説明

ワーク搬送装置及びワーク搬送方法

【課題】薄板状のワークの保持を非接触状態から接触状態又は接触状態から非接触状態に切替える際にワークの傾斜を防止できるワーク搬送装置及びワーク搬送方法を提供する。
【解決手段】ワーク搬送装置10は、薄板状のワーク11に向けて下降接近し、ワーク11を吸引し非接触状態で保持して移動する非接触式搬送機構15と、非接触式搬送機構15から受け取ったワーク11を真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブル16を備えた接触式搬送機構21と、非接触式搬送機構15から接触式搬送機構21にワーク11を受け渡す際に、吸着テーブル16の真空吸引開始及び非接触式搬送機構15の吸引停止のタイミングを制御する制御手段27とを有し、制御手段27は、非接触式搬送機構15を下降させた後に真空吸引を開始させ、ワーク11の下面と吸着テーブル16の上面との距離が受渡し距離に到達した時点で非接触式搬送機構15の吸引を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の脆い薄板状のワーク(物品)を、非接触状態で保持して搬送した後に接触状態の保持に切替えて更に搬送する又は接触状態で保持して搬送した後に非接触状態の保持に切替えて更に搬送するワーク搬送装置及びワーク搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電池の製造工程において、シリコンウェハの表裏面にそれぞれ設ける集電用の電極をスクリーン印刷により形成する場合、シリコンウェハを順次スクリーン印刷機に供給して電極を印刷すると共に、電極が印刷されたシリコンウェハをスクリーン印刷機から順次取出している。
このとき、シリコンウェハのスクリーン印刷機への供給、シリコンウェハのスクリーン印刷機からの取出しを、接触式搬送装置を用いて行う場合、接触式搬送装置に設けられたシリコンウェハ用の保持部が当接するシリコンウェハの接触部に亀裂が発生し易いという問題がある。更に、シリコンウェハをスクリーン印刷機から接触式搬送装置を用いて取出す場合、印刷された電極が乾燥する前に保持部が電極に当接すると電極が損傷を受けるため、電極が十分に乾燥するまで待機した後でなければスクリーン印刷機からシリコンウェハを取出すことができない。このため、シリコンウェハの印刷処理速度が電極の乾燥に要する時間に律速され、シリコンウェハの印刷処理を効率的に行うことができないという問題もある。
そこで、下方に開口した凹部の上部に設けたノズルから気流を噴出させ、凹部の壁面に沿って旋回させて凹部の下部に導きながら、水平配置されたシリコンウェハの上面に接近させて、凹部の周囲に設けた環状の平坦面とシリコンウェハの上面との間の隙間から気流を高速で通過させることにより凹部の静圧を低下させて(負圧にして)、シリコンウェハを吸引し非接触状態で保持する非接触保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−64130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された非接触搬送装置で保持したシリコンウェハをスクリーン印刷機のワークステージに受け渡す場合、非接触搬送装置による吸引保持を停止した際にシリコンウェハが傾斜し易く、シリコンウェハの縁がスクリーン印刷機のワークステージに衝突するという問題がある。また、スクリーン印刷機のワークステージに保持されているシリコンウェハを非接触搬送装置に受け渡す場合、非接触搬送装置による吸引を開始した際にシリコンウェハが傾斜して持ち上げられ易く、シリコンウェハの縁が非接触搬送装置の吸引面に衝突するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、脆い薄板状のワークを、非接触状態で保持して搬送した後に接触状態の保持に切替えて更に搬送する又は接触状態で保持して搬送した後に非接触状態の保持に切替えて更に搬送する際の切換え時にワークの傾斜を防止することが可能なワーク搬送装置及びワーク搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るワーク搬送装置は、水平配置された薄板状のワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から受け取った前記ワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から前記吸着テーブルに前記ワークを受け渡す際に、該吸着テーブルの真空吸引の開始及び該非接触式搬送機構の吸引の停止のタイミングをそれぞれ制御する制御手段とを有するワーク搬送装置であって、
前記制御手段は、前記非接触式搬送機構を下降させた後、前記吸着テーブルの吸着力が前記非接触式搬送機構の吸引力より小さくなる条件で該吸着テーブルの真空吸引を開始させ、前記非接触式搬送機構に保持された前記ワークの下面と前記吸着テーブルの上面との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で旋回流を停止する。
【0007】
第1の発明に係るワーク搬送装置において、前記ワークを前記非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、該ワークの上面と該非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、前記受渡し距離は0を超えd以下にすることが好ましい。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るワーク搬送装置は、薄板状のワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記吸着テーブルに吸着保持された前記ワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記接触式搬送機構から前記非接触式搬送機構に前記ワークを受け渡す際に、該非接触式搬送機構の吸引の開始及び該接触式搬送機構の真空吸引の停止のタイミングをそれぞれ制御する制御手段とを備えたワーク搬送装置であって、
前記制御手段は、前記非接触式搬送機構の吸引力より大きな吸着力で前記吸着テーブルに予め前記ワークを吸着させ、前記非接触式搬送機構を前記ワークに向けて下降させながら旋回流を発生させ、前記ワークの上面と前記非接触式搬送機構との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で前記吸着テーブルの真空吸引を停止する。
【0009】
第2の発明に係るワーク搬送装置において、前記ワークを前記非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、該ワークの上面と該非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、受渡し距離を0.8d以上1.2d以下にすることが好ましい。
【0010】
第1、第2の発明に係るワーク搬送装置において、前記非接触式搬送機構は、前記ワークを非接触状態で吸引保持する保持手段と、前記保持手段の上部に固定された移動手段と、前記保持手段に取付けられ、該保持手段の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段とを備え、
