説明

ワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法

【課題】 ボールの圧着厚を人手を介することなく画像処理を利用して自動的に測定できるようにしたワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法を提供する。
【解決手段】 所定のステップ間隔で撮像手段を上下方向に移動しながら、各ステップ位置においてパッド3とボール5の接合部分を撮像し、各撮像画像におけるパッド3のエッジ3a部分の輝度変化を求め、エッジ部分の輝度変化が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をパッド3の合焦点高さとするとともに、各撮像画像におけるボール圧着面9の輝度変化を算出し、ボール圧着面の輝度変化の加算値が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面9の合焦点高さとし、得られたパッド3の合焦点高さとボール圧着面9の合焦点高さの差分を採ることによってパッド3に接合されたボール5の圧着厚tを算出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップのパッドと外部電極間をボールボンディングによって配線するようにしたワイヤボンディングにおいて、半導体チップのパッドに接合されたボールの圧着厚を画像処理を利用して自動的に測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず最初に、図2を参照して、ワイヤボンディングにおける半導体チップのパッドとボールの接合状態について説明する。
【0003】
図2において、1はリードフレーム、2はリードフレーム1上に搭載された半導体チップ、3は半導体チップ2上に形成されたパッド(第1ボンディング点)、4は金線などのボンディングワイヤ、5はボンディングワイヤ4の先端に形成されたボールである。
【0004】
ボンディングワイヤ4の先端に形成されたボール5は、接合前においてはほぼ球形をしており、ワイヤボンディング時にキャピラリ6によって押圧されながら超音波振動を与えられることにより、図示するように平たく押し潰された状態でパッド3に圧着接合されている。
【0005】
パッド3に圧着接合された上記ボール5の上面中心位置には、キャピラリ6の先端内部に入り込んだインサイドチャンファ部7によって円錐形状をしたコーン部8が形成されるとともに、該コーン部8の周囲には、ほぼ平坦なボール圧着面9が形成されている。
【0006】
本発明が測定対象とするボールの圧着厚とは、パッド3の表面からボール圧着面9までの高さtを指すものである。
【0007】
従来、上記したボールの圧着厚tを測定するには、Z軸方向(上下方向)の移動量を計測可能な金属顕微鏡などを用い、測定者が手動でパッド3の表面とボール圧着面9のそれぞれに焦点を合わせ、そのときの2点間の距離を求めることによってボールの圧着厚tを測定していた。このような人手による測定方法の場合、パッド3とボール圧着面9に焦点が正確に合っているか否かは測定者によってバラツキがあり、十分な測定精度を得ることが困難であった。
【0008】
また、他の測定方法として、レーザー光を利用した測定方法もあるが、ボール圧着面9の幅は数ミクロンというきわめて小さな寸法であり、このような微細な個所にスポット的にレーザー光を照射するシステムはかなり高価になってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、上記のような問題をなくすために、カメラのレンズを通して取り込まれたボール5のコーン部8の平面画像と、予め設定した基準となるコーン部のパターン画像とを比較照合し、最も画像が一致する撮像高さ位置を合焦点高さとすることにより、ボール5の圧着厚tを測定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平6−224267号公報(全頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の測定方法の場合、コーン部8の形状と大きさは用いるキャピラリ6によって変わるため、キャピラリ6が交換される度に基準となるコーン部8のパターン画像を記憶し直す必要があり、装置の取り扱いが面倒であった。また、基準となるコーン部8のパターン画像を人手によって設定するため、設定に個人差があり、設定の仕方によっては測定結果が変わってしまう可能性もあった。