説明

三次元磁界センサおよびその製造方法

【課題】構成が簡単で、製造コストを低減できる三次元磁界センサを実現する。
【解決手段】三次元磁界センサ1は、平面である素子配置面40aを有する基板40と、基板40の素子配置面40a側に配置されて基板40と一体化されたMR素子10,20,30を備えている。MR素子10は、磁化固定層11、非磁性層12および自由層13を有し、MR素子20は、磁化固定層21、非磁性層22および自由層23を有し、MR素子30は、磁化固定層31、非磁性層32および自由層33を有している。自由層13,23,33の磁化の方向は、外部磁界Hの方向に応じて変化する。磁化固定層11の磁化の方向は、素子配置面40aに平行なX方向に固定されている。磁化固定層21の磁化の方向は、素子配置面40aに平行であってX方向に直交するY方向に固定されている。磁化固定層31の磁化の方向は、素子配置面40aに垂直なZ方向に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部磁界の三次元的な方向を検出するための三次元磁界センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地磁気の三次元的な方向を検出する等の用途で、外部磁界の三次元的な方向を検出するための三次元磁界センサが利用されている。一般的に、三次元磁界センサは、それぞれ外部磁界の直交する3方向の成分の強度を検出する3つの検出素子を備えている。従来、三次元磁界センサを構成するにあたっては、3つの検出素子が感度を有する方向を互いに直交する3方向に設定する必要があるため、3つの検出素子の配置等に工夫が必要であった。三次元磁界センサを構成するための技術としては、以下のように、種々のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、1つの基板に対して、基板の面に平行なX軸方向の地磁気成分を検出するホール素子を内蔵した磁気センサモジュールと、基板の面に平行で且つX軸方向に対し直交するY軸方向の地磁気成分を検出するホール素子を内蔵した磁気センサモジュールとをそれぞれ側面実装し、基板の面に垂直なZ軸方向の地磁気成分を検出するホール素子をベア実装する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、基板に楔型溝を形成し、基板の表面上に、X軸方向の磁界を検出する磁気抵抗素子とY軸方向の磁界を検出する磁気抵抗素子とを配置し、楔型溝の斜面上にZ軸方向の磁界を検出する磁気抵抗素子を配置する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3には、複数のホール素子を有する半導体チップに対して、磁力線の方向を変える磁場コンセントレータを積層して、外部磁場の3方向の成分を検出できるようにした技術が記載されている。
【0006】
特許文献4には、同一基板上に、Z軸方向に磁界の感知軸を有するホール素子と、X軸方向に磁界の感知軸を有する磁気抵抗効果素子と、Y軸方向に磁界の感知軸を有する磁気抵抗効果素子とを配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4293922号公報
【特許文献2】特開2007−256293号公報
【特許文献3】特開2002−71381号公報
【特許文献4】特開2006−275764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の特許文献1ないし4に記載された各技術によれば、三次元磁界センサを構成することが可能である。しかし、各技術には、それぞれ、以下のような問題点がある。
【0009】
特許文献1に記載された技術では、基板に対して2つの磁気センサモジュールを側面実装するのに手間がかかり、三次元磁界センサの製造コストが増大するという問題点がある。
【0010】
特許文献2に記載された技術では、基板に楔型溝を形成したり、楔型溝の斜面上に磁気抵抗素子を配置したりするのに手間がかかり、三次元磁界センサの製造コストが増大するという問題点がある。
【0011】
特許文献3に記載された技術では、複数のホール素子を有する半導体チップに対して磁場コンセントレータを積層する工程が必要になるため、三次元磁界センサの製造コストが増大するという問題点がある。
【0012】
特許文献4に記載された技術では、半導体素子であるホール素子の形成工程が、2つの磁気抵抗効果素子の形成工程と大きく異なることから、三次元磁界センサの製造コストが増大するという問題点がある。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、構成が簡単で、製造コストを低減できるようにした三次元磁界センサおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の三次元磁界センサは、外部磁界の三次元的な方向を検出するためのものである。この三次元磁界センサは、平面である素子配置面を有する基板と、この基板の素子配置面側に配置されて基板と一体化された第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子とを備えている。第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子は、いずれも、素子配置面に対して垂直な方向に積層された磁化固定層、非磁性層および自由層を有している。第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子のいずれにおいても、非磁性層は磁化固定層と自由層の間に配置され、自由層の磁化の方向は外部磁界の方向に応じて変化する。
【0015】
