三次元形状測定装置
【課題】 測定精度の良い三次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】 ガイドレールと台座部材とからなる滑動機構133,134を有するXY−テーブル130を石定盤105上に設置することで、上記XY−テーブルの内側に空間151を形成する。上記XY−テーブルに設けた基準板へレーザ光111dを導くための基準板用光学系122を上記空間に配置することで、被測定物の形状測定精度の向上を図ることができる。
【解決手段】 ガイドレールと台座部材とからなる滑動機構133,134を有するXY−テーブル130を石定盤105上に設置することで、上記XY−テーブルの内側に空間151を形成する。上記XY−テーブルに設けた基準板へレーザ光111dを導くための基準板用光学系122を上記空間に配置することで、被測定物の形状測定精度の向上を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品や金型等の被測定物における測定面の、例えば基準位置からの高さ情報等の位置情報を、例えばナノメートルのオーダーの超高精度にて測定可能な三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレンズ等の光学部品や、金型などの非球面物体の表面形状を、ナノメートルのオーダーの高精度にて測定するものとして、三次元形状測定装置の利用が広く知られている。
被測定物用測定器を有する三次元形状測定装置は、一般的に、上記被測定物用測定器を被測定物に接触させ、該接触力がほぼ一定になるように上記被測定物用測定器のZ方向位置を制御しつつ、上記被測定物用測定器を上記被測定物の測定面に沿って移動させて、上記被測定物用測定器と基準面との位置関係に基づき、上記測定面の表面形状を測定、演算するものである。このような測定装置の一つとして、レーザ測長器と基準平面ミラーとを利用した三次元形状測装置が知られており、測定を行うときの被測定物用測定器及び被測定物の動作方法として、大別して以下の2つの方法がある。
【0003】
第1の方法は、被測定物を固定して、被測定物用測定器をX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させる方法である。その代表例について図8を参照して説明する。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
図8は、従来の三次元形状測定装置の構造を示しており、従来の三次元形状測定装置50は、被測定物1を固定し、被測定物1の形状測定をする被測定物用測定器2をX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させて被測定物1の測定面1aの形状測定を行う装置であり、装置を覆うカバー3と、本体前面に設けられ開閉自在のドア4と、各種機構部材を載置する石定盤5と、石定盤5を載置する架台34とを備えている。石定盤5上には、石定盤5に固定された台板19が設置され、該台板19上にはXY−テーブル35が設置され、該XY−テーブル35上には取付パネル37が設置される。ここで、XY−テーブル35は、台板19上に設置されY軸方向に摺動して移動可能なY−テーブル21と、Y−テーブル21上に設置されY軸方向に直交するX軸方向に摺動して移動可能なX−テーブル24とを有する。取付パネル37には、レーザ光発生装置10と、該レーザ光発生装置10から発生したレーザ光14を誘導、分岐、検出する光学部品を有する測定機構12と、Z方向へ移動可能なZテーブル18が設置されたブラケット36とが設置されている。尚、図示を省略しているが、測定機構12は、測定面1aにおける測定点のX,Y,Z軸方向の各座標値を求めるため、レーザ光発生装置10から発生したレーザ光14を4つに分岐してそれぞれを誘導する光学系と、該光学系にて導かれたレーザ光に基づき上記各座標値を求める検出部とを有する。又、Zテーブル18の下部には、測定面1aに接触するスタイラスを有し測定面1aにおける測定点のZ軸方向における位置座標を求めるための上記被測定物用測定器2が設置されている。Zテーブル18の上方には、分岐された4つの内の一つのレーザ光14が照射される基準面7aを形成した基準板7が、石定盤5に設置されたブリッジ状の部材(不図示)に取り付けられている。上記基準板7へのレーザ光14の照射は、被測定物1の形状測定時に移動するXY−テーブル35自体のZ軸方向への変位量を補償する情報を得るためものである。
【0005】
このように構成される従来の三次元形状測定装置50による被測定物1の測定動作は、以下のように行われる。
被測定物用測定器2に備わる上記スタイラスが被測定物1の測定面1aに接触し、XY−テーブル35がX−Y平面上で任意の方向に移動する。このとき、上記スタイラスと測定面1aとの接触力がほぼ一定になるように、Zテーブル18はZ方向に位置制御される。さらに、XY−テーブル35の移動により上記スタイラスが測定面1aに沿って移動し、レーザ光発生装置10から発射されたレーザ光14を測定機構12により検出することで、被測定物用測定器2と基準面7aとのX、Y、及びZ軸方向における位置関係が求まり、該位置関係から測定面1aの表面形状が演算測定される。
【0006】
次に、第2の方法として、被測定物をX軸及びY軸方向に移動させ、被測定物用測定器をZ軸方向に移動させる方法がある。その代表例について、図9〜図13を参照して説明する(例えば、特許文献2参照。)。尚、図9〜図13において、図8に示す構成部分と同様の機能を有する構成部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0007】
図9は、別タイプの従来の三次元形状測定装置60の正面図であり、図10は、図9に示すE−E部における断面図である。尚、図10でY軸方向摺動部の図示は省略している。三次元形状測定装置60は、被測定物1がX軸及びY軸方向に移動し、被測定物用測定器2がZ軸方向に移動する装置であり、装置を覆うカバー3と、本体前面に開閉自在のドア4と、各種機構部材を載置する石定盤5と、石定盤5を載置する架台34で構成されている。
【0008】
図11は、図9に示すE−E部におけるXY−テーブル38の断面詳細図であり、図12は図10に示すF−F部におけるXY−テーブル38の断面詳細図である。尚、図11では、Y軸方向摺動部の図示は省略し、図12では、X軸方向摺動部の図示は省略している。図11及び図12において、XY−テーブル38は、石定盤5上に設置され、石定盤5に固定された台板19と、Y−テーブル21と、X−テーブル24と、保持台8とを有する。Y−テーブル21は、台板19の上にコロ軸受け39を介しY軸方向に摺動して移動可能であり、X−テーブル24は、Y−テーブル21上にコロ軸受け40を介してY軸方向に直交するX軸方向に摺動して移動可能であり、保持台8は、裏面側に基準面7aを形成している基準板7が取り付けられ、表面側に被測定物1を載置する板材にてなり、X−テーブル24上に載置される。
【0009】
又、三次元形状測定装置60では、コロ軸受け40を用いていることから、各テーブル21,24の剛性を確保するため、各テーブル21,24の肉厚を厚くする必要がある。よって、XY−テーブル38の内側に空間を形成するのは困難であり、XY−テーブル38の内側に各テーブル21,24の駆動機構を設置することはできない。よって、Y−テーブル21及びX−テーブル24のY軸方向及びX軸方向への移動は、図13に示すように、XY−テーブル38の外側に設置したステッピングモータ45を有するボールネジ機構46にて行われている。尚、ボールネジ機構46を構成するボールネジ46aの振動が直接にテーブル21,24に伝わらないように、ボールネジ46aに係合するナット部46bは、振動吸収部材として機能する板バネ47を介して各テーブル21,24と接続されている。
【0010】
尚、図8に示す三次元形状測定装置50では、レーザ光発生装置10、測定機構12、及び被測定物用測定器2を有するZテーブル18の全てが移動に際しうねりを生じるXY−テーブル35に設置されていることから、上記うねりの測定に供される基準板7は、固定され測定に関して変位しない装置本体に設置している。一方、図9等の三次元形状測定装置60では、レーザ光発生装置10、測定機構12、及びZテーブル18は、測定に関し変位しない石定盤5に設置していることから、移動に際しうねりを生じるXY−テーブル38に基準板7が設置される。
【0011】
図10に示すように、石定盤5上には、Z軸方向へ移動可能なZ−テーブル18が設置された門型部材41と、レーザ光発生装置10及びレーザ光14を誘導、分岐、検出する測定機構12を装着した取付パネル42とが載置されている。又、Z−テーブル18の下部には、被測定物用測定器2が設置されている。
【0012】
以上のように構成される従来の三次元形状測定装置60による被測定物1の測定動作は、以下のように行われる。
被測定物用測定器2のスタイラスを被測定物1の測定面1aに接触させ、XY−テーブル38をX−Y平面上で任意の方向に移動させる。このとき、XY−テーブル38上の保持台8の裏面に設けられ基準面7aを形成している基準板7も同時に移動する。又、被測定物用測定器2のスタイラスと測定面1aとの接触力がほぼ一定になるように、Z−テーブル18がZ方向に位置制御される。該位置制御に基づいて測定面1aのZ軸方向における変位量が測定され、さらに、レーザ光発生装置10から発射されたレーザ光14の、被測定物1のX−Y軸方向における移動に伴い測定機構12による検出結果に基づいて、被測定物1の表面形状が演算測定される。
【特許文献1】特開平5−87540号公報
【特許文献2】特開平10−170243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来の三次元形状測定装置50では、図8からも明らかなように、被測定物用測定器2をZ軸方向に駆動させるZ−テーブル18がXY−テーブル35から前部の測定空間側へ大きく突出している。よって、X軸、Y軸、Z軸の全方向に超高精度にて移動させるためには、XY−テーブル35の剛性を向上させる必要があり、XY−テーブル35を大きくせざるを得ない。結果的に、装置全体が大きくなってしまう。又、レーザ光発生装置10からの発熱による上昇気流による空気の揺らぎに起因して、レーザ光に揺らぎが生じる可能性があり、より高精度な測定を妨げかねない。
【0014】
又、上述した従来の三次元形状測定装置60では、被測定物1をXY−テーブル38上の保持台8に保持させたことで、被測定物用測定器2及びZ−テーブル18を、XY−テーブル38から切り離すことができ、三次元形状測定装置50における課題は解決され装置全体の小型化を図ることはできた。しかしながら、基準板7へレーザ光14を導くため、石定盤5の下方に反射ミラー15,16を設けたことから、反射ミラー設置用の空間を石定盤5との間に確保するための架台34が必要となり、装置全体の、特に下部のサイズの小型化を妨げている。又、石定盤5に設けたレーザ光14を通す孔5aを通して上昇気流が生じ、レーザ光14に揺らぎが生じ、三次元形状測定装置50の場合と同様に、より高精度な測定を妨げかねない。
【0015】
さらに又、石定盤5の下方に設置した反射ミラー15,16は、XY−テーブル38の保持台8の裏面に設けた基準板7にレーザ光14を照射し、基準板7にて反射したレーザ光を検出部が備わる測定機構12へ正確に戻す必要がある。よって、反射ミラー15,16の角度調整は、精度良く行う必要があるが、図からも明らかなように調整作業場所が狭く、調整作業性には改善の余地があった。
【0016】
