ローラ形状測定装置及びそれを用いたクリアランス調整方法
【課題】ローラ面に養生フィルムを被覆したままでローラ形状を測定できる装置を提供すると共に、その装置を使用してオフラインでダミーによるクリアランス調整を行うことにより、ローラ面を傷つけることなく迅速にクリアランス調整を行うことができる。
【解決手段】直径が1m以上の冷却ローラ14のローラ面に樹脂製の養生フィルム30を被覆したままで該冷却ローラの形状を測定するローラ形状測定装置40は、金属のみに反応することによりローラ面までの距離を測定する渦電流式の変位計42と、変位計42をスライドバー44にスライド自在に支持して冷却ローラ14の幅方向に移動させる移動手段46と、変位計42での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備える。そして、このロール形状測定装置40でオンライン測定したローラ形状結果に基づいて、冷却ローラ14と遮風板22とのクリアランス調整をオフラインで行う。
【解決手段】直径が1m以上の冷却ローラ14のローラ面に樹脂製の養生フィルム30を被覆したままで該冷却ローラの形状を測定するローラ形状測定装置40は、金属のみに反応することによりローラ面までの距離を測定する渦電流式の変位計42と、変位計42をスライドバー44にスライド自在に支持して冷却ローラ14の幅方向に移動させる移動手段46と、変位計42での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備える。そして、このロール形状測定装置40でオンライン測定したローラ形状結果に基づいて、冷却ローラ14と遮風板22とのクリアランス調整をオフラインで行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ形状測定装置及びそれを用いたクリアランス調整方法に係り、特に、機能性フィルムのベースフィルムを製造する製膜装置のように鏡面加工された金属製のローラ(ドラムも含む)を備え、ローラ面に所定クリアランスで遮風板等の近接部材を配置する際に使用するローラ形状測定装置とクリアランス調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用される機能性フィルム(例えば、光学補償フィルム、反射防止フィルム等)を製造するためのベースフィルムは、溶液製膜法や溶融製膜法で製造され、面状の良好なベースフィルムであることが要求される。
【0003】
溶液製膜法や溶融製膜法でベースフィルムを製膜する場合、ダイから冷却ローラ面に樹脂を薄膜状に流延させて冷却し、冷却した薄膜樹脂をローラから剥離する。製膜装置で使用されるローラはローラ面に鏡面加工が施されている。
【0004】
また、製膜装置では、流延ダイからローラ面上に流延される流延膜がローラ回転に伴う同伴風で揺れることでフィルム面状が悪化しないように、流延ダイの上流側に、装置フレームに支持させて遮風板を配置することがある。この遮風板の遮風効果を上げるには、遮風板とローラ面とのクリアランスを極めて狭くなるように近接させて遮風板を配置する必要がある。
【0005】
この場合、クリアランス調整は、ローラ面に傷等がつかないように、ローラ面に一定の厚みでできた樹脂製の養生フィルムを被覆して行い、遮風板とローラ面上の養生フィルムとの間にゲージ板を挿入し、この状態で遮風板の伸縮部を伸長させてローラ面に近づけることでクリアランス調整を行っている。しかし、クリアランス調整時に遮風板が養生フィルム面に強く当たってローラ面を傷つけたり、遮風板の伸縮作業時に使う工具を養生フィルム面に強く当ててしまいローラ面を傷つけたりすることがあり、ローラ面の鏡面加工を再度やり直さなくてはならないこともある。更に、ローラ面及び遮風板の隙間には、塵等の付着が懸念されるため、定期的な清掃が必要とされ、遮風板は頻繁に脱着され、その度にこのようなクリアランス調整が必要である。クリアランスの調整作業は、作業者に負担になるだけでなく、養生フィルムの被覆や剥離の作業も必要となり長時間を要していた。特に、近年は、幅広なベースフィルムを製造することから、調整作業に要する時間は益々長くなっている。
【0006】
なお、ローラ面に近接配置することから高精度なクリアランス調整を必要とする近接部材は、上記した遮風板に限らず、例えば流延ダイ、減圧チャンバ、塗布ダイ、噴出ノズル等があり、近接部材とローラ面とのクリアランスは、処理性能に大きく影響を与える。
【0007】
このような背景から、ローラ面上で作業者が直接作業をせずにクリアランス調整ができる方法が要望されており、この方法であれば、ローラ面を傷つけることがないと共に、作業者の負担も軽減できるだけでなく、クリアランス調整における養生フィルムの被覆や剥離の作業も不要となり、調整時間も大幅に短縮できる。
【0008】
しかし、ローラ面上での作業者によるクリアランス調整作業を無くすには、ローラ面の形状(フロファイル)を予め把握しておく必要があり、これはローラを設置したとき、つまり通常は設備製作や改造をしたときのローラを脱着した場合にのみ必要となるものであり、この場合も養生フィルムでローラが被覆された状態となる。このためには、養生フィルムの上からローラ面の形状を測定しなければならない。しかし、この場合、養生フィルムの厚みのバラツキや被覆状態(浮きや皺等)の影響等があり、精度良く測定できなかった。
【0009】
また、測定するための適当なローラ形状測定装置もなかった。例えば、特許文献1には、圧延ローラのフロファイル測定装置が開示されているが、超音波センサでローラ面までの距離を測定するものであり、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでは使用できない。
【特許文献1】特開昭63−195512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ローラ面から養生フィルムを剥離しないでクリアランス調整する方法が実現されていないのが実情であり、そのためのローラ形状測定装置も開発されていない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでローラ形状を測定できる測定装置を提供すると共に、その測定装置を使用してオフラインでダミーによるクリアランス調整を行うことにより、ローラ面を傷つけることなく迅速にクリアランス調整を行うことができるクリアランス調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、直径が1m以上の金属ローラのローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままで該金属ローラの形状を測定するローラ形状測定装置であって、金属のみに反応することにより前記ローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計と、前記渦電流式変位計をスライドバーにスライド自在に支持して前記金属ローラの幅方向に移動させる移動手段と、前記渦電流式変位計での測定値と前記ローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、前記渦電流式変位計で測定した測定値を前記検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とするローラ形状測定装置を提供する。
【0013】
請求項1のローラ形状測定装置によれば、渦電流式変位計を移動手段でローラ幅方向に移動させながら、金属ローラのローラ形状を測定するようにしたので、ローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままでもローラ形状を測定できる。
【0014】
また、渦電流を利用した渦電流式変位計は、レーザ、超音波等を利用した他の変位計よりも測定精度は落ちるが、本発明では、測定対象である金属ローラの直径を1m以上とすると共に、渦電流式変位計での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データに基づいて、渦電流式変位計で測定した測定値を補正するようにしたので、測定精度を向上できる。この場合、実測距離はローラ面までの距離を直接測定した距離であり、例えば、ブロックゲージ、接触式センサを使用することができる。
