説明

ワーク位置決め装置

【課題】 設備費の低減に好適なワーク位置決め装置を提供する。
【解決手段】 位置決めするワーク形状に対応して形状が相違する複数のゲージGを放射状に備え、その回転位置に応じたゲージGを使用位置に突き出させる複数のゲージユニット2、4と、前記各ゲージユニット2、4に連結された回転部材(ピニオン20)に夫々係合し、その移動により各回転部材20を介して各ゲージユニット2、4を連動して回転させて各ゲージユニット2、4の回転角度位置を連携させる連携手段(ラック21)15と、前記連携手段(ラック21)15を予め設定した複数の停止位置のいずれかに停止させ、停止位置に応じて前記各ゲージユニット2、4から使用位置に突き出させるゲージGを設定するワーク種別切換手段16と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車種や型式等が相違する複数種類のワークを組立可能なワーク位置決め装置に関し、特に、ワークの種類に応じて使用するゲージやクランプの切換に好適なワーク位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車種や型式等が相違する複数種類のワークを組立可能とするため、ワークの種類に応じて使用するゲージやクランプを切換るワーク位置決め装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、台車に搭載される複数車種の車体を空圧により夫々固定し得る複数組のクランプ装置を設けて、同一の台車で複数車種の車体を搭載することができ、工場内のライン構成を大幅に簡略化できるようにしている。また、台車に搭載された車体の車種を検出して台車側の空圧回路を対応するクランプ装置側に切換える複数のリミツト弁を設け、同一の空圧回路によって複数組のクランプ装置を夫々作動させるようにして、夫々のクランプ装置に対応してトラツク側及び台車側に複数組の空圧回路を設け、これら両側の空圧回路をオートジヨイントで夫々接続する場合に比べて、構成を著しく簡単にすると共に、構造の複雑なオートジヨイントの数を半減し、設備費を低減して故障等の恐れを少なくしている。
【特許文献1】特公平6−31035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、夫々のゲージまたはクランプ装置毎に空圧シリンダを装備し、車種毎に専用のゲージまたはクランプ装置を動作させて車種切換えを行うものであるため、多くの空圧シリンダと複雑な空圧回路および制御装置を必要とし、設備が高価となる問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、設備費の低減に好適なワーク位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、位置決めするワーク形状に対応して形状が相違する複数のゲージを放射状に備え、その回転位置に応じたゲージを使用位置に突出させる複数のゲージユニットと、前記各ゲージユニットに連結された回転部材に夫々係合し、その移動により各回転部材を介して各ゲージユニットを連動して回転させて各ゲージユニットの回転角度位置を連携させる連携手段と、前記連携手段を予め設定した複数の停止位置のいずれかに停止させ、停止位置に応じて前記各ゲージユニットから使用位置に突出させるゲージを設定するワーク種別切換え手段と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、位置決めするワーク形状に対応して形状が相違する複数のゲージを放射状に備えて、その回転位置に応じたゲージを使用位置に突き出させる複数のゲージユニットを連携手段により連動して回転可能とし、ワーク種別切換手段により予め設定した複数の停止位置のいずれかに連携手段を停止させて、停止位置に応じて前記各ゲージユニットから使用位置に突き出させるゲージを切換るようにしたので、ワーク種別、例えば、車種・形式に応じて使用するゲージを一括して切換ることができ、ゲージ毎にアクチュエータを必要とせず、安価なワーク位置決め装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のワーク位置決め装置の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本発明を適用したワーク位置決め装置の第1実施形態を車体ルーフの組立サブラインに適用した車体生産ラインのレイアウト図、図2はルーフの組立サブラインで使用するワーク位置決め装置の平面図、図3は図2に示すワーク位置決め装置の側面図、図4は車種切換機構の概略平面図、図5は同じく車種切換機構の側面図である。