尚、三次元形状測定装置60において、反射ミラー15,16を石定盤5上に設置して装置の小型化を実現する構成も考えられる。該構成を採るには、台板19上で基準板7の下方に、角度調整機構を付属した反射ミラー16用の設置用スペース44をY−テーブル21の内側部分に確保する必要がある。しかしながら、XY−テーブル38は、水平方向つまりX軸及びY軸方向へ与圧を付与することで摺動部となる軸受け部分のガタツキを抑えるコロ軸受け40を用いている。よって、台板19及びY−テーブル21では、内側への圧力によって保持台8における高平面度を劣化させない程度の剛性が要求され、台板19及びY−テーブル21における水平方向への肉厚は厚くせざるを得ない。したがって、測定精度の理由から設置用スペース44を確保するのは困難である。
【0017】
又、従来の三次元形状測定装置50,60では、レーザ光発生装置10、及びレーザ光を誘導、分岐、検出する測定機構12が同一の取付けパネル上に設置されていたため、レーザ光発生装置10からの発熱により、上記取付けパネル自体が熱変形したり、上記取付けパネル上の上記測定機構12が熱変形する可能性もあり、レーザ光の光軸ズレを生じ、より高精度な測定を妨げる可能性もあった。
本発明は、上述したような問題点を改善するためになされたもので、測定精度が良く小型化された三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様の三次元形状測定装置は、レーザ光を発生させるレーザ光発生部と、
上記レーザ光を複数に分岐する光学系と、
定盤上に設置され互いに直交する第1方向及び第2方向に移動する測定テーブルと、
上記測定テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を上記分岐されたレーザ光の一部を用いて測定する検出部と、
上記測定テーブルの前記被測定物が載置される面と反対側の面に配置された基準板と、
上記光学系に備わり上記分岐されたレーザ光の他の一部を上記基準板に導く基準板用光学系とを備え、
上記基準板用光学系の上記基準板と対向する反射ミラーが、上記定盤と上記測定テーブルとの間の内側空間に配置されていることを特徴とする。
【0019】
又、上記測定テーブルは、当該測定テーブルを上記第1方向に滑動させる第1滑動機構と、上記第2方向に滑動させる第2滑動機構とを備え、
上記第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有し、
上記第2滑動機構は、上記第1ガイドレールと直交して平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有するように構成してもよい。
【0020】
又、2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記測定テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記反射ミラーの傾斜角度を上記測定テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えるようにしてもよい。
【0021】
又、上記定盤上に、上記測定テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割する分割部材をさらに備えるように構成してもよい。
【0022】
又、上記三次元形状測定装置は、以下のように構成することもできる。
定盤上に設置され平面上で互いに直交するX軸方向及びY軸方向に移動するXY−テーブルと、該XY−テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を測定する測定機構部とを備えた三次元形状測定装置であって、
上記XY−テーブルは、当該XY−テーブルの内側で上記定盤に対向して配置される基準板で、当該XY−テーブルの移動時における当該XY−テーブル自体のうねりを測定するための基準板を有し、
上記定盤上に設置されレーザ光を発生するレーザ光発生部と、
上記定盤上に設置され、上記レーザ光を上記基準板に導く基準板用光学系であって、上記定盤上で上記XY−テーブルの内側の空間にて上記基準板に対応して配置されて上記レーザ光を上記基準板に導く反射ミラーを有する基準板用光学系と、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記XY−テーブルは、上記定盤と当該XY−テーブルとの間に設置され上記定盤に対して当該XY−テーブルを上記X軸方向又は上記Y軸方向に滑動させ、かつ上記内側空間を形成する第1滑動機構を有し、該第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記XY−テーブルを支持しながら各第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有するように構成してもよい。
【0024】
上記XY−テーブルは、さらに、Y−テーブルと、X−テーブルと、Y駆動機構と、X駆動機構と、第2滑動機構とを有し、
上記Y−テーブルは、上記定盤上に上記第1滑動機構を介して設置され、上記XY−テーブルの上記内側空間に位置して当該Y−テーブルを上記Y軸方向に移動させる上記Y駆動機構を有し、
上記X−テーブルは、上記Y−テーブル上に上記第2滑動機構を介して設置され、当該X−テーブルを上記X軸方向に移動させる上記X駆動機構を有し、
上記第2滑動機構は、上記Y−テーブル上に平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記X−テーブルを支持しながら各第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有し、上記X−テーブルと上記Y−テーブルとの間に上記X駆動機構を配置させるための空間を形成する機構であるように構成してもよい。
【0025】
2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記XY−テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記内側空間に配置されている上記反射ミラーの傾斜角度を上記XY−テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えることもできる。
【0026】
上記定盤上に立設され、当該三次元形状測定装置内を、上記XY−テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割し上記レーザ光発生部から生じる熱による上記測定面の形状測定への影響を低減する分割部材をさらに備えることもできる。
【0027】
上記第2領域において、上記分割部材は、鉛直方向における上部にて上記レーザ光発生部を取り付ける第1取付用部材と、上記第1取付用部材とは分離され上記第1取付用部材の下方にて上記測定機構部を取り付ける第2取付用部材とを有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1態様における三次元形状測定装置によれば、基準板用光学系を定盤上に配置し、測定テーブルに設置されている基準板へ定盤上にてレーザ光を照射するように構成した。したがって、従来の装置における、上昇気流を生じる部分にレーザ光を通すという構成は不要となり、レーザ光に揺らぎが生じることはなくなり、測定面の形状測定精度を従来に比べて向上させることができる。又、基準板用光学系を定盤上に配置したことから、従来装置で必要であった架台が不要となる。よって、従来に比べて装置全体を小型化することが可能となる。
【0029】
又、第1ガイドレールと第1台座部材とを有する第1滑動機構を用いたことから、従来、XY−テーブルの摺動部分に用いていたコロ軸受けを用いる必要がなくなる。よって、コロ軸受けを用いるが故に必要であった水平方向への与圧が不要となることから、測定テーブルの剛性を従来のように高める必要が無く、測定テーブルの肉厚を従来に比べて薄くすることができる。したがって、測定テーブルの内側に、上記基準板用光学系に備わる反射ミラーを設置可能な空間を形成することが可能となり、上述したように、基準板用光学系を定盤上に配置することができることから、測定精度の向上、及び装置の小型化を図ることができる。
【0030】
又、上記第1滑動機構は、2本の第1ガイドレールを平行に配置した構成を有することから、各第1ガイドレール間には、隙間が形成される。よって、該隙間を利用して、測定テーブルの上記内側空間に配置された反射ミラーへレーザ光を導くことが可能となる。
【0031】
又、上記第1滑動機構を設けることで、測定テーブルを構成するY−テーブルと定盤との間に隙間を形成でき、さらに、上記第1滑動機構と同様に、2本の第2ガイドレールと第2台座部材を有する第2滑動機構を用いることで、測定テーブルを構成するY−テーブルとX−テーブルとの間にも隙間を形成することができる。よって、Y−テーブルと定盤との間の隙間を利用して、Y−テーブルを駆動するY駆動機構を測定テーブルの内側に設置することが可能となり、同様に、Y−テーブルとX−テーブルとの間の隙間を利用して、X−テーブルを駆動するX駆動機構を測定テーブルの内側に設置することが可能となる。よって、従来、測定テーブルの外側に駆動機構を設けていたのに比べて、装置全体の小型化を図ることができる。
【0032】
又、上述のように第1滑動機構を設けることで、各第1ガイドレール間には隙間が形成されることから、上記内側空間に配置されている上記反射ミラーの傾斜角度を調整する傾斜角度調整機構を、上記隙間を利用して設置することができる。よって、測定テーブルの外側から、つまり作業性の良好な状態で反射ミラーの傾斜角度調整を行うことができ、測定精度の向上、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
又、分割部材を定盤上に設置したことから、熱源となるレーザ光発生部を測定テーブルから分離でき、レーザ光発生部から生じた熱が測定面の形状測定に悪影響を与えるのを防止することができる。よって、従来に比べて測定精度の向上を図ることが可能となる。
【0034】
又、分割部材には、レーザ光発生部及び測定機構部が取り付けられるが、それぞれを取り付けるための取付用部材を別々の部材とした。これにより、レーザ光発生部から生じた熱が測定機構部へ伝導するのを防止することができる。よって、測定機構部において長さ変動や歪を起こすことがなく、従来に比べて測定精度の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施形態である三次元形状測定装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同じ構成部分については同じ符号を付している。
図1に示すように、本実施形態の三次元形状測定装置101は、図9に示す測定装置と同様に、平面上で互いに直交するX軸方向及びY軸方向に移動するXY−テーブル130に載置された被測定物1の測定面1aの形状を、測定面1aに探触子を接触させながら測定を行う測定装置である。尚、上記X軸方向は例えば第2方向に相当し、上記Y軸方向は例えば第1方向に相当する。第1方向及び第2方向は、相互に変更可能である。又、XY−テーブル130は、測定テーブルとしての機能を果たす一例である。又、本実施形態において、被測定物1としては例えばデジタルスチルカメラ用のレンズ等が該当し、三次元形状測定装置101は、測定面1aが最大約200mm四方までの大きさにてなる被測定物1を測定対象とし、又、測定面1aにおける接線方向と水平方向との交差角度θにて最大で約60度までの曲面を有する測定面1aをナノメートルオーダーの精度にて測定可能な装置である。
【0036】