【0015】
例えば、本発明のローラ形状測定装置の用途の一例として、ローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままでローラ面と、例えば遮風板のような近接部材とのクリアランスを調整する用途がある。この場合には10μm以下の測定精度が要求されるが、十分にクリアできる。
【0016】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記スライドバーの撓みを測定する撓み測定手段を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが前記補正手段の補正に加味されることが好ましい。これにより、スライドバーの撓みが測定値からキャンセルされるので、測定精度を一層向上できる。撓み測定手段としては、例えば、水準器、コリメータ、装置フレームに取り付けられた歪みゲージ等を好適に使用できる。
【0017】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記ローラ面に対する前記渦電流式変位計の取り付け角度を調整する角度調整手段を備えたことが好ましい。金属ローラのようにローラ面に曲率を有する測定対象は、渦電流式変位計の取り付け角度をローラ面に対して垂直に配置することが重要であり、本発明では角度調整手段を備えるようにしたので、取り付け角度を最適に設定できる。これにより、測定精度を一層向上できる。
【0018】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記スライドバーをスライドすると共に前記渦電流式変位計を保持する測定ヘッドが金属以外の材質で形成されていることが好ましい。渦電流式変位計は測定ヘッドに金属を使用すると測定精度に悪影響がでるが、本発明では測定ヘッドに金属以外の材質のものを使用するようにしたので、測定精度を一層向上できる。
【0019】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、ローラ面が鏡面加工され直径1m以上の金属ローラと、前記ローラ面に近接配置されると共に伸縮部を有する近接部材とが装置フレームに支持された装置であって、前記ローラ面と前記近接部材とのクリアランスを調整する方法において、前記装置フレームにおける前記近接部材の取付け位置に請求項1〜4の何れか1のローラ形状測定装置を取り付けて、前記ローラ面に養生フィルムを被覆したままで金属ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する第1の工程と、前記装置フレームのダミーフレームに前記金属ローラのダミーローラが設けられた実物模型装置を用いて、該実物模型装置における前記近接部材の取付け位置に、前記オンライン測定で使用したローラ形状測定装置を取り付けて、前記ダミーローラ幅方向の形状をオフライン上で測定する第2の工程と、前記オンライン測定でのローラ形状測定値に対する前記オフライン測定でのローラ形状測定値の誤差を検出する第3の工程と、前記実物模型装置から前記ローラ形状測定装置を取り外すと共に前記近接部材を取り付けて、前記検出した誤差を考慮しながら前記近接部材の伸縮部を伸縮させて前記ダミーローラとのクリアランスを設定値に調整する第4の工程と、前記設定値に調整された近接部材を前記実物模型装置から取り外してオンライン上の前記装置フレームに取り付ける第5の工程と、から成り、前記金属ローラに被覆されている前記養生フィルムは、前記第1の工程後から前記第5の工程後までの何れかのときに剥離することを特徴とするクリアランス調整方法を提供する。
【0020】
本発明のクリアランス調整方法によれば、オンライン上では、ローラ面に養生フィルムを被覆して、渦電流式変位計で金属ローラの幅方向のローラ形状(プロファイル)の測定を行い、ローラ面に対する近接部材のクリアランス調整は、実物模型装置を用いてオフライン上で行うようにした。そして、鏡面ローラに養生フィルムを被覆することなく近接部材をオンライン上に取り付ける。これにより、ローラ面を傷つけることなく且つ迅速にクリアランス調整を行うことができる。金属ローラに被覆されている養生フィルムは、第1の工程後から第5の工程後までの何れかのときに剥離すればよい。なお、伸縮部の伸縮は手動でも自動でもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のローラ形状測定装置によれば、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでローラ形状を測定することができる。したがって、本発明のローラ形状測定装置を使用してオフラインでダミーによるクリアランス調整を行うことにより、ローラ面を傷つけることなく迅速にクリアランス調整を行うことができる。
【0022】
これにより、クリアランス調整を行う作業者の負担を軽減できると共に、クリアランス調整のために養生フィルムを被覆し調整後に剥離する必要がなくなるため、調整時間を大幅に短縮することができる。更には、オフラインでのクリアランス調整が可能なことからオンランの運転を停止する時間を少なくでき、運転効率のアップになると共に、作業者の安全を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って、本発明に係るローラ形状測定装置及びそれを用いたクリアランス調整方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は、本発明のクリアランス調整方法を実施する装置の一例として、溶液製膜法又は溶融製膜法における製膜装置10を示したものである。
【0025】
図1に示すように、ダイ12から熱可塑性樹脂(例えばセルロース樹脂)が金属製の冷却ローラ(冷却ドラムともいう)14上に薄膜状に流延されて冷却され、剥離ローラ16で剥離されることによりフィルム18が製膜される。溶液製膜法では、この後、乾燥装置等により溶剤が除去される。このフィルム18の製膜において、ダイ12から吐出された樹脂膜20が冷却ローラ14の回転に伴う同伴風で揺れないように、ダイ12の上流側にローラ面に近接させて遮風板22が設けられる。
【0026】
図2に示すように、門型形状に形成された装置フレーム24の左右の支柱26、26に、冷却ローラ14が軸受28、28を介して回転自在に支持され、図示しない回転駆動部によって図1の矢印方向に回転される。冷却ローラ14は、直径が1m以上(通常は1m〜4m)の大径ローラであり、その幅は1m以上(通常は1m〜4m)のものが使用される。また、冷却ローラ14は、ローラ面に鏡面加工が施されており、製膜装置10が運転されるまでは傷等がつかないように、ローラ面に透明な樹脂製の養生フィルム30が被覆されている(図3参照)。
【0027】
また、左右の支柱26、26の上部に、それぞれ支持部32、32が水平方向内側に対向して突出され、支持部32の上面にピン34が立設される。一方、遮風板22の左右上部にL字状アーム36、36が形成され、その水平部に前記ピン34に対応して孔38、38が穿設される。この孔38がピン34に嵌合されることで遮風板22が装置フレーム24に着脱自在に支持される。遮風板22の下端には、クリアランス調整時に伸縮させることにより、冷却ローラ14のローラ面とのクリアランスを調整するための伸縮部22Aが設けられる。伸縮部22Aはシリコーン板のような樹脂製シートで形成され、遮風板22の本体部22Bに対して入れ子構造に形成される。そして、伸縮部22Aを本体部22Bから突出させる突出量を調整することで、冷却ローラ14のローラ面に対するクリアランス(隙間)が設定値C(例えば5mm)になるようにクリアランス調整する。
【0028】
従来はこのクリアランス調整作業においてローラ面を傷つけたり、養生フィルム30の被覆や剥離等の調整作業に長時間を費やしたりする等の問題があった。そこで、本発明は、以下説明するクリアランス調整を行うことで、ローラ面への損傷を回避し、且つ短時間でクリアランス調整できるようにした。