前記ワークは矩形であって、
前記カバー手段は、前記保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって前記保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、前記各ガイド部材に装着されて前記上遮蔽板を下方に付勢するバネと、前記上遮蔽板の周囲に設けられ内側に前記ワークが嵌入可能な側壁材とを有し、前記保持手段に隙間を有して吸着された前記ワークの回転を防止することが好ましい。
【0011】
第1及び第2の発明に係るワーク搬送装置において、前記保持手段は、1)前記カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)該ハウジングの中央に設けられ、前記移動手段の連結部を備え、前記開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)前記ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって前記環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、前記空気口から前記環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、前記環状空気室の圧縮空気を前記環状溝に対して噴き出し、前記環状溝の内側に負圧を該環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて前記開口部に固定配置される吸引機構とを有することが好ましい。
【0012】
第1及び第2の発明に係るワーク搬送装置において、前記ノズルは前記環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されていることが好ましい。
また、前記空気路の出口は、前記ノズルの傾斜側に傾き、前記環状空気室に旋回流を形成していることが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第3の発明に係るワーク搬送方法は、水平配置された薄板状のワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から受け取った前記ワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構とを有するワーク搬送装置を使用して、前記非接触式搬送機構から前記吸着テーブルに前記ワークを受け渡す際のワーク搬送方法であって、
前記ワークを非接触状態で吸引保持している前記非接触式搬送機構を、前記接触式搬送機構の前記吸着テーブルに向けて下降させる工程と、
前記非接触式搬送機構が下降を開始した後、前記吸着テーブルの吸着力が前記非接触式搬送機構の吸引力より小さくなる条件で該吸着テーブルの真空吸引を開始する工程と、
前記非接触式搬送機構に保持された前記ワークの下面と前記吸着テーブルの上面との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で該非接触式搬送機構に発生させた旋回流を停止して、前記非接触式搬送機構に吸引保持されていた前記ワークを前記吸着テーブルに吸引保持させる工程とを有する。
【0014】
前記目的に沿う第4の発明に係るワーク搬送方法は、薄板状のワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記吸着テーブルに吸着保持された前記ワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構とを備えたワーク搬送装置を使用して、前記吸着テーブルから前記非接触式搬送機構に前記ワークを受け渡す際のワーク搬送方法であって、
前記非接触式搬送機構の吸引力より大きな吸着力で前記吸着テーブルに予め前記ワークを吸着する工程と、
前記非接触式搬送機構を前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークに向けて下降させながら旋回流を発生させる工程と、
前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークの上面と前記非接触式搬送機構との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で前記吸着テーブルの真空吸引を停止して、前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークを前記非接触式搬送機構に吸引保持する工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係るワーク搬送装置及び第3の発明に係るワーク搬送方法においては、非接触式搬送機構に保持されたワークの下面と吸着テーブルの上面との間の距離が受渡し距離に到達した時点で、ワークの下面には吸着テーブルにより非接触式搬送機構の吸引力より小さな吸着力が一様に作用しているので、非接触式搬送機構の吸引を停止すると、ワークを傾斜させることなく吸着テーブル側に移動させて吸着することができる。これにより、ワークの保持を非接触式搬送機構から接触式搬送機構に変える際に、ワークの縁が吸着テーブルに接触して破損することを防止できる。
【0016】
第1の発明に係るワーク搬送装置において、ワークを非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、ワークの上面と非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、受渡し距離を0を超えd以下にする場合、非接触式搬送機構を吸着テーブルに接近させた際に、ワークと非接触式搬送機構との隙間の距離を維持して、ワークに作用する吸引力を維持することができると共に、ワークが吸着テーブルに吸着されるまでに移動する距離を短くして、ワークが吸着テーブルに接触する際の衝撃を小さくすることができる。
【0017】
第2の発明に係るワーク搬送装置及び第4の発明に係るワーク搬送方法においては、非接触式搬送機構に保持されたワークの下面と吸着テーブルの上面との間の距離が受渡し距離に到達した時点で、ワークの上面には非接触式搬送機構により吸着テーブルの吸着力より小さな吸引力が一様に作用しているので、吸着テーブルの真空吸引を停止すると、ワークを傾斜させることなく非接触式搬送機構で吸引保持することができる。これにより、ワークの保持を接触式搬送機構から非接触式搬送機構に変える際に、ワークの縁が非接触式搬送機構に接触して破損することを防止できる。
【0018】
第2の発明に係るワーク搬送装置において、ワークを非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、ワークの上面と非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、受渡し距離を0.8d以上1.2d以下にする場合、接触式搬送機構によりシリコンウェハを吸着保持した状態で、シリコンウェハの下面側に非接触式搬送機構による吸引力を確実に作用させることができる。
【0019】
