説明

ワイヤ切断装置を使用するための切断及び潤滑性組成物

本発明は、硬くかつもろい物質をワイヤソーで切断するためのゼリー状粒子を含む、切断及び潤滑性懸濁組成物に関する。該組成物は、インシチューにおいて部分的に中和されたポリ電解質と切断操作において使用される研磨剤粒子を懸濁させるグリコールとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬くかつもろい物質、例えば半導体のインゴット又は他のもろい物質、の加工対象品を、スラリーの形の研磨粒子で切断するための装置及びワイヤソーと共に使用するためのゼリー状の粒子即ち「ゲル−スラグ」を含む、新規な切断及び潤滑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主な用途の一つのために、切断装置(「ワイヤソー」又は「ワイヤウェブ」と呼ばれる)は、通常、互いに固定されたピッチで平行に配置された細かいワイヤの列を含む。加工対象品は、0.10〜0.20mmのオーダーの直径を有し、同じ方向に互いに平行に並んでいるこれらの細かいワイヤに押し付けられ、液状の研磨剤懸濁物流動体が、該加工対象品と流入してくるワイヤとの間に供給される液状のカーテンとして、動いているワイヤの上に注がれ、そうすることによりワイヤ上に研磨剤のコーティングを与え、研磨剤の磨く作用により該加工対象品をウェファー、ディスク、又はスライスされた部品へと切断する。ワイヤウェブが該加工対象品に衝撃を与える直前に、「ウェブ」に研磨剤の懸濁物の「毛布−カーテン」を落とす循環システムにより、液状の懸濁された研磨剤粒子は、動いている「ウェブ」又はワイヤの上で被覆される。このようにして、該液体により保持された研磨剤の粒子は、被覆されたワイヤにより移動されて、研磨又は切断効果を生む。上記のスライスするユニット又は機械(ワイヤソーと呼ばれる)は、米国特許第3,478,732号; 米国特許第3,525,324号; 米国特許第5,269,275号及び米国特許第5,270,271号に記載されており、該公報は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0003】
Wardらへの米国特許第6,602,834号は、イオン化された界面活性剤を使用して、研磨剤粒子間の静電的及び立体的反発を備える切断及び潤滑性組成物を開示する。記載された組成物はゲル−スラグを含まない。
【0004】
Stricotに発行された米国特許第5,099,820号は、シリコンカーバイドの粒子の水又は油中の懸濁物としての研磨剤液体を開示する。しかし、これらの先行技術の懸濁物は安定ではなく、「切断」用ワイヤに均一な被覆を与えない。さらに、該組成物は粒子の均一な懸濁を維持するために激しい撹拌を必要とし、流れのない条件では、まだ撹拌下にある対象物のスライシングの間でさえ、懸濁物は素早く沈降する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、長期間に亘って、研磨剤の凝集又は懸濁物の降下からの「硬いケーキ」の形成がなく、対象物が、より効率的かつ一貫して組成物中の該研磨剤又は粒により切断される、均一に分散された研磨剤物質のいつも変わらない供給を備える、新規な切断及び潤滑性組成物に対するニーズがさらにある。さらに、該組成物は、優れた潤滑性及び熱移動性を有して、切断現場で発生する摩擦熱を除去し、そうすることによりワイヤの寿命を延ばし、不稼働期間を回避すべきである。最後に、該組成物は研磨剤粒子の長期間に亘って安定な懸濁物を備えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
最も広い特徴に従うと、本発明は、硬くかつもろい物質、例えば半導体物質、太陽物質、光学及び光電子工学物質、シリコンインゴット、グラナイトブロック、LED基体などの加工対象品を切断するための装置と共に使用する切断及び潤滑性組成物に関する。さらに、そのような組成物は、特別な物質、又は特別な道具、自動車、機械若しくは他のタイプのデバイスの部品としてのセラミックの部品の正確な切断及び研磨のために効果的かつ有用である。本発明の他の用途は、例えば硬い基体の研磨又はスライシングにおいて、本発明の懸濁物の利益が有利な性能の結果を与えるとき、当業者により容易に想到されることができる。より具体的には、約70%(重量/重量)までの研磨物質を含み得る潤滑性組成物は、好ましくは約35℃未満の温度において
a)約0.0〜10重量%のノニオン性界面活性剤
b)約80〜99重量%の、2〜5の炭素原子を有するポリアルキレングリコール又はそのコ−グリコール、及び
c)約0.3〜6重量%の有機イオン性ポリ電解質
を混合するステップ、及びその後、適切なブレンシュテッド塩基で約4.0〜5.5のpHに電解質を部分的に中和して、ゼリー状のマイクロ粒子を形成するステップを含む。
