説明

三方弁

【課題】構造の簡素化、コンパクト化、低コスト化等とともに、シール性等を確保できる三方弁を提供する。
【解決手段】第1弁体部21aを有する主弁体21、該主弁体21により開閉される第1弁座22aが設けられた第1弁室22、副弁体部61及び第2弁体部62を有するスライド弁体60、該スライド弁体60の副弁体部61により開閉される副弁座64aが設けられた副弁室64、前記スライド弁体60の第2弁体部62により開閉される第2弁座66aが設けられた第2弁室66、及び、スライド弁体60を第2弁座66aを閉じる方向に付勢する付勢部材67、が共通軸線O上に配置され、第1弁室22と副弁室64とが第1連通路71を介して連通し、第1弁室22と第2弁室66とが第2連通路を介して連通され、第2弁室66に入口11が連通し、第2弁座66aより下流側に第1出口12が設けられ、かつ、第1連通路71に第2出口13が連通されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル等に用いるのに好適な三方弁に係り、特に、構造の簡素化、コンパクト化、低コスト化等を効果的に図ることができる三方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機、冷凍装置等の冷凍サイクルにおいて、熱損失の低減等を図るべく、流路切換手段として、従来から用いられている四方弁に代えて三方弁を使用することが考えられている。
【0003】
このような用途で使用される三方弁としては、例えば、下記特許文献1に所載のように、高圧の冷媒が導入される入口と、該入口からの冷媒が第1主弁又は第2主弁を介して選択的に導かれる第1出口及び第2出口と、を有し、前記入口と前記第1出口との間に前記第1主弁が設けられるとともに、前記入口と前記第2出口との間に前記第2主弁が設けられ、前記第1主弁に作用する背圧と前記第1出口側の圧力との差圧を小さくするための電磁弁が設けられるとともに、前記差圧が小さくされたとき、前記第1主弁が開となるとともに前記第2主弁が閉、あるいは、前記第1主弁が閉となるとともに前記第2主弁が開、となるようにされてなるものがあり、また、これとは別に、例えば、第1出口及び第2出口を弁本体に設けられた平坦弁座に開口させるとともに、その第1出口及び第2出口を前記平坦弁座上に摺動回転可能に乗せられた回転弁体により選択的に開閉するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−92751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に所載の三方弁では、第1主弁と第2主弁とが異なる軸線上に配置され、それらの間を複数本の連通路で結ぶ構造となっているので、構造が複雑となり、加工組立コストが高くなる嫌いがあり、コンパクト化、低コスト化等を図ることが難しいという問題があり、また、平坦弁座に第1出口及び第2出口を開口させてこれを回転弁体で選択的に開閉するようにしたものでは、前記問題の他、回転弁体と弁座(第1出口及び第2出口)との間のシール性が低い等の問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、構造の簡素化、コンパクト化、低コスト化等を効果的に図ることができるとともに、シール性等を充分に確保できるようにされた三方弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る三方弁は、第1弁体部を有する主弁体、該主弁体により開閉される第1弁座が設けられた第1弁室、副弁体部及び第2弁体部を有するスライド弁体、該スライド弁体の副弁体部により開閉される副弁座が設けられた副弁室、前記スライド弁体の第2弁体部により開閉される第2弁座が設けられた第2弁室、及び、前記スライド弁体を前記第2弁座を閉じる方向に付勢する付勢部材、が共通軸線上に配置され、前記第1弁室と前記副弁室とが第1連通路を介して連通せしめられるとともに、前記第1弁室と前記第2弁室とが第2連通路を介して連通せしめられ、前記第2弁室に入口が連通せしめられるとともに、前記第2弁座より下流側に第1出口が設けられ、かつ、前記第1連通路に第2出口が連通せしめられていることを特徴としている。
【0008】
好ましい態様では、前記主弁体を開閉駆動するための電動式アクチュエータあるいは電磁式アクチュエータを備える。この場合、前記電磁式アクチュエータとしては、汎用型のDCまたはACソレノイドの他、該ソレノイドと永久磁石を組み合わせたキープソレノイド(省エネタイプ)を用いることができる。
【0009】
また、他の好ましい態様では、前記第1弁体部、前記第2弁体部、及び前記副弁体部のうちの少なくとも一つは、ボールで構成される。
【0010】