【0029】
以下、本発明のクリアランス調整方法の作業工程を説明する。また、その説明の中で本発明のローラ形状測定装置40についても説明する。
【0030】
[第1の工程]
先ず、図3に示すように、遮風板22が未だ取り付けられていない装置フレーム24の支持部32に、本発明のローラ形状測定装置40の渦電流式変位計42を取り付けて変位計42を冷却ローラ14幅方向にスライドさせることにより、ローラ面に養生フィルム30を被覆したままで冷却ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する。この測定後に養生フィルム30を剥離する。なお、本実施の形態では、測定後に養生フィルム30を剥離するようにしたが、第1の工程後から後述する第5の工程後までの何れかのときに剥離すればよい。
【0031】
ローラ形状測定装置40は、主として、金属のみに反応することによりローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計42と(以下単に、変位計42という)、変位計42をスライドバー44にスライド自在に支持して冷却ローラ14幅方向に移動させる移動手段46と、変位計42での測定値を補正する補正手段48と、を備えて構成される。なお、製膜装置10が溶液製膜法のように、ローラ形状測定装置40を防爆環境下で使用する場合には、防爆型のローラ形状測定装置40を使用する。
【0032】
変位計42は、コイルに高周波電流を流して高周波磁界を発生させ、この磁界内に金属製の冷却ローラ14があると、電磁誘導作用によって冷却ローラ14のローラ表面に磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れて、コイルのインピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化を距離に変換することにより、ローラ面までの距離を測定する。測定された測定距離は、コンピュータ50に送られて記録及び必要な演算がされると共に、コンピュータ50に内蔵された補正手段48によって補正される。この補正手段48は、変位計42での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正する。図4から分かるように、測定値と実測距離との関係は略直線であるが、精度向上のために高次曲線で検量線を構成しており、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正することにより、変位計42を正確な距離に補正できると共に、絶対距離を測定する距離計として使用できる。
【0033】
また、移動手段46は、図3及び図5に示すように、主として、装置フレーム24の一対の支持部に架橋するスライドバー44と、スライドバー44にスライド自在に支持されると共に変位計42を保持する測定ヘッド52と、スライドバー44上に測定ヘッド52をスライド自在に支持するLM(linear motion)ガイド54と、測定ヘッド52をスライド駆動する図示しない駆動部と、で構成される。駆動部は測定ヘッド52に内蔵させて自走するようにしてもよい。なお、図5では、変位計42が養生フィルム30に影響されることなく金属製のローラ面までの距離を測定することを示すために、養生フィルム30の厚みを実際よりもかなり厚く描いている。
【0034】
スライドバー44の両端部には、装置フレーム24の支持部32に立設されたピン34に対応した孔56が形成され、孔56をピン34に嵌合することにより、スライドバー44が一対の支柱26の間に架橋される。これにより、変位計42を冷却ローラ14の幅方向に移動させることにより、ローラ幅方向のローラ面形状(プロファイル)が測定される。通常は、1回のローラ幅方向の測定から、演算によりローラ面全体の形状(プロファイル)を演算しても問題ない。しかし、例えば図6に示すように、測定ヘッド52に、ローラ周方向に対応させて複数の変位形42、42…を取り付けて、1回のローラ幅方向の測定によって、ローラ周方向の複数箇所についても同時に測定できるようにすることが好ましい。また、1つの変位計42であっても、変位計42をローラ幅方向に1回移動させたら、冷却ローラ14を所定量回転させて再びローラ幅方向に移動する。この作業を複数回繰り返すことで、冷却ローラ14のローラ全面の形状(プロファイル)を得ることができる。
【0035】
また、ローラ形状測定装置40は、スライドバー44の撓みを測定する撓み測定手段(図示せず)を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが補正手段48の補正に加味されることが好ましい。冷却ローラ14の幅寸法が長くなると、それに見合った長尺なスライドバー44を使用する必要があり、変位計42の測定精度を上げるにはスライドバー44の撓みを考慮する必要がある。
【0036】
図7は、幅1500mmの冷却ローラ14を測定する長さ1500mmのスライドバー44を用いて、測定ヘッド52に保持された変位計42をスライドさせたときのスライドバー44の撓みを、スライドバー44の傾きとして測定したものである。水準器を撓み測定手段として用い、冷却ローラ幅方向の傾き(水平に対する傾き)を測定した。即ち、変位計42をスライドさせた位置のスライドバー44上面(基準面)に水準器を置き、基準面の傾きを測定する操作を、スライドバー44の一端側から他端側に順次行った。図7の横軸が冷却ローラ幅方向における変位計42の位置(mm)を示し、縦軸がスライドバー44の基準面の傾き(mm)を示す。
【0037】
また、図8は、図7の傾き結果を積分したものであり、横軸が冷却ローラ幅方向における変位計42の位置(mm)を示し、縦軸は変位計が撓みのない水平状態から下方(ローラ面方向)に何ミリ撓んだか(下がったか)を示したものである。図8から分かるように、変位計42は冷却ローラ幅方向の中央位置(0の位置)での撓み量が約2.5mmで、ローラ面に最も近づくように撓む。
【0038】
図9は、センサの出力値と検量線から求めたものであり、変位計42先端から冷却ローラ14までの距離を表している。そして、図10は、図9に図8を加えたもの、即ちスライドバー44の撓み量がゼロであった場合の仮想クリアランス量である。
【0039】
また、ローラ形状測定装置40は、ローラ面に対する変位計42の取り付け角度を調整する角度調整手段(図示せず)を備えることが好ましい。冷却ローラ14のようにローラ面に曲率を有する測定対象は、変位計42の取り付け角度をローラ面に対して垂直に配置することが測定精度向上に重要である。
【0040】
また、ローラ形状測定装置40は、測定ヘッド52が樹脂製の材質で形成されていることが好ましい。測定ヘッド52に金属を使用すると測定精度に悪影響がでるが、測定ヘッド52に金属以外の材質、例えば樹脂を使用することで測定精度を一層向上できる。
【0041】
[第2の工程]
次に、図11(A)に示すように、装置フレーム24を模造したダミーフレーム58に冷却ローラ14を模造したダミーローラ60が設けられた実物模型装置62を用意する。ダミーローラ60は、冷却ローラ14と同じ金属で製造されている。
【0042】
なお、図11(A)から分かるように、実物の装置10と実物模型装置62とは完全に一致する必要はなく、ダミーフレーム58に変位計42や遮風板22を取り付けたときのダミーローラ60と距離が、装置フレーム24に変位計42や遮風板22を取り付けたときの冷却ローラ14との距離と同じであればよい。したがって、本発明では、図11(B)に示すように、冷却ローラ14を軸芯方向で半分に割った断面半円形のダミーローラ60を使用している。また、ダミーフレーム58は、装置フレーム24のような門型形状ではなく、一対の支柱部分58Aと、スライドバー44を架橋する支持部分58B、及びピン58Cを模造している。
【0043】
そして、図12に示すように、実物模型装置62のダミーフレーム58に、オンライン測定で使用したと同じローラ形状測定装置40を取り付けて、ダミーローラ60の幅方向の形状をオフライン上で測定する。測定された測定距離は、オンラインでの測定と同様に、コンピュータ50に送られて記録及び必要な演算がされると共に、補正手段48によって補正される。
