説明

不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子

【課題】不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子を提供する。
【解決手段】両電極の間にメモリ層を含み、該メモリ層は複数層構造を持つ不揮発性メモリ要素である。メモリ層は、ベース層及びイオン種交換層を含み、これらの間のイオン種の移動による抵抗変化特性を持つ。イオン種交換層は、少なくとも2つの層を含む複数層構造を持つ。不揮発性メモリ要素は、複数層構造のイオン種交換層によりマルチビットメモリ特性を持つ。ベース層は酸素供給層であり、イオン種交換層は酸素交換層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリ素子には、ReRAM(Resistance Random Access Memory)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、PRAM(Phase−Change Random Access Memory)などがある。ここで、ReRAM、すなわち、抵抗性メモリ素子は、抵抗変化特性を用いてデータを保存するメモリ素子である。抵抗変化物質にセット電圧以上の電圧が印加されれば、前記抵抗変化物質の抵抗が低くなる。この時をオン(ON)状態という。そして、抵抗変化物質にリセット電圧以上の電圧が印加されれば、前記抵抗変化物質の抵抗が高くなる。この時をオフ(OFF)状態という。
【0003】
一般的に、抵抗性メモリ素子は、抵抗変化層を含むストレージノードと、これに電気的に連結されたスイッチング素子とを含む。スイッチング素子は、それに連結されたストレージノードへの信号アクセスを制御する役割を行う。
【0004】
前述した抵抗性メモリ素子をはじめとする多様な不揮発性メモリ素子の高性能化及び高集積化への要求が高まりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抵抗変化特性を用いた不揮発性メモリ要素を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、マルチビットメモリ特性を持つ不揮発性メモリ要素を提供することを目的とする。
【0007】
さらに本発明は、動作電圧を低減する不揮発性メモリ要素を提供することを目的とする。
【0008】
さらに本発明は、前記不揮発性メモリ要素を含むメモリ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、第1電極と、前記第1電極と離隔する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられたメモリ層と、を備え、前記メモリ層はベース層及びイオン種交換層を備え、これらの間のイオン種移動により抵抗変化特性を持ち、前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含む複数層構造を持つ不揮発性メモリ要素が提供される。
【0010】
前記ベース層が、酸素供給層であり、前記イオン種交換層が、酸素交換層である。
【0011】
前記不揮発性メモリ要素が、前記複数層構造のイオン種交換層によりマルチビットメモリ特性を持つ。
【0012】
前記イオン種交換層が、第1交換層及び第2交換層を含む。この場合、前記第1交換層が、前記ベース層と前記第2電極との間に備えられ、前記第2交換層が、前記第1交換層と前記第2電極との間に備えられる。
【0013】
前記第1交換層と前記第2交換層とが、相異なる金属酸化物で形成される。前記第1交換層が第1金属酸化物で形成され、前記第2交換層が前記第1金属酸化物と金属組成の異なる第2金属酸化物で形成される。
【0014】
前記第2交換層の比抵抗が、前記第1交換層の比抵抗より高い。
【0015】
前記第2交換層の酸素親和性が、前記第1交換層の酸素親和性より大きいか、または同じである。
【0016】
前記ベース層に対する前記第2交換層の伝導帯オフセットが、前記ベース層に対する前記第1交換層の伝導帯オフセットより大きい。
【0017】
前記第2交換層の厚さが、前記第1交換層の厚さより小さいか、または同じである。
【0018】
前記第1交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0019】