第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、素子配置面に平行な第1の方向に固定されている。第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、素子配置面に平行であって第1の方向とは異なる第2の方向に固定されている。第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、素子配置面に垂直な第3の方向に固定されている。第1の磁気抵抗効果素子は外部磁界の第1の方向の成分の強度を検出し、第2の磁気抵抗効果素子は外部磁界の第2の方向の成分の強度を検出し、第3の磁気抵抗効果素子は外部磁界の第3の方向の成分の強度を検出する。
【0016】
本発明の三次元磁界センサにおいて、第2の方向は、第1の方向に対して直交していてもよい。また、本発明の三次元磁界センサは、更に、第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子の出力に基づいて、外部磁界の三次元的な方向を表すデータを生成する演算回路を備えていてもよい。
【0017】
また、本発明の三次元磁界センサにおいて、第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層、非磁性層および自由層の各々の材料は、第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層、非磁性層および自由層の各々の材料と同じであってもよい。
【0018】
また、本発明の三次元磁界センサにおいて、第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層は、規則合金、多層膜よりなる人工格子、およびアモルファス合金のうちの1つ以上を含んでいてもよい。また、第3の磁気抵抗効果素子の自由層は、第3の方向についての保磁力が、第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層よりも小さいものであってもよい。
【0019】
本発明の三次元磁界センサの製造方法は、第1の磁気抵抗効果素子を形成する工程と、第2の磁気抵抗効果素子を形成する工程と、第3の磁気抵抗効果素子を形成する工程とを備えている。第1の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となる第1の膜、第1の磁気抵抗効果素子の非磁性層および第1の磁気抵抗効果素子の自由層を含む第1の積層体を形成する工程と、第1の膜が第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となるように、第1の膜の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。第2の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となる第2の膜、第2の磁気抵抗効果素子の非磁性層および第2の磁気抵抗効果素子の自由層を含む第2の積層体を形成する工程と、第2の膜が第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となるように、第2の膜の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。第1の積層体を形成する工程と第2の積層体を形成する工程は、同時に行われる。第1の膜の磁化の方向を固定する工程と第2の膜の磁化の方向を固定する工程は、別々に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の三次元磁界センサおよびその製造方法では、基板の素子配置面側に、いずれも素子配置面に対して垂直な方向に積層された磁化固定層、非磁性層および自由層を有する第1ないし第3の磁気抵抗効果素子が配置されている。このように、本発明の三次元磁界センサの構成は、比較的簡単である。また、第1ないし第3の磁気抵抗効果素子のそれぞれの形成工程は、ホール素子と磁気抵抗効果素子の形成工程の違いほど大きく異なることはない。従って、本発明の三次元磁界センサの製造は、比較的容易である。これらのことから、本発明によれば、構成が簡単で、製造コストを低減できるようにした三次元磁界センサを実現することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の三次元磁界センサの製造方法によれば、更に、第1の積層体を形成する工程と第2の積層体を形成する工程が同時に行われることから、三次元磁界センサの製造コストをより低減することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る三次元磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る三次元磁界センサの構成を示す平面図である。
【図3】図2における3−3線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における第1および第2の磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における第3の磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る三次元磁界センサの製造方法における一工程を示す説明図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図8】図7に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図9】図8に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図10】図9に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図12】図11に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る三次元磁界センサの回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る三次元磁界センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る三次元磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。
