説明

ワイヤハーネス用バンド

【課題】ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によって構造物への固定に支障が生じることを防止することができ、しかも、前記載置板部の重量化を軽減することもできるワイヤハーネス用バンドを提供すること。
【解決手段】表面にワイヤハーネス103が載置される載置板部11と、ワイヤハーネス103の上に被さる押さえ部材によってワイヤハーネス103を載置板部11に固定する固定手段34と、を備え、載置板部11の中央には、ワイヤハーネス103を押さえ部材側に付勢するばね板部41を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等におけるワイヤハーネスの配索経路上の構造物にワイヤハーネスを固定するワイヤハーネス用バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
図46〜図49は、車両等におけるワイヤハーネスの配索経路上の構造物にワイヤハーネスを固定するワイヤハーネス用バンドの従来例を示したものである。
【0003】
このワイヤハーネス用バンド101により構造物に固定されるワイヤハーネス103は、図46に示すように、複数本の電線104の束の外周を外装材105で覆った構造になっている。
【0004】
図示のワイヤハーネス用バンド101は、載置板部111と、該載置板部111の一端側に延設される結束用バンド部121と、載置板部111の他端側に延設されるバンド係止部131と、載置板部111の裏面に突設されるクリップ部141(図46参照)と、を備えている。
【0005】
図示のワイヤハーネス用バンド101において、載置板部111と結束用バンド部121とバンド係止部131は下記特許文献1に開示されている結束バンドと同じ構成である。また、ワイヤハーネス用バンド101のクリップ部141は、下記特許文献2におけるアンカー突起と同様の構造である。
【0006】
次に、上記載置板部111、結束用バンド部121、バンド係止部131、クリップ部141の構造を更に詳しく説明する。
【0007】
載置板部111は、ワイヤハーネス103が載置される部位で、平板状に形成されている。
【0008】
結束用バンド部121は、載置板部111に載置されたワイヤハーネス103の外周に巻き付け可能に、載置板部111の一端側からワイヤハーネス103の軸線と直交する方向(図46の矢印A方向)に延出している。また、結束用バンド部121の片面(ワイヤハーネス103に接触する側とは逆側の面)には、当該結束用バンド部121の延出方向(図46の矢印A方向)に所定の間隔で、複数の係合溝122が形成されている。
【0009】
バンド係止部131は、載置板部111の他端側に一体形成されている。このバンド係止部131は、結束用バンド部121を挿通する挿通穴132と、該挿通穴132近傍に設けられ前記係合溝122に係合して、挿通穴132に挿通した結束用バンド部121の戻る方向への移動を規制する図示せぬ係止爪と、を有して、載置板部111の他端側に一体形成されている。
【0010】
クリップ部141は、載置板部111の裏面に突設されており、ワイヤハーネス103の配索経路の構造物151上の取付孔152に嵌合することで、載置板部111を構造物151に連結する。なお、図46において載置板部111の裏面(図では上面)にあるクリップ部141は図示を省略されている。
【0011】
以上のワイヤハーネス用バンド101によってワイヤハーネス103を構造物151に固定する場合の操作は、次のような手順になる。
【0012】
まず、図47に示すように、ワイヤハーネス用バンド101の載置板部111にワイヤハーネス103を載せた後、結束用バンド部121をワイヤハーネス103の外周に巻き付ける。そして、図48に示すように、結束用バンド部121の先端を挿通穴132に挿入し、図49に示すように、結束用バンド部121がワイヤハーネス103の外周をしっかりと締め付けるまで、結束用バンド部121の先端を引っ張ってワイヤハーネス103を載置板部111に固定する。その後、クリップ部141を構造物151の取付孔152に嵌合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3538688号公報
【特許文献2】特開平9−250515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで近年、車載の電子部品の増加に伴い、ワイヤハーネス103に収容する電線104の数量が増加しており、配索性を高めるため、図48に示したようにワイヤハーネス103の断面形状を楕円状に形成する場合がある。
【0015】
従来のワイヤハーネス用バンド101では、載置板部111が平板状のため、載置板部111の表面112に楕円断面のワイヤハーネス103が載置された状態では、図39に示すように、ワイヤハーネス103の湾曲している両側側で、載置板部111の表面112との間に隙間107が形成される。
【0016】
また、楕円断面のワイヤハーネス103を載せるために、載置板部111のワイヤハーネス103の軸線と直交する方向における長さが大きく設定されており、載置板部111は従来よりも曲げ剛性が低くなる傾向にある。
【0017】
また、結束用バンド部121による締め付けを行うと、載置板部111の両端が、結束用バンド部121の引っ張りによって互いに近づく方向に引っ張られる。
【0018】
そして、従来のワイヤハーネス用バンド101では、載置板部111や結束用バンド部121のワイヤハーネス103に接触する面が平滑面になっていて、ワイヤハーネス103が滑り易いため、しっかりとワイヤハーネス103を固定するには、結束用バンド部121をより強固に締め付けする必要もあった。
【0019】
そのため、結束用バンド部121を締め付けていくと、図49に矢印Bで示すように、結束用バンド部121による引張力によって、載置板部111がワイヤハーネス103の外周の湾曲に沿って撓むという問題が発生する。
【0020】
この載置板部111の撓みは、クリップ部141に歪みを発生させ、構造物への固定に支障を招くおそれがあった。
【0021】
更に、従来のワイヤハーネス用バンド101では、固定するワイヤハーネス103の外径が小さくなるほど、結束用バンド部121による締め付け径を縮めないと、ワイヤハーネス103と結束用バンド部121との接触圧が不足し、ワイヤハーネス103をしっかりと固定できなくなるおそれがある。そして、結束用バンド部121による締め付け径を縮めようとすると、載置板部111の両端を互いに近づく方向に引っ張る力(曲げ力)が増加する。そのため、従来のワイヤハーネス用バンド101では、固定するワイヤハーネス103の外径が小さくなるほど、載置板部111が撓むという上記の問題が発生し易い。
【0022】
上記のような問題を回避する対策として、載置板部111の板厚を、結束用バンド部121による引っ張りで撓まないように、全体的に増大させて、載置板部111の曲げ剛性を高める方法があるが、このような方法では、載置板部111にかなりの板厚増が必要になり、載置板部111の重量化を招くという問題が発生する。
【0023】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ワイヤハーネスの外径の大小に拘わらず、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを抑止して、ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によって構造物への固定に支障が生じることを防止することができ、しかも、前記載置板部の板厚増による重量化を軽減することもできるワイヤハーネス用バンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)表面にワイヤハーネスが載置される平板状の載置板部と、前記載置板部に載置されたワイヤハーネスの上に被さる押さえ部材によって前記ワイヤハーネスを前記載置板部に押圧固定する固定手段と、を備え、
前記載置板部の中央には、載置された前記ワイヤハーネスを前記押さえ部材側に付勢するばね板部が設けられたことを特徴とするワイヤハーネス用バンド。
【0025】
(2)前記固定手段が、
前記載置板部に載置されたワイヤハーネスの外周に巻き付け可能に前記載置板部の一端側からワイヤハーネスの軸線と直交する方向に延出すると共に、片面には前記延出方向に所定の間隔で複数の係合溝が形成されて前記押さえ部材として機能する結束用バンドと、
前記結束用バンド部を挿通する挿通穴と、該挿通穴の近傍に設けられ前記係合溝に係合して挿通した前記結束用バンドの戻る方向への移動を係止する係止爪と、を有して前記載置板部の他端側に一体形成されたバンド係止部と、
を備えたことを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0026】
(3)前記結束用バンドと前記バンド係止部とを備える前記固定手段が前記ワイヤハーネスの軸方向に位置をずらして複数組設けられ、且つ、前記ワイヤハーネスの軸方向に隣接する前記固定手段相互では、前記載置板部上での前記結束用バンド及び前記バンド係止部の装備位置が、逆側に設定されていることを特徴とする上記(2)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0027】