前記第2交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0020】
前記ベース層が、金属酸化物を含む。
【0021】
前記ベース層の酸素濃度が、前記イオン種交換層の酸素濃度より低い。
【0022】
前記ベース層の金属酸化物が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0023】
前記ベース層の金属酸化物が、TaO(ここで、xは、0<x<2.5)を含む。
【0024】
前記不揮発性メモリ要素が、前記第1電極と前記メモリ層との間に備えられたバッファ層をさらに含む。
【0025】
前記バッファ層が、第1電極と前記メモリ層との間の電位障壁を高める物質を含む。
【0026】
本発明の他の側面によれば、前述した不揮発性メモリ要素を含むメモリ素子が提供される。
【0027】
前記メモリ素子が、前記不揮発性メモリ要素に連結されたスイッチング要素をさらに含む。
【0028】
本発明の他の側面によれば、互いに平行になるように配列された複数の第1配線と、前記第1配線と交差し、互いに平行になるように配列された複数の第2配線と、前記第1及び第2配線の交差点それぞれに備えられたメモリセルと、を備え、前記メモリセルはメモリ層を備え、前記メモリ層はベース層とイオン種交換層とを備え、これら間のイオン種移動により抵抗変化特性を持ち、前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含む複数層構造を持つメモリ素子が提供される。
【0029】
前記ベース層が酸素供給層であり、前記イオン種交換層が酸素交換層である。
【0030】
前記メモリ層が、前記複数層構造のイオン種交換層によりマルチビットメモリ特性を持つ。
【0031】
前記メモリセルが、前記メモリ層と前記第2配線との間に備えられたスイッチング要素と、前記メモリ層と前記スイッチング要素との間に備えられた中間電極と、をさらに備える。
【0032】
前記イオン種交換層が、第1交換層及び第2交換層を含み、前記第1交換層が、前記ベース層と前記第2交換層との間に備えられる。
【0033】
前記第1交換層と前記第2交換層とが、相異なる金属酸化物で形成される。前記第1交換層が第1金属酸化物で形成され、前記第2交換層が前記第1金属酸化物と金属組成の異なる第2金属酸化物で形成される。
【0034】
前記第2交換層の比抵抗が、前記第1交換層の比抵抗より高い。
【0035】
前記第2交換層の酸素親和性が、前記第1交換層の酸素親和性より大きいか、または同じである。
【0036】
前記ベース層に対する前記第2交換層の伝導帯オフセットが、前記ベース層に対する前記第1交換層の伝導帯オフセットより大きい。
【0037】
前記第1交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0038】
前記第2交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0039】
前記ベース層が、金属酸化物を含む。
【0040】
前記ベース層の金属酸化物が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0041】
前記ベース層の金属酸化物が、TaO(ここで、xは、0<x<2.5)を含む。
【0042】
前記メモリセルが、前記第1配線と前記メモリ層との間に備えられたバッファ層をさらに含む。
【0043】
前記メモリセルが、第1メモリセルであり、前記第2配線上に前記第2配線と交差するように配列された複数の第3配線と、前記第2及び第3配線の交差点それぞれに備えられた第2メモリセルと、をさらに備える。
【0044】
前記第2メモリセルが、前記第1メモリセルの逆構造またはそれと同じ構造を持つ。
【0045】
本発明の他の実施形態によれば、第1電極、第2電極、及びこれらの間に備えられた抵抗変化メモリ層を備え、前記抵抗変化メモリ層が、ベース層及びイオン種交換層を備え、前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含む不揮発性メモリ要素が提供される。
【0046】