【0024】
図1に示したように、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1は、平面である素子配置面40aを有する基板40と、この基板40の素子配置面40a側に配置されて基板40と一体化された第1の磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)10、第2のMR素子20および第3のMR素子30を備えている。MR素子10は、素子配置面40aに対して垂直な方向に積層された磁化固定層11、非磁性層12および自由層13を有している。MR素子20は、素子配置面40aに対して垂直な方向に積層された磁化固定層21、非磁性層22および自由層23を有している。MR素子30は、素子配置面40aに対して垂直な方向に積層された磁化固定層31、非磁性層32および自由層33を有している。
【0025】
MR素子10,20,30のいずれにおいても、非磁性層12,22,32は磁化固定層11,21,31と自由層13,23,33の間に配置されている。また、自由層13,23,33の磁化の方向は、外部磁界Hの方向に応じて変化する。
【0026】
図1には、磁化固定層11,21,31と自由層13,23,33のうち、磁化固定層11,21,31の方が素子配置面40aに近い位置に配置された例を示している。しかし、MR素子10,20,30のうちの1つ以上において、自由層の方が素子配置面40aに近い位置に配置されていてもよい。
【0027】
MR素子10の磁化固定層11の磁化の方向は、素子配置面40aに平行な第1の方向に固定されている。MR素子20の磁化固定層21の磁化の方向は、素子配置面40aに平行であって第1の方向とは異なる第2の方向に固定されている。MR素子30の磁化固定層31の磁化の方向は、素子配置面40aに垂直な第3の方向に固定されている。
【0028】
第2の方向は、第1の方向に対して直交していることが好ましい。以下、第2の方向が第1の方向に対して直交しているものとし、第1の方向、第2の方向、第3の方向をそれぞれX方向、Y方向、Z方向と定義する。また、外部磁界HのX方向の成分の強度、Y方向の成分の強度、Z方向の成分の強度を、それぞれ記号H,H,Hで表す。MR素子10は強度Hを検出し、MR素子20は強度Hを検出し、MR素子30は強度Hを検出する。なお、図1において、記号PXYで示す平面はXY平面であり、記号PXZで示す平面はXZ平面であり、記号PYZで示す平面はYZ平面である。
【0029】
MR素子10,20,30は、例えばスピンバルブ型GMR(Giant Magnetoresistive)素子またはTMR(Tunneling Magnetoresistive)素子である。非磁性層12,22,32は、スピンバルブ型GMR素子においては非磁性導電層であり、TMR素子においてはトンネルバリア層である。一般的には、トンネルバリア層は、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等の絶縁材料によって形成された絶縁層である。MR素子20の磁化固定層21、非磁性層22および自由層23の各々の材料は、MR素子10の磁化固定層11、非磁性層12および自由層13の各々の材料と同じであってもよい。MR素子10,20,30には、それぞれ、磁界強度検出用の電流(以下、センス電流という。)が、MR素子を構成する各層の面と交差する方向、例えばMR素子を構成する各層の面に対して垂直な方向に流される。
【0030】
MR素子10では強度Hに応じて抵抗値が変化し、MR素子20では強度Hに応じて抵抗値が変化し、MR素子30では強度Hに応じて抵抗値が変化する。従って、MR素子10,20,30にそれぞれ一定のセンス電流を供給したとき、MR素子10の両端間の電位差は強度Hに応じて変化し、MR素子20の両端間の電位差は強度Hに応じて変化し、MR素子30の両端間の電位差は強度Hに応じて変化する。このようにして、MR素子10,20,30によって、それぞれ強度H,H,Hを検出することができる。MR素子10,20,30の各出力は、例えばMR素子10,20,30の各々の両端間の電位差とすることができる。
【0031】
次に、図2および図3を参照して、三次元磁界センサ1の具体的な構成の一例について説明する。図2は、三次元磁界センサ1の構成を示す平面図である。図3は、図2における3−3線断面図である。図3は、三次元磁界センサ1のうちのMR素子10の周辺の部分の構成を示しているが、MR素子20,30のそれぞれの周辺の部分の構成も、図3と同様である。図2および図3に示した例では、基板40は、Si等の半導体よりなる半導体基板41と、この半導体基板41の上面上に形成された絶縁層42とを有している。絶縁層42の上面は、平面である素子配置面40aになっている。なお、基板40は、半導体基板41と絶縁層42を有するものに限らず、例えば絶縁基板のみによって構成されていてもよい。
【0032】
図2および図3に示した例では、三次元磁界センサ1は、基板40の素子配置面40a上に配置された下部リード15,25,35と、素子配置面40a上において下部リード15,25,35の周囲に配置された絶縁層43を備えている。MR素子10は下部リード15の上に配置され、MR素子20は下部リード25の上に配置され、MR素子30は下部リード35の上に配置されている。三次元磁界センサ1は、更に、下部リード15,25,35および絶縁層43の上においてMR素子10,20,30の周囲に配置された絶縁層44を備えている。
【0033】
三次元磁界センサ1は、更に、MR素子10および絶縁層44の上に配置された上部リード16と、MR素子20および絶縁層44の上に配置された上部リード26と、MR素子30および絶縁層44の上に配置された上部リード36とを備えている。三次元磁界センサ1は、更に、上部リード16,26,36および絶縁層44を覆う、絶縁材料よりなる保護膜45を備えている。
【0034】
三次元磁界センサ1は、更に、保護膜45と絶縁層44を貫通して下部リード15,25,35の上面に達する3つのコンタクトホール46Aと、保護膜45を貫通して上部リード16,26,36の上面に達する3つのコンタクトホール46Bとを備えている。
