説明

下り坂の運転中に自動車両の制動を制御するシステム及び方法

下り坂運転中に自動車両の制動を制御するシステムであって、車両が常用摩擦制動装置18と、リターダ・ブレーキ26及び車両の運転者によってリターダ・ブレーキを始動させるためのレバー40を備える補助制動装置25とを含むシステムが、車両の運転条件のパラメータの値に基づいて、下り坂運転時に車両に制動作用を適用するために、運転者がレバー40を作動させることによりリターダ・ブレーキ26を始動させる際に、補助制動装置のみで車両に適用される制動作用を得ることができるかどうかを計算するように適合されている手段29を含む。その計算が補助制動装置のみでは車両に適用される制動作用を得ることができないことを示す場合に、制動制御手段28が、補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置を始動させるように適合されている(図1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下り坂の運転中に自動車両を制動するためのシステムに関するものである。その車両は、制動作用を得るために車両の少なくとも1つの車軸に作用するように適合された常用摩擦制動装置、並びに制動作用を得るために車両の駆動車軸に作用するように適合され、リターダ・ブレーキ及び車両の運転者によってリターダ・ブレーキを始動させるためのレバーを備える補助制動装置を含む。そのシステムは、補助制動装置によって得ることができる制動作用を得たい場合に、リターダ・ブレーキを始動させて作用させる補助制動モードを選択するように適合された制動制御手段を備える。また、本発明は、下り坂運転中にこの種の自動車両の制動を制御する方法にも係るものである。さらに、本発明は、そのような方法を実施するためのコンピュータ・プログラム・コードを有するコンピュータ・プログラムに関し、コンピュータ・プログラム製品は、電子ユニットによって読まれることのできるデータ記憶媒体を含み、そこに記憶されたコンピュータ・プログラム及び電子制御ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、リターダ・ブレーキ及び可能であれば排気ブレーキを備える補助制動装置を有する自動車両、特に大部分がリターダ・ブレーキ及び排気ブレーキの両方を有する大型トラック、牽引車両、及びバスなどの重量自動車両に適用される。この種のリターダ・ブレーキは、例えば車両の変速機の出力軸に作用することにより、車両の駆動される車軸に作用する液圧ブレーキである。排気ブレーキも、内燃機関からの排気ガスの流れ抵抗を調整することにより、自動車両の内燃機関の出力軸の回転に抵抗を生じることによって、車両の駆動される車軸に間接的に作用する。制動作用がその種の車両に適用される際、通常は常用摩擦制動装置の車輪ブレーキと呼ばれる常用ブレーキを節約するために、この種の補助制動装置を使用することが好ましい。
【0003】
しかし、リターダ・ブレーキの効率は、車両の速度又はモータの速度に依存し、そのことは、リターダ・ブレーキだけでは、急な下り坂を運転する際に、重い自動車両、とりわけトラクタ及び満載されたトレイラを一定の低速度に保つことが通常は不可能であることを意味する。補助制動装置が下り坂運転時に要求される制動作用をもたらすことのできない別の状況は、ギア変速が実行され車両の速度がこのギア変速中に増すことができない場合であり、このことは、車両が自動又は半自動変速機を備える場合に特に重要であり、その場合、ゼロトルクがギア変速中に変速機のクラッチに出現するに違いない。ギア変速中に車両の速度がその状況で増大する場合、車両の内燃機関の出力軸の回転数を上げる必要があるが、この回転数は既にその上限に近いことがあり、その結果、内燃機関は、内燃機関出力軸の許容できない高回転数となる結果として損傷を受けることがある。そのようなギア変速中にモータ・ブレーキの作用が消失することにより、下り坂運転時のギア変速中に車両を一定の速度に保とうとする際、補助制動装置の欠乏という危険性が増加する。そのような状況の車両が排気ブレーキを有する場合、その場合論理的にリターダ・ブレーキと一緒に使用されることが可能であるが、それは必要な制動作用を得るには十分でない、とりわけ低速での状況であると考えられる。
【0004】
この問題の解決策として、下り坂運転時に所望される車両の制動を得るために、冒頭で定義された型の制動制御システムが、補助ブレーキ及び常用摩擦制動装置の常用ブレーキの両方を同時に使用するために設計された。特許文献1(EP1567399)は、下り坂運転中に自動車両への制動作用に適用され、これら2つの装置によって適切な形で得られる総制動トルクを分担するために、補助制動装置及び常用摩擦ブレーキ装置の両方が使用される制動制御システムを記載している。この車両の常用摩擦制動装置及び補助制動装置は、下り坂運転中に車両を制動する際、常に両方が使用されるが、それぞれの装置によってもたらされる制御作用の比率は、一般的な条件に依存する。この結果、補助制動装置のみで要求される制動作用を得ることができる多くの状況で常用ブレーキを使用することになり、その結果、常用ブレーキの部品の寿命が短くなる。
【0005】
特許文献2(WO2004033244)は、下り坂運転中にギア変速が実行される際、車両の速度を一定に保つように制動作用を得るために常用摩擦制動装置を使用する制動制御システムを記載している。また、特許文献3(DE10216546A1)も、下り坂運転中にギア変速作用が実行される際に車両を一定の速度に保つように、自動変速機を備える車両の常用摩擦制動装置を使用する制動制御システムを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1567399号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/033244号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10216546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、下り坂運転中に自動車両の制動を制御するシステムを提供することである。それにより上記の問題を低減させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、導入部で定義された型のシステムを提供することにより得られる。