本発明の他の実施形態によれば、複数の第1配線、前記第1配線と交差する複数の第2配線、並びに前記第1及び第2配線間の第1交差点それぞれに備えられた第1メモリセルを備え、前記第1メモリセルそれぞれが、抵抗変化メモリ層を備え、前記抵抗変化メモリ層それぞれが、ベース層及びイオン種交換層を備え、前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含むメモリ素子が提供される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、高集積化及び高性能化に有利な不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子を実現できる。
【0048】
また本発明によれば、マルチビットメモリ特性を持つ不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子を実現できる。
【0049】
また本発明によれば、動作電圧を低減できる不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態によるメモリ要素を示す断面図である。
【図2A】本発明の実施形態によるメモリ要素の動作メカニズムを説明するための断面図である。
【図2B】本発明の実施形態によるメモリ要素の動作メカニズムを説明するための断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態によるメモリ要素を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン/オフ電流比の変化を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態によるメモリ要素のスイッチング条件別スイッチング回数によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態と比較される比較例によるメモリ要素を示す断面図である。
【図8】図7の比較例によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。
【図9】図7の比較例によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン/オフ電流比の変化を示すグラフである。
【図10】図7の比較例によるメモリ要素のスイッチング条件別スイッチング回数によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態によるメモリ要素を適用したメモリ素子を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態によるメモリ要素を適用したメモリ素子を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施形態によるメモリカードを概略的に示す概念図である。
【図14】本発明の実施形態による電子システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態による不揮発性メモリ要素及びこれを含むメモリ素子を、添付した図面を参照して詳細に説明する。添付した図面に図示された層や領域の幅及び厚さは、明細書の明確性のために誇張して図示されている。そして、添付した図面で同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0052】
図1は、本発明の実施形態による不揮発性メモリ要素ME1を示す断面図である。
【0053】
図1を参照すれば、本発明の実施形態による不揮発性メモリ要素(以下、メモリ要素)ME1は、第1及び第2電極E1、E2の間にメモリ層M1を含む。メモリ層M1は複数層構造を持つ。例えば、メモリ層M1は、ベース層10及びイオン種交換層20を含む。この場合、メモリ層M1は、ベース層10とイオン種交換層20との間のイオン種の移動による抵抗変化特性を持つ。これについては後述する。
【0054】
ベース層10は、金属酸化物で形成される。具体的な例として、ベース層10は、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア(yttria−stabilized zirconia,YSZ)、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。金属酸化物がTa酸化物を含む場合、Ta酸化物は、TaO(ここで、xは、0<x<2.5または0.5≦x≦2.0)でありうる。ベース層10内に酸素イオン及び/または酸素空孔(vacancy)が存在する。このようなベース層10は、イオン種交換層20に対して“酸素供給層”として作用する。ベース層10の厚さは約1ないし100nm、例えば、約5ないし50nmでありうる。