図1及び図2に示すように、三次元形状測定装置101は、大きく分けて、測定面1aの形状測定に関係し以下に説明する、例えばXY−テーブル130等の各種構成部分と、上記各種構成部分の一部を載置する石定盤105とを備え、より詳しくは、当該測定装置101を覆うカバー103と、装置本体の操作面に相当する前面にてカバー103に設けられ開閉自在のドア104と、石定盤105とカバー103とで囲まれた空間106を、装置本体の操作側に相当する前部領域106aと、非操作側に相当する後部領域106bとに2分する、門型形状でなく一枚板状で、例えば石等の低熱膨張材料にてなる分割部材160とを備える。
【0037】
前部領域106aには、主に、XY−テーブル130と、該XY−テーブル130の上方に配置され測定面1aのZ軸座表値を測定するための機構であるZ−テーブル140とが備わる。一方、後部領域106bには、形状測定用のレーザ光111を発生するレーザ光発生部110と、測定機構部120とが備わる。これらの各構成部分について以下に説明する。
【0038】
図3及び図4に示すように、XY−テーブル130は、Y−テーブル131と、第1滑動機構133と、X−テーブル132と、第2滑動機構134と、Y駆動機構135と、X駆動機構136と、測定物載置板138とを有する。
【0039】
石定盤105上には、台板107が取り付けられ、該台板107上には、平板状にてなるY−テーブル131をY軸方向に滑動可能とする第1滑動機構133が設置されている。尚、台板107は、無くても良い。第1滑動機構133は、下記の第2滑動機構134と同一の機構にてなり、図4に示すように、Y軸方向に沿って平行に敷設された2本の第1ガイドレール1331と、それぞれの第1ガイドレール1331上に係合しY−テーブル131を支持する第1台座部材1332とを有す。第1台座部材1332は、第1ガイドレール1331を抱き抱えるような凹状にてなり、1本の第1ガイドレール1331上に所定間隔にて2つ取り付けられ、第1ガイドレール1331に沿って滑動する。よって合計4つの第1台座部材1332にてY−テーブル131は支持され、第1ガイドレール1331に沿ってY軸方向に滑動自在となる。
【0040】
このような構造にてなる第1滑動機構133は、従来のように水平方向に与圧を必要とするコロ軸受けではない。よって、従来に比べてY−テーブル131の剛性を考慮する必要がなくなり、Y−テーブル131の肉厚を薄くすることができる。又、上述のように第1滑動機構133は、第1ガイドレール1331上を第1台座部材1332が滑動するという構造にてなる。これらのことから、石定盤105、つまり台板107と、Y−テーブル131との間に第1滑動機構133を設置することで、台板107とY−テーブル131との間に、Z軸方向に空間151が形成可能となる。該空間151の形成により、Y駆動機構135及び後述の反射ミラー1221をXY−テーブル130の内側に配置することが可能となり、又、2本の第1ガイドレール1331の間の隙間1511には、上記反射ミラー1221へレーザ光111dを導く光路が形成可能である。又、詳細後述するが、反射ミラー1221には、反射ミラー1221の傾斜角度を調整するための傾斜角度調整機構170が取り付けられており、上記空間151は、傾斜角度調整機構170をもXY−テーブル130の内側に配置可能とする。
尚、Y−テーブル131の中央部分には、上記反射ミラー1221と入、反射されるレーザ光111dを通過可能とする開口131aが形成されている。
【0041】
上記Y駆動機構135は、図7に示すように、Y軸方向に延在し固定されたシャフト1351と、該シャフト1351に非接触にてシャフト1351に沿って滑動するモータ部1352とを有するリニアモータにて構成される。モータ部1352はY−テーブル131と固定され、シャフト1351は台板107に固定される。よって、シャフト1351に対してモータ部1352が移動することで、Y−テーブル131がY軸方向に移動する。
【0042】
上述のように構成されるY−テーブル131上には、上述の第1滑動機構133と同一の構成にてなる第2滑動機構134が設置される。つまり、第2滑動機構134は、図3に示すように、X軸方向に沿って平行に敷設された2本の第2ガイドレール1341と、それぞれの第2ガイドレール1341上に係合しX−テーブル132を支持する第2台座部材1342とを有す。
よって合計4つの第2台座部材1342にて、板状のX−テーブル132は支持され、第2ガイドレール1341に沿ってX軸方向に滑動自在となる。尚、X−テーブル132の中央部分には、上記反射ミラー1221にて反射されるレーザ光111dを通過可能とする開口132aが形成されている。
【0043】
このようにY−テーブル131とX−テーブル132との間に第2滑動機構134を設けたことで、第1滑動機構133を設けたことによる効果と同一の効果、即ち、X−テーブル132の肉厚を薄くすることができ、Y−テーブル131とX−テーブル132との間にZ軸方向に空間1512を形成でき、X駆動機構136をXY−テーブル130の内側に設置することができる。尚、X駆動機構136は、上述のY駆動機構135と同一の構成にてなり、X軸方向に延在し固定されたシャフト1361と、該シャフト1361に非接触にてシャフト1361に沿って滑動するモータ部1362とを有するリニアモータにて構成される。よって、シャフト1361に対してモータ部1362が移動することで、X−テーブル132がX軸方向に移動する。
【0044】
上記測定物載置板138は、X−テーブル132の上面132bに、円周上に等間隔にて例えば3箇所に配置された支持球1381を介して支持され、その上面138aの中央部に被測定物1が載置され保持される。又、上面138aには、XY−テーブル130のX軸方向及びY軸方向における移動量、つまり測定面1aのX軸方向及びY軸方向における移動量を検出するため、X軸方向に直交し鏡面にてなる基準面137Xaを有するX軸基準板137X、及びY軸方向に直交し鏡面にてなる基準面137Yaを有するY軸基準板137Yが取り付けられている。さらに、XY−テーブル130の移動時にXY−テーブル130に生じるZ軸方向におけるXY−テーブル130の、いわゆるうねり成分を検出するための基準板137Zが、被測定物1に対向するように、測定物載置板138の裏面138bの中央部に設けられている。基準板137Zは、レーザ光111dが照射され鏡面にてなる基準面137Zaを鉛直方向に直交するようにして、かつ基準面137aの向きを調整可能にして、上記裏面138bに突設した断面L字状のアーム材1382にて支持される。よって、XY−テーブル130がX,Y軸方向に移動することで、基準板137ZもX,Y軸方向に移動する。
各基準板137X、137Y、137Zの基準面137Xa、137Ya、137Zaは、平坦度が0.01ミクロンオーダーにてなる。
【0045】
上記Z−テーブル140は、上述のXY−テーブル130の上方で、Z軸方向に沿って移動可能にして上記分割部材160に取り付けられ、又、Z−テーブル140の下部には、測定面1aに接触するスタイラスを有する探触子の鉛直方向における微動を検出する、即ち、測定面1aのZ軸方向における形状を検出する被測定物用測定器102が設けられている。このようなZ−テーブル140は、被測定物用測定器102のスタイラスが測定面1aにほぼ一定の接触力にて接触するように、Z軸方向に位置制御される。
【0046】
次に上記傾斜角度調整機構170について説明する。図5に示すように、傾斜角度調整機構170は、可動なミラー取付ブロック171と、上記台板107に固定される延長用ブロック172と、調整部173とを有する。ミラー取付ブロック171は、Z軸方向に対して約45度の角度にて傾斜したテーパ部1711に上記反射ミラー1221を取り付けた部材であり、上述のようにXY−テーブル130の内側空間151に位置する。延長用ブロック172は、内側空間151に配置されているミラー取付ブロック171のテーパ部1711の傾斜角度、即ち反射ミラー1221の傾斜角度をXY−テーブル130の外側から変更可能とするための部材であり、図1及び図4に示すように、敷設される2本の第1ガイドレール1331の間に、第1ガイドレール1331に沿って配置されて台板107に固定される。又、延長用ブロック172には、調整部173が取り付けられる。調整部173は、一つの支持球1731と、1本の引張部材1732と、2本の調整用ネジ1733,1734とを有する。引張部材1732は、固定されている延長用ブロック172に対して、支持球1731を支点及び中心として首振り可能にしてミラー取付ブロック171を保持する部材であり、バネ1732aを有しミラー取付ブロック171を延長用ブロック172側へバネ1732aの復元力にて引っ張る。又、引張部材1732は、支持球1731、調整用ネジ1733,1734にてなる三角形の重心位置に配置されている。調整用ネジ1733,1734は、延長用ブロック172に螺合し、引張部材1732にて延長用ブロック172側へ引っ張られているミラー取付ブロック171に先端を当接させ、そのねじ込み量を調整することで上記首振りを行わせ反射ミラー1221の角度を調整するためのネジである。
【0047】
このように構成される傾斜角度調整機構170について、反射ミラー1221の角度調整は、調整用ネジ1733,1734の少なくとも一方を、XY−テーブル130の外側から回転させてY軸方向に前後させることで、ミラー取付ブロック171を支持球1731を支点にし、首振り動作、つまり、Z軸を回転中心したあおり、又はX軸を回転中心したあおりの動作をさせることで行う。尚、ミラー取付ブロック171つまり反射ミラー1221は、調整用ネジ1733,1734に設けた固定用ナット1735による固定、及びバネ1732aの復元力により、調整位置を保持することができる。
【0048】
尚、本実施形態の三次元形状測定装置101では、台板107上には第1滑動機構133を介してY−テーブル131を配置したが、該構成に限定されず、台板107上に第2滑動機構134を介してX−テーブル132を配置し、該X−テーブル132上に第1滑動機構133を介してY−テーブル131を配置してもよい。
【0049】
次に、分割部材160は、前部領域106aと後部領域106bとを分割し、該分割により、後部領域106bにて生じる熱が前部領域106aに影響を与えるのを抑制する部材である。このように分割部材160は、測定面1aの測定精度の向上に寄与することができる。又、分割部材160には、以下に説明する各レーザ光111a〜111dを、後部領域106bと前部領域106aとの間で往復させるための4つの貫通穴162a〜162dが設けられている。
【0050】
後部領域106bに備わる上記レーザ光発生部110は、形状測定用のレーザ光111として、本実施形態では一つの周波数にて発振するHe−Ne周波数安定化レーザを発生する。尚、使用されるレーザ光は、二つの周波数を有するものであってもよい。該レーザ光発生部110は、分割部材160に取り付けられた第1取付用部材161に設置される。
【0051】
後部領域106bに備わる上記測定機構部120は、上記レーザ光111を4つに分岐してそれぞれを誘導する光学系1201a〜1201dと、該光学系1201a〜1201dにて導かれたレーザ光111a〜111dに基づいて、測定面1aの測定点におけるX軸、Y軸、及びZ軸方向における各座標値を求めるための検出部121a〜121dとを有する。測定機構部120は、分割部材160に取り付けられた第1取付用部材161とは分離され、かつZ軸方向においてレーザ光発生部110よりも下方にて分割部材160に取り付けられた第2取付用部材163に設置される。
【0052】