このシステムは、下り坂運転時に車両に制動作用を適用するために、運転者がレバーを作動させることによりリターダ・ブレーキを始動させる際に、車両の運転条件のパラメータ値に基づいて、補助制動装置のみで車両に適用される制動作用を得ることができるかどうかを計算するように適合されている計算手段を含み、計算手段の計算の結果により補助制動装置だけでは車両に適用される制動作用を得ることができない場合、制動制御手段が、車両を制動中に補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置を始動させるように適合されている。このことは、運転者が下り坂運転時にレバーを作動させることによりリターダ・ブレーキからの制動作用を要求する際、常用摩擦制動装置は、補助制動装置だけでは制動作用を得ることができない場合はすぐに、車両の制動中に補助制動装置を助けるために始動されることを意味する。このことは確実に、必要な制動作用が常に車両に適用されるが、車両の常用ブレーキはそれでもできる限り保存されることが保証されることを意味する。したがって、リターダ・ブレーキはレバーを作動させることによって始動される場合に、リターダ・ブレーキだけで制動するが、もしその制動作用が必要ならば、常用摩擦制動装置もそのレバーの作動によりここで始動されることが一般的に期待される。
【0009】
本発明の具体例によれば、このシステムは速度計を有する自動車両の制動制御に適用され、計算手段が実際の車両の速度についての速度計からの情報、及び車両に適用される制動作用に対応する総制動トルクの値についての制動制御手段からの情報に計算の基礎を置くように適合されており、計算手段が、車両の速度が所与の総制動トルクの値に対して第1の所定の速度値よりも小さい場合、補助制動装置のみでは車両に適用される制動作用を得ることができないと判定するように適合されている。総制動トルクは、主に車両の重量及び道路の傾斜に依存し、計算手段は、車両の速度が総制動トルクの所与の値に対して第1の所定の速度値よりも小さい値に低下するとすぐに、この総制動トルク値が車両の制動装置によって得ることができるように、このようにして常用摩擦ブレーキ装置の始動を実行する。本発明の具体例によれば、計算手段は総制動トルクの値が増加すると減少する第1の所定の速度レベルを使用するように適合されており、このことにより総制動トルクの値が常に得られることを保証する。
【0010】
本発明の別の具体例によれば、計算手段は、車両に適用される制動作用に対応する総制動トルクの値についての制動制御装置からの情報に計算の基礎を置き、この総制動トルクの値を所定の総制動トルクの閾値と比較し、総制動トルクの値が総制動トルクの閾値を超える場合に、補助制動装置のみでは車両に適用される制動作用を得ることができないと判定するように適合される。このことは、総制動トルクが総制動トルク閾値を超える場合、常用摩擦制動装置が車両の実際の速度に関係なく自動的に始動されて、車両に適用される必要な制動作用が確実に得られることを保証する。例えば、満載された車両が非常に急な下り坂を走行する際に、常用摩擦制動装置は車両に適用される制動作用を得るために、車両の実際の速度に関係なく常に補助制動装置を助けることが決定される。
【0011】
本発明の別の具体例によれば、制動制御システムは速度計を有する車両の制動制御に適用され、計算手段が速度計からの車両の実際の速度についての情報を考慮するように適合されており、下り坂運転時に制動作用が車両に適用される際に、車両の速度が第2の所定の速度値よりも小さくなるとすぐに、補助制動装置が車両に適用される制動作用を得ることができないと判定するように適合されており、次いで、制動制御手段が、レバーを始動させることによるリターダ・ブレーキの始動に際して、車両を制動中に補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置を自動的に始動させるように適合される。したがって、安全策として、車両の速度が非常に低速、すなわち第2の所定の値よりも小さい場合、レバーを作動させることによるリターダ・ブレーキの始動後、補助制動装置のみでは車両に適用される制動作用をもたらすことができないという危険性があること、及び制動作用を得るために、補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置が自動的に始動されることがこのように決定される。
【0012】
本発明の別の具体例によれば、制動制御システムは、変速機を備えた自動車両の制動制御に適用され、計算手段が、下り坂運転中にギア変速の指令を車両の運転条件として考慮し、補助制動装置が現行の条件でギア変速中に車両の速度を所定の範囲内に保つことができるかどうかを計算するように適合され、制動制御手段が、レバーの作動によるリターダ・ブレーキの始動に際して、計算手段が補助制動装置のみからの制動作用だけではギア変速作用中に車両の速度値を範囲内に保つことができないと判定する場合、補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置を始動させるように適合されている。このことは、制動が補助制動装置によって下り坂運転中にできる限り大きな程度にまで実行されるにもかかわらず、例えば内燃機関の部品を保護するためにギア変速中に車両の速度は所定の範囲内に保たれることがやはり保証され得る。ギア変速の各段階に対して、それぞれ所定の速度範囲が存在する。本発明の具体例によれば、指令が下り坂運転中にギア変速を実行するように与えられた場合、車両の現行の条件でギア変速中に補助制動装置が車両の速度を実質的に一定に保つことができるかどうかを計算手段が計算するように適合されることができ、下り坂運転中にギア変速を実行するように車両を制動するレバーを作動させることによるリターダ・ブレーキの始動に際して、計算手段が補助制動装置だけではギア変速中に車両の速度を実質的に一定に保つことができないと判定する場合、車両を制動中に補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置を始動させるように、制動制御手段が適合されている。このことにより、車両の内燃機関の出力軸の回転数が、ギア変速が実行される際に回転数が限界値に近いときに、最大限界値を超えて上昇することが避けられる。
【0013】
