説明

ワイヤハーネス固定用クリップ

【課題】 製造コスト及び施工時間の増大を招くことなく取付部の縁部へのワイヤハーネスの干渉を確実に防止することができるワイヤハーネス固定用クリップを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する板状部材からなる干渉防止部材25を、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス11に沿って伸び且つ取付部13へのクリップ本体16の結合状態でワイヤハーネス11及び取付部13間に配置されるように、インシュロック帯17の帯部18に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられた取付部にワイヤハーネスを固定するためのワイヤハーネス固定用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車体の強度を高めるための骨格部材であるステアリングメンバーに設けられた板状の取付部に、車両の例えばエンジンの点火装置に接続されるワイヤハーネスを固定するためのワイヤハーネス固定用クリップが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このワイヤハーネス固定用クリップは、ワイヤハーネスを保持する環状の保持部と、保持部に設けられたクリップ本体とを備える。ワイヤハーネスを取付部に固定する際、ワイヤハーネスを保持部に保持した状態で、クリップ本体を取付部に結合させる。これにより、ワイヤハーネスがワイヤハーネス固定用クリップを介して取付部に固定される。
【0004】
しかしながら、取付部に固定されたワイヤハーネスが、例えばその配線経路に応じて取付部へ向けて曲がり、取付部の縁部に干渉することがある。このため、例えば車両の走行時に与えられる振動によりワイヤハーネスが取付部の縁部に繰り返し擦られると、ワイヤハーネスと取付部の縁部との間に生じる摩擦力によりワイヤハーネスが破損してしまう。
【0005】
そこで、ワイヤハーネスが取付部の縁部に干渉することを防止するために、ワイヤハーネス固定用クリップとは別に、ワイヤハーネスを保護するための専用の保護部材を、ワイヤハーネスに取り付けることが考えられる。これによれば、保護部材の保護作用により、取付部へ向けて曲がったワイヤハーネスが取付部の縁部に干渉することが防止されるので、取付部の縁部への干渉によるワイヤハーネスの破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2000−115964号(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ワイヤハーネスが取付部の縁部に干渉することを防止するために、ワイヤハーネスに専用の前記保護部材をワイヤハーネス固定用クリップとは別に取り付ける必要があるため、部品点数及び施工工数が増加し、製造コスト及び施工時間の増大を招く。
【0007】
そこで、本発明の目的は、製造コスト及び施工時間の増大を招くことなく取付部の縁部へのワイヤハーネスの干渉を防止することができるワイヤハーネス固定用クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車体に設けられた取付部に、車両に搭載される電気機器に接続されるワイヤハーネスを固定するためのワイヤハーネス固定用クリップであって、前記ワイヤハーネスを保持するための環状の保持部と、該保持部に設けられ、前記取付部に結合されるクリップ本体とを備え、前記保持部又は前記クリップ本体には、前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスが前記取付部の縁部に干渉することを防止するための干渉防止部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記干渉防止部材は、可撓性を有する板状部材からなり、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスに沿って伸び且つ前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で前記ワイヤハーネス及び前記取付部間に配置されるように、前記保持部に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記取付部は、板状をなしており、前記クリップ本体は、前記保持部の外周面に設けられ前記保持部内への前記ワイヤハーネスの挿入方向に沿って伸びる板状の基部と、該基部から前記保持部の外方へ向けて立ち上がり、前記取付部に形成された開口を経て前記取付部を貫通する柱部と、該柱部の先端から前記取付部の前記保持部と向き合う面と反対側に位置する面における前記開口の縁部へ向けて前記柱部とのそれぞれの間隔を漸増させて伸び、先端で前記開口の前記縁部に係止される弾性変形可能な一対の係止爪とを有し、前記干渉防止部材は、可撓性を有する板状部材からなり、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスに沿って伸び且つ前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で前記ワイヤハーネス及び前記取付部間に配置されるように、前記基部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の発明において、前記クリップ本体には、前記保持部に保持されたワイヤハーネスを前記取付部に仮固定すべく前記取付部に係止可能なフックが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の構成によれば、ワイヤハーネスを保持するための保持部、又は、取付部に結合されるクリップ本体に、保持部に保持されたワイヤハーネスが取付部へのクリップ本体の結合状態で取付部の縁部に干渉することを防止するための干渉防止部材が設けられていることから、配線経路に応じてワイヤハーネスが取付部へ向けてたとえ曲がったとしても、ワイヤハーネスが取付部の縁部に干渉することが防止される。従って、ワイヤハーネスが取付部の縁部に干渉することによる従来のようなワイヤハーネスの破損を防止することができる。
【0013】
また、干渉防止部材がワイヤハーネス固定用クリップの保持部又はクリップ本体に設けられていることから、取付部の縁部へのワイヤハーネスの干渉を防止するために、従来のような保護部材をワイヤハーネス固定用クリップとは別にワイヤハーネスに取り付ける必要はないので、従来に比べて部品点数及び施工工数の削減を図ることができ、従って、製造コスト及び施工時間の増大を確実に抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の構成によれば、干渉防止部材を、可撓性を有する板状部材で構成することができ、保持部に保持されたワイヤハーネスに沿って伸び且つ取付部へのクリップ本体の結合状態でワイヤハーネス及び取付部間に配置されるように、保持部に形成することができる。
【0015】
請求項3に記載の構成によれば、干渉防止部材を、可撓性を有する板状部材で構成することができ、保持部に保持されたワイヤハーネスに沿って伸び且つ取付部へのクリップ本体の結合状態でワイヤハーネス及び取付部間に配置されるように、クリップ本体の基部に形成することができる。
【0016】
請求項4に記載の構成によれば、クリップ本体に、保持部に保持されたワイヤハーネスを取付部に仮固定すべく取付部に係止可能なフックが形成されていることから、例えば車両の製造工場内で、ワイヤハーネスが接続される電気機器が車両に搭載される前にワイヤハーネスを取付部に仮固定しておく場合、ワイヤハーネス固定用クリップとは別に仮固定用の専用の部材を用いることなくワイヤハーネスを取付部に仮固定することができる。これにより、ワイヤハーネス固定用クリップとは別に仮固定用の専用の部材を製造することによる製造コストの増大を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、車両の前部に設けられた図示しないステアリングメンバーに、車両の図示しないエンジンの点火装置に接続されるワイヤハーネス10を固定するために、本発明に係るワイヤハーネス固定用クリップ11を適用した例を示す。前記ステアリングメンバーは、従来よく知られているように、車幅方向に沿って伸び、車両の前部の剛性を高めるための骨格部材である。
【0019】
前記ステアリングメンバーには、ワイヤハーネス固定用クリップ11を取り付けるための取付部13が設けられている。取付部13は、板状をなしており、図示の例では、前記ステアリングメンバーに該ステアリングメンバーから車両前方へ向けて突出して設けられている。取付部13材には、該取付部の板厚方向に貫通して形成された開口14が形成されている。
【0020】
本発明に係るワイヤハーネス固定用クリップ11は、図1に示すように、ワイヤハーネス10を保持するための環状の保持部15と、該保持部に設けられ、取付部13に結合されるクリップ本体16とを備える。
【0021】
保持部15は、図示の例では、インシュロック帯17で構成されている。インシュロック帯17は、従来よく知られているように、ポリプロピレンのような弾性樹脂材で成形された結束部材であり、細長い帯部18と、該帯部の一端18aに設けられ、帯部18の挿通を許す筒状の挿通部19とを有する。帯部18の一方の面には、複数の突起20が帯部18の長手方向に沿って形成されている。挿通部19は、該挿通部内に帯部18が挿通したときに、該帯部の各突起20に係止可能な図示しない係止部を有する。前記係止部は、挿通部19内への帯部18の挿入方向への移動を許し、挿入方向と反対方向への帯部18の移動を阻止する係止機能を有する。インシュロック帯17は、その各挿通部19内に帯部18を挿通することにより環状をなし、その内方にワイヤハーネス10を挿通した状態で該ワイヤハーネスへの締め付け量が調節可能となる。
【0022】
クリップ本体16は、インシュロック帯17の帯部18に設けられた板状の基部21と、該基部から環状をなすインシュロック帯17の外方へ向けて立ち上がる柱部22とを備える。
【0023】