【0007】
好ましいポリ電解質は、ポリアクリル酸−コ−マレイン酸(PACM)であるが、同様の性質及び構造を有するホモポリマー又は他のコポリマーもまた機能する。
【0008】
固体粒子の凝集又はスラリーの降下が起こらないように、切断ワイヤの被覆に研磨剤物質の均一な分布を許す、切断及び潤滑性組成物を提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、切断及び潤滑性組成物において、研磨性切断物質が組成物中で懸濁されており、長期間の流れのない貯蔵の間でさえ硬いケーキの形成又は粒子の凝集なしに懸濁されたままである該組成物を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、高品質のスライスされたシート、ウエハー、ディスク又は他の用途の中でも半導体及び太陽装置のために適する特別な形状の部品を提供することである。
【0011】
本発明の組成物の他の目的及び用途及び本発明のより完全な理解は以下の図面及び記載を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の組成物の懸濁物の安定性を示す
【図2】本発明の組成物のソフト沈殿性を示す
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に従うと、新規な懸濁物及び/又は潤滑性「キャリア」組成物は、半導体、レンズ、セラミック及び光電池ウエハー若しくはシート基体のための優れた品質のスライスされた部品を提供する、もろくかつ硬い物質でできているインゴットをスライスするための研磨剤タイプのスライシングツールの効率及び生産性を上げる。本発明の潤滑性組成物は、非凝集性の懸濁物における研磨剤粒子を維持し、ワイヤ及び加工対象品の間に形成される切断空間又は切断部位の両端へのこれらの研磨剤粒子のより均一な配分を許し、その結果、機械のスライシング又は切断の正確性及び効率が著しく改善される。また、該潤滑性組成物はスライシングするためのワイヤに潤滑性を与え、切断面で発生する摩擦熱を吸収する。このようにして、これらの特徴はワイヤ又はブレードの耐用年数を延ばし、ゆがみ、粗さ又は厚さの変動又は加工対象品の表面への表面下の損傷、その欠陥は半導体、光学ガラス又は光電池デバイスにおいて許されない、を最小にする。
【0014】
本発明の潤滑性/懸濁物「キャリア」は、約35℃以下の温度において
a)約0.3〜6重量%の有機イオン性ポリ電解質;
b)約0.0〜10重量%のノニオン性界面活性剤;及び
c)約80〜99重量%のポリアルキレングリコール溶媒、ここでアルキレン基は2〜5の炭素原子を含む、
を混合するステップにより製造される。好ましくは、該グリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール及びそれらのコ−グリコールからなる群から選択され、該グリコールは、約200〜600、好ましくは約200〜400、最も好ましくは約200〜300の分子量を有するグリコール(総配合物重量パーセントベースで)約80〜99重量%からなり、それにより、粘度は約50〜300cpsの範囲であり、次にポリ電解質を約4.0〜5.5のpHまで適切なブレンシュテッド塩基で部分的に中和して、ゼリー状の粒子を形成する。適切なルイス塩基もまた、部分中和のために使用され得るが、形成されたゲル−スラグは、ブレンシュテッド塩基でよく定義されず、得られる粒子スラリーの安定性は、幾分劣る。ゲル粒子は使用される前は極性溶媒中に別に貯蔵されてもよい。
【0015】
上記の組成物における使用に適する研磨物質は、ダイヤモンド、シリカ、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド、ボロンカーバイド、シリコンナイトライド、酸化セリウム、酸化アルミニウム又は他の硬い研磨物「粉末」物質を含み得る。最も好ましい研磨剤物質の一つはシリコンカーバイドである。一般的に、平均又はピーク粒径は、国際「FEPA又はJIS」グレードの表記及び特別な切断又は研磨方法への研磨剤スラリーの用途に依存して、約5〜50ミクロン、好ましくは8〜20ミクロンの範囲である。
【0016】
最も好ましくは、本発明に従って、4.0〜5.5のpHに中和された潤滑性キャリア組成物において、
a)約93.5〜99重量%の1以上のポリエチレングリコール、ここで該ポリエチレングリコールは約200〜400の分子量からなり、該組成物の粘度は室温条件(25℃)において約50〜300cpsである、
b)約0.3〜6重量%の約1500〜5000の範囲の分子量におけるポリアクリル酸−コ−マレイン酸(PACM)、及び
c)約0.3重量%のノニオン性界面活性剤
を含む該組成物が提供される。
【0017】