また、前記電動式アクチュエータを備えた三方弁の好ましい態様では、主弁体が、回転しながら昇降せしめられる回転昇降部と、該回転昇降部に伴って昇降せしめられるが回転はしないようにされた、弁体部を有する非回転昇降部と、からなる二分割構成とされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る三方弁は、主弁体、第1弁室、スライド弁体、副弁室、第2弁室、及び、付勢部材等が共通軸線上に配置されるので、それらが異なる軸線上に配置された従来の三方弁に比して、構造の簡素化、コンパクト化、低コスト化等を効果的に図ることができ、また、平坦弁座に第1出口及び第2出口を開口させてこれを回転弁体で選択的に開閉するようにしたものに比して、シール性等を充分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る三方弁の第一実施形態を示す縦断面図。
【図2】本発明に係る三方弁の第二実施形態を示す縦断面図。
【図3】本発明に係る三方弁の第三実施形態を示す縦断面図。
【図4】本発明に係る三方弁の第四実施形態を示す縦断面図。
【図5】本発明に係る三方弁の第五実施形態を示す縦断面図。
【図6】本発明に係る三方弁の第六実施形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の三方弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る三方弁の第一実施形態の縦断面図である。
図1に示される三方弁10Aは、例えば冷凍サイクルに用いられるもので、弁本体20と、電動式アクチュエータ(電動モータ)15と、を備えている。電動式アクチュエータ15は、弁本体20(のキャン受け部材28)にその下端部40bが溶接により密封接合されるキャン40と、このキャン40の内周に所定の間隙をあけて配在されるロータ30と、該ロータ30を回転駆動すべくキャン40に外嵌されたステータ50と、を備えている。ステータ50は、磁性材からなるヨーク51と、このヨーク51にボビン52を介して巻回される上下のステータコイル53,53と、からなっている。
【0015】
前記弁本体20においては、前記電動式アクチュエータ15により昇降せしめられる円錐状の第1弁体部21aを有する段付き円柱状の主弁体21、該主弁体21により開閉される第1弁座22aが設けられた第1弁室22、円錐状の副弁体部61及び第2弁体部62を有するスライド弁体60、該スライド弁体60の副弁体部61により開閉される副弁座64aが設けられた副弁室64、前記スライド弁体60の第2弁体部62により開閉される第2弁座66aが設けられた第2弁室66、及び、前記スライド弁体60を前記第2弁座66aを閉じる方向(図の下方)に付勢する付勢部材としてのコイルばね67、が共通軸線O上に配置されている。
【0016】
また、前記第1弁室22と副弁室64とが、副弁室64に圧入保持された断面T字形の弁座兼ばね受け部材68に形成された第1連通路71を介して連通せしめられるとともに、前記第1弁室22と前記第2弁室66とが第2連通路72を介して連通せしめられ、さらに、前記第2弁室66に高圧の冷媒としての二酸化炭素(ガス)が導入される入口11が連通せしめられるとともに、前記第2弁座66aより下流側に第1出口12が設けられ、かつ、前記第1連通路71に第2出口13が連通せしめられている。
【0017】
主弁体21を昇降させて第1弁座22aに接離させる駆動機構は、主弁体21が摺動自在に嵌挿された筒状のガイドブッシュ26と、その外周に配在された下方開口の筒状の弁軸ホルダ32と、から構成されるねじ送り機構とされ、前記ガイドブッシュ26は、弁本体20に設けられた嵌合穴42にその下端部26aが圧入(又は螺合)固定されるとともに、その中央部付近に雄ねじ部25が形成され、前記弁軸ホルダ32は、ガイドブッシュ26の雄ねじ部(固定ねじ部)25に螺合する雌ねじ部(移動ねじ部)31が形成され、また、その天底中央部に主弁体21の上部小径部が挿通せしめられている。主弁体21の上部小径部の上端部は、弁軸ホルダ32の天底上面に乗せられたナット33に圧入固定されている。
【0018】
また、前記主弁体21は、弁軸ホルダ32の天底と主弁体21の中間段差部との間に縮装された緩衝用のコイルばね34によって常時下方に付勢されている。ガイドブッシュ26の側面には弁室22とキャン40内の均圧を図る均圧孔32aが形成されている。
【0019】
弁軸ホルダ32の天底上には、コイルばねからなる復帰ばね35が設けられている。復帰ばね35は、ガイドブッシュ26の固定ねじ部25と弁軸ホルダ32の移動ねじ部31との螺合が外れたときに、キャン40の内面に当接して固定ねじ部25と移動ねじ部31との螺合を復帰させるように働く。