【0055】
イオン種交換層20は、ベース層10と所定のイオン種を交換し、かつメモリ層M1の抵抗変化を誘導する層でありうる。この時、イオン種は、酸素イオン及び/または酸素空孔でありうる。かかる点で、イオン種交換層20は、“酸素交換層”といえる。イオン種交換層20は、少なくとも2つの層を含む複数層構造を持つ。例えば、イオン種交換層20は、相異なる材料で形成された第1交換層21及び第2交換層22を含む二重層構造を持つ。第1交換層21は、ベース層10と第2電極E2との間に備えられ、第2交換層22は、第1交換層21と第2電極E2との間に備えられる。イオン種交換層20が酸素交換層である場合、第1交換層21は第1酸素交換層であり、第2交換層22は第2酸素交換層であるといえる。第1交換層21及び第2交換層22のそれぞれは、ベース層10と酸素イオン及び/または酸素空孔を交換し、かつメモリ層M1の抵抗変化を誘導できる。特に、第2交換層22は、ベース層10及び第1交換層21と酸素イオン及び/または酸素空孔を交換し、かつメモリ層M1の抵抗変化を誘導できる。したがって、第1及び第2交換層21、22の特性、特に、第2交換層22の特性によってメモリ層M1の抵抗変化特性(例えば、抵抗変化の幅)及び動作条件などが変化する。このような複数層構造のイオン種交換層20を使用することで、メモリ層M1の抵抗変化幅が大きくなり、多様な抵抗状態(例えば、4つ以上の抵抗状態)を用いることが可能になる。これと関連して、メモリ層M1はマルチビットメモリ特性を持つ。また、メモリ層M1の動作電圧が低くなって電力消費が低減する効果も得られる。このように、本実施形態によるメモリ要素ME1は、相異なる材料で形成された複数の層21、22を含むイオン種交換層20を用いることで、前述したような多様な効果を得る。これについては、今後に図4ないし図6などを参照してさらに詳細に説明する。
【0056】
第1交換層21及び第2交換層22は、相異なる金属酸化物(すなわち、異種の金属酸化物)で形成される。すなわち、第1交換層21が第1金属酸化物で形成される場合、第2交換層22は、第1金属酸化物と異種の第2金属酸化物で形成される。第1金属酸化物と第2金属酸化物とは、相異なる金属組成を持つ。例えば、第1交換層21は、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、YSZ、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物で構成されたグループから選択されたいずれか一つを含む。第2交換層22は、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、YSZ、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物で構成されたグループから選択されたいずれか一つを含むが、この時に選択された材料は、第1交換層21の材料とは異なる。第1交換層21を構成する第1金属酸化物と第2交換層22を構成する第2金属酸化物のうち一つは、ベース層10を構成する金属酸化物と同種の酸化物であっても、そうでなくてもよい。第1及び第2金属酸化物のうち一つが、ベース層10を構成する金属酸化物と同種の酸化物であるとしても、これらの組成比/物性などは互いに異なりうる。
【0057】
第2電極E2に近く配された第2交換層22の比抵抗は、ベース層10に近く配された第1交換層21の比抵抗より大きい。メモリ層M1がオフ状態である時、第2交換層22の比抵抗が第1交換層21の比抵抗より大きい場合、第2交換層22によりメモリ層M1のオフ・カレント(OFF−current)レベルが低くなる。
【0058】
第2交換層22とベース層10との間の伝導帯オフセットは、第1交換層21とベース層10との間の伝導帯オフセットより大きい。言い換えれば、第2交換層22とベース層10との間の電位障壁は、第1交換層21とベース層10との間の電位障壁より高い。したがって、第2交換層22によりベース層10と第2電極E2との間の過度な電流フローが抑制される。
【0059】