好ましくは、PACMは上記の範囲内の最終pHをもたらすようにテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)で化学量論の量まで部分的に中和される。
【0018】
本発明における使用に適切な有機ポリ電解質(アニオン性PE)の例は、pHが部分的に中和された以下のポリマーを含むがそれらに限定されない。
アクリル酸、
メタクリル酸、
マレイン酸、
アルケニルスルホン酸、
芳香族アルケニルスルホン酸(即ち、例えばスチレンスルホン酸)、
アルキルアクリロキシスルホン酸(即ち、例えば2−メタクリロキシエチルスルホン酸)
アクリルアミドスルホン酸など、
上の又は他の適切なモノマー単位の組み合わせのコポリマー。
【0019】
好ましいポリ電解質は、約1000〜10000の分子量を有するポリアクリル酸(PAA)、約1500〜8000の分子量を有するポリアクリル酸−コ−マレイン酸(PACM)などを含む。上のポリ電解質の「非中和」型(即ち、遊離の酸の状態のアニオン性PE)は本発明において機能せず、SiCのPEG懸濁物のソフト沈殿性を強化しないことが示された。アニオン性PE又は電解質の部分的に「中和された」形のみが適切に機能して、要求されたゲル−スラグ又は混和性のゼリー状粒子を形成する。
【0020】
PEG媒体中で例のPACMのインシチューでの中和により約35℃未満の温度において製造された要求されるゼリー状の粒子は、主に、例のPACMと、取り囲むPEG環境との「有効」電荷の相違のために存在する。中和された例のPACMポリマー鎖は性質において高度にアニオン性であり、基本的に非水性、幾分極性であるが、ノニオン性であるPEG媒体中に存在する。PEG環境は、PEG媒体中で約0.5〜5%の水を含む必要があることに留意されたい。この水は、手助けされた極性環境を提供し、該環境においてゲル−スラグが安定した形で存在する。しかし、〜15から20%を超える水分含有量は、ゲル−スラグを溶解し始め、本発明のキャリアから作り出されるスラリーの安定性とソフト沈殿性を弱める。高度にイオン性の種は非イオン性又はより極性の低い媒体中で合体する傾向があるので、中和されたPACMポリマー鎖もまた、PEG媒体において、別の組成物及び取り囲むPEG媒体から別のイオン性の局在化した領域へと局所的に凝集する傾向がある。
【0021】
PEGは、性質において幾分極性であるが非イオン性なので、部分的に中和された、例のPACMのカルボキシ基と「ゼリー状の粒子」を作るPEGポリマー鎖の極性部分との相互作用があり(即ちフラクションの混和性)、該粒子は溶媒内で膨潤されているが溶解されてはいないポリマーに似ており、取り囲むPEG媒体と異なる組成物でありかつ異なるイオン性である。この異なるイオン性は例のPACM「ゲル−スラグ」が適切に形成するために必要である。過剰の水における素早くかつ完全な溶解度もまた、例のPACMゲル−スラグの高いイオン性の証拠である。
【0022】
懸濁物媒体中の研磨剤物質の濃度は、ほとんどの高体積用途について、典型的に約5〜70重量%、好ましくは約20〜55重量%、最も好ましくは約35〜50重量%の範囲であり得る。
【0023】
含まれることができ、かつ懸濁物又は分散剤として有用である追加の極性溶媒は、アルコール、アミド、エステル、エーテル、ケトン、グリコールエーテル、又はスルホキサイドを含む。具体的には、極性溶媒の例はジメチルスルホキサイド、ジメチルアセトアミド(DMAC),N−メチルピロリドン(NMP),ガンマブチロラクトン、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを含む。
【0024】
本発明のもう一つの成分は、その中で本発明の「ゲル−スラグ」が形成される媒体として、種々のポリエチレングリコール(PEG)の組み合わせを含む。PEGベースは、200〜300の好ましい分子量のPEG約50〜99重量%(配合物全体に基づく重量%)及び約300〜約1500の範囲の分子量を有するPEG約1〜50重量%を含み得る。より高い分子量のPEGは、すべての混合割合において、より低い分子量のベースPEGに可溶でなければならない。PEG又は他のグリコールの混合物を含むそのような媒体は、潤滑させ、部分的に中和された、高い粘度の本発明のキャリアをもたらす。これは、当業者に知られている、ある種の研磨又は他の用途のために有利であり得る。
【0025】
キャリアの製造
本明細書で挙げられる適切なポリ電解質物質の例として、PACMは、要求されるゲル−スラグが適切に形成するためには、PEG媒体中で部分的に中和されていなければならない。もし、PEGの外、塩基及び例のPACMの両方がそこから由来するところの水媒体中で中和され、続いて該中和されたPACMがPEGに添加されると、キャリア内で研磨剤粒子を安定化させる主な要因であるマイクロゲル−スラグが適切に形成しないか又は全く形成せず、キャリア物質は適切に機能しない。