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、ボールの圧着厚を人手を介することなく画像処理を利用して自動的に測定できるようにしたワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の測定方法は、所定のステップ間隔で撮像手段を上下方向に移動しながら、各ステップ位置においてパッドとボールの接合部分の平面画像を撮像し、各撮像画像におけるパッドのエッジ部分の輝度変化を求め、該輝度変化が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をパッドの合焦点高さとするとともに、各撮像画像におけるボール圧着面の輝度変化を求め、該輝度変化が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとし、該得られたパッドの合焦点高さとボール圧着面の合焦点高さの差分を採ることによってパッドに接合されたボールの圧着厚を算出するようにしたものである。
【0014】
なお、前記パッドの合焦点高さの検出に際しては、撮像画像上のパッドのエッジ部分に所定大きさからなる輝度検出窓をパッドのエッジをまたぐように設定し、
該輝度検出窓内の各画素についてエッジと直交する向きに隣り合う画素同士の輝度差を求め、該得られた差分輝度値の最大値を当該撮像画像におけるパッドのその撮像高さにおける輝度レベルとし、すべての撮像画像中において前記輝度レベルが最大となる撮像画像の撮像高さ位置をパッドの合焦点高さとすることができる。
【0015】
また、前記パッドの合焦点高さ検出のための輝度検出窓を複数個設定し、該複数個の輝度検出窓についてそれぞれ輝度レベルを算出し、該得られた複数個の輝度レベルの加算値を当該撮像画像におけるパッドの輝度レベルとすることができる。
【0016】
また、前記パッドの合焦点高さの決定に際しては、各ステップの撮像画像におけるパッドの輝度レベルの算出結果を用いて2次曲線近似を行ない、得られた近似曲線のピーク点位置に対応する撮像高さ位置をパッドの合焦点高さととすれば、さらに好ましい。
【0017】
また、前記ボール圧着面の合焦点高さの検出に際しては、撮像画像上のボール圧着面部分に所定大きさからなる輝度検出窓をボールの半径方向に向けて設定し、該輝度検出窓内の各画素についてボールの半径方向に沿って隣り合う画素同士の輝度差を求め、該得られた差分輝度値を加算して当該撮像画像におけるボール圧着面のその撮像高さにおける輝度レベルとし、すべての撮像画像中において前記輝度レベルが最大となる撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとすることができる。
【0018】
また、前記ボール圧着面の合焦点高さ検出のための輝度検出窓を所定の回転ステップ角でボール中心点の周りに回転させながら、各回転ステップ位置において輝度検出窓の輝度レベルをそれぞれ算出し、該得られた複数個の輝度レベルの加算値を当該撮像画像におけるボール圧着面の輝度レベルとすることができる。
【0019】
また、ボール圧着面の合焦点高さの決定に際しては、各撮像画像におけるボール圧着面の輝度レベルの算出結果を用いて2次曲線近似を行ない、得られた近似曲線のピーク点位置に対応する撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとすれば、さらに好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の測定方法によれば、ワイヤボンディングにおけるボールの圧着厚を人手を介することなく画像処理を利用して自動的に測定することができる。このため、従来問題となっていた人的な測定誤差をなくすことができ、きわめて正確な測定を行なうことができる。また、高価なレーザー光システムなどを必要としないので、装置を安価に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明方法を適用して構成したボール圧着厚測定装置の一実施の形態を示すものである。
【0022】
図において、11は水平面内で移動自在とされたX−Yテーブル、12は半導体チップ2のパッド3とボール5の接合部分を上方から撮像するためのZ軸方向(上下方向)移動自在なカメラ、13はカメラのレンズ、14はX−Yテーブル11とカメラ12を任意の位置に移動するためのXYZ軸駆動機構、15はXYZ軸駆動機構14の移動制御を行なうXYZ位置制御部、16はカメラ12で撮像した画像を取り込んでボール5の圧着厚tを画像処理によって計測する画像処理部、17は撮像画像や処理データなどを表示するためのモニタ、18は装置全体の処理動作を制御する制御部である。