(4)前記ワイヤハーネスの軸方向に位置をずらして装備された各固定手段毎に個別に、前記ばね板部が設けられたことを特徴とする上記(3)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0028】
(5)前記固定手段として、前記載置板部の両端にそれぞれ一体形成されると共に片面には前記延出方向に所定の間隔で複数の係合溝が形成された一対の結合用バンドと、前記押さえ部材として前記載置板部に略平行に対向配置される略平板状のカバー板と、前記一対の結合用バンドに対応して前記カバー板の両端にそれぞれ一体形成された一対のバンド係止部とを備え、
前記バンド係止部は、前記結合用バンドを挿通する挿通穴と、該挿通穴近傍に設けられ前記係合溝に係合して前記挿通孔に挿通した前記結合用バンドの戻る方向への移動を規制する係止爪と、を有する
ことを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0029】
(6)前記ワイヤハーネスに接触する前記載置板部の表面、又は前記押さえ部材の表面の少なくとも一方の表面には、前記ワイヤハーネスの外周面に当接する滑り止め突起が設けられることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1つに記載のワイヤハーネス用バンド。
【0030】
(7)前記ワイヤハーネスに接触する前記ばね板部の表面にも、前記滑り止め突起が設けられることを特徴とする上記(6)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0031】
(8)前記ばね板部が、前記ワイヤハーネスの軸線方向に沿って延在するアーチ状であることを特徴とする上記(7)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0032】
(9)前記載置板部の表面には、該表面に載置されるワイヤハーネスの外周面の湾曲のために前記外周面と前記表面との間に形成される隙間を埋める周面支え隆起部が、前記ワイヤハーネスと前記表面とが線接触する載置中心線を挟む両側に、それぞれ設けられる
ことを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか1つに記載のワイヤハーネス用バンド。
【0033】
(10)前記周面支え隆起部が、前記載置中心線方向に離間した前記載置板部の両端縁において前記載置中心線に直交する方向に延在し、上面が前記ワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲した周面支えリブであり、
前記押さえ部材は、前記載置中心線方向の寸法が、前記載置板部の両端縁の一対の周面支えリブが画成する溝の幅よりも小さく設定されていることを特徴とする上記(9)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0034】
(11)前記周面支え隆起部が、前記載置中心線に直交する方向に間隔をあけて配置される複数の周面支え突起から構成され、これら複数の周面支え突起が前記滑り止め突起を兼ねていることを特徴とする上記(9)に記載のワイヤハーネス用バンド。
【0035】
上記(1)の構成によれば、押さえ部材によって載置板部に固定されるワイヤハーネスは、載置板部上のばね板部が弾性変形する程度まで結合用バンドを締めれば、載置板部に形成されたばね板部による弾性力で、押さえ部材に接触させられる。そのため、固定されるワイヤハーネスの外径が小さくなっても、押さえ部材による締め付け径は、ばね板部に弾性変形が発生する程度までに抑えた状態で、ワイヤハーネスと押さえ部材との間に一定以上の接触圧を確保して、ワイヤハーネスをしっかりと固定することができる。
【0036】
従って、ワイヤハーネスの固定時に、ワイヤハーネスの外径の大小に拘わらず、押さえ部材による締め付けを緩和して、押さえ部材を介して載置板部に作用する荷重を低減させることができ、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0037】
そのため、クリップ部を有する場合には、ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によるクリップ部の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0038】
また、前記載置板部の撓みの抑止を、載置板部にばね板部を装備することにより達成していて、載置板部の板厚増加に頼っていないため、前記載置板部の重量化を軽減することもできる。
【0039】
上記(2)の構成によれば、載置板部に載置したワイヤハーネスを固定する際には、ワイヤハーネスの外周に被せた結合用バンドの先端をバンド係止部に挿通させた後、バンド係止部から突出した結合用バンドの先端を引っ張って、結合用バンドによる締め付けを行う。その際、載置板部上のばね板部が弾性変形する程度まで結合用バンドを締めれば、結合用バンドとワイヤハーネスとの接触圧がばね板部の付勢力で一定以上になり、それ以上結合用バンドを締め付ける必要がない。
【0040】
そのため、結合用バンドの締め付けを緩和して、結合用バンドを介して載置板部に作用する荷重を低減させることができ、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0041】
従って、ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によるクリップ部の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0042】
また、前記載置板部の撓みの抑止を、載置板部にばね板部を装備することにより達成していて、載置板部の板厚増加に頼っていないため、前記載置板部の重量化を軽減することもできる。
【0043】
上記(3)の構成によれば、固定手段によるワイヤハーネスの固定箇所が、ワイヤハーネスの軸方向に離間した複数箇所に備えられたことによって、ワイヤハーネスの軸方向への移動を規制する性能が向上し、ワイヤハーネスをより強固に固定することが可能になる。
【0044】
また、ワイヤハーネスの軸方向に隣接する固定手段相互では、載置板部上での結束用バンド及びバンド係止部の装備位置が逆側に設定されているため、複数の結束用バンドが載置板部の一端側に揃えられる場合と比較すると、載置板部における重心の偏りを防止することができ、ワイヤハーネス用バンドをワイヤハーネスに装着する際の取り扱い性を向上させることができる。
【0045】
上記(4)の構成によれば、複数の各固定手段毎に個別にばね板部が設けられているため、各固定手段において、確実にばね板部の作用が得られ、ワイヤハーネスの固定強度を確実に向上させることができる。
【0046】
上記(5)の構成によれば、ワイヤハーネス用バンドは、両端に結合用バンドを有した載置板部と、両端にバンド係止部を有したカバー板とに2分割された構成である。そのため、ワイヤハーネスを固定する際には、載置板部とカバー板とでワイヤハーネスを挟んだ状態にした後、載置板部の両端の結合用バンドを対向するバンド係止部に係止させると、ワイヤハーネスを結束した状態になる。
【0047】
上記(5)の構成のワイヤハーネス用バンドによりワイヤハーネスを結束した状態では、載置板部の両端には、ワイヤハーネスを挟持する方向の曲げ荷重が作用する。しかし、その曲げ荷重の作用方向は載置板部とカバー板との対向方向であり、更に、ばね板部とカバー板との締め付けをそれほど強めなくとも、ばね板部の付勢力でワイヤハーネスに対する接触圧を一定以上にすることができる。そのため、載置板部の両端が結束バンドによって互いに近づく方向に引っ張られる従来の場合と比較すると、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0048】
従って、ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によるクリップ部の歪み(変形)によって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0049】
また、従来のワイヤハーネス用バンドと比較して撓みを抑止することができるため、撓み剛性の向上を目的として載置板部の板厚を増加させる場合でも、増加させる板厚を従来よりも低減させて、載置板部の板厚増による重量化を軽減することもできる。
【0050】
上記(6)の構成によれば、載置板部と押さえ部材とでワイヤハーネスを結束した状態では、載置板部又は押さえ部材の表面に装備されている滑り止め突起がワイヤハーネスの外周に当接して、ワイヤハーネスの移動を規制する。
【0051】
そのため、載置板部と押さえ部材がワイヤハーネスを締め付ける力(挟む力)をそれほど大きくしなくとも、ワイヤハーネスをしっかりと固定することができる。従って、載置板部と押さえ部材がワイヤハーネスを挟む力を抑えて、載置板部における撓みの発生を更に抑制することができる。
【0052】
また、滑り止め突起がワイヤハーネスの外周との摩擦力を高めるため、ワイヤハーネス用バンドによるワイヤハーネスの固定強度が向上し、より堅固にワイヤハーネスを配索経路に固定することが可能になる。
【0053】
上記(7)の構成によれば、ばね板部の表面に装備された滑り止め突起がワイヤハーネスの外周に当接することによって、ばね板部とワイヤハーネスとの間の滑りが防止される。そのため、ばね板部は、確実にワイヤハーネスを押さえ部材側に付勢することができ、ばね板部による付勢作用の信頼性を向上させることができる。