【0020】
弁軸ホルダ32とロータ30とは支持リング36を介して結合されており、支持リング36は、本実施形態ではロータ30の成形時にインサートされた黄銅製の金属リングで構成されている。支持リング36に弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ30、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0021】
ガイドブッシュ26には、ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32にはストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。また、ガイドブッシュ26の上部には、前記第1弁室22と前記第2弁室66とを第2連通路72を介して連通させるための横穴73が形成されている。
【0022】
このような構成とされた三方弁10Aにあっては、ステータコイル53,53に一方向の通電を行って励磁すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が一方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部25と弁軸ホルダ32の移動ねじ部31とのねじ送りにより、例えば弁軸ホルダ32が下方に移動して主弁体21の第1弁体部21aが第1弁座22aに着座し、これを閉じる。
【0023】
第1弁座22aが閉じられた時点では、上ストッパ体37は未だ下ストッパ体27に当接しておらず、主弁体21が弁座22aを閉じたままロータ30及び弁軸ホルダ32はさらに回転下降する。このときは、主弁体21に対して弁軸ホルダ32が下降するため、緩衝用のコイルばね34が圧縮せしめられることにより弁軸ホルダ32の下降力は吸収される。その後、ロータ30がさらに回転して弁軸ホルダ32が下降すると、上ストッパ体37が下ストッパ体27に衝接し、ステータコイル53,53に対する通電が続行されても弁軸ホルダ32の下降は強制的に停止される。
【0024】
このように主弁体21により第1弁座22aが閉じられると、入口11から第2弁室66に導入された高圧の冷媒によりスライド弁体60がコイルばね67の付勢力に抗して上昇せしめられ、第2弁体部62が第2弁座66aから離れてこれを開くとともに、副弁体部61が副弁座64aに着座してこれを閉じる。そのため、入口11から第2弁室66に導入された高圧の冷媒は、第1出口12に流出する。
【0025】
一方、ステータコイル53,53に他方向の通電を行って励磁すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が前記と逆方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部25と弁軸ホルダ32の移動ねじ部31とのねじ送りにより、今度は弁軸ホルダ32が上方に移動して主弁体21の第1弁体部21aが弁座22aから離れて第1弁座22aが開かれる。
【0026】
このように主弁体21により第1弁座22aが開けられると、入口11から第2弁室66に導入された高圧の冷媒が、第2連通路72→キャン40内→横穴73→第1弁室22→第1連通路71を介して副弁室64に導入される。これにより、冷媒の圧力とコイルばね67の付勢力とによってスライド弁体60が下降し、第2弁体部62が第2弁座66aに着座してこれを閉じる。そのため、入口11から第2弁室66に導入された高圧の冷媒は、第2連通路72や第1弁室22を介して第2出口13に流出する。
【0027】
以上のように、本実施形態の三方弁10Aでは、主弁体21、第1弁室22、スライド弁体60、副弁室64、第2弁室66、及び、コイルばね67等が共通軸線O上に配置されるので、それらが異なる軸線上に配置された従来の三方弁に比して、構造の簡素化、コンパクト化、低コスト化等を効果的に図ることができ、また、平坦弁座に第1出口及び第2出口を開口させてこれを回転弁体で選択的に開閉するようにしたものに比して、シール性等を充分に確保できる。
【0028】
図2は、本発明に係る三方弁の第二実施形態を示す縦断面図である。図示の第二実施形態の三方弁10Bは、第一実施形態の三方弁10Aにおける円錐状の第1弁体部21a、第2弁体部62、及び副弁体部61をボール21a’、62’、61’にしたものである。各ボール21a’、62’、61’は、それぞれ主弁体21、スライド弁体60にかしめ固定されている。このように弁体部にボール21a’、62’、61’を用いることにより、シール性が向上する。
【0029】
