ワクチン接種ノードを用いるプログラムされた免疫応答
本発明は、抗原に対する免疫応答を調節するための組成物および方法を提供する。本発明の1つの局面は、抗原提示およびDC活性化の両方を遂行できるヒドロゲル粒子を含む粒子に基づく抗原送達システム(ワクチン接種ノード:VN)に関する。VNは、投与部位へDCを誘引することができる化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアをさらに含んでもよい。本発明の別の局面は、感染症、癌および自己免疫疾患などの様々な疾病の予防および/治療のために抗原提示細胞活性化を調節するためのVNの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月9日付で出願された米国仮出願第60/485,803号および2004年5月11日付で出願された米国仮出願第60/569,618号のそれぞれの優先権を主張する。両仮出願の全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫療法とワクチン開発の分野に関する。より詳細には本発明は、侵入する病原体を破壊するための、免疫学的事象のカスケードを模倣する粒子に基づくサブユニットワクチンに関する。粒子に基づくワクチンは、自己免疫疾患、感染症および癌などの様々な疾病に対する免疫学的応答を調節することに、特に有用である。
【背景技術】
【0003】
タンパク質抗原(例えばウイルスタンパク質または腫瘍特異的抗原)によるワクチン接種は、その低毒性および広範囲の適用可能性のために、莫大な臨床上の可能性を有する新しい戦略である。しかし、タンパク質に基づくワクチンは、次の理由のために限られた臨床的成功を収めたに過ぎない。
【0004】
第1に、タンパク質に基づくワクチンは、送達の問題を有する。具体的には、タンパク質療法の有効な利用には、生物活性を有する物質を病変組織および細胞に送達することができる材料の開発が必要である。現在、大多数のタンパク質送達ビヒクルは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)などの疎水性ポリマーに基づいている。O'Hagan, D.らによる米国特許第6, 306, 405号 および 6, 086, 901号、ならびに Adv. Drug Delivery Rev, 32, 225 (1998) を参照のこと。しかしながら、PLGAに基づく送達ビヒクルは、水への溶解度が劣るために問題があった。タンパク質を乳化処理によりPLGAに基づく材料に封入するが、これはタンパク質を有機溶媒、高いせん断応力および/または超音波キャビテーションに曝す。この処理は、しばしばタンパク質変性と不活性化を引き起こす[Xing D ら、Vaccine, 14: 205-213 (1996)]。
【0005】
ヒドロゲルが、代替のタンパク質送達ビヒクルとして提案されてきた。それは穏和な条件下でタンパク質を完全に水性の環境に封入できるからである。[Park, K.ら、Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery; Technomic Publishing Co, Lancaster, PA. (1993); Peppas. N.A., Hydrogels in Medicine and Pharmacy; CRC Press: Vol II, Boca Raton, Fla., (1986); および Lee, K. Y. ら、Chemical Reviews, 101: 1869-1179 (2001) 参照]。ヒドロゲルは、水が分散媒であるコロイド状ゲルである。タンパク質を添加したミクロンサイズのヒドロゲル粒子は、十分に小さく、貪食されうる。現在、ミクロンサイズのヒドロゲルは、生物学的条件下で分解しない架橋剤を用いて合成されてきており、したがって薬物送達用には限られた成功しかしていなかった。
【0006】
いくつかの利点により、ヒドロゲル技術を上述の細胞内および細胞外の薬物送達に使用することは魅力的である。封入手法は、精製されたタンパク質、ペプチド、(遺伝子免疫化用の)DNA、多糖類、および(腫瘍または確定していないアレルゲンに対する免疫化にとって興味ある)全細胞溶解物などの、ワクチン接種および免疫療法にとって興味あるいくつかの型の生体高分子に適用可能である。リガンドによる修飾が可能なゲル粒子が、非常に大きな重量分率の抗原を封入する(下記の実施例においては、粒子の〜75重量%が封入された生体高分子である)。これはポリエステルのミクロスフェアのような、最大投入量が一般に30重量%未満、しばしば10重量%未満の手法とは対照的である。ゲル粒子の安定性はリポソームより優れている。リポソームは、閉じこめた薬剤を急速に、そして予測不可能に「漏らす」ことが知られている。ゲル粒子は、閉じこめた生体高分子を最小の損失で、1週間まで懸濁液中に保持する。最後に、局所的環境に敏感なペプチドまたは合成ポリマー配列を含むことによる、粒子の破壊を修正する能力が、他の粒子状薬物送達技術に勝る主な利点である。
【0007】
タンパク質に基づくワクチンのもう1つの限界は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化できないことである。CTLの活性化は、ウイルスおよび腫瘍に対する免疫の進展には決定的に重要である。CTLは、樹状細胞(DC)によりクラスI抗原提示経路を介して活性化される。DCは、骨髄中の造血幹細胞に由来し、未成熟な細胞として、すべての組織内、特に環境と接する組織(例えば、皮膚、粘膜表面)内、およびリンパ器官中の組織内に広く分布している。未成熟DCは、病原体侵入に続いて末梢組織中の炎症部位へ招集される。外来抗原の内部移行は次に、DCの成熟と末梢組織からリンパ器官への移行を引き起こすことができる。ケモカインへの応答性およびケモカインレセプターの発現が、DCの炎症部位への招集過程およびリンパ器官への移行に必須な要素である。抗原の獲得および処理に続いて、DCは、液またはリンパ液を介してリンパ器官内のT細胞に富む領域へ移動し、同時にケモカインおよびケモカインレセプター発現プロフィールの成熟および調節を受ける。
【0008】
未成熟DCは、貪食作用、マクロピノサイトーシスにより、または様々な細胞の表面に存在するレセプターとの相互作用およびエンドサイトーシスを介して抗原を捕獲する。抗原の処理に続いて、抗原ペプチドをDC表面上のMHC分子により、CD4+、CD8+または記憶T細胞に提示することができる。DCは、内因性および外因性の両方の抗原を処理することができ、MHCクラスIまたはII分子のいずれかに関連してペプチドを提示する。典型的には、外因性の抗原は、内部移行され、処理され、MHCクラスII分子上に搭載される;一方で内在的な抗原は、MHCクラスI分子上に搭載される。例えば、DC自体がウイルスに感染した時には、プロテアソームがウイルスタンパク質をペプチドに分解し、それを細胞質ゾルから小胞体へ輸送することになる。未成熟DCによって発現された様々な細胞表面レセプターが、抗原の取り込みにおいて機能し、さらにまたMHCI経路を介して抗原を提示することができる。
【0009】
抗原の曝露および活性化に続いて、DCは、リンパ器官のT細胞領域中へ移動する。これはケモカイン/ケモカインレセプター相互作用によって調節され、様々なプロテアーゼおよび対応するレセプターにより補助される過程である。細胞表面レセプターは、抗原の取り込みを促進するだけでなく、DCとT細胞間の物理的接触を仲介する。DCにより分泌される可溶性サイトカインのプロフィールは、DCの成長および成熟の異なる段階に応じて変化し、未成熟および成熟DCに特徴的な様々なエフェクター機能に影響を及ぼす。成熟したDCは、IL−12、IL−1a、IL−1b、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、および MIFを含む、種々様々のサイトカインを(必ずしも同時にではなく)発現できる。発現される正確なサイトカインレパートリーは、刺激の性質、DCの成熟段階、および存在するサイトカインの微環境に依存することとなる。
【0010】
要約すると、DCは、免疫応答を開始し調節することができるために、ユニークな抗原提示細胞(APC)である。少数のDCおよび低レベルの抗原でさえ、強い免疫応答を誘発することができる。したがって、DCの活性化および成熟の操作は、有効な治療処置となる可能性がある。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、外来抗原および自己抗原を含む抗原への免疫応答を調節する組成物と方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの局面は、抗原の提示およびDCの活性化の両方が可能なヒドロゲル粒子を含む粒子に基づく抗原送達システムを目的とする。ヒドロゲル粒子は、ヒドロゲル粒子中に封入された免疫原およびヒドロゲル粒子表面上のリガンドを含む。表面のリガンドは、抗原提示細胞(例えば樹状細胞、樹状細胞の前駆体、単球またはマクロファージ)と相互作用し、活性化信号または成熟信号または両方を抗原提示細胞に与える。以下、粒子に基づく抗原送達システムを、ワクチン接種ノード(VN)と呼ぶ。VNはさらに、投与部位へ未成熟DCおよびDC前駆体を誘引することができる化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアを含んでもよい。
【0013】
本発明の別の局面は、DC活性化および成熟を調節するためのVNの使用を目的とする。1つの実施態様では、VNを病原体または癌細胞を除去するために、抗原に対する免疫応答を刺激するために用いる。別の実施態様では、VNを自己免疫疾患またはアレルギー反応の処置用に免疫応答を抑制するために用いる。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、本発明のヒドロゲル粒子を作成するための方法、およびヒドロゲル粒子および化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアの両方を含む微小コロイドミセルVN粒子を形成するための方法に関する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、ワクチン接種ノード(VN)を用いて、外来抗原と自己抗原を含む抗原に対する免疫応答を調節するための組成物および方法に関する。免疫化および自然感染により駆動される免疫応答の両方において、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)が、インビボでナイーブT細胞をプライミングする能力を持つと知られている唯一の細胞であるため、T細胞活性化を開始する際に重大な役割を果たす。[Banchereau ら、Nature, 392: 245-52 (1998); Banchereau ら、Annu Rev. Immunol., 18 : 767-811 (2000); および Norbury ら、Nat Immunol., 3: 265-71 (2002)]。VNは、本明細書に記述される制御された物質放出および送達技術を用いて、ワクチン接種部位の局所的微環境を「操作」し、DCなどのAPCをプログラムすることができる、粒子に基づくワクチン組成物である。免疫応答を調節する際には、VNがまずハブのように作用して、好中球、単球、NK細胞、マクロファージ、DC(成熟および/または未成熟DCの双方)などの多くの様々な免疫細胞を誘引し;そして特に、VNは単球および/または未成熟DCを誘引することができる。マイクロおよびナノ封入粒子を用いて、VNは、成熟タンパク質およびDCモジュレーターと共に環境を創り出し、これにより搭載DCがクロス−プライミングされ、成熟し、そして続いて被検体の流入領域ホストリンパ節(HLN)に移動することが可能になる
【0016】
明細書および請求項(請求項に与えられた範囲も含む)についての明瞭で一貫した理解を提供するために、次の定義を与える:
【0017】
用語「生体高分子」は、生命過程の構造または調節に関係する高分子を意味する。生体高分子の例には、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、ステロイド、脂質、および細胞溶解物などのそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書に用いられる用語「細胞膜タンパク質」とは、細胞外領域(ドメイン)を有するタンパク質、および細胞膜の表面上または脂質二重層中に位置するタンパク質を含む、細胞膜に関連するあらゆるタンパク質である。タンパク質は、糖タンパク質であってもよい。好ましくは、タンパク質は腫瘍細胞の表面抗原である。細胞膜は、多細胞生物、より好ましくは哺乳動物細胞、そして最も好ましくは腫瘍細胞などから得られた単離細胞のものであってよい。
【0019】
抗原に対する「免疫応答」とは、哺乳類の被験体中での対象とする抗原に対する体液性のおよび/または細胞性の免疫応答の進展である。「細胞性免疫応答」とはTリンパ球および/または他の白血球によって媒介される免疫応答である。細胞性免疫の重要な1つの態様には、細胞傷害性リンパ球(「CTL」)による抗原特異的応答が含まれる。CTLは、主要組織適合複合体(MHC)によりコードされ細胞表面上に発現されるタンパク質と共同して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解、を引き起こし促進することに役立つ。
【0020】
本明細書に用いられる用語「抗原」は、抗体によって認識されるあらゆる作用物質(例えば、あらゆる物質、化合物、分子[高分子を含む]、または他の部分)を意味する。一方、用語「免疫原」は、個体中で免疫学的応答を誘発することができるあらゆる作用物質(例えば、あらゆる物質、化合物、分子[高分子を含む]、または他の部分)を示す。これらの用語は、個々の高分子、または抗原性高分子の同質または異質の集団を意味するために用いることができる。この用語は、1つ以上のエピトープを含むタンパク質分子または少なくともタンパク質分子の一部を包含すること、を意図したものである。多くの場合、抗原は免疫原でもあり、したがって用語「抗原」はしばしば用語「免疫原」と交換可能に用いられる。そこでその物質を、免疫化した動物の血清中の適切な抗体の存在を検出するために、抗原として分析の中で用いることができる。
【0021】
用語「非自己抗原」とは哺乳動物に侵入する抗原または物質であるか、あるいは哺乳動物中に存在するが哺乳動物自体の構成要素とは検出可能な態様で異なるかまたは外来である抗原または物質である。一方「自己」抗原とは、健康な被験体中でそれ自体の構成要素とは検出可能な態様で相違しないか、または外来でないものである。しかしながら、ある病態を含むある条件下では、個体の免疫系は「非自己」抗原を自分自身の要素として「自己」と同定し、「非自己」に対する免疫応答を開始しない。反対に、個体の免疫系が「自己」抗原を「非自己」として同定し、「自己」抗原に対する免疫応答を開始する可能性もあり、それが自己免疫疾患となる。「自己」抗原をまた、自己免疫疾患の治療において寛容を引き起こすための免疫原として用いることもできる。
【0022】
「腫瘍特異的抗原」とは、哺乳動物中で腫瘍が成長している時に腫瘍細胞中にのみ存在する抗原を意味する。例えば、メラノーマ特異的抗原は、メラノーマ細胞中でのみ発現され、正常なメラノサイト中には発現されない抗原である。
【0023】
「組織特異的抗原」とは、哺乳動物中で、ある種類の組織中にある時のみ存在する抗原を意味する。例えば、メラノサイト特異的抗原とは、正常なメラノサイトおよび異常なメラノサイトを含むすべてのメラノサイト中で発現される抗原である。
【0024】
「組織移植抗原」とは、移植片対宿主病に含まれる抗原を意味する。組織移植抗原は、免疫系による組織移植片の受容または拒絶を決定する。組織移植抗原の例には組織適合性抗原が含まれるがこれに限定されない。
【0025】
用語「一価の」とは、宿主動物中で単一の型の抗原に向けられた免疫応答を誘発することができるワクチンを意味する。対照的に、「多価の」ワクチンは、宿主動物中で疾病に関連したいくつかの(すなわち1より多い)毒素および/または酵素(例えばグリコプロテアーゼおよび/またはノイラミニダーゼ)に対して向けられた免疫応答を誘発する。ワクチンは、ある特定の生物体または免疫原に制限されることを意図していない。
【0026】
本明細書で用いられるように、用語「自己免疫疾患」とは、発現される自己免疫レパートリーの定性的および/または定量的欠陥により現れる免疫ホメオスタシスの変化に関連した、一連の持続性の臓器特異的または全身的な臨床症状および徴候を意味する。自己免疫疾患は、病気の個体に見出される自己抗原上のエピトープに対する、抗体のまたは細胞障害性の免疫応答により特徴づけられる。個体の免疫系は、次にそれら特定の自己抗原を提示する細胞および組織を目標とした炎症カスケードを活性化する。個体自身の免疫系により攻撃された抗原、組織、細胞型または器官の破壊が、病気の症状を生じさせる。臨床的に重要な自己免疫疾患には例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病、および自己免疫性血小板減少性紫斑病が挙げられる。
【0027】
用語「抗原脱感作」とは、哺乳類被験体にある期間に亘って、免疫応答が起こっている抗原を与えることにより免疫応答を減少させる方法を意味する。免疫細胞を抗原へ繰り返し曝すことによって、細胞障害性反応の減少が見られる。そのような脱感作には、対象の抗原に対するTH−1様の反応からTH−2様の反応への切り換えが含まれ得るがそれに限定されない。抗原脱感作を、自己免疫およびアレルギー性疾患の治療のために用いることができる。
【0028】
「アレルゲン」とは、過敏状態を開始できる免疫原、またはアレルゲンに既に感作されている哺乳動物被験体に過敏性反応を引き起こすことができる免疫原である。アレルゲンは、生体高分子、環境の免疫原(例えば花粉)、または非自然物、合成抗原であり得る。
【0029】
本発明の1つの局面は、特定の疾病の治療および/または予防のために、インビボで哺乳類DCを誘引し、続いてこれをプログラムすることができるVNに関する。VNは通常、封入した免疫原を提供する抗原送達/DC成熟粒子を含み、一方で同時にDCに成熟/活性化信号を送達する。VNはさらに分解性マイクロスフェアを含み、これが封入された化学誘引物質を定常的に制御して放出するようにしてもよい。抗原送達/DC成熟粒子および分解性マイクロスフェアは、一緒に投与するかまたは投与に先立って物理的に合体させることができる。
【0030】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、インビボの設定において、DCと病原体との相互作用を模倣して成熟/活性化信号を同時にDCに送達する。病原体は、同時に抗原材料を提供しDC成熟経路を刺激するのである。インビボでのDCの活性化は、従来のDCに基づくワクチンに比較して、時間および費用の両方で優位である。例えば、患者からDCを分離し、DC集団をインビトロで増殖させ、増殖したDCを抗原とインビトロでインキュベートし、DCを再注入することがもはや必要でないため、総治療時間と費用が減少する。
【0031】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子を、塩析した水性免疫原エマルジョンの存在下でヒドロゲル前駆体モノマーを重合させることにより形成する。適当なゲルモノマーには、ポリ(エチレングリコール)[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)−ポリエステルアクリル化/メタクリル化ブロックコポリマー(例えば、アクリル化PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)[PLGA]−PEGまたはPLGA−PEG−PLGA)その他の親水性および両親媒性ビニルモノマーが含まれる。特異的な生体高分子官能基を、ペプチドで修飾されたモノマー(アクリル化/メタクリル化PEG−ペプチド−PEG、またはPEG−ペプチドなど)との共重合によってゲル粒子に組み入れることもできる[Irvine ら、Biomacromol., 2: 85-94 (2001); West ら、Macromolecules, 32: 241-244 (1999)]。ヒドロゲル粒子は、通常は10〜1000nm、好ましくは200〜600nmの平均直径を有する。
【0032】
免疫原はヒドロゲル粒子中に封入される。免疫原の例には、ポリペプチド、脂質および多糖類などの非自己または自己抗原として働く可能性のある生体高分子、腫瘍特異的抗原、組織特異的抗原、組織移植抗原、が含まれる。免疫原にはさらに、タンパク質抗原をコードするかまたはそれ自体が抗原として働くポリヌクレオチドが含まれる。抗原を発現することができるDNA構築物などのポリヌクレオチドを用いる利点は、それらが比較的安価で、一般にポリペプチドおよび多糖類より安定していることである。さらに、DNA発現構築物は、「無制限の」抗原送達という潜在的利点を有している。成功裡にDNA構築物で形質導入が成功して各DCは、免疫化部位に「抗原工場」を創設して抗原を恒常的に産生することができるからである。免疫原には、自然には存在しないが(合成抗原)免疫関連障害に対して治療効果を有している抗原がさらに含まれる。
【0033】
1つの実施態様において、免疫原は微生物から得られるかまたは微生物起源の生体高分子であり、その微生物は例えば、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaなどである。
【0034】
別の実施態様において、免疫原はウイルスから得られるかまたはウイルス起源の生体高分子であり、そのウイルスは例えば、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス、およびコロナウイルス、などである。
【0035】
別の実施態様では、免疫原は、原虫類と蠕虫などの寄生生物から得られるかもしくはそれら起源の生体高分子である。
【0036】
別の実施態様では、免疫原は、腫瘍特異的抗原または他の病原体から得られるかもしくはそれら起源の生体高分子である。
【0037】
さらに別の実施態様では、免疫原は、細胞溶解物のような生体高分子の混合物である。
【0038】
さらに別の実施態様では、免疫原は、組織移植抗原、自己抗原またはアレルゲンを含み、免疫寛容の誘導または免疫応答の抑制のために投与される。
【0039】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、エンドサイトーシス、食作用またはマクロピノサイトーシスにより一度内部移行されると、生体高分子を細胞へ細胞内送達することができる。1つの実施態様では、本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、細胞内区画へ粒子が送達されたときに、封入された生体高分子の選択的な放出を可能にするペプチド配列および/またはDNAプラスミドをさらに含んでいる。封入された生体高分子の特異的放出を、いくつかのメカニズムによって達成することができる。タンパク質またはペプチドの抗原のまわりの非分解性の架橋によって形成されたヒドロゲル粒子は、食細胞(DCまたはマクロファージ)によってエンドソームへ一旦内部移行され、低モル質量プロテアーゼ(これは粒子の中へ拡散して生体高分子を分解し、粒子から生体高分子断片が拡散できるようにする)に曝されて、抗原を放出することになる。この単純なルートは、ポリペプチド抗原または多糖類抗原の送達にとって興味深い。この場合、生体高分子の分解が抗原処理の自然な工程である。送達された生体高分子の切断が望ましくない適用に対しては(例えばDNA送達)、酵素に敏感なペプチドまたは環境に敏感な(例えば、pHに敏感)合成高分子配列を含む架橋を組み入れることにより、エンドソームに入ったときに粒子が特異的に分解するように設計することができる。例としては、細胞内のエンドソーム中に存在するカテプシンによって切断されるカテプシンに敏感なペプチド配列の使用がある。粒子をエンドソーム/食胞に内部移行し、標的とするペプチド基質の酵素による切断によって粒子を破壊することができるカテプシンに曝すまで、これらの結合は安定しているであろう。