本発明の別の具体例によれば、制動制御システムは、自動又は半自動変速機を有する車両の制動を制御するように適合されており、計算手段が、車両の運転条件として下り坂運転中にギア変速の指令を考慮し、補助制動装置が意図されたギア変速中に車両の内燃機関の出力軸の回転数を所定のレベルを超えて上昇させる必要なしに変速機のクラッチでゼロトルクを得ることができるようなレベルに車両の速度を保つことができるかどうかを計算し、補助制動装置だけではこれが可能でない場合に、制動作用を得ることができないと判定するように適合されている。このことは、ギア変速が、内燃機関の部品に弊害をもたらしてきたと考えられる所定のレベルを超えて車両の内燃機関の出力軸の回転数を上昇させることなく、この種の自動又は半自動変速機のために、下り坂運転時にリターダ・ブレーキ・レバーを作動するだけで実行可能であることを保証できることを意味する。
【0014】
本発明の別の具体例によれば、制動制御システムは、変速機を備える自動車両の制動を制御するように適合され、計算手段が、補助制動装置だけでは車両の下り坂運転中にギア変速中に車両に適用される制動作用を得ることができないと判定するように適合されている。したがって、この実施例では、常用摩擦制動装置が、ギア変速作用が下り坂運転中に実行されようとする際に、車両の制動中に補助制動装置を助けるために常に始動される。
【0015】
また、本発明は、下り坂運転中に自動車両の制動を制御する、請求項10に記載された構成を有する方法にも関するものである。車両は、常用摩擦ブレーキを備える少なくとも1つの車軸と、制動作用を得るための少なくとも1つの車軸の常用摩擦ブレーキに作用するように適合された常用摩擦制動装置と、常用摩擦制動装置を介して少なくとも1つの車軸の少なくとも常用摩擦ブレーキを始動させるためのブレーキ・ペダルと、制動作用を得るために車両の駆動される車軸に作用するように適合され、リターダ・ブレーキ及びリターダ・ブレーキを手で始動させるためのレバーを具備する補助制動装置とを含む。
【0016】
また、本発明は、請求項19に記載された構成を有するコンピュータ・プログラム、請求項28に記載された構成を有するコンピュータ・プログラム製品及び請求項29に記載された構成を有する電子制御ユニットにも関するものである。
【0017】
本発明を、添付の図面を参照して、実施例によって以下に、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるシステムを示す概略図。
【図2】本発明による方法を履行するための電子ユニットの概略図。
【図3】本発明の実施例による方法を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を説明するために必要なトラックの形態の自動車両1の部品が、図1に非常に概略的に示されている。車両は、前輪軸2、第1の後輪軸3及び第2の後輪軸4を有する。これらの軸には、車輪5〜12が備えられ、前輪軸2の車輪5及び6は車両を操縦するために使用され、第1の後輪軸3の車輪7〜10は駆動軸3によって車両を駆動するために使用される。車軸4の車輪11及び12は、地面から持ち上げることができ、車両が非常に重い負荷を積載しているときにのみ使用される。
【0020】
車両は、変速機14に連結された出力軸(図示せず)を備える内燃機関13をさらに有し、その変速機はここでは自動又は半自動変速機であり、中立位置、駆動位置、後退位置、停止位置などの異なるモードを選択するための変速レバー15を有する。変速機14は、差動装置17によって車軸3を駆動する出力軸16を有する。
【0021】
車両は、車両を運転中に常に地面上で荷重を支える少なくともいくつかの車輪に連結して配置された常用摩擦ブレーキ19〜24を制御することにより制動作用を得るために、車両のすべての車軸に作用するように適合された常用摩擦制動装置18をさらに有する。
【0022】
車両は、概略的に示されているリターダ・ブレーキ26及び排気ブレーキ27を制御することにより制動作用を得るために車両の駆動される車軸3に作用するように適合された補助制動装置25をも備える。リターダ・ブレーキ26は、ここでは、変速機14に結合され、変速機の出力軸16に作用する。言い換えれば、ここではリターダ・ブレーキ26は、一般的に内燃機関の出力軸に直接連結された一次リターダに対比される、いわゆる二次リターダである。レバー40は、車両の運転者が、手でリターダ・ブレーキを始動させることができるように配置されている。レバー40を所定の位置に設定することにより、レバーがその位置にある限り運転者がレバーから接触を解除してしまっても、リターダ・ブレーキは連続的に始動される。この種のレバーは、通常、車両の計器盤又はかじ取軸管に配置される。排気ブレーキ27は、内燃機関の燃焼の結果生じる排気ガス用の開口の程度を調整することにより内燃機関に制動作用を適用するように適合されている。
【0023】
車両は、下り坂運転時に自動車両1の制動を制御するシステムをさらに備える。このシステムは、電子制御ユニットの形態の制動制御手段28を備える。この制動制御手段は、車両の速度を低減させ、又は車両を一定の速度に保ち、又は下り坂運転中に速度の増加を減少させるために、補助制動装置によって得ることのできる制動作用を得たい場合に、通常の車両の作動下で常用ブレーキ19〜24の作用を減じるために補助制動モードを選択するように適合されている。しかし、異なる車両ブレーキによる制動効果としては、レバー40、及び例えばブレーキ・ペダルのような形態の図示しない他の手段によって運転者により手で制御されることもできる。
【0024】
また、制動制御システムは、車両の運転条件のパラメータの値に基づき、リターダ・ブレーキ26及び排気ブレーキ27による補助制動装置25だけで下り坂運転時に車両に適用される制動作用を得ることができるかどうかを計算するように適合された計算手段29をも備える。本発明による制動制御システムは、そのようなパラメータについての情報を計算手段29に伝達するように適合された複数の部材を備える。この種の部材のうちの1つ30が、車両の実際の速度についての情報を伝達するように適合されている。別の部材31が、車両の傾斜、すなわち車両が走行する道路の傾斜についての情報を伝達するように適合されている。さらに別の部材32が、車両の総重量についての情報を伝達するように適合されている。制動制御システムは、変速レバー15の位置を感知し、それについての情報を計算手段29に伝達するように適合された部材33をも備える。
【0025】