第2交換層22の酸素親和性は、第1交換層21の酸素親和性より大きいか、または同じである。メモリ要素ME1の動作過程で、ベース層10から第1及び第2交換層21、22へ酸素イオンが移動できるが、もし、第2交換層22の酸素親和性が低ければ、酸素イオンが第2交換層22へ移動し難い。第2交換層22の酸素親和性が第1交換層21の酸素親和性と同等であるか、またはそれより高い時、第2交換層22が酸素交換層の役割を容易に行える。酸素親和性と関連する本説明は、第1及び第2交換層21、22が“酸素交換層”である場合についてのものである。第1及び第2交換層21、22により交換されるイオン種が酸素ではない場合であっても、前記の思想はそのまま適用される。したがって、酸素ではない他のイオン種を用いる場合、該イオン種に対する第2交換層22の親和性は、第1交換層21のそれと同等であるか、またはそれより大きい。
【0060】
一方、イオン種交換層20とベース層10との材料/物性の差についてさらに詳細に説明すれば、次の通りである。第1交換層21の金属酸化物(第1金属酸化物)または第2交換層22の金属酸化物(第2金属酸化物)は、ベース層10の金属酸化物と同種あるいは異種の酸化物でありうる。第1及び第2金属酸化物のうち一つがベース層10を構成する金属酸化物と同種の酸化物であるとしても、これらの組成比/物性は互いに異なる。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物は、化学量論的な組成またはそれに類似した組成を持つ。具体的な例として、第1金属酸化物がTa酸化物を含む場合、Ta酸化物はTaであるか、これに類似した組成を持つ。ベース層10がTa酸化物を含む場合、その組成がTaOと表現され、ここで、xは0<x<2.5または0.5≦x≦2.0であることを考慮すれば、第1交換層21を構成する第1金属酸化物の酸素濃度は、ベース層10の酸素濃度より高い。これと類似して、第2交換層22を構成する第2金属酸化物の酸素濃度もベース層10の酸素濃度より高い。しかし、場合によってはイオン種交換層20の酸素濃度はベース層10の酸素濃度より高くないこともありうる。第1交換層21または第2交換層22がベース層10と同種の金属酸化物で形成された場合、第1交換層21または第2交換層22の酸素濃度は、ベース層10の酸素濃度より高い。しかし、第1交換層21または第2交換層22がベース層10と異種の金属酸化物で形成された場合、第1交換層21または第2交換層22の酸素濃度がベース層10の酸素濃度より必ずしも高い必要はない。第1交換層21及び/または第2交換層22の酸素移動度(または酸素拡散度)は、ベース層10の酸素移動度(または酸素拡散度)とほぼ同じであるか、またはそれより大きい。第1交換層21及び/または第2交換層22の比抵抗は、ベース層10の比抵抗より大きい。イオン種交換層20に電流経路が形成されたオン状態で、メモリ層M1の抵抗はベース層10の抵抗により決定され、イオン種交換層20に電流経路のないオフ状態で、メモリ層M1の抵抗はイオン種交換層20の抵抗により決定される。
【0061】
第1交換層21は、約1ないし50nmの厚さ、例えば、約5ないし20nmの厚さを持つ。第1交換層21の厚さは、ベース層10の厚さより薄い。第2交換層22は第1交換層21と同等な厚さを持つか、または第1交換層21より薄い厚さを持つ。第2交換層22が第1交換層21より薄い厚さを持つ場合、第2交換層22の厚さは約1ないし30nm、例えば、約1ないし15nmである。第2交換層22の比抵抗が第1交換層21の比抵抗より大きいため、第2交換層22の厚さが厚すぎる場合、イオン種交換層20全体の抵抗が所望しないレベルにまで高くなりうる。
【0062】
第1及び第2電極E1、E2は、Pt、Ir、Pd、Au、Ruなどの貴金属やこれらの合金で形成される。または第1及び第2電極E1、E2は、Ti、Ta、TiN、TiW、TaN、W、Ni、Alなどの非貴金属やこれらの合金で形成される。第1及び第2電極E1、E2は、貴金属と非貴金属との合金で形成されてもよい。また、第1及び第2電極E1、E2は、導電性酸化物で形成されてもよい。導電性酸化物は、例えば、IZO(indium zinc oxide)などのZnO系列酸化物またはITO(indium tin oxide)などのSnO系列酸化物であるか、その外に他の酸化物、例えば、IrOなどの金属酸化物でありうる。ここで開示していないが、半導体素子の分野で一般的に使用する多様な電極材料を第1及び第2電極E1、E2の材料に適用できる。
【0063】
以下では、図2A及び図2Bを参照して、メモリ要素ME1の抵抗変化メカニズムについてさらに具体的に説明する。