【0026】
例のPACMは、撹拌しながらPEG媒体に最初に添加されて、均一な分散物を与え、続いて約4.0〜5.50の要求されるpHに適切な塩基で中和されなければならない。最初に,塩基,続いて例のPACMを添加することにより、例のPACM鎖の中和の種々のレベルが起き、中和された例のPACMに種々のレベルのイオン性をもたらす。この結果、PEG媒体中でのゲル−スラグ形成もまた変化し、得られる系の性能は変化に富み、一貫性はない(inconsistent)。例のPACMポリマー鎖は、ブレンシュテッド塩基が添加されるとき、均一に(これは、PEGに最初に添加された例のPACMで最も適切に達成される)かつ一定の撹拌下で中和されることが非常に望ましい。
【0027】
要求されるゲル−スラグが適切に形成するために、PEG媒体内でのPACMの中和されたpHは約4.0以上でなければならない。これよりずっと低いpHは、例のPACMの十分を中和せず、PEG溶媒中に局在化したイオン性ゲル−スラグを形成するのに必要な高いイオン性を作らない。
【0028】
中和点を超えて添加された塩基で(即ちpH〜/>=6)、過剰のイオン性物質が低いイオン性PEG媒体に添加されており、局在化された実施例のPACM鎖と取り囲むPEG/水媒体間のイオン強度の差(Δμ)を減少させる。Δμのこの減少はゲル−スラグ形成を減少させる。ゲル−スラグの形成は、中和された例のPACM対PEG/水媒体のイオン性(即ち高いΔμ値)の有意な差に部分的に依存する。
【0029】
キャリアは、要求される物理化学的「ゲル−スラグ」が適切に形成されるときだけ、いかなる静電的又はゼータポテンシャル反発の寄与にも関わらず、研磨剤粒子の懸濁物を維持するよう機能することが包括的な試験を通じて明らかに確立された。
【0030】
ゲル−スラグ形成は、視覚的にも測定からも見られることができる。視覚による検査で測定された生成物の曇り度(すなわち、濁り)は、安定化性能の半定量的指標であった。生成物の曇り、従って、安定化させるためのゲル−スラグの相対的な数及び密度を数値的かつ正確に決定するために、比濁計として公知のより定量的なツールが使用され得る。
【0031】
キャリアの性能は、2つの定量的な測定ツールを使用することにより測定される。
i)SSR(ソフト沈殿表示(Soft-Settling Reading))。この方法は、既知の直径及び表面積の円形の底を有する標準的なシャフトの、標準的な、製造されたスラリーであって標準的な円錐形の底のある管、該管において円錐の底は浸されたシャフトの円形の底と同じ直径である、に入れられたスラリーを通しての浸透に対する抵抗をグラム又はポンドで測定する。経時的なシャフトの浸透に対する抵抗が低いほど、スラリーはより安定である。そのような測定は「イマダ」により製造された基準化されたツールで行われる。適切に製造された本発明の組成物の場合、数週間の期間に亘って、標準スラリーのSSRの表示は「0」である。これは、数時間〜数日後に初めて>0のSSR値を与えるところの、曇っているというよりはむしろ澄んでいるように見えるところの不適切に製造された組成物と鋭い対比である。さらに、ストレートのPEG−200及びPEG−400のスラリーで行われるそのような試験は、図2に見られるように、数時間〜1日後に初めて>0のSSRの表示を示す。
ii)SVR(残留スラリー体積(slurry volume remaining)。この方法は、固体分散物が液状スラリーの体積の100%を占めるオリジナルの均一なスラリーからの経時的な固体沈殿速度を測定する。不安定なスラリーでは、懸濁された粒子により占められる体積(SVR)は、固体が凝集して懸濁物から降下して容器の底に硬いケーキを形成するにつれ急速に落ちる。スラリーのこの傾向は、時間に対して容易にプロットされることができる。さらに、懸濁物から降下する、本発明ではないスラリーにおける粒子は、容器の底に硬くされたケーキを形成すし、それはSSR法により測定される。適切に製造された本発明の組成物において、SVR値はずっとゆっくり降下し、不安定なスラリーの場合よりずっと高いa%体積において最後に平衡状態を保つ。さらに、そのようなSSLスラリーと組み合わされたSSRは、図1に見られるように、SVR表示又は時間にかかわらず常に0を示す。
【0032】
添付の図面、「SSL−160シリーズ製品の懸濁物対安定性」(即ちSVRのグラフ)及び「SSL−160シリーズソフト沈殿対時間」において、「ソフト沈殿された」スラリーの懸濁のレベルは、中和されたPACM成分のレベルが上がるにつれて上がる(即ち、SSL−162>SSL−161>SSL−160>>>PEG);SSLは本発明のキャリアに割り当てられた名前である。部分的に中和されたPACM成分のレベルが上がれるにつれて、SSL媒体中の「ゲル−スラグ」の上げられた濃度があり、従って、時間が経つにつれて、スラリー内での研磨剤粒子の沈殿に対して又は降下に対してさえ、より大きな抵抗がある。