【0023】
半導体チップ2を搭載したリードフレーム1はX−Yテーブル11上に載置されており、半導体チップ2のパッド3にはボンディングワイヤ4の先端に形成されたボール5がキャピラリ6(図2参照)によって圧着接合されている。
【0024】
上記構成の測定装置において、本発明によるボール圧着厚の測定方法について具体的に説明する。なお、本発明方法は、パッド3の合焦点高さと、ボール圧着面9(図2参照)の合焦点高さとをそれぞれ画像処理によって自動的に求め、得られた両者の合焦点高さの差からボール5の圧着厚t(図2参照)を求めるものである。
【0025】
そこで、まず最初に、パッド3の合焦点高さを求める処理について、図3のフローチャートと図4の撮像画像を参照して説明する。
【0026】
処理が開始されると、XYZ位置制御部15は、制御回路18の制御の下、XYZ軸駆動機構14を駆動制御し、カメラ12を予め設定された測定範囲の最大高さ位置(あるいは最低高さ位置)に移動し(図3のステップS1,S2)、当該位置において図4に示したようなパッド3とボール5の接合部分の平面画像を撮像し(ステップS3)、画像処理部16に送る。
【0027】
画像処理部16は、送られてきた撮像画像を取り込み(ステップS4)、該撮像画像中のパッド3の縦横の幅を画像処理によって検出し(ステップS5)、該パッド幅が基準サイズ範囲内に入っているか否かを判定する(ステップS6)。
【0028】
もし、基準のサイズ範囲内に入っていない場合には(ステップS6のNo側)、正常な測定ができないと判定してステップS10へジャンプし、設定された全測定範囲について測定が終わったか否かを判定する。そして、測定が終わっていない場合には(ステップ10のNo側)、再びステップS2に戻り、予め定めた所定のステップ間隔(例えば1μm間隔)でカメラ12とを次の高さ位置へ移動させ、上記動作を繰り返す。
【0029】
一方、基準サイズ範囲内に入っている場合には(ステップS6のYes側)、正常な測定が可能であると判定してステップS7〜S9へ処理が移行し、当該撮像画像中のパッド3の輝度レベルを算出する。
【0030】
このパッド3の輝度レベルの算出は、図4に示すような方法で行なわれる。
すなわち、撮像画像中のパッド3のエッジ3aを検出し(ステップS7)、このエッジ3aの例えばコーナー付近の8個所に、エッジ3aをまたぐようにして所定の大きさからなる輝度検出窓W1〜W8をそれぞれ設定する(ステップS8)。
【0031】
図示例の場合、この輝度検出窓W1〜W8の大きさは、図4中の右側最上段位置に輝度検出窓W1について例示したように、エッジ3aと平行な向きに4画素幅、エッジ3aと直交する向きに8画素幅の4行×8列(計32画素)からなる輝度検出窓とした。
【0032】
上記8個の輝度検出窓W1〜W8を設定したら、各輝度検出窓W1〜W8のそれぞれについて、エッジ3aと平行な方向にその輝度値を加算して平均化し、この平均輝度値について隣り合う輝度値同士の差分を求め、得られた差分値中から最も値の大きな最大差分輝度値を抽出する。そして、各輝度検出窓W1〜W8でそれぞれ得られた最大差分輝度値を加算し、この加算値を当該撮像画像におけるパッド3の輝度レベルとする(ステップS9)。
【0033】
なお、輝度検出窓を1個しか設定しなかった場合には、当該輝度検出窓内の前記最大差分輝度値をそのまま当該撮像画像におけるパッド3の輝度レベルとすればよい。
【0034】
理解を容易とするため、図4中の輝度検出窓W1について具体的に説明する。
いま、4行×8列(計32画素)からなる輝度検出窓W1の各画素の輝度値が図4中の右側最上段の表に示すような値だったとすると、まず最初に、エッジ3aと平行な方向に各列の輝度値を加算した後、各列毎にその平均値を求める。
【0035】
次いで、この得られた8個の平均輝度値について、隣り合う平均輝度値同士の差分を算出する。このようにして得られた差分輝度値中において、値が最大となる差分輝度値(図4では、35.3)を輝度検出窓W1の最大差分輝度値として決定する。
【0036】
なお、実際の測定においては、エッジ3aが画素と画素のちょうど境目ではなく画素の真上を通る場合もある。このような場合には、エッジ3aと重なる画素の輝度値は実際よりも小さくなり、差分値も実際よりも小さくなる可能性がある。
【0037】