【0035】
三次元磁界センサ1は、更に、下部リード15上のコンタクトホール46Aを通過して下部リード15に接続された端子17と、下部リード25上のコンタクトホール46Aを通過して下部リード25に接続された端子27と、下部リード35上のコンタクトホール46Aを通過して下部リード35に接続された端子37とを備えている。
【0036】
三次元磁界センサ1は、更に、上部リード16上のコンタクトホール46Bを通過して上部リード16に接続された端子18と、上部リード26上のコンタクトホール46Bを通過して上部リード26に接続された端子28と、上部リード36上のコンタクトホール46Bを通過して上部リード36に接続された端子38とを備えている。
【0037】
端子17,27,37,18,28,38は、それぞれ、保護膜45上に配置されたパッドを含んでいる。下部リード15,25,35、上部リード16,26,35および端子17,27,37,18,28,38は、いずれも導電材料によって形成されている。
【0038】
MR素子10には、下部リード15、上部リード16および端子17,18を介してセンス電流が供給される。MR素子20には、下部リード25、上部リード26および端子27,28を介してセンス電流が供給される。MR素子30には、下部リード35、上部リード36および端子37,38を介してセンス電流が供給される。
【0039】
なお、三次元磁界センサ1の具体的な構成は、図2および図3に示したものに限られない。例えば、下部リード15,25,35に接続された端子17,27,37は、基板40を貫通すると共に、基板40の下面に配置されたパッドを含んでいてもよい。
【0040】
次に、図4を参照して、MR素子10,20の構成の一例について説明する。図4は、MR素子10,20の構成を示す断面図である。図4に示した例では、MR素子10は、磁化固定層11、非磁性層12および自由層13の他に、反強磁性材料よりなる反強磁性層14を有している。そして、反強磁性層14の上に、磁化固定層11、非磁性層12および自由層13が順に積層されている。反強磁性層14は、磁化固定層11との交換結合により、磁化固定層11の磁化の方向を固定する層である。
【0041】
また、この例では、磁化固定層11は、反強磁性層14の上に順に積層されたアウター層111、非磁性中間層112およびインナー層113を有し、いわゆるシンセティック固定層になっている。非磁性層12は、インナー層113の上に配置されている。アウター層111とインナー層113は、それぞれ強磁性層である。アウター層111は、反強磁性層14との交換結合により、磁化の方向が固定されている。非磁性中間層112は、例えば、Ru、Rh、Ir、Re、Cr、ZrおよびCuからなる群のうち少なくとも1種を含む非磁性材料により構成されている。非磁性中間層112は、アウター層111とインナー層113の間に反強磁性交換結合を生じさせ、アウター層111の磁化の方向とインナー層113の磁化の方向を互いに反対方向に固定する。MR素子10では、インナー層113の磁化の方向がX方向に固定されている。
【0042】
MR素子20は、MR素子10と同様の構成であり、磁化固定層21、非磁性層22および自由層23の他に反強磁性層24を有している、そして、反強磁性層24の上に、磁化固定層21、非磁性層22および自由層23が順に積層されている。磁化固定層21は、反強磁性層24の上に順に積層されたアウター層211、非磁性中間層212およびインナー層213を有している。MR素子20では、インナー層213の磁化の方向がY方向に固定されている。
【0043】
なお、MR素子10,20の構成は、図4に示したものに限られない。例えば、MR素子10,20が反強磁性層14,24を有さずに、磁化固定層11,21が保磁力の大きい磁性層によって構成されていてもよい。また、磁化固定層11,21は、シンセティック固定層に限られず、1つ以上の強磁性層のみからなるものであってもよい。
【0044】
次に、図5を参照して、MR素子30の構成の一例について説明する。図5は、MR素子30の構成を示す断面図である。図5に示した例では、MR素子30は、下から磁化固定層31、非磁性層32および自由層33が順に積層されて構成されている。
【0045】
磁化固定層31の磁化の方向は、Z方向に固定されている。磁化固定層31は、垂直磁気異方性を有している。一方、自由層33の磁化は、その方向が外部磁界Hの方向に応じて変化すると共に、Z方向の成分を含み得る。自由層33の磁化は、Z方向の成分を含むことができれば、Z方向以外の方向の成分を含んでいてもよい。
【0046】
磁化固定層31の材料としては、いわゆる垂直磁化膜に用いられる材料を用いることができる。具体的には、磁化固定層31は、CoPt、FePt等のL1の結晶構造を有する規則合金、Co/Pt、Co/Pd等の多層膜よりなる人工格子、およびCoCr、TbFeCo、CoFeB等のアモルファス合金のうちの1つ以上を含むように構成することができる。
【0047】
自由層33の材料にも、上記の垂直磁化膜に用いられる材料を用いることが可能である。ただし、自由層33は、その磁化の方向が、外部磁界Hの方向の変化に応じて容易に変化するものである必要がある。従って、自由層33は、Z方向についての保磁力が、磁化固定層31よりも小さいものである必要がある。また、自由層33は、磁化固定層31よりも小さい垂直磁気異方性を有していることが好ましい。このように性質の異なる磁化固定層31と自由層33は、例えば、各層を構成する1つ以上の材料の選択や、各層を構成する1つ以上の膜の厚みの調整によって実現することが可能である。例えば、Co/Pt、Co/Pd等のCo層を含む人工格子では、Co層の厚みによって垂直磁気異方性が変化することが知られている。そのため、Co層を含む人工格子におけるCo層の厚みを調整して、磁化固定層31や自由層33を実現することが可能である。
【0048】