【0044】
[第3の工程]
次に、実物の装置10での冷却ローラ14に対する実物模型装置62でのダミーローラ60の誤差を、第1の工程において実物の装置10を用いて行ったオンライン測定でのローラ形状測定値と第2の工程において実物模型装置60を用いて行ったオフライン測定でのローラ形状測定値との差から検出する。
【0045】
誤差の検出はコンピュータ50により自動演算され、図13に示すように、ローラ幅方向における誤差曲線として示される。
【0046】
[第4の工程]
次に、図14に示すように、実物模型装置62からローラ形状測定装置40を取り外すと共に遮風板22を取り付ける。そして、第3の工程で検出した誤差を考慮しながら遮風板22の伸縮部22Aを手動で伸縮させてダミーローラ60のローラ面とのクリアランスを設定値Cに調整する。
【0047】
[第5の工程]
次に、クリアランスを設定値Cに調整した遮風板22を実物模型装置62から取り外して、図15に示すようにオンライン上の装置フレーム24に取り付ける。
【0048】
これにより、冷却ローラ14のローラ面に対する遮風板22のクリアランス調整を従来のようにオンライン上で行わなくても、遮風板22と冷却ローラ14のローラ面とのクリアランスが設定値Cになる。
【0049】
以上、第1の工程から第5の工程を行うことにより、オンライン上では、ローラ面に養生フィルム30を被覆したまま、渦電流式変位計42で冷却ローラ14の幅方向のローラ形状(プロファイル)を測定のみを行い、ローラ面に対する遮風板22のクリアランス調整は、実物模型装置62を用いてオフライン上で行うようにした。そして、遮風板22をオンライン上に取り付けることにより、ローラ面を傷つけることなく且つ迅速にクリアランス調整を行うことができる。
【0050】
なお、第4の工程において、遮風板22の伸縮部22Aを手動で伸縮させてダミーローラ60のローラ面とのクリアランスを設定値Cに調整する方法としては、例えば図16のように行うことができる。
【0051】
図16に示すように、遮風板22の本体部22Bと伸縮部22Aとは、遮風板幅方向に複数の連結部材23で連結される。この連結部材23は、拡大図に示すように、本体部22Bに固定されたL字部材の水平板23Aに貫通孔23Bが形成され、伸縮部22Aの上面から延びたボルト23Cが挿通される。また、ボルト23Cは、ボルト23Cに嵌合された一対のナット23D,23Dにより、水平板23Aに支持される。これにより、遮風板幅方向に配列された複数の連結部材23のナット23D,23Dを回転させる回転量を変えることで、水平板23Aに対してボルト23Cが押し引きされる距離が変わるので、伸縮部22Aを曲げ変形することができる。これにより、測定されたローラ幅方向の面形状に合わせて伸縮部幅方向のクリアランスを設定値Cに調整することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、近接部材として遮風板22の例で説明したが、これに限定されるものではない。例えば流延ダイ、減圧チャンバ、塗布ダイ、噴出ノズル等のように、ローラ面に近接配置するためにクリアランス調整が必要な全ての部材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のクリアランス調整方法を適用する装置の一例として溶融製膜装置を示した斜視図
【図2】溶融製膜装置の冷却ローラと遮風板との関係を示した概念図
【図3】本発明のクリアランス調整方法の第1の工程(オンラインでのローラ形状測定)を説明する説明図
【図4】ローラ形状測定装置の補正手段に搭載された検量線の説明図
【図5】ローラ形状測定装置の主として移動手段を説明する説明図
【図6】ローラ形状測定装置の別態様を示す斜視図
【図7】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、スライドバーの傾きを説明する説明図
【図8】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、変位計の下がり量を説明する説明図
【図9】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、変位計の出力値を説明する説明図
【図10】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、クリアランス量の誤差影響を説明する説明図
【図11】実物模型装置を説明する説明図
【図12】本発明のクリアランス調整方法の第2の工程(オフラインでのローラ形状測定)を説明する説明図
【図13】本発明のクリアランス調整方法の第3の工程を説明する説明図
【図14】本発明のクリアランス調整方法の第4の工程を説明する説明図
【図15】本発明のクリアランス調整方法の第5の工程を説明する説明図
【図16】本発明のクリアランス調整方法の第4の工程を詳しく説明する説明図
【符号の説明】
【0054】
10…溶融製膜装置、12…ダイ、14…冷却ローラ、16…剥離ローラ、18…フィルム、20…樹脂膜、22…遮風板、24…装置フレーム、26…支柱、28…軸受、30…養生フィルム、32…支持部、34…ピン、36…L字状アーム、38…孔、40…ローラ形状測定装置、42…変位計、44…スライドバー、46…移動手段、48…補正手段、50…コンピュータ、52…測定ヘッド、54…LMガイド、56…孔、58…ダミーフレーム、60…ダミーローラ、62…実物模型装置,
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ形状測定装置及びそれを用いたクリアランス調整方法に係り、特に、機能性フィルムのベースフィルムを製造する製膜装置のように鏡面加工された金属製のローラ(ドラムも含む)を備え、ローラ面に所定クリアランスで遮風板等の近接部材を配置する際に使用するローラ形状測定装置とクリアランス調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用される機能性フィルム(例えば、光学補償フィルム、反射防止フィルム等)を製造するためのベースフィルムは、溶液製膜法や溶融製膜法で製造され、面状の良好なベースフィルムであることが要求される。
【0003】
溶液製膜法や溶融製膜法でベースフィルムを製膜する場合、ダイから冷却ローラ面に樹脂を薄膜状に流延させて冷却し、冷却した薄膜樹脂をローラから剥離する。製膜装置で使用されるローラはローラ面に鏡面加工が施されている。
【0004】
また、製膜装置では、流延ダイからローラ面上に流延される流延膜がローラ回転に伴う同伴風で揺れることでフィルム面状が悪化しないように、流延ダイの上流側に、装置フレームに支持させて遮風板を配置することがある。この遮風板の遮風効果を上げるには、遮風板とローラ面とのクリアランスを極めて狭くなるように近接させて遮風板を配置する必要がある。
【0005】
この場合、クリアランス調整は、ローラ面に傷等がつかないように、ローラ面に一定の厚みでできた樹脂製の養生フィルムを被覆して行い、遮風板とローラ面上の養生フィルムとの間にゲージ板を挿入し、この状態で遮風板の伸縮部を伸長させてローラ面に近づけることでクリアランス調整を行っている。しかし、クリアランス調整時に遮風板が養生フィルム面に強く当たってローラ面を傷つけたり、遮風板の伸縮作業時に使う工具を養生フィルム面に強く当ててしまいローラ面を傷つけたりすることがあり、ローラ面の鏡面加工を再度やり直さなくてはならないこともある。更に、ローラ面及び遮風板の隙間には、塵等の付着が懸念されるため、定期的な清掃が必要とされ、遮風板は頻繁に脱着され、その度にこのようなクリアランス調整が必要である。クリアランスの調整作業は、作業者に負担になるだけでなく、養生フィルムの被覆や剥離の作業も必要となり長時間を要していた。特に、近年は、幅広なベースフィルムを製造することから、調整作業に要する時間は益々長くなっている。
【0006】
