している。そして、通常、これらのローラは、高粘度熱硬化性液体原料をローラの形状に応じた細長いモールドに重力注入し、加熱して液体原料を硬化させた後、離型して製造していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液体原料が高粘度であるため、および、モールドが細長い形状であるため、少量ずつしかモールド中に液体原料注入できず、重力注型には時間がかかり効率が悪い問題があった。ここで、高粘度の液体原料を低粘度化させることも考えられるが、低粘度化のための添加剤により特性が大きく変化してしまうとともに、高粘度の液体原料の粘度領域が限定されているため、低粘度化する方法を採ることができなかった。また、高粘度の液体原料に圧力をかけて液体原料を強制的にモールドに押し込む例えばプランジャー方式を採ることも考えられるが、プランジャー方式では、注入押し込み時にカーボン配列が切れて、狙いの抵抗より高くなってしまうとともに、エアを巻き込み易くピンホール欠陥になるためプランジャー方式を採ることができなかった。さらに、液体原料を注入するためのノズルの形状を改良してより多くの液体原料を注入できるようにすることも考えられるが、モールドの直径が小さくノズルの改良をする余地がなかった。
【0006】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、重力注入でも効率良く高粘度の液体原料をモールド中に注入することができるローラの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローラの製造方法は、円柱形状のローラを、液体原料をモールド中に重力注入して得るローラの製造方法において、液体原料を同時に複数のモールドに注入することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のローラの製造方法の好適例としては、液体原料を貯留するタンクに複数のモールドに対応した分岐注入口を設け、各分岐注入口の前段に流量調整部を設け、液体原料を同時かつ均等にモールドに注入すること、液体原料に、2.25〜2.75重量部のカーボンブラックを添加すること、液体原料を50℃以上に加熱すること、がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のローラの製造方法によれば、高粘度の液体原料をモールド中に重力注入するにあたり、高粘度の液体原料を同時に複数のモールドに注入することにより、ローラ製造時の効率低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法で製造するローラの一例の構成を示す図であり、図1(a)はその正面図を示し、図1(b)は図1(a)におけるA−A線に沿った断面図を示している。図1(a)、(b)に示す例において、ローラ1は、中心の良導電性シャフト2と、良導電性シャフト2の外側に設けられた導電性弾性層3と、導電性弾性層3の表面に設けられた被覆層4と、から構成されている。
【0011】
本発明の特徴は、上述した構成のローラ1のうち、モールドの中心に良導電性シャフト2をセットした状態で、モールド中に、イソシアネート、ポリオール、C/B(カーボンブラック)等の混合物からなる高粘度の流体原料を重力注型して、導電性弾性層3を形成する点にある。なお、被覆層4は、導電性弾性層3の上にディッピング等の方法で形成することができ、モールドを使用した重力注型を行う必要はない。
【0012】
図2は本発明のローラの製造方法を実施する装置の一例を説明するための図である。図2に示す例において、21は高粘度の液体原料22を貯留するタンク、23はタンク21内に設けられた液体原料22を混合するための混合装置、24は流体原料22を分岐注型するための分岐注型治具、25は一端をキャップ26で塞ぎ内部にシャフト2をセットしたモールドである。ここで、分岐注型治具24は、2つの分岐注入口27−1、27−2と、タンク21から供給される液体原料22を管路28を介して2つの分岐注入口27−1、27−2に分岐して供給するための管路29−1、29−2と、管路29−1、29−2の各々に設けられた液体原料22の分岐注入口27−1、27−2への供給量を調整するための流量調整部30−1、30−2とから構成されている。
【0013】
図2に示す装置を使用して、高粘度の液体原料22は、分岐注型治具24の分岐注入口27−1、27−2から2つのモールド25中に同時に重力注入することができる。このとき、管路29−1、29−2を通る高粘度の液体原料22の流量は、流量調整部30−1、30−2により、均等になるよう調整されている。なお、本例では、2つのモールド25に同時に重力注入する例を説明したが、2つ以上の複数のモールド25に分岐するよう構成しても良い。
【0014】
上述したように、本発明では、高粘度の液体原料22をモールド25中に重力注入するにあたり、高粘度の液体原料22を同時に複数(ここでは2つ)のモールド25に注入している。そのため、モールド25の開口部の直径が小さく細長い形状のモールド25のため、液体原料22を供給する従来のノズルとそれぞれが同じ形状で同じ流量しか流すことができない分岐注入口27−1、27−2を使用する必要がある場合であっても、ローラ製造時の効率を良くすることができる。
【0015】
次に、本発明のローラの製造方法の好適例として、C/Bの添加量、および、加熱温度の影響について説明する。
【0016】
まず、ポリウレタン100重量部に対し添加するC/Bの重量部を変化させたときの、液体原料の粘度とモールド注入可否を調べた。測定温度は30℃であった。また、粘度測定はE型粘度計(東京計器製)を使用した。結果を以下の表1に示す。表1において、モールド注入可否は、エアー巻込み状態を×とし、エアーなしを○とした。表1の結果から、モールド注入の可否の観点で、C/Bの添加量を2.25〜2.75重量部とすることが好ましいことがわかる。
【0017】
【表1】

【0018】
次に、液体原料の温度を変化させたときの、液体原料の粘度とモールド注入可否を調べた。C/Bの添加量は2.75重量部であった。また、粘度測定とモールド注入可否の表示は上述した例と同様にして行った。結果を以下の表2に示す。表2の結果から、液体原料の温度を50℃以上とすることが好ましいことがわかる。なお、温度の上限については粘度の点からは特に規定できないが、ウレタンの劣化の観点から120℃以下であることが好ましい。
【0019】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の製造方法に従って製造されたローラは、複写機、プリンター、FAX等に使用される、例えば現像ローラとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法で製造するローラの一例の構成を示す図である。
【図2】本発明のローラの製造方法を実施する装置の一例を説明するための図である。
【図3】従来の画像形成装置の一例の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1 現像ローラ
2 良導電性シャフト
3 導電性弾性層
4 被覆層
21 タンク
22 液体原料
23 混合装置
24 分岐注型治具
25 モールド
26 キャップ
27−1、27−2 分岐注入口
28、29−1、29−2 管路
30−1、30−2 流量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状のローラを、液体原料をモールド中に重力注入して得るローラの製造方法において、液体原料を同時に複数のモールドに注入することを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
液体原料を貯留するタンクに複数のモールドに対応した分岐注入口を設け、各分岐注入口の前段に流量調整部を設け、液体原料を同時かつ均等にモールドに注入する請求項1に記載のローラの製造方法。
【請求項3】
液体原料に、2.25〜2.75重量部のカーボンブラックを添加する請求項1または2に記載のローラの製造方法。
【請求項4】
液体原料を50℃以上に加熱する請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−258196(P2006−258196A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76729(P2005−76729)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】