【0054】
上記(8)の構成によれば、結束しているワイヤハーネスに外部から軸方向の荷重が作用したとき、ワイヤハーネスが接触しているばね板部の湾曲形状が、ワイヤハーネスの軸方向への移動に伴い弾性変形することで、ワイヤハーネスの若干の移動を許容するため、ワイヤハーネスに無理な張力が作用することを防止することができる。
【0055】
また、ばね板部の湾曲形状の弾性変形によって、ワイヤハーネスを元の位置に戻す力が発生するため、ワイヤハーネスを元の位置に戻すことができ、結束しているワイヤハーネスに位置ずれが生じることを防止することができる。
【0056】
上記(9)の構成によれば、楕円断面のワイヤハーネスが載置板部に載置された場合に、ワイヤハーネスの外周面と載置板部の表面との間の隙間が、周面支え隆起部によって埋められる。そのため、ワイヤハーネスの結束を強めるべく、載置板部と押さえ部材との挟持圧を強めても、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを防止することができる。
【0057】
従って、載置板部の撓みの影響によって、クリップ部に歪み(変形)が生じることを防止することができ、クリップ部の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0058】
しかも、周面支え隆起部の装備は、載置板部の表面の一部でよく、載置板部の板厚を全体的に増加させる必要はない。従って、載置板部の板厚増による重量化を抑止することもできる。
【0059】
上記(10)の構成によれば、周面支え隆起部が載置板部上を載置中心線に直交する方向に延在するリブであるため、リブに直交する方向の荷重に対する曲げ剛性が高くなり、ワイヤハーネスの外周に沿う載置板部の撓みを防止する性能が高くなる。
【0060】
また、押さえ部材の載置中心線方向の寸法が、載置板部の両端縁の一対の周面支えリブが画成する溝の幅よりも小さく設定されているため、載置板部と押さえ部材とで挟持されるワイヤハーネスは、載置板部の両端縁の一対の周面支えリブが画成する溝上に位置する部位が、押さえ部材の押圧によって溝内に押し込まれるようになり、ワイヤハーネスをより強固に固定することが可能になる。
【0061】
上記(11)の構成によれば、ワイヤハーネスの外周面と載置板部の表面との間の隙間を埋める複数の周面支え隆起部が、ワイヤハーネスの移動を規制する滑り止め突起を兼ねているため、周面支え隆起部とは別に滑り止め突起を装備する必要がなくなり、載置板部の形状を単純化して、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によるワイヤハーネス用バンドによれば、ワイヤハーネスに対する載置板部と押さえ部材による締め付け径は、ばね板部に弾性変形が発生する程度までに抑えた状態で、ワイヤハーネスと押さえ部材との間に一定以上の接触圧を確保して、ワイヤハーネスをしっかりと固定することができる。
【0063】
従って、ワイヤハーネスの固定時に、ワイヤハーネスの外径の大小に拘わらず、押さえ部材による締め付けを緩和して、押さえ部材を介して載置板部に作用する荷重を低減させることができ、載置板部がワイヤハーネスの外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0064】
そのため、クリップ部を有する場合には、ワイヤハーネスが載置される載置板部の撓みの影響によるクリップ部の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0065】
また、前記載置板部の撓みの抑止を、載置板部にばね板部を装備することにより達成していて、載置板部の板厚増加に頼っていないため、前記載置板部の重量化を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第1実施形態の平面図である。
【図2】図1のC矢視図である。
【図3】図1に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図4】第1実施形態のワイヤハーネス用バンドで固定するワイヤハーネスの横断面図である。
【図5】第1実施形態のワイヤハーネス用バンドの構造物へ固定する前の状態の説明図である。
【図6】(a)は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図7】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第2実施形態の平面図である。
【図8】図7のE矢視図である。
【図9】図7に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図10】第2実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図である。
【図11】図10のF−F断面図で、結束するワイヤハーネスが小径の場合のばね板部の撓み状態を示す断面図である。
【図12】図10のF−F断面図で、結束するワイヤハーネスが大径の場合のばね板部の撓み状態を示す断面図である。
【図13】第2実施形態のワイヤハーネス用バンドが結束しているワイヤハーネスに軸方向の荷重が作用したときのばね板部の動作を示す断面図である。
【図14】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第3実施形態の平面図である。
【図15】図14のG矢視図である。
【図16】図14に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図17】第3実施形態のワイヤハーネス用バンドの構造物へ固定する前の状態の説明図である。
【図18】(a)は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図19】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第4実施形態の平面図である。
【図20】図19のI矢視図である。
【図21】図19に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図22】第4実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図である。
【図23】図22のJ−J断面図である。
【図24】(a)は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図25】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第5実施形態の載置板部と押さえ部材とが分離した状態の正面図である。
【図26】図25に示した載置板部のK矢視図である。
【図27】図26のM矢視図である。
【図28】図25に示したカバー板(押さえ部材)のL矢視図である。
【図29】図28のN矢視図である。
【図30】(a)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドにワイヤハーネスが固定されている状態の平面図、(b)は(a)のO矢視図である。
【図31】(a)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図32】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第6実施形態の載置板部と押さえ部材とが分離した状態の正面図である。
【図33】図32に示した載置板部のP矢視図である。
【図34】図33のR矢視図である。
【図35】(a)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドにワイヤハーネスが固定されている状態の平面図、(b)は(a)のS矢視図である。
【図36】(a)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図37】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第7実施形態の平面図である。
【図38】図37のT矢視図である。
【図39】図37に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図40】(a)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図、(b)は(a)のU−U断面図である。
【図41】(a)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図42】本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第8実施形態の平面図である。
【図43】図42のV矢視図である。
【図44】図42に示したワイヤハーネス用バンドの正面図である。
【図45】(a)は第8実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、(b)は第8実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【図46】従来のワイヤハーネス用バンドの斜視図である。