第1、第2の発明に係るワーク搬送装置において、非接触式搬送機構のカバー手段が、保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、各ガイド部材に装着されて上遮蔽板を下方に付勢するバネとを有するので、カバー手段を吸着テーブルに接近させて、上遮蔽板の周囲に設けられた側壁材が吸着テーブルの上面に当接すると、上遮蔽板を保持手段に対して相対的に上方に移動させながら、保持手段のみを吸着テーブルの上面に更に接近させることができる。これにより、側壁材の内側に矩形のワークを嵌入させた状態で、保持手段によりワークを非接触状態で吸引保持できる。その結果、ワークが保持手段により吸引保持される際に水平面内で回転しようとしても、矩形のワークの各辺がそれぞれ対向する側壁材に接触して回転が阻止され、ワークの方向を常に揃えて吸引保持することができる。
【0020】
第1、第2の発明に係るワーク搬送装置において、保持手段が、1)カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)ハウジングの中央に設けられ、移動手段の連結部を備え、開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、空気口から環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、環状空気室の圧縮空気を環状溝に対して噴き出し、環状溝の内側に負圧を環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて開口部に固定配置される吸引機構とを有する場合、吸引機構を交換することで、ワークに応じた旋回流を形成することができる。
【0021】
第1、第2の発明に係るワーク搬送装置において、ノズルが、環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されている場合、環状溝内に圧縮空気の旋回流を効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置の説明図である。
【図2】同ワーク搬送装置の制御手段の説明図である。
【図3】同ワーク搬送装置の第1の非接触式搬送機構の使用状態の説明図である。
【図4】第1の非接触式搬送機構の一部切欠き側断面図である。
【図5】第1の非接触式搬送機構の平面図である。
【図6】第1の非接触式搬送機構の底面図である。
【図7】(A)、(B)は、それぞれ吸引機構の平面図、側面図である。
【図8】第1の非接触式搬送機構のガイド手段の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置の第2の非接触式搬送機構の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置10は、例えば、太陽電池の製造工程において、太陽電池用のシリコンウェハ11(ワークの一例)の一面に集電用の電極を印刷するスクリーン印刷機12にシリコンウェハ11を供給しながら、電極印刷済のシリコンウェハ11をスクリーン印刷機12から取出す装置である。ここで、シリコンウェハ11は薄板状で、例えば、1辺の長さが120〜160mmで角部が切り欠かれた正方形状であり、厚みは0.15〜0.25mmである。そして、ワーク搬送装置10は、払い出し搬送路13を介して搬送され第1の払い出し場所14に水平配置されているシリコンウェハ11に向けて下降して接近し、シリコンウェハ11の外側上面に旋回流を発生させて、シリコンウェハ11の中央部を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持して第1の払い出し場所14から移動する第1の非接触式搬送機構15を有している。
【0024】
また、ワーク搬送装置10は、複数の吸着テーブル16を円板状の回転台17上に周方向に沿って等間隔に備え、回転台17を一定角度毎に断続回転して、吸着テーブル16を受け入れ場所18まで移動し第1の非接触式搬送機構15で搬送されたシリコンウェハ11を受け取って吸着テーブル16で真空吸引して吸着保持し、スクリーン印刷機12の印刷場所19まで移動して吸着保持したシリコンウェハ11に電極が印刷された後、取り出し場所20まで移動する接触式搬送機構21と、取り出し場所20に移動した吸着テーブル17に吸着保持されたシリコンウェハ11に向けて下降して接近し、シリコンウェハ11の上側に旋回流を発生させ旋回流の内側を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持して取り出し場所20から第2の払い出し場所22に移動し、第2の払い出し場所22に載置する第2の非接触式搬送機構23とを有している。なお、第2の払い出し場所22に移動したシリコンウェハ11は、搬送路24を経由して次工程に送り出される。
【0025】
接触式搬送機構21では、取り出し場所20でシリコンウェハ11を第2の非接触式搬送機構23に受け渡した吸着テーブル17は、受け入れ場所18に戻る。また、ひとつの吸着テーブル16が受け入れ場所18に存在する場合、印刷場所19及び取り出し場所20にも別の吸着テーブル16がそれぞれ存在するようになっている。したがって、回転台17を断続回転する時間間隔は、第1の非接触式搬送機構15が第1の払い出し場所14でシリコンウェハ11を吸引保持して受け入れ場所18に移動し吸着テーブル16が吸着保持するのに要する時間、印刷場所19でシリコンウェハ11に電極を印刷するのに要する時間、取り出し場所20で第2の非接触式搬送機構23がシリコンウェハ11を吸着保持して第2の払い出し場所22に移動して載置するのに要する時間の中で、一番長い時間が確保されるように設定される。
【0026】
更に、ワーク搬送装置10は、図2に示すように、第1の非接触式搬送機構15を受け入れ場所18にある吸着テーブル16に向けて下降させた後、受け入れ場所18にある吸着テーブル16の吸着力が第1の非接触式搬送機構15がシリコンウェハ11を吸引保持する際の吸引力より小さくなるように吸着テーブル16の真空吸引を開始させ、第1の非接触式搬送機構15に吸引保持されたシリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離が設定された第1の受渡し距離に到達した時点で旋回流を停止する第1の機能を備えた第1の制御部25と、例えば、受け入れ場所18から印刷場所19に向けて吸着テーブル16が移動したのを検知して、吸着テーブル16がシリコンウェハ11を吸着保持する際の吸着力を、第2の非接触式搬送機構23の吸引力より大きな値となるまで増大させ、取り出し場所20に吸着テーブル16が移動した際に、吸着テーブル16に吸着保持されたシリコンウェハ11に向けて第2の非接触式搬送機構23を下降させながら旋回流を発生させ、シリコンウェハ11の上面と第2の非接触式搬送機構23との間の距離が設定された第2の受渡し距離に到達した時点で取り出し場所20にある吸着テーブル16の真空吸引を停止する第2の機能を備えた第2の制御部26とを備えた制御手段27を有している。
【0027】