基部21は、図示の例では、平面が長方形をなしており、その長手方向がインシュロック帯17の帯部18の長手方向に直交するように該帯部に設けられている。すなわち、基部21は、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10の伸長方向に沿って伸びるように配置されている。基部21の長手方向で互いに対向する一対の縁部21aには、それぞれ弾性変形可能な板ばね部23が設けられている。
【0024】
各板ばね部23は、図示の例では、基部21と一体に形成されており、基部21の各縁部21aから柱部22の立ち上がり方向へ互いに間隔を漸増させて伸びる。各板ばね部23は、取付部13へのクリップ本体16の結合状態で、それぞれの先端23aが取付部13に当接し且つ該取付部へ向けて互いの間隔が広がるように弾性変形している(図2参照。)。
【0025】
クリップ本体16の柱部22は、取付部13をその一側(図1で見て、取付部13の上側である。)から他側へ開口14を経て貫通可能な長さを有する。柱部22は、図示の例では、基部21と一体に形成されている。
【0026】
更に、クリップ本体16は、一対の弾性変形可能な係止爪24を備える。各係止爪24は、図3に示すように、柱部22の先端22aから、取付部13の開口14の縁部14aへ向けて互いに間隔を漸増させて伸びる。各係止爪24は、図示の例では、それぞれ柱部22と一体に形成されている。クリップ本体16は、各係止爪24がその先端24aで開口14の縁部14aに取付部13の前記他側から係止されることにより、取付部13に結合される。
【0027】
ワイヤハーネス10を取付部13に固定する際、インシュロック帯17の帯部18でワイヤハーネス10を締め付けることにより該ワイヤハーネスを保持した後、クリップ本体16の各係止爪24を取付部13の開口14の縁部14aに押し付けるようにクリップ本体16を開口14内に押し込む。このとき、各係止爪24は、前記したように、それぞれ弾性変形可能であることから、開口14の縁部14aに押し付けられることにより、それぞれの先端24aが柱部22に近づくように撓む。これにより、各係止爪24は、クリップ本体16が開口14内に押し込まれるにしたがって、それぞれ開口14の縁部14aを乗り越えることができる。各係止爪24は、それぞれ開口14の縁部14aを乗り越えると、その弾性反力により無負荷の状態に戻り、それぞれの先端24aで開口14の縁部14aに取付部13の前記他側から係止される。これにより、クリップ本体16に開口14からの抜け出し方向へ向けて引っ張り力が作用したとき、各係止爪24が開口14の縁部14aに受け止められるので、開口14からのクリップ本体16の抜け出しが阻止される。
【0028】
これにより、ワイヤハーネス固定用クリップ11が取付部13に結合され、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10が、ワイヤハーネス固定用クリップ11を介して取付部13に固定される。
【0029】
クリップ本体16が取付部13に結合された状態では、前記したように、各板ばね部23が互いの間隔が取付部13へ向けて広がるように弾性変形していることから、柱部22には、各板ばね部23から柱部22を開口14から引き抜く方向にばね力が作用する。これにより、取付部13へのクリップ本体16の結合状態では、開口14の縁部14aは、各係止爪24と各板ばね部23との間で挟持されるので、クリップ本体16及び取付部13間のがたつきがより確実に防止される。
【0030】
本発明に係るワイヤハーネス固定用クリップ11は、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10が取付部13へのクリップ本体16の結合状態で取付部13の縁部13aに干渉することを防止するための干渉防止部材25を備える。
【0031】
干渉防止部材25は、図1及び図2に示すように、平面が長方形をなし、可撓性を有する板状部材からなる。干渉防止部材25の中央部には、クリップ本体16の基部21及び各板ばね部23の挿通を許す開口26が干渉防止部材25の長手方向に沿って伸びるように形成されている。干渉防止部材25は、その長手方向を基部21の長手方向に一致させて且つその開口26から基部21及び各板ばね部23が露出するように基部21及び各板ばね部23を取り巻いて配置されている。これにより、干渉防止部材25は、取付部13へのワイヤハーネス10の固定状態では、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10と取付部13との間でワイヤハーネス10の伸長方向に沿って伸びるように配置される。干渉防止部材25の長さは、取付部13へのクリップ本体16の結合状態で、その両端部25aが取付部13の両縁部13aから取付部13の外方へ突出する長さに設定されている。干渉防止部材25は、図示の例では、インシュロック帯17の帯部18に該帯部と一体に形成されている。
【0032】