【図47】図46に示したワイヤハーネス用バンドの載置板部にワイヤハーネスが載置された状態の斜視図である。
【図48】図46に示したワイヤハーネス用バンドの載置板部に載置されたワイヤハーネスに結束用バンド部を巻き付ける操作を示す側面図である。
【図49】図46に示したワイヤハーネス用バンドクランにおいて、結束用バンド部を締め付けたときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明に係るワイヤハーネス用バンドの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
<第1実施形態>
図1〜図6は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第1実施形態を示したもので、図1は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図2は図1のC矢視図、図3は図1に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図4は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドで固定するワイヤハーネスの横断面図、図5は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドの構造物へ固定する前の状態の説明図、図6(a)は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図6(b)は第1実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0069】
この第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1は、楕円断面のワイヤハーネス103が載置される平板状の載置板部11と、載置板部11の裏面に突設されるクリップ部21と、ワイヤハーネス103を載置板部11に固定する固定手段34と、載置板部11の中央に一体形成されたばね板部41と、を備えている。
【0070】
ワイヤハーネス103は、図4に示すように、複数本の電線104と、これらの電線104の外周を楕円断面状に覆う外装材105と、を備えている。
【0071】
載置板部11は、載置されるワイヤハーネス103の長径方向に沿って細長い矩形の平板状である。
【0072】
載置板部11の表面には、上記ばね板部41の他に、周面支えリブ13と、滑り止め突起15と、が装備されている。
【0073】
周面支えリブ13は、載置板部11の表面に載置されるワイヤハーネス103の外周面の湾曲のためにワイヤハーネス103の外周面と載置板部11の表面との間に形成される隙間(図30の隙間107)を埋める周面支え隆起部である。
【0074】
本実施形態の場合、周面支えリブ13は、図1及び図3に示すように、ワイヤハーネス103と載置板部11の表面とが線接触する載置中心線16を挟む両側に、それぞれ設けられている。更に、周面支えリブ13は、載置中心線16方向(図1の矢印Y1方向)に離間した載置板部11の両端縁にそれぞれ設けられている。また、周面支えリブ13は、載置中心線16に直交する方向に延在したリブである。更に、この周面支えリブ13は、図3に示すように、上面13aがワイヤハーネス103の外周面に沿って湾曲した湾曲面になっている。
【0075】
また、載置板部11の両端縁にそれぞれ周面支えリブ13を配置したことで、これらの載置板部11の両端縁の周面支えリブ13,13に挟まれる領域は、図1に示すように、幅寸法がW1の溝17になっている。
【0076】
本実施形態における滑り止め突起15は、載置板部11に載置されるワイヤハーネス103の外周面に当接してワイヤハーネス103の移動を規制する突起である。本実施形態の滑り止め突起15は、円錐状で、周面支えリブ13の上面、後述するばね板部41の上面に、それぞれ、ワイヤハーネス103の周方向に適宜間隔をあけて、複数配置されている。なお、滑り止め突起15は、円錐状に限らず、角錐状、円柱状とすることも可能である。
【0077】
クリップ部21は、載置板部11の裏面に一体形成されており、図5に示すように、ワイヤハーネス103の配索経路の構造物151上の取付孔152に嵌合することで、載置板部11を構造物151に連結する。
【0078】
本実施形態の固定手段34は、載置板部11に載置されたワイヤハーネス103の上に被さる押さえ部材としての結束バンド31と、該結束バンド31を係止するバンド係止部33とで構成され、これらの結束バンド31及びバンド係止部33により、ワイヤハーネス103を載置板部11に押圧固定する。
【0079】
結束バンド31は、載置板部11に載置されたワイヤハーネス103の外周に巻き付け可能に、載置板部11の一端側からワイヤハーネス103の軸線と直交する方向(図1の矢印X1方向)に延出している。また、結束バンド31の片面(ワイヤハーネス103に接触する側とは逆側の面)には、延出方向に所定の間隔で複数の係合溝(図示せず)が形成されている。
【0080】
結束バンド31は、図1に示すように、幅寸法W2が、載置板部11の両端縁の周面支えリブ13,13が画成する溝17の幅W1よりも小さく設定されている。
【0081】
バンド係止部33は、載置板部11の他端側に一体形成されている。このバンド係止部33は、結束バンド31を挿通する挿通孔35と、該挿通孔35近傍に設けられ係合溝に係合して、挿通孔35に挿通した結束バンド31の戻る方向への移動を係止する係止爪36と、を有している。
【0082】
本実施形態の場合、ばね板部41は、図1及び図3に示すように、載置中心線16に直交する方向に延在する板ばねである。このばね板部41は、載置板部11の表面からアーチ状に隆起した形状に形成されていて、載置板部11に載置されたワイヤハーネス103を、ワイヤハーネス103の上に被さる結束バンド31側に付勢する。
【0083】
以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1では、載置板部11に載置したワイヤハーネス103を固定する際には、図5に示したように、ワイヤハーネス103の外周に被せた結束バンド31の先端をバンド係止部33に挿通させた後、バンド係止部33から突出した結束バンド31の先端を引っ張って、結束バンド31による締め付けを行う。その際、図6に示すように、載置板部11上のばね板部41が弾性変形する程度まで結束バンド31を締めれば、結束バンド31とワイヤハーネス103との接触圧がばね板部41の付勢力で一定以上になり、それ以上結束バンド31を締め付けなくとも、ワイヤハーネス103と結束バンド31との間に一定以上の接触圧を確保して、ワイヤハーネス103をしっかりと固定することができる。
【0084】
そのため、ワイヤハーネス103の固定時に、ワイヤハーネス103の外径の大小に拘わらず、結束バンド31による締め付けを緩和して、結束バンド31を介して載置板部11に作用する荷重を低減させることができ、載置板部11がワイヤハーネス103の外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0085】
従って、ワイヤハーネス103が載置される載置板部11の撓みの影響によるクリップ部21の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0086】
また、載置板部11の撓みの抑止を、載置板部11にばね板部41を装備することにより達成していて、載置板部11の板厚増加に頼っていないため、載置板部11の重量化を軽減することもできる。
【0087】
また、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1では、載置板部11と結束バンド31とでワイヤハーネス103を結束した状態では、載置板部11の表面に装備されている滑り止め突起15がワイヤハーネス103の外周に当接して、ワイヤハーネス103の移動を規制する。
【0088】
そのため、載置板部11と結束バンド31がワイヤハーネス103を締め付ける力をそれほど大きくしなくとも、ワイヤハーネス103をしっかりと固定することができる。従って、載置板部11と結束バンド31がワイヤハーネス103を挟む力を抑えて、載置板部11における撓みの発生を更に抑制することができる。
【0089】
また、滑り止め突起15がワイヤハーネス103の外周との摩擦力を高めるため、ワイヤハーネス103用バンドによるワイヤハーネス103の固定強度が向上し、より堅固にワイヤハーネス103を配索経路に固定することが可能になる。
【0090】
更に、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1では、ばね板部41の表面にも滑り止め突起15を設けている。そのため、ばね板部41の表面に装備された滑り止め突起15がワイヤハーネス103の外周に当接することによって、ばね板部41とワイヤハーネス103との間の滑りが防止される。従って、ばね板部41は、確実にワイヤハーネス103を結束バンド31側に付勢することができ、ばね板部41による付勢作用の信頼性を向上させることができる。
【0091】