計算手段29は、部材30から受け取った車両の実際の速度についての情報、及び車両に適用される制動作用に対応する総制動トルクの値についての制動制御手段28からの情報に計算の基礎を置くように適合されている。この総制動トルクは、部材30〜32からの情報により判定できる。
【0026】
本発明による制動制御システムの機能は以下の通りである。下り坂運転時に車輪に制動作用を適用する要求が生じた場合、それは運転者がリターダ・レバー40を作動することにより決定できるが、計算手段は、部材30〜33からの情報を考慮し、補助制動装置25だけで車両に適用される制動作用を得られるかどうかを計算する。この質問の答えが肯定的ならば、制動作用が補助制動装置、すなわちリターダ・ブレーキ26及び排気ブレーキ27だけによって処理される。質問に対する答えが否定的であれば、制動制御手段28は、補助制動装置が車両を制動することを助けるために常用摩擦制動装置18を始動させ、それにより常用ブレーキ19〜24を始動させる。
【0027】
ギア変速すべきであり、部材31が、車両が下り坂を走行していることを示す場合、計算手段は、補助制動装置だけでそのギア変速中に車両の速度を一定に保つことができるかどうかを計算するように適合されている。このことは、部材30からの実際の車両の速度に関する情報、部材31からの路面の傾斜に関する情報、及び部材32からの車両の総重量に関する情報により行われる。ギア変速が起こっていることは、部材33によって感知される。計算手段が、補助制動装置が車両をギア変速中に実質的に一定速度に実際に保つことができると判定した場合、常用ブレーキによる制動は行われない。しかし、本発明の別の実施例によれば、ギア変速が行われていることを部材33が示し、車両が下り坂を走行中であることを部材31が示す場合、計算手段は、常用ブレーキが始動されなければならないことを自動的に判定するように適合されてもよい。レバー40の作動によるリターダ・ブレーキの始動により常用ブレーキが車両を制動するために補助制動装置を助けるように始動されるが、その結果、車両の速度、路面の傾斜及び車両の重量にかかわらず、ギア変速中に車両の速度は所望のレベル、通常は一定のレベルに保たれることを保証できる。このことは、自動変速機14のギア変速時にゼロトルクの存在を得るために、許容し難いほどの高い値に内燃機関の出力軸の回転数が上昇する危険がないことを意味する。この種のブレーキの混合はそれ自体公知であるが、リターダ・ブレーキ・レバーの作動の結果ではない。
【0028】
本発明の実施例による方法を示す流れ図が、図3に示されている。第1のステップS1では、制動作用が要求されるか否かが決定される。この質問に対する答えが肯定ならば、第2のステップS2で補助制動装置が始動され、又は作動を保たれる。次いで、ステップS3で、要求される総制動トルク及び補助制動装置によって得られる制動トルクが計算される。部材30〜33からの情報、及び場合によっては、車両の運転者によって影響を受ける任意の部材からの情報が、この計算のために使用される。次いで、ステップS4では、総制動トルクと補助制動装置によって得られる制動トルクとが比較され、補助制動装置によって得られる制動トルクが要求される総制動トルクよりも大きいかどうかという質問がなされる。この質問に対する答えが否定であれば、ステップS5で、リターダ・ブレーキ・レバーの始動に際して、常用摩擦制動装置が始動される。この質問に対する答えが肯定であれば、ステップS1に戻る。上記に既に述べたように、ギア変速作用が行われようとしている場合、及び/又は車両の速度が所定のレベル以下である場合、及び/又は路面の傾斜及び車両の重量の組合せがある状況を有する場合、ステップS3では、要求される総制動トルクは補助制動装置によって得られる制動トルクよりも高いということが自動的に判定され得る。
【0029】
本発明による方法を履行するコンピュータ・プログラム・コードがコンピュータ・プログラムに適切に含まれ、このコンピュータ・プログラムは、制動制御ユニットの内部記憶又は車両の内燃機関制御ユニットなどのコンピュータの内部記憶内に直接ロードすることができる。この種のコンピュータ・プログラムは、電子制御ユニットによって読取り可能なデータ記憶媒体を備えるコンピュータ・プログラム製品を介して適切に提供され、このデータ記憶媒体は、そこに記憶されたコンピュータ・プログラムを有する。データ記憶媒体は、例えばCD−ROMディスク、DVDディスクなどの形態の光学データ記憶媒体、ハード・ディスク、ディスケット、カセット・テープなどの形態の磁気データ記憶媒体、又はROM、PROM、EPROM、若しくはEEPROM型のメモリ又はフラッシュ・メモリである。
【0030】
本発明の実施例によるコンピュータ・プログラムが、制動作用を得るために車両の少なくとも1つの車軸に作用するように適合されている常用摩擦制動装置と、制動作用を得るために車両の駆動される車軸に作用するように適合されており、リターダ・ブレーキ及び車両の運転者によってリターダ・ブレーキを始動させるためのレバーを備える補助制動装置とを有する車両のための電子ユニットのマイクロ・プロセッサの形態などのコンピュータによって、
補助制動装置によって得ることのできる制動作用を得ることを所望される場合に、リターダ・ブレーキを始動させて作用させる補助制動モードを得ること、
制動作用が下り坂運転時に車両に適用される際に、レバーを作動させることによりリターダ・ブレーキの始動を得ること、
車両の運転条件のパラメータの値に基づき、補助制動装置だけで車両に適用される制動作用を得ることができるかどうかを計算すること、及び
計算の結果が補助制動装置だけでは車両に適用される制動作用を得ることができない場合に、車両を制動する際に補助制動装置を助けるために常用摩擦制動装置の始動を得ること
のためのコンピュータ・プログラム・コードを有する。
【0031】
図2は、コンピュータ・ソフトウェアを実行するための中央演算処理装置(CPU)などの実行手段35を備える電子制御ユニット34を非常に概略的に示す。実行手段35は、データ・バス36を介して、例えばRAM型のメモリ37と連絡する。また、制御ユニット34は、例えばROM、PROM、EPROM、又はEEPROM型のメモリ、又はフラッシュ・メモリの形態のデータ記憶媒体38をも含む。実行手段はデータ・バス36を介してデータ記憶媒体38と連絡する。本発明による方法を履行するためのコンピュータ・プログラム・コードを含むコンピュータ・プログラムは、データ記憶媒体38に記憶される。
【0032】