例えばワイヤハーネス10の配線経路に応じて、図3に示すように、ワイヤハーネス10がインシュロック帯17に保持された状態で取付部13へ向けて曲がった場合、干渉防止部材25が、前記したように、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10と取付部13との間でワイヤハーネス10の伸長方向に沿って伸びていることから、ワイヤハーネス10が取付部13へ向けて曲がることによりワイヤハーネス10から受ける取付部13へ向けての押圧力によって、干渉防止部材25が取付部13へ向けて撓み変形する。このとき、前記したように、干渉防止部材25に形成された開口26が基部21及び各板ばね部23の挿通を許す大きさを有することから、取付部13へ向けての干渉防止部材25の撓み変形が基部21及び各板ばね部23により妨げられることはない。また、干渉防止部材25の長さが、前記したように、両端部25aが取付部13の両縁部13aから突出する長さに設定されていることから、干渉防止部材25が取付部13へ向けて撓み変形することにより、取付部13の縁部13aが部分的に干渉防止部材25の端部25aで覆われる。これにより、取付部13へ向けて曲がったワイヤハーネス10が取付部13の縁部13aに干渉することが防止される。
【0033】
このように、ワイヤハーネス10を保持するためのインシュロック帯17の帯部18に設けられた干渉防止部材25により、ワイヤハーネス10が取付部13の縁部13aに干渉することが防止されるので、例えばワイヤハーネス10の配線経路に応じてワイヤハーネス10が取付部13へ向けてたとえ曲がったとしても、ワイヤハーネス10が取付部13の縁部13aに干渉することを防止することができる。
【0034】
従って、ワイヤハーネス10が取付部13の縁部13aに干渉することによる従来のようなワイヤハーネス10の破損を防止することができる。
【0035】
また、前記したように、干渉防止部材25がインシュロック帯17の帯部18に設けられていることから、取付部13の縁部13aへのワイヤハーネス10の干渉を防止するために、従来のような保護部材をワイヤハーネス固定用クリップ11とは別にワイヤハーネス10に取り付ける必要はないので、従来に比べて部品点数及び施工工数の削減を図ることができ、従って、製造コスト及び施工時間の増大を確実に抑制することができる。
【0036】
本実施例では、干渉防止部材25がインシュロック帯17の帯部18に設けられた例を示したが、これに代えて、例えば図4に示すように、干渉防止部材25をクリップ本体16の基部21に設けられた一対の板ばね部23に設けることができる。
【0037】
図4に示す例では、干渉防止部材25は、各板ばね部23の先端23aに設けられた一対の羽部材27を備える。各羽部材27は、各板ばね部23の先端23aの中央部分から互いに離れる方向へ基部21に平行に伸びる伸長部28と、該伸長部の先端28aに設けられ、基部21の長手方向に直交する方向へ伸び且つ基部21に平行に配置される板状の板部29とを有し、それぞれ伸長部28及び板部29で全体的にT字状をなしている。各伸長部28の長さ寸法及び各板部29の幅寸法は、取付部13へのクリップ本体16の結合状態で、各板部29が取付部13の両縁部13aから全体的に又は部分的に突出するように、それぞれ設定されている。
【0038】
図4に示す構成によれば、ワイヤハーネス10がインシュロック帯17に保持された状態で取付部13へ向けて曲がった場合、各羽部材27の伸長部28がワイヤハーネス10の曲げに応じて取付部13へ向けて撓み変形する。これにより、取付部13の縁部13aが部分的に羽部材27の板部29で覆われるので、ワイヤハーネス10が取付部13の縁部13aに干渉することが防止される。
【0039】
また、例えば図4に示す構成において、図5に示すように、基部21の前記各縁部21aとは異なる一対の縁部のうち一方の縁部21bに、ワイヤハーネス10を取付部13に仮固定するためのフック30を設けることできる。フック30は、インシュロック帯17内へのワイヤハーネス10の挿入及び取付部13へのクリップ本体16の結合を妨げることがないように、基部21の前記一方の縁部21bに設けられている。フック30は、図示の例では、前記一方の縁部21bから突出する突出部31と、該突出部の先端31aに形成された係止部32とを有する。係止部32は、取付部13の開口14の縁部14aに係止可能である。
【0040】
例えば車両の製造工場内で、ワイヤハーネス10が接続される前記点火装置が車両に搭載される前に、車両に設けられた図示しない部品にワイヤハーネス10が接触したり引っ掛かったりすることによるワイヤハーネス10の損傷や断線等を防止するために、ワイヤハーネス10を取付部13に仮固定しておく必要がある。
【0041】
このため、従来では、図示しないが、ワイヤハーネス10を袋に詰めたり、ワイヤハーネス10にバンド部材を巻き、該バンド部材にフック部材を引っ掛けることにより、該フック部材でワイヤハーネス10をステアリングメンバーに吊るしたりしていたが、ワイヤハーネス固定用クリップ11とは別に、前記袋、前記バンド部材及び前記フック部材のような仮固定用の専用部材を製造する必要があるため、製造コストの増大を招く。
【0042】