更に、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1では、楕円断面のワイヤハーネス103が載置板部11に載置された場合に、ワイヤハーネス103の外周面と載置板部11の表面との間の隙間が、周面支えリブ13によって埋められる。そのため、ワイヤハーネス103の結束を強めるべく、載置板部11と結束バンド31とによる挟持圧(締め付け力)を強めても、載置板部11がワイヤハーネス103の外周の湾曲に沿って撓むことを防止することができる。
【0092】
従って、載置板部11の撓みの影響によって、クリップ部21に歪み(変形)が生じることを防止することができ、クリップ部21の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0093】
しかも、周面支えリブ13の装備は、載置板部11の表面の一部でよく、載置板部11の板厚を全体的に増加させる必要はない。従って、載置板部11の板厚増による重量化を抑止することもできる。
【0094】
更に、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1では、周面支えリブ13が載置板部11上を載置中心線16に直交する方向に延在するリブであるため、リブに直交する方向の荷重に対する曲げ剛性が高くなり、ワイヤハーネス103の外周に沿う載置板部11の撓みを防止する性能が高くなる。
【0095】
また、結束バンド31の載置中心線16方向の寸法W2が、載置板部11の両端縁の一対の周面支えリブ13,13が画成する溝14の幅W1よりも小さく設定されているため、載置板部11と結束バンド31とで挟持されるワイヤハーネス103は、載置板部11の両端縁の一対の周面支えリブ13,13が画成する溝14上に位置する部位が、結束バンド31の押圧によって溝14内に押し込まれるようになり、ワイヤハーネス103をより強固に固定することが可能になる。
【0096】
<第2実施形態>
図7〜図13は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第2実施形態を示したもので、図7は第2実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図8は図7のE矢視図、図9は図7に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図10は第2実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図である。また、図11は、図10のF−F断面図で、結束するワイヤハーネスが小径の場合のばね板部の撓み状態を示す断面図である。図12は、図10のF−F断面図で、結束するワイヤハーネスが大径の場合のばね板部の撓み状態を示す断面図である。また、図13は、第2実施形態のワイヤハーネス用バンドが結束しているワイヤハーネスに軸方向の荷重が作用したときのばね板部の動作を示す断面図である。
【0097】
この第2実施形態のワイヤハーネス用バンド1Aは、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1を改良したものである。改良点は、第1実施形態における載置板部11を、ばね板部41Aを有した載置板部11Aに変更した点である。
【0098】
第2実施形態におけるばね板部41Aは、載置板部11A上に載置されたワイヤハーネス103を、その上に被さる結束バンド31側に付勢する板ばねで、第1実施形態におけるばね板部41とは延在方向を変更したものである。具体的には、図7〜図9に示すように、ばね板部41Aは、ワイヤハーネス103の軸線方向(図7の載置中心線16に沿う方向)に沿って延在するアーチ状に形成されている。
【0099】
第2実施形態のワイヤハーネス用バンド1Aは、ばね板部41A以外の構成は、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1と共通で良く、共通の構成については同番号を付して説明を省略する。
【0100】
この第2実施形態のワイヤハーネス用バンド1Aの場合も、ばね板部41A以外の構成は第1実施形態と共通のため、ワイヤハーネス103を結束バンド31の締め付けにより載置板部11Aに固定する操作手順は、第1実施形態の場合と同様である。従って、図10〜図12に示すように、結束バンド31によるワイヤハーネス103の固定時には、ワイヤハーネス103の外径の大小に拘わらず、ワイヤハーネス103に当接するばね板部41Aに弾性変形が生じる程度に、結束バンド31の締め付けを行う。
【0101】
この第2実施形態のワイヤハーネス用バンド1Aでは、延在方向を変更したばね板部41Aの装備によって、次の作用効果を得ることができる。
【0102】
即ち、結束しているワイヤハーネス103に外部から軸方向(図10の矢印Y2の方向)の荷重が作用したとき、ワイヤハーネス103が接触しているばね板部41の湾曲形状が、図13(b)に示すように、ワイヤハーネス103の軸方向(図13(b)における矢印Y3方向)への移動に伴い弾性変形することで、ワイヤハーネス103の若干の軸方向への移動を許容する。そのため、ワイヤハーネス103に無理な張力が作用することを防止することができる。
【0103】
更に、ばね板部41の湾曲形状の弾性変形によって、ワイヤハーネス103を元の位置に戻す力(復元力)が発生するため、ワイヤハーネス103に作用していた外力が解除されれば、ワイヤハーネス103を元の位置に戻すことができ、結束しているワイヤハーネス103に位置ずれが生じることを防止することができる。
【0104】
<第3実施形態>
図14〜図18は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第3実施形態を示したもので、図14は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図15は図14のG矢視図、図16は図14に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図17は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドの構造物へ固定する前の状態の説明図、図18(a)は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図18(b)は第3実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0105】
この第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bは、第1実施形態のワイヤハーネス用バンド1を改良したもので、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同番号を付して、説明を省略又は簡略化する。図14〜図16に示すように、ワイヤハーネス用バンド1Bは、楕円断面のワイヤハーネス103が載置される平板状の載置板部11Bと、載置板部11Bの裏面に突設されるクリップ部21と、ワイヤハーネス103を載置板部11に固定する2つの固定手段34Bと、載置板部11Bの中央に一体形成されたばね板部41Bと、を備えている。
【0106】
載置板部11Bは、載置されるワイヤハーネス103の長径方向に沿って細長い矩形の平板状である。また、第3実施形態の載置板部11Bの場合、第1実施形態と異なり、載置板部11Bには、載置板部11Bの表面とワイヤハーネス103の湾曲した外周面との間の隙間を埋める周面支え隆起部(周面支えリブ)は備えていない。
【0107】
この第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bの場合、2つの固定手段34Bは、図14に示すように、載置板部11B上のワイヤハーネス103の軸方向に位置をずらした2箇所に装備される。
【0108】
2つの固定手段34Bは、何れも、ワイヤハーネス103の外周に巻き付け可能な結束バンド31と、該結束バンド31を係止するバンド係止部33とを備える点は、第1実施形態と共通している。
【0109】
この2つの固定手段34相互は、配置的には、ワイヤハーネス103の軸方向に隣接する配置となっている。そして、これらの2つの固定手段34相互は、図14に示すように、載置板部11B上での結束用バンド31及びバンド係止部33の装備位置(配置)が、逆側に設定されている。
【0110】
ばね板部41Bは、第1実施形態の場合と同様に、載置中心線16に直交する方向(図14の矢印X3方向)に延在する板ばねである。このばね板部41Bは、載置板部11Bの表面からアーチ状に隆起した形状に形成されていて、載置板部11Bに載置されたワイヤハーネス103を、ワイヤハーネス103の上に被さる結束バンド31側に付勢する。
【0111】
ばね板部41Bは、載置板部11Bに周面支えリブが装備されていない分、幅寸法が第1実施形態の場合よりも大きく設定されている。
【0112】
本実施形態の場合も、ばね板部41Bの表面には、ワイヤハーネス103の外周面に当接してワイヤハーネス103の移動を規制する複数の滑り止め突起15が設けられている。
【0113】
この第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bでは、固定手段34によるワイヤハーネス103の固定箇所が、ワイヤハーネス103の軸方向に離間した複数箇所に備えられたことによって、ワイヤハーネス103の軸方向への移動を規制する性能が向上し、ワイヤハーネス103をより強固に固定することが可能になる。
【0114】