【0009】
図1において、車体生産ラインは、車体骨格の組立を行うボディメインラインBMと、車体のルーフ組立体をサブ組立するルーフ組立装置RAと、ルーフ組立装置RAによりサブ組立されたルーフ組立体をボディメインラインBMに搬送するルーフ搬送台車Cと、ルーフ搬送台車Cより供給されたルーフ組立体をボディメインラインBMのルーフセット工程RSに投入するルーフローダRRと、を備える。
【0010】
前記ルーフ組立装置RAは、車種や形式が相違する複数種類のルーフ組立体の生産が可能に構成され、ボディメインラインBMの車体の生産順序に応じた生産順序通りの車種・形式のルーフ組立体を生産するよう構成している。前記順序通りに生産されたルーフ組立体は、その生産順序を崩すことなく搬送ロット数単位でルーフ搬送台車CによりメインラインBMのルーフローダRRに供給され、ルーフローダRRによりメインラインBMのルーフセット工程RSに生産順序通りに供給される。
【0011】
前記ルーフ組立装置RAは、複数種類の車種・形式に応じたルーフパネルおよびその組付部品を位置決めし且つクランプするワーク位置決め装置1を備える。前記ワーク位置決め装置1は、前記複数種類の車種・形式のルーフパネルおよびその組付部品を位置決めするために、これら複数種類の車種・形式に応じた数の位置決めケージおよびクランプ装置を備え、生産する車種・形式に応じて使用する位置決めゲージ・クランプ装置を切換る。即ち、生産しようとする車種・形式に応じたゲージおよびクランプが選択されて位置決め部位に固定される。
【0012】
そして、ワーク位置決め装置1に付設されたハンドリングロボットHRによりルーフ部品が、ワーク位置決め装置1の夫々のゲージに位置決めされつつ投入されると、ワーク位置決め装置1はこれらのワークをクランプして位置決めする。ワーク位置決め装置1により位置決めされたルーフパネルおよび組付部品は、ワーク位置決め装置1に付随して配置された溶接ロボットSRにより溶接(例えば、スポット溶接)されてそれらが一体に組立てられる。組立完了したルーフ組立体は、前記ハンドリングロボットによりルーフ搬送台車Cに移載される。
【0013】
前記ワーク位置決め装置1は、図2および図3に示すように、ワークWとしてのルーフパネルRPを位置決めするゲージユニット2を備える複数のルーフパネル用インデックスシャフト3と、ルーフパネルRPに組付けられる組付部品であるルーフボウRBを位置決めするゲージユニット4を備える複数のルーフボウ用インデックスシャフト5と、位置決めされたルーフパネルRPをクランプするクランプ装置6と、生産する車種・形式に応じて前記各インデックスシャフト3、5の回転位置を設定する車種切換手段7とを備え、これらはフロアに固定されたベース8に対してポスト9により支持されるよう構成している。
【0014】
ここで、先ず、ルーフ組立体Wについて説明する。ルーフ組立体Wは、車体のルーフを構成する一枚板で形成されるルーフパネルRPの剛性を向上させるために、ルーフパネルRPの下方に車体左右方向に配置され、ルーフパネルRPの下面に接着若しくは溶接により固定される複数のルーフボウRBとで形成される。ワーク位置決め装置1には、先ずルーフボウRBがルーフボウ用インデックスシャフト5で選択されたゲージGに対して、位置決めされ、次いで、ルーフパネルRPがルーフパネル用インデックスシャフト3で選択されたゲージGに対して位置決めされ、そして、クランプ装置6によりルーフパネルRPがルーフパネル用のゲージGに対してクランプされて、固定される。
【0015】
前記ルーフパネル用インデックスシャフト3は、位置決めしようとするルーフパネルRPの前後方向に延在させて配置され、両端近傍に配置したポスト9に回転可能に支持され、その中間位置の複数箇所(図では、3箇所)にルーフパネルRPの位置決めを行うゲージユニット2を備える。前記ゲージユニット2は、等角度間隔をもって放射状に種別の異なるルーフパネルRPを位置決め可能とする複数(図では、4種類)のゲージGを備え、インデックスシャフト3の回転角度位置に応じていずれかのゲージGが選択されてルーフパネルRPを位置決めするよう構成している。なお、インデックスシャフト3の隣接するゲージユニット2間でも、ルーフパネルRPの形状に応じて、夫々ゲージGの形状は相違する。
【0016】