ここで、第1の非接触式搬送機構15に吸引保持されたシリコンウェハ11の下面と受け入れ場所18にある吸着テーブル16の上面との間の第1の受渡し距離は、第1の非接触式搬送機構15にシリコンウェハ11が非接触状態でそれぞれ吸引保持された際に、シリコンウェハ11の上面と第1の非接触式搬送機構15との間に形成される隙間の距離をdとした場合、0を超えd以下の距離に設定する。また、取り出し場所20にある吸着テーブル16に吸着保持されたシリコンウェハ11の上面と第2の非接触式搬送機構23との間の第2の受渡し距離は、第2の非接触式搬送機構23にシリコンウェハ11が非接触状態でそれぞれ吸引保持された際に、シリコンウェハ11の上面と第2の非接触式搬送機構23との間に形成される隙間の距離をdとした場合、0.8d以上1.2d以下の距離に設定する。なお、第1、第2の制御部25、26は、第1、第2の機能をそれぞれ発現するプログラムを、コンピュータに搭載することにより構成することができる。
【0028】
図3に示すように、第1の非接触式搬送機構15は、シリコンウェハ11の上側に旋回流を発生させ旋回流の内側を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持する保持手段28と、保持手段28の上部に固定された移動手段29と、保持手段28に取付けられ、保持手段28の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段30とを備えている。なお、移動手段29は、シリコンウェハ11の第1の払い出し場所14と、吸着テーブル16がシリコンウェハ11を受け取るために待機する受け入れ場所18との間で往復移動する。
【0029】
吸着テーブル16は、シリコンウェハ11の下面を吸着保持(固定)するものである。そして、吸着テーブル16は、シリコンウェハ11の下面側を真空吸引してシリコンウェハ11を上面に吸着する板状の通気性部材31と、中央部に通気性部材31が嵌挿され、通気性部材31の周囲側面を覆って空気の流通を防止する側部材32と、側部材32の下部に取付けられ、嵌挿された通気性部材31を載置して通気性部材31の下面側から空気を吸引する台座部材(図示せず)と、台座部材に真空ホースを介して接続する図示しない吸引手段(例えば、真空ポンプ)とを備えている。ここで、通気性部材31は、シリコンウェハ11を吸着した際に、シリコンウェハ11で覆われるように、通気性部材31の断面積はシリコンウェハ11の断面積より若干小さく、ステンレス等の金属粉末を焼結して製造した多孔質金属、あるいは、アルミナ等のセラミック粉末を焼結して製造したポーラスセラミックスにより形成されている。
【0030】
更に、吸着テーブル16は、通気性部材31の上面が水平になるように台座部材を載置し、シリコンウェハ11を保持する保持手段28が吸着テーブル16の待機場所の上方に移動して停止した際に、保持手段28の停止位置に対して、吸着テーブル16を前後左右に移動させると共に、中心軸の回りで回転させて、保持手段28に対して吸着テーブル16の位置合せを行う位置調整機構(図示せず)を有している。これによって、保持手段28を下降させて、シリコンウェハ11を保持手段28から吸着テーブル16に受け渡した際に、吸着テーブル16上でのシリコンウェハ11の位置(水平面内の位置及び水平面内の回転角度位置)を常に一定にすることができ、スクリーン印刷機12でシリコンウェハ11に形成する電極のパターンを一定にすることができる。
【0031】
図4に示すように、保持手段28は、カバー手段30の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジング33と、ハウジング33の中央に設けられ、移動手段29の連結部34を備え、ハウジング33の開口部に圧縮空気を注入する空気口35を有する取付け部材36とを有している。更に、保持手段28は、ハウジング33の内壁とで周囲に環状空気室37を形成する切欠きと、下側に開口となって環状空気室37より半径方向内側位置に形成された環状溝38と、空気口35から環状空気室37に圧縮空気を導く空気路39と、環状空気室37の圧縮空気を環状溝38に対して噴き出し、環状溝38の内側に負圧を環状溝38の外側に正圧を発生させる複数のノズル40とを備えてハウジング33の開口部に固定配置される吸引機構41を有している。
ここで、ノズル40は、環状溝38の半径線に対して直角も含む斜めに形成されている。これによって、環状溝38の内周面に沿った方向、又はほぼ沿った方向から環状溝38内に圧縮空気を吹込むことができ、環状溝38内に圧縮空気の旋回流を効率的に形成することができる
【0032】
ハウジング33は、取付け部材36が上面中央部に立設された上部材42と、上部材42の外周部に下方に向けて設けられた側壁部材43とを備え、取付け部材36には空気口35と開口部を連通する空気流入路44が設けられている。また、取付け部材36の外側には、取付け部材36を内装する補強部材45が、締結部材の一例であるボルト46を用いて上部材42の上面に固定されている。
吸引機構41の下面で環状溝38の内側には、環状空気室37から圧縮空気を環状溝38に対して噴き出した際に負圧となる(シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持する)吸引面47が形成され、環状溝38の外側には、側壁部材43の下端とOリング48を介して上面が当接し、下面が吸引面47より下方に、例えば、0.2〜0.3mm突出するフランジ部49が設けられている。
【0033】
図4、図6に示すように、環状溝38は、吸引面47に平行に形成された底面50と、底面50の半径方向内側及び半径方向外側にそれぞれ形成された第1、第2の傾斜面51、52を備え、環状溝38の幅は、開口側が底面50側より拡大している。
また、図4、図7(A)、(B)に示すように、吸引機構41の中央には、吸引機構41をハウジング33の開口部に固定配置した際に、取付け部材36に形成された空気流入路44と連通するように上側に開口し平面視して正方形の凹部53が形成されている。そして、凹部53の各角部からは、吸引機構41の上側に開口し、角部の一方の辺の延長線に沿って吸引機構41の外周側に向けて断面矩形の溝54が延びている。
【0034】
更に、吸引機構41の上面において、凹部53及び溝54が形成されていない領域55、56、57、58には、周方向に沿って複数(本実施の形態では2)のねじ孔59がそれぞれ形成され、各ねじ孔59の開口の外側にはOリング60を収容するOリング溝61が形成されている。一方、上部材42には、吸引機構41をハウジング33の開口部に固定配置した際に、各ねじ孔59に連通するように、上部材42の上面側の開口部が拡径した貫通孔63(図8参照)が設けられている。これによって、Oリング溝61にOリング60をセットして、吸引機構41をハウジング33の開口部に挿入し、締結部材の一例であるボルト64を貫通孔63に挿入してねじ孔59にねじ込むことにより、ハウジング33と吸引機構41を固着して一体化することができる。
【0035】
以上の構成とすることによって、吸引機構41に形成した凹部53と、ハウジング33の上部材42の下面により囲まれて、空気口35に注入した圧縮空気が流入する空気流入部65を形成することができる。また、ハウジング33の内壁(上部材42の下面及び側壁部材43の内周面)と、吸引機構41の周囲に形成された切欠きにより囲まれて、環状溝38と同心で環状溝38の半径方向外側に環状空気室37を形成することができる。更に、溝54と上部材42の下面により囲まれて、空気流入部65に流入した圧縮空気ガスを環状空気室37に流入させる複数(本実施の形態では4つ)の空気路39を形成することができる。
【0036】