また、ワイヤハーネス103の軸方向に隣接する固定手段34相互では、載置板部11B上での結束用バンド31及びバンド係止部33の装備位置が逆側に設定されているため、複数の結束用バンド31が載置板部11Bの一端側に揃えられる場合と比較すると、載置板部11Bにおける重心の偏りを防止することができ、ワイヤハーネス用バンドをワイヤハーネス103に装着する際の取り扱い性を向上させることができる。
【0115】
なお、ワイヤハーネスの軸方向に位置をずらして装備する固定手段34の数量は、上記実施形態に限らない。固定手段34の装備する得は、3以上の複数個に設定することができる。
【0116】
<第4実施形態>
図19〜図24は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第4実施形態を示したもので、図19は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図20は図19のI矢視図、図21は図19に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図22は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図、図23は図22のJ−J断面図、図24(a)は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図24(b)は第4実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0117】
この第4実施形態のワイヤハーネス用バンド1Cは、第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bの一部を改良したもので、第3実施形態と共通の構成については、第3実施形態と同番号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0118】
図19〜図21に示すように、第4実施形態のワイヤハーネス用バンド1Cは、楕円断面のワイヤハーネス103が載置される平板状の載置板部11Cと、載置板部11Cの裏面に突設されるクリップ部21と、ワイヤハーネス103を載置板部11に固定する2つの固定手段34Bと、2つのばね板部41Cとを備えた構成になっている。
【0119】
2つの固定手段34Bが、載置板部11C上のワイヤハーネス103の軸方向に位置をずらした2箇所に装備され点は、第3実施形態と同様である。但し、本実施形態の場合、ワイヤハーネス103が載置される載置板部11Cは、ワイヤハーネス103の軸線方向に長尺に形成されている。また、載置板部11Cがワイヤハーネス103の軸線方向に長尺化されたことに伴い、2つの固定手段34B相互間の間隔が広げられている。
【0120】
また、この第4実施形態では、2つのばね板部41Cは、ワイヤハーネス103の軸方向に位置をずらして装備された2つの固定手段34B毎に個別に、配置されている。
【0121】
即ち、2つのばね板部41Cは、2つの固定手段34Bに対応して、ワイヤハーネス103の軸方向に位置をずらして装備されている。
【0122】
それぞれのばね板部41Cは、載置中心線16に直交する方向(図19の矢印X4方向)に延在する板ばねである。このばね板部41Cは、載置板部11Cの表面からアーチ状に隆起した形状に形成されていて、載置板部11Cに載置されたワイヤハーネス103を、ワイヤハーネス103の上に被さる結束バンド31側に付勢する。
【0123】
本実施形態の場合も、それぞれのばね板部41Cの表面には、ワイヤハーネス103の外周面に当接してワイヤハーネス103の移動を規制する複数の滑り止め突起15が設けられている。
【0124】
この第4実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bでは、2つの固定手段34Bには、それぞれ個別にばね板部41Cが設けられているため、各固定手段34Bにおいて、確実にばね板部41Cの作用が得られ、ワイヤハーネス103の固定強度を確実に向上させることができる。従って、図22に示すように、ワイヤハーネス103の軸方向(図22の矢印Y5方向)に対してより強固な固定を行うことが可能になる。
【0125】
<第5実施形態>
図25〜図31は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第5実施形態を示したもので、図25は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第5実施形態の載置板部と押さえ部材とが分離した状態の正面図、図26は図25に示した載置板部のK矢視図、図27は図26のM矢視図、図28は図25に示したカバー板(押さえ部材)のL矢視図、図29は図28のN矢視図、図30(a)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドにワイヤハーネスが固定されている状態の平面図、図30(b)は図30(a)のO矢視図、図31(a)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図31(b)は第5実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0126】
この第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dは、楕円断面のワイヤハーネス103が載置される平板状の載置板部11Dと、載置板部11Dの裏面に突設されるクリップ部21と、ワイヤハーネス103を載置板部11Dに固定する固定手段34Dと、載置板部11Dの中央に一体形成されたばね板部41Dと、を備えている。
【0127】
載置板部11Dは、図26に示すように、その表面に載置される楕円断面のワイヤハーネス103の長径方向(図26の矢印X6方向)に細長く形成されている。
【0128】
また、載置板部11Dの表面には、上記ばね板部41Dの他に、周面支えリブ13と、滑り止め突起15と、が装備されている。
【0129】
周面支えリブ13は、載置板部11Dの表面に載置されるワイヤハーネス103の外周面の湾曲のためにワイヤハーネス103の外周面と載置板部11Dの表面との間に形成される隙間(図48の隙間107)を埋める周面支え隆起部である。
【0130】
本実施形態の場合、周面支えリブ13は、図25〜図27に示すように、ワイヤハーネス103と載置板部11の表面とが線接触する載置中心線16を挟む両側に、それぞれ設けられている。更に、周面支えリブ13は、載置中心線16方向(図26の矢印Y6方向)に離間した載置板部11Dの両端縁にそれぞれ設けられている。また、周面支えリブ13は、載置中心線16に直交する方向に延在したリブである。更に、この周面支えリブ13は、図25に示すように、上面13aがワイヤハーネス103の外周面に沿って湾曲した湾曲面になっている。
【0131】
また、載置板部11Dの両端縁にそれぞれ周面支えリブ13を配置したことで、これらの載置板部11の両端縁の周面支えリブ13,13に挟まれる領域は、図26に示すように、幅寸法がW1の溝17になっている。
【0132】
本実施形態における滑り止め突起15は、載置板部11Dに載置されるワイヤハーネス103の外周面に当接してワイヤハーネス103の移動を規制する突起である。本実施形態の滑り止め突起15は、円錐状で、周面支えリブ13の上面、後述するばね板部41の上面に、それぞれ、ワイヤハーネス103の周方向に適宜間隔をあけて、複数配置されている。なお、滑り止め突起15は、円錐状に限らず、角錐状、円柱状とすることも可能である。
【0133】
クリップ部21は、第1〜第4実施形態のものと共通である。
【0134】
本実施形態の場合、固定手段34Dは、一対の結束バンド31と、カバー板51と、一対のバンド係止部33とを備える。
【0135】
一対の結束バンド31は、図26にも示すように、載置板部11Dの両端にそれぞれ一体形成される。各結束バンド31の片面(ワイヤハーネス103に接触する面とは逆の面)には、延出方向に所定の間隔で複数の係合溝が形成されている。
【0136】
カバー板51は、載置板部11Dに載置されたワイヤハーネス103の上に被さる押さえ部材である。このカバー板51は、図28及び図29に示すように、略平板状で、載置板部11Dに略平行に対向配置される。このカバー板51の幅寸法W3は、載置板部11の両端縁の周面支えリブ13,13が画成する溝17の幅W1よりも小さく設定されている。
【0137】
ワイヤハーネス103の外周面に接触するカバー板51の表面には、図28に示すように、複数の滑り止め突起15が一体形成されている。
【0138】
ワイヤハーネス103に接触するカバー板51の表面には、複数の滑り止め突起15が一体形成されている。カバー板51の表面に設けた滑り止め突起15は、周面支えリブ13の表面に設けられた滑り止め突起15と同一の突起である。
【0139】
一対のバンド係止部33は、図28に示すように、載置板部11Dに装備された一対の結束バンド31に対応してカバー板51の両端にそれぞれ一体形成されている。各バンド係止部33は、第1実施形態のものと同一の構造で、結束バンド31を挿通する挿通穴と、該挿通穴近傍に設けられ結束バンド31の係合溝に係合して挿通孔に挿通した結束バンド31の戻る方向への移動を規制する係止爪と、を有する。
【0140】