熱源となるレーザ光発生部110を、上述のように測定機構部120より上方に配置し、かつ第1取付用部材161と第2取付用部材163とを分離したことにより、レーザ光発生部110にて生じた熱の測定機構部120への影響を低減することができる。したがって、測定面1aの形状測定精度を従来に比べて向上させることができる。
【0053】
上記検出部121aは、レーザ光111aに関し、被測定物用測定器102へ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるZ軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121bは、レーザ光111bに関し、X軸基準板137Xへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるX軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121cは、レーザ光111cに関し、Y軸基準板137Yへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるY軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121dは、レーザ光111dに関し、基準板137Zへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるZ軸方向における上記うねり成分を検出するための部分である。
【0054】
尚、基準板137Zと測定機構部120との間における上記レーザ光111dに関する光学系1201dを基準板用光学系122とする。該基準板用光学系122には、上述した反射ミラー1221が備わる。又、基準板137Zに関するレーザ光111dは、上記貫通穴162d、及び第1滑動機構133にて形成される隙間1511及び空間151を通り、反射ミラー1221へ導かれる。このように、本実施形態では、基準板用光学系122は、石定盤105上に設置され、従来のように石定盤を貫通してレーザ光が通過する構成を採っていない。したがって、従来発生したようなレーザ光の揺らぎ等の問題は生じないことから、従来に比べて高い精度にて測定面1aの形状測定を行うことができる。
又、本実施形態では、石定盤の下方に光学系を配置する必要がないことから、従来存在した、石定盤を載置する架台を除去することができる。これにより、装置全体の小型化も可能となる。但し、必要に応じて架台を追加することも自由である。
【0055】
尚、各基準面137Xa、137Ya、137Zaと、レーザ光111とを用いた測定機構部120による測定面1aの形状測定方法は、上記特許文献2に記載されるように、上記各基準面に反射した反射レーザ光の位相の変化を、上記各基準面へ照射するレーザ光と、上記反射レーザ光との干渉信号を計数することで検出するという、公知のレーザ測長方法を用いる。このようなレーザ測長方法は、例えば特開平4−1503号公報に開示されるように、上記基準面へ照射されるレーザ光をプリズム等の分岐部材にて参照光と測定光とに分け、かつ上記参照光と測定光との位相を90度ずらす。そして測定光を上記基準面へ照射し反射させ、戻って来た反射光と上記参照光とにおける上記位相のずれによる干渉光を電気的に検出して、得られた干渉縞信号から作成するリサージュ図形に基づき基準点と上記基準面との距離が測定される。このような測長方法が、上記検出部121a〜121dのそれぞれにて行われ、検出結果に基づき測定面1aの形状が測長演算装置にて演算される。
【0056】
以上説明したように構成される本実施形態の三次元形状測定装置101は、以下のように動作する。
測定面1aの形状測定のときには、被測定物用測定器102が測定面1aに接触し、XY−テーブル130がX軸方向及びY軸方向で任意の方向に移動する。よって、X−テーブル132上に載置されている測定物載置板138に保持される基準板137Zも同時に移動する。又、被測定物用測定器102と測定面1aとの接触力がほぼ一定になるようにZ−テーブル140をZ軸方向に位置制御しながら、被測定物用測定器102は測定面1aに沿って移動する。
又、XY−テーブル130の移動とともに、上述したように、各レーザ光111a〜111dが測定機構部120と各基準板137X、137Y、137Zとの間で往復して、測定面1aの表面形状が演算測定される。
【0057】
以上説明したように本実施形態の三次元形状測定装置101によれば、以下のような効果が得られる。
即ち、XY−テーブルについて、従来のコロ軸受けを排除し第1滑動機構133及び第2滑動機構134を採用したことから、上記コロ軸受けにおけるガタツキを防止するための、X軸方向及びY軸方向への与圧が不要となり、Y−テーブル131及びX−テーブル132においてX軸方向及びY軸方向への肉厚を薄くすることができる。よって、XY−テーブル130の内側に空間151を形成することが可能となり、該空間151に反射ミラー1221を配置することが可能となる。したがって、石定盤105上に反射ミラー1221を含む基準板用光学系122を配置することが可能となり、従来のような石定盤の貫通穴にレーザ光を通すという構成を排除することができる。したがって、石定盤下部からの上昇気流が無くなり、レーザ光の揺らぎを防ぐことができ、高精度な測定を実現することができる。
【0058】
又、第1滑動機構133及び第2滑動機構134を採用したことから、石定盤105とY−テーブル131との間、及びY−テーブル131とX−テーブル132との間に空間151を形成可能であり、XY−テーブル130の内側にY−テーブル131及びX−テーブル132の駆動源を設置することができる。したがって、装置全体の小型化を図ることができる。
【0059】
又、三次元形状測定装置101では、(1)Z−テーブル140とXY−テーブル130とを別設した構造を採った点、(2)分割部材160の上方にレーザ光発生部110を第1取付用部材161を介して取り付け、さらに、レーザ光発生部110の下方に測定機構部120を配置しかつ第1取付用部材161とは分離した第2取付用部材163を介して分割部材160に取り付けた点、及び(3)石定盤105上に基準板用光学系122を設けた点、の3点から、装置全体の小型化を図ることができる。
【0060】
又、一枚状の分割部材160にて、三次元形状測定装置101内の空間106を前部領域106aと後部領域106bとに2分したことで、レーザ光発生部110からの発熱による上昇気流の空気の揺らぎの発生を後部領域106b側のみとすることができ、空気の揺らぎから生じるレーザ光の揺らぎを防ぐことができる。よって、より高精度な測定を実現することができる。
【0061】
又、Z軸方向において測定機構部120の上方にレーザ光発生部110を配置し、かつ第1取付用部材161と第2取付用部材163とを分離したことで、第1取付用部材161から第2取付用部材163への熱伝導を低減できる。よって、測定機構部120を取り付ける第2取付用部材163における熱膨張による長さ変動や歪をなくすことができ、レーザ光軸ズレ等をなくすことができる。このように、測定機構部120の熱変形を極力小さく抑えることができ、より高精度な測定を実現することができる。
【0062】
又、石定盤105上に基準板用光学系122を設けたことから、石定盤105上の明るく広い場所に反射ミラー1221を配置することができ、よって、反射ミラー1221の角度調整作業が容易となり、正確な角度調整が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、光学部品や金型等の被測定物における被測定面を例えばナノメートルのオーダーの超高精度にて測定可能な三次元形状測定装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態における三次元形状測定装置の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示す三次元形状測定装置の正面図である。
【図3】図1に示す三次元形状測定装置のB−B部における断面図である。
【図4】図1に示すXY−テーブル辺りのX軸方向における断面図である。
【図5】図1に示す傾斜角度調整機構の断面図である。
【図6】図5に示す傾斜角度調整機構のD−D部における断面図である。
【図7】図1に示すY駆動機構、及びX駆動機構の詳細図である。
【図8】従来の三次元形状測定装置の構造を示す図である。
【図9】図8とは別のタイプの三次元形状測定装置の正面図である。
【図10】図9に示す従来の三次元形状測定装置の構造を示し、図9のE−E部における断面図である。
【図11】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルのY軸方向における断面図である。
【図12】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルのX軸方向における断面図である。
【図13】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルの駆動部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1…被測定物、1a…測定面、
101…三次元形状測定装置、105…石定盤、
106a…第1領域、106b…第2領域、
110…レーザ光発生部、111…レーザ光、122…基準板用光学系、
130…XY−テーブル、131…Y−テーブル、132…X−テーブル、
133…第1滑動機構、134…第2滑動機構、135…Y駆動機構、
136…X駆動機構、137Z…基準板、138…測定物載置板、
151…内側空間、160…分割部材、161…第1取付用部材、
163…第2取付用部材、170…傾斜角度調整機構、
1221…反射ミラー、1331…第1ガイドレール、1332…第1台座部材、
1341…第2ガイドレール、1342…第2台座部材、1511…隙間、
1512…空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品や金型等の被測定物における測定面の、例えば基準位置からの高さ情報等の位置情報を、例えばナノメートルのオーダーの超高精度にて測定可能な三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレンズ等の光学部品や、金型などの非球面物体の表面形状を、ナノメートルのオーダーの高精度にて測定するものとして、三次元形状測定装置の利用が広く知られている。
被測定物用測定器を有する三次元形状測定装置は、一般的に、上記被測定物用測定器を被測定物に接触させ、該接触力がほぼ一定になるように上記被測定物用測定器のZ方向位置を制御しつつ、上記被測定物用測定器を上記被測定物の測定面に沿って移動させて、上記被測定物用測定器と基準面との位置関係に基づき、上記測定面の表面形状を測定、演算するものである。このような測定装置の一つとして、レーザ測長器と基準平面ミラーとを利用した三次元形状測装置が知られており、測定を行うときの被測定物用測定器及び被測定物の動作方法として、大別して以下の2つの方法がある。
【0003】
第1の方法は、被測定物を固定して、被測定物用測定器をX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させる方法である。その代表例について図8を参照して説明する。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