ここで、図6、図7(A)、(B)に示すように、各空気路39の出口は、ノズル40の傾斜側に傾いているので、環状空気室37内に、ノズル40の傾斜方向に沿った方向から圧縮空気を噴出させることができ、環状空気室37に圧縮空気の旋回流を容易に形成することができる。そして、環状空気室37内で旋回流を形成している圧縮空気の一部を、ノズル40を介して環状溝38内に、環状溝38の半径線に対して直角も含む斜め方向から噴出させるので、環状溝38内に圧縮空気の旋回流を容易に形成することができる。
このため、保持手段28に圧縮空気を供給し、環状溝38内に圧縮空気の旋回流を形成させながら、保持手段28をシリコンウェハ11の上面に近接させると、シリコンウェハ11の上側と環状溝38の間に発生した旋回流を、環状溝38の第2の傾斜面52の外周部とシリコンウェハ11の外周部との間に形成される隙間から、半径方向外側へ向けて旋回させながら流出させることができる。
【0037】
図3〜図5に示すように、移動手段29は、ハウジング33の上部材42に立設された取付け部材36の上部に設けられた連結部34に締結部材の一例であるボルト66を介して先側が固定されるアーム部材67と、アーム部材67の基側が固定された回動軸68と、回動軸68を駆動させて、アーム部材67の先側に取付けられた保持手段28を、シリコンウェハ11の第1の払い出し場所14の上方の受入れ位置と、第1の払い出し場所14に対向配置された吸着テーブル16の受け入れ場所18の上方の払出し位置との間で往復動する機能と、シリコンウェハ11の第1の払い出し場所14と受入れ位置の間で、又は吸着テーブル16の受け入れ場所18と払出し位置の間で保持手段28を昇降する機能を備えた駆動機構69とを備えている。
【0038】
図5、図8に示すように、カバー手段30は、保持手段28の上側に配置され、複数本(本実施の形態では4本)のガイド部材70によって保持手段28に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板71と、各ガイド部材70に装着されて上遮蔽板71を下方に付勢するバネ72と、上遮蔽板71の周囲に設けられ内側にシリコンウェハ11が嵌入可能な側壁材73とを有している。ここで、上遮蔽板71の周囲に設けられた側壁材73の内側にシリコンウェハ11が嵌入した際、側壁材73とシリコンウェハ11の端面との間には、例えば0.05〜0.15mmの隙間が形成されるように、側壁材73は、締結部材の一例であるボルト74を用いて上遮蔽板71の周囲に固定されている。なお、上遮蔽板71の中央部には、補強部材45が貫通可能な寸法の挿通孔が設けられ、四隅側には貫通孔75がそれそれ形成されている。
【0039】
図7、図8に示すように、吸引機構41のねじ孔59が形成されている各領域55、56、57、58には、それぞれ周囲にOリング76を収容するOリング溝77を備えた円形穴78が形成されている。また、上部材42には、各円形穴78に連通し、下側(円形穴78と連通する側)が円形穴78と同径で上側が縮径した貫通孔79が形成されている。更に、円形穴78と貫通孔79の下側で構成される空間部には円筒体80がそれそれ装入され、円筒体80内にはバネ72が下部に外装されたガイド部材70が挿入され、ガイド部材70の上部側は貫通孔79を貫通して、先側の縮径部81を上部材42の上面から突出させている。そして、各縮径部81は、上遮蔽板71に形成された貫通孔79a内に収容され、上遮蔽板71の上面側から挿入した締結部材の一例であるボルト82が縮径部81の上部にねじ込まれている。
【0040】
このような構成とすることにより、ボルト82をガイド部材70の縮径部81に上遮蔽板71を介してねじ込むことにより、上遮蔽板71を上部材42の上面に当接させて取付けることができる。そして、上遮蔽板71に取付けられた側壁材73の下端が、シリコンウェハ11の第1の払い出し場所14の上面又は吸着テーブル16に当接して側壁材73が上方に押圧されると、側壁材73が取付けられている上遮蔽板71が上方に向けて移動し、ボルト82を介して連結しているガイド部材70が円筒体80内で上方に移動する。これにより、上部材42に対して上遮蔽板71を上方に移動させることができる。なお、ガイド部材70が円筒体80内で上方に移動すると、ガイド部材70に外装されたバネ72は圧縮状態となる。このため、側壁材73の下端が第1の払い出し場所14の上面又は吸着テーブル16に当接する状態が解除されると、バネ72の圧縮状態が解放されてバネ72が伸びるため、ガイド部材70が円筒体80内で下方に移動することにより、上遮蔽板71が下方に付勢される。その結果、上遮蔽板71が下方に移動し上部材42の上面に当接することができる。
【0041】
図9に示す第2の非接触式搬送機構23は、シリコンウェハ11の上側に旋回流を発生させ旋回流の内側を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持する保持手段83と、保持手段83の上部に固定された移動手段84と、保持手段83に取付けられ、保持手段83の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段85とを備えている。なお、移動手段84は、シリコンウェハ11の取り出し場所20と第2の払い出し場所22との間で往復移動する。ここで、保持手段83、移動手段84、カバー手段85は、それぞれ第1の非接触式搬送機構15の保持手段28、移動手段29、カバー手段30と同一の構成とすることができる。このため、同一の構成部材には同一の符号を付して、詳細な説明は、省略する。
【0042】
続いて、図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置10を、太陽電池の製造工程において、太陽電池用のシリコンウェハ11の一面に集電用の電極を印刷するスクリーン印刷機12にシリコンウェハ11を供給しながら、電極印刷済のシリコンウェハ11をスクリーン印刷機12から取出す装置として使用する場合のシリコンウェハ11の搬送方法について説明する。
【0043】
図3に示すように、第1の非接触式搬送機構15と接触式搬送機構21を用いて、スクリーン印刷機12にシリコンウェハ11を供給するワーク搬送方法は、第1の非接触式搬送機構15を第1の払い出し場所14に水平配置されたシリコンウェハ11に接近させ、シリコンウェハ11の上側に旋回流を発生させ旋回流の内側を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持し、第1の払い出し場所14から上昇して受け入れ場所18の上方まで移動し、次いで、シリコンウェハ11を吸引保持している第1の非接触式搬送機構15を受け入れ場所18で待機している吸着テーブルに向けて下降させる工程と、第1の非接触式搬送機構15が下降を開始した後、吸着テーブル16の吸着力が第1の非接触式搬送機構15の吸引力より小さくなる条件で吸着テーブル16の真空吸引を開始する工程と、第1の非接触式搬送機構15に保持されたシリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で第1の非接触式搬送機構15に発生させた旋回流を停止して、第1の非接触式搬送機構15に吸引保持されていたシリコンウェハ11を吸着テーブル16に吸引保持させる工程とを有している。以下、詳細に説明する。
【0044】