前記ルーフボウ用インデックスシャフト5は、ルーフパネル用インデックスシャフト3に平行に配置され、その両端近傍に配置したポスト9に回転可能に支持され、その中間位置の複数箇所(図では、5箇所)にルーフボウRBの位置決めを行うゲージユニット4を備える。前記ゲージユニット4も同様に、等角度間隔をもって放射状に種別の異なるルーフボウRBを位置決め可能とする複数(図では、4種類)のゲージGを備え、インデックスシャフト5の回転角度位置に応じていずれかのゲージGが選択されてルーフボウRBを位置決めするよう構成している。なお、インデックスシャフト5の隣接するゲージユニット4間でも、ルーフボウRBの形状に応じて、夫々ゲージGの形状は相違する。
【0017】
前記クランプ装置6は、前記ルーフパネル用インデックスシャフト3に隣接して平行配置したクランプ軸10を備え、クランプ軸10に固定して、前記ルーフパネル用インデックスシャフト3に夫々配置したゲージユニット2の選択されたゲージGの先端面に当接したクランプ位置とセットされるルーフパネルRP上から退避するアンクランプ位置との間で揺動可能なクランプアーム11と、クランプ軸10の別の位置に固定され、クランプ軸10をクランプ位置とアンクランプ位置との間で回転させ且つ夫々の位置で固定するクランプレバー12とを備える。
【0018】
前記クランプアーム11がアンクランプ位置に位置されているときには、ルーフパネルRPおよびルーフボウRBの各ゲージGへのセットが可能であり且つ両者が組立てられたルーフ組立体WをゲージG上から搬出可能であり、前記クランプアーム11がクランプ位置に位置されるときには、クランプアーム11の先端とゲージG先端との間で、セットされているルーフパネルRPおよびルーフボウRBをクランプして固定保持する。このクランプ装置6は、空圧シリンダによりクランプ位置とアンクランプ位置との間で切換るものであっても、手動により切換るものであってもよい。
【0019】
前記車種切換手段7は、図4および図5に示すように、各インデックスシャフト3、5の回転位置を同期させる連携手段15と、前記連携手段15の位置を位置決め保持すべきワーク種別に応じて設定する車種設定手段16と、車種設定手段16により設定した位置に連携手段15を保持する保持手段17とを備える。
【0020】
前記連携手段15は、図5に示すように、各インデックスシャフト3、5に夫々固定したピニオン20と、各ピニオン20に噛合うラック歯を有するラック21とを備える。ラック21のスライド位置を変化させることにより各インデックスシャフト3、5のゲージユニット2、4の回転角度位置が連携して変化し、スライド位置を予め設定した複数の位置のいずれかで停止させることにより、各ゲージユニット2、4は放射状に保持している複数のゲージGの内の回転位置に応じたゲージGをワーク位置決め可能な回転位置に位置させることができる。前記予め設定した複数の位置を車種別に設定することにより、ラック21の位置を選択することで車種切換が可能となる。
【0021】
前記車種設定手段16は、図4および図6に示すように、前記連携手段15の位置を位置決め保持すべきワーク種別に応じて設定するものであり、前記ラック21の端部を、このワーク種別により位置を異ならせて設定したストッパ22に当接させることにより、前記ラック21をワーク種別に応じた位置に設定する。図4および図6では、ワーク種別として、A〜D車の4種類のワークに対応させることが可能としている。
【0022】
各ストッパ22は、ラック21端部に対して横方向に段階的にずらせて配置しており、ラック21端部に横方向にスライド可能に横木23を設け、横木23のスライド位置により当接すべきストッパ22を選択して、ラック21をストッパ22側に押圧することにより横木23をいずれかのストッパ22に当接させてラック21の位置を設定するようにしている。
【0023】
前記横木23は、ばね24によりストッパ22の内の最前面にあるストッパ22(A車用)と重なる位置に付勢されており、その状態でラック21をストッパ22側に押圧するときには、最前面に位置するストッパ22(A車用)に横木23が当接してラック21は最前面のストッパ22(A車用)で設定した移動位置に設定される。また、横木23をばね24に対向して若干ずらせた状態でラック21をストッパ22側に押圧する場合には、横木23は、先端がずれているため、最前面のストッパ22(A車用)に隣接するストッパ22(B車用)に当接して該当するストッパ22で設定した移動位置に設定される。以下同様にして、当接すべきストッパ22を選択してラック21の位置を設定可能である。
【0024】
前記車種設定手段16の横木23を選択したいずれかのストッパ22に当接させるものとして、横木23のスライド位置を選択して当接させるべきストッパ22を選択する手段と、その状態において横木23をストッパ22側に付勢する手段とが必要であり、夫々空圧シリンダを設けて作動させるようにしてもよい。
【0025】