図8は、従来の三次元形状測定装置の構造を示しており、従来の三次元形状測定装置50は、被測定物1を固定し、被測定物1の形状測定をする被測定物用測定器2をX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させて被測定物1の測定面1aの形状測定を行う装置であり、装置を覆うカバー3と、本体前面に設けられ開閉自在のドア4と、各種機構部材を載置する石定盤5と、石定盤5を載置する架台34とを備えている。石定盤5上には、石定盤5に固定された台板19が設置され、該台板19上にはXY−テーブル35が設置され、該XY−テーブル35上には取付パネル37が設置される。ここで、XY−テーブル35は、台板19上に設置されY軸方向に摺動して移動可能なY−テーブル21と、Y−テーブル21上に設置されY軸方向に直交するX軸方向に摺動して移動可能なX−テーブル24とを有する。取付パネル37には、レーザ光発生装置10と、該レーザ光発生装置10から発生したレーザ光14を誘導、分岐、検出する光学部品を有する測定機構12と、Z方向へ移動可能なZテーブル18が設置されたブラケット36とが設置されている。尚、図示を省略しているが、測定機構12は、測定面1aにおける測定点のX,Y,Z軸方向の各座標値を求めるため、レーザ光発生装置10から発生したレーザ光14を4つに分岐してそれぞれを誘導する光学系と、該光学系にて導かれたレーザ光に基づき上記各座標値を求める検出部とを有する。又、Zテーブル18の下部には、測定面1aに接触するスタイラスを有し測定面1aにおける測定点のZ軸方向における位置座標を求めるための上記被測定物用測定器2が設置されている。Zテーブル18の上方には、分岐された4つの内の一つのレーザ光14が照射される基準面7aを形成した基準板7が、石定盤5に設置されたブリッジ状の部材(不図示)に取り付けられている。上記基準板7へのレーザ光14の照射は、被測定物1の形状測定時に移動するXY−テーブル35自体のZ軸方向への変位量を補償する情報を得るためものである。
【0005】
このように構成される従来の三次元形状測定装置50による被測定物1の測定動作は、以下のように行われる。
被測定物用測定器2に備わる上記スタイラスが被測定物1の測定面1aに接触し、XY−テーブル35がX−Y平面上で任意の方向に移動する。このとき、上記スタイラスと測定面1aとの接触力がほぼ一定になるように、Zテーブル18はZ方向に位置制御される。さらに、XY−テーブル35の移動により上記スタイラスが測定面1aに沿って移動し、レーザ光発生装置10から発射されたレーザ光14を測定機構12により検出することで、被測定物用測定器2と基準面7aとのX、Y、及びZ軸方向における位置関係が求まり、該位置関係から測定面1aの表面形状が演算測定される。
【0006】
次に、第2の方法として、被測定物をX軸及びY軸方向に移動させ、被測定物用測定器をZ軸方向に移動させる方法がある。その代表例について、図9〜図13を参照して説明する(例えば、特許文献2参照。)。尚、図9〜図13において、図8に示す構成部分と同様の機能を有する構成部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0007】
図9は、別タイプの従来の三次元形状測定装置60の正面図であり、図10は、図9に示すE−E部における断面図である。尚、図10でY軸方向摺動部の図示は省略している。三次元形状測定装置60は、被測定物1がX軸及びY軸方向に移動し、被測定物用測定器2がZ軸方向に移動する装置であり、装置を覆うカバー3と、本体前面に開閉自在のドア4と、各種機構部材を載置する石定盤5と、石定盤5を載置する架台34で構成されている。
【0008】
図11は、図9に示すE−E部におけるXY−テーブル38の断面詳細図であり、図12は図10に示すF−F部におけるXY−テーブル38の断面詳細図である。尚、図11では、Y軸方向摺動部の図示は省略し、図12では、X軸方向摺動部の図示は省略している。図11及び図12において、XY−テーブル38は、石定盤5上に設置され、石定盤5に固定された台板19と、Y−テーブル21と、X−テーブル24と、保持台8とを有する。Y−テーブル21は、台板19の上にコロ軸受け39を介しY軸方向に摺動して移動可能であり、X−テーブル24は、Y−テーブル21上にコロ軸受け40を介してY軸方向に直交するX軸方向に摺動して移動可能であり、保持台8は、裏面側に基準面7aを形成している基準板7が取り付けられ、表面側に被測定物1を載置する板材にてなり、X−テーブル24上に載置される。
【0009】
又、三次元形状測定装置60では、コロ軸受け40を用いていることから、各テーブル21,24の剛性を確保するため、各テーブル21,24の肉厚を厚くする必要がある。よって、XY−テーブル38の内側に空間を形成するのは困難であり、XY−テーブル38の内側に各テーブル21,24の駆動機構を設置することはできない。よって、Y−テーブル21及びX−テーブル24のY軸方向及びX軸方向への移動は、図13に示すように、XY−テーブル38の外側に設置したステッピングモータ45を有するボールネジ機構46にて行われている。尚、ボールネジ機構46を構成するボールネジ46aの振動が直接にテーブル21,24に伝わらないように、ボールネジ46aに係合するナット部46bは、振動吸収部材として機能する板バネ47を介して各テーブル21,24と接続されている。
【0010】
尚、図8に示す三次元形状測定装置50では、レーザ光発生装置10、測定機構12、及び被測定物用測定器2を有するZテーブル18の全てが移動に際しうねりを生じるXY−テーブル35に設置されていることから、上記うねりの測定に供される基準板7は、固定され測定に関して変位しない装置本体に設置している。一方、図9等の三次元形状測定装置60では、レーザ光発生装置10、測定機構12、及びZテーブル18は、測定に関し変位しない石定盤5に設置していることから、移動に際しうねりを生じるXY−テーブル38に基準板7が設置される。
【0011】
図10に示すように、石定盤5上には、Z軸方向へ移動可能なZ−テーブル18が設置された門型部材41と、レーザ光発生装置10及びレーザ光14を誘導、分岐、検出する測定機構12を装着した取付パネル42とが載置されている。又、Z−テーブル18の下部には、被測定物用測定器2が設置されている。
【0012】
以上のように構成される従来の三次元形状測定装置60による被測定物1の測定動作は、以下のように行われる。
被測定物用測定器2のスタイラスを被測定物1の測定面1aに接触させ、XY−テーブル38をX−Y平面上で任意の方向に移動させる。このとき、XY−テーブル38上の保持台8の裏面に設けられ基準面7aを形成している基準板7も同時に移動する。又、被測定物用測定器2のスタイラスと測定面1aとの接触力がほぼ一定になるように、Z−テーブル18がZ方向に位置制御される。該位置制御に基づいて測定面1aのZ軸方向における変位量が測定され、さらに、レーザ光発生装置10から発射されたレーザ光14の、被測定物1のX−Y軸方向における移動に伴い測定機構12による検出結果に基づいて、被測定物1の表面形状が演算測定される。
【特許文献1】特開平5−87540号公報
【特許文献2】特開平10−170243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来の三次元形状測定装置50では、図8からも明らかなように、被測定物用測定器2をZ軸方向に駆動させるZ−テーブル18がXY−テーブル35から前部の測定空間側へ大きく突出している。よって、X軸、Y軸、Z軸の全方向に超高精度にて移動させるためには、XY−テーブル35の剛性を向上させる必要があり、XY−テーブル35を大きくせざるを得ない。結果的に、装置全体が大きくなってしまう。又、レーザ光発生装置10からの発熱による上昇気流による空気の揺らぎに起因して、レーザ光に揺らぎが生じる可能性があり、より高精度な測定を妨げかねない。
【0014】
又、上述した従来の三次元形状測定装置60では、被測定物1をXY−テーブル38上の保持台8に保持させたことで、被測定物用測定器2及びZ−テーブル18を、XY−テーブル38から切り離すことができ、三次元形状測定装置50における課題は解決され装置全体の小型化を図ることはできた。しかしながら、基準板7へレーザ光14を導くため、石定盤5の下方に反射ミラー15,16を設けたことから、反射ミラー設置用の空間を石定盤5との間に確保するための架台34が必要となり、装置全体の、特に下部のサイズの小型化を妨げている。又、石定盤5に設けたレーザ光14を通す孔5aを通して上昇気流が生じ、レーザ光14に揺らぎが生じ、三次元形状測定装置50の場合と同様に、より高精度な測定を妨げかねない。
【0015】
さらに又、石定盤5の下方に設置した反射ミラー15,16は、XY−テーブル38の保持台8の裏面に設けた基準板7にレーザ光14を照射し、基準板7にて反射したレーザ光を検出部が備わる測定機構12へ正確に戻す必要がある。よって、反射ミラー15,16の角度調整は、精度良く行う必要があるが、図からも明らかなように調整作業場所が狭く、調整作業性には改善の余地があった。
【0016】
尚、三次元形状測定装置60において、反射ミラー15,16を石定盤5上に設置して装置の小型化を実現する構成も考えられる。該構成を採るには、台板19上で基準板7の下方に、角度調整機構を付属した反射ミラー16用の設置用スペース44をY−テーブル21の内側部分に確保する必要がある。しかしながら、XY−テーブル38は、水平方向つまりX軸及びY軸方向へ与圧を付与することで摺動部となる軸受け部分のガタツキを抑えるコロ軸受け40を用いている。よって、台板19及びY−テーブル21では、内側への圧力によって保持台8における高平面度を劣化させない程度の剛性が要求され、台板19及びY−テーブル21における水平方向への肉厚は厚くせざるを得ない。したがって、測定精度の理由から設置用スペース44を確保するのは困難である。
【0017】
又、従来の三次元形状測定装置50,60では、レーザ光発生装置10、及びレーザ光を誘導、分岐、検出する測定機構12が同一の取付けパネル上に設置されていたため、レーザ光発生装置10からの発熱により、上記取付けパネル自体が熱変形したり、上記取付けパネル上の上記測定機構12が熱変形する可能性もあり、レーザ光の光軸ズレを生じ、より高精度な測定を妨げる可能性もあった。
本発明は、上述したような問題点を改善するためになされたもので、測定精度が良く小型化された三次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様の三次元形状測定装置は、レーザ光を発生させるレーザ光発生部と、
上記レーザ光を複数に分岐する光学系と、
定盤上に設置され互いに直交する第1方向及び第2方向に移動する測定テーブルと、
上記測定テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を上記分岐されたレーザ光の一部を用いて測定する検出部と、
上記測定テーブルの前記被測定物が載置される面と反対側の面に配置された基準板と、
上記光学系に備わり上記分岐されたレーザ光の他の一部を上記基準板に導く基準板用光学系とを備え、
上記基準板用光学系の上記基準板と対向する反射ミラーが、上記定盤と上記測定テーブルとの間の内側空間に配置されていることを特徴とする。
【0019】
又、上記測定テーブルは、当該測定テーブルを上記第1方向に滑動させる第1滑動機構と、上記第2方向に滑動させる第2滑動機構とを備え、
上記第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有し、
上記第2滑動機構は、上記第1ガイドレールと直交して平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有するように構成してもよい。
【0020】
又、2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記測定テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記反射ミラーの傾斜角度を上記測定テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えるようにしてもよい。