【0040】
また、抗原送達/DC成熟粒子を遺伝子療法、一般的な細胞内の薬物送達、一般的なサブユニット−ワクチンの送達、抗腫瘍化合物の送達、または組織工学のための細胞内/細胞表面の信号の送達に使用できると考えられる。これらの多重信号送達粒子は、さらに図2に図示したようなプラットフォームに基づく装置を含む薬物送達装置の有効な要素にもなることができる。
【0041】
さらに、本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、大きな重量分率の抗原を封入することができる(下記の実施例においては粒子の〜75重量%が封入された生体高分子である)。これは、最大投入量が通常30重量%未満であり、しばしば10重量%未満であるポリエステルマイクロスフェアのような手法と対照的である[Lavelle ら、Vaccine, 17: 512-29 (1999); Jiang ら、Pharm Res., 18: 878-85 (2001)]。さらに本発明の抗原送達/DC成熟粒子の安定性もリポソームより優れている。また本発明の抗原送達/DC成熟粒子は懸濁液中1週間までの間最小の損失で封入された生体高分子を保持する。最後に、局所的環境に敏感なペプチドまたは合成高分子の配列を含むことによる、本発明の抗原送達/DC成熟粒子の破損を調整する能力が、他の粒子状薬物送達技術に優る主な利点である。
【0042】
さらに、本発明の抗原送達/DC成熟粒子を、抗原をDCにワクチンとして送達するために用いることができる。その場合、特異的なDC表面レセプターを介してDCの活性化を引き起こすことに加えて、クラスIおよびクラスIIの搭載経路に抗原を送達することが望ましい。癌または細胞内病原体に適合したワクチンを設計する際の主な困難は、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)活性化を達成することにある。CD8+T細胞は、DC表面のクラスIMHC分子上に提示された外来のペプチドにより活性化される。DCは通常、細胞質ゾルのペプチドのみをクラスIMHC上に搭載し、一方で内部移行された外因性の抗原は、処理されてクラスIIMHC分子上に搭載される。したがって、フリーのタンパク質抗原を含むワクチンは、抗原がクラスIMHCに搭載されないために、CTL反応を誘発しない。しかしながら、固体ポリマーマイクロスフェアに吸着させることにより[Raychaudhuri ら、Nat Biotechnol., 16: 1025-31 (1998)]、マイクロスフェア中に封入することにより[Maloy ら、Immunology, 81: 661-7 (1994)]、あるいは抗体と免疫複合体の形で凝集させることにより[Rodriguez ら、Nat Cell Biol., 1: 362-8 (1994)]、粒子の形で送達された抗原は、抗原をクラスIMHCに搭載することを可能にする「クロスプレゼンテーション」経路をトリガーすることが最近発見された。本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、変性条件へ曝すことなく大量のタンパク質を搭載できる能力のために、抗原をMHCIおよびMHCIIクラス分子の両方に対してより効率的にクロスプレゼンテーションすることを可能にする。
【0043】
別の実施態様においては、本発明の抗原送達/DC成熟粒子はさらにそれらの表面上に、細胞表面のレセプターまたは細胞外マトリックス(ECM)の成分を標的とするリガンドを含んでおり、したがって粒子の細胞へのまたはECM中の特定部位への結合を促進する。リガンドを、共有結合により、または静電的相互作用およびストレプトアビジン−ビオチン相互作用などの非共有結合相互作用により、抗原送達/DC成熟粒子の表面に結合することができる。
【0044】
表面を修飾された粒子により、レセプターが媒介する信号を同時に送達することが可能になり、即ち粒子が特定の細胞型を標的とすることが改善される。そのような粒子は、粒子表面のリガンドを結合するレセプターにより細胞表面を介して、および細胞内で、エンドサイトーシスされた粒子から放出される生体高分子を介して、の両方で、同時の信号送達を可能にする。これらの粒子は2つの機能を達成できる:それは(1)粒子を、リガンド(および、所望ならば他の活性化因子)に対するレセプターを特異的に発現するDCに向かわせること、および(2)食胞中へ一旦内部移行され、そこでリガンドが関連するTLRレセプターに結合することにより、DCの成熟を開始させることである。
【0045】
DC成熟/活性化に有効であることが知られている多くのリガンドが存在する。したがって、粒子表面へ様々な成熟信号を結合させることを通じてT細胞活性化の終了点を操作することにより、所望のまたは特別仕様の免疫応答を誘発することが可能である。粒子表面リガンドの例には、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌リポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体が含まれるがこれらに限定されない。粒子内における抗原および成熟因子の物理的な共局在化が、抗原に曝されたすべてのDCが成熟すること、および抗原を受け取るDCのみが成熟信号を受け取る(自己免疫応答を回避するために)ことを保証する。
【0046】
別の実施態様では、VNはさらに分解性の、化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアを含む。分解性のマイクロスフェアが、封入された化学誘引物質の安定な制御された放出を行い、様々なリンパ球を特定の部位へ移動するように誘引する。
【0047】
図15Aに図示するように、多くの既知のDC成熟/活性化因子が存在し、すべてが異なる特性を備え、またDC機能に影響を与える。様々な成熟信号が、希望の特別仕様の免疫応答を誘発するためにインビトロおよびインビボでT細胞活性化の終了点を操作する。特に、それぞれDC表面上のTLR−9、FcRおよびCD40に結合するCpG、Fc抗体およびCD40リガンドの有効性は、すべて抗原送達/DC活性化粒子とケモカイン放出マイクロスフェアを組み合わせたVN中に設計することができる。ケモカイン放出マイクロスフェアが未成熟樹状細胞を免疫化部位へ誘引する。そこで未成熟DCは、抗原送達/DC活性化粒子によりT細胞活性化のために効率的にプライミングされ、そして抗原が搭載される。
【0048】
別の実施態様では、図15Bに図示するように、VNはさらに、単球化学誘引物質を免疫化部位で放出することができ、単球に分化因子を抗原送達粒子の表面で提示することができる。この実施態様では、VNは、未成熟な樹状細胞(それは血液および組織中では低い出現率を有する)だけでなくまた単球などの樹状細胞前駆体も誘引する能力を有し、それらはVNによってその場で分化させられる可能性があろう。
【0049】
分解性のマイクロスフェアは、広く薬物送達システムで用いられてきた。分解性のマイクロスフェアの例には1〜500μmの平均直径を有するPEGとデキストランのブロックコポリマー粒子が含まれるがこれに限定されない。
【0050】
化学誘引物質の例には、IL−12、IL−1a、IL−1b、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、EL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFαおよびMIFなどのサイトカイン;ならびに、MIP−3a、MIP−1a、MIP−lb、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1αおよびBLCなどのケモカインが含まれるが、それらに限定されない。
【0051】
ケモカインを放出するマイクロスフェアの表面へ抗原送達粒子を結合させて形成されるコロイド状ミセルの集合(図3Bに図示)が、粒子間結合の分解により、時間と共にばらばらになることは次の利点を有している:(1)これらの集合した超粒子は、高濃度の抗原送達粒子を個々の化学誘引マイクロスフェアと共にコロイド状ミセル懸濁液の注入箇所に局在させ、抗原送達/DC活性化成分を化学誘引物質源に集中さることになる。(2)さらに、局所的な微環境中への放出の遅れが、組織マクロファージによる粒子の非特異的な除去を制限し、DCをワクチン部位へ補給する時間的余裕が生じる。
【0052】
VNのワクチン−化学走性手法は、通常は細胞の培養と処理に伴う遅れを取り除き;非生体材料にはより厳格でない基準が適用可能なために、製造、貯蔵、出荷および送達中に無菌環境を維持しなければならないコストを減少させ;生きた細胞が存在しないためにワクチン処理を単純化し;そしてより高速でより厳格でない臨床前試験と臨床試験の要件により、より速いFDAの承認およびより低い開発コストが可能となる。
【0053】
本発明の別の局面はVNの合成に関する。抗原送達/DC活性化ヒドロゲル粒子は、塩析されたタンパク質水溶液、DNA、多糖類、または細胞溶解物エマルジョンの存在下で、ヒドロゲル前駆体モノマーを重合させることにより、形成される。ゲル前駆体がエマルジョンのタンパク質に富んだ相に、重合中に共に局在することが、サイズが、正確な合成条件に依存して〜0.01μmから〜50μm、好ましくは〜0.05μmから〜50μmであり得るゲル粒子の形成をもたらす。重合は、40℃で過硫酸アンモニウム/メタ重亜硫酸ナトリウム、または60℃でアゾビスイソブチロニトリルなどの、標準のフリーラジカル開始剤によって開始される。
【0054】
ゲル粒子に官能基を組み入れる合成において機能性モノマーを含めることにより、第2の工程においてゲル粒子の表面上に他の生体高分子リガンドを共有結合させて、粒子の機能性を増加させることが可能になる。粒子の合成過程の模式図を図1に示す。封入された生体高分子は、ゲル粒子ネットワーク内の高い架橋密度、および/またはネットワーク内の官能基との特異的な相互作用(静電気、水素結合、またはレセプター・リガンド相互作用など)によって保持される。粒子表面へのリガンドの結合は、共有結合であってもまたは非共有結合(例えば、粒子表面へのタンパク質の吸着による)であってもよい。
【0055】
分解性のマイクロスフェアを作成するための、および化学誘引物質などの制御された放出物質をマイクロスフェアに搭載するための方法を、例えば米国特許第 5, 674, 521号、 5, 980, 948号 および 6, 303, 148号に見出すことができる。
【0056】
本発明のさらに別の局面は、VNを用いて様々な病気を予防しまたは治療する方法に関する。DCの活性化/成熟は、免疫の活性化において重要な役割を果たすため、本発明のVNを、免疫系を活性化することによる様々な疾病の予防または治療に用いることができる。例えば、DCの成熟状態をコントロールすること、および/または適切な抗原をそれに搭載することにより、一度に一疾病を標的とするようにVNを設計することができる。VNはまた、寛容を引き起こすために巧みに管理された環境を作るように設計することができる。
【0057】
ある実施態様において、本発明のVNを、感染症の予防または治療のために、哺乳動物へ投与する。感染症の例には、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Eratamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaなどの微生物によって引き起こされる疾病が含まれるがそれに限定されない。さらに感染症の例には、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルスとコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされる疾病が挙げられる。
【0058】
別の実施態様では、本発明のVNを癌の予防または治療のために哺乳動物へ投与する。癌の例には、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、骨癌、および肝臓癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0059】
DCは、本来免疫系による寛容を促進するため、本発明のVNを自己免疫疾患の治療のために哺乳動物へ投与することができる。そのような疾病の例には、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病および自己免疫性血小板減少性紫斑病が含まれるがそれらに限られない。
【0060】
1つの局面では本発明は、哺乳動物に治療上有効な量の本発明のVNを投与することによる、哺乳動物が樹状細胞活性/成熟に関連した疾病に罹かるのを予防するための方法を提供する。VNの投与を疾病に特徴的な徴候の出現に先立って行ない、その病気を予防するかまたは進行を遅らせることができる。
【0061】
本発明はさらに、VNおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。医薬組成物を、皮下に、非経口的に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、経皮的に、腹腔内に、または肺への吸入もしくは噴霧送達、のいずれかにより投与してもよい。
【0062】
担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコール、その他)、それらの適当な混合物、および/または植物油などを含む溶媒または分散媒でよい。例えばレシチンなどによるコーティングの使用により、分散剤の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持される。微生物の活動を様々な抗菌性および抗真菌性物質、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールその他により防止することができる。多くの場合、等張剤(例えば砂糖、塩化ナトリウム)を含むのが望ましい。注射可能な組成物の吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを組成物に使用することにより、引き延ばすことができる。
【0063】
水溶液による非経口投与については、例えば、必要ならば溶液を適切に緩衝化し、また液体の希釈剤はまず十分な食塩水またはグルコースで等張にするべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、腹腔内の投与に特に適切である。この点について、当業者は本開示を考慮して、採用できる滅菌された水性媒質を知ることになるであろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶かし、それを1000mlの皮下注入液に加えるか、あるいは予定の注入部位に注射してもよい(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580)。治療している被検体の症状に依存して、必然的にいくらかの用量の変化が生じるであろう。投与の担当者はいずれにせよ、個々の被検体に対して適切な用量を決定することになる。さらに、ヒトへの投与には、調剤はFDA生物系審査部の基準が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準に合致しなければならない。
【0064】
無菌注射剤溶液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒に、必要な場合は上に列挙した様々な他の成分と共に組み入れることにより調製し、続いてろ過滅菌する。一般に分散剤は、様々な滅菌した有効成分を、基礎的な分散媒および上に列挙したものの中で必要な他の成分を含む無菌の媒質に組み入れることにより、調製する。無菌注射用溶液を調製するための無菌の粉剤の場合には、好ましい調整法は真空乾燥および凍結乾燥の技術であり、それは有効成分および付加的な望ましい成分の粉剤を、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から産生する。本発明の微小粒子を表皮内へPowderject System(Chiron, Corp. Emeryville, CA)を用いて投与してもよい。Powderjectの送達技術は、微粉をヘリウムガス・ジェット内で超音速に加速することによって働き、医薬薬剤およびワクチンを皮膚および粘膜の注入部位へ、痛みまたは注射針の使用なしに送達する。
【0065】
本明細書に開示した組成物を中性にまたは塩の形に調製してもよい。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質のフリーのアミノ基と形成される)が含まれ、それは例えば塩化水素またはリン酸などの無機酸と、または酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。フリーのカルボキシル基と形成される塩も、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインその他のような有機塩基から導出されることができる。配合にあたっては、溶液は用量配合に適合した態様で、また治療上有効な量だけ投与することになる。配合物は、注射用溶液、薬物放出カプセルその他の様々な剤形で容易に投与される。
【0066】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という成句は、ヒトに投与したときに、アレルギーまたは類似の不都合な反応を起こさない分子からなる実体および組成物を指す。タンパク質を有効成分として含む水性組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されている。通常はそのような組成物は、溶液か懸濁液かいずれかの注入液として調製される;また注入前に液体中の溶解物または懸濁物とすることに適した固体形を調製することもできる。
【0067】
本明細書に用いられる用語「治療上有効な量」とは、その量が少なくとも部分的に、器官または組織において希望する治療的または予防的効果を達成するということである。樹状細胞活性化/成熟に関連する疾病(感染症、癌、および自己免疫疾患などの)または症状の予防および/または治療処置をもたらすために必要なVNの量は、それ自体固定したものではない。有効な量は必然的に、使用されるVNの個性および形式、必要な保護の範囲または治療される疾病または症状の重症度に依存する。
【0068】
治療スケジュールおよび用量は、各被検体ごとに、例えば、被検体の体重と年齢、治療する疾病の型、疾病の症状の重症度、以前または現在の治療処置、投与の方法その他の、容易に当業者が決定することができる因子を考慮して変更してもよい。
【0069】
例えば、VNをワクチンとして用いる時は、用量製剤と適合する方法で、治療上有効でかつ免疫原となる量を投与する。投与する量は、例えば個人の免疫系の抗体合成能力および望ましい防護程度をはじめとして、治療する被検体に依存する。ワクチンの用量は、投与経路に依存し受容者のサイズにより変化する。投与に必要な有効成分の正確な量は、担当医の判断に依存する。ある実施態様では、医薬品組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでもよい。他の実施態様では、活性化合物は、例えばユニットの重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、またその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。しかしながら、適当な用量範囲は、例えば1つのワクチン接種当たり約数百マイクログラムのオーダーの活性成分である可能性がある。他の制限のない実施例においては、用量はさらに、ワクチン接種当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれ以上まで、およびその中で導出できる任意の範囲を含んでよい。ここに列挙した数値から導き出せる制限のない例において、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を、上述の数値に基づいて投与することができる。最初の投与およびブースター投与(例えば接種)の適当な処方計画もまた可変であるが、最初の投与に続いて後の接種または他の投与がされるのが普通である。
【0070】
多くの場合、ワクチンの複数回接種が望ましく、普通6回のワクチン接種を超えず、より普通には4回のワクチン接種を超えず、そして好ましくは1回以上、普通少なくとも約3回のワクチン接種をすることが望ましいであろう。ワクチン接種は普通2〜12週間隔で、より普通は3〜5週間隔で行うことになる。1〜5年、通常3年間隔の定期的なブースターが抗体の保護レベルを維持するために望ましいであろう。
【0071】
免疫化の過程を、上清の抗原に対する抗体の測定により追跡することができる。分析は、放射性核種、酵素、蛍光剤、その他の従来の標識で標識することにより行なうことができる。これらの技術は周知であり、米国特許第 3, 791, 932号 4, 174, 384号 および 3, 949, 064号などの種々様々の特許において、これらの型の分析の実例として見出すことができる。他の免疫分析を行なうことができ、また免疫化に続いて、免疫賦活性ペプチドによる抗原投与に対する防護の分析を行なうことができる。
【0072】
現在、最も成功しているワクチンは、通常、生きているかまたは弱毒化された病原体である。それは部分的には、樹状細胞機能の特異的プログラム(最適のT細胞活性化のための)の活性化、およびB細胞を活性化するための抗原の宿主リンパ節への効率的な輸送をもたらす、病原体侵入部位でトリガーされる事象のカスケードによるものである。生きているまたは弱毒化された微生物による免疫化後の(および自然感染中の)樹状細胞のライフサイクルは次の4段階の過程によって進行し、エフェクターリンパ球と記憶リンパ球の生成をもたらす(図3Aに図示する)[Cyster ら、J Exp Med., 189: 447-50 (1999); Kimber ら、Br J Dermatol., 142: 401-12, (2000)]。1)樹状細胞とその前駆体が、感染部位へ周囲の組織および血液から、感染部位で放出されたケモカインにより招集される[McWilliam ら、J Exp Med., 179: 1331-6 (1994); Sallusto ら、Eur J Immunol., 29: 1617-25 (1999) ]。2)招集された細胞が抗原を(MHCクラスIとMHCクラスIIの経路の両方に)取り入れる [Banchereau, ら、Nature, 392: 245-52 (1998); Banchereau, ら、Annu Rev. Immunol., 18 : 767-811 (2000) ]。3)抗原を搭載した細胞は成熟信号を受け取り、共刺激分子の上方制御を引き起こし、ケモカインレセプターの発現を変更する [Kabashima ら、Nat Med., 9: 744-9 (2003)]。4)DCがリンパ節に移動してT細胞活性化を開始する[Vermaelen ら、J Exp Med., 193: 51-60 (2001)]。