この実施の形態においては、図5に示すように、ワーク組立装置RAに付随して設けられている溶接ロボットSRの溶接ガンSGの可動電極25の側面を横木23のばね受け26に当接させて溶接ガンSGを横方向に移動させることにより、横木23のスライド位置をばね24に抗して変更し、次いで、溶接ガンSGの固定電極27を選択したストッパ22の背面に接触させ、溶接ガンSGの可動電極25を固定電極27に向けて前進させることにより、横木23を押してストッパ22に当接させることができる。
【0026】
前記保持手段17は、前記車種設定手段16により設定した位置に連携手段15を保持するため、図5に示すように、ラック21をストッパ22から遠ざけるよう付勢する付勢手段28と、ラック21に噛合ういずれかのピニオン20に係合させて配置したラチェット爪29とを備える。前記付勢手段28は、ばねやガスステーでもよいが、ラック21のストロークが長い場合には、図示するように、ラック21端部に固定したワイヤ30をプーリ31に巻掛けし、ワイヤ30の端部に、例えば、100[Kg]程度の錘32を固定して、錘32による付勢力が常時ラック21に加わるようにすることが望ましい。
【0027】
また、前記ラチェット爪29は、ラック21が前記錘32により付勢される方向(ストッパ22から遠ざかる方向)への移動は阻止し、ラック21が外力により付勢手段28に対向しての反対方向(ストッパ22へ近づく方向)への移動は許容する形状に形成されている。
【0028】
この構成により、ラック21がその横木23をストッパ22に当接させて位置設定する場合に、ストッパ22側への移動は許容してラック21が移動可能であり、ストッパ22へ横木23が当接された設定後においては、付勢手段28による付勢力によってもラック21の設定位置からの移動を阻止することができる。
【0029】
ラック21の設定位置の変更時には、ラチェット爪29が手動若しくは図示しないアクチュエータによりピニオン20から離脱させて解除すると、ラック21は付勢手段28により一旦ストッパ22から遠ざけられる。なお、保持手段17のラチェット爪29は、ピニオン20でなく、直接ラック21と係合するものであってもよい。
【0030】
以上の構成のワーク位置決め装置1の動作について以下に説明する。ここでは、生産すべきワーク種別がA車のルーフ組立体Wに変更された場合のワーク位置決め装置1の車種切換手段7による車種切換動作について先ず説明し、次いで、A車のルーフ組立体Wの位置決め方法を説明する。次いで、次に生産すべきワーク種別がB車に変化した場合のワーク位置決め装置1の車種切換手段7による車種切換動作について説明する。
【0031】
生産すべきワーク種別がA車のルーフ組立体Wに変更された場合においては、先ず車種切換手段7における保持手段17のラチェット爪29がピニオン20の係合状態から解除される。ラック21は付勢手段28である錘32により今まで接触していたストッパ22から横木23を離脱させて、図4および図9に示すように、初期位置に移動する。この移動により、ラック21に噛合っているピニオン20が回転し、各インデックスシャフト3、5も同時に回転され、インデックスシャフト3、5に固定されているゲージユニット2、4も回転されて、夫々初期位置に復帰する。この段階で、保持手段17のラチェット爪29をピニオン20に再び係合させる。
【0032】
次いで、生産すべきワーク種別がA車であるため、横木23はばね24で突き出された状態とし、図7に示すように、横木23の背面に溶接ガンSGの可動電極25を当接させ且つ溶接ガンSGの固定電極27を選択されたストッパ(A車用)22の背面に当接させて、可動電極25を溶接ガンSGのサーボモータにより固定電極27に向けて前進させる。ラック21は、それと噛合っているピニオン20のラチェット爪29との係合歯を変化させつつ付勢手段28に抗して移動される。ラック21の移動に連れて各ピニオン20が回転し、各インデックスシャフト3、5を回転させ、インデックスシャフト3、5上に固定しているゲージユニット2、4も一斉に回転する。
【0033】
前記前進により、図8に示すように、横木23がストッパ(A車用)22に当接されるとサーボモータのトルクが上昇することにより検知しサーボモータによる可動電極25の前進を停止させる。各ピニオン20、各インデックスシャフト3、5、ゲージユニット2、4の回転が停止され、各ゲージユニット2、4のA車に対応したゲージGが夫々上方に突き出させて停止される。この状態において、溶接ガンSGの可動電極25を後退させて溶接ガンSGを待機位置に移動させる。
【0034】