ばね板部41Dは、第1実施形態のばね板部41と同じ構造で、載置中心線16に直交する方向に延在する板ばねである。このばね板部41Dは、載置板部11Dの表面からアーチ状に隆起した形状に形成されていて、載置板部11Dに載置されたワイヤハーネス103を、ワイヤハーネス103の上に被さる結束バンド31側に付勢する。
【0141】
以上に説明したワイヤハーネス用バンド1Dは、図30に示すように、載置板部11Dとカバー板51とでワイヤハーネス103を挟んだ状態で、互いに対向している結合用バンド31とバンド係止部33とを結合することで、前記ワイヤハーネス103を結束・固定する。
【0142】
図31(a)は細径のワイヤハーネス103を結束している状態であり、図31(b)は太径のワイヤハーネス103を結束している状態である。結束するワイヤハーネス103の短径方向の寸法に応じて、載置板部11Dとカバー板51との離間距離が変わる。
【0143】
この第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dは、両端に結束バンド31を有した載置板部11Dと、両端にバンド係止部33を有したカバー板51とに2分割された構成である。そのため、ワイヤハーネス103を固定する際には、載置板部11とカバー板51とでワイヤハーネス103を挟んだ状態にした後、載置板部11の両端の結束バンド31を対向するバンド係止部33に係止させると、ワイヤハーネス103を結束した状態になる。
【0144】
ワイヤハーネス用バンド1Dの場合、ワイヤハーネス103を結束した状態では、載置板部11Dの両端には、ワイヤハーネス103を挟持する方向の曲げ荷重が作用する。しかし、その曲げ荷重の作用方向は載置板部11Dとカバー板51との対向方向であり、更に、ばね板部41Dとカバー板51との締め付けをそれほど強めなくとも、ばね板部41Dの付勢力でワイヤハーネス103に対する接触圧を一定以上にすることができる。そのため、載置板部の両端が結束バンドによって互いに近づく方向に引っ張られる従来の場合と比較すると、載置板部11Dがワイヤハーネス103の外周の湾曲に沿って撓むことを抑止することができる。
【0145】
従って、ワイヤハーネス103が載置される載置板部11Dの撓みの影響によるクリップ部21の歪み(変形)によって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0146】
また、従来のワイヤハーネス用バンドと比較して撓みを抑止することができるため、撓み剛性の向上を目的として載置板部11の板厚を増加させる場合でも、増加させる板厚を従来よりも低減させて、載置板部11の板厚増による重量化を軽減することもできる。
【0147】
また、この第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dでは、滑り止め突起15を、載置板部11Dの表面、ばね板部41Dの表面、カバー板51の表面のそれぞれに設けているため、載置板部11Dとカバー板51との締め付けを強めなくとも、ワイヤハーネス103をより強固に固定することができる。換言すると、載置板部11Dとカバー板51との締め付けを緩和して、載置板部11Dにおける撓みの発生を更に低減させることができる。
【0148】
また、この第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dでは、楕円断面のワイヤハーネス103が載置板部11Dに載置された場合に、ワイヤハーネス103の外周面と載置板部11Dの表面との間の隙間が、周面支えリブ13によって埋められる。そのため、ワイヤハーネス103の結束を強めるべく、載置板部11Dとカバー板51との挟持圧を強めても、載置板部11Dがワイヤハーネス103の外周の湾曲に沿って撓むことを防止することができる。
【0149】
従って、載置板部11Dの撓みの影響によって、クリップ部21に歪み(変形)が生じることを防止することができ、クリップ部の歪みによって構造物への固定に支障が生じることを防止することができる。
【0150】
しかも、周面支えリブ13の装備は、載置板部11Dの表面の一部でよく、載置板部の板厚を全体的に増加させる必要はない。従って、載置板部11Dの板厚増による重量化を抑止することもできる。
【0151】
更に、この第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dでは、周面支えリブ13が載置板部11D上を載置中心線16に直交する方向に延在するリブであるため、リブに直交する方向の荷重に対する曲げ剛性が高くなり、ワイヤハーネス103の外周に沿う載置板部11Dの撓みを防止する性能が高くなる。
【0152】
また、カバー板51の載置中心線方向の寸法(幅寸法)W3が、載置板部11Dの両端縁の一対の周面支えリブ13,13が画成する溝17の幅W1よりも小さく設定されているため、載置板部11Dとカバー板51とで挟持されるワイヤハーネス103は、載置板部11Dの溝17上に位置する部位が、カバー板51の押圧によって溝17内に押し込まれるようになり、ワイヤハーネス103をより強固に固定することが可能になる。
【0153】
<第6実施形態>
図32〜図36は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第6実施形態を示したもので、図32は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドの載置板部と押さえ部材とが分離した状態の正面図、図33は図32に示した載置板部のP矢視図、図34は図33のR矢視図、図35(a)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドにワイヤハーネスが固定されている状態の平面図、図35(b)は図35(a)のS矢視図、図36(a)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図36(b)は第6実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0154】
この第6実施形態のワイヤハーネス用バンド1Eは、第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dの一部を改良したものである。
【0155】
改良した点は、ワイヤハーネス103が載置される載置板部11Eには、第5実施形態で装備していた周面支えリブ13の代わりに、複数の周面支え突起15Eを装備した点である。
【0156】
複数の周面支え突起15Eは、載置中心線16に直交する方向に間隔をあけて配置されており、載置中心線16からの離間距離が大きくなるほど、突出高さが高くなるように、寸法設定されている。これらの複数の周面支え突起15Eは、平板状を成す載置板部11Eの表面とワイヤハーネス103の湾曲面との間の隙間を埋める周面支え隆起部として機能するだけでなく、ワイヤハーネス103の外周面との当接によりワイヤハーネス103の移動を規制する滑り止め突起を兼ねている。
【0157】
ワイヤハーネス用バンド1Eは、周面支えリブ13の代わりに複数の周面支え突起15Eが装備された点以外の構成は、第5実施形態のワイヤハーネス用バンド1Dと共通で良い。
【0158】
この第6実施形態のワイヤハーネス用バンド1Eでは、ワイヤハーネス103の外周面と載置板部11の表面との間の隙間を埋める複数の周面支え突起15Eが、ワイヤハーネス103の移動を規制する滑り止め突起15を兼ねているため、周面支え突起15Eとは別に滑り止め突起を追加装備する必要がなくなり、載置板部11の形状を単純化して、生産性を向上させることができる。
<第7実施形態>
図37〜図41は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第7実施形態を示したもので、図37は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図38は図37のT矢視図、図39は図37に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図40(a)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドがワイヤハーネスを結束した状態の平面図、図40(b)は図40(a)のU−U断面図、図41(a)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図41(b)は第7実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0159】
この第7実施形態のワイヤハーネス用バンド1Fは、第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bを改良したもので、第3実施形態の構成に、第1実施形態で示した周面支えリブ13を追加した構成になっている。
【0160】
具体的に説明すると、この第7実施形態のワイヤハーネス用バンド1Fは、楕円断面のワイヤハーネス103が載置される平板状の載置板部11Fに、第3実施形態で示したばね板部41Bと、第1実施形態で示した周面支えリブ13とを備えている。この第7実施形態の場合も、周面支えリブ13は、第1実施形態の場合と同様に設けられている。
【0161】