【0064】
図2Aに示したように、第1電極E1に正(+)の電圧が印加され、かつ第2電極E2に負(−)の電圧が印加されるセット動作時、酸素空孔がベース層10からイオン種交換層20に移動してイオン種交換層20内に電流経路(図示せず)が形成される。これにより、メモリ層M1の抵抗は低くなる。すなわち、メモリ層M1は、オフ状態からオン状態に変化する。セット動作で、酸素イオンは酸素空孔と逆方向、すなわち、イオン種交換層20からベース層10に移動する。第1交換層21の酸素イオンがベース層10に移動し、第2交換層22の酸素イオンがベース層10に移動する。また、第2交換層22の酸素イオンが第1交換層21に移動する。第2交換層22から第1交換層21に移動した酸素イオンのうち少なくとも一部がベース層10に移動する。
【0065】
一方、図2Bに示したように、第1電極E1に負(−)の電圧が印加され、かつ第2電極E2に正(+)の電圧が印加されるリセット動作時、酸素空孔はイオン種交換層20からベース層10に移動し、酸素イオンはベース層10からイオン種交換層20に移動する。酸素イオンはベース層10から第1交換層21に移動するか、または第2交換層22に移動する。また、第1交換層21の酸素イオンが第2交換層22に移動してもよい。このように、酸素イオン及び酸素空孔が移動すると、イオン種交換層20内に形成された電流経路(図示せず)が切れることがある。したがって、メモリ層M1の抵抗は高くなりうる。すなわち、メモリ層M1は、オン状態からオフ状態に変化する。
【0066】
前述したように、イオン種交換層20が相異なる材料で形成された複数の層21、22を含むことと関連して、メモリ層M1の抵抗変化特性及び動作条件が変化/改善される。イオン種交換層20の構造に起因してメモリ層M1の抵抗変化幅が大きくなり、結果的に、メモリ層M1は、動作電圧の条件によって多様な抵抗状態(例えば、4つ以上の抵抗状態)を持つ。したがって、メモリ層M1は、マルチビットメモリ特性を持つ。またイオン種交換層20の構造に起因してメモリ層M1の動作電圧が低くなり、電力消費が低減する効果も得られる。
【0067】
図1のメモリ要素ME1は多様に変形される。一例として、第1電極E1とベース層10との間に所定のバッファ層がさらに備えられる。その例が図3に図示されている。
【0068】
図3を参照すれば、本実施形態によるメモリ要素ME2は、第1電極E1とベース層10との間にバッファ層B1をさらに含む。バッファ層B1は、メモリ層M1の抵抗変化特性の信頼性、再現性、安定性などを改善する役割を行える。該バッファ層B1は、元素間結合エネルギーがメモリ層M1より大きい材料を含む。すなわち、バッファ層B1での元素間結合エネルギーは、ベース層10での元素間(例えば、Ta−O)結合エネルギーより大きい。言い換えれば、バッファ層B1は、結合エネルギーの側面でメモリ層M1より安定した材料で構成される。また、バッファ層B1は、第1電極E1とメモリ層M1との間の電位障壁を高める材料を含む。言い換えれば、バッファ層B1と第1電極E1との間の伝導帯オフセットは、ベース層10と第1電極E1との間の伝導帯オフセットより大きい。これは、バッファ層B1が第1電極E1とベース層10との間の過度な電流フローを抑制する材料で構成されることを意味する。また、これと類似した観点で、バッファ層B1は、メモリ層M1より比抵抗の高い材料を含む。具体的な例として、バッファ層B1は、AlO、SiO、SiN、ZrO、HfO及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。バッファ層B1は、化学量論的な組成を持つ。バッファ層B1は、バッファの役割を行いつつ電流のフローは許す適宜な組成及び厚さを持つ。バッファ層B1の厚さは、例えば、約10nm以下でありうる。もし、バッファ層B1が化学量論的な組成を持つ場合、その厚さは約5nm以下でありうる。これは、バッファ層B1が厚すぎる場合、その絶縁特性が大きくなるからである。したがって、前述したように、バッファ層B1は約10nm以下の厚さに形成することが好適である。
【0069】