なお、ローラ面に近接配置することから高精度なクリアランス調整を必要とする近接部材は、上記した遮風板に限らず、例えば流延ダイ、減圧チャンバ、塗布ダイ、噴出ノズル等があり、近接部材とローラ面とのクリアランスは、処理性能に大きく影響を与える。
【0007】
このような背景から、ローラ面上で作業者が直接作業をせずにクリアランス調整ができる方法が要望されており、この方法であれば、ローラ面を傷つけることがないと共に、作業者の負担も軽減できるだけでなく、クリアランス調整における養生フィルムの被覆や剥離の作業も不要となり、調整時間も大幅に短縮できる。
【0008】
しかし、ローラ面上での作業者によるクリアランス調整作業を無くすには、ローラ面の形状(フロファイル)を予め把握しておく必要があり、これはローラを設置したとき、つまり通常は設備製作や改造をしたときのローラを脱着した場合にのみ必要となるものであり、この場合も養生フィルムでローラが被覆された状態となる。このためには、養生フィルムの上からローラ面の形状を測定しなければならない。しかし、この場合、養生フィルムの厚みのバラツキや被覆状態(浮きや皺等)の影響等があり、精度良く測定できなかった。
【0009】
また、測定するための適当なローラ形状測定装置もなかった。例えば、特許文献1には、圧延ローラのフロファイル測定装置が開示されているが、超音波センサでローラ面までの距離を測定するものであり、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでは使用できない。
【特許文献1】特開昭63−195512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ローラ面から養生フィルムを剥離しないでクリアランス調整する方法が実現されていないのが実情であり、そのためのローラ形状測定装置も開発されていない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでローラ形状を測定できる測定装置を提供すると共に、その測定装置を使用してオフラインでダミーによるクリアランス調整を行うことにより、ローラ面を傷つけることなく迅速にクリアランス調整を行うことができるクリアランス調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、直径が1m以上の金属ローラのローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままで該金属ローラの形状を測定するローラ形状測定装置であって、金属のみに反応することにより前記ローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計と、前記渦電流式変位計をスライドバーにスライド自在に支持して前記金属ローラの幅方向に移動させる移動手段と、前記渦電流式変位計での測定値と前記ローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、前記渦電流式変位計で測定した測定値を前記検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とするローラ形状測定装置を提供する。
【0013】
請求項1のローラ形状測定装置によれば、渦電流式変位計を移動手段でローラ幅方向に移動させながら、金属ローラのローラ形状を測定するようにしたので、ローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままでもローラ形状を測定できる。
【0014】
また、渦電流を利用した渦電流式変位計は、レーザ、超音波等を利用した他の変位計よりも測定精度は落ちるが、本発明では、測定対象である金属ローラの直径を1m以上とすると共に、渦電流式変位計での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データに基づいて、渦電流式変位計で測定した測定値を補正するようにしたので、測定精度を向上できる。この場合、実測距離はローラ面までの距離を直接測定した距離であり、例えば、ブロックゲージ、接触式センサを使用することができる。
【0015】
例えば、本発明のローラ形状測定装置の用途の一例として、ローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままでローラ面と、例えば遮風板のような近接部材とのクリアランスを調整する用途がある。この場合には10μm以下の測定精度が要求されるが、十分にクリアできる。
【0016】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記スライドバーの撓みを測定する撓み測定手段を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが前記補正手段の補正に加味されることが好ましい。これにより、スライドバーの撓みが測定値からキャンセルされるので、測定精度を一層向上できる。撓み測定手段としては、例えば、水準器、コリメータ、装置フレームに取り付けられた歪みゲージ等を好適に使用できる。
【0017】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記ローラ面に対する前記渦電流式変位計の取り付け角度を調整する角度調整手段を備えたことが好ましい。金属ローラのようにローラ面に曲率を有する測定対象は、渦電流式変位計の取り付け角度をローラ面に対して垂直に配置することが重要であり、本発明では角度調整手段を備えるようにしたので、取り付け角度を最適に設定できる。これにより、測定精度を一層向上できる。
【0018】
また、本発明のローラ形状測定装置の更なる態様によれば、前記ローラ形状測定装置は、前記スライドバーをスライドすると共に前記渦電流式変位計を保持する測定ヘッドが金属以外の材質で形成されていることが好ましい。渦電流式変位計は測定ヘッドに金属を使用すると測定精度に悪影響がでるが、本発明では測定ヘッドに金属以外の材質のものを使用するようにしたので、測定精度を一層向上できる。
【0019】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、ローラ面が鏡面加工され直径1m以上の金属ローラと、前記ローラ面に近接配置されると共に伸縮部を有する近接部材とが装置フレームに支持された装置であって、前記ローラ面と前記近接部材とのクリアランスを調整する方法において、前記装置フレームにおける前記近接部材の取付け位置に請求項1〜4の何れか1のローラ形状測定装置を取り付けて、前記ローラ面に養生フィルムを被覆したままで金属ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する第1の工程と、前記装置フレームのダミーフレームに前記金属ローラのダミーローラが設けられた実物模型装置を用いて、該実物模型装置における前記近接部材の取付け位置に、前記オンライン測定で使用したローラ形状測定装置を取り付けて、前記ダミーローラ幅方向の形状をオフライン上で測定する第2の工程と、前記オンライン測定でのローラ形状測定値に対する前記オフライン測定でのローラ形状測定値の誤差を検出する第3の工程と、前記実物模型装置から前記ローラ形状測定装置を取り外すと共に前記近接部材を取り付けて、前記検出した誤差を考慮しながら前記近接部材の伸縮部を伸縮させて前記ダミーローラとのクリアランスを設定値に調整する第4の工程と、前記設定値に調整された近接部材を前記実物模型装置から取り外してオンライン上の前記装置フレームに取り付ける第5の工程と、から成り、前記金属ローラに被覆されている前記養生フィルムは、前記第1の工程後から前記第5の工程後までの何れかのときに剥離することを特徴とするクリアランス調整方法を提供する。
【0020】