【0021】
又、上記定盤上に、上記測定テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割する分割部材をさらに備えるように構成してもよい。
【0022】
又、上記三次元形状測定装置は、以下のように構成することもできる。
定盤上に設置され平面上で互いに直交するX軸方向及びY軸方向に移動するXY−テーブルと、該XY−テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を測定する測定機構部とを備えた三次元形状測定装置であって、
上記XY−テーブルは、当該XY−テーブルの内側で上記定盤に対向して配置される基準板で、当該XY−テーブルの移動時における当該XY−テーブル自体のうねりを測定するための基準板を有し、
上記定盤上に設置されレーザ光を発生するレーザ光発生部と、
上記定盤上に設置され、上記レーザ光を上記基準板に導く基準板用光学系であって、上記定盤上で上記XY−テーブルの内側の空間にて上記基準板に対応して配置されて上記レーザ光を上記基準板に導く反射ミラーを有する基準板用光学系と、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記XY−テーブルは、上記定盤と当該XY−テーブルとの間に設置され上記定盤に対して当該XY−テーブルを上記X軸方向又は上記Y軸方向に滑動させ、かつ上記内側空間を形成する第1滑動機構を有し、該第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記XY−テーブルを支持しながら各第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有するように構成してもよい。
【0024】
上記XY−テーブルは、さらに、Y−テーブルと、X−テーブルと、Y駆動機構と、X駆動機構と、第2滑動機構とを有し、
上記Y−テーブルは、上記定盤上に上記第1滑動機構を介して設置され、上記XY−テーブルの上記内側空間に位置して当該Y−テーブルを上記Y軸方向に移動させる上記Y駆動機構を有し、
上記X−テーブルは、上記Y−テーブル上に上記第2滑動機構を介して設置され、当該X−テーブルを上記X軸方向に移動させる上記X駆動機構を有し、
上記第2滑動機構は、上記Y−テーブル上に平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記X−テーブルを支持しながら各第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有し、上記X−テーブルと上記Y−テーブルとの間に上記X駆動機構を配置させるための空間を形成する機構であるように構成してもよい。
【0025】
2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記XY−テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記内側空間に配置されている上記反射ミラーの傾斜角度を上記XY−テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えることもできる。
【0026】
上記定盤上に立設され、当該三次元形状測定装置内を、上記XY−テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割し上記レーザ光発生部から生じる熱による上記測定面の形状測定への影響を低減する分割部材をさらに備えることもできる。
【0027】
上記第2領域において、上記分割部材は、鉛直方向における上部にて上記レーザ光発生部を取り付ける第1取付用部材と、上記第1取付用部材とは分離され上記第1取付用部材の下方にて上記測定機構部を取り付ける第2取付用部材とを有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1態様における三次元形状測定装置によれば、基準板用光学系を定盤上に配置し、測定テーブルに設置されている基準板へ定盤上にてレーザ光を照射するように構成した。したがって、従来の装置における、上昇気流を生じる部分にレーザ光を通すという構成は不要となり、レーザ光に揺らぎが生じることはなくなり、測定面の形状測定精度を従来に比べて向上させることができる。又、基準板用光学系を定盤上に配置したことから、従来装置で必要であった架台が不要となる。よって、従来に比べて装置全体を小型化することが可能となる。
【0029】
又、第1ガイドレールと第1台座部材とを有する第1滑動機構を用いたことから、従来、XY−テーブルの摺動部分に用いていたコロ軸受けを用いる必要がなくなる。よって、コロ軸受けを用いるが故に必要であった水平方向への与圧が不要となることから、測定テーブルの剛性を従来のように高める必要が無く、測定テーブルの肉厚を従来に比べて薄くすることができる。したがって、測定テーブルの内側に、上記基準板用光学系に備わる反射ミラーを設置可能な空間を形成することが可能となり、上述したように、基準板用光学系を定盤上に配置することができることから、測定精度の向上、及び装置の小型化を図ることができる。
【0030】
又、上記第1滑動機構は、2本の第1ガイドレールを平行に配置した構成を有することから、各第1ガイドレール間には、隙間が形成される。よって、該隙間を利用して、測定テーブルの上記内側空間に配置された反射ミラーへレーザ光を導くことが可能となる。
【0031】
又、上記第1滑動機構を設けることで、測定テーブルを構成するY−テーブルと定盤との間に隙間を形成でき、さらに、上記第1滑動機構と同様に、2本の第2ガイドレールと第2台座部材を有する第2滑動機構を用いることで、測定テーブルを構成するY−テーブルとX−テーブルとの間にも隙間を形成することができる。よって、Y−テーブルと定盤との間の隙間を利用して、Y−テーブルを駆動するY駆動機構を測定テーブルの内側に設置することが可能となり、同様に、Y−テーブルとX−テーブルとの間の隙間を利用して、X−テーブルを駆動するX駆動機構を測定テーブルの内側に設置することが可能となる。よって、従来、測定テーブルの外側に駆動機構を設けていたのに比べて、装置全体の小型化を図ることができる。
【0032】
又、上述のように第1滑動機構を設けることで、各第1ガイドレール間には隙間が形成されることから、上記内側空間に配置されている上記反射ミラーの傾斜角度を調整する傾斜角度調整機構を、上記隙間を利用して設置することができる。よって、測定テーブルの外側から、つまり作業性の良好な状態で反射ミラーの傾斜角度調整を行うことができ、測定精度の向上、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
又、分割部材を定盤上に設置したことから、熱源となるレーザ光発生部を測定テーブルから分離でき、レーザ光発生部から生じた熱が測定面の形状測定に悪影響を与えるのを防止することができる。よって、従来に比べて測定精度の向上を図ることが可能となる。
【0034】
又、分割部材には、レーザ光発生部及び測定機構部が取り付けられるが、それぞれを取り付けるための取付用部材を別々の部材とした。これにより、レーザ光発生部から生じた熱が測定機構部へ伝導するのを防止することができる。よって、測定機構部において長さ変動や歪を起こすことがなく、従来に比べて測定精度の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施形態である三次元形状測定装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同じ構成部分については同じ符号を付している。
図1に示すように、本実施形態の三次元形状測定装置101は、図9に示す測定装置と同様に、平面上で互いに直交するX軸方向及びY軸方向に移動するXY−テーブル130に載置された被測定物1の測定面1aの形状を、測定面1aに探触子を接触させながら測定を行う測定装置である。尚、上記X軸方向は例えば第2方向に相当し、上記Y軸方向は例えば第1方向に相当する。第1方向及び第2方向は、相互に変更可能である。又、XY−テーブル130は、測定テーブルとしての機能を果たす一例である。又、本実施形態において、被測定物1としては例えばデジタルスチルカメラ用のレンズ等が該当し、三次元形状測定装置101は、測定面1aが最大約200mm四方までの大きさにてなる被測定物1を測定対象とし、又、測定面1aにおける接線方向と水平方向との交差角度θにて最大で約60度までの曲面を有する測定面1aをナノメートルオーダーの精度にて測定可能な装置である。
【0036】
図1及び図2に示すように、三次元形状測定装置101は、大きく分けて、測定面1aの形状測定に関係し以下に説明する、例えばXY−テーブル130等の各種構成部分と、上記各種構成部分の一部を載置する石定盤105とを備え、より詳しくは、当該測定装置101を覆うカバー103と、装置本体の操作面に相当する前面にてカバー103に設けられ開閉自在のドア104と、石定盤105とカバー103とで囲まれた空間106を、装置本体の操作側に相当する前部領域106aと、非操作側に相当する後部領域106bとに2分する、門型形状でなく一枚板状で、例えば石等の低熱膨張材料にてなる分割部材160とを備える。
【0037】
前部領域106aには、主に、XY−テーブル130と、該XY−テーブル130の上方に配置され測定面1aのZ軸座表値を測定するための機構であるZ−テーブル140とが備わる。一方、後部領域106bには、形状測定用のレーザ光111を発生するレーザ光発生部110と、測定機構部120とが備わる。これらの各構成部分について以下に説明する。
【0038】
図3及び図4に示すように、XY−テーブル130は、Y−テーブル131と、第1滑動機構133と、X−テーブル132と、第2滑動機構134と、Y駆動機構135と、X駆動機構136と、測定物載置板138とを有する。
【0039】
石定盤105上には、台板107が取り付けられ、該台板107上には、平板状にてなるY−テーブル131をY軸方向に滑動可能とする第1滑動機構133が設置されている。尚、台板107は、無くても良い。第1滑動機構133は、下記の第2滑動機構134と同一の機構にてなり、図4に示すように、Y軸方向に沿って平行に敷設された2本の第1ガイドレール1331と、それぞれの第1ガイドレール1331上に係合しY−テーブル131を支持する第1台座部材1332とを有す。第1台座部材1332は、第1ガイドレール1331を抱き抱えるような凹状にてなり、1本の第1ガイドレール1331上に所定間隔にて2つ取り付けられ、第1ガイドレール1331に沿って滑動する。よって合計4つの第1台座部材1332にてY−テーブル131は支持され、第1ガイドレール1331に沿ってY軸方向に滑動自在となる。
【0040】
このような構造にてなる第1滑動機構133は、従来のように水平方向に与圧を必要とするコロ軸受けではない。よって、従来に比べてY−テーブル131の剛性を考慮する必要がなくなり、Y−テーブル131の肉厚を薄くすることができる。又、上述のように第1滑動機構133は、第1ガイドレール1331上を第1台座部材1332が滑動するという構造にてなる。これらのことから、石定盤105、つまり台板107と、Y−テーブル131との間に第1滑動機構133を設置することで、台板107とY−テーブル131との間に、Z軸方向に空間151が形成可能となる。該空間151の形成により、Y駆動機構135及び後述の反射ミラー1221をXY−テーブル130の内側に配置することが可能となり、又、2本の第1ガイドレール1331の間の隙間1511には、上記反射ミラー1221へレーザ光111dを導く光路が形成可能である。又、詳細後述するが、反射ミラー1221には、反射ミラー1221の傾斜角度を調整するための傾斜角度調整機構170が取り付けられており、上記空間151は、傾斜角度調整機構170をもXY−テーブル130の内側に配置可能とする。