【0073】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。しかし、これらは制限として解釈するべきではない。この出願の全体にわたって引用されたすべての参照、特許、および公表された特許出願の内容、ならびに図および表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
実施例1
インビトロおよびインビボにおけるケモカイン(MIP−3α)制御放出マイクロスフェアの特性決定
MIP−3α制御放出マイクロスフェアを合成し、この化学誘引物質の免疫化部位へ向かう定常的な勾配をインビボで生成した。MIP−3α(R&D Systems)を、ラクチド−コ−グリコリドのマイクロスフェア中に、以前に記載されたダブルエマルジョン法[Lavelle ら、Nat Biotechnol., 20: 64-9 (2002)]により封入した。放出キネティクスを制御するために、マイクロスフェアを分子量4.4kDaまたは75kDaを有するPLGA(Alkermes)を用いて作成した。それらはそれぞれ、インビトロで37℃食塩水中でそれぞれ1〜2週間および3〜4週間の時間経過で分解する。(封入された因子の放出は、ポリマーの完全な分解に有意に先行する)。先の報告[Kumamoto ら、Nat Biotechnol., 20: 64-9 (2002); Kim ら、Biomaterials, 18: 1175-84 (1997)]に従い、BSAを担体タンパク質として用いて封入の過程中、ケモカインを保護した。放出プロフィールをインビトロで酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、R&D Systems)により、PBS pH7.4中37℃でインキュベートしたマイクロスフェア試料の上清について測定し、放出されたケモカインを検出して、図4に放出キネティクスを示した。
【0075】
制御放出マイクロスフェアを、中央のウエル中に0.1〜1mgのマイクロスフェアが含まれるゲルにDCを加え、その移動をモニターするビデオ顕微鏡実験を行なうことによりテストし、それらが3Dコラーゲン・マトリックス中の未成熟の骨髄由来の樹状細胞を誘引することができるかどうかを決定した。図5に示すのは、2つの異なる実験の結果の例であり、個々の細胞の終点を、それらの出発点x=0、y=0に対してプロットしている。矢印は、マイクロスフェア源の方向を示す。図5Aの点は、マイクロスフェア源の500μm以内からスタートした細胞を示し、一方黒点(図5B)は源からおよそ500〜1200μmに置かれた細胞を示す。3時間後、DCのマイクロスフェアへの有意な移動が観察された。
【0076】
簡潔に述べれば、骨髄由来マウス樹状細胞を、コントロールまたはMIP−3α放出マイクロスフェアを含むウエルを囲むコラーゲンゲル中に懸濁した。経路終点の2Dプロットを示す;各細胞の出発点は原点に存在し、点が8時間のインキュベーション後の細胞の位置を示す。矢印はマイクロスフェア源の方向を示す。左に示すのは対照の「空の」マイクロスフェアに対する反応、および右はMIP−3α放出マイクロスフェアに対する反応である。
【0077】
次に、MIP−3αマイクロスフェアをインビボの化学誘引物質特性に関してテストした(図6)。マウスにマトリゲルのみ、マトリゲル+BSAを含む対照マイクロスフェア、またはMIP−3αを含むマイクロスフェアを注入した。注入部位を24時間後に取り出し、H&Eで染色した。MIP−3αマイクロスフェアが、図6に示すように、マトリゲル・マトリックスの著しい浸潤、および個々のマイクロスフェアのまわりに細胞の集積を引き起こした。
【0078】
より一般的に、これらの結果はケモカインを搭載したマイクロスフェアを、インビトロおよび/またはインビボで特定の部位へ細胞を誘引するために使用することが可能であることを示す。これらの微粒子が、様々な細胞を誘引しその部位へ移動させる「ハブ」即ち町の集会場として働く。細胞は一旦特定の部位へ誘引されると、その後実施例2で考察するように一定の機能を遂行するようにプログラムされることができる。
【0079】
実施例2
抗原送達/DC成熟ヒドロゲル粒子の調製
オボアルブミン(60mg)を100mlの5M塩化ナトリウム水溶液に溶解した。OVAを、本明細書で提供する概念証明のデモンストレーションのために、モデル抗原として用いたが、いかなる抗原またはペプチドもナノゲル中に封入することができた。このタンパク質溶液を600rpmで30分間撹拌することにより、37℃でオボアルブミンが塩析されて、エマルジョンを形成することができた。ポリ(エチレングリコール)メタクリラート(526Da、2ml)、2−アミノメタクリラート(50mg)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート(875Da、200μl)、および100mgのPEG−ペプチド−PEG、のコモノマーを、タンパク質溶液に徐々に加え、さらにタンパク質に富んだ相へ塩析させた。開始剤、過硫酸アンモニウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウム(200μlの10% w/vol APSおよび10% w/vol SMS)を同じ水性媒体に加え、続いて40℃で5〜30分反応させた。懸濁液を10,000rpmで15分間遠心することにより、粒子を分離し、水で2回洗浄した。最後に、このようにして得たゲル粒子をPBSに懸濁し、凍結乾燥した。粒子を、使用まで4℃で保存した。
【0080】
合成されたヒドロゲル粒子のサイズおよびサイズ分布を光子相関分光法(Brookhavens 90Plus)によって決定する。ミクロゲルに搭載されたタンパク質を、BCA比色測定法(Pierce Chemical Co.)により推定した。サイズ測定および搭載データを図7および表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例3
インビトロにおける、ヒドロゲル粒子を用いた樹状細胞への抗原送達
骨髄由来樹状細胞を、GM−CSFおよびIL−4の存在下で以前の記載[Inaba ら、J Exp Med., 176: 1693-702(1992)]に従って生成した。抗原搭載ゲル粒子の取り込みを評価するために、生きたDCの培養に5μg/mlのテキサスレッド染色−オボアルブミン搭載粒子を加えて、低速度撮影3D蛍光顕微鏡法を行なった。図8Aが、培養の最初の20分間における粒子の内部移行を示す代表的なDCの3こまを示す。DCが、効率的に抗原搭載ゲル粒子を周囲の溶液から貪食した。内部移行されたゲル粒子の細胞障害性を分析するために、既知量のゲル(粒子lμg)を2×105のDCと共に250μlの培地中で20時間インキュベートし、続いて培地を変更した。図8Bに示すように、粒子で処理したDCおよび対照DCを、続いてヨウ化プロピジウムで染色し、培養液中の生きた細胞の相対的比率の変化を検出するためにフローサイトメトリーによって解析した。しかしゲル粒子取り込みのDC生存度に対する有意な影響は検出されなかった。
【0083】
細胞性免疫に決定的に重要なMHCクラスIの提示が、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)クローンの活性化によって、インビトロで検出された。7日目の骨髄由来DC(250μlの培地中に2×105)を、5μg/mlのオボアルブミンを搭載した粒子と20時間インキュベートし、洗浄して内部移行されていない粒子を除去し、次にカルシウム指示薬蛍光染料(fura−2AM)を搭載した5×104の4G3 CD8+ T細胞を、粒子で処理したDCまたは処理していない対照に加えた。4G3 T細胞クローンは、クラスIMHC上のオボアルブミン由来のペプチド断片を認識する。低速度撮影蛍光顕微鏡法を行ない、T細胞とDCとの相互作用を4時間に亘って追跡した。対照のT細胞はDC上を移動したが、単離細胞との長続きする接触を形成せず、その細胞内カルシウムレベルは上昇しなかった。対照的に、図8Cに示す低速度撮影フレームの例においては、粒子によって処理されたDCと相互作用しているT細胞は、移動を停止してDCとの長く持続する接触形成を引き起こし、そしてfura指示薬の擬似カラー蛍光の紫の背景レベルからの変化によって示されるように、カルシウムを流入させた。8時間の培養により、培養物中の大多数のDCは活性化された細胞障害性T細胞により死滅させられた。しかし一方で対照培養中のDCは健全なままであった。このデータは、抗原送達ゲル粒子が外因性のオボアルブミン抗原をMHCクラスI抗原提示経路へ成功裡に送達することが成功したことを示す。これは良好な癌または細胞内病原体のワクチンにとって重要な必要条件である。
【0084】
実施例4
抗原の処理および抗原送達粒子からの放出
図9は、抗原処理およびMHCIおよびMHCII分子双方へのヒドロゲル粒子(それはタンパク質抗原を取り囲むポリマーメッシュを含む)からの抗原提示の1つの可能なメカニズムを示す。簡潔に述べれば、ゲル粒子メッシュを通して拡散するのに十分小さなプロテアーゼがゲル粒子に侵入し、トラップされているタンパク質抗原をタンパク質分解し、そしてそれから生じるタンパク質断片が次に粒子から外へ拡散し、正常な細胞内の抗原処理経路によって処理されるという可能性がある。あるいは、粒子の表面近くのポリマーに架橋されたタンパク質に、プロテアーゼが表面で接触し、続いて粒子内へプロテアーゼが侵入するためのスペースを作ることもあり得る。これらのメカニズムを立証する証拠はインビトロの研究によって得られた。その研究で、本発明者は、ovaを含有するゲル粒子を、樹状細胞のエンドソーム中に存在し、オボアルブミンをタンパク質分解することが知られているプロテアーゼであるカテプシンDを精製したものとインキュベートした。
【0085】
図10に示すように、ova粒子からのタンパク質の喪失がカテプシンDにより、その量に依存して長時間にわたって引き起こされた。ova搭載抗原送達ゲル粒子を、エンドソーム内の状態を模倣するpH5.5の緩衝液中において、種々の量のカテプシンDとインキュベートした。表示した時間後に、粒子を遠心分離によって回収し、粒子中に残存しているタンパク質含量を測定した(図10A)。さらに、カテプシンDで処理した粒子の上清をゲル透過クロマトグラフィーにより解析して、粒子から放出されたタンパク質は、実際、低モル質量の断片にタンパク質分解されたことが示された。図10Bに示すように、カテプシン存在下の時間0では粒子は大きすぎてFPLCカラム前置フィルターを通ることができないため、カテプシンだけがFPLCトレース中で観測される。24時間後、顕著な低分子量断片がクロマトグラムに、カテプシンD存在下では現れたが、不在下では現われない。これはカテプシンが、ゲル粒子中にトラップされているovaを分解していることを示している。
【0086】
実施例5
成熟信号提示:樹状細胞の可塑性
DCは、未成熟な抗原を捕える細胞から、成熟した抗原を提示し、T細胞をプライミングする細胞へ進展することができ;抗原を免疫原に変換し、サイトカイン、ケモカインなどの分子および共刺激分子を発現して、免疫応答を開始する。しかし、引き起こされるT細胞を介した免疫応答の型(寛容対免疫、Th1対Th2)は、周囲の微環境から受取る活性化信号に加えて、特異的なDC系列(骨髄性DC1またはリンパ性DC2)および成熟段階に依存して変化し得る[McColl ら、Immunol Cell Biol., 80:489-96 (2002); Sozzani ら、J Clin Immunol 20: 151-60 (2000); Vermaelen ら、J.Exp Med., 193:51-60 (2001)]。免疫を調節するこのDCの能力はDCの成熟に依存する。様々な因子が、抗原の取り込みおよびDC内での処理に続いて、成熟を引き起こすことができる:これには:細菌全体または細菌由来の抗原(例えばリポ多糖類、LPS)、炎症性サイトカイン、様々な小分子、選択された細胞表面レセプター(例えばCD40)の連結反応、およびウイルス生成物(例えば二本鎖RNA)、が含まれる。DCの成熟のプロセスには、一般に、主要組織適合性複合体(MHC)分子の細胞内のエンドサイトーシス区画からDC表面への再分布、抗原内部移行の下方制御、共刺激性分子の細胞表面での発現の増加、形態学的変化(例えば、樹状突起の形成)、細胞骨格の再構成、ケモカイン、サイトカインおよびプロテアーゼの分泌、ならびに接着分子およびケモカインレセプターの細胞表面での発現が含まれる。
【0087】
DCは、それらが遭遇する刺激にきわめて敏感である。樹状細胞の遺伝子発現プロフィールを、〜30,000の遺伝子について、インフルエンザウイルス、E. coli、S. aureus、C. albicans およびその他の病原体と遭遇の後に測定することにより[Huang ら、Science, 294: 870-5 (2001)]すべての病原体および病原体成分に対して共通の樹状細胞の応答が存在すること、および病原体特異的な高度に特殊化された転写応答もまた存在することが実証された。転写レベルのこの特殊化された応答が、インビトロおよびインビボで引き起こされる免疫応答の型の中で正確な機能的結果をもたらす。並行して、アポトーシス細胞が樹状細胞によるT細胞の活性化を阻止し、免疫の内因的抑止として作用する「自己」の型を代表する。
【0088】
モデルタンパク質リガンドが本発明の手法により調製されたゲル粒子の表面へ結合することを実証するために、蛍光色素で標識したオボアルブミンを、オボアルブミンを搭載したゲル粒子の表面に連結した。オボアルブミン搭載粒子を上記のように調製したが、さらにモノマーに100mg の 2−アミノエチルメタクリラートを組み込んだ。粒子を以前のように精製し、次に250μg のテキサスレッドで標識したオボアルブミンを粒子に加え、懸濁液を20℃で2時間振盪した。粒子表面に吸着されたタンパク質を共有結合で繋ぐために、100mgのEDCカルボジイミドを懸濁液に加えて、粒子を10時間37℃で振盪した。その後、ゲルを遠心して沈殿とし、燐酸塩緩衝食塩水で3回洗浄した。洗浄液から得た上清中に残ったタンパク質をBCAタンパク質分析によって測定し、TR−ovaが粒子の表面へ39%の効率で結合したことを明らかにした。タンパク質の結合を、蛍光顕微鏡法による粒子の観察により確認した(データを示さず)。
【0089】
次に図1に図示するように、CpG DNAオリゴヌクレオチドを粒子の表面上に固定した。これらの表面に結合したリガンドは2つの機能を有する:(1)それらは、粒子が、CpG(またもし所望すれば他の活性化因子)に対するレセプターを特異的に発現するDCを標的とするようにする。また、(2)それらのリガンドは、食胞中に一旦内部移行されるとそこでTLR−9レセプターに結合し、DC成熟の引き金を引く。DCの成熟は、内部移行した抗原の表面のMHC分子への移送を誘導し、T細胞活性化を駆動するサイトカインおよび共刺激性レセプターの上方制御を引き起こす。最後に、成熟はさらに宿主リンパ節にDCを誘導するケモカインレセプターの発現を誘導する。
【0090】
CpGオリゴマーを成熟化リガンドとして用いたが、前に考察した他の成熟信号タンパク質をヒドロゲル粒子に繋留して、所望の免疫応答を誘発するようDCをプログラムすることも可能である。
【0091】
固定されたCpGを持つ、または持たない抗原送達粒子に応答した樹状細胞の成熟および活性化を測定して、このリガンドの樹状細胞機能に対する影響を決定した。粒子と共にインキュベートした樹状細胞によるTh1サイトカイン、インターロイキン12の産生を、DC活性化の指標として用いた。図11Aに示すように、未成熟の骨髄由来樹状細胞(BMDC)は、修飾されていないゲル粒子によってはIL−12産生を引き起こされなかった。これはその合成構造と一致する。しかしながら、可溶性のCpGはIL−12産生を引き起こす、特に溶液の濃度が1mMに近づけばそうである。対照的に、抗原送達粒子の表面へ固定されたCpGオリゴヌクレオチドは、同じ量の可溶性CpGよりDCの活性化を引き起こす能力が〜10倍高かった。CpGはまたMHC分子、および未成熟DCの成熟をトリガーするCD86などの共刺激性分子の上方制御を引き起こすことが知られている。24時間、フリーのCpG、または等量濃度の抗原送達粒子に結合したCpGに接触させた未成熟BMDCに対する、クラスII MHCおよびCD86の細胞表面レベルのフローサイトメトリー解析を図11Bに示す。可溶性CpGは、これらの条件下でBMDC成熟に対してほとんどまたはまったく影響を示さなかった。その一方でCpG粒子は、強力な刺激性を有する対照(リポ多糖類(LPS)とインキュベートしたBMDC)に匹敵する、両方の細胞表面分子のロバストな上方制御をトリガーした。したがって、抗原送達粒子は本来はDCを活性化しないが、選択されたDC調節性リガンドで修飾されたときは、粒子は可溶性リガンドを単に与えるよりも、DC活性化および成熟を極めて強力に開始することができる。
【0092】
実施例6
粒子送達抗原および可溶性抗原のT細胞活性化の比較。
以前に記述したように、抗原送達粒子をパルス状に与えられた樹状細胞は、CD4+T細胞芽球およびCD8+T細胞クローンの活性化により評価されるように、抗原を有効に処理して提示した。図12Aに示すように、ova粒子をパルス状に与えられたBMDCがCD4+ova特異的T細胞を活性化し、また粒子は、可溶性オボアルブミンよりCD4細胞の活性化能力が〜10倍高かった。粒子でパルスされたDCは、粒子にCpGが結合していてもいなくても、CD4細胞をトリガーして有意なレベルのThlエフェクター・サイトカインであるインターフェロン−γ(IFN−γ)を生成させた(図12B)。より劇的なのは、CD8T細胞活性化に対する粒子に基づく抗原送達の効果である(図12C)。従来の多数の研究で実証されているように、可溶性オボアルブミンはクラスIMHC上に提示されず、したがって可溶性ovaをパルス状に与えられたBMDCはCD8 T細胞活性化をトリガーすることができない。対照的に、ゲル粒子に含まれて送達されたovaは強いCD8T細胞活性化をプライミングした。関係のない抗原(ウシ血清アルブミン)を封入した粒子はCD8応答をトリガーしなかったので、この活性化は抗原に特異的であった。
【0093】
要約すると、ova粒子は、クラスIおよびIIのMHC経路の両方に抗原を送達することについて高度に効果的であり、プライマリーT細胞(CD4およびCD8T細胞の両方)を強力に活性化する。T細胞が活性化されてThl様応答を引き起こし、エフェクター・サイトカインを生成する。
【0094】
実施例7
抗原送達/DC活性化ヒドロゲル粒子を用いた、インビトロおよびインビボにおけるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化
マウス骨髄由来樹状細胞を、可溶性の又はヒドロゲル送達粒子に封入した50μgのオバルブミンと共に、1μM CpG存在下または非存在下で4時間インキュベートすることにより、抗原を搭載した。DCを次に、カルボキシフルオレセイン・スクシンイミジルエステル(CFSE)を搭載したCD4+OT−IIまたはCD8+OT−I T細胞と共に60時間培養した。CFSEは細胞の細胞質を標識する蛍光色素であって;細胞が分裂するとき、色素が2つの娘細胞にほぼ等しく分けられて、合計の蛍光が娘細胞に存在する。この標識技術を用いて、細胞分裂がT細胞のフローサイトメトリーにより容易に定量化される。図13は、可溶性のovaまたはゲル粒子中に封入されたovaをパルスされたDCに応答するOT−1およびOT−II T細胞についてのそのような解析を示す。図13Aが、CFSE蛍光を用いて検出したOT−II T細胞のパーセンテージをプロットしたフローサイトメトリーのヒストグラムを示す。可溶性抗原または可溶性抗原プラスCpGでパルスされた樹状細胞では、細胞分裂は60時間までにほとんど生じることはなく、また1回より多く分裂した細胞はなかった。対照的に、ova粒子でパルスされたDCは著しい細胞分裂を引き起こし、多くの細胞が60時間までに既に3−4回分割していた。図13Bに示すように、各条件下で分裂した細胞のパーセンテージを定量化すると、抗原送達粒子によってT細胞応答の著しい増加が引き起こされていた。図13Cに示すように、OT−1 CD8+T細胞で行なわれた同様の実験によって、抗原送達粒子がナイーブCD8+細胞のクロスプレゼンテーションおよび活性化も促進したことが示された。ova−CpG粒子をパルスされたDCを抗原提示のために用いた場合は、可溶性ovaとCpGでパルスしたDCと比較して、およそ2倍多くのCD8+T細胞が60時間までに分裂した。したがって、T細胞芽球に関する我々の初期の実験と一致して、抗原送達粒子は溶性抗原と比較すると、アジュバントとして可溶性CpGが存在する状態においてさえも、明らかにより強力なナイーブT細胞(CD4+およびCD8+の両方)の活性化を引き起こす。
【0095】
次にCFSEで標識したT細胞(独立な実験においてOT−IまたはOT−II)を、野生型B6マウスに養子免疫細胞移入し、二次リンパ器官に24時間滞留させた。その後マウスを、CpG存在下または非存在下で、可溶性ovaまたはovaゲル粒子のいずれかで免疫化した。5日後に、免疫化に対するT細胞応答を、流入領域リンパ節に存在するT細胞をフローサイトメトリーにより解析して測定した。図14に示すように、CD4+およびCD8+ナイーブT細胞の両方が、ゲル粒子免疫化に応答して活性化され、インビボで大規模な増殖を示した。左に示すのは、ovaゲル粒子で免疫化された2匹の異なるマウスから取り出したOT−II T細胞のCFSE蛍光ヒストグラムであって、いくつかの細胞が7回迄またはそれ以上の分裂を示し、また総数が著しく増大した。右は、OT−I T細胞の応答を示す散布図であり:対照(PBS注入)、可溶性ovaプラスCpG、およびova粒子プラスCpGについて、縦軸にTCR発現レベルおよび横軸上にCFSE蛍光を示す。予想したように、対照の注入には細胞分裂は見られない。可溶性CpGと混合した所定の(高い)抗原用量の可溶性ovaが、著しいOT−I T細胞増殖を引き起こした(OT−I T細胞について公表された他のデータと合致して)。しかしながら、ゲル粒子による免疫化は、T細胞のCFSE蛍光がさらに原点の方へシフトしたこと(最大の細胞分裂が生じたことを示す)により証拠づけられるように、さらに大きなT細胞応答を引き起こした。
【0096】
要約すると、ova封入粒子は、抗原をクラスIとクラスのIIの両方のMHC経路に高度に効率的に送達し、またプライマリーT細胞(CD4+およびCD8+T細胞の両方)を強力に活性化する。T細胞は活性化されてTh−I様応答を起し、エフェクター・サイトカインを生成する。更にこのデータは、抗原送達/DC活性化システムが、インビトロにおける強力なナイーブT細胞の活性化を引き起こし、そしてインビボでもT細胞をプライミングするように機能することを示している。
【0097】
実施例8
コロイド状ミセルの作成および特性決定
化学誘引マイクロスフェアおよび抗原送達/DC活性化粒子を統合するために、粒子ゲルとマイクロスフェアの表面に一時的な共有結合を形成させることにより、これらの2つの要素が結合した「コロイド状ミセル」を(図3Bに図示したように)合成することができる。PLGAスフェアを1M NaOHで15分間処理して表層を加水分解し、カルボキシル基を導入する。マイクロスフェアを次に3回洗浄して塩基を除く。塩基処理がマイクロスフェア放出キネティクスまたは他の物理的性質を著しく変化させることが判明した場合は、末端カルボキシル基を覆ったPLGA(Boeringer Ingleheim)(Boeringer Ingleheim)[Faraasen ら、Pharm Res., 20: 237-46 (2001)]を代わりに用いることができる。