また、文献“S Ikeda et al; Nature Materials Vol.9, September 2010,p.721-724”には、酸化マグネシウム(MgO)層に接するCoFeB層の厚みによって、CoFeB層の垂直磁気異方性が変化することが記載されている。この技術を利用して、非磁性層32をMgO層とし、それぞれ厚みを調整したCoFeB層によって磁化固定層31と自由層33を実現してもよい。
【0049】
また、文献“Kay Yakushiji et al; Applied Physics Express 3 (2010) 053003,p.1-3”には、酸化マグネシウム(MgO)よりなるトンネルバリア層と、Co/Pt多層膜およびCoFeB/CoFeよりなる界面層を有する自由層と、TbFeCo層およびCoFeB/CoFeよりなる界面層を有する参照層とを備えたTMR素子が記載されている。MR素子30をこのような構成としてもよい。
【0050】
次に、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1の製造方法について説明する。三次元磁界センサ1の製造方法は、MR素子10を形成する工程と、MR素子20を形成する工程と、MR素子30を形成する工程とを備えている。以下、図6ないし図12を参照して、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1の製造方法について詳しく説明する。ここでは、三次元磁界センサ1の構成が図2および図3に示した構成であるものとする。図6ないし図12において、(a)は三次元磁界センサ1の製造過程における積層体の平面図である。図6ないし図12において、(b)は、(a)におけるnB−nB線(nは6〜12の整数)で示す位置の断面図である。
【0051】
三次元磁界センサ1の製造方法では、まず、図6に示したように、例えば半導体基板41と絶縁層42とを有する基板40を用意する。
【0052】
図7は、次の工程を示す。この工程では、まず、基板40の素子配置面40a上に下部リード15,25,35を形成する。次に、素子配置面40a上における下部リード15,25,35の周囲に絶縁層43を形成する。
【0053】
図8は、次の工程を示す。この工程では、下部リード15および絶縁層43の上にMR積層体10Pを形成し、下部リード25および絶縁層43の上にMR積層体20Pを形成し、下部リード35および絶縁層43の上にMR積層体30Pを形成する。MR積層体10P,20P,30Pは、それぞれ、後にパターニングされてMR素子10,20,30となる多層膜である。従って、MR積層体10P,20P,30Pは、それぞれ、後にパターニングされてMR素子10,20,30を構成する複数の層となる複数の膜を有している。MR積層体10P,20P,30Pは、互いに分離した状態になるように形成される。
【0054】
本実施の形態では、MR素子10,20の構成は、磁化固定層11,21の磁化の方向が異なる点を除いて同じものにすることができる。磁化固定層11,21の磁化の方向の固定は、図8に示した工程で行ってもよいし、MR積層体10P,20P,30Pをパターニングした後に行ってもよい。
【0055】
磁化固定層11,21の磁化の方向の固定を図8に示した工程で行う場合には、例えば、MR積層体10P,20Pを別々の工程で形成する。そして、MR積層体10P,20Pの各々を形成する際に、磁界中成膜によって磁化固定層11,21となる膜を形成するか、磁化固定層11,21となる膜を磁界中熱処理することによって、磁化固定層11,21となる膜の磁化の方向を固定する。この場合、磁化固定層11となる膜と磁化固定層21となる膜のうち、先に磁化の方向を固定する膜は、後で磁化の方向を固定する膜よりも保磁力が大きいものとする。これにより、磁化固定層11,21となる膜の磁化の方向を互いに異なる方向に固定することが可能になる。
【0056】
磁化固定層11,21の磁化の方向の固定を、MR積層体10P,20P,30Pをパターニングした後に行う場合には、MR積層体10P,20Pを同時に形成してもよい。この場合の磁化固定層11,21の磁化の方向の固定方法については、後で説明する。
【0057】
MR積層体30Pの構成は、MR積層体10P,20Pの構成とは異なるため、MR積層体30Pは、MR積層体10P,20Pとは別の工程で形成する。MR積層体30Pの形成する際には、磁化固定層31となる膜の磁化の方向を固定する。この磁化の方向は、素子配置面40aに対して垂直な上向きまたは下向きである。この磁化の方向の固定方法としては、例えば磁界中熱処理を用いることができる。
【0058】
図9は、次の工程を示す。この工程では、まず、MR積層体10P,20P,30Pをエッチングによってパターニングして、MR素子10,20,30を形成する。次に、下部リード15,25,35および絶縁層43の上におけるMR素子10,20,30の周囲に絶縁層44を形成する。
【0059】
ここで、MR積層体10P,20P,30Pをパターニングした後に、磁化固定層11,21の磁化の方向を固定する方法の一例について説明する。この方法では、まず、パターニング後のMR積層体10P,20P,30Pを含む積層体に対してX方向の磁界を印加しながら、MR積層体10Pに局所的にレーザ光を照射することによって、MR積層体10Pの磁化固定層11となる膜の温度を上昇させた後、下降させて、磁化固定層11となる膜の磁化の方向をX方向に固定する。これにより、この膜は磁化固定層11となる。次に、同様に、パターニング後のMR積層体10P,20P,30Pを含む積層体に対してY方向の磁界を印加しながら、MR積層体20Pに局所的にレーザ光を照射することによって、MR積層体20Pの磁化固定層21となる膜の温度を上昇させた後、下降させて、磁化固定層21となる膜の磁化の方向をY方向に固定する。これにより、この膜は磁化固定層21となる。なお、磁化固定層21となる膜の磁化の方向をY方向に固定した後に、磁化固定層11となる膜の磁化の方向をX方向に固定してもよい。
【0060】