移動手段29を操作して、保持手段28をシリコンウェハ11の第1の払い出し場所14の上方の受入れ位置に移動する。次いで、保持手段28を受入れ位置からシリコンウェハ11の第1の払い出し場所14に、例えば吸着固定されているシリコンウェハ11に向けて下降させながら、保持手段28の空気口35に図示しない空気供給ホースを介して、圧縮空気を供給する。
【0045】
供給した圧縮空気は、保持手段28の取付け部材36に形成された空気流入路44を経由し空気流入部65に流入し、空気流入部65に連通する複数の空気路39を介して環状空気室37に流入する。ここで、各空気路39の出口は、ノズル40の傾斜側に傾いているので、環状空気室37内には、空気路39を介して流入させる圧縮空気により旋回流が形成される。そして、環状空気室37内で旋回流を形成している空気の一部は、ノズル40を介して環状溝38内に、環状溝38の半径線に対して直角も含む斜め方向から流入するので、環状溝38内に旋回流が容易に形成される。
【0046】
保持手段28に圧縮空気を供給し、環状溝38内に圧縮空気の旋回流を形成させながら、保持手段28をシリコンウェハ11の上面に接近させると、保持手段28の周囲を覆う側壁材73が上遮蔽板71を介して保持手段28に対して下方に付勢して設けられているので、側壁材73の下端の高さ位置がシリコンウェハ11の下面の高さ位置に一致した(側壁材73の下端がシリコンウェハ11の第1の払い出し場所14の上面に当接した)時点で、側壁材73を上方向に移動させながら、吸引面47をシリコンウェハ11の上面に接近させることができ、上遮蔽板71の周囲に設けられた側壁材73の内側にシリコンウェハ11を嵌入させることができる。
【0047】
側壁材73の内側にシリコンウェハ11が嵌入すると、環状溝38内に噴出した圧縮空気により、シリコンウェハ11の上側と環状溝38の間に旋回流が発生し、旋回流は環状溝38の第2の傾斜面52の外周部とシリコンウェハ11の外周部との間に形成される隙間から、半径方向外側へ向けて旋回しながら流出する。このため、第2の傾斜面52とシリコンウェハ11との間の隙間から半径方向外側へ向けて旋回しながら流出する圧縮空気の流れによって、吸引面47とシリコンウェハ11の上面との間の隙間に存在する空気が吸引されて、吸引面47とシリコンウェハ11の上面との間の隙間内の圧力が低下する(負圧になる)。なお、第2の傾斜面52とシリコンウェハ11との間の隙間から流出した圧縮空気は、上遮蔽板71の四隅側に形成された貫通孔75を介して、外部に放出される。
【0048】
その結果、吸引面47とシリコンウェハ11との間に吸引力が発生することになって、第1の払い出し場所14に吸着固定されているシリコンウェハ11に対する吸着力を解除すると、シリコンウェハ11は吸引面47に吸引され、シリコンウェハ11は保持手段28に非接触状態で吸引保持されることになる。ここで、シリコンウェハ11の上側と環状溝38の間には旋回流が発生しているので、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引面47に吸引保持させると、シリコンウェハ11には水平面内で回転しようとする力が作用する。しかし、シリコンウェハ11は側壁材73の内側に嵌入しているため、シリコンウェハ11が回転しようとすると、シリコンウェハ11の端部が側壁材73に接触し、シリコンウェハ11の回転が防止される。
【0049】
シリコンウェハ11が保持手段28に吸引保持されると、移動手段29を操作して、保持手段28をシリコンウェハ11の第1の払い出し場所14の上方の受入れ位置まで上昇させる。保持手段28が上昇して、カバー手段30の側壁材73の下端が第1の払い出し場所14の上面から離脱すると、ガイド部材70に外装されたバネ72の圧縮状態が解除される。これにより、バネ72が伸びてガイド部材70が円筒体80内で下方に移動し(上遮蔽板71が下方に付勢され)、上遮蔽板71が下方に移動して上部材42の上面に当接する。その結果、保持手段28の上側及び周囲がカバー手段30で覆われて、シリコンウェハ11の保持手段28による吸引保持の安定化が図られる。
【0050】
保持手段28が受入れ位置まで上昇すると、移動手段29を更に操作して、保持手段28を吸着テーブル16が待機する受け入れ場所18の上方の払出し位置に移動する。次いで、吸着テーブル16の位置調整機構を操作して、保持手段28の停止位置に対して、吸着テーブル16の位置合せを行う。そして、保持手段28を払出し位置から吸着テーブル16に向けて下降しながら、吸着テーブル16の通気性部材31の下面側からの空気の吸引を開始する。保持手段28に吸引保持されたシリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離が徐々に減少して、側壁材73の下端の高さ位置が吸着テーブル16の上面の高さ位置に一致した時点で、側壁材73を上方向に移動させながら、シリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離を更に縮めて、例えば、シリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離を、シリコンウェハ11を吸着面20に非接触状態で保持した際に形成されている隙間と同程度の距離にすることができる。
【0051】
シリコンウェハ11の下面と吸着テーブル16の上面との間の距離が、シリコンウェハ11を吸着面20に非接触状態で吸引保持した際の隙間と同程度の距離に到達した時点では、シリコンウェハ11を吸着する吸着テーブル16の吸着力は第1の非接触式搬送機構15の保持手段28による吸引力より小さいので、シリコンウェハ11は保持手段28に吸引保持されている。ここで、保持手段28の空気口35への空気の供給を停止すると、保持手段28によるシリコンウェハ11の吸引保持が解除され、シリコンウェハ11は吸着テーブル16に吸着される。ここで、シリコンウェハ11が保持手段28から吸着テーブル16に受け渡される際に、シリコンウェハ11の回転が側壁材73により防止されているので、吸着テーブル16上でのシリコンウェハ11の角度位置を常に一定にして、吸着テーブル16に吸着保持することができる。
【0052】
図9に示すように、接触式搬送機構21と第2の非接触式搬送機構23を用いて、スクリーン印刷機12からシリコンウェハ11を取出すワーク搬送方法は、第2の非接触式搬送機構23によるシリコンウェハ11の吸引力より大きな吸着力で吸着テーブル16にシリコンウェハ11が吸着保持されるように吸着テーブル16の吸着力を調整する工程と、第2の非接触式搬送機構23を取り出し場所20にある吸着テーブル16に吸着保持されているシリコンウェハ11に向けて下降させながら旋回流を発生させる工程と、吸着テーブル16に吸着保持されているシリコンウェハ11の上面と第2の非接触式搬送機構23との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で吸着テーブルの真空吸引を停止して、吸着テーブル16に吸着保持されているシリコンウェハ11を第2の非接触式搬送機構23に吸引保持する工程とを有している。以下、詳細に説明する。
【0053】
移動手段84を操作して、第2の非接触式搬送機構23の保持手段83をシリコンウェハ11の取り出し場所20の上方に移動する。次いで、保持手段83を、取り出し場所20にある吸着テーブル16に吸着保持されているシリコンウェハ11に向けて下降させながら、保持手段83の空気口35に図示しない空気供給ホースを介して、圧縮空気を供給する。