【0098】
簡潔に述べれば、抗原搭載した抗原送達/DC活性化粒子を、粒子の表面に残存するフリーのアミンを利用してカルボジイミド結合により、カルボキシル基で修飾されたマイクロスフェアに連結する。5×106粒子/mlの濃度のマイクロスフェアをゲル粒子と1:200のマイクロスフェア:粒子比で混合し、攪拌しながら15分間平衡に至らせる。続いて、水溶性カルボジイミドEDCを加え(5mM)、攪拌しながらスフェアを2時間室温で反応させる。インキュベーション期間の終わりに、粒子を結合したマイクロスフェアを結合していないナノスフェアから、1000×g5分間の短い遠心分離により分離する。同様の粒子濃度が以前に報告されており、高収率のコロイド状ミセルが得られている[Huang ら、Science, 294: 870-5 (2001)]。コロイド状ミセルを最後に数回洗浄して残りのカルボジイミドおよび尿素副産物を除去し、次に凍結乾燥し、使用するまで4℃で保存する。
【0099】
本発明の化合物および方法の好ましい実施態様は、説明のためであって、制限を意図するものではない。当業者は上の教示に照らして修正と変更をすることができる。さらに、当業者は本発明を、他の目的、例えば空気の品質をモニターするためなどの、気体サンプル中のアセトン・レベルを測定する目的に用いることができる。したがって、開示された個々の実施態様中での変更は可能であって、それは添付する請求項によって定義される記述された事項の範囲内であると理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、塩析ヒドロゲル粒子合成工程の概略図である。
【図2A】図2Aは、リガンドで修飾した生体高分子送達ヒドロゲル粒子を利用したインビボの多薬剤送達プラットフォームを示す。図2Aはデジタル印刷した薬剤送達装置、多チャンバーデポである。
【図2B】図2Bは、リガンドで修飾した生体高分子送達ヒドロゲル粒子を利用したインビボの多薬剤送達プラットフォームを示す。図2Bは断面の構造を示す。
【図3A】図3Aは、急性感染症に応答する樹状細胞のライフサイクルのモデルである。
【図3B】図3Bは、コロイド状ミセル・ワクチンシステムの概略図である。
【図4A】図4Aは、PLGAマイクロスフェアからのMIP−3αの制御された放出を図示する。図4Aは、培地へマイクロスフェアから1週間に亘って放出され、ELISAによって検出されたケモカインを示す放出プロフィールである。
【図4B】図4Bは、PLGAマイクロスフェアからのMIP−3αの制御された放出を図示する。図4Bは、図4Aに示した放出プロフィールから計算された放出速度である。
【図5A】図5Aは、MIP−3αマイクロスフェアに応答した樹状細胞の移動を示す。図は経路終端の二次元プロットを図示する。矢印は、マイクロスフェア源に向かう方向を示す。図5Aは、対照の「空」マイクロスフェアに対する応答である。
【図5B】図5Bは、MIP−3αマイクロスフェアに応答した樹状細胞の移動を示す。図は経路終端の二次元プロットを図示する。矢印は、マイクロスフェア源に向かう方向を示す。図5Bは、MIP−3α放出マイクロスフェアに対する応答である。
【図6】図6A、6B、6C、6D、および6Eは、インビボでリンパ球を誘引するマイロスフェアからの制御された放出を示す。
【図7A】図7Aは、抗原送達ヒドロゲル粒子の特性決定を示す。図7Aは、光子相関分光粒子サイズ測定データを示す。
【図7B】図7Bは、抗原送達ヒドロゲル粒子の特性決定を示す。図7Bは封入されたTR−Ovaの蛍光を示す。カバーガラス上で乾燥させたテキサスレッドを結合した卵白アルブミンを搭載した粒子の擬似カラー蛍光顕微鏡写真。
【図8A】図8Aは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Aは、DCによる粒子取込の経時蛍光像を示す。
【図8B】図8Bは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Bは、ヨウ化プロピジウム染色した、抗原を搭載した粒子と24時間インキュベートした樹状細胞および培地のみでインキュベートした対照の、フローサイトメトリー解析である。
【図8C】図8Cは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Cは、粒子で処理された樹状細胞によるCD8+T細胞の活性化を示す。
【図9】図9は、樹状細胞によるovaゲル粒子の抗原処理について、提案するメカニズムを図示したものである。(1)はエンドサイトーシス/貧食作用により取り込まれる粒子であり;(2)は粒子中へ拡散し捕捉された抗原をタンパク質分解する低モル質量プロテアーゼであり;(3)は粒子から拡散して出て正常な細胞内の抗原処理経路により処理される抗原断片である。
【図10A】図10Aは、細胞内プロテアーゼの作用によるovaゲル粒子からの抗原放出を図示する。図10Aは、ovaを搭載した抗原送達ゲル粒子を、様々な用量のカテプシンDとエンドソーム内の状態を模倣するpH5.5の緩衝液中でインキュベートした後に、粒子内に残存するタンパク質含量を示す。
【図10B】図10Bは、細胞内プロテアーゼの作用によるovaゲル粒子からの抗原放出を図示する。図10Bは、エンドソームのプロテアーゼ、カテプシンDにインビトロで曝された粒子からのタンパク質放出の時間経過である。
【図11A】図11Aは、CpG−抗原粒子による樹状細胞の活性化と成熟を図示する。図11Aは、粒子、可溶性CpGまたはCpGで修飾した粒子との24時間インキュベーションが引き金となって起きた未成熟な骨髄由来樹状細胞によるIL−12の産生を示す。
【図11B】図11Bは、CpG−抗原粒子による樹状細胞の活性化と成熟を図示する。図11Bは、可溶性CpGとのまたはゲル粒子に結合した等モルレベルのCpGとの24時間のインキュベーションに応答して起こった、BMDCによるMHCII(I−Ab)およびCD86の発現のフローサイトメトリー解析、およびLPSへの応答との比較である。
【図12A】図12Aは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Aは、種々の濃度の可溶性ovaまたはゲル粒子ovaをパルス状に与えた骨髄由来DCとの24時間のインキュベーションの後の、CD4+ OT−II T細胞芽細胞によるIL−2の産生を示す。
【図12B】図12Bは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Bは、24時間後のOT−II T細胞芽細胞によるIFN−γの産生を示す。
【図12C】図12Cは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Cは、種々の濃度の可溶性卵白アルブミン、ova粒子、または対照BSA粒子をパルス状に与えたBMDCに応答した、CD8+ OT−I T細胞によるIL−2の産生を示す。
【図13A】図13Aは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Aは、CpGを伴うまたは伴わない種々の形のova抗原に応答した、CD4+OT−IIナイーブT細胞の増殖を示す。
【図13B】図13Bは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Bは、フローサイトメトリーデータから決定された、各実験条件下で分裂している細胞のパーセンテージを示す。
【図13C】図13Cは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Cは、ナイーブCD8+OTI細胞の活性化とフローサイトメトリーにより測定された60時間後に分裂している細胞のパーセンテージを示す。
【図14A】図14Aは、インビボにおいてヒドロゲル抗原送達粒子で免疫化することによるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化を図示する。図14Aは、OT−IIからのCFSEの稀釈の確認を示す。
【図14B】図14Bは、インビボにおいてヒドロゲル抗原送達粒子で免疫化することによるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化を図示する。図14Bは、OT−IからのCFSEの希釈の確認を示す。
【図15】図15Aおよび15Bは、インビボにおける樹状細胞の最適なプログラミングについてテストされる成熟経路を図示する。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月9日付で出願された米国仮出願第60/485,803号および2004年5月11日付で出願された米国仮出願第60/569,618号のそれぞれの優先権を主張する。両仮出願の全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫療法とワクチン開発の分野に関する。より詳細には本発明は、侵入する病原体を破壊するための、免疫学的事象のカスケードを模倣する粒子に基づくサブユニットワクチンに関する。粒子に基づくワクチンは、自己免疫疾患、感染症および癌などの様々な疾病に対する免疫学的応答を調節することに、特に有用である。
【背景技術】
【0003】
タンパク質抗原(例えばウイルスタンパク質または腫瘍特異的抗原)によるワクチン接種は、その低毒性および広範囲の適用可能性のために、莫大な臨床上の可能性を有する新しい戦略である。しかし、タンパク質に基づくワクチンは、次の理由のために限られた臨床的成功を収めたに過ぎない。
【0004】
第1に、タンパク質に基づくワクチンは、送達の問題を有する。具体的には、タンパク質療法の有効な利用には、生物活性を有する物質を病変組織および細胞に送達することができる材料の開発が必要である。現在、大多数のタンパク質送達ビヒクルは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)などの疎水性ポリマーに基づいている。O'Hagan, D.らによる米国特許第6, 306, 405号 および 6, 086, 901号、ならびに Adv. Drug Delivery Rev, 32, 225 (1998) を参照のこと。しかしながら、PLGAに基づく送達ビヒクルは、水への溶解度が劣るために問題があった。タンパク質を乳化処理によりPLGAに基づく材料に封入するが、これはタンパク質を有機溶媒、高いせん断応力および/または超音波キャビテーションに曝す。この処理は、しばしばタンパク質変性と不活性化を引き起こす[Xing D ら、Vaccine, 14: 205-213 (1996)]。
【0005】
ヒドロゲルが、代替のタンパク質送達ビヒクルとして提案されてきた。それは穏和な条件下でタンパク質を完全に水性の環境に封入できるからである。[Park, K.ら、Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery; Technomic Publishing Co, Lancaster, PA. (1993); Peppas. N.A., Hydrogels in Medicine and Pharmacy; CRC Press: Vol II, Boca Raton, Fla., (1986); および Lee, K. Y. ら、Chemical Reviews, 101: 1869-1179 (2001) 参照]。ヒドロゲルは、水が分散媒であるコロイド状ゲルである。タンパク質を添加したミクロンサイズのヒドロゲル粒子は、十分に小さく、貪食されうる。現在、ミクロンサイズのヒドロゲルは、生物学的条件下で分解しない架橋剤を用いて合成されてきており、したがって薬物送達用には限られた成功しかしていなかった。
【0006】
いくつかの利点により、ヒドロゲル技術を上述の細胞内および細胞外の薬物送達に使用することは魅力的である。封入手法は、精製されたタンパク質、ペプチド、(遺伝子免疫化用の)DNA、多糖類、および(腫瘍または確定していないアレルゲンに対する免疫化にとって興味ある)全細胞溶解物などの、ワクチン接種および免疫療法にとって興味あるいくつかの型の生体高分子に適用可能である。リガンドによる修飾が可能なゲル粒子が、非常に大きな重量分率の抗原を封入する(下記の実施例においては、粒子の〜75重量%が封入された生体高分子である)。これはポリエステルのミクロスフェアのような、最大投入量が一般に30重量%未満、しばしば10重量%未満の手法とは対照的である。ゲル粒子の安定性はリポソームより優れている。リポソームは、閉じこめた薬剤を急速に、そして予測不可能に「漏らす」ことが知られている。ゲル粒子は、閉じこめた生体高分子を最小の損失で、1週間まで懸濁液中に保持する。最後に、局所的環境に敏感なペプチドまたは合成ポリマー配列を含むことによる、粒子の破壊を修正する能力が、他の粒子状薬物送達技術に勝る主な利点である。
【0007】
タンパク質に基づくワクチンのもう1つの限界は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化できないことである。CTLの活性化は、ウイルスおよび腫瘍に対する免疫の進展には決定的に重要である。CTLは、樹状細胞(DC)によりクラスI抗原提示経路を介して活性化される。DCは、骨髄中の造血幹細胞に由来し、未成熟な細胞として、すべての組織内、特に環境と接する組織(例えば、皮膚、粘膜表面)内、およびリンパ器官中の組織内に広く分布している。未成熟DCは、病原体侵入に続いて末梢組織中の炎症部位へ招集される。外来抗原の内部移行は次に、DCの成熟と末梢組織からリンパ器官への移行を引き起こすことができる。ケモカインへの応答性およびケモカインレセプターの発現が、DCの炎症部位への招集過程およびリンパ器官への移行に必須な要素である。抗原の獲得および処理に続いて、DCは、液またはリンパ液を介してリンパ器官内のT細胞に富む領域へ移動し、同時にケモカインおよびケモカインレセプター発現プロフィールの成熟および調節を受ける。
【0008】
未成熟DCは、貪食作用、マクロピノサイトーシスにより、または様々な細胞の表面に存在するレセプターとの相互作用およびエンドサイトーシスを介して抗原を捕獲する。抗原の処理に続いて、抗原ペプチドをDC表面上のMHC分子により、CD4+、CD8+または記憶T細胞に提示することができる。DCは、内因性および外因性の両方の抗原を処理することができ、MHCクラスIまたはII分子のいずれかに関連してペプチドを提示する。典型的には、外因性の抗原は、内部移行され、処理され、MHCクラスII分子上に搭載される;一方で内在的な抗原は、MHCクラスI分子上に搭載される。例えば、DC自体がウイルスに感染した時には、プロテアソームがウイルスタンパク質をペプチドに分解し、それを細胞質ゾルから小胞体へ輸送することになる。未成熟DCによって発現された様々な細胞表面レセプターが、抗原の取り込みにおいて機能し、さらにまたMHCI経路を介して抗原を提示することができる。
【0009】
抗原の曝露および活性化に続いて、DCは、リンパ器官のT細胞領域中へ移動する。これはケモカイン/ケモカインレセプター相互作用によって調節され、様々なプロテアーゼおよび対応するレセプターにより補助される過程である。細胞表面レセプターは、抗原の取り込みを促進するだけでなく、DCとT細胞間の物理的接触を仲介する。DCにより分泌される可溶性サイトカインのプロフィールは、DCの成長および成熟の異なる段階に応じて変化し、未成熟および成熟DCに特徴的な様々なエフェクター機能に影響を及ぼす。成熟したDCは、IL−12、IL−1a、IL−1b、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、および MIFを含む、種々様々のサイトカインを(必ずしも同時にではなく)発現できる。発現される正確なサイトカインレパートリーは、刺激の性質、DCの成熟段階、および存在するサイトカインの微環境に依存することとなる。
【0010】
要約すると、DCは、免疫応答を開始し調節することができるために、ユニークな抗原提示細胞(APC)である。少数のDCおよび低レベルの抗原でさえ、強い免疫応答を誘発することができる。したがって、DCの活性化および成熟の操作は、有効な治療処置となる可能性がある。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、外来抗原および自己抗原を含む抗原への免疫応答を調節する組成物と方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの局面は、抗原の提示およびDCの活性化の両方が可能なヒドロゲル粒子を含む粒子に基づく抗原送達システムを目的とする。ヒドロゲル粒子は、ヒドロゲル粒子中に封入された免疫原およびヒドロゲル粒子表面上のリガンドを含む。表面のリガンドは、抗原提示細胞(例えば樹状細胞、樹状細胞の前駆体、単球またはマクロファージ)と相互作用し、活性化信号または成熟信号または両方を抗原提示細胞に与える。以下、粒子に基づく抗原送達システムを、ワクチン接種ノード(VN)と呼ぶ。VNはさらに、投与部位へ未成熟DCおよびDC前駆体を誘引することができる化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアを含んでもよい。
【0013】
本発明の別の局面は、DC活性化および成熟を調節するためのVNの使用を目的とする。1つの実施態様では、VNを病原体または癌細胞を除去するために、抗原に対する免疫応答を刺激するために用いる。別の実施態様では、VNを自己免疫疾患またはアレルギー反応の処置用に免疫応答を抑制するために用いる。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、本発明のヒドロゲル粒子を作成するための方法、およびヒドロゲル粒子および化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアの両方を含む微小コロイドミセルVN粒子を形成するための方法に関する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、ワクチン接種ノード(VN)を用いて、外来抗原と自己抗原を含む抗原に対する免疫応答を調節するための組成物および方法に関する。免疫化および自然感染により駆動される免疫応答の両方において、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)が、インビボでナイーブT細胞をプライミングする能力を持つと知られている唯一の細胞であるため、T細胞活性化を開始する際に重大な役割を果たす。[Banchereau ら、Nature, 392: 245-52 (1998); Banchereau ら、Annu Rev. Immunol., 18 : 767-811 (2000); および Norbury ら、Nat Immunol., 3: 265-71 (2002)]。VNは、本明細書に記述される制御された物質放出および送達技術を用いて、ワクチン接種部位の局所的微環境を「操作」し、DCなどのAPCをプログラムすることができる、粒子に基づくワクチン組成物である。免疫応答を調節する際には、VNがまずハブのように作用して、好中球、単球、NK細胞、マクロファージ、DC(成熟および/または未成熟DCの双方)などの多くの様々な免疫細胞を誘引し;そして特に、VNは単球および/または未成熟DCを誘引することができる。マイクロおよびナノ封入粒子を用いて、VNは、成熟タンパク質およびDCモジュレーターと共に環境を創り出し、これにより搭載DCがクロス−プライミングされ、成熟し、そして続いて被検体の流入領域ホストリンパ節(HLN)に移動することが可能になる
【0016】
明細書および請求項(請求項に与えられた範囲も含む)についての明瞭で一貫した理解を提供するために、次の定義を与える:
【0017】
用語「生体高分子」は、生命過程の構造または調節に関係する高分子を意味する。生体高分子の例には、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、ステロイド、脂質、および細胞溶解物などのそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書に用いられる用語「細胞膜タンパク質」とは、細胞外領域(ドメイン)を有するタンパク質、および細胞膜の表面上または脂質二重層中に位置するタンパク質を含む、細胞膜に関連するあらゆるタンパク質である。タンパク質は、糖タンパク質であってもよい。好ましくは、タンパク質は腫瘍細胞の表面抗原である。細胞膜は、多細胞生物、より好ましくは哺乳動物細胞、そして最も好ましくは腫瘍細胞などから得られた単離細胞のものであってよい。
【0019】
抗原に対する「免疫応答」とは、哺乳類の被験体中での対象とする抗原に対する体液性のおよび/または細胞性の免疫応答の進展である。「細胞性免疫応答」とはTリンパ球および/または他の白血球によって媒介される免疫応答である。細胞性免疫の重要な1つの態様には、細胞傷害性リンパ球(「CTL」)による抗原特異的応答が含まれる。CTLは、主要組織適合複合体(MHC)によりコードされ細胞表面上に発現されるタンパク質と共同して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解、を引き起こし促進することに役立つ。
【0020】
本明細書に用いられる用語「抗原」は、抗体によって認識されるあらゆる作用物質(例えば、あらゆる物質、化合物、分子[高分子を含む]、または他の部分)を意味する。一方、用語「免疫原」は、個体中で免疫学的応答を誘発することができるあらゆる作用物質(例えば、あらゆる物質、化合物、分子[高分子を含む]、または他の部分)を示す。これらの用語は、個々の高分子、または抗原性高分子の同質または異質の集団を意味するために用いることができる。この用語は、1つ以上のエピトープを含むタンパク質分子または少なくともタンパク質分子の一部を包含すること、を意図したものである。多くの場合、抗原は免疫原でもあり、したがって用語「抗原」はしばしば用語「免疫原」と交換可能に用いられる。そこでその物質を、免疫化した動物の血清中の適切な抗体の存在を検出するために、抗原として分析の中で用いることができる。
【0021】
用語「非自己抗原」とは哺乳動物に侵入する抗原または物質であるか、あるいは哺乳動物中に存在するが哺乳動物自体の構成要素とは検出可能な態様で異なるかまたは外来である抗原または物質である。一方「自己」抗原とは、健康な被験体中でそれ自体の構成要素とは検出可能な態様で相違しないか、または外来でないものである。しかしながら、ある病態を含むある条件下では、個体の免疫系は「非自己」抗原を自分自身の要素として「自己」と同定し、「非自己」に対する免疫応答を開始しない。反対に、個体の免疫系が「自己」抗原を「非自己」として同定し、「自己」抗原に対する免疫応答を開始する可能性もあり、それが自己免疫疾患となる。「自己」抗原をまた、自己免疫疾患の治療において寛容を引き起こすための免疫原として用いることもできる。
【0022】
「腫瘍特異的抗原」とは、哺乳動物中で腫瘍が成長している時に腫瘍細胞中にのみ存在する抗原を意味する。例えば、メラノーマ特異的抗原は、メラノーマ細胞中でのみ発現され、正常なメラノサイト中には発現されない抗原である。
【0023】
「組織特異的抗原」とは、哺乳動物中で、ある種類の組織中にある時のみ存在する抗原を意味する。例えば、メラノサイト特異的抗原とは、正常なメラノサイトおよび異常なメラノサイトを含むすべてのメラノサイト中で発現される抗原である。
【0024】