【0033】
SSL−162には、部分的に中和された例のPACMの高いレベル及びキャリアの濁りの高いレベルもまたある。この濁りは、部分的に中和された例のPACMにより生み出された局在化された「ゲル−スラグ」による光の屈折及び回折から生じる。ゲル−スラグは取り囲むPEG−200媒体の密度より少し大きい粒子の密度を有する。
【0034】
アニオン性ポリ電解質は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩基、例えば水酸化カリウム又は水酸化バリウム又は非金属性のアルキルアンモニウムヒドロキサイド、例えばテトラアルキルアンモニウムヒドロキサイド、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)により中和されることができる。
【0035】
ある中和されたPACM濃度における最大のゲル−スラグ形成が望ましいとき、非金属の水酸化物が好ましい。
【0036】
以下の実施例は本発明の方法の操作を説明する。しかし、列挙された実施例はいかなる方法においても、本発明の完全な範囲を制限すると理解されるべきではない、なぜなら上記の指針原理に照らして本明細書に含まれる教示の精神及び概念から逸脱することなく種々の変更が可能だからである。本明細書に述べられたすべての百分率は、他に明記された場合を除き重量に基づく。
【実施例】
【0037】
実施例1
キャリアの製造
有効な撹拌下にある、8.9Kgの水の低いPEG−200に、ポリアクリル酸−コ−マレイン酸の50%水性溶液、0.21Kgが25℃において添加される。混合物は均一な分散物へと撹拌される。
【0038】
該撹拌されている混合物に、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(即ちTMAH)の25%水溶液、0.25Kg又は有効量のTMAHのいずれかがゆっくり添加されて、混合物全体のpHを5.0にする。
【0039】
任意的に、ノニオン性界面活性剤例えばポリメチルシロキサン(即ちその例はFC−99又はSAG−2001を含む)が、界面張力を最適化するため、発泡を最小限にするため、及び上記の中和された混合物の湿潤化能力を改善するために添加されてもよい。
【0040】
該組成物は、流れのない貯蔵条件においてさえ数週間又は数カ月の間、安定なスラリー懸濁物を提供する懸濁物媒体として、ワイヤカッティング操作において使用されることができる。
【0041】
実施例2
キャリアの製造
環境温度において有効な撹拌下にある、9.1Kgの水の低いPEG−200に、約3500のピーク分子量のポリアクリル酸の50%水性溶液、0.13Kgが添加される。混合物は均一な分散物へと撹拌される。
【0042】
該撹拌されている混合物に、バリウムヒドロキサイドの25%水性溶液、0.12Kg又は有効量のいずれかがゆっくり添加されて、混合物全体のpHを5.0にする。
【0043】
任意的に、ノニオン性界面活性剤例えばポリメチルシロキサン(即ちその例はFC−99又はSAG−2001を含む)が、界面張力を最適化するため、発泡を最小限にするため、及び上記の中和された混合物の湿潤化能力を改善するために添加されてもよい。
【0044】
所望される粒径分布の、懸濁されたシリコンカーバイド研磨剤粒子を有効量含む組成物が、ワイヤソーでシリコンインゴットを切断するために使用されることができる。
【0045】
実施例3
【0046】
15%重量/重量のSiCを有する、図1及び2において使用された組成物

【0047】
SiCスラリーの「ソフト沈殿」性のレベルを定量的に測定するために、正確な測定ツールがPPT研究所の化学者及び技術者により設計及び作成された。このツールの操作及びコンセプトは上で説明されている。再考すると、「ソフト沈殿ツール」は、標準の形態の形の容器の底から所定の深さ又は距離まで、先端がとがっていないシャフトのスラリー浸透に対する(グラムにおける)抵抗を基本的に測定する。特別な円錐形の標準的な管がスラリーの「ハード沈殿」傾向を悪化させるために使用され、それにより良好な懸濁物のキャリアを悪いものから区別する。該管は標準レベルの15%研磨剤(SiC)を含む。選択された研磨剤のレベルは部分的に任意であるが、固体沈殿法の良好な視覚的観察のためのレベルを表わし、便利なツール測定のためのレベルである。15重量%の研磨剤含有量がそのようなレベルである。
【0048】