【0054】
供給した圧縮空気は、保持手段83の取付け部材36に形成された空気流入路44を経由して空気流入部6に流入し、空気流入部65に連通する複数の空気路39を介して環状空気室37に流入し、環状空気室37内に圧縮空気の旋回流が形成される。そして、環状空気室37内で旋回流を形成している空気の一部は、ノズル40を介して環状溝38内に、環状溝38の半径線に対して直角も含む斜め方向から流入して、環状溝38内に旋回流を形成する。
【0055】
保持手段83の環状溝38内に圧縮空気の旋回流を形成させながら、保持手段83をシリコンウェハ11の上面に接近させると、保持手段83の周囲を覆う側壁材73の下端の高さ位置がシリコンウェハ11の下面の高さ位置に一致した(側壁材73の下端がシリコンウェハ11を吸着保持している吸着テーブル16の上面に当接した)時点で、側壁材73を上方向に移動させながら、吸引面47をシリコンウェハ11の上面に接近させることができ、上遮蔽板71の周囲に設けられた側壁材73の内側にシリコンウェハ11を嵌入させることができる。
【0056】
側壁材73の内側にシリコンウェハ11が嵌入し、シリコンウェハ11の上面と第2の非接触式搬送機構23の保持手段83との間の距離が受渡し距離に到達すると、環状溝38内に噴出した圧縮空気により、シリコンウェハ11の外側上面と環状溝38の間に旋回流が発生し、旋回流は環状溝38の第2の傾斜面52の外周部とシリコンウェハ11の外周部との間に形成される隙間から、半径方向外側へ向けて旋回しながら流出するようになる。このため、第2の傾斜面52とシリコンウェハ11との間の隙間から半径方向外側へ向けて旋回しながら流出する圧縮空気の流れによって、吸引面47とシリコンウェハ11の上面との間の隙間に存在する空気が吸引されて、吸引面47とシリコンウェハ11の上面との間の隙間内の圧力が低下する(負圧になる)。
【0057】
その結果、保持手段83の吸引面47とシリコンウェハ11との間に吸引力が発生する。しかし、第2の非接触式搬送機構23によるシリコンウェハ11の吸引力は、吸着テーブル16によるシリコンウェハ11の吸着力より小さいので、シリコンウェハ11は吸着テーブル16に吸着保持されている。そこで、吸着テーブル16に吸着固定されているシリコンウェハ11に対する吸着力を解除すると、シリコンウェハ11は保持手段83の吸引面47に吸引され、シリコンウェハ11は保持手段83に非接触状態で吸引保持されることになる。ここで、シリコンウェハ11の上側と環状溝38の間には旋回流が発生しているので、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引面47に吸引保持させると、シリコンウェハ11には水平面内で回転しようとする力が作用するが、シリコンウェハ11は側壁材73の内側に嵌入しているため、シリコンウェハ11が回転しようとすると、シリコンウェハ11の端部が側壁材73に接触し、シリコンウェハ11の回転が防止される。
【0058】
シリコンウェハ11が保持手段83に吸引保持されると、移動手段84を操作して、保持手段83を取り出し場所20の上方の受入れ位置まで上昇させる。保持手段83が上昇して、カバー手段85の側壁材73の下端が吸着テーブル16の上面から離脱すると、ガイド部材70に外装されたバネ72の圧縮状態が解除され、バネ72が伸びてガイド部材70が円筒体80内で下方に移動し(上遮蔽板71が下方に付勢され)、上遮蔽板71が下方に移動して上部材42の上面に当接する。その結果、保持手段83の上側及び周囲がカバー手段85で覆われて、シリコンウェハ11の保持手段83による吸引保持の安定化が図られる。
【0059】
保持手段83が取り出し場所20の上方の設定された高さ位置まで上昇すると、移動手段84を更に操作して、保持手段83をシリコンウェハ11の第2の払い出し場所22の上方の第2の払出し位置に移動する。次いで、移動手段84を操作して、保持手段83を第2の払い出し場所22に向けて下降し、第2の払い出し場所22に待機している搬送台(図示せず)に接近して、保持手段83によるシリコンウェハ11の吸引保持を解除し搬送台にシリコンウェハ11を受け渡す。
【0060】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0061】
10:ワーク搬送装置、11:シリコンウェハ、12:スクリーン印刷機、13:払い出し搬送路、14:第1の払い出し場所、15:第1の非接触式搬送機構、16:吸着テーブル、17:回転台、18:受け入れ場所、19:印刷場所、20:取り出し場所、21:接触式搬送機構、22:第2の払い出し場所、23:第2の非接触式搬送機構、24:搬送路、25:第1の制御部、26:第2の制御部、27:制御手段、28:保持手段、29:移動手段、30:カバー手段、31:通気性部材、32:側部材、33:ハウジング、34:連結部、35:空気口、36:取付け部材、37:環状空気室、38:環状溝、39:空気路、40:ノズル、41:吸引機構、42:上部材、43:側壁部材、44:空気流入路、45:補強部材、46:ボルト、47:吸引面、48:Oリング、49:フランジ部、50:底面、51:第1の傾斜面、52:第2の傾斜面、53:凹部、54:溝、55、56、57、58:領域、59:ねじ孔、60:Oリング、61:Oリング溝、63:貫通孔、64:ボルト、65:空気流入部、66:ボルト、67:アーム部材、68:回動軸、69:駆動機構、70:ガイド部材、71:上遮蔽板、72:バネ、73:側壁材、74:ボルト、75:貫通孔、76:Oリング、77:Oリング溝、78:円形穴、79、79a:貫通孔、80:円筒体、81:縮径部、82:ボルト、83:保持手段、84:移動手段、85:カバー手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平配置された薄板状のワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から受け取った前記ワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から前記吸着テーブルに前記ワークを受け渡す際に、該吸着テーブルの真空吸引の開始及び該非接触式搬送機構の吸引の停止のタイミングをそれぞれ制御する制御手段とを有するワーク搬送装置であって、
前記制御手段は、前記非接触式搬送機構を下降させた後、前記吸着テーブルの吸着力が前記非接触式搬送機構の吸引力より小さくなる条件で該吸着テーブルの真空吸引を開始させ、前記非接触式搬送機構に保持された前記ワークの下面と前記吸着テーブルの上面との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で旋回流を停止することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク搬送装置において、前記ワークを前記非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、該ワークの上面と該非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、前記受渡し距離は0を超えd以下にすることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項3】