「組織移植抗原」とは、移植片対宿主病に含まれる抗原を意味する。組織移植抗原は、免疫系による組織移植片の受容または拒絶を決定する。組織移植抗原の例には組織適合性抗原が含まれるがこれに限定されない。
【0025】
用語「一価の」とは、宿主動物中で単一の型の抗原に向けられた免疫応答を誘発することができるワクチンを意味する。対照的に、「多価の」ワクチンは、宿主動物中で疾病に関連したいくつかの(すなわち1より多い)毒素および/または酵素(例えばグリコプロテアーゼおよび/またはノイラミニダーゼ)に対して向けられた免疫応答を誘発する。ワクチンは、ある特定の生物体または免疫原に制限されることを意図していない。
【0026】
本明細書で用いられるように、用語「自己免疫疾患」とは、発現される自己免疫レパートリーの定性的および/または定量的欠陥により現れる免疫ホメオスタシスの変化に関連した、一連の持続性の臓器特異的または全身的な臨床症状および徴候を意味する。自己免疫疾患は、病気の個体に見出される自己抗原上のエピトープに対する、抗体のまたは細胞障害性の免疫応答により特徴づけられる。個体の免疫系は、次にそれら特定の自己抗原を提示する細胞および組織を目標とした炎症カスケードを活性化する。個体自身の免疫系により攻撃された抗原、組織、細胞型または器官の破壊が、病気の症状を生じさせる。臨床的に重要な自己免疫疾患には例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病、および自己免疫性血小板減少性紫斑病が挙げられる。
【0027】
用語「抗原脱感作」とは、哺乳類被験体にある期間に亘って、免疫応答が起こっている抗原を与えることにより免疫応答を減少させる方法を意味する。免疫細胞を抗原へ繰り返し曝すことによって、細胞障害性反応の減少が見られる。そのような脱感作には、対象の抗原に対するTH−1様の反応からTH−2様の反応への切り換えが含まれ得るがそれに限定されない。抗原脱感作を、自己免疫およびアレルギー性疾患の治療のために用いることができる。
【0028】
「アレルゲン」とは、過敏状態を開始できる免疫原、またはアレルゲンに既に感作されている哺乳動物被験体に過敏性反応を引き起こすことができる免疫原である。アレルゲンは、生体高分子、環境の免疫原(例えば花粉)、または非自然物、合成抗原であり得る。
【0029】
本発明の1つの局面は、特定の疾病の治療および/または予防のために、インビボで哺乳類DCを誘引し、続いてこれをプログラムすることができるVNに関する。VNは通常、封入した免疫原を提供する抗原送達/DC成熟粒子を含み、一方で同時にDCに成熟/活性化信号を送達する。VNはさらに分解性マイクロスフェアを含み、これが封入された化学誘引物質を定常的に制御して放出するようにしてもよい。抗原送達/DC成熟粒子および分解性マイクロスフェアは、一緒に投与するかまたは投与に先立って物理的に合体させることができる。
【0030】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、インビボの設定において、DCと病原体との相互作用を模倣して成熟/活性化信号を同時にDCに送達する。病原体は、同時に抗原材料を提供しDC成熟経路を刺激するのである。インビボでのDCの活性化は、従来のDCに基づくワクチンに比較して、時間および費用の両方で優位である。例えば、患者からDCを分離し、DC集団をインビトロで増殖させ、増殖したDCを抗原とインビトロでインキュベートし、DCを再注入することがもはや必要でないため、総治療時間と費用が減少する。
【0031】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子を、塩析した水性免疫原エマルジョンの存在下でヒドロゲル前駆体モノマーを重合させることにより形成する。適当なゲルモノマーには、ポリ(エチレングリコール)[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)−ポリエステルアクリル化/メタクリル化ブロックコポリマー(例えば、アクリル化PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)[PLGA]−PEGまたはPLGA−PEG−PLGA)その他の親水性および両親媒性ビニルモノマーが含まれる。特異的な生体高分子官能基を、ペプチドで修飾されたモノマー(アクリル化/メタクリル化PEG−ペプチド−PEG、またはPEG−ペプチドなど)との共重合によってゲル粒子に組み入れることもできる[Irvine ら、Biomacromol., 2: 85-94 (2001); West ら、Macromolecules, 32: 241-244 (1999)]。ヒドロゲル粒子は、通常は10〜1000nm、好ましくは200〜600nmの平均直径を有する。
【0032】
免疫原はヒドロゲル粒子中に封入される。免疫原の例には、ポリペプチド、脂質および多糖類などの非自己または自己抗原として働く可能性のある生体高分子、腫瘍特異的抗原、組織特異的抗原、組織移植抗原、が含まれる。免疫原にはさらに、タンパク質抗原をコードするかまたはそれ自体が抗原として働くポリヌクレオチドが含まれる。抗原を発現することができるDNA構築物などのポリヌクレオチドを用いる利点は、それらが比較的安価で、一般にポリペプチドおよび多糖類より安定していることである。さらに、DNA発現構築物は、「無制限の」抗原送達という潜在的利点を有している。成功裡にDNA構築物で形質導入が成功して各DCは、免疫化部位に「抗原工場」を創設して抗原を恒常的に産生することができるからである。免疫原には、自然には存在しないが(合成抗原)免疫関連障害に対して治療効果を有している抗原がさらに含まれる。
【0033】
1つの実施態様において、免疫原は微生物から得られるかまたは微生物起源の生体高分子であり、その微生物は例えば、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaなどである。
【0034】
別の実施態様において、免疫原はウイルスから得られるかまたはウイルス起源の生体高分子であり、そのウイルスは例えば、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス、およびコロナウイルス、などである。
【0035】
別の実施態様では、免疫原は、原虫類と蠕虫などの寄生生物から得られるかもしくはそれら起源の生体高分子である。
【0036】
別の実施態様では、免疫原は、腫瘍特異的抗原または他の病原体から得られるかもしくはそれら起源の生体高分子である。
【0037】
さらに別の実施態様では、免疫原は、細胞溶解物のような生体高分子の混合物である。
【0038】
さらに別の実施態様では、免疫原は、組織移植抗原、自己抗原またはアレルゲンを含み、免疫寛容の誘導または免疫応答の抑制のために投与される。
【0039】
本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、エンドサイトーシス、食作用またはマクロピノサイトーシスにより一度内部移行されると、生体高分子を細胞へ細胞内送達することができる。1つの実施態様では、本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、細胞内区画へ粒子が送達されたときに、封入された生体高分子の選択的な放出を可能にするペプチド配列および/またはDNAプラスミドをさらに含んでいる。封入された生体高分子の特異的放出を、いくつかのメカニズムによって達成することができる。タンパク質またはペプチドの抗原のまわりの非分解性の架橋によって形成されたヒドロゲル粒子は、食細胞(DCまたはマクロファージ)によってエンドソームへ一旦内部移行され、低モル質量プロテアーゼ(これは粒子の中へ拡散して生体高分子を分解し、粒子から生体高分子断片が拡散できるようにする)に曝されて、抗原を放出することになる。この単純なルートは、ポリペプチド抗原または多糖類抗原の送達にとって興味深い。この場合、生体高分子の分解が抗原処理の自然な工程である。送達された生体高分子の切断が望ましくない適用に対しては(例えばDNA送達)、酵素に敏感なペプチドまたは環境に敏感な(例えば、pHに敏感)合成高分子配列を含む架橋を組み入れることにより、エンドソームに入ったときに粒子が特異的に分解するように設計することができる。例としては、細胞内のエンドソーム中に存在するカテプシンによって切断されるカテプシンに敏感なペプチド配列の使用がある。粒子をエンドソーム/食胞に内部移行し、標的とするペプチド基質の酵素による切断によって粒子を破壊することができるカテプシンに曝すまで、これらの結合は安定しているであろう。
【0040】
また、抗原送達/DC成熟粒子を遺伝子療法、一般的な細胞内の薬物送達、一般的なサブユニット−ワクチンの送達、抗腫瘍化合物の送達、または組織工学のための細胞内/細胞表面の信号の送達に使用できると考えられる。これらの多重信号送達粒子は、さらに図2に図示したようなプラットフォームに基づく装置を含む薬物送達装置の有効な要素にもなることができる。
【0041】
さらに、本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、大きな重量分率の抗原を封入することができる(下記の実施例においては粒子の〜75重量%が封入された生体高分子である)。これは、最大投入量が通常30重量%未満であり、しばしば10重量%未満であるポリエステルマイクロスフェアのような手法と対照的である[Lavelle ら、Vaccine, 17: 512-29 (1999); Jiang ら、Pharm Res., 18: 878-85 (2001)]。さらに本発明の抗原送達/DC成熟粒子の安定性もリポソームより優れている。また本発明の抗原送達/DC成熟粒子は懸濁液中1週間までの間最小の損失で封入された生体高分子を保持する。最後に、局所的環境に敏感なペプチドまたは合成高分子の配列を含むことによる、本発明の抗原送達/DC成熟粒子の破損を調整する能力が、他の粒子状薬物送達技術に優る主な利点である。
【0042】
さらに、本発明の抗原送達/DC成熟粒子を、抗原をDCにワクチンとして送達するために用いることができる。その場合、特異的なDC表面レセプターを介してDCの活性化を引き起こすことに加えて、クラスIおよびクラスIIの搭載経路に抗原を送達することが望ましい。癌または細胞内病原体に適合したワクチンを設計する際の主な困難は、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)活性化を達成することにある。CD8+T細胞は、DC表面のクラスIMHC分子上に提示された外来のペプチドにより活性化される。DCは通常、細胞質ゾルのペプチドのみをクラスIMHC上に搭載し、一方で内部移行された外因性の抗原は、処理されてクラスIIMHC分子上に搭載される。したがって、フリーのタンパク質抗原を含むワクチンは、抗原がクラスIMHCに搭載されないために、CTL反応を誘発しない。しかしながら、固体ポリマーマイクロスフェアに吸着させることにより[Raychaudhuri ら、Nat Biotechnol., 16: 1025-31 (1998)]、マイクロスフェア中に封入することにより[Maloy ら、Immunology, 81: 661-7 (1994)]、あるいは抗体と免疫複合体の形で凝集させることにより[Rodriguez ら、Nat Cell Biol., 1: 362-8 (1994)]、粒子の形で送達された抗原は、抗原をクラスIMHCに搭載することを可能にする「クロスプレゼンテーション」経路をトリガーすることが最近発見された。本発明の抗原送達/DC成熟粒子は、変性条件へ曝すことなく大量のタンパク質を搭載できる能力のために、抗原をMHCIおよびMHCIIクラス分子の両方に対してより効率的にクロスプレゼンテーションすることを可能にする。
【0043】
別の実施態様においては、本発明の抗原送達/DC成熟粒子はさらにそれらの表面上に、細胞表面のレセプターまたは細胞外マトリックス(ECM)の成分を標的とするリガンドを含んでおり、したがって粒子の細胞へのまたはECM中の特定部位への結合を促進する。リガンドを、共有結合により、または静電的相互作用およびストレプトアビジン−ビオチン相互作用などの非共有結合相互作用により、抗原送達/DC成熟粒子の表面に結合することができる。
【0044】
表面を修飾された粒子により、レセプターが媒介する信号を同時に送達することが可能になり、即ち粒子が特定の細胞型を標的とすることが改善される。そのような粒子は、粒子表面のリガンドを結合するレセプターにより細胞表面を介して、および細胞内で、エンドサイトーシスされた粒子から放出される生体高分子を介して、の両方で、同時の信号送達を可能にする。これらの粒子は2つの機能を達成できる:それは(1)粒子を、リガンド(および、所望ならば他の活性化因子)に対するレセプターを特異的に発現するDCに向かわせること、および(2)食胞中へ一旦内部移行され、そこでリガンドが関連するTLRレセプターに結合することにより、DCの成熟を開始させることである。
【0045】
DC成熟/活性化に有効であることが知られている多くのリガンドが存在する。したがって、粒子表面へ様々な成熟信号を結合させることを通じてT細胞活性化の終了点を操作することにより、所望のまたは特別仕様の免疫応答を誘発することが可能である。粒子表面リガンドの例には、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌リポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体が含まれるがこれらに限定されない。粒子内における抗原および成熟因子の物理的な共局在化が、抗原に曝されたすべてのDCが成熟すること、および抗原を受け取るDCのみが成熟信号を受け取る(自己免疫応答を回避するために)ことを保証する。
【0046】
別の実施態様では、VNはさらに分解性の、化学誘引物質を搭載したマイクロスフェアを含む。分解性のマイクロスフェアが、封入された化学誘引物質の安定な制御された放出を行い、様々なリンパ球を特定の部位へ移動するように誘引する。
【0047】
図15Aに図示するように、多くの既知のDC成熟/活性化因子が存在し、すべてが異なる特性を備え、またDC機能に影響を与える。様々な成熟信号が、希望の特別仕様の免疫応答を誘発するためにインビトロおよびインビボでT細胞活性化の終了点を操作する。特に、それぞれDC表面上のTLR−9、FcRおよびCD40に結合するCpG、Fc抗体およびCD40リガンドの有効性は、すべて抗原送達/DC活性化粒子とケモカイン放出マイクロスフェアを組み合わせたVN中に設計することができる。ケモカイン放出マイクロスフェアが未成熟樹状細胞を免疫化部位へ誘引する。そこで未成熟DCは、抗原送達/DC活性化粒子によりT細胞活性化のために効率的にプライミングされ、そして抗原が搭載される。
【0048】
別の実施態様では、図15Bに図示するように、VNはさらに、単球化学誘引物質を免疫化部位で放出することができ、単球に分化因子を抗原送達粒子の表面で提示することができる。この実施態様では、VNは、未成熟な樹状細胞(それは血液および組織中では低い出現率を有する)だけでなくまた単球などの樹状細胞前駆体も誘引する能力を有し、それらはVNによってその場で分化させられる可能性があろう。
【0049】
分解性のマイクロスフェアは、広く薬物送達システムで用いられてきた。分解性のマイクロスフェアの例には1〜500μmの平均直径を有するPEGとデキストランのブロックコポリマー粒子が含まれるがこれに限定されない。
【0050】
化学誘引物質の例には、IL−12、IL−1a、IL−1b、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、EL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFαおよびMIFなどのサイトカイン;ならびに、MIP−3a、MIP−1a、MIP−lb、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1αおよびBLCなどのケモカインが含まれるが、それらに限定されない。
【0051】
ケモカインを放出するマイクロスフェアの表面へ抗原送達粒子を結合させて形成されるコロイド状ミセルの集合(図3Bに図示)が、粒子間結合の分解により、時間と共にばらばらになることは次の利点を有している:(1)これらの集合した超粒子は、高濃度の抗原送達粒子を個々の化学誘引マイクロスフェアと共にコロイド状ミセル懸濁液の注入箇所に局在させ、抗原送達/DC活性化成分を化学誘引物質源に集中さることになる。(2)さらに、局所的な微環境中への放出の遅れが、組織マクロファージによる粒子の非特異的な除去を制限し、DCをワクチン部位へ補給する時間的余裕が生じる。
【0052】
VNのワクチン−化学走性手法は、通常は細胞の培養と処理に伴う遅れを取り除き;非生体材料にはより厳格でない基準が適用可能なために、製造、貯蔵、出荷および送達中に無菌環境を維持しなければならないコストを減少させ;生きた細胞が存在しないためにワクチン処理を単純化し;そしてより高速でより厳格でない臨床前試験と臨床試験の要件により、より速いFDAの承認およびより低い開発コストが可能となる。
【0053】
本発明の別の局面はVNの合成に関する。抗原送達/DC活性化ヒドロゲル粒子は、塩析されたタンパク質水溶液、DNA、多糖類、または細胞溶解物エマルジョンの存在下で、ヒドロゲル前駆体モノマーを重合させることにより、形成される。ゲル前駆体がエマルジョンのタンパク質に富んだ相に、重合中に共に局在することが、サイズが、正確な合成条件に依存して〜0.01μmから〜50μm、好ましくは〜0.05μmから〜50μmであり得るゲル粒子の形成をもたらす。重合は、40℃で過硫酸アンモニウム/メタ重亜硫酸ナトリウム、または60℃でアゾビスイソブチロニトリルなどの、標準のフリーラジカル開始剤によって開始される。
【0054】
ゲル粒子に官能基を組み入れる合成において機能性モノマーを含めることにより、第2の工程においてゲル粒子の表面上に他の生体高分子リガンドを共有結合させて、粒子の機能性を増加させることが可能になる。粒子の合成過程の模式図を図1に示す。封入された生体高分子は、ゲル粒子ネットワーク内の高い架橋密度、および/またはネットワーク内の官能基との特異的な相互作用(静電気、水素結合、またはレセプター・リガンド相互作用など)によって保持される。粒子表面へのリガンドの結合は、共有結合であってもまたは非共有結合(例えば、粒子表面へのタンパク質の吸着による)であってもよい。
【0055】
分解性のマイクロスフェアを作成するための、および化学誘引物質などの制御された放出物質をマイクロスフェアに搭載するための方法を、例えば米国特許第 5, 674, 521号、 5, 980, 948号 および 6, 303, 148号に見出すことができる。
【0056】
本発明のさらに別の局面は、VNを用いて様々な病気を予防しまたは治療する方法に関する。DCの活性化/成熟は、免疫の活性化において重要な役割を果たすため、本発明のVNを、免疫系を活性化することによる様々な疾病の予防または治療に用いることができる。例えば、DCの成熟状態をコントロールすること、および/または適切な抗原をそれに搭載することにより、一度に一疾病を標的とするようにVNを設計することができる。VNはまた、寛容を引き起こすために巧みに管理された環境を作るように設計することができる。
【0057】
ある実施態様において、本発明のVNを、感染症の予防または治療のために、哺乳動物へ投与する。感染症の例には、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Eratamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaなどの微生物によって引き起こされる疾病が含まれるがそれに限定されない。さらに感染症の例には、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルスとコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされる疾病が挙げられる。
【0058】
別の実施態様では、本発明のVNを癌の予防または治療のために哺乳動物へ投与する。癌の例には、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、骨癌、および肝臓癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0059】
DCは、本来免疫系による寛容を促進するため、本発明のVNを自己免疫疾患の治療のために哺乳動物へ投与することができる。そのような疾病の例には、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病および自己免疫性血小板減少性紫斑病が含まれるがそれらに限られない。
【0060】
1つの局面では本発明は、哺乳動物に治療上有効な量の本発明のVNを投与することによる、哺乳動物が樹状細胞活性/成熟に関連した疾病に罹かるのを予防するための方法を提供する。VNの投与を疾病に特徴的な徴候の出現に先立って行ない、その病気を予防するかまたは進行を遅らせることができる。
【0061】
本発明はさらに、VNおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。医薬組成物を、皮下に、非経口的に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、経皮的に、腹腔内に、または肺への吸入もしくは噴霧送達、のいずれかにより投与してもよい。
【0062】
担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコール、その他)、それらの適当な混合物、および/または植物油などを含む溶媒または分散媒でよい。例えばレシチンなどによるコーティングの使用により、分散剤の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持される。微生物の活動を様々な抗菌性および抗真菌性物質、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールその他により防止することができる。多くの場合、等張剤(例えば砂糖、塩化ナトリウム)を含むのが望ましい。注射可能な組成物の吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを組成物に使用することにより、引き延ばすことができる。
【0063】
水溶液による非経口投与については、例えば、必要ならば溶液を適切に緩衝化し、また液体の希釈剤はまず十分な食塩水またはグルコースで等張にするべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、腹腔内の投与に特に適切である。この点について、当業者は本開示を考慮して、採用できる滅菌された水性媒質を知ることになるであろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶かし、それを1000mlの皮下注入液に加えるか、あるいは予定の注入部位に注射してもよい(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580)。治療している被検体の症状に依存して、必然的にいくらかの用量の変化が生じるであろう。投与の担当者はいずれにせよ、個々の被検体に対して適切な用量を決定することになる。さらに、ヒトへの投与には、調剤はFDA生物系審査部の基準が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準に合致しなければならない。