本発明は、決して上述の実施例に限定されるものではない。反対に、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の基本的な概念から逸脱することなく、修正が充分可能であることが、当業者にとって明白であろう。
【0033】
計算手段は、連続して又は非常に短い間隔で計算が実行されるように適合されていることが好ましく、その結果、もはや常用ブレーキが必要ない場合にはすぐにスイッチを切ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下り坂の運転中に自動車両の制動を制御するシステムであって、該自動車両が、
常用摩擦ブレーキ(19〜24)を備える少なくとも1つの車軸(2〜4)と、
制動作用を得るために前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)に作用するように適合された常用摩擦制動装置(18)と、
前記常用摩擦制動装置(18)を介して前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の少なくとも前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)を始動させるためのブレーキ・ペダルと、
制動作用を得るために前記自動車両の駆動される車軸(3)に作用するように適合され、リターダ・ブレーキ(26)及び該リターダ・ブレーキを手で始動させるためのレバー(40)を具備する補助制動装置(25)と
を含み、
前記システムが、前記補助制動装置によって得ることのできる制動作用を得ることが所望される場合、リターダ・ブレーキを始動させて作用させる補助制動モードを選択するように適合された制動制御手段(28)を含む、自動車両の制動を制御するシステムにおいて、
前記システムが計算手段(29)を含み、該計算手段(29)は、前記自動車両の運転条件のパラメータの値に基づいて、下り坂運転時に前記自動車両に制動作用を適用するために、運転者が前記レバー(40)を作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させる際に、前記補助制動装置(25)だけで前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができるかどうかを計算するように適合されていること、及び
前記計算手段の計算の結果、前記補助制動装置のみでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができない場合に、前記自動車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために前記常用摩擦制動装置(18)を始動させるように、前記制動制御手段が適合されていること
を特徴とする自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項2】
前記自動車両が速度計(30)を有し、
前記計算手段(29)が、前記自動車両の実際の速度についての前記速度計からの情報、及び前記自動車両に適用される前記制動作用に対応する総制動トルクの値についての前記制動制御手段からの情報に、前記計算の基礎を置くように適合されていること、並びに
前記計算手段が、前記自動車両の速度が所与の前記総制動トルクの値に対して第1の所定の速度値よりも小さい場合に、前記補助制動装置(25)のみでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定するように適合されていること
を特徴とする請求項1に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項3】
前記計算手段(29)が、前記総制動トルクの値が増加すると減少する前記第1の所定の速度レベルを使用するように適合されていることを特徴とする請求項2に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項4】
前記計算手段(29)が、前記自動車両に適用される前記制動作用に対する総制動トルクの値についての前記制動制御手段(28)からの情報に前記計算の基礎を置き、前記総制動トルクの値を所定の総制動トルク閾値と比較し、前記総制動トルクの値が前記総制動トルク閾値を超える場合に、前記補助制動装置(25)のみでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定するように適合されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項5】
前記自動車両が速度計(30)を有しており、
前記計算手段(29)が、前記速度計からの前記自動車両の実際の速度についての情報を考慮するように適合され、下り坂運転時に制動作用が前記自動車両に適用される際、前記自動車両の速度が第2の所定の速度値よりも小さいとすぐに、前記補助制動装置(25)が前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定するように適合されていること、及び
次いで前記レバーを作動させることによる前記リターダ・ブレーキ(26)の始動に際して、前記制動制御手段(28)が、前記自動車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために前記常用摩擦制動装置(18)を自動的に始動させるように適合されていること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項6】
前記自動車両が変速機(14)を有し、
前記計算手段(29)が、下り坂運転中にギア変速の指令を前記自動車両の前記運転条件として考慮し、前記補助制動装置(25)が現行の条件下でギア変速中に前記自動車両の前記速度を所定の範囲内に保つことができるかどうかを計算するように適合されること、及び
前記レバーを作動させることによる前記リターダ・ブレーキ(26)の始動に際して、前記計算手段が、前記補助制動装置のみからの制動作用だけではギア変速作用中に前記範囲内に前記自動車両の速度を保つことができないと判定する場合に、前記制動制御手段(28)が、前記補助制動装置(18)を助けるために前記常用摩擦制動装置を始動させるように適合されていること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項7】