図3は、本発明に係る三方弁の第三実施形態を示す縦断面図である。図示の第三実施形態の三方弁10Cは、第一及び第二実施形態の三方弁10A、10Bにおける主弁体21が、回転しながら昇降せしめられる段付き棒状の回転昇降部21Aと、この回転昇降部21Aに伴って昇降せしめられるが回転はしないようにされた、弁体部(ボール21a’)を有する非回転昇降部21Bと、からなる二分割構成となっている。非回転昇降部21Bは、回転昇降部21Aに伴って昇降する(回転しない)ようにコイルばね74により上向きに付勢されている。このようにされることにより、弁体部21a’にねじり力が加わらなくなり、弁体部21a’の耐久性やシール性等が向上する。
【0030】
図4は、本発明に係る三方弁の第四実施形態を示す縦断面図である。図示の第四実施形態の三方弁10Dは、第一〜第三実施形態の電動式アクチュエータ15に代えて、電磁式アクチュエータ16を用いたものであり、他の部分は前記実施形態と略同じ構成となっている。電磁式アクチュエータ16は、固定鉄心81、コイル82、フレーム83、第1弁体部(ボール21a’)を有する主弁体(プランジャ)21、弁体ガイド84、この弁体ガイド84を弁本体20に連結する連結保持部29、主弁体21を下方に付勢するコイルばね85等からなる汎用型のDCまたはACソレノイドである。なお、本実施形態では、第1弁座形成部材として前記実施形態のガイドブッシュ26に代えて縦穴79a付き圧入部材79が用いられている。かかる構成の三方弁10Dにおいても前記した実施形態と略同様な作用効果が得られる。
【0031】
図5は、本発明の係る三方弁の第五実施形態を示す縦断面図である。図示の第五実施形態の三方弁10Eは、電磁式アクチュエータとして、キープソレノイド17を用いたものであり、他の部分は前記第四実施形態と略同じ構成となっている。キープソレノイド17は、前記汎用型のDCまたはACソレノイドと永久磁石86とを組み合わせたもので、固定鉄心81、コイル82、フレーム83A、83B、第1弁体部(ボール21a’)を有する主弁体(プランジャ)21、弁体ガイド84、この弁体ガイド84を弁本体20に連結する連結保持部29、主弁体21を下方に付勢するコイルばね85、及び永久磁石86等からなっている。かかるキープソレノイド17を用いることにより、パルス入力(瞬時通電)のみで主弁体21を吸引する(上昇させる)ことが可能であり、吸引後は永久磁石86の吸引力で吸着保持することができ、その間は通電は不要となり、省エネを図ることができる。
【0032】
図6は、本発明の係る三方弁の第六実施形態を示す縦断面図である。図示の第六実施形態の三方弁10Fは、第四実施形態と同様な電磁式アクチュエータ16を備えた電磁パイロット弁となっている。すなわち、三方弁10Fは、第1弁体部(ボール21a)を有する主弁体21、この主弁体21により開閉されるパイロット通路75が設けられた第1スライド弁体90、この第1スライド弁体90により開閉される第1弁座22aが設けられた第1弁室22、副弁体部61及び第2弁体部82を有する第2スライド弁体60、この第2スライド弁体60の副弁体部61により開閉される副弁座64aが設けられた副弁室64、第2スライド弁体60の第2弁体部62により開閉される第2弁座66aが設けられた第2弁室66、第1スライド弁体90を前記第1弁座22aを閉じる方向に付勢するコイルばね48、及び、第2スライド弁体60を第2弁座66aを閉じる方向に付勢する第コイルばね67が共通軸線O上に配置され、主弁体21と第1スライド弁体90との間に背圧室94が形成され、第1弁座22aより下流の第1弁室下流部95と副弁室64とが第1連通路71で連通せしめられるとともに、第1弁室22と第2弁室66とが第2連通路72を介して連通せしめられ、第2弁室66に入口11が連通せしめられるとともに、第2弁座66aより下流側に第1出口12が設けられ、かつ、第1弁室下流部95に第2出口13が連通せしめられている。
【0033】
なお、第1連通路71が形成された円柱状の弁座兼ばね受け部材68は、シール性を確保するため、副弁室64に圧入されるとともに、かしめ固定(かしめ部69)されている。この場合、弁座兼ばね受け部材68の固定手法としては、上記の他、例えば、それを二分割構成として、一方を副弁室64に螺合し、他方を圧入する、あるいは、一方を第1弁座22aの形成部材として第1弁室22もしくは第1弁室下流部95に圧入固定し、他方を副弁室64に圧入固定する、等してもよい。
【0034】
このような構成とされた三方弁10Fにおいては、電磁式アクチュエータ16が通電されていないとき(無通電時)には、入口11に高圧の冷媒が導入されるとともに、主弁体21によりパイロット通路75が閉じられる。このときには、入口11に導入された高圧の冷媒の圧力が第2スライド弁体60(の大径部)に作用し、これにより、第2スライド弁体60がコイルばね67の付勢力に抗して上昇し、第2弁座66aが開となるとともに、副弁座64aが閉となり、また、第1弁室下流部95の内圧より背圧室94の内圧(背圧)の方が高くなる(差圧が大となる)ので、第1スライド弁体90により第1弁座22aが閉となる。このため、高圧の冷媒は第1出口12に流出する。