バッファ層B1は、セット/リセット動作時に抵抗変化特性の安定性、信頼性及び再現性を改善する役割を行える。バッファ層B1なしに第1電極E1を反応性の大きい材料(例えば、非貴金属)で形成した場合、セット/リセット動作時に抵抗変化に関与する酸素イオン及び/または酸素空孔が第1電極E1側に移動して第1電極E1と物理/化学的反応を引き起こすか、またはメモリ層M1自体と第1電極E1とが物理/化学的反応を引き起こす。これにより、抵抗変化特性の安定性、信頼性及び再現性等に問題が発生する。オン/オフ動作を繰り返すことで、前記の問題が発生する可能性が大きくなる。しかし、本実施形態のように、第1電極E1とメモリ層M1との間にバッファ層B1を適用すれば、前述した問題点を抑制/防止して抵抗変化特性の安定性、信頼性及び再現性を改善/確保できる。特に、バッファ層B1は、最初のセット動作時(すなわち、フォーミング動作時)、第1電極E1とベース層10との間、そして、第1電極E1とベース層10のイオン種との間の化学的反応を抑制/防止する役割を行える。またバッファ層B1はベース層10を形成する時、ベース層10と第1電極E1との反応も防止できる。これらのバッファ層B1を使用する場合、第1電極E1の材料として、低コストの非貴金属または導電性酸化物を容易に適用できる。第1電極E1を低コストの非貴金属または導電性酸化物で形成する場合、低コストになり工程的にも多様な利点を得る。しかし、バッファ層B1の形成は選択的である。第1電極E1及び/またはベース層10の材料によって、バッファ層B1は不要でありうる。
【0070】
イオン種交換層20の第2交換層22は、前述したようにメモリ特性に影響を与えるだけでなく、バッファ層B1とある程度類似した役割を行える。すなわち、第2交換層22は、メモリ層M1と第2電極E2との間の過度な電流フロー及びこれらM1、E2間の所望しない物理/化学的反応を抑制する役割を行える。しかし、第2交換層22の主要機能は、第1交換層21及びベース層10とイオン種交換によりメモリ特性を表すことであり、バッファ層への機能は付加的なことでありうる。第2電極E2の材料が何かによって、第2交換層22はバッファ層の役割を行わないこともある。
【0071】
図4は、本発明の実施形態によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。図4の結果を得るのに使用したメモリ要素は、W/Al/TaO/Ta/HfO/Pt構造を持つ。すなわち、実施形態によるメモリ要素は図3の構造を持つが、第1電極E1、バッファ層B1、ベース層10、第1交換層21、第2交換層22及び第2電極E2の材料として、それぞれW、Al、TaO、Ta、HfO及びPtを使用する。リセット電圧を3.4Vから4.6Vまで増大させつつオン/オフ電流の変化を測定した。セット電圧は−3.5Vであった。図4でI1は、オン電流レベルを表し、I2は、オフ電流レベルを表す。
【0072】
図4の結果から、リセット電圧の変化によってオフ電流レベルI2が比較的大きい幅で変化することが分かる。すなわち、リセット電圧のレベルによって多様なオフ電流レベルが現れることが分かる。リセット電圧が増大するほど、オフ電流レベルI2は低減した。これらの結果から、本発明の実施形態によるメモリ要素は、動作電圧条件(特に、リセット電圧条件)によって、多様な抵抗状態を持つということが分かる。したがって、メモリ要素を用いれば、マルチビットメモリ特性を実現できる。
【0073】
図5は、図4のグラフを変換して得たものであり、本発明の実施形態によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン/オフ電流比変化を示すグラフである。
【0074】
図5を参照すれば、リセット電圧が約3.4Vから5.0Vに増大するにつれて、オン/オフ電流比が2桁倍、すなわち、100倍以上増大したことが分かる。これは、リセット電圧の増大につれて、メモリ要素のオフ電流レベルが大きく低減したからである。したがって3.4V〜5.0Vの電圧範囲で選択された複数の電圧レベルをリセット電圧として使用すれば、相異なる複数の抵抗状態を実現でき、これを複数のデータ(情報)に対応させることができる。リセット電圧の変化によるオン/オフ電流比の変化幅が大きいため、所定の動作電圧範囲内で互いに明らかに差別化される多くの抵抗状態を実現しやすい。したがって、本実施形態によるメモリ要素を用いれば、マルチビットメモリ特性を容易に実現できる。
【0075】