指令が下り坂運転中にギア変速を実行するように与えられた場合、前記計算手段(29)は、前記補助制動装置(25)が前記自動車両の現行の運転条件でギア変速中に前記自動車両の速度を実質的に一定に保つことができるかどうかを計算するように適合されていること、及び
下り坂運転中にギア変速を実行するために前記自動車両を制動する前記レバーを作動させることによる前記リターダ・ブレーキ(26)の始動に際して、前記計算手段が前記補助制動装置だけでは前記ギア変速中に前記自動車両の速度を実質的に一定に保つことができないと判定する場合、前記制動制御手段(28)が、前記自動車両を制動中に前記補助制動装置を助けるために前記常用摩擦制動装置(18)を始動させるように適合されていること
を特徴とする請求項6に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項8】
前記自動車両が、自動又は半自動変速機(14)を有しており、
前記計算手段(29)が、前記自動車両の前記運転条件として下り坂運転中にギア変速の指令を考慮し、前記補助制動装置(25)が意図されたギア変速中に前記自動車両の内燃機関の出力軸の回転数を所定値の値を超えて上昇させる必要なしに前記変速機のクラッチでゼロトルクを得ることができるような速度に前記自動車両の速度を保つことができるかどうかを計算し、前記補助制動装置だけではこれが可能でない場合に前記制動作用を得ることができないと判定するように適合されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項9】
前記自動車両が変速機(14)を含み、
前記計算手段が、前記補助制動装置(25)だけでは前記自動車両の下り坂運転中に変速中に前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定するように適合されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された自動車両の制動を制御するシステム。
【請求項10】
下り坂運転中に自動車両のブレーキを制御する方法であって、前記自動車両が、
常用摩擦ブレーキ(19〜24)を有する少なくとも1つの車軸(2〜4)と、
制動作用を得るための前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)に作用するように適合された常用摩擦制動装置(18)と、
前記常用摩擦制動装置(18)を介して前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の少なくとも前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)を始動させるためのブレーキ・ペダルと、
制動作用を得るために前記自動車両の駆動される車軸(3)に作用するように適合され、リターダ・ブレーキ(26)及び前記リターダ・ブレーキを手で始動させるためのレバー(40)を具備する補助制動装置(25)と
を含み、
前記方法が、前記補助制動装置によって得られる制動作用を得ることが所望される場合に、前記リターダ・ブレーキを始動させて作用させる補助ブレーキ・モードを選択するステップを含む、自動車両のブレーキを制御する方法において、該方法が
下り坂運転中に制動作用が前記自動車両に適用される場合に、前記レバーを作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させるステップと、
前記自動車両の運転条件のパラメータの値に基づき、前記補助制動装置だけで前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができるかどうかを計算するステップと、
前記計算の結果により、前記補助制動作用だけでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができない場合に、前記自動車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために前記常用摩擦制動装置(18)を自動的に始動させるステップと
を更に含むことを特徴とする自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項11】
前記自動車両の速度を計測するステップと、
前記自動車両の実際の速度についての情報、及び前記自動車両に適用される前記制動作用に対応する総制動トルクの値についての情報に前記計算の基礎を置くステップと、
前記自動車両の速度が、前記総制動トルクの所与の値に対して第1の所定の速度値よりも小さい場合に、前記補助制動装置(25)だけでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定するステップと
を含むことを特徴とする請求項10に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項12】
前記判定するステップにおいて、前記総制動トルクの値が増加すると減少する前記第1の所定の速度レベルを使用することを特徴とする請求項11に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項13】
前記計算するステップにおいて、前記計算が、前記自動車両に適用される前記制動作用に対応する総制動トルクの値についての情報に基づき、前記総制動トルク値を所定の総制動トルク閾値と比較すること、及び
前記総制動トルクの値が前記総制動トルクの閾値を超える場合に、前記補助制動装置(25)だけでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定すること
を特徴とする請求項10から請求項12までのいずれか1項に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項14】
前記自動車両の前記速度を測定する前記ステップを含むこと、
前記計算するステップにおいて、前記自動車両の前記実際の速度についての情報を考慮すること、
下り坂運転時に制動作用が前記自動車両に適用される場合に、前記自動車両の速度が第2の所定の速度値よりも小さくなるとすぐに、前記補助制動装置(25)だけでは前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定すること、及び