本発明のクリアランス調整方法によれば、オンライン上では、ローラ面に養生フィルムを被覆して、渦電流式変位計で金属ローラの幅方向のローラ形状(プロファイル)の測定を行い、ローラ面に対する近接部材のクリアランス調整は、実物模型装置を用いてオフライン上で行うようにした。そして、鏡面ローラに養生フィルムを被覆することなく近接部材をオンライン上に取り付ける。これにより、ローラ面を傷つけることなく且つ迅速にクリアランス調整を行うことができる。金属ローラに被覆されている養生フィルムは、第1の工程後から第5の工程後までの何れかのときに剥離すればよい。なお、伸縮部の伸縮は手動でも自動でもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のローラ形状測定装置によれば、ローラ面に養生フィルムを被覆したままでローラ形状を測定することができる。したがって、本発明のローラ形状測定装置を使用してオフラインでダミーによるクリアランス調整を行うことにより、ローラ面を傷つけることなく迅速にクリアランス調整を行うことができる。
【0022】
これにより、クリアランス調整を行う作業者の負担を軽減できると共に、クリアランス調整のために養生フィルムを被覆し調整後に剥離する必要がなくなるため、調整時間を大幅に短縮することができる。更には、オフラインでのクリアランス調整が可能なことからオンランの運転を停止する時間を少なくでき、運転効率のアップになると共に、作業者の安全を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って、本発明に係るローラ形状測定装置及びそれを用いたクリアランス調整方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は、本発明のクリアランス調整方法を実施する装置の一例として、溶液製膜法又は溶融製膜法における製膜装置10を示したものである。
【0025】
図1に示すように、ダイ12から熱可塑性樹脂(例えばセルロース樹脂)が金属製の冷却ローラ(冷却ドラムともいう)14上に薄膜状に流延されて冷却され、剥離ローラ16で剥離されることによりフィルム18が製膜される。溶液製膜法では、この後、乾燥装置等により溶剤が除去される。このフィルム18の製膜において、ダイ12から吐出された樹脂膜20が冷却ローラ14の回転に伴う同伴風で揺れないように、ダイ12の上流側にローラ面に近接させて遮風板22が設けられる。
【0026】
図2に示すように、門型形状に形成された装置フレーム24の左右の支柱26、26に、冷却ローラ14が軸受28、28を介して回転自在に支持され、図示しない回転駆動部によって図1の矢印方向に回転される。冷却ローラ14は、直径が1m以上(通常は1m〜4m)の大径ローラであり、その幅は1m以上(通常は1m〜4m)のものが使用される。また、冷却ローラ14は、ローラ面に鏡面加工が施されており、製膜装置10が運転されるまでは傷等がつかないように、ローラ面に透明な樹脂製の養生フィルム30が被覆されている(図3参照)。
【0027】
また、左右の支柱26、26の上部に、それぞれ支持部32、32が水平方向内側に対向して突出され、支持部32の上面にピン34が立設される。一方、遮風板22の左右上部にL字状アーム36、36が形成され、その水平部に前記ピン34に対応して孔38、38が穿設される。この孔38がピン34に嵌合されることで遮風板22が装置フレーム24に着脱自在に支持される。遮風板22の下端には、クリアランス調整時に伸縮させることにより、冷却ローラ14のローラ面とのクリアランスを調整するための伸縮部22Aが設けられる。伸縮部22Aはシリコーン板のような樹脂製シートで形成され、遮風板22の本体部22Bに対して入れ子構造に形成される。そして、伸縮部22Aを本体部22Bから突出させる突出量を調整することで、冷却ローラ14のローラ面に対するクリアランス(隙間)が設定値C(例えば5mm)になるようにクリアランス調整する。
【0028】
従来はこのクリアランス調整作業においてローラ面を傷つけたり、養生フィルム30の被覆や剥離等の調整作業に長時間を費やしたりする等の問題があった。そこで、本発明は、以下説明するクリアランス調整を行うことで、ローラ面への損傷を回避し、且つ短時間でクリアランス調整できるようにした。
【0029】
以下、本発明のクリアランス調整方法の作業工程を説明する。また、その説明の中で本発明のローラ形状測定装置40についても説明する。
【0030】
[第1の工程]
先ず、図3に示すように、遮風板22が未だ取り付けられていない装置フレーム24の支持部32に、本発明のローラ形状測定装置40の渦電流式変位計42を取り付けて変位計42を冷却ローラ14幅方向にスライドさせることにより、ローラ面に養生フィルム30を被覆したままで冷却ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する。この測定後に養生フィルム30を剥離する。なお、本実施の形態では、測定後に養生フィルム30を剥離するようにしたが、第1の工程後から後述する第5の工程後までの何れかのときに剥離すればよい。
【0031】
ローラ形状測定装置40は、主として、金属のみに反応することによりローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計42と(以下単に、変位計42という)、変位計42をスライドバー44にスライド自在に支持して冷却ローラ14幅方向に移動させる移動手段46と、変位計42での測定値を補正する補正手段48と、を備えて構成される。なお、製膜装置10が溶液製膜法のように、ローラ形状測定装置40を防爆環境下で使用する場合には、防爆型のローラ形状測定装置40を使用する。
【0032】
変位計42は、コイルに高周波電流を流して高周波磁界を発生させ、この磁界内に金属製の冷却ローラ14があると、電磁誘導作用によって冷却ローラ14のローラ表面に磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れて、コイルのインピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化を距離に変換することにより、ローラ面までの距離を測定する。測定された測定距離は、コンピュータ50に送られて記録及び必要な演算がされると共に、コンピュータ50に内蔵された補正手段48によって補正される。この補正手段48は、変位計42での測定値とローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正する。図4から分かるように、測定値と実測距離との関係は略直線であるが、精度向上のために高次曲線で検量線を構成しており、変位計42で測定した測定値を検量線データに基づいて補正することにより、変位計42を正確な距離に補正できると共に、絶対距離を測定する距離計として使用できる。
【0033】
また、移動手段46は、図3及び図5に示すように、主として、装置フレーム24の一対の支持部に架橋するスライドバー44と、スライドバー44にスライド自在に支持されると共に変位計42を保持する測定ヘッド52と、スライドバー44上に測定ヘッド52をスライド自在に支持するLM(linear motion)ガイド54と、測定ヘッド52をスライド駆動する図示しない駆動部と、で構成される。駆動部は測定ヘッド52に内蔵させて自走するようにしてもよい。なお、図5では、変位計42が養生フィルム30に影響されることなく金属製のローラ面までの距離を測定することを示すために、養生フィルム30の厚みを実際よりもかなり厚く描いている。
【0034】
スライドバー44の両端部には、装置フレーム24の支持部32に立設されたピン34に対応した孔56が形成され、孔56をピン34に嵌合することにより、スライドバー44が一対の支柱26の間に架橋される。これにより、変位計42を冷却ローラ14の幅方向に移動させることにより、ローラ幅方向のローラ面形状(プロファイル)が測定される。通常は、1回のローラ幅方向の測定から、演算によりローラ面全体の形状(プロファイル)を演算しても問題ない。しかし、例えば図6に示すように、測定ヘッド52に、ローラ周方向に対応させて複数の変位形42、42…を取り付けて、1回のローラ幅方向の測定によって、ローラ周方向の複数箇所についても同時に測定できるようにすることが好ましい。また、1つの変位計42であっても、変位計42をローラ幅方向に1回移動させたら、冷却ローラ14を所定量回転させて再びローラ幅方向に移動する。この作業を複数回繰り返すことで、冷却ローラ14のローラ全面の形状(プロファイル)を得ることができる。