上述のように磁化固定層11,21の磁化の方向を別々に固定する場合には、MR積層体10P,20Pを同時に形成してもよい。この場合における三次元磁界センサ1の製造方法では、MR素子10を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて磁化固定層11となる第1の膜、非磁性層12および自由層13を含むMR積層体10Pを形成する工程と、第1の膜が磁化固定層11となるように、第1の膜の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。また、MR素子20を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて磁化固定層21となる第2の膜、非磁性層22および自由層23を含むMR積層体20Pを形成する工程と、第2の膜が磁化固定層21となるように、第2の膜の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。MR積層体10Pは、本発明における第1の積層体に対応する。MR積層体20Pは、本発明における第2の積層体に対応する。そして、MR積層体10Pを形成する工程とMR積層体20Pを形成する工程は、同時に行われる。一方、第1の膜の磁化の方向を固定する工程と第2の膜の磁化の方向を固定する工程は、別々に行われる。
【0061】
図10は、次の工程を示す。この工程では、MR素子10および絶縁層44の上に上部リード16を形成し、MR素子20および絶縁層44の上に上部リード26を形成し、MR素子30および絶縁層44の上に上部リード36を形成する。
【0062】
図11は、次の工程を示す。この工程では、上部リード16,26,36および絶縁層44を覆うように保護膜45を形成する。
【0063】
図12は、次の工程を示す。この工程では、例えばウエットエッチングによって、図11に示した積層体に対して、保護膜45と絶縁層44を貫通して下部リード15,25,35の上面に達する3つのコンタクトホール46Aと、保護膜45を貫通して上部リード16,26,36の上面に達する3つのコンタクトホール46Bとを形成する。
【0064】
次に、図2および図3に示したように、例えばめっき法によって、端子17,27,37,18,28,38を形成する。これにより、三次元磁界センサ1が完成する。
【0065】
次に、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1およびその製造方法の効果について説明する。本実施の形態に係る三次元磁界センサ1によれば、それぞれ磁化固定層11,21,31の磁化の方向がX方向、Y方向、Z方向に固定されたMR素子10,20,30によって、外部磁界HのX方向、Y方向、Z方向の各成分の強度H,H,Hを検出することができる。これにより、本実施の形態によれば、外部磁界Hの三次元的な方向を検出することが可能になる。
【0066】
なお、磁化固定層11の磁化の方向と磁化固定層21の磁化の方向は、互いに直交している場合に限らず、素子配置面40aに平行な方向であって、互いに90°以外の角度をなす異なる方向であってもよい。この場合にも、MR素子10,20,30によって、外部磁界Hの三次元的な方向を検出することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1では、平面である基板40の素子配置面40a側に、いずれも素子配置面40aに対して垂直な方向に積層された磁化固定層、非磁性層および自由層を有する第1ないし第3のMR素子10,20,30が配置されている。このように、三次元磁界センサ1の構成は、比較的簡単である。例えば、三次元磁界センサ1の構成は、特許文献1ないし4に記載された磁気センサのどれと比較しても単純である。また、第1ないし第3のMR素子10,20,30のそれぞれの形成工程は、ホール素子とMR素子の形成工程の違いほど大きく異なることはない。従って、三次元磁界センサ1の製造は比較的容易である。これらのことから、本実施の形態によれば、構成が簡単で、製造コストを低減することができるようにした三次元磁界センサ1を実現することが可能になる。
【0068】
また、本実施の形態に係る三次元磁界センサ1の製造方法において、MR積層体10Pを形成する工程とMR積層体20Pを形成する工程が同時に行われる場合には、三次元磁界センサ1の製造コストをより低減することが可能になる。
【0069】
[第2の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る三次元磁気センサについて説明する。図13は、本実施の形態に係る三次元磁界センサの回路構成を示す回路図である。
【0070】
本実施の形態に係る三次元磁界センサは、第1の実施の形態における第1ないし第3のMR素子10,20,30を2組備えている。以下、第1の組のMR素子10,20,30をMR素子10A,20A,30Aと表記し、第2の組のMR素子10,20,30をMR素子10B,20B,30Bと表記する。
【0071】
MR素子10A,20A,30Aと、MR素子10B,20B,30Bは、1つの基板40の素子配置面40a側に配置されて基板40と一体化されていてもよい。あるいは、MR素子10A,20A,30Aは、1つの基板40の素子配置面40a側に配置されてこの基板40と一体化され、MR素子10B,20B,30Bは、他の1つの基板40の素子配置面40a側に配置されてこの基板40と一体化されていてもよい。すなわち、この場合は、本実施の形態に係る三次元磁界センサは、図1ないし図3に示した第1の実施の形態に係る三次元磁界センサ1を1つのユニットとすると、このユニットを2つ備えていることになる。2つのユニットは、それぞれの基板40の素子配置面40aが互いに平行になるように配置される。
【0072】
MR素子10A,10Bのそれぞれの磁化固定層11の磁化の方向は、互いに反対方向に固定されている。MR素子20A,20Bのそれぞれの磁化固定層21の磁化の方向も、互いに反対方向に固定されている。MR素子30A,30Bのそれぞれの磁化固定層31の磁化の方向も、互いに反対方向に固定されている。
【0073】