したがって、上記のようにして得られた最大差分輝度値35.3をそのまま当該輝度検出窓W1の最大差分輝度値として採用してもよいが、より好ましくは、その左右の差分輝度値2.3と21.8を用いて2次関数近似によりピーク値補正を行ない、この補正後のピーク値を当該輝度検出窓の最大差分輝度値として採用することが望ましい。参考のため、図4中に左右の差分輝度値2.3と21.8を用いて2次関数近似によりピーク値補正した値(37.29)も示した。
【0038】
上記のようにして8個所の輝度検出窓W1〜W8のそれぞれについて最大差分輝度値が得られたら、該得られた8個の最大差分輝度値を加算し、この加算値を当該撮像画像におけるパッド3の輝度レベルとして決定する(ステップ9)。
【0039】
撮像画像におけるパッド3の輝度レベルが得られたら、ステップ10において全測定範囲について輝度レベルの測定が終わっているか否かを判定する。終わっていない場合(ステップS10のNo側)には、再びステップS2に戻り、予め定めた所定のステップ間隔(例えば1μm間隔)でカメラ12を次の位置へ移動させて撮像を繰り返し、各撮像画像における前記パッド3の輝度レベルの測定動作を繰り返す。
【0040】
上記のようにして、予め定めた測定範囲の全範囲の撮像画像におけるパッド3の輝度レベルの測定が完了したら(ステップS10のYes側)、処理はステップS11に移行する。
【0041】
そして、撮像したすべての撮像画像中から前記算出されたパッド3の輝度レベルが最も大きな撮像画像を選択し、この選択した撮像画像の撮像高さ位置をカメラ2の焦点が最も合っている位置、すなわちパッド3の合焦点高さとして決定する。
【0042】
ところで、上記各撮像画像は予め定められたステップ間隔(例えば1μm間隔)で順次撮像されるため、パッド3の正確な合焦点高さがカメラ12で実際に撮像していないステップ中間位置に存在する場合もあり得る。また、上記のようにして算出された各撮像画像におけるパッド3の輝度レベルには測定誤差も含まれている。
【0043】
したがって、パッド3の輝度レベルが最も大きな撮像画像の撮像高さ位置をパッド3の合焦点高さとしてそのまま採用してもよいが、より好ましくは、測定された各撮像画像におけるパッド3の輝度レベルデータを用いて合焦点高さの2次関数近似を行ない、得られた近似曲線中のピーク位置をパッド3のより正確な合焦点高さとして採用することが望ましい。
【0044】
図5に、上記2次関数近似によるピーク位置の算出例を示す。
この図5は、基準面を中心として上下方向±30μmの高さ範囲をピッチ1μm間隔で順次撮像した61枚の撮像画像についてのパッド3の輝度レベルデータをプロットしたものである。
【0045】
図示するように、算出されたパッド3の輝度レベルデータには測定誤差などによる凹凸があり、単純に最大の輝度レベル位置をパッド3の合焦点高さとすることは難しいことが分かる。そこで、測定された輝度レベルデータ中から連続したn点のデータを用いて2次曲線近似を行ない、得られた近似曲線のピーク位置をパッド3の本当の合焦点高さとして決定すれば、より合理的であることが分かる。
【0046】
例えば、図5において、−30〜−10μmの範囲のn=21点のデータを用いて2次曲線近似を行なうと、図中の近似曲線Aのようになり、−10〜+10μmの範囲のn=21点のデータを用いて2次曲線近似を行なうと、図中の近似曲線Bのようになり、+10〜+30μmの範囲のn=21点のデータを用いて2次曲線近似を行なうと、図中の近似曲線Cのようになる。
【0047】
この3つの近似曲線A、B、Cを見れば明らかなように、2次曲線近似に用いるデータによってその結果が大きく変わり、ピーク点が含まれると予測される範囲の輝度レベルデータ、すなわち−10〜+10μmの範囲の輝度レベルデータを用いて2次曲線近似すれば、合焦点高さを正確に近似できることが分かる。
【0048】
そこで、本発明では、上記最適な2次曲線近似を実現するために、2次曲線近似に用いるデータ範囲を順次シフトさせながらそれぞれのデータ範囲において2次近似曲線y=ax+bx+cを算出し、得られた各2次近似曲線y中においてその2次係数aが最小となる近似曲線をパッド2の合焦点高さを算出するための近似曲線として採用するようにした。図5の例の場合、近似曲線Aの2次係数a=0.1806、近似曲線Bの2次係数a=−1.0885、近似曲線Cの2次係数a=0.046であるから、合焦点高さを算出するための2次近似曲線としては2次係数aが最も小さな値(a=−1.0885)となる近似曲線Bを選択する。
【0049】