尚、Y−テーブル131の中央部分には、上記反射ミラー1221と入、反射されるレーザ光111dを通過可能とする開口131aが形成されている。
【0041】
上記Y駆動機構135は、図7に示すように、Y軸方向に延在し固定されたシャフト1351と、該シャフト1351に非接触にてシャフト1351に沿って滑動するモータ部1352とを有するリニアモータにて構成される。モータ部1352はY−テーブル131と固定され、シャフト1351は台板107に固定される。よって、シャフト1351に対してモータ部1352が移動することで、Y−テーブル131がY軸方向に移動する。
【0042】
上述のように構成されるY−テーブル131上には、上述の第1滑動機構133と同一の構成にてなる第2滑動機構134が設置される。つまり、第2滑動機構134は、図3に示すように、X軸方向に沿って平行に敷設された2本の第2ガイドレール1341と、それぞれの第2ガイドレール1341上に係合しX−テーブル132を支持する第2台座部材1342とを有す。
よって合計4つの第2台座部材1342にて、板状のX−テーブル132は支持され、第2ガイドレール1341に沿ってX軸方向に滑動自在となる。尚、X−テーブル132の中央部分には、上記反射ミラー1221にて反射されるレーザ光111dを通過可能とする開口132aが形成されている。
【0043】
このようにY−テーブル131とX−テーブル132との間に第2滑動機構134を設けたことで、第1滑動機構133を設けたことによる効果と同一の効果、即ち、X−テーブル132の肉厚を薄くすることができ、Y−テーブル131とX−テーブル132との間にZ軸方向に空間1512を形成でき、X駆動機構136をXY−テーブル130の内側に設置することができる。尚、X駆動機構136は、上述のY駆動機構135と同一の構成にてなり、X軸方向に延在し固定されたシャフト1361と、該シャフト1361に非接触にてシャフト1361に沿って滑動するモータ部1362とを有するリニアモータにて構成される。よって、シャフト1361に対してモータ部1362が移動することで、X−テーブル132がX軸方向に移動する。
【0044】
上記測定物載置板138は、X−テーブル132の上面132bに、円周上に等間隔にて例えば3箇所に配置された支持球1381を介して支持され、その上面138aの中央部に被測定物1が載置され保持される。又、上面138aには、XY−テーブル130のX軸方向及びY軸方向における移動量、つまり測定面1aのX軸方向及びY軸方向における移動量を検出するため、X軸方向に直交し鏡面にてなる基準面137Xaを有するX軸基準板137X、及びY軸方向に直交し鏡面にてなる基準面137Yaを有するY軸基準板137Yが取り付けられている。さらに、XY−テーブル130の移動時にXY−テーブル130に生じるZ軸方向におけるXY−テーブル130の、いわゆるうねり成分を検出するための基準板137Zが、被測定物1に対向するように、測定物載置板138の裏面138bの中央部に設けられている。基準板137Zは、レーザ光111dが照射され鏡面にてなる基準面137Zaを鉛直方向に直交するようにして、かつ基準面137aの向きを調整可能にして、上記裏面138bに突設した断面L字状のアーム材1382にて支持される。よって、XY−テーブル130がX,Y軸方向に移動することで、基準板137ZもX,Y軸方向に移動する。
各基準板137X、137Y、137Zの基準面137Xa、137Ya、137Zaは、平坦度が0.01ミクロンオーダーにてなる。
【0045】
上記Z−テーブル140は、上述のXY−テーブル130の上方で、Z軸方向に沿って移動可能にして上記分割部材160に取り付けられ、又、Z−テーブル140の下部には、測定面1aに接触するスタイラスを有する探触子の鉛直方向における微動を検出する、即ち、測定面1aのZ軸方向における形状を検出する被測定物用測定器102が設けられている。このようなZ−テーブル140は、被測定物用測定器102のスタイラスが測定面1aにほぼ一定の接触力にて接触するように、Z軸方向に位置制御される。
【0046】
次に上記傾斜角度調整機構170について説明する。図5に示すように、傾斜角度調整機構170は、可動なミラー取付ブロック171と、上記台板107に固定される延長用ブロック172と、調整部173とを有する。ミラー取付ブロック171は、Z軸方向に対して約45度の角度にて傾斜したテーパ部1711に上記反射ミラー1221を取り付けた部材であり、上述のようにXY−テーブル130の内側空間151に位置する。延長用ブロック172は、内側空間151に配置されているミラー取付ブロック171のテーパ部1711の傾斜角度、即ち反射ミラー1221の傾斜角度をXY−テーブル130の外側から変更可能とするための部材であり、図1及び図4に示すように、敷設される2本の第1ガイドレール1331の間に、第1ガイドレール1331に沿って配置されて台板107に固定される。又、延長用ブロック172には、調整部173が取り付けられる。調整部173は、一つの支持球1731と、1本の引張部材1732と、2本の調整用ネジ1733,1734とを有する。引張部材1732は、固定されている延長用ブロック172に対して、支持球1731を支点及び中心として首振り可能にしてミラー取付ブロック171を保持する部材であり、バネ1732aを有しミラー取付ブロック171を延長用ブロック172側へバネ1732aの復元力にて引っ張る。又、引張部材1732は、支持球1731、調整用ネジ1733,1734にてなる三角形の重心位置に配置されている。調整用ネジ1733,1734は、延長用ブロック172に螺合し、引張部材1732にて延長用ブロック172側へ引っ張られているミラー取付ブロック171に先端を当接させ、そのねじ込み量を調整することで上記首振りを行わせ反射ミラー1221の角度を調整するためのネジである。
【0047】
このように構成される傾斜角度調整機構170について、反射ミラー1221の角度調整は、調整用ネジ1733,1734の少なくとも一方を、XY−テーブル130の外側から回転させてY軸方向に前後させることで、ミラー取付ブロック171を支持球1731を支点にし、首振り動作、つまり、Z軸を回転中心したあおり、又はX軸を回転中心したあおりの動作をさせることで行う。尚、ミラー取付ブロック171つまり反射ミラー1221は、調整用ネジ1733,1734に設けた固定用ナット1735による固定、及びバネ1732aの復元力により、調整位置を保持することができる。
【0048】
尚、本実施形態の三次元形状測定装置101では、台板107上には第1滑動機構133を介してY−テーブル131を配置したが、該構成に限定されず、台板107上に第2滑動機構134を介してX−テーブル132を配置し、該X−テーブル132上に第1滑動機構133を介してY−テーブル131を配置してもよい。
【0049】
次に、分割部材160は、前部領域106aと後部領域106bとを分割し、該分割により、後部領域106bにて生じる熱が前部領域106aに影響を与えるのを抑制する部材である。このように分割部材160は、測定面1aの測定精度の向上に寄与することができる。又、分割部材160には、以下に説明する各レーザ光111a〜111dを、後部領域106bと前部領域106aとの間で往復させるための4つの貫通穴162a〜162dが設けられている。
【0050】
後部領域106bに備わる上記レーザ光発生部110は、形状測定用のレーザ光111として、本実施形態では一つの周波数にて発振するHe−Ne周波数安定化レーザを発生する。尚、使用されるレーザ光は、二つの周波数を有するものであってもよい。該レーザ光発生部110は、分割部材160に取り付けられた第1取付用部材161に設置される。
【0051】
後部領域106bに備わる上記測定機構部120は、上記レーザ光111を4つに分岐してそれぞれを誘導する光学系1201a〜1201dと、該光学系1201a〜1201dにて導かれたレーザ光111a〜111dに基づいて、測定面1aの測定点におけるX軸、Y軸、及びZ軸方向における各座標値を求めるための検出部121a〜121dとを有する。測定機構部120は、分割部材160に取り付けられた第1取付用部材161とは分離され、かつZ軸方向においてレーザ光発生部110よりも下方にて分割部材160に取り付けられた第2取付用部材163に設置される。
【0052】
熱源となるレーザ光発生部110を、上述のように測定機構部120より上方に配置し、かつ第1取付用部材161と第2取付用部材163とを分離したことにより、レーザ光発生部110にて生じた熱の測定機構部120への影響を低減することができる。したがって、測定面1aの形状測定精度を従来に比べて向上させることができる。
【0053】
上記検出部121aは、レーザ光111aに関し、被測定物用測定器102へ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるZ軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121bは、レーザ光111bに関し、X軸基準板137Xへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるX軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121cは、レーザ光111cに関し、Y軸基準板137Yへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるY軸座標値を検出するための部分である。上記検出部121dは、レーザ光111dに関し、基準板137Zへ照射されたレーザ光及び反射した反射レーザ光に基づき測定面1aの測定点におけるZ軸方向における上記うねり成分を検出するための部分である。
【0054】
尚、基準板137Zと測定機構部120との間における上記レーザ光111dに関する光学系1201dを基準板用光学系122とする。該基準板用光学系122には、上述した反射ミラー1221が備わる。又、基準板137Zに関するレーザ光111dは、上記貫通穴162d、及び第1滑動機構133にて形成される隙間1511及び空間151を通り、反射ミラー1221へ導かれる。このように、本実施形態では、基準板用光学系122は、石定盤105上に設置され、従来のように石定盤を貫通してレーザ光が通過する構成を採っていない。したがって、従来発生したようなレーザ光の揺らぎ等の問題は生じないことから、従来に比べて高い精度にて測定面1aの形状測定を行うことができる。
又、本実施形態では、石定盤の下方に光学系を配置する必要がないことから、従来存在した、石定盤を載置する架台を除去することができる。これにより、装置全体の小型化も可能となる。但し、必要に応じて架台を追加することも自由である。
【0055】
尚、各基準面137Xa、137Ya、137Zaと、レーザ光111とを用いた測定機構部120による測定面1aの形状測定方法は、上記特許文献2に記載されるように、上記各基準面に反射した反射レーザ光の位相の変化を、上記各基準面へ照射するレーザ光と、上記反射レーザ光との干渉信号を計数することで検出するという、公知のレーザ測長方法を用いる。このようなレーザ測長方法は、例えば特開平4−1503号公報に開示されるように、上記基準面へ照射されるレーザ光をプリズム等の分岐部材にて参照光と測定光とに分け、かつ上記参照光と測定光との位相を90度ずらす。そして測定光を上記基準面へ照射し反射させ、戻って来た反射光と上記参照光とにおける上記位相のずれによる干渉光を電気的に検出して、得られた干渉縞信号から作成するリサージュ図形に基づき基準点と上記基準面との距離が測定される。このような測長方法が、上記検出部121a〜121dのそれぞれにて行われ、検出結果に基づき測定面1aの形状が測長演算装置にて演算される。