薄板状のワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記吸着テーブルに吸着保持された前記ワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記接触式搬送機構から前記非接触式搬送機構に前記ワークを受け渡す際に、該非接触式搬送機構の吸引の開始及び該接触式搬送機構の真空吸引の停止のタイミングをそれぞれ制御する制御手段とを備えたワーク搬送装置であって、
前記制御手段は、前記非接触式搬送機構の吸引力より大きな吸着力で前記吸着テーブルに予め前記ワークを吸着させ、前記非接触式搬送機構を前記ワークに向けて下降させながら旋回流を発生させ、前記ワークの上面と前記非接触式搬送機構との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で前記吸着テーブルの真空吸引を停止することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載のワーク搬送装置において、前記ワークを前記非接触式搬送機構に非接触状態で吸引保持した際に、該ワークの上面と該非接触式搬送機構との間に形成される距離をdとして、受渡し距離を0.8d以上1.2d以下にすることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置において、前記非接触式搬送機構は、前記ワークを非接触状態で吸引保持する保持手段と、前記保持手段の上部に固定された移動手段と、前記保持手段に取付けられ、該保持手段の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段とを備え、
前記ワークは矩形であって、
前記カバー手段は、前記保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって前記保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、前記各ガイド部材に装着されて前記上遮蔽板を下方に付勢するバネと、前記上遮蔽板の周囲に設けられ内側に前記ワークが嵌入可能な側壁材とを有し、前記保持手段に隙間を有して吸着された前記ワークの回転を防止することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載のワーク搬送装置において、前記保持手段は、1)前記カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)該ハウジングの中央に設けられ、前記移動手段の連結部を備え、前記開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)前記ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって前記環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、前記空気口から前記環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、前記環状空気室の圧縮空気を前記環状溝に対して噴き出し、前記環状溝の内側に負圧を該環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて前記開口部に固定配置される吸引機構とを有することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項7】
請求項6記載のワーク搬送装置において、前記ノズルは前記環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されていることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のワーク搬送装置において、前記空気路の出口は前記ノズルの傾斜側に傾き、前記環状空気室に旋回流を形成していることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項9】
水平配置された薄板状のワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構と、前記非接触式搬送機構から受け取った前記ワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構とを有するワーク搬送装置を使用して、前記非接触式搬送機構から前記吸着テーブルに前記ワークを受け渡す際のワーク搬送方法であって、
前記ワークを非接触状態で吸引保持している前記非接触式搬送機構を、前記接触式搬送機構の前記吸着テーブルに向けて下降させる工程と、
前記非接触式搬送機構が下降を開始した後、前記吸着テーブルの吸着力が前記非接触式搬送機構の吸引力より小さくなる条件で該吸着テーブルの真空吸引を開始する工程と、
前記非接触式搬送機構に保持された前記ワークの下面と前記吸着テーブルの上面との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で該非接触式搬送機構に発生させた旋回流を停止して、前記非接触式搬送機構に吸引保持されていた前記ワークを前記吸着テーブルに吸引保持させる工程とを有することを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項10】
薄板状のワークを真空吸引により吸着保持して移動する吸着テーブルを備えた接触式搬送機構と、前記吸着テーブルに吸着保持された前記ワークに向けて下降して接近し、該ワークの上側に旋回流を発生させて旋回流の内側を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持して搬送する非接触式搬送機構とを備えたワーク搬送装置を使用して、前記吸着テーブルから前記非接触式搬送機構に前記ワークを受け渡す際のワーク搬送方法であって、
前記非接触式搬送機構の吸引力より大きな吸着力で前記吸着テーブルに予め前記ワークを吸着する工程と、
前記非接触式搬送機構を前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークに向けて下降させながら旋回流を発生させる工程と、
前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークの上面と前記非接触式搬送機構との間の距離が設定された受渡し距離に到達した時点で前記吸着テーブルの真空吸引を停止して、前記吸着テーブルに吸着保持されている前記ワークを前記非接触式搬送機構に吸引保持する工程とを有することを特徴とするワーク搬送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30941(P2012−30941A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172458(P2010−172458)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成22年6月30日〜7月2日 SEMIジャパン、一般社団法人太陽光発電協会共同主催の「PVJapan 2010」に出品
【出願人】(597168228)日本ファインテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】