上記のようにして選択された近似曲線Bからピーク点位置を求めるには、ピーク位置の存在する近似曲線は常に上に凸の2次曲線となることに着目し、この上に凸の近似曲線B上の傾き(いわゆる1次微分)が0となる位置、すなわちx=−b/2aの位置をピーク点位置とすればよい。図5の例の場合、得られた近似曲線Bは、y=−1.0885x+0.5114x+249.89であるから、x=−b/2a≒0.235となり、パッド3の基準面からの合焦点高さは0.235μmとして求まる。
【0050】
上記のようにして、ステップ11においてパッド3の合焦点高さが得られたら、当該得られた合焦点高さが本当に正しいものと認められるか否かのチェックを行なう(ステップS12,S13)。すなわち、ピーク値を有する2次曲線は上に凸の2次曲線であるため、得られた近似曲線y=ax+bx+cにおける2次係数aは負の値となり、正の値となることはない。また、パッド3の合焦点高さも設計上許容される範囲があり、得られた合焦点高さはこの許容範囲内に入っている必要がある。ステップS12,S13では、この2次係数aの正負や許容範囲内に入っているか否かなどを調べ、得られたパッド3の合焦点高さが正しいものと認められるか否かを判定する。
【0051】
正しいものと認められる場合には(ステップS13のYes側)、一連の処理を終了する。一方、正しいものと認められない場合には(ステップS13のNo側)、測定結果は採用できないものとして合焦点高さの測定範囲を設定し直した後(ステップS14)、再びステップS2に戻って上記パッド3の合焦点高さの測定処理を繰り返す。
【0052】
このようにして、パッド3の合焦点高さを画像処理によって自動的に求めることができる。
【0053】
なお、パッド3の合焦点高さの測定に際し、輝度検出窓W1〜W8をパッド3のエッジ3aをまたぐように設定し、この輝度検出窓内における隣合う画素同士の輝度差を利用したのは、以下のような理由によるものである。
【0054】
一般的に、パッド3のエッジ付近はエッジ3aを境にしてその左右で輝度が急激に変化するが、この輝度の変わり具合は撮像画像のピントが合っているか否かによって大きく変わる。すなわち、ピントが合っていれば、撮像画像が鮮明になるのでエッジ3aを境にして左右の輝度差は大きくなり、ピントが合っていなければ、撮像画像がぼやけるのでエッジ3aの左右の輝度差は小さくなる。
【0055】
このため、エッジ3aをまたぐようにして設定した輝度検出窓内における隣り合う画素同士の輝度値の差分をとれば、その差の大きさによって撮像画像のピントがどの程度合っているか否かを客観的に知ることができる。
【0056】
したがって、上下方向に所定のステップ間隔(例えば1μm間隔)で順次撮像した各撮像画像について、前記パッド3の輝度レベルを算出して比較すれば、その輝度レベルの大小からピントの合っている撮像画像がどれであるかを客観的かつ正確に決定できるからである。
【0057】
次に、ボール圧着面9の合焦点高さを求める処理について、図6のフローチャートと図7の撮像画像を参照して説明する。
【0058】
処理が開始されると、XYZ位置制御部15は、制御回路18の制御の下、XYZ軸駆動機構14を駆動制御し、カメラ12を予め設定された測定範囲の最大高さ位置(あるいは最小高さ位置)に移動し(図6のステップS21,S22)、当該位置において図7に示すようなパッド3とボール5の接合部分の平面画像を撮像し(ステップS23)、画像処理部16に送る。
【0059】
画像処理部16は、送られてきた撮像画像を取り込み(ステップS24)、当該撮像画像におけるボール圧着面5の輝度レベルを算出する(ステップS25〜S27)。
【0060】
このボール圧着面9の輝度レベルの算出は、図7に示すような方法で行なわれる。
すなわち、まず最初に、取り込んだ撮像画像中からボール5の中心点O、ボール5の外径線(エッジ)5a、コーン部8の外径線8aを検出し、ボール5の外径線5aとコーン部8の外径線8aで囲まれた領域、いわゆるボール圧着面9を検出する(ステップS25)。
【0061】
次いで、ボール圧着面9に位置して、ボール5の半径方向に沿わせて所定大きさからなる輝度検出窓Wを設定する(ステップ26)。
【0062】
図示例の場合、図7中の右側最上段位置に輝度検出窓Wとして例示したように、ボール5の半径方向と直交する向きに4画素幅、半径方向に沿う向きに8画素幅の4行×8列(計32画素)からなる輝度検出窓とした。
【0063】
上記輝度検出窓Wを、ボール5の中心点Oを回転中心としてその周りに所定の回転ステップ角θで順次回転させながら、各回転ステップ位置において、そのときの輝度検出窓W内の隣り合う画素同士の差分輝度値を算出する。そして、輝度検出窓内の差分輝度値を加算し、得られた差分輝度値の加算値を当該回転ステップ位置におけるボール圧着面9の差分輝度値とする。