【0035】
それに対し、電磁式アクチュエータ16が通電されたとき(通電時)には、入口11に高圧の冷媒が導入されるとともに、主弁体21が引き上げられてパイロット通路75が開かれる。これにより、第1弁室下流部95の圧力が上昇して第1背圧室94との差圧が小さくなり、その上昇した第1弁室下流部95の圧力が第1連通路71を介して第2スライド弁体60の副弁体部61に作用するので、第2スライド弁体60が下降して、第2弁座66aが閉となるとともに、副弁座64aが開となり、これによって、高圧の冷媒は、入口11から第2連通路72を介して第1弁室22に導かれ、第1スライド弁体90(の大径部)に作用し、これにより、第1スライド弁体90がコイルばね48の付勢力に抗して上昇し、第1弁座22aが開となる。このため、高圧の冷媒は第2出口13に流出する。
【0036】
このような構成とされた本実施形態の三方弁10Fにおいても前述した実施形態と略同様な作用効果が得られる。
【0037】
上記各実施例において、第1弁体部と第2弁体部の一方または両方の摺動部に、樹脂または低摩擦性を付与するめっき等を施したピストンリング等のシール部材を1個または複数個装着するようにしてもよい。または、各弁体部の摺接部に、耐磨耗性を有する部材または耐磨耗性めっき処理を施した部材を別部品として装着することもできる。このような構造をとることによって摩擦抵抗が小さくなり、低消費電力化をさらに図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
10A、10B、10C、10D、10E、10F…三方弁、11…入口、12…第1出口、13…第2出口、15…電動式アクチュエータ、16…電磁式アクチュエータ、20…弁本体、21…主弁体、21a…第1弁体部、22…弁室、22a…弁座、60…スライド弁体、61…副弁体部、62…第2弁体部、71…第1連通路、72…第2連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1弁体部を有する主弁体、該主弁体により開閉される第1弁座が設けられた第1弁室、副弁体部及び第2弁体部を有するスライド弁体、該スライド弁体の副弁体部により開閉される副弁座が設けられた副弁室、前記スライド弁体の第2弁体部により開閉される第2弁座が設けられた第2弁室、及び、前記スライド弁体を前記第2弁座を閉じる方向に付勢する付勢部材、が共通軸線上に配置され、前記第1弁室と前記副弁室とが第1連通路を介して連通せしめられるとともに、前記第1弁室と前記第2弁室とが第2連通路を介して連通せしめられ、前記第2弁室に入口が連通せしめられるとともに、前記第2弁座より下流側に第1出口が設けられ、かつ、前記第1連通路に第2出口が連通せしめられていることを特徴とする三方弁。
【請求項2】
前記主弁体を開閉駆動するための電動式アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1に記載の三方弁。
【請求項3】
前記主弁体を開閉駆動するための電磁式アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1に記載の三方弁。
【請求項4】
前記電磁式アクチュエータとして、キープソレノイドが用いられていることを特徴とする請求項3に記載の三方弁。
【請求項5】
前記第1弁体部、前記第2弁体部、及び前記副弁体部のうちの少なくとも一つは、ボールで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の三方弁。
【請求項6】
主弁体が、回転しながら昇降せしめられる回転昇降部と、該回転昇降部に伴って昇降せしめられるが回転はしないようにされた、弁体部を有する非回転昇降部と、からなる二分割構成とされていることを特徴とする請求項2に記載の三方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−43240(P2011−43240A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254380(P2010−254380)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2005−59312(P2005−59312)の分割
【原出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】