【0064】
無菌注射剤溶液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒に、必要な場合は上に列挙した様々な他の成分と共に組み入れることにより調製し、続いてろ過滅菌する。一般に分散剤は、様々な滅菌した有効成分を、基礎的な分散媒および上に列挙したものの中で必要な他の成分を含む無菌の媒質に組み入れることにより、調製する。無菌注射用溶液を調製するための無菌の粉剤の場合には、好ましい調整法は真空乾燥および凍結乾燥の技術であり、それは有効成分および付加的な望ましい成分の粉剤を、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から産生する。本発明の微小粒子を表皮内へPowderject System(Chiron, Corp. Emeryville, CA)を用いて投与してもよい。Powderjectの送達技術は、微粉をヘリウムガス・ジェット内で超音速に加速することによって働き、医薬薬剤およびワクチンを皮膚および粘膜の注入部位へ、痛みまたは注射針の使用なしに送達する。
【0065】
本明細書に開示した組成物を中性にまたは塩の形に調製してもよい。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質のフリーのアミノ基と形成される)が含まれ、それは例えば塩化水素またはリン酸などの無機酸と、または酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。フリーのカルボキシル基と形成される塩も、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインその他のような有機塩基から導出されることができる。配合にあたっては、溶液は用量配合に適合した態様で、また治療上有効な量だけ投与することになる。配合物は、注射用溶液、薬物放出カプセルその他の様々な剤形で容易に投与される。
【0066】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という成句は、ヒトに投与したときに、アレルギーまたは類似の不都合な反応を起こさない分子からなる実体および組成物を指す。タンパク質を有効成分として含む水性組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されている。通常はそのような組成物は、溶液か懸濁液かいずれかの注入液として調製される;また注入前に液体中の溶解物または懸濁物とすることに適した固体形を調製することもできる。
【0067】
本明細書に用いられる用語「治療上有効な量」とは、その量が少なくとも部分的に、器官または組織において希望する治療的または予防的効果を達成するということである。樹状細胞活性化/成熟に関連する疾病(感染症、癌、および自己免疫疾患などの)または症状の予防および/または治療処置をもたらすために必要なVNの量は、それ自体固定したものではない。有効な量は必然的に、使用されるVNの個性および形式、必要な保護の範囲または治療される疾病または症状の重症度に依存する。
【0068】
治療スケジュールおよび用量は、各被検体ごとに、例えば、被検体の体重と年齢、治療する疾病の型、疾病の症状の重症度、以前または現在の治療処置、投与の方法その他の、容易に当業者が決定することができる因子を考慮して変更してもよい。
【0069】
例えば、VNをワクチンとして用いる時は、用量製剤と適合する方法で、治療上有効でかつ免疫原となる量を投与する。投与する量は、例えば個人の免疫系の抗体合成能力および望ましい防護程度をはじめとして、治療する被検体に依存する。ワクチンの用量は、投与経路に依存し受容者のサイズにより変化する。投与に必要な有効成分の正確な量は、担当医の判断に依存する。ある実施態様では、医薬品組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでもよい。他の実施態様では、活性化合物は、例えばユニットの重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、またその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。しかしながら、適当な用量範囲は、例えば1つのワクチン接種当たり約数百マイクログラムのオーダーの活性成分である可能性がある。他の制限のない実施例においては、用量はさらに、ワクチン接種当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれ以上まで、およびその中で導出できる任意の範囲を含んでよい。ここに列挙した数値から導き出せる制限のない例において、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を、上述の数値に基づいて投与することができる。最初の投与およびブースター投与(例えば接種)の適当な処方計画もまた可変であるが、最初の投与に続いて後の接種または他の投与がされるのが普通である。
【0070】
多くの場合、ワクチンの複数回接種が望ましく、普通6回のワクチン接種を超えず、より普通には4回のワクチン接種を超えず、そして好ましくは1回以上、普通少なくとも約3回のワクチン接種をすることが望ましいであろう。ワクチン接種は普通2〜12週間隔で、より普通は3〜5週間隔で行うことになる。1〜5年、通常3年間隔の定期的なブースターが抗体の保護レベルを維持するために望ましいであろう。
【0071】
免疫化の過程を、上清の抗原に対する抗体の測定により追跡することができる。分析は、放射性核種、酵素、蛍光剤、その他の従来の標識で標識することにより行なうことができる。これらの技術は周知であり、米国特許第 3, 791, 932号 4, 174, 384号 および 3, 949, 064号などの種々様々の特許において、これらの型の分析の実例として見出すことができる。他の免疫分析を行なうことができ、また免疫化に続いて、免疫賦活性ペプチドによる抗原投与に対する防護の分析を行なうことができる。
【0072】
現在、最も成功しているワクチンは、通常、生きているかまたは弱毒化された病原体である。それは部分的には、樹状細胞機能の特異的プログラム(最適のT細胞活性化のための)の活性化、およびB細胞を活性化するための抗原の宿主リンパ節への効率的な輸送をもたらす、病原体侵入部位でトリガーされる事象のカスケードによるものである。生きているまたは弱毒化された微生物による免疫化後の(および自然感染中の)樹状細胞のライフサイクルは次の4段階の過程によって進行し、エフェクターリンパ球と記憶リンパ球の生成をもたらす(図3Aに図示する)[Cyster ら、J Exp Med., 189: 447-50 (1999); Kimber ら、Br J Dermatol., 142: 401-12, (2000)]。1)樹状細胞とその前駆体が、感染部位へ周囲の組織および血液から、感染部位で放出されたケモカインにより招集される[McWilliam ら、J Exp Med., 179: 1331-6 (1994); Sallusto ら、Eur J Immunol., 29: 1617-25 (1999) ]。2)招集された細胞が抗原を(MHCクラスIとMHCクラスIIの経路の両方に)取り入れる [Banchereau, ら、Nature, 392: 245-52 (1998); Banchereau, ら、Annu Rev. Immunol., 18 : 767-811 (2000) ]。3)抗原を搭載した細胞は成熟信号を受け取り、共刺激分子の上方制御を引き起こし、ケモカインレセプターの発現を変更する [Kabashima ら、Nat Med., 9: 744-9 (2003)]。4)DCがリンパ節に移動してT細胞活性化を開始する[Vermaelen ら、J Exp Med., 193: 51-60 (2001)]。
【0073】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。しかし、これらは制限として解釈するべきではない。この出願の全体にわたって引用されたすべての参照、特許、および公表された特許出願の内容、ならびに図および表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
実施例1
インビトロおよびインビボにおけるケモカイン(MIP−3α)制御放出マイクロスフェアの特性決定
MIP−3α制御放出マイクロスフェアを合成し、この化学誘引物質の免疫化部位へ向かう定常的な勾配をインビボで生成した。MIP−3α(R&D Systems)を、ラクチド−コ−グリコリドのマイクロスフェア中に、以前に記載されたダブルエマルジョン法[Lavelle ら、Nat Biotechnol., 20: 64-9 (2002)]により封入した。放出キネティクスを制御するために、マイクロスフェアを分子量4.4kDaまたは75kDaを有するPLGA(Alkermes)を用いて作成した。それらはそれぞれ、インビトロで37℃食塩水中でそれぞれ1〜2週間および3〜4週間の時間経過で分解する。(封入された因子の放出は、ポリマーの完全な分解に有意に先行する)。先の報告[Kumamoto ら、Nat Biotechnol., 20: 64-9 (2002); Kim ら、Biomaterials, 18: 1175-84 (1997)]に従い、BSAを担体タンパク質として用いて封入の過程中、ケモカインを保護した。放出プロフィールをインビトロで酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、R&D Systems)により、PBS pH7.4中37℃でインキュベートしたマイクロスフェア試料の上清について測定し、放出されたケモカインを検出して、図4に放出キネティクスを示した。
【0075】
制御放出マイクロスフェアを、中央のウエル中に0.1〜1mgのマイクロスフェアが含まれるゲルにDCを加え、その移動をモニターするビデオ顕微鏡実験を行なうことによりテストし、それらが3Dコラーゲン・マトリックス中の未成熟の骨髄由来の樹状細胞を誘引することができるかどうかを決定した。図5に示すのは、2つの異なる実験の結果の例であり、個々の細胞の終点を、それらの出発点x=0、y=0に対してプロットしている。矢印は、マイクロスフェア源の方向を示す。図5Aの点は、マイクロスフェア源の500μm以内からスタートした細胞を示し、一方黒点(図5B)は源からおよそ500〜1200μmに置かれた細胞を示す。3時間後、DCのマイクロスフェアへの有意な移動が観察された。
【0076】
簡潔に述べれば、骨髄由来マウス樹状細胞を、コントロールまたはMIP−3α放出マイクロスフェアを含むウエルを囲むコラーゲンゲル中に懸濁した。経路終点の2Dプロットを示す;各細胞の出発点は原点に存在し、点が8時間のインキュベーション後の細胞の位置を示す。矢印はマイクロスフェア源の方向を示す。左に示すのは対照の「空の」マイクロスフェアに対する反応、および右はMIP−3α放出マイクロスフェアに対する反応である。
【0077】
次に、MIP−3αマイクロスフェアをインビボの化学誘引物質特性に関してテストした(図6)。マウスにマトリゲルのみ、マトリゲル+BSAを含む対照マイクロスフェア、またはMIP−3αを含むマイクロスフェアを注入した。注入部位を24時間後に取り出し、H&Eで染色した。MIP−3αマイクロスフェアが、図6に示すように、マトリゲル・マトリックスの著しい浸潤、および個々のマイクロスフェアのまわりに細胞の集積を引き起こした。
【0078】
より一般的に、これらの結果はケモカインを搭載したマイクロスフェアを、インビトロおよび/またはインビボで特定の部位へ細胞を誘引するために使用することが可能であることを示す。これらの微粒子が、様々な細胞を誘引しその部位へ移動させる「ハブ」即ち町の集会場として働く。細胞は一旦特定の部位へ誘引されると、その後実施例2で考察するように一定の機能を遂行するようにプログラムされることができる。
【0079】
実施例2
抗原送達/DC成熟ヒドロゲル粒子の調製
オボアルブミン(60mg)を100mlの5M塩化ナトリウム水溶液に溶解した。OVAを、本明細書で提供する概念証明のデモンストレーションのために、モデル抗原として用いたが、いかなる抗原またはペプチドもナノゲル中に封入することができた。このタンパク質溶液を600rpmで30分間撹拌することにより、37℃でオボアルブミンが塩析されて、エマルジョンを形成することができた。ポリ(エチレングリコール)メタクリラート(526Da、2ml)、2−アミノメタクリラート(50mg)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート(875Da、200μl)、および100mgのPEG−ペプチド−PEG、のコモノマーを、タンパク質溶液に徐々に加え、さらにタンパク質に富んだ相へ塩析させた。開始剤、過硫酸アンモニウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウム(200μlの10% w/vol APSおよび10% w/vol SMS)を同じ水性媒体に加え、続いて40℃で5〜30分反応させた。懸濁液を10,000rpmで15分間遠心することにより、粒子を分離し、水で2回洗浄した。最後に、このようにして得たゲル粒子をPBSに懸濁し、凍結乾燥した。粒子を、使用まで4℃で保存した。
【0080】
合成されたヒドロゲル粒子のサイズおよびサイズ分布を光子相関分光法(Brookhavens 90Plus)によって決定する。ミクロゲルに搭載されたタンパク質を、BCA比色測定法(Pierce Chemical Co.)により推定した。サイズ測定および搭載データを図7および表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例3
インビトロにおける、ヒドロゲル粒子を用いた樹状細胞への抗原送達
骨髄由来樹状細胞を、GM−CSFおよびIL−4の存在下で以前の記載[Inaba ら、J Exp Med., 176: 1693-702(1992)]に従って生成した。抗原搭載ゲル粒子の取り込みを評価するために、生きたDCの培養に5μg/mlのテキサスレッド染色−オボアルブミン搭載粒子を加えて、低速度撮影3D蛍光顕微鏡法を行なった。図8Aが、培養の最初の20分間における粒子の内部移行を示す代表的なDCの3こまを示す。DCが、効率的に抗原搭載ゲル粒子を周囲の溶液から貪食した。内部移行されたゲル粒子の細胞障害性を分析するために、既知量のゲル(粒子lμg)を2×105のDCと共に250μlの培地中で20時間インキュベートし、続いて培地を変更した。図8Bに示すように、粒子で処理したDCおよび対照DCを、続いてヨウ化プロピジウムで染色し、培養液中の生きた細胞の相対的比率の変化を検出するためにフローサイトメトリーによって解析した。しかしゲル粒子取り込みのDC生存度に対する有意な影響は検出されなかった。
【0083】
細胞性免疫に決定的に重要なMHCクラスIの提示が、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)クローンの活性化によって、インビトロで検出された。7日目の骨髄由来DC(250μlの培地中に2×105)を、5μg/mlのオボアルブミンを搭載した粒子と20時間インキュベートし、洗浄して内部移行されていない粒子を除去し、次にカルシウム指示薬蛍光染料(fura−2AM)を搭載した5×104の4G3 CD8+ T細胞を、粒子で処理したDCまたは処理していない対照に加えた。4G3 T細胞クローンは、クラスIMHC上のオボアルブミン由来のペプチド断片を認識する。低速度撮影蛍光顕微鏡法を行ない、T細胞とDCとの相互作用を4時間に亘って追跡した。対照のT細胞はDC上を移動したが、単離細胞との長続きする接触を形成せず、その細胞内カルシウムレベルは上昇しなかった。対照的に、図8Cに示す低速度撮影フレームの例においては、粒子によって処理されたDCと相互作用しているT細胞は、移動を停止してDCとの長く持続する接触形成を引き起こし、そしてfura指示薬の擬似カラー蛍光の紫の背景レベルからの変化によって示されるように、カルシウムを流入させた。8時間の培養により、培養物中の大多数のDCは活性化された細胞障害性T細胞により死滅させられた。しかし一方で対照培養中のDCは健全なままであった。このデータは、抗原送達ゲル粒子が外因性のオボアルブミン抗原をMHCクラスI抗原提示経路へ成功裡に送達することが成功したことを示す。これは良好な癌または細胞内病原体のワクチンにとって重要な必要条件である。
【0084】
実施例4
抗原の処理および抗原送達粒子からの放出
図9は、抗原処理およびMHCIおよびMHCII分子双方へのヒドロゲル粒子(それはタンパク質抗原を取り囲むポリマーメッシュを含む)からの抗原提示の1つの可能なメカニズムを示す。簡潔に述べれば、ゲル粒子メッシュを通して拡散するのに十分小さなプロテアーゼがゲル粒子に侵入し、トラップされているタンパク質抗原をタンパク質分解し、そしてそれから生じるタンパク質断片が次に粒子から外へ拡散し、正常な細胞内の抗原処理経路によって処理されるという可能性がある。あるいは、粒子の表面近くのポリマーに架橋されたタンパク質に、プロテアーゼが表面で接触し、続いて粒子内へプロテアーゼが侵入するためのスペースを作ることもあり得る。これらのメカニズムを立証する証拠はインビトロの研究によって得られた。その研究で、本発明者は、ovaを含有するゲル粒子を、樹状細胞のエンドソーム中に存在し、オボアルブミンをタンパク質分解することが知られているプロテアーゼであるカテプシンDを精製したものとインキュベートした。
【0085】
図10に示すように、ova粒子からのタンパク質の喪失がカテプシンDにより、その量に依存して長時間にわたって引き起こされた。ova搭載抗原送達ゲル粒子を、エンドソーム内の状態を模倣するpH5.5の緩衝液中において、種々の量のカテプシンDとインキュベートした。表示した時間後に、粒子を遠心分離によって回収し、粒子中に残存しているタンパク質含量を測定した(図10A)。さらに、カテプシンDで処理した粒子の上清をゲル透過クロマトグラフィーにより解析して、粒子から放出されたタンパク質は、実際、低モル質量の断片にタンパク質分解されたことが示された。図10Bに示すように、カテプシン存在下の時間0では粒子は大きすぎてFPLCカラム前置フィルターを通ることができないため、カテプシンだけがFPLCトレース中で観測される。24時間後、顕著な低分子量断片がクロマトグラムに、カテプシンD存在下では現れたが、不在下では現われない。これはカテプシンが、ゲル粒子中にトラップされているovaを分解していることを示している。
【0086】
実施例5
成熟信号提示:樹状細胞の可塑性
DCは、未成熟な抗原を捕える細胞から、成熟した抗原を提示し、T細胞をプライミングする細胞へ進展することができ;抗原を免疫原に変換し、サイトカイン、ケモカインなどの分子および共刺激分子を発現して、免疫応答を開始する。しかし、引き起こされるT細胞を介した免疫応答の型(寛容対免疫、Th1対Th2)は、周囲の微環境から受取る活性化信号に加えて、特異的なDC系列(骨髄性DC1またはリンパ性DC2)および成熟段階に依存して変化し得る[McColl ら、Immunol Cell Biol., 80:489-96 (2002); Sozzani ら、J Clin Immunol 20: 151-60 (2000); Vermaelen ら、J.Exp Med., 193:51-60 (2001)]。免疫を調節するこのDCの能力はDCの成熟に依存する。様々な因子が、抗原の取り込みおよびDC内での処理に続いて、成熟を引き起こすことができる:これには:細菌全体または細菌由来の抗原(例えばリポ多糖類、LPS)、炎症性サイトカイン、様々な小分子、選択された細胞表面レセプター(例えばCD40)の連結反応、およびウイルス生成物(例えば二本鎖RNA)、が含まれる。DCの成熟のプロセスには、一般に、主要組織適合性複合体(MHC)分子の細胞内のエンドサイトーシス区画からDC表面への再分布、抗原内部移行の下方制御、共刺激性分子の細胞表面での発現の増加、形態学的変化(例えば、樹状突起の形成)、細胞骨格の再構成、ケモカイン、サイトカインおよびプロテアーゼの分泌、ならびに接着分子およびケモカインレセプターの細胞表面での発現が含まれる。
【0087】
DCは、それらが遭遇する刺激にきわめて敏感である。樹状細胞の遺伝子発現プロフィールを、〜30,000の遺伝子について、インフルエンザウイルス、E. coli、S. aureus、C. albicans およびその他の病原体と遭遇の後に測定することにより[Huang ら、Science, 294: 870-5 (2001)]すべての病原体および病原体成分に対して共通の樹状細胞の応答が存在すること、および病原体特異的な高度に特殊化された転写応答もまた存在することが実証された。転写レベルのこの特殊化された応答が、インビトロおよびインビボで引き起こされる免疫応答の型の中で正確な機能的結果をもたらす。並行して、アポトーシス細胞が樹状細胞によるT細胞の活性化を阻止し、免疫の内因的抑止として作用する「自己」の型を代表する。
【0088】
モデルタンパク質リガンドが本発明の手法により調製されたゲル粒子の表面へ結合することを実証するために、蛍光色素で標識したオボアルブミンを、オボアルブミンを搭載したゲル粒子の表面に連結した。オボアルブミン搭載粒子を上記のように調製したが、さらにモノマーに100mg の 2−アミノエチルメタクリラートを組み込んだ。粒子を以前のように精製し、次に250μg のテキサスレッドで標識したオボアルブミンを粒子に加え、懸濁液を20℃で2時間振盪した。粒子表面に吸着されたタンパク質を共有結合で繋ぐために、100mgのEDCカルボジイミドを懸濁液に加えて、粒子を10時間37℃で振盪した。その後、ゲルを遠心して沈殿とし、燐酸塩緩衝食塩水で3回洗浄した。洗浄液から得た上清中に残ったタンパク質をBCAタンパク質分析によって測定し、TR−ovaが粒子の表面へ39%の効率で結合したことを明らかにした。タンパク質の結合を、蛍光顕微鏡法による粒子の観察により確認した(データを示さず)。
【0089】
次に図1に図示するように、CpG DNAオリゴヌクレオチドを粒子の表面上に固定した。これらの表面に結合したリガンドは2つの機能を有する:(1)それらは、粒子が、CpG(またもし所望すれば他の活性化因子)に対するレセプターを特異的に発現するDCを標的とするようにする。また、(2)それらのリガンドは、食胞中に一旦内部移行されるとそこでTLR−9レセプターに結合し、DC成熟の引き金を引く。DCの成熟は、内部移行した抗原の表面のMHC分子への移送を誘導し、T細胞活性化を駆動するサイトカインおよび共刺激性レセプターの上方制御を引き起こす。最後に、成熟はさらに宿主リンパ節にDCを誘導するケモカインレセプターの発現を誘導する。
【0090】
CpGオリゴマーを成熟化リガンドとして用いたが、前に考察した他の成熟信号タンパク質をヒドロゲル粒子に繋留して、所望の免疫応答を誘発するようDCをプログラムすることも可能である。
【0091】