【0035】
また、ローラ形状測定装置40は、スライドバー44の撓みを測定する撓み測定手段(図示せず)を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが補正手段48の補正に加味されることが好ましい。冷却ローラ14の幅寸法が長くなると、それに見合った長尺なスライドバー44を使用する必要があり、変位計42の測定精度を上げるにはスライドバー44の撓みを考慮する必要がある。
【0036】
図7は、幅1500mmの冷却ローラ14を測定する長さ1500mmのスライドバー44を用いて、測定ヘッド52に保持された変位計42をスライドさせたときのスライドバー44の撓みを、スライドバー44の傾きとして測定したものである。水準器を撓み測定手段として用い、冷却ローラ幅方向の傾き(水平に対する傾き)を測定した。即ち、変位計42をスライドさせた位置のスライドバー44上面(基準面)に水準器を置き、基準面の傾きを測定する操作を、スライドバー44の一端側から他端側に順次行った。図7の横軸が冷却ローラ幅方向における変位計42の位置(mm)を示し、縦軸がスライドバー44の基準面の傾き(mm)を示す。
【0037】
また、図8は、図7の傾き結果を積分したものであり、横軸が冷却ローラ幅方向における変位計42の位置(mm)を示し、縦軸は変位計が撓みのない水平状態から下方(ローラ面方向)に何ミリ撓んだか(下がったか)を示したものである。図8から分かるように、変位計42は冷却ローラ幅方向の中央位置(0の位置)での撓み量が約2.5mmで、ローラ面に最も近づくように撓む。
【0038】
図9は、センサの出力値と検量線から求めたものであり、変位計42先端から冷却ローラ14までの距離を表している。そして、図10は、図9に図8を加えたもの、即ちスライドバー44の撓み量がゼロであった場合の仮想クリアランス量である。
【0039】
また、ローラ形状測定装置40は、ローラ面に対する変位計42の取り付け角度を調整する角度調整手段(図示せず)を備えることが好ましい。冷却ローラ14のようにローラ面に曲率を有する測定対象は、変位計42の取り付け角度をローラ面に対して垂直に配置することが測定精度向上に重要である。
【0040】
また、ローラ形状測定装置40は、測定ヘッド52が樹脂製の材質で形成されていることが好ましい。測定ヘッド52に金属を使用すると測定精度に悪影響がでるが、測定ヘッド52に金属以外の材質、例えば樹脂を使用することで測定精度を一層向上できる。
【0041】
[第2の工程]
次に、図11(A)に示すように、装置フレーム24を模造したダミーフレーム58に冷却ローラ14を模造したダミーローラ60が設けられた実物模型装置62を用意する。ダミーローラ60は、冷却ローラ14と同じ金属で製造されている。
【0042】
なお、図11(A)から分かるように、実物の装置10と実物模型装置62とは完全に一致する必要はなく、ダミーフレーム58に変位計42や遮風板22を取り付けたときのダミーローラ60と距離が、装置フレーム24に変位計42や遮風板22を取り付けたときの冷却ローラ14との距離と同じであればよい。したがって、本発明では、図11(B)に示すように、冷却ローラ14を軸芯方向で半分に割った断面半円形のダミーローラ60を使用している。また、ダミーフレーム58は、装置フレーム24のような門型形状ではなく、一対の支柱部分58Aと、スライドバー44を架橋する支持部分58B、及びピン58Cを模造している。
【0043】
そして、図12に示すように、実物模型装置62のダミーフレーム58に、オンライン測定で使用したと同じローラ形状測定装置40を取り付けて、ダミーローラ60の幅方向の形状をオフライン上で測定する。測定された測定距離は、オンラインでの測定と同様に、コンピュータ50に送られて記録及び必要な演算がされると共に、補正手段48によって補正される。
【0044】
[第3の工程]
次に、実物の装置10での冷却ローラ14に対する実物模型装置62でのダミーローラ60の誤差を、第1の工程において実物の装置10を用いて行ったオンライン測定でのローラ形状測定値と第2の工程において実物模型装置60を用いて行ったオフライン測定でのローラ形状測定値との差から検出する。
【0045】
誤差の検出はコンピュータ50により自動演算され、図13に示すように、ローラ幅方向における誤差曲線として示される。
【0046】
[第4の工程]
次に、図14に示すように、実物模型装置62からローラ形状測定装置40を取り外すと共に遮風板22を取り付ける。そして、第3の工程で検出した誤差を考慮しながら遮風板22の伸縮部22Aを手動で伸縮させてダミーローラ60のローラ面とのクリアランスを設定値Cに調整する。
【0047】
[第5の工程]
次に、クリアランスを設定値Cに調整した遮風板22を実物模型装置62から取り外して、図15に示すようにオンライン上の装置フレーム24に取り付ける。
【0048】
これにより、冷却ローラ14のローラ面に対する遮風板22のクリアランス調整を従来のようにオンライン上で行わなくても、遮風板22と冷却ローラ14のローラ面とのクリアランスが設定値Cになる。
【0049】
以上、第1の工程から第5の工程を行うことにより、オンライン上では、ローラ面に養生フィルム30を被覆したまま、渦電流式変位計42で冷却ローラ14の幅方向のローラ形状(プロファイル)を測定のみを行い、ローラ面に対する遮風板22のクリアランス調整は、実物模型装置62を用いてオフライン上で行うようにした。そして、遮風板22をオンライン上に取り付けることにより、ローラ面を傷つけることなく且つ迅速にクリアランス調整を行うことができる。
【0050】
なお、第4の工程において、遮風板22の伸縮部22Aを手動で伸縮させてダミーローラ60のローラ面とのクリアランスを設定値Cに調整する方法としては、例えば図16のように行うことができる。
【0051】
図16に示すように、遮風板22の本体部22Bと伸縮部22Aとは、遮風板幅方向に複数の連結部材23で連結される。この連結部材23は、拡大図に示すように、本体部22Bに固定されたL字部材の水平板23Aに貫通孔23Bが形成され、伸縮部22Aの上面から延びたボルト23Cが挿通される。また、ボルト23Cは、ボルト23Cに嵌合された一対のナット23D,23Dにより、水平板23Aに支持される。これにより、遮風板幅方向に配列された複数の連結部材23のナット23D,23Dを回転させる回転量を変えることで、水平板23Aに対してボルト23Cが押し引きされる距離が変わるので、伸縮部22Aを曲げ変形することができる。これにより、測定されたローラ幅方向の面形状に合わせて伸縮部幅方向のクリアランスを設定値Cに調整することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、近接部材として遮風板22の例で説明したが、これに限定されるものではない。例えば流延ダイ、減圧チャンバ、塗布ダイ、噴出ノズル等のように、ローラ面に近接配置するためにクリアランス調整が必要な全ての部材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のクリアランス調整方法を適用する装置の一例として溶融製膜装置を示した斜視図
【図2】溶融製膜装置の冷却ローラと遮風板との関係を示した概念図
【図3】本発明のクリアランス調整方法の第1の工程(オンラインでのローラ形状測定)を説明する説明図
【図4】ローラ形状測定装置の補正手段に搭載された検量線の説明図
【図5】ローラ形状測定装置の主として移動手段を説明する説明図
【図6】ローラ形状測定装置の別態様を示す斜視図
【図7】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、スライドバーの傾きを説明する説明図
【図8】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、変位計の下がり量を説明する説明図
【図9】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、変位計の出力値を説明する説明図