【0056】
以上説明したように構成される本実施形態の三次元形状測定装置101は、以下のように動作する。
測定面1aの形状測定のときには、被測定物用測定器102が測定面1aに接触し、XY−テーブル130がX軸方向及びY軸方向で任意の方向に移動する。よって、X−テーブル132上に載置されている測定物載置板138に保持される基準板137Zも同時に移動する。又、被測定物用測定器102と測定面1aとの接触力がほぼ一定になるようにZ−テーブル140をZ軸方向に位置制御しながら、被測定物用測定器102は測定面1aに沿って移動する。
又、XY−テーブル130の移動とともに、上述したように、各レーザ光111a〜111dが測定機構部120と各基準板137X、137Y、137Zとの間で往復して、測定面1aの表面形状が演算測定される。
【0057】
以上説明したように本実施形態の三次元形状測定装置101によれば、以下のような効果が得られる。
即ち、XY−テーブルについて、従来のコロ軸受けを排除し第1滑動機構133及び第2滑動機構134を採用したことから、上記コロ軸受けにおけるガタツキを防止するための、X軸方向及びY軸方向への与圧が不要となり、Y−テーブル131及びX−テーブル132においてX軸方向及びY軸方向への肉厚を薄くすることができる。よって、XY−テーブル130の内側に空間151を形成することが可能となり、該空間151に反射ミラー1221を配置することが可能となる。したがって、石定盤105上に反射ミラー1221を含む基準板用光学系122を配置することが可能となり、従来のような石定盤の貫通穴にレーザ光を通すという構成を排除することができる。したがって、石定盤下部からの上昇気流が無くなり、レーザ光の揺らぎを防ぐことができ、高精度な測定を実現することができる。
【0058】
又、第1滑動機構133及び第2滑動機構134を採用したことから、石定盤105とY−テーブル131との間、及びY−テーブル131とX−テーブル132との間に空間151を形成可能であり、XY−テーブル130の内側にY−テーブル131及びX−テーブル132の駆動源を設置することができる。したがって、装置全体の小型化を図ることができる。
【0059】
又、三次元形状測定装置101では、(1)Z−テーブル140とXY−テーブル130とを別設した構造を採った点、(2)分割部材160の上方にレーザ光発生部110を第1取付用部材161を介して取り付け、さらに、レーザ光発生部110の下方に測定機構部120を配置しかつ第1取付用部材161とは分離した第2取付用部材163を介して分割部材160に取り付けた点、及び(3)石定盤105上に基準板用光学系122を設けた点、の3点から、装置全体の小型化を図ることができる。
【0060】
又、一枚状の分割部材160にて、三次元形状測定装置101内の空間106を前部領域106aと後部領域106bとに2分したことで、レーザ光発生部110からの発熱による上昇気流の空気の揺らぎの発生を後部領域106b側のみとすることができ、空気の揺らぎから生じるレーザ光の揺らぎを防ぐことができる。よって、より高精度な測定を実現することができる。
【0061】
又、Z軸方向において測定機構部120の上方にレーザ光発生部110を配置し、かつ第1取付用部材161と第2取付用部材163とを分離したことで、第1取付用部材161から第2取付用部材163への熱伝導を低減できる。よって、測定機構部120を取り付ける第2取付用部材163における熱膨張による長さ変動や歪をなくすことができ、レーザ光軸ズレ等をなくすことができる。このように、測定機構部120の熱変形を極力小さく抑えることができ、より高精度な測定を実現することができる。
【0062】
又、石定盤105上に基準板用光学系122を設けたことから、石定盤105上の明るく広い場所に反射ミラー1221を配置することができ、よって、反射ミラー1221の角度調整作業が容易となり、正確な角度調整が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、光学部品や金型等の被測定物における被測定面を例えばナノメートルのオーダーの超高精度にて測定可能な三次元形状測定装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態における三次元形状測定装置の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示す三次元形状測定装置の正面図である。
【図3】図1に示す三次元形状測定装置のB−B部における断面図である。
【図4】図1に示すXY−テーブル辺りのX軸方向における断面図である。
【図5】図1に示す傾斜角度調整機構の断面図である。
【図6】図5に示す傾斜角度調整機構のD−D部における断面図である。
【図7】図1に示すY駆動機構、及びX駆動機構の詳細図である。
【図8】従来の三次元形状測定装置の構造を示す図である。
【図9】図8とは別のタイプの三次元形状測定装置の正面図である。
【図10】図9に示す従来の三次元形状測定装置の構造を示し、図9のE−E部における断面図である。
【図11】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルのY軸方向における断面図である。
【図12】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルのX軸方向における断面図である。
【図13】図9に示す従来の三次元形状測定装置に備わるXY−テーブルの駆動部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1…被測定物、1a…測定面、
101…三次元形状測定装置、105…石定盤、
106a…第1領域、106b…第2領域、
110…レーザ光発生部、111…レーザ光、122…基準板用光学系、
130…XY−テーブル、131…Y−テーブル、132…X−テーブル、
133…第1滑動機構、134…第2滑動機構、135…Y駆動機構、
136…X駆動機構、137Z…基準板、138…測定物載置板、
151…内側空間、160…分割部材、161…第1取付用部材、
163…第2取付用部材、170…傾斜角度調整機構、
1221…反射ミラー、1331…第1ガイドレール、1332…第1台座部材、
1341…第2ガイドレール、1342…第2台座部材、1511…隙間、
1512…空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生部と、
上記レーザ光を複数に分岐する光学系と、
定盤上に設置され互いに直交する第1方向及び第2方向に移動する測定テーブルと、
上記測定テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を上記分岐されたレーザ光の一部を用いて測定する検出部と、
上記測定テーブルの前記被測定物が載置される面と反対側の面に配置された基準板と、
上記光学系に備わり上記分岐されたレーザ光の他の一部を上記基準板に導く基準板用光学系とを備え、
上記基準板用光学系の上記基準板と対向する反射ミラーが、上記定盤と上記測定テーブルとの間の内側空間に配置されていることを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項2】
上記測定テーブルは、当該測定テーブルを上記第1方向に滑動させる第1滑動機構と、上記第2方向に滑動させる第2滑動機構とを備え、
上記第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有し、
上記第2滑動機構は、上記第1ガイドレールと直交して平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有する、請求項1記載の三次元形状測定装置。
【請求項3】
2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記測定テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記反射ミラーの傾斜角度を上記測定テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えた、請求項2記載の三次元形状測定装置。
【請求項4】
上記定盤上に、上記測定テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割する分割部材をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の三次元形状測定装置。
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生部と、
上記レーザ光を複数に分岐する光学系と、
定盤上に設置され互いに直交する第1方向及び第2方向に移動する測定テーブルと、
上記測定テーブルに載置された被測定物の測定面の形状を上記分岐されたレーザ光の一部を用いて測定する検出部と、
上記測定テーブルの前記被測定物が載置される面と反対側の面に配置された基準板と、
上記光学系に備わり上記分岐されたレーザ光の他の一部を上記基準板に導く基準板用光学系とを備え、
上記基準板用光学系の上記基準板と対向する反射ミラーが、上記定盤と上記測定テーブルとの間の内側空間に配置されていることを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項2】
上記測定テーブルは、当該測定テーブルを上記第1方向に滑動させる第1滑動機構と、上記第2方向に滑動させる第2滑動機構とを備え、
上記第1滑動機構は、上記基準板への上記レーザ光が通過する隙間を形成する2本の平行に敷設された第1ガイドレールと、各第1ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第1ガイドレールに沿って滑動する第1台座部材とを有し、
上記第2滑動機構は、上記第1ガイドレールと直交して平行に敷設される2本の第2ガイドレールと、各第2ガイドレール上にそれぞれ係合して上記第2ガイドレールに沿って滑動する第2台座部材とを有する、請求項1記載の三次元形状測定装置。
【請求項3】
2本の平行に敷設された上記第1ガイドレール間を上記測定テーブルの外側から上記内側空間まで延在し、上記反射ミラーの傾斜角度を上記測定テーブルの外側から調整する傾斜角度調整機構をさらに備えた、請求項2記載の三次元形状測定装置。
【請求項4】
上記定盤上に、上記測定テーブルを有する第1領域と上記レーザ光発生部を有する第2領域とに分割する分割部材をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の三次元形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−242795(P2006−242795A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60052(P2005−60052)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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