固定されたCpGを持つ、または持たない抗原送達粒子に応答した樹状細胞の成熟および活性化を測定して、このリガンドの樹状細胞機能に対する影響を決定した。粒子と共にインキュベートした樹状細胞によるTh1サイトカイン、インターロイキン12の産生を、DC活性化の指標として用いた。図11Aに示すように、未成熟の骨髄由来樹状細胞(BMDC)は、修飾されていないゲル粒子によってはIL−12産生を引き起こされなかった。これはその合成構造と一致する。しかしながら、可溶性のCpGはIL−12産生を引き起こす、特に溶液の濃度が1mMに近づけばそうである。対照的に、抗原送達粒子の表面へ固定されたCpGオリゴヌクレオチドは、同じ量の可溶性CpGよりDCの活性化を引き起こす能力が〜10倍高かった。CpGはまたMHC分子、および未成熟DCの成熟をトリガーするCD86などの共刺激性分子の上方制御を引き起こすことが知られている。24時間、フリーのCpG、または等量濃度の抗原送達粒子に結合したCpGに接触させた未成熟BMDCに対する、クラスII MHCおよびCD86の細胞表面レベルのフローサイトメトリー解析を図11Bに示す。可溶性CpGは、これらの条件下でBMDC成熟に対してほとんどまたはまったく影響を示さなかった。その一方でCpG粒子は、強力な刺激性を有する対照(リポ多糖類(LPS)とインキュベートしたBMDC)に匹敵する、両方の細胞表面分子のロバストな上方制御をトリガーした。したがって、抗原送達粒子は本来はDCを活性化しないが、選択されたDC調節性リガンドで修飾されたときは、粒子は可溶性リガンドを単に与えるよりも、DC活性化および成熟を極めて強力に開始することができる。
【0092】
実施例6
粒子送達抗原および可溶性抗原のT細胞活性化の比較。
以前に記述したように、抗原送達粒子をパルス状に与えられた樹状細胞は、CD4+T細胞芽球およびCD8+T細胞クローンの活性化により評価されるように、抗原を有効に処理して提示した。図12Aに示すように、ova粒子をパルス状に与えられたBMDCがCD4+ova特異的T細胞を活性化し、また粒子は、可溶性オボアルブミンよりCD4細胞の活性化能力が〜10倍高かった。粒子でパルスされたDCは、粒子にCpGが結合していてもいなくても、CD4細胞をトリガーして有意なレベルのThlエフェクター・サイトカインであるインターフェロン−γ(IFN−γ)を生成させた(図12B)。より劇的なのは、CD8T細胞活性化に対する粒子に基づく抗原送達の効果である(図12C)。従来の多数の研究で実証されているように、可溶性オボアルブミンはクラスIMHC上に提示されず、したがって可溶性ovaをパルス状に与えられたBMDCはCD8 T細胞活性化をトリガーすることができない。対照的に、ゲル粒子に含まれて送達されたovaは強いCD8T細胞活性化をプライミングした。関係のない抗原(ウシ血清アルブミン)を封入した粒子はCD8応答をトリガーしなかったので、この活性化は抗原に特異的であった。
【0093】
要約すると、ova粒子は、クラスIおよびIIのMHC経路の両方に抗原を送達することについて高度に効果的であり、プライマリーT細胞(CD4およびCD8T細胞の両方)を強力に活性化する。T細胞が活性化されてThl様応答を引き起こし、エフェクター・サイトカインを生成する。
【0094】
実施例7
抗原送達/DC活性化ヒドロゲル粒子を用いた、インビトロおよびインビボにおけるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化
マウス骨髄由来樹状細胞を、可溶性の又はヒドロゲル送達粒子に封入した50μgのオバルブミンと共に、1μM CpG存在下または非存在下で4時間インキュベートすることにより、抗原を搭載した。DCを次に、カルボキシフルオレセイン・スクシンイミジルエステル(CFSE)を搭載したCD4+OT−IIまたはCD8+OT−I T細胞と共に60時間培養した。CFSEは細胞の細胞質を標識する蛍光色素であって;細胞が分裂するとき、色素が2つの娘細胞にほぼ等しく分けられて、合計の蛍光が娘細胞に存在する。この標識技術を用いて、細胞分裂がT細胞のフローサイトメトリーにより容易に定量化される。図13は、可溶性のovaまたはゲル粒子中に封入されたovaをパルスされたDCに応答するOT−1およびOT−II T細胞についてのそのような解析を示す。図13Aが、CFSE蛍光を用いて検出したOT−II T細胞のパーセンテージをプロットしたフローサイトメトリーのヒストグラムを示す。可溶性抗原または可溶性抗原プラスCpGでパルスされた樹状細胞では、細胞分裂は60時間までにほとんど生じることはなく、また1回より多く分裂した細胞はなかった。対照的に、ova粒子でパルスされたDCは著しい細胞分裂を引き起こし、多くの細胞が60時間までに既に3−4回分割していた。図13Bに示すように、各条件下で分裂した細胞のパーセンテージを定量化すると、抗原送達粒子によってT細胞応答の著しい増加が引き起こされていた。図13Cに示すように、OT−1 CD8+T細胞で行なわれた同様の実験によって、抗原送達粒子がナイーブCD8+細胞のクロスプレゼンテーションおよび活性化も促進したことが示された。ova−CpG粒子をパルスされたDCを抗原提示のために用いた場合は、可溶性ovaとCpGでパルスしたDCと比較して、およそ2倍多くのCD8+T細胞が60時間までに分裂した。したがって、T細胞芽球に関する我々の初期の実験と一致して、抗原送達粒子は溶性抗原と比較すると、アジュバントとして可溶性CpGが存在する状態においてさえも、明らかにより強力なナイーブT細胞(CD4+およびCD8+の両方)の活性化を引き起こす。
【0095】
次にCFSEで標識したT細胞(独立な実験においてOT−IまたはOT−II)を、野生型B6マウスに養子免疫細胞移入し、二次リンパ器官に24時間滞留させた。その後マウスを、CpG存在下または非存在下で、可溶性ovaまたはovaゲル粒子のいずれかで免疫化した。5日後に、免疫化に対するT細胞応答を、流入領域リンパ節に存在するT細胞をフローサイトメトリーにより解析して測定した。図14に示すように、CD4+およびCD8+ナイーブT細胞の両方が、ゲル粒子免疫化に応答して活性化され、インビボで大規模な増殖を示した。左に示すのは、ovaゲル粒子で免疫化された2匹の異なるマウスから取り出したOT−II T細胞のCFSE蛍光ヒストグラムであって、いくつかの細胞が7回迄またはそれ以上の分裂を示し、また総数が著しく増大した。右は、OT−I T細胞の応答を示す散布図であり:対照(PBS注入)、可溶性ovaプラスCpG、およびova粒子プラスCpGについて、縦軸にTCR発現レベルおよび横軸上にCFSE蛍光を示す。予想したように、対照の注入には細胞分裂は見られない。可溶性CpGと混合した所定の(高い)抗原用量の可溶性ovaが、著しいOT−I T細胞増殖を引き起こした(OT−I T細胞について公表された他のデータと合致して)。しかしながら、ゲル粒子による免疫化は、T細胞のCFSE蛍光がさらに原点の方へシフトしたこと(最大の細胞分裂が生じたことを示す)により証拠づけられるように、さらに大きなT細胞応答を引き起こした。
【0096】
要約すると、ova封入粒子は、抗原をクラスIとクラスのIIの両方のMHC経路に高度に効率的に送達し、またプライマリーT細胞(CD4+およびCD8+T細胞の両方)を強力に活性化する。T細胞は活性化されてTh−I様応答を起し、エフェクター・サイトカインを生成する。更にこのデータは、抗原送達/DC活性化システムが、インビトロにおける強力なナイーブT細胞の活性化を引き起こし、そしてインビボでもT細胞をプライミングするように機能することを示している。
【0097】
実施例8
コロイド状ミセルの作成および特性決定
化学誘引マイクロスフェアおよび抗原送達/DC活性化粒子を統合するために、粒子ゲルとマイクロスフェアの表面に一時的な共有結合を形成させることにより、これらの2つの要素が結合した「コロイド状ミセル」を(図3Bに図示したように)合成することができる。PLGAスフェアを1M NaOHで15分間処理して表層を加水分解し、カルボキシル基を導入する。マイクロスフェアを次に3回洗浄して塩基を除く。塩基処理がマイクロスフェア放出キネティクスまたは他の物理的性質を著しく変化させることが判明した場合は、末端カルボキシル基を覆ったPLGA(Boeringer Ingleheim)(Boeringer Ingleheim)[Faraasen ら、Pharm Res., 20: 237-46 (2001)]を代わりに用いることができる。
【0098】
簡潔に述べれば、抗原搭載した抗原送達/DC活性化粒子を、粒子の表面に残存するフリーのアミンを利用してカルボジイミド結合により、カルボキシル基で修飾されたマイクロスフェアに連結する。5×106粒子/mlの濃度のマイクロスフェアをゲル粒子と1:200のマイクロスフェア:粒子比で混合し、攪拌しながら15分間平衡に至らせる。続いて、水溶性カルボジイミドEDCを加え(5mM)、攪拌しながらスフェアを2時間室温で反応させる。インキュベーション期間の終わりに、粒子を結合したマイクロスフェアを結合していないナノスフェアから、1000×g5分間の短い遠心分離により分離する。同様の粒子濃度が以前に報告されており、高収率のコロイド状ミセルが得られている[Huang ら、Science, 294: 870-5 (2001)]。コロイド状ミセルを最後に数回洗浄して残りのカルボジイミドおよび尿素副産物を除去し、次に凍結乾燥し、使用するまで4℃で保存する。
【0099】
本発明の化合物および方法の好ましい実施態様は、説明のためであって、制限を意図するものではない。当業者は上の教示に照らして修正と変更をすることができる。さらに、当業者は本発明を、他の目的、例えば空気の品質をモニターするためなどの、気体サンプル中のアセトン・レベルを測定する目的に用いることができる。したがって、開示された個々の実施態様中での変更は可能であって、それは添付する請求項によって定義される記述された事項の範囲内であると理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、塩析ヒドロゲル粒子合成工程の概略図である。
【図2A】図2Aは、リガンドで修飾した生体高分子送達ヒドロゲル粒子を利用したインビボの多薬剤送達プラットフォームを示す。図2Aはデジタル印刷した薬剤送達装置、多チャンバーデポである。
【図2B】図2Bは、リガンドで修飾した生体高分子送達ヒドロゲル粒子を利用したインビボの多薬剤送達プラットフォームを示す。図2Bは断面の構造を示す。
【図3A】図3Aは、急性感染症に応答する樹状細胞のライフサイクルのモデルである。
【図3B】図3Bは、コロイド状ミセル・ワクチンシステムの概略図である。
【図4A】図4Aは、PLGAマイクロスフェアからのMIP−3αの制御された放出を図示する。図4Aは、培地へマイクロスフェアから1週間に亘って放出され、ELISAによって検出されたケモカインを示す放出プロフィールである。
【図4B】図4Bは、PLGAマイクロスフェアからのMIP−3αの制御された放出を図示する。図4Bは、図4Aに示した放出プロフィールから計算された放出速度である。
【図5A】図5Aは、MIP−3αマイクロスフェアに応答した樹状細胞の移動を示す。図は経路終端の二次元プロットを図示する。矢印は、マイクロスフェア源に向かう方向を示す。図5Aは、対照の「空」マイクロスフェアに対する応答である。
【図5B】図5Bは、MIP−3αマイクロスフェアに応答した樹状細胞の移動を示す。図は経路終端の二次元プロットを図示する。矢印は、マイクロスフェア源に向かう方向を示す。図5Bは、MIP−3α放出マイクロスフェアに対する応答である。
【図6】図6A、6B、6C、6D、および6Eは、インビボでリンパ球を誘引するマイロスフェアからの制御された放出を示す。
【図7A】図7Aは、抗原送達ヒドロゲル粒子の特性決定を示す。図7Aは、光子相関分光粒子サイズ測定データを示す。
【図7B】図7Bは、抗原送達ヒドロゲル粒子の特性決定を示す。図7Bは封入されたTR−Ovaの蛍光を示す。カバーガラス上で乾燥させたテキサスレッドを結合した卵白アルブミンを搭載した粒子の擬似カラー蛍光顕微鏡写真。
【図8A】図8Aは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Aは、DCによる粒子取込の経時蛍光像を示す。
【図8B】図8Bは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Bは、ヨウ化プロピジウム染色した、抗原を搭載した粒子と24時間インキュベートした樹状細胞および培地のみでインキュベートした対照の、フローサイトメトリー解析である。
【図8C】図8Cは、インビトロでの樹状細胞への抗原送達を図示する。図8Cは、粒子で処理された樹状細胞によるCD8+T細胞の活性化を示す。
【図9】図9は、樹状細胞によるovaゲル粒子の抗原処理について、提案するメカニズムを図示したものである。(1)はエンドサイトーシス/貧食作用により取り込まれる粒子であり;(2)は粒子中へ拡散し捕捉された抗原をタンパク質分解する低モル質量プロテアーゼであり;(3)は粒子から拡散して出て正常な細胞内の抗原処理経路により処理される抗原断片である。
【図10A】図10Aは、細胞内プロテアーゼの作用によるovaゲル粒子からの抗原放出を図示する。図10Aは、ovaを搭載した抗原送達ゲル粒子を、様々な用量のカテプシンDとエンドソーム内の状態を模倣するpH5.5の緩衝液中でインキュベートした後に、粒子内に残存するタンパク質含量を示す。
【図10B】図10Bは、細胞内プロテアーゼの作用によるovaゲル粒子からの抗原放出を図示する。図10Bは、エンドソームのプロテアーゼ、カテプシンDにインビトロで曝された粒子からのタンパク質放出の時間経過である。
【図11A】図11Aは、CpG−抗原粒子による樹状細胞の活性化と成熟を図示する。図11Aは、粒子、可溶性CpGまたはCpGで修飾した粒子との24時間インキュベーションが引き金となって起きた未成熟な骨髄由来樹状細胞によるIL−12の産生を示す。
【図11B】図11Bは、CpG−抗原粒子による樹状細胞の活性化と成熟を図示する。図11Bは、可溶性CpGとのまたはゲル粒子に結合した等モルレベルのCpGとの24時間のインキュベーションに応答して起こった、BMDCによるMHCII(I−Ab)およびCD86の発現のフローサイトメトリー解析、およびLPSへの応答との比較である。
【図12A】図12Aは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Aは、種々の濃度の可溶性ovaまたはゲル粒子ovaをパルス状に与えた骨髄由来DCとの24時間のインキュベーションの後の、CD4+ OT−II T細胞芽細胞によるIL−2の産生を示す。
【図12B】図12Bは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Bは、24時間後のOT−II T細胞芽細胞によるIFN−γの産生を示す。
【図12C】図12Cは、インビトロにおける、ovaまたは封入されたovaをパルス状に与えた樹状細胞によるT細胞の活性化を図示する。図12Cは、種々の濃度の可溶性卵白アルブミン、ova粒子、または対照BSA粒子をパルス状に与えたBMDCに応答した、CD8+ OT−I T細胞によるIL−2の産生を示す。
【図13A】図13Aは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Aは、CpGを伴うまたは伴わない種々の形のova抗原に応答した、CD4+OT−IIナイーブT細胞の増殖を示す。
【図13B】図13Bは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Bは、フローサイトメトリーデータから決定された、各実験条件下で分裂している細胞のパーセンテージを示す。
【図13C】図13Cは、粒子をパルス状に与えた樹状細胞によるインビトロでのナイーブT細胞の活性化を図示する。図13Cは、ナイーブCD8+OTI細胞の活性化とフローサイトメトリーにより測定された60時間後に分裂している細胞のパーセンテージを示す。
【図14A】図14Aは、インビボにおいてヒドロゲル抗原送達粒子で免疫化することによるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化を図示する。図14Aは、OT−IIからのCFSEの稀釈の確認を示す。
【図14B】図14Bは、インビボにおいてヒドロゲル抗原送達粒子で免疫化することによるナイーブCD4+およびCD8+T細胞の活性化を図示する。図14Bは、OT−IからのCFSEの希釈の確認を示す。
【図15】図15Aおよび15Bは、インビボにおける樹状細胞の最適なプログラミングについてテストされる成熟経路を図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を調節するための、ヒドロゲル粒子を含む組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が:
ヒドロゲルポリマー;
前記ヒドロゲル粒子に封入された免疫原;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上のリガンド、
を含み、前記リガンドが抗原提示細胞と相互作用し、前記抗原提示細胞に活性化信号を供給する、組成物。
【請求項2】
免疫原が、生体高分子、細胞溶解物および合成抗原からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生体高分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、脂質およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
免疫原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ヒドロゲルポリマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
リガンドが、ヒドロゲル粒子の表面に共有結合で付着されている、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
リガンドが、ヒドロゲル粒子の表面に非共有結合で付着されている、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
リガンドが、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌のリポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体、からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ヒドロゲル粒子が、前記ヒドロゲル粒子が細胞内区画または細胞外マトリックスへ送達された際に、封入された生体高分子の選択的な放出を可能にする、酵素感受性または環境感受性ポリマー配列をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ヒドロゲル粒子が、10nm〜50μmの平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
化学誘引物質を含有するマイクロスフェアをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
化学誘引物質がサイトカインである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、およびMIFからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
化学誘引物質がケモカインである、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
ケモカインが、MIP−3a、MIP−1a、MIP−1b、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α、およびBLCからなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
請求項1記載の組成物;および
薬学的に許容される担体、
を含む医薬組成物。
【請求項18】
化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
ヒドロゲル粒子およびマイクロスフェアが結合してコロイド状のミセルを形成する、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒドロゲル粒子が、カルボジイミド結合によってマイクロスフェアに結合する、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗原提示および樹状細胞活性化の両方のための抗原送達システムであって:
ヒドロゲル粒子、および
マイクロスフェアを含み、
前記ヒドロゲル粒子は:
ヒドロゲルポリマー;
前記ヒドロゲル粒子中に封入された免疫原;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上のリガンド、
を含み、前記リガンドは樹状細胞と相互作用し前記樹状細胞に活性化信号を供給する、
抗原送達システム。
【請求項22】
免疫原が、生体高分子、細胞溶解物、および合成抗原からなる群より選択される、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項23】
生体高分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、脂質、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項22記載の抗原送達システム:
【請求項24】
免疫原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項25】
ヒドロゲルポリマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項26】
リガンドが、共有結合でヒドロゲル粒子の表面に付着されている、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項27】
リガンドが、非共有結合でヒドロゲル粒子の表面に付着されている、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項28】
リガンドが、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌のリポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体からなる群より選択される、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項29】
ヒドロゲル粒子が、細胞内区画または細胞外マトリックスへ前記ヒドロゲル粒子が送達された際に封入された生体高分子の選択的な放出を可能にする、酵素感受性または環境感受性ポリマー配列を含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項30】
ヒドロゲル粒子が、10nm〜50μmの平均直径を有する、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項31】
マイクロスフェアが、化学誘引物質を含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項32】
化学誘引物質が、サイトカインである、請求項31記載の抗原送達システム。
【請求項33】
サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、およびMIFからなる群より選択される、請求項32記載の抗原送達システム。
【請求項34】
化学誘引物質が、ケモカインである、請求項31記載の抗原送達システム。
【請求項35】