次いで、前記レバーを作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させて、前記自動車両を制動中に前記補助制動装置を助けるために、前記常用摩擦制動装置(18)を自動的に始動させること
を特徴とする請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項15】
前記方法が、下り坂運転中に、変速機(14)を有する自動車両の制動を制御するために実行され、
前記計算するステップにおいて、下り坂運転中に変速の指令を前記自動車両の前記運転条件として考慮すること、
前記補助制動装置(25)が現行の条件下でギア変速中に所定の範囲内に前記自動車両の速度を保つことができるかどうかを計算すること、及び
前記レバーを作動させることによる前記リターダ・ブレーキ(26)の始動に際して、ギア変速作用中に前記補助制動装置だけからの制動作用により前記自動車両の速度を前記範囲内に保つことができないと前記計算により判定される場合に、前記常用摩擦制動装置(18)を、前記補助制動装置を助けるために始動させること
を特徴とする請求項10から請求項14までのいずれか1項に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項16】
前記計算するステップにおいて、下り坂運転中にギア変速を実行するように指令が与えられる場合、現行の前記自動車両の運転条件でギア変速中に前記自動車両の速度を実質的に一定に保つことができるかどうかを計算すること、及び
下り坂運転中にギア変速を実行するように前記自動車両を制動する前記レバーを作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させる際に、前記計算によって前記補助制動装置だけでは前記ギア変速中に前記自動車両の速度を実質的に一定に保つことができないと判定される場合に、前記常用摩擦制動装置(18)を、前記自動車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために始動させること
を特徴とする請求項15に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項17】
前記方法が、自動又は半自動変速機(14)を備える自動車両の制動を制御するように実行され、
前記計算するステップにおいて、下り坂運転中にギア変速の指令を前記自動車両の前記運転条件として考慮すること、
前記補助制動装置(25)が前記自動車両の内燃機関の出力軸の回転数を所定の値を超えて上げる必要なしに、ギア変速中に前記変速機のクラッチでゼロトルクが得ることができるような速度に前記自動車両の速度を保つことができるかどうかを計算すること、及び
前記補助制動装置だけではこれが可能でない場合に前記制動作用を得ることができないと判定すること
を特徴とする請求項15又は請求項16に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項18】
前記方法が、変速機(14)を備える自動車両の制動を制御する方法であり、
前記計算するステップにおいて、前記補助制動装置(25)だけでは前記自動車両の下り坂運転中にギア変速中に前記自動車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定することを特徴とする請求項10から請求項14までのいずれか1項に記載された自動車両のブレーキを制御する方法。
【請求項19】
車両のコンピュータの内部メモリにロード可能なコンピュータ・プログラムであって、常用摩擦ブレーキ(19〜24)を有する少なくとも1つの車軸(2〜4)と、制動作用を得るための前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)に作動させるように適合された常用摩擦制動装置(18)と、前記常用摩擦制動装置(18)を介して前記少なくとも1つの車軸(2〜4)の少なくとも前記常用摩擦ブレーキ(19〜24)を始動させるブレーキ・ペダルと、制動作用を得るために前記車両の駆動される車軸に作動させるように適合され、リターダ・ブレーキ(26)及び前記リターダ・ブレーキを手で始動させるためのレバー(40)を具備する補助制動装置(25)とを含む車両のために、
前記補助制動装置によって得られる制動作用を得ることを所望される場合に、前記リターダ・ブレーキを始動させて作用させる補助制動モードを得ること、
制動作用が下り坂運転時に前記車両に適用される場合に、前記レバーを作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)の始動を得ること、
前記車両の運転条件のパラメータの値に基づき、前記補助制動装置だけで前記車両に適用される前記制動作用を得ることができるかどうかを計算すること、及び
前記計算の結果により前記補助制動装置だけでは前記車両に適用される前記制動作用を得ることができない場合に、前記車両を制動する際に前記補助制動装置(25)を助けるために前記常用摩擦制動装置(18)の始動を得ること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有するコンピュータ・プログラム。
【請求項20】
前記コンピュータ・プログラムが、
前記車両の速度の測定値を得ること、
前記車両の実際の速度についての情報、及び前記車両に適用される前記制動作用に対応する総制動トルクの値についての情報に前記計算の基礎を置くこと、並びに
前記車両の速度が、前記総制動トルクの所与の値に対して第1の所定の速度値よりも小さい場合に、前記補助制動装置(25)だけでは前記車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定すること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項19に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項21】
前記コンピュータ・プログラムが、
前記判定において、前記総制動トルクの値が増加すると減少する前記第1の所定の速度レベルを使用することを
前記コンピュータに行わせるコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項20に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項22】
前記コンピュータ・プログラムが、