これに対し、図5に示す例によれば、前記したように、取付部13へのワイヤハーネス10の仮固定用のフックがクリップ本体16の基部21に形成されていることから、ワイヤハーネス固定用クリップ11とは別に従来のような仮固定用の専用部材を用いることなく、インシュロック帯17に保持されたワイヤハーネス10を取付部13に仮固定することができる。これにより、ワイヤハーネス固定用クリップ11とは別に仮固定用の専用の部材を製造することによる製造コストの増大を確実に抑制することができる。図5に示す例では、フック30が基部21に設けられた例を示したが、これに代えて、クリップ本体16の基部21以外の部分にフック30を設けることができる。
【0043】
また、本実施例では、ワイヤハーネス10を保持するための保持部15にインシュロック帯17を用いた例を示したが、これに代えて、例えばウオームギア方式で内径が調整可能なホースバンド状の結束部材を保持部に用いることができる。
【0044】
更に、本実施例では、前記エンジンの点火装置に接続されるワイヤハーネス10を前記ステアリングメンバーに設けられた取付部13に固定するのに本発明を適用した例を示したが、これに代えて、ステアリングメンバー以外の骨格部材に設けられた取付部、または、骨格部材以外の車体構成部材に設けられた取付部に、前記エンジンの点火装置以外の車載機器に接続されるワイヤハーネスを固定するのに本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】

【図1】本発明に係るワイヤハーネス固定用クリップを概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るワイヤハーネス固定用クリップを概略的に示す平面図である。
【図3】インシュロック帯に保持されたワイヤハーネスが曲がった状態を概略的に示す縦断面図である。
【図4】他の実施例を概略的に示す平面図である。
【図5】基部に仮固定用のフックが設けられた例を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
11 ワイヤハーネス固定用クリップ
10 ワイヤハーネス
13 取付部
15 保持部(インシュロック帯)
16 クリップ本体
14 開口
18 帯部
19 挿通部
21 基部
22 柱部
23 板ばね部
24 係止爪
25 干渉防止部材
30フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた取付部に、車両に搭載される電気機器に接続されるワイヤハーネスを固定するためのワイヤハーネス固定用クリップであって、前記ワイヤハーネスを保持するための環状の保持部と、該保持部に設けられ、前記取付部に結合されるクリップ本体とを備え、前記保持部又は前記クリップ本体には、前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスが前記取付部の縁部に干渉することを防止するための干渉防止部材が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス固定用クリップ。
【請求項2】
前記干渉防止部材は、可撓性を有する板状部材からなり、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスに沿って伸び且つ前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で前記ワイヤハーネス及び前記取付部間に配置されるように、前記保持部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス固定用クリップ。
【請求項3】
前記取付部は、板状をなしており、前記クリップ本体は、前記保持部の外周面に設けられ前記保持部内への前記ワイヤハーネスの挿入方向に沿って伸びる板状の基部と、該基部から前記保持部の外方へ向けて立ち上がり、前記取付部に形成された開口を経て前記取付部を貫通する柱部と、該柱部の先端から前記取付部の前記保持部と向き合う面と反対側に位置する面における前記開口の縁部へ向けて前記柱部とのそれぞれの間隔を漸増させて伸び、先端で前記開口の前記縁部に係止される弾性変形可能な一対の係止爪とを有し、前記干渉防止部材は、可撓性を有する板状部材からなり、前記保持部に保持された前記ワイヤハーネスに沿って伸び且つ前記取付部への前記クリップ本体の結合状態で前記ワイヤハーネス及び前記取付部間に配置されるように、前記基部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス固定用クリップ。
【請求項4】
前記クリップ本体には、前記保持部に保持されたワイヤハーネスを前記取付部に仮固定すべく前記取付部に係止可能なフックが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のワイヤハーネス固定用クリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−325283(P2006−325283A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143480(P2005−143480)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】