ケモカインが、MIP−3a、MIP−1a、MIP−1b、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α、およびBLCからなる群より選択される、請求項34記載の抗原送達システム。
【請求項36】
請求項21記載の抗原送達システム;および
薬学的に許容される担体、
を含む、医薬組成物。
【請求項37】
ヒドロゲル粒子およびマイクロスフェアが、結合してコロイド状のミセルを形成する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒドロゲル粒子が、カルボジイミド結合によってマイクロスフェアと結合する、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を増強するための方法であって、前記哺乳動物に:
ヒドロゲルポリマー;
ヒドロゲル粒子中に封入された、前記抗原、または前記抗原をコードするポリ
ヌクレオチド;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上の、抗原提示細胞と相互作用するリガンド、
を含む前記ヒドロゲル粒子;ならびに
薬学的に許容される担体、
を含む組成物の治療上有効な量を投与すること
を含む方法。
【請求項40】
抗原提示細胞が、樹状細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組成物が、化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
化学誘引物質が、サイトカインまたはケモカインを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、および合成抗原の少なくとも1つを含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、前記哺乳動物に:
ヒドロゲルポリマー;
ヒドロゲル粒子中に封入された前記抗原、または前記抗原をコードする
ポリヌクレオチド;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上の、抗原提示細胞と相互作用するリガンド、
を含む前記ヒドロゲル粒子;ならびに
薬学的に許容される担体、
を含む組成物の治療上有効な量を投与すること
を含む方法。
【請求項45】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
組成物が、化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項47】
化学誘引物質がサイトカインまたはケモカインである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
抗原が、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項44記載の方法。
【請求項49】
哺乳動物の感染症、癌、または自己免疫疾患を治療するための方法であって、
前記哺乳動物に治療上有効な量の請求項17記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項50】
医薬組成物を筋肉内に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
医薬組成物を皮下に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項52】
医薬組成物を皮内に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項53】
医薬組成物をパウダージェクトシステムにより投与する、請求項49記載の方法。
【請求項54】
医薬組成物を肺への吸入または噴霧送達により投与する、請求項49記載の方法。
【請求項55】
感染症が、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaからなる群より選択される微生物の少なくとも1つによって引き起こされる、請求項49記載の方法。
【請求項56】
感染症が、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス;およびコロナウイルスからなる群より選択されるウイルスの少なくとも1つによって引き起こされる、請求項49記載の方法。
【請求項57】
感染症が、HIVによって引き起こされる、請求項56記載の方法。
【請求項58】
癌が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、骨癌、または肝臓癌である、請求項49記載の方法。
【請求項59】
自己免疫疾患が、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病、または自己免疫性血小板減少性紫斑病である、請求項49記載の方法。
【請求項60】
自己免疫疾患が、喘息またはSLEである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
(a)免疫原を含む溶液を調製する工程;
(b)前記免疫原溶液に塩を加えて塩析し、エマルジョンを形成する工程;
(c)ヒドロゲルのヒドロゲルモノマーを前記エマルジョンに加えて、水性媒体を形成する工程;および
(d)開始因子を前記水性媒体に加えて、ヒドロゲル粒子を形成する工程
を含む、請求項1記載の組成物を製造するための方法。
【請求項62】
免疫原が、生体高分子または細胞溶解物である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
工程(d)において、開始因子を水性媒体に撹拌下で加えてヒドロゲル粒子を形成する、請求項61記載の方法。
【請求項64】
工程(b)において、37℃で塩を生体高分子溶液へ添加することにより、塩析してエマルジョンを形成する、請求項62記載の方法。
【請求項65】
モノマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項61記載の方法。
【請求項66】
ブロックコポリマーが、アクリル化PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)[PLGA]−PEG、またはPLGA−PEG−PLGAである、請求項62記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を調節するための、ヒドロゲル粒子を含む組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が:
ヒドロゲルポリマー;
前記ヒドロゲル粒子に封入された免疫原;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上のリガンド、
を含み、前記リガンドが抗原提示細胞と相互作用し、前記抗原提示細胞に活性化信号を供給する、組成物。
【請求項2】
免疫原が、生体高分子、細胞溶解物および合成抗原からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生体高分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、脂質およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
免疫原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ヒドロゲルポリマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
リガンドが、ヒドロゲル粒子の表面に共有結合で付着されている、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
リガンドが、ヒドロゲル粒子の表面に非共有結合で付着されている、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
リガンドが、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌のリポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体、からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ヒドロゲル粒子が、前記ヒドロゲル粒子が細胞内区画または細胞外マトリックスへ送達された際に、封入された生体高分子の選択的な放出を可能にする、酵素感受性または環境感受性ポリマー配列をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ヒドロゲル粒子が、10nm〜50μmの平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
化学誘引物質を含有するマイクロスフェアをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
化学誘引物質がサイトカインである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、およびMIFからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
化学誘引物質がケモカインである、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
ケモカインが、MIP−3a、MIP−1a、MIP−1b、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α、およびBLCからなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
請求項1記載の組成物;および
薬学的に許容される担体、
を含む医薬組成物。
【請求項18】
化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
ヒドロゲル粒子およびマイクロスフェアが結合してコロイド状のミセルを形成する、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒドロゲル粒子が、カルボジイミド結合によってマイクロスフェアに結合する、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗原提示および樹状細胞活性化の両方のための抗原送達システムであって:
ヒドロゲル粒子、および
マイクロスフェアを含み、
前記ヒドロゲル粒子は:
ヒドロゲルポリマー;
前記ヒドロゲル粒子中に封入された免疫原;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上のリガンド、
を含み、前記リガンドは樹状細胞と相互作用し前記樹状細胞に活性化信号を供給する、
抗原送達システム。
【請求項22】
免疫原が、生体高分子、細胞溶解物、および合成抗原からなる群より選択される、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項23】
生体高分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、脂質、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項22記載の抗原送達システム:
【請求項24】
免疫原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項25】
ヒドロゲルポリマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項26】
リガンドが、共有結合でヒドロゲル粒子の表面に付着されている、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項27】
リガンドが、非共有結合でヒドロゲル粒子の表面に付着されている、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項28】
リガンドが、CpG、CD40リガンド、ビタミンD、2本鎖RNA、ポリ(I:C)、IL−2、IL−4、IL−7、IL−13、IL−15、LPS、細菌のリポタンパク質、リピドA、TGF−β、TLR7リガンド(イミダゾキノリン)、TLRレセプターに対する抗体、およびDEC−205に対する抗体からなる群より選択される、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項29】
ヒドロゲル粒子が、細胞内区画または細胞外マトリックスへ前記ヒドロゲル粒子が送達された際に封入された生体高分子の選択的な放出を可能にする、酵素感受性または環境感受性ポリマー配列を含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項30】
ヒドロゲル粒子が、10nm〜50μmの平均直径を有する、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項31】
マイクロスフェアが、化学誘引物質を含む、請求項21記載の抗原送達システム。
【請求項32】
化学誘引物質が、サイトカインである、請求項31記載の抗原送達システム。
【請求項33】
サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα、およびMIFからなる群より選択される、請求項32記載の抗原送達システム。
【請求項34】
化学誘引物質が、ケモカインである、請求項31記載の抗原送達システム。
【請求項35】
ケモカインが、MIP−3a、MIP−1a、MIP−1b、RANTES、MIP−3b、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α、およびBLCからなる群より選択される、請求項34記載の抗原送達システム。
【請求項36】
請求項21記載の抗原送達システム;および
薬学的に許容される担体、
を含む、医薬組成物。
【請求項37】
ヒドロゲル粒子およびマイクロスフェアが、結合してコロイド状のミセルを形成する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒドロゲル粒子が、カルボジイミド結合によってマイクロスフェアと結合する、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を増強するための方法であって、前記哺乳動物に:
ヒドロゲルポリマー;
ヒドロゲル粒子中に封入された、前記抗原、または前記抗原をコードするポリ
ヌクレオチド;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上の、抗原提示細胞と相互作用するリガンド、
を含む前記ヒドロゲル粒子;ならびに
薬学的に許容される担体、
を含む組成物の治療上有効な量を投与すること
を含む方法。
【請求項40】
抗原提示細胞が、樹状細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組成物が、化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
化学誘引物質が、サイトカインまたはケモカインを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗原が、細菌抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、および合成抗原の少なくとも1つを含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
哺乳動物において抗原に対する免疫応答を抑制する方法であって、前記哺乳動物に:
ヒドロゲルポリマー;
ヒドロゲル粒子中に封入された前記抗原、または前記抗原をコードする
ポリヌクレオチド;および
前記ヒドロゲル粒子の表面上の、抗原提示細胞と相互作用するリガンド、
を含む前記ヒドロゲル粒子;ならびに
薬学的に許容される担体、
を含む組成物の治療上有効な量を投与すること
を含む方法。
【請求項45】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
組成物が、化学誘引物質を含むマイクロスフェアをさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項47】
化学誘引物質がサイトカインまたはケモカインである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
抗原が、組織移植抗原、自己抗原、合成抗原、およびアレルゲンの少なくとも1つを含む、請求項44記載の方法。
【請求項49】
哺乳動物の感染症、癌、または自己免疫疾患を治療するための方法であって、
前記哺乳動物に治療上有効な量の請求項17記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項50】
医薬組成物を筋肉内に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
医薬組成物を皮下に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項52】
医薬組成物を皮内に投与する、請求項49記載の方法。
【請求項53】
医薬組成物をパウダージェクトシステムにより投与する、請求項49記載の方法。
【請求項54】
医薬組成物を肺への吸入または噴霧送達により投与する、請求項49記載の方法。
【請求項55】
感染症が、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobacter consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; および Yersinia enterocoliticaからなる群より選択される微生物の少なくとも1つによって引き起こされる、請求項49記載の方法。
【請求項56】
感染症が、インフルエンザウイルス;パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アフトウイルス;コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デング熱ウイルス;黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;伝染性気管支炎ウイルス;豚伝染性胃腸ウイルス;呼吸器合胞体(RS)ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);パピローマウイルス;単純疱疹ウイルス;ワリセロウイルス;サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス;およびコロナウイルスからなる群より選択されるウイルスの少なくとも1つによって引き起こされる、請求項49記載の方法。
【請求項57】
感染症が、HIVによって引き起こされる、請求項56記載の方法。
【請求項58】
癌が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、骨癌、または肝臓癌である、請求項49記載の方法。
【請求項59】
自己免疫疾患が、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性硬化症、若年型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性脈管炎、水疱性天疱瘡、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎または橋本病、シェーグレン症候群、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、クローン病、サルコイドーシス、リウマチ性心臓炎、強直性脊椎炎、グレーヴス病、または自己免疫性血小板減少性紫斑病である、請求項49記載の方法。
【請求項60】
自己免疫疾患が、喘息またはSLEである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
(a)免疫原を含む溶液を調製する工程;
(b)前記免疫原溶液に塩を加えて塩析し、エマルジョンを形成する工程;
(c)ヒドロゲルのヒドロゲルモノマーを前記エマルジョンに加えて、水性媒体を形成する工程;および
(d)開始因子を前記水性媒体に加えて、ヒドロゲル粒子を形成する工程
を含む、請求項1記載の組成物を製造するための方法。
【請求項62】
免疫原が、生体高分子または細胞溶解物である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
工程(d)において、開始因子を水性媒体に撹拌下で加えてヒドロゲル粒子を形成する、請求項61記載の方法。
【請求項64】
工程(b)において、37℃で塩を生体高分子溶液へ添加することにより、塩析してエマルジョンを形成する、請求項62記載の方法。
【請求項65】
モノマーが、ポリエチレングリコール[PEG]メタクリラートおよびアクリラート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、2−ジエチルアミノエチルメタクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートおよびアクリラート、アクリルアミド/ビスアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、メタクリル化デキストラン、アクリル化デキストラン、またはポリ(エチレングリコール)−ポリエステル アクリル化/メタクリル化ブロックコポリマーを含む、請求項61記載の方法。
【請求項66】
ブロックコポリマーが、アクリル化PEG−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)[PLGA]−PEG、またはPLGA−PEG−PLGAである、請求項62記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【公表番号】特表2007−528848(P2007−528848A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518895(P2006−518895)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/021852
【国際公開番号】WO2005/013896
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506009800)ヴァックスデザイン・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】VAXDESIGN CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/021852
【国際公開番号】WO2005/013896
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506009800)ヴァックスデザイン・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】VAXDESIGN CORPORATION
【Fターム(参考)】
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