前記計算が、前記車両に適用される前記制動作用に対応する総制動トルクの値についての情報に基づくこと、
前記総制動トルクの値を所定の総制動トルク閾値と比較すること、及び
前記総制動トルクの値が前記総制動トルク閾値を超える場合に前記補助制動装置(25)だけでは前記車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定すること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項19から請求項21までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項23】
前記コンピュータ・プログラムが、
前記車両の前記速度の測定値を得ること、
前記計算中に前記車両の前記実際の速度についての情報を考慮すること、
下り坂運転時に制動作用が前記車両に適用される際、前記車両の速度が第2の所定の速度値よりも小さくなるとすぐに、前記補助制動装置(25)だけでは前記車両に適用される前記制動作用を得ることができないと判定すること、及び
次いで前記レバーを手で作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させる際に、前記車両の速度が前記第2の所定の速度値よりも小さい場合に、前記車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために、前記常用摩擦制動装置(18)を始動させることを自動的に得ること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項19から請求項22までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項24】
前記コンピュータ・プログラムが、変速機を備える車両のために、
下り坂運転中にギア変速の指令を前記計算中に前記車両の前記運転条件として考慮すること、
前記補助制動装置(25)が現行の条件でギア変速中に前記車両の速度を所定の範囲内に保つことができるかどうかを計算すること、及び
前記レバーを手で作動させることによる前記リターダ・ブレーキ(26)の始動の際に、前記計算により、ギア変速作用中に前記補助制動装置だけからの制動作用によって前記車両の速度値を前記範囲内に保つことができないと判定される場合に、前記補助制動装置を助けるために、前記常用摩擦制動装置(18)を始動させることを得ること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項19から請求項23までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項25】
前記コンピュータ・プログラムが、
下り坂運転中にギア変速を実行するように指令が与えられる場合、現行の前記車両の運転条件で、前記補助制動装置(25)が、ギア変速中に前記車両の速度を実質的に一定に保つことができるかどうかを計算すること、及び
下り坂運転中にギア変速を実行するように前記車両を制動する前記レバーを作動させることにより前記リターダ・ブレーキ(26)を始動させる際に、前記補助制動装置だけでは前記ギア変速中に前記車両の速度を実質的に一定に保つことができないと前記計算によって判定される場合に、前記車両の制動中に前記補助制動装置を助けるために、前記常用摩擦制動装置(18)を始動させることを得ること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項24に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項26】
前記コンピュータ・プログラムが、自動又は半自動変速機を備える車両のために、
前記計算において、下り坂運転中にギア変速の指令を前記車両の前記運転条件として考慮すること、
前記補助制動装置(25)が前記車両の内燃機関の出力軸の回転数を所定の値を超えて上げる必要なしに、ギア変速中に前記変速機のクラッチでゼロトルクが得ることができるような速度に前記車両の速度を保つことができるかどうかを計算すること、及び
これが可能でない場合に、前記補助制動装置だけでは前記制動作用を得ることができないと判定すること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項24又は請求項25に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項27】
前記コンピュータ・プログラムが、変速機を備える車両のために、
前記補助制動装置(25)だけでは前記車両の下り坂運転中にギア変速中に前記車両に適用される前記制動作用を得ることができないことを前記計算において判定すること
を前記コンピュータに行わせるためのコンピュータ・プログラム・コードを有することを特徴とする請求項19から請求項23までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラム。
【請求項28】
電子ユニットによって読取り可能なデータ記憶媒体を含むコンピュータ・プログラム製品において、請求項19から請求項27までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラムが前記データ記憶媒体に記憶されている、コンピュータ・プログラム製品。
【請求項29】
実行手段、該実行手段に接続されたメモリ、及び前記実行手段に接続されたデータ記憶媒体を含む電子ユニットにおいて、請求項19から請求項27までのいずれか1項に記載されたコンピュータ・プログラムが前記データ記憶媒体に記憶されている、電子ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538253(P2009−538253A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511983(P2009−511983)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050348
【国際公開番号】WO2007/139489
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(500190915)スカニア シーブイ アクチボラグ(パブル) (64)
【Fターム(参考)】