図6は、本発明の実施形態によるメモリ要素のスイッチング条件別スイッチング回数によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。図6の結果を得るのに使用したメモリ要素は、図4の結果を得るのに使用したメモリ要素と同一であった。すなわち、図6の結果に対応するメモリ要素は、W/Al/TaO/Ta/HfO/Pt構造を持つ。かかるメモリ要素に対して、3.6V、4.1V、4.4Vのリセット電圧を用いてスイッチング動作を繰り返しつつ、オン/オフ電流の変化を測定した。セット電圧は−3.5Vであった。第1グラフG1は、オン電流を表し、第2グラフG2は、リセット電圧が3.6Vである場合のオフ電流を表し、第3グラフG3は、リセット電圧が4.1Vである場合のオフ電流を表し、第4グラフG4は、リセット電圧が4.4Vである場合のオフ電流を表す。
【0076】
図6の結果で示したように、4つのグラフG1〜G4の電流レベルはオーバーラップなしに互いに明らかな差を表すことが分かる。第1グラフG1は、データ“00”に対応し、第2グラフG2は、データ“01”に対応し、第3グラフG3は、データ“10”に対応し、第4グラフG4は、データ“11”に対応する。これらの結果をみれば、スイッチング動作、すなわち、オン/オフ動作を繰り返してもマルチビットメモリ特性が安定的に保持されることが分かる。このように、本実施形態によるメモリ要素はマルチビットメモリ特性を持つことができ、これらの特性は持続的に保持される。
【0077】
図7は、本発明の実施形態と比較される比較例によるメモリ要素を示す断面図である。
【0078】
図7を参照すれば、イオン種交換層20’が単層構造を持つ。イオン種交換層20’は、図3の第1交換層21と同じ物質層でありうる。イオン種交換層20’が単層構造を持つことを除外すれば、図7の構造は図3の構造と同一でありうる。イオン種交換層20’が単層構造を持つ場合、抵抗変化の幅が制限的なため、多様な抵抗状態を実現し難い。また動作電圧(例えば、リセット電圧)が高くなって電力消費が大きくなる。
【0079】
図8は、図7の比較例によるメモリ要素のリセット電圧変化によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。図8の結果を得るのに使用したメモリ要素は、W/Al/TaO/Ta/Pt構造を持つ。すなわち、比較例によるメモリ要素は図4の実施形態によるメモリ要素と類似しているが、第2交換層(HfO)なしに単層構造のイオン種交換層(Ta)を使用した構造である。リセット電圧を3.0Vから6.5Vまで増大させつつオン/オフ電流の変化を測定した。セット電圧は−4.5Vであった。図4でI11は、オン電流レベルを表し、I22は、オフ電流レベルを表す。
【0080】
図8の結果から分かるように、リセット電圧が約4.0Vまで増大してもオフ電流レベルI22がほとんど現れない。リセット電圧が4.5V以上である時、オフ電流レベルI22が現れるが、リセット電圧が4.5Vから6.5Vまで増大する間にオフ電流レベルI22がほとんど変化しないということが分かる。したがって、比較例によるメモリ要素(図7)の場合、リセット電圧に対する抵抗変化依存性が弱いといえる。このように、リセット電圧によるオフ電流レベルI22の変化が少ないため、4つ以上の抵抗状態を用いるマルチビットメモリ特性を実現し難い。また、4.5V以上のリセット電圧でオフ電流レベルI22が現れるということは、比較例によるメモリ要素の動作電圧が4.5V以上であるということを意味する。本発明の実施形態によるメモリ要素の場合、図4から分かるように、約3.5Vの低い電圧でオフ電流レベルI2が現れる。したがって、本発明の実施形態によるメモリ要素の動作電圧が、比較例によるメモリ要素の動作電圧より低い。したがって、本発明の実施形態によるメモリ要素は、比較例によるメモリ要素より省電力面で有利である。
【0081】
図9は、図8のグラフを変換して得たものであり、比較例によるメモリ要素のリセット電圧によるオン/オフ電流比の変化を示すグラフである。これは、図4の結果を図5のグラフに変換したものと類似している。
【0082】
図9を参照すれば、約4.0V以下のリセット電圧では、オン/オフ電流比がほぼ0に近く、4.5V以上のリセット電圧では、オン/オフ電流比が1桁倍ほどに保持されることが分かる。これは、リセット電圧を増大させてもオン/オフ電流比が1桁倍、すなわち、10倍以上増大しないということを意味する。
【0083】
図10は、比較例によるメモリ要素のスイッチング条件別スイッチング回数によるオン及びオフ電流の変化を示すグラフである。比較例によるメモリ要素に対して、5.5Vのリセット電圧及び−4.5Vのセット電圧を用いてスイッチング動作を繰り返しつつ