この時点でラック21と噛合うピニオン20に保持手段17のラチェット爪29が係合しているため、保持手段17の付勢手段28による付勢力がラック21に加わっていても、ラック21が後退して横木23がストッパ(A車用)22から離脱することはなく、両者の当接状態が継続される。以上のように、ワーク位置決め装置1の車種切換手段7による車種切換動作が完了すると、上記位置決めされたゲージGにA車用のルーフパネルRPおよびルーフボウRBを位置決めしてA車のルーフ組立体Wを生産することができる。
【0035】
次に、A車のルーフ組立体Wの位置決め方法について説明する。ワーク位置決め装置1には、ハンドリングロボットHRにより、先ずルーフボウRBがルーフボウ用インデックスシャフト5で選択されたゲージGに対して投入され、位置決め状態でセットされる。全てのルーフボウRBが位置決めセットされると、それらの上にルーフパネルRPがルーフパネル用インデックスシャフト3で選択されたゲージGに対して投入され、位置決め状態でセットされる。
【0036】
そして、クランプ装置6を作動させてクランプアーム11をクランプ位置に回動させてクランプアーム11先端とゲージG先端とによりルーフパネルRPをルーフパネル用のゲージGに対してクランプして固定する。次いで、ルーフボウRBとルーフパネルRPとが溶接ロボットSRによりスポット溶接される。全ての溶接点の溶接が完了するとルーフ組立体Wが完成する。
【0037】
クランプ装置6のクランプアーム11がアンクランプ位置に退避され、ハンドリングロボットHRによりルーフ組立体Wは搬出され、ルーフ搬送台車Cに移載される。次に生産する車種が同じである場合は、そのまま次のルーフボウRBおよびルーフパネルRPがワーク位置決め装置1にセットする工程に移行して同様にルーフ組立体Wの生産が開始される。
【0038】
次に生産する車種が異なる場合には、以下に述べる手順により各ゲージGを切換る。即ち、次に生産すべきワーク種別がB車に変化した場合のワーク位置決め装置1の車種切換手段7による車種切換動作について説明する。
【0039】
先ず車種切換手段7における保持手段17のラチェット爪29がピニオン20の係合状態から解除される。ラック21は付勢手段28である錘32により今まで接触していたストッパ22から横木23を離脱させて、図4および図9に示すように、初期位置に移動する。この移動により、ラック21に噛合っているピニオン20が回転し、各インデックスシャフト3、5も同時に回転され、インデックスシャフト3、5に固定されているゲージユニット2、4も回転されて、夫々初期位置に復帰する。この段階で、保持手段17のラチェット爪29をピニオン20に再び係合させる。
【0040】
次いで、生産すべきワーク種別がB車であるため、溶接ロボットSRによりばね24で突き出された横木23のばね受け26の背面に溶接ガンSGの可動電極25の側面を当接させ、溶接ガンSGを横移動させて横木23の先端部分をB車に該当するB車用ストッパ22と対面する位置にばね24に抗して移動させ、横木23の背面に溶接ガンSGの可動電極25を当接させ且つ溶接ガンSGの固定電極27を選択されたストッパ(B車用)22の背面に当接させて、可動電極25を溶接ガンときのサーボモータにより固定電極27に向けて前進させる。
【0041】
ラック21は、それと噛合っているピニオン20とラチェット爪29との係合歯を変化させつつ付勢手段28に抗して移動される。ラック21の移動に連れて各ピニオン20が回転し、各インデックスシャフト3、5を回転させ、インデックスシャフト3、5上に固定しているゲージユニット2、4も一斉に回転する。
【0042】
前記前進により横木23がストッパ(B車用)22に当接されるとサーボモータのトルクが上昇することにより検知しサーボモータによる可動電極25の前進を停止させる。各ピニオ20ン、各インデックスシャフト3、5、ゲージユニット2、4の回転が停止され、各ゲージユニット2、4のB車に対応したゲージGが夫々上方に突き出させて停止される。この状態において、溶接ガンSGの可動電極25を後退させて溶接ガンSGを待機位置に移動させる。
【0043】
この時点でラック21と噛合うピニオン20に保持手段17のラチェット爪29が係合しているため、保持手段17の付勢手段28による付勢力がラック21に加わっていても、ラック21が後退して横木23がストッパ(B車用)22から離脱することはなく、両者の当接状態が継続される。以上のように、ワーク位置決め装置1の車種切換手段7による車種切換動作が完了すると、上記位置決めされたゲージGにB車用のルーフパネルRPおよびルーフボウRBを位置決めしてB車のルーフ組立体Wを生産することができる。
【0044】