即ち、周面支えリブ13は、図37に示すように、ワイヤハーネス103と載置板部11Fの表面とが線接触する載置中心線16を挟む両側に、それぞれ設けられている。更に、周面支えリブ13は、載置中心線16方向(図37の矢印Y7方向)に離間した載置板部11Fの両端縁にそれぞれ設けられている。また、周面支えリブ13は、載置中心線16に直交する方向に延在したリブである。更に、この周面支えリブ13は、図39に示すように、上面13aがワイヤハーネス103の外周面に沿って湾曲した湾曲面になっている。そして、上面13aには、第1実施形態の場合と同様に、滑り止め突起15が設けられている。
【0162】
なお、第7実施形態において、第3実施形態と共通の各構成については、第3実施形態と同番号を付して、説明を省略する。
【0163】
この第7実施形態のワイヤハーネス用バンド1Fでは、第3実施形態における作用効果に加えて、更に、第1実施形態において説明した周面支えリブ13による作用効果を得ることもできる。
【0164】
従って、第3実施形態のワイヤハーネス用バンド1Bと比較して、ワイヤハーネス103をより強固に固定することが可能になり、また、周面支えリブ13による載置板部11Fの剛性向上によって、載置板部11Fに撓みが生じ難くなる。
【0165】
<第8実施形態>
図42〜図45は本発明に係るワイヤハーネス用バンドの第8実施形態を示したもので、図42は第8実施形態のワイヤハーネス用バンドの平面図、図43は図42のV矢視図、図44は図42に示したワイヤハーネス用バンドの正面図、図45(a)は第8実施形態のワイヤハーネス用バンドが細径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図、図45(b)は第8実施形態のワイヤハーネス用バンドが太径のワイヤハーネスを結束した状態の横断面図である。
【0166】
この第8実施形態のワイヤハーネス用バンド1Gは、第7実施形態のワイヤハーネス用バンド1Fを改良したものである。改良点は、第7実施形態において周面支えリブ13が装備されていた位置に、周面支えリブ13の代わりに、改良した複数の滑り止め突起13Fを装備した点である。第8実施形態のワイヤハーネス用バンド1Gにおいて、改良点以外の構成は、第7実施形態と共通でよく、共通の構成については、第7実施形態と同番号を付して説明を省略する。
【0167】
複数の滑り止め突起13Fは、図42に示すように、載置中心線16に直交する方向に間隔をあけて複数配置されている。更に、滑り止め突起13Fは、載置中心線16から離れているものほど突出高さが大きく設定されて、略平板状の載置板部11の表面とワイヤハーネス103の外周との間の隙間を埋める周面支え隆起部を兼ねている。
【0168】
この第8実施形態のワイヤハーネス用バンド1Gは、第7実施形態の作用・効果に加えて、改良点の構成により、次の作用効果を得ることができる。
【0169】
即ち、この第8実施形態のワイヤハーネス用バンド1Gでは、図42に示しているように、載置中心線16に直交する方向に間隔をあけて複数配置された滑り止め突起13Fが、ワイヤハーネス103と載置板部11との間の隙間を埋める周面支え隆起部を兼ねているため、滑り止め突起13Fとは別に周面支え隆起部を装備する必要がなくなり、載置板部11Fの形状を単純化することができる。また、ワイヤハーネス103の周方向に連続するリブ状の周面支え隆起部(例えば、第7実施形態の周面支えリブ13)と比較すると、ワイヤハーネス103の周方向への配置が間欠的になるために、載置板部11Fを構成する材料の増加を抑えることもできる。
【0170】
なお、本発明のワイヤハーネス用バンドは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。また、本発明のワイヤハーネス用バンドの各構成の材質、形状、寸法、形態、数量、配置箇所等は、本発明の目的を達成できるものであれば、任意であり、前述した各実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0171】
1,1A,1B,1C ワイヤハーネス用バンド
1D,1E,1F,1G ワイヤハーネス用バンド
11,11A,11B 載置板部
11C,11D,11E,1F 載置板部
13 周面支えリブ(周面支え隆起部)
13F 滑り止め突起(周面支え隆起部)
15 滑り止め突起
15E 周面支え突起(周面支え隆起部,滑り止め突起)
16 載置中心線
21 クリップ部
31 結束バンド(押さえ部材)
33 バンド係止部
34,34D 固定手段
35 挿通孔
36 係止爪
41,41B,41C,41D ばね板部
51 カバー板(押さえ部材)
103 ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にワイヤハーネスが載置される平板状の載置板部と、前記載置板部に載置されたワイヤハーネスの上に被さる押さえ部材によって前記ワイヤハーネスを前記載置板部に押圧固定する固定手段と、を備え、
前記載置板部の中央には、載置された前記ワイヤハーネスを前記押さえ部材側に付勢するばね板部が設けられたことを特徴とするワイヤハーネス用バンド。
【請求項2】
前記固定手段が、
前記載置板部に載置されたワイヤハーネスの外周に巻き付け可能に前記載置板部の一端側からワイヤハーネスの軸線と直交する方向に延出すると共に、片面には前記延出方向に所定の間隔で複数の係合溝が形成されて前記押さえ部材として機能する結束用バンドと、
前記結束用バンド部を挿通する挿通穴と、該挿通穴の近傍に設けられ前記係合溝に係合して挿通した前記結束用バンドの戻る方向への移動を係止する係止爪と、を有して前記載置板部の他端側に一体形成されたバンド係止部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項3】
前記結束用バンドと前記バンド係止部とを備える前記固定手段が前記ワイヤハーネスの軸方向に位置をずらして複数組設けられ、且つ、前記ワイヤハーネスの軸方向に隣接する前記固定手段相互では、前記載置板部上での前記結束用バンド及び前記バンド係止部の装備位置が、逆側に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスの軸方向に位置をずらして装備された各固定手段毎に個別に、前記ばね板部が設けられたことを特徴とする請求項3に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項5】
前記固定手段として、前記載置板部の両端にそれぞれ一体形成されると共に片面には前記延出方向に所定の間隔で複数の係合溝が形成された一対の結合用バンドと、前記押さえ部材として前記載置板部に略平行に対向配置される略平板状のカバー板と、前記一対の結合用バンドに対応して前記カバー板の両端にそれぞれ一体形成された一対のバンド係止部とを備え、
前記バンド係止部は、前記結合用バンドを挿通する挿通穴と、該挿通穴近傍に設けられ前記係合溝に係合して前記挿通孔に挿通した前記結合用バンドの戻る方向への移動を規制する係止爪と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項6】
前記ワイヤハーネスに接触する前記載置板部の表面、又は前記押さえ部材の表面の少なくとも一方の表面には、前記ワイヤハーネスの外周面に当接する滑り止め突起が設けられることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項7】
前記ワイヤハーネスに接触する前記ばね板部の表面にも、前記滑り止め突起が設けられることを特徴とする請求項6に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項8】
前記ばね板部が、前記ワイヤハーネスの軸線方向に沿って延在するアーチ状であることを特徴とする請求項7に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項9】
前記載置板部の表面には、該表面に載置されるワイヤハーネスの外周面の湾曲のために前記外周面と前記表面との間に形成される隙間を埋める周面支え隆起部が、前記ワイヤハーネスと前記表面とが線接触する載置中心線を挟む両側に、それぞれ設けられる
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項10】
前記周面支え隆起部が、前記載置中心線方向に離間した前記載置板部の両端縁において前記載置中心線に直交する方向に延在し、上面が前記ワイヤハーネスの外周面に沿って湾曲した周面支えリブであり、
前記押さえ部材は、前記載置中心線方向の寸法が、前記載置板部の両端縁の一対の周面支えリブが画成する溝の幅よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項9に記載のワイヤハーネス用バンド。
【請求項11】
前記周面支え隆起部が、前記載置中心線に直交する方向に間隔をあけて配置される複数の周面支え突起から構成され、これら複数の周面支え突起が前記滑り止め突起を兼ねていることを特徴とする請求項9に記載のワイヤハーネス用バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2011−259564(P2011−259564A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130227(P2010−130227)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】