【0064】
上記ボール圧着面9の差分輝度値を各回転ステップ位置についてそれぞれ求め、各回転ステップ位置で得られたボール圧着面9の差分輝度値を加算し、得られた差分輝度値の加算値を当該撮像画像におけるボール圧着面9の輝度レベルとして決定する。
【0065】
理解を容易とするため、図7を参照して上記処理を具体的に説明する。
いま、図示の右水平方向の回転ステップ位置における4行×8列(計32画素)からなる輝度検出窓Wの各画素の輝度値が図7中の右側最上段の表に示すような値だったとすると、ボール5の半径方向に沿って隣り合う画素同士の差分演算を行ない、その差分輝度値(絶対値)を求める。
【0066】
次いで、得られた28個の差分輝度値を加算し、その加算値350を図示の回転ステップ位置におけるボール圧着面9の差分輝度値とする。
【0067】
上記したボール圧着面9の差分輝度値を各回転ステップ位置毎にそれぞれ求め、各回転ステップ位置についてボール圧着面9の差分輝度値がそれぞれ得られたら、該得られた各回転ステップ位置におけるボール圧着面9の差分輝度値を加算し、この加算された差分輝度値を当該撮像画像におけるボール圧着面9の輝度レベルとして決定する。
【0068】
上記のようにして1つの撮像画像についてボール圧着面9の輝度レベルが得られたら(ステップS27)、全測定範囲について輝度レベルの測定が終わったか否かを判定し(ステップS28)、終わっていない場合には再びステップS22に戻り(ステップS8のNo側)、予め定めた所定のステップ間隔(例えば1μm間隔)でカメラ12を次の測定位置へ移動させ、該位置において上記ボール圧着面9の輝度レベルの算出処理を繰り返す。
【0069】
そして、測定範囲内のすべてのステップ位置における撮像画像について上記ボール圧着面9の輝度レベルの測定が完了したら(ステップS28のYes側)、処理はステップS29へ移行し、当該半導体チップ2におけるボール圧着面9の合焦点高さを決定する。
【0070】
ボール圧着面9の合焦点高さは、所定のステップ間隔で撮像したすべての撮像画像中から前記算出したボール圧着面9の輝度レベルが最も大きな撮像画像を選択し、この選択した撮像画像の撮像高さ位置をカメラ2の焦点が最も合っている位置、すなわちボール圧着面9の合焦点高さとして決定すればよい。
【0071】
しかしながら、このボール圧着面9の合焦点高さについても、前述したパッド3の合焦点高さの決定時と同じように、各撮像画像は予め定められたステップ間隔(例えば1μm間隔)で順次撮像されるため、ボール圧着面9の正確な合焦点高さがカメラ12で実際に撮像していないステップ中間位置に存在する場合もあり得る。
【0072】
したがって、このボール圧着面9の合焦点高さの決定に際し、上記した輝度レベルが最も大きな撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面9の合焦点高さとしてそのまま採用してもよいが、より好ましくは、前述したパッド3の合焦面高さの決定時と同じように、測定された各撮像画像のボール圧着面9の輝度レベルデータを用いて2次関数近似により合焦点高さのピーク位置を算出し、このピーク位置をボール圧着面9の合焦点高さとして採用することが望ましい。
【0073】
上記のようにして、ステップ29においてボール圧着面9の合焦点高さが得られたら、当該得られた合焦点高さが本当に正しいものと認められるか否かのチェックを行なう(ステップS30,S31)。前述したように、ピーク値を有する2次曲線は上に凸の2次曲線であるため、得られた近似曲線y=ax+bx+cにおける2次係数aは負の値となり、正の値となることはない。また、ボール圧着面9の合焦点高さも設計上許容される範囲があり、得られた合焦点高さはこの許容範囲内に入っている必要がある。ステップS30,S31では、この2次係数aの正負や許容範囲内に入っているか否かなどを調べ、得られたボール圧着面9の合焦点高さが正しいものと認められるか否かを判定する。
【0074】
正しいものと認められる場合には(ステップS31のYes側)、一連の処理を終了する。一方、正しいものと認められない場合には(ステップS31のNo側)、測定結果は採用できないものとして合焦点高さの測定範囲を設定し直した後(ステップS32)、再びステップS22に戻って上記ボール圧着面9の合焦点高さの測定処理を繰り返す。
【0075】