なお、上記実施形態において、各ゲージユニット2、4の回転位置を連携させる連携手段15として、ラック21とピニオン20を用いるものについて説明したが、図示はしないが、スプロケットとこれに係合するチェーンで構成したものであっても、ギヤ同士を噛合わせて構成したものであっても、各ゲージユニットが連携して回転されるものであればよい。
【0045】
また、上記実施形態において、ワーク位置決め装置1で位置決めするものとして、ルーフ組立体Wを生産するものについて説明したが、図示はしないが、放射状に複数のゲージを備えるゲージユニットを複数備えるものであれば、種々のワーク位置決め装置にも適用可能である。
【0046】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0047】
(ア)位置決めするワーク形状に対応して形状が相違する複数のゲージGを放射状に備え、その回転位置に応じたゲージGを使用位置に突き出させる複数のゲージユニット2、4と、前記各ゲージユニット2、4に連結された回転部材(ピニオン20)に夫々係合し、その移動により各回転部材20を介して各ゲージユニット2、4を連動して回転させて各ゲージユニット2、4の回転角度位置を連携させる連携手段(ラック21)15と、前記連携手段(ラック21)15を予め設定した複数の停止位置のいずれかに停止させ、停止位置に応じて前記各ゲージユニット2、4から使用位置に突き出させるゲージGを設定するワーク種別切換手段16と、を備える。このため、ワーク種別、例えば、車種・形式に応じて使用するゲージGを一括して切換ることができ、ゲージG毎にアクチュエータを必要とせず、安価なワーク位置決め装置1を得ることができる。
【0048】
(イ)連携手段15を、ゲージユニット2、4に連結された各回転部材であるピニオン20と各ピニオン20に噛合うラック21とにより構成することにより、ラック21をアクチュエータによりスライドさせ、所定の停止位置、例えば、選択したストッパ22に当接させて停止させるのみの簡単な構成により使用するゲージGを切換ることができる。
【0049】
(ウ)ワーク種別切換手段16は、前記連携手段15の移動部材であるラック21の移動方向に対して位置を相違させて設けた複数のストッパ22を備え、選択したストッパ22に連携手段15であるラック21を当接させて複数の停止位置で停止可能であり、連携手段15のラック21を前記ストッパ22への当接状態に保持する保持手段17を備えるため、ラック21をアクチュエータ等でストッパ22に接触させれば、保持手段17により位置が保持され、アクチュエータを作動させ続ける必要がない。
【0050】
(エ)複数のストッパ22は、前記連携手段15に対して当接する順番に応じて連携手段15の移動経路に対する横方向へのオフセット量を大きく設定して配置され、前記ストッパ22に当接する連携手段15の移動部材21に移動方向に直交する方向にスライド可能なスライド部材(横木23)を配置し、前記スライド部材23のスライド位置に応じて複数のストッパ22のいずれか一つを選択してストッパ22として機能させることにより、ラック21をストッパ22側に押付けるのみで使用するゲージGを切換えることができる。
【0051】
(オ)スライド部材としてのラック21は、溶接ロボットSRの溶接ガンSG若しくはハンドリングロボットHRのハンドによりスライド位置が設定され、選択したストッパ22に当接されるようにすると、ゲージGの切換え時の作業負荷を溶接ロボットSRの溶接ガンSGの加圧力若しくはハンドリングロボットHRの軸力を利用することで切換作業の軽減を図ることができる。しかも、溶接ロボットSRの溶接ガンSGやハンドリングロボットHRは溶接工程にあるものであり、それを利用することによりゲージG切換のための新たな設備投資を必要としない。このため、アクチュエータレスのワーク位置決め装置1とでき、アクチュエータの配線・配管が不要で、自由に移動が可能で、レイアウト変更などの対応が容易である。
【0052】
(カ)保持手段17として、ピニオン20若しくはラック21に係合してラック21のストッパ22側への移動は許可し、ストッパ22から遠ざかる移動を阻止するラチェット爪29を備えるようにすると、ストッパ22へのラック21の接近は許容するため、ストッパ22へのラック21の接近が容易となり、しかも、ストッパ22からの離反は阻止するため、ラック21をストッパ22への接触位置に停止させる構造を簡単かできる。
【0053】