ツールは、繰り返し可能でありかつ正確な方法で「ケーキ浸透抵抗」を測定するので、標準的な棒浸透深さ及びツールの較正の両方が、毎日チェックされる。受け入れ可能な懸濁物キャリア内で形成されるスラリーについては、浸透抵抗の「ソフト沈殿表示」(即ちSSR)は、低いこと、即ち、コントロールされた試験条件下での長い貯蔵期間に亘って<25gであることが期待される。優れた懸濁物キャリア内で形成されるスラリーについては、浸透抵抗の「ソフト沈殿表示」(即ちSSR)は、非常に低いこと、即ち、コントロールされた試験条件下での長い貯蔵期間に亘って0gであることが期待される。悪い懸濁物キャリア(例えば標準的なPEG−200,300又は400)中で形成されるスラリーについては、SSRは、非常に短い「貯蔵」期間の間、典型的には35〜50g以上の範囲である。言い換えると、時間がたつにつれて、あるスラリーのSSRが低いほど、スラリーは、より安定であり、均一であり、よりむらがなく(consistent)、より良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤソー又は他の切断若しくは研磨ツールによる、硬くかつもろい物質の加工対象品の切断又はスライシングにおける使用のための潤滑性懸濁キャリア組成物において、
a)約0〜10.0重量%のノニオン性界面活性剤;
b)約80〜99重量%の、2〜5の炭素原子を有するポリエチレングリコール又はそのコ−グリコール;
c)約0.3〜6重量%の有機イオン性ポリ電解質
を混合し、次に、塩基で約35℃未満の温度において約4.0〜5.50のpHに該ポリ電解質をインシチューで部分的に中和して、取り囲む媒体の密度より少し高い密度を有するゼリー状の、懸濁されたマイクロ粒子を形成することにより製造された、前記組成物。
【請求項2】
該界面活性剤がポリアルキルシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ポリ電解質が部分的に中和されたポリマー状の酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該部分的に中和されたポリ電解質が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のコポリマー並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該ポリ電解質が約1000〜100万の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該ポリ電解質が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキサイドで部分的に中和されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該ポリ電解質が金属水酸化物で部分的に中和されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約1〜65重量%の研磨剤粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリエチレングリコールが、PEG200、PEG300、PEG400及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約200〜1000の分子量を有する少なくとも1のポリエチレングリコール約90〜99重量%及び極性溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ワイヤソー又は他の切断若しくは研磨方法により、硬くかつもろい物質の加工対象品を切断するための方法において、請求項1に記載の潤滑性懸濁キャリア組成物を用意することを含む、前記方法。
【請求項12】
該潤滑性懸濁キャリアが、その中に懸濁されている研磨剤粒子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該研磨剤粒子が、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ボロンカーバイド、アルミア、ジルコニア、酸化セリウム、シリカ、水晶及びタングステンカーバイドを含む群から選択されたものを含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2011−518915(P2011−518915A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506243(P2011−506243)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/012857
【国際公開番号】WO2009/134236
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(500483873)ピーピーティー リサーチ,インク. (3)
【Fターム(参考)】