【図10】ローラ形状測定装置の撓み補正を説明する図で、クリアランス量の誤差影響を説明する説明図
【図11】実物模型装置を説明する説明図
【図12】本発明のクリアランス調整方法の第2の工程(オフラインでのローラ形状測定)を説明する説明図
【図13】本発明のクリアランス調整方法の第3の工程を説明する説明図
【図14】本発明のクリアランス調整方法の第4の工程を説明する説明図
【図15】本発明のクリアランス調整方法の第5の工程を説明する説明図
【図16】本発明のクリアランス調整方法の第4の工程を詳しく説明する説明図
【符号の説明】
【0054】
10…溶融製膜装置、12…ダイ、14…冷却ローラ、16…剥離ローラ、18…フィルム、20…樹脂膜、22…遮風板、24…装置フレーム、26…支柱、28…軸受、30…養生フィルム、32…支持部、34…ピン、36…L字状アーム、38…孔、40…ローラ形状測定装置、42…変位計、44…スライドバー、46…移動手段、48…補正手段、50…コンピュータ、52…測定ヘッド、54…LMガイド、56…孔、58…ダミーフレーム、60…ダミーローラ、62…実物模型装置,
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1m以上の金属ローラのローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままで該金属ローラの形状を測定するローラ形状測定装置であって、
金属のみに反応することにより前記ローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計と、
前記渦電流式変位計をスライドバーにスライド自在に支持して前記金属ローラの幅方向に移動させる移動手段と、
前記渦電流式変位計での測定値と前記ローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、前記渦電流式変位計で測定した測定値を前記検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とするローラ形状測定装置。
【請求項2】
前記ローラ形状測定装置は、
前記スライドバーの撓みを測定する撓み測定手段を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが前記補正手段の補正に加味されることを特徴とする請求項1のローラ形状測定装置。
【請求項3】
前記ローラ形状測定装置は、
前記ローラ面に対する前記渦電流式変位計の取り付け角度を調整する角度調整手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2のローラ形状測定装置。
【請求項4】
前記ローラ形状測定装置は、
前記スライドバーをスライドすると共に前記渦電流式変位計を保持する測定ヘッドが金属以外の材質で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のローラ形状測定装置。
【請求項5】
ローラ面が鏡面加工され直径1m以上の金属ローラと、前記ローラ面に近接配置されると共に伸縮部を有する近接部材とが装置フレームに支持された装置であって、前記ローラ面と前記近接部材とのクリアランスを調整する方法において、
前記装置フレームにおける前記近接部材の取付け位置に請求項1〜4の何れか1のローラ形状測定装置を取り付けて、前記ローラ面に養生フィルムを被覆したままで金属ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する第1の工程と、
前記装置フレームのダミーフレームに前記金属ローラのダミーローラが設けられた実物模型装置を用いて、該実物模型装置における前記近接部材の取付け位置に、前記オンライン測定で使用したローラ形状測定装置を取り付けて、前記ダミーローラ幅方向の形状をオフライン上で測定する第2の工程と、
前記オンライン測定でのローラ形状測定値に対する前記オフライン測定でのローラ形状測定値の誤差を検出する第3の工程と、
前記実物模型装置から前記ローラ形状測定装置を取り外すと共に前記近接部材を取り付けて、前記検出した誤差を考慮しながら前記近接部材の伸縮部を伸縮させて前記ダミーローラとのクリアランスを設定値に調整する第4の工程と、
前記設定値に調整された近接部材を前記実物模型装置から取り外してオンライン上の前記装置フレームに取り付ける第5の工程と、から成り、
前記金属ローラに被覆されている前記養生フィルムは、前記第1の工程後から前記第5の工程後までの何れかのときに剥離することを特徴とするクリアランス調整方法。
【請求項1】
直径が1m以上の金属ローラのローラ面に樹脂製の養生フィルムを被覆したままで該金属ローラの形状を測定するローラ形状測定装置であって、
金属のみに反応することにより前記ローラ面までの距離を測定する渦電流式変位計と、
前記渦電流式変位計をスライドバーにスライド自在に支持して前記金属ローラの幅方向に移動させる移動手段と、
前記渦電流式変位計での測定値と前記ローラ面までの実測距離との関係を予め求めた検量線データを有し、前記渦電流式変位計で測定した測定値を前記検量線データに基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とするローラ形状測定装置。
【請求項2】
前記ローラ形状測定装置は、
前記スライドバーの撓みを測定する撓み測定手段を備え、該撓み測定手段で測定した測定データが前記補正手段の補正に加味されることを特徴とする請求項1のローラ形状測定装置。
【請求項3】
前記ローラ形状測定装置は、
前記ローラ面に対する前記渦電流式変位計の取り付け角度を調整する角度調整手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2のローラ形状測定装置。
【請求項4】
前記ローラ形状測定装置は、
前記スライドバーをスライドすると共に前記渦電流式変位計を保持する測定ヘッドが金属以外の材質で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のローラ形状測定装置。
【請求項5】
ローラ面が鏡面加工され直径1m以上の金属ローラと、前記ローラ面に近接配置されると共に伸縮部を有する近接部材とが装置フレームに支持された装置であって、前記ローラ面と前記近接部材とのクリアランスを調整する方法において、
前記装置フレームにおける前記近接部材の取付け位置に請求項1〜4の何れか1のローラ形状測定装置を取り付けて、前記ローラ面に養生フィルムを被覆したままで金属ローラ幅方向の形状をオンライン上で測定する第1の工程と、
前記装置フレームのダミーフレームに前記金属ローラのダミーローラが設けられた実物模型装置を用いて、該実物模型装置における前記近接部材の取付け位置に、前記オンライン測定で使用したローラ形状測定装置を取り付けて、前記ダミーローラ幅方向の形状をオフライン上で測定する第2の工程と、
前記オンライン測定でのローラ形状測定値に対する前記オフライン測定でのローラ形状測定値の誤差を検出する第3の工程と、
前記実物模型装置から前記ローラ形状測定装置を取り外すと共に前記近接部材を取り付けて、前記検出した誤差を考慮しながら前記近接部材の伸縮部を伸縮させて前記ダミーローラとのクリアランスを設定値に調整する第4の工程と、
前記設定値に調整された近接部材を前記実物模型装置から取り外してオンライン上の前記装置フレームに取り付ける第5の工程と、から成り、
前記金属ローラに被覆されている前記養生フィルムは、前記第1の工程後から前記第5の工程後までの何れかのときに剥離することを特徴とするクリアランス調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−85267(P2010−85267A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255227(P2008−255227)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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