このようにして、カメラ3で撮像した撮像画像を基にボール圧着面9の合焦点高さを画像処理によって自動的に求めることができる。
【0076】
なお、ボール圧着面9の合焦点高さの測定に際し、ボール圧着面9の部分に輝度検出窓Wを設定し、この輝度検出窓W内における隣合う画素同士の輝度差を利用したのは、以下のような理由によるものである。
【0077】
もし、前述したパッド3の合焦点高さの測定のときと同じように、輝度検出窓Wをボール5のエッジ部分(外径線5a)をまたぐように設定すると、ボールエッジ部分とパッド3との間の輝度差が最大となる高さを求めることになる。このような検出を行なうと、図2からも明らかなように、ボール5のエッジ部分は円弧状の曲面を呈しているために、実際に求めようとするボール圧着面9の平らな部分の高さよりも低い高さがボール圧着面9の合焦点高さとして求められる可能性が高い。また、ボール5のエッジ部分の曲面形状の違いにより検出される高さにバラツキを生じるおそれもある。実際に、ボール5のエッジ部分に輝度検出窓Wを設定して測定したところ、ボール圧着面9の平らな部分の高さよりも2μm程度低い値となることが確認された。
【0078】
そこで、本発明では、輝度検出窓Wをボール圧着面9の内部側に設定し、この輝度検出窓W内の隣り合う画素同士の輝度差からボール圧着面9の合焦点高さを求めるようにしたものである。一般的に、ボール圧着面9にピントが合っていればいるほど、ボール圧着面9の表面の細かい模様が明確に見えるようになり、輝度検出窓W内における隣り合う画素同士の輝度差も大きくなる。したがって、隣り合う画素同士の輝度差を求めてこれを加算し、その加算値を比較すれば、加算値の最も大きな撮像画像の撮像高さ位置が最もピントが合っている位置、すなわちボール圧着面9の合焦点位置であるとして決定することができる。
【0079】
上記のようにしてパッド3の合焦点高さとボール圧着面9の合焦点高さが得られたら、得られたパッド3の合焦点高さとボール圧着面9の合焦点高さとの差分演算(引き算)を行なう。そして、得られた差分値をボール5の圧着厚t(図2参照)として決定する。
【0080】
このようにして、上記実施の形態によればワイヤボンディングにおけるボール5の圧着厚tを人手を介することなく画像処理によって自動的に測定することができる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、理解を容易とするため、図3および図4によるパッド3の合焦点高さの測定処理と、図6および図7によるボール圧着面9の合焦点高さの測定処理をそれぞれ別々に分けて説明したが、実際の装置では、パッド3の合焦点高さと圧着ボール9の合焦点高さの両方が含まれる上下方向所定範囲を測定範囲として設定し、上下方向各ステップの撮像位置において上記2つの処理を同時並行に行なわせるようにしている。
【0082】
また、カメラ2の上下方向の送りステップ間隔、パッド3の合焦点高さを求めるための輝度検出窓W1〜W8の大きさや設定数、ボール圧着面9の合焦点高さを求めるための輝度検出窓Wの大きさや回転ステップ角θは、処理装置16の処理能力や必要とする測定精度に応じて設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明方法を適用して構成したボール圧着厚測定装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】ワイヤボンディングにおける半導体チップのパッドとボールの接合状態の説明図である。
【図3】パッドの合焦点高さを求めるための処理フローチャートである。
【図4】パッドの合焦点高さの測定原理の説明説明図である。
【図5】パッドの合焦点高さの2次曲線近似による決定方法の例を示す図である。
【図6】ボール圧着面の合焦点高さを求めるための処理フローチャートである。
【図7】ボール圧着面の合焦点高さの測定原理の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1 リードフレーム
2 半導体チップ
3 パッド
3a パッドのエッジ
4 ボンディングワイヤ
5 ボール
5a ボールの外径線(エッジ)
6 キャピラリ
7 インサイドチャンファ部
8 コーン部
8a コーン部の外径線
9 ボール圧着面
11 X−Yテーブル
12 カメラ
13 レンズ
14 XYZ軸駆動機構
15 XYZ位置制御部
16 画像処理部
17 モニタ
W1〜W8 パッドの合焦点高さ検出用の輝度検出窓
W ボール圧着面の合焦点高さ検出用の輝度検出窓