(キ)保持手段17は、ラック21に一端が連結したワイヤ30をプーリ31に巻掛けて垂下させた先端に錘32を配置し、ラック21をストッパ22から遠ざかる方向に付勢する付勢手段28を備えるようにすると、ラック21の移動範囲が大きくなっても、一定した付勢力をラック21に付与でき、いずれの位置にラック21が位置していても、ラチェット爪29を解除させれば、ラック21を初期位置に確実に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のワーク位置決め装置の一実施形態を車体ルーフの組立サブラインに適用した車体生産ラインのレイアウト図。
【図2】同じくルーフの組立サブラインで使用するワーク位置決め装置の平面図。
【図3】図2に示すワーク位置決め装置の側面図。
【図4】車種切換機構の概略平面図。
【図5】同じく車種切換機構の側面図。
【図6】車種切換機構の車種設定手段の平面図。
【図7】車種切換機構の作動状態の概略説明図。
【図8】車種切換機構の図7に続く作動状態の概略説明図。
【図9】車種切換機構の別の作動状態の概略説明図。
【符号の説明】
【0055】
BM ボディメインライン
C ルーフ搬送台車
HR ハンドリングロボット
RA ルーフ組立装置
RB ルーフボウ
RP ルーフパネル
RS ルーフセット工程
RR ルーフローダ
SR 溶接ロボット
W ルーフ組立体
1 ワーク位置決め装置
2、4 ゲージユニット
3、5 インデックスシャフト
6 クランプ装置
7 車種切換手段、車種切換機構
8 ベース
9 ポスト
15 連携手段
16 車種設定手段
17 保持手段
20 ピニオン
21 ラック
22 ストッパ
23 横木
24 ばね
28 付勢手段
29 ラチェット爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めするワーク形状に対応して形状が相違する複数のゲージを放射状に備え、その回転位置に応じたゲージを使用位置に突き出させる複数のゲージユニットと、
前記各ゲージユニットに連結された回転部材に夫々係合し、その移動により各回転部材を介して各ゲージユニットを連動して回転させて各ゲージユニットの回転角度位置を連携させる連携手段と、
前記連携手段を予め設定した複数の停止位置のいずれかに停止させ、停止位置に応じて前記各ゲージユニットから使用位置に突出させるゲージを設定するワーク種別切換え手段と、を備えることを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記連携手段は、前記各回転軸に設けたピニオンと各ピニオンに噛合うラックとにより構成したことを特徴とする請求項1に記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記ワーク種別切換え手段は、前記連携手段の移動部材の移動方向に対して位置を相違させて設けた複数のストッパを備え、連携手段を選択したストッパに当接させて複数の停止位置で停止可能であり、連携手段の移動部材を前記ストッパへの当接状態に保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記複数のストッパは、前記連携手段に対して当接する順番に応じて連携手段の移動経路に対する横方向へのオフセット量を大きく設定して配置され、前記ストッパに当接する連携手段の移動部材に移動方向に直交する方向にスライド可能なスライド部材を配置し、前記スライド部材のスライド位置に応じて複数のストッパのいずれか一つを選択してストッパとして機能させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
前記スライド部材は、溶接ロボットの溶接ガン若しくはハンドリングロボットのハンドによりスライド位置が設定され、選択したストッパに当接されるものであることを特徴とする請求項4に記載のワーク位置決め装置。
【請求項6】
前記保持手段は、前記ピニオン若しくはラックに係合してラックのストッパ側への移動は許可し、ストッパから遠ざかる移動を阻止するラチェット爪を備える請求項3から請求項5のいずれか一つに記載のワーク位置決め装置。
【請求項7】
前記保持手段は、前記ラックに一端が連結したワイヤをプーリに巻掛けて垂下させた先端に錘を配置し、ラックをストッパから遠ざかる方向に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一つに記載のワーク位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−30653(P2007−30653A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215521(P2005−215521)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】