図13に示したように、MR素子10A,10Bは直列に接続されてハーフブリッジ回路を構成している。同様に、MR素子20A,20Bも直列に接続されてハーフブリッジ回路を構成し、MR素子30A,30Bも直列に接続されてハーフブリッジ回路を構成している。より詳しく説明すると、MR素子10Aの一端は、センス電流を供給する電源に接続され、MR素子10Aの他端は、MR素子10Bの一端に接続されている。MR素子10Bの他端は接地されている。同様に、MR素子20Aの一端は、センス電流を供給する電源に接続され、MR素子20Aの他端は、MR素子20Bの一端に接続されている。MR素子20Bの他端は接地されている。また、MR素子30Aの一端は、センス電流を供給する電源に接続され、MR素子30Aの他端は、MR素子30Bの一端に接続されている。MR素子30Bの他端は接地されている。なお、図13において、塗りつぶした矢印は磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は自由層の磁化の方向を表している。
【0074】
MR素子10Aにおける電圧降下の大きさと、MR素子10Bにおける電圧降下の大きさは、いずれも、外部磁界HのX方向の成分の強度Hに応じて変化する。ただし、MR素子10A,10Bのそれぞれの磁化固定層11の磁化の方向が互いに反対方向に固定されていることから、MR素子10Aにおける電圧降下の大きさの変化の方向と、MR素子10Bにおける電圧降下の大きさの変化の方向は反対になる。その結果、MR素子10A,10Bの接続点の電位は、外部磁界HのX方向の成分の強度Hに応じて変化する。同様に、MR素子20A,20Bの接続点の電位は、外部磁界HのY方向の成分の強度Hに応じて変化し、MR素子30A,30Bの接続点の電位は、外部磁界HのZ方向の成分の強度Hに応じて変化する。
【0075】
以下、MR素子10A,10Bの接続点の電位を信号Sとし、MR素子20A,20Bの接続点の電位を信号Sとし、MR素子30A,30Bの接続点の電位を信号Sとする。信号Sは本発明における第1の磁気抵抗効果素子の出力に対応し、信号Sは本発明における第2の磁気抵抗効果素子の出力に対応し、信号Sは本発明における第3の磁気抵抗効果素子の出力に対応する。
【0076】
本実施の形態に係る三次元磁界センサは、更に、3つのゲインコントロールアンプ(以下、GCAと記す。)51,52,53と、3つのアナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)61,62,63と、演算回路70と、表示装置71とを備えている。
【0077】
GCA51の入力端は、MR素子10A,10Bの接続点に接続され、GCA51の出力端は、A/D変換器61の入力端に接続されている。GCA52の入力端は、MR素子20A,20Bの接続点に接続され、GCA52の出力端は、A/D変換器62の入力端に接続されている。GCA53の入力端は、MR素子30A,30Bの接続点に接続され、GCA53の出力端は、A/D変換器63の入力端に接続されている。演算回路70は、3つの入力端を有し、これらはそれぞれA/D変換器61,62,63の出力端に接続されている。演算回路70の出力端は、表示装置71の入力端に接続されている。
【0078】
GCA51,52,53は、ゲインを調整可能な増幅器(アンプ)である。GCA51,52,53のゲインは、強度H,H,Hが等しいときに信号S,S,Sのレベルが等しくなるように設定される。GCA51,52,53のゲインは、信号S,S,Sのレベルの補正処理を行った際に変更され、通常時は一定に保たれる。信号S,S,Sのレベルの補正処理では、例えば、外部磁界Hと三次元磁界センサの相対的位置関係を変化させて、強度H,H,Hを、互いに等しい最大値と互いに等しい最小値とを含むように変化させ、強度H,H,Hに応じた信号S,S,Sを得る。そして、信号S,S,Sのレベルを比較して、前述のように強度H,H,Hが等しいときに信号S,S,Sのレベルが等しくなるようにGCA51,52,53のゲインを調整する。
【0079】
A/D変換器61,62,63は、それぞれ、GCA51,52,53より出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して演算回路70に送る。演算回路70は、A/D変換器61,62,63の出力信号に基づいて、外部磁界Hの三次元的な方向を表すデータ(以下、三次元方向データと記す。)を生成する。演算回路70は、例えばマイクロコンピュータによって実現することができる。表示装置71は、演算回路70によって生成された三次元方向データを表示する。
【0080】
三次元方向データは、例えば、強度H,H,Hの検出値、あるいはそれらと一定の関係を有する値であってもよい。また、三次元方向データは、例えば、外部磁界Hの方向を示す角度データであってもよい。角度データは、例えば、図1において外部磁界Hを表すベクトルをXY平面PXYに投影してできるベクトルがX方向に対してなす角度θと、外部磁界Hを表すベクトルがXY平面PXYに対してなす角度θであってもよい。ここで、強度H,H,Hの検出値も記号H,H,Hで表すと、角度θは、atan(H/H)の演算によって求められる。“atan”は、アークタンジェントを表す。角度θは、atan{H/√(H+H)}の演算によって求められる。また、演算回路70は、このようにして求められた角度θ、θに基づいて、外部磁界Hを表すベクトルを画像として表示するための画像データを生成し、表示装置71がこの画像データに基づいて、外部磁界Hを表すベクトルを画像として表示してもよい。
【0081】
なお、本実施の形態において、GCA51,52,53を設けずに、演算回路70を構成するマイクロコンピュータによって、信号S,S,Sのレベルの補正を行ってもよい。しかし、GCA51,52,53を設けることにより、A/D変換器61,62,63のダイナミックレンジを有効に利用することが可能になり、強度H,H,Hの検出精度を向上させることが可能になる。