t ボールの圧着厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップのパッドと外部電極との間をボールボンディングによって配線するようにしたワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法であって、
所定のステップ間隔で撮像手段を上下方向に移動しながら、各ステップ位置においてパッドとボールの接合部分の平面画像を撮像し、
各撮像画像におけるパッドのエッジ部分の輝度変化を求め、該輝度変化が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をパッドの合焦点高さとするとともに、
各撮像画像におけるボール圧着面の輝度変化を求め、該輝度変化が最大となる撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとし、
該得られたパッドの合焦点高さとボール圧着面の合焦点高さの差分を採ることによってパッドに接合されたボールの圧着厚を算出することを特徴とするワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項2】
前記パッドの合焦点高さの検出に際し、撮像画像上のパッドのエッジ部分に所定大きさからなる輝度検出窓をパッドのエッジをまたぐように設定し、
該輝度検出窓内の各画素についてエッジと直交する向きに隣り合う画素同士の輝度差を求め、該得られた差分輝度値の最大値を当該撮像画像におけるパッドのその撮像高さにおける輝度レベルとし、
すべての撮像画像中において前記輝度レベルが最大となる撮像画像の撮像高さ位置をパッドの合焦点高さとすることを特徴とする請求項1記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項3】
前記パッドの合焦点高さ検出のための輝度検出窓を複数個設定し、
該複数個の輝度検出窓についてそれぞれ輝度レベルを算出し、
該得られた複数個の輝度レベルの加算値を当該撮像画像におけるパッドの輝度レベルとすることを特徴とする請求項2記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項4】
前記パッドの合焦点高さの決定に際し、各ステップの撮像画像におけるパッドの輝度レベルの算出結果を用いて2次曲線近似を行ない、
得られた近似曲線のピーク点位置に対応する撮像高さ位置をパッドの合焦点高さとすることを特徴とする請求項2または3記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項5】
前記ボール圧着面の合焦点高さの検出に際し、撮像画像上のボール圧着面部分に所定大きさからなる輝度検出窓をボールの半径方向に向けて設定し、
該輝度検出窓内の各画素についてボールの半径方向に沿って隣り合う画素同士の輝度差を求め、該得られた差分輝度値を加算して当該撮像画像におけるボール圧着面のその撮像高さにおける輝度レベルとし、
すべての撮像画像中において前記輝度レベルが最大となる撮像画像の撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとすることを特徴とする請求項1記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項6】
前記ボール圧着面の合焦点高さ検出のための輝度検出窓を所定の回転ステップ角でボール中心点の周りに回転させながら、各回転ステップ位置において輝度検出窓の輝度レベルをそれぞれ算出し、
該得られた複数個の輝度レベルの加算値を当該撮像画像におけるボール圧着面の輝度レベルとすることを特徴とする請求項5記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。
【請求項7】
前記ボール圧着面の合焦点高さの決定に際し、各撮像画像におけるボール圧着面の輝度レベルの算出結果を用いて2次曲線近似を行ない、
得られた近似曲線のピーク点位置に対応する撮像高さ位置をボール圧着面の合焦点高さとすることを特徴とする請求項5または6記載のワイヤボンディングにおけるボール圧着厚の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71450(P2006−71450A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255150(P2004−255150)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】