【0082】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0083】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第2の実施の形態において、1組のMR素子10,20,30のみを用い、MR素子10,20,30のそれぞれの両端の電位差を出力として、GCA51,52,53に入力してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…三次元磁界センサ、10…第1のMR素子、20…第2のMR素子、30…第3のMR素子、11,21,31…磁化固定層、12,22,32…非磁性層、13,23,33…自由層、40…基板、40a…素子配置面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界の三次元的な方向を検出するための三次元磁界センサであって、
平面である素子配置面を有する基板と、
前記基板の素子配置面側に配置されて前記基板と一体化された第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子とを備え、
前記第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子は、いずれも、前記素子配置面に対して垂直な方向に積層された磁化固定層、非磁性層および自由層を有し、
前記第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子のいずれにおいても、前記非磁性層は前記磁化固定層と自由層の間に配置され、前記自由層の磁化の方向は前記外部磁界の方向に応じて変化し、
前記第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、前記素子配置面に平行な第1の方向に固定され、
前記第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、前記素子配置面に平行であって前記第1の方向とは異なる第2の方向に固定され、
前記第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、前記素子配置面に垂直な第3の方向に固定され、
前記第1の磁気抵抗効果素子は、前記外部磁界の前記第1の方向の成分の強度を検出し、
前記第2の磁気抵抗効果素子は、前記外部磁界の前記第2の方向の成分の強度を検出し、
前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記外部磁界の前記第3の方向の成分の強度を検出することを特徴とする三次元磁界センサ。
【請求項2】
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して直交していることを特徴とする請求項1記載の三次元磁界センサ。
【請求項3】
更に、前記第1、第2および第3の磁気抵抗効果素子の出力に基づいて、前記外部磁界の三次元的な方向を表すデータを生成する演算回路を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の三次元磁界センサ。
【請求項4】
前記第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層、非磁性層および自由層の各々の材料は、前記第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層、非磁性層および自由層の各々の材料と同じであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の三次元磁界センサ。
【請求項5】
前記第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層は、規則合金、多層膜よりなる人工格子、およびアモルファス合金のうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の三次元磁界センサ。
【請求項6】
前記第3の磁気抵抗効果素子の自由層は、前記第3の方向についての保磁力が、前記第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層よりも小さいものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の三次元磁界センサ。
【請求項7】
請求項1記載の三次元磁界センサを製造する方法であって、
前記第1の磁気抵抗効果素子を形成する工程と、
前記第2の磁気抵抗効果素子を形成する工程と、
前記第3の磁気抵抗効果素子を形成する工程とを備え
前記第1の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となる第1の膜、第1の磁気抵抗効果素子の非磁性層および第1の磁気抵抗効果素子の自由層を含む第1の積層体を形成する工程と、前記第1の膜が第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となるように、前記第1の膜の磁化の方向を固定する工程とを含み、
前記第2の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、後に磁化の方向が固定されて第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となる第2の膜、第2の磁気抵抗効果素子の非磁性層および第2の磁気抵抗効果素子の自由層を含む第2の積層体を形成する工程と、前記第2の膜が第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層となるように、前記第2の膜の磁化の方向を固定する工程とを含み、
前記第1の積層体を形成する工程と前記第2の積層体を形成する工程は、同時に行われ、
前記第1の膜の磁化の方向を固定する工程と前記第2の膜の磁化の方向を固定する工程は、別々に行われることを特徴とする三次元磁界センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108923(P2013−108923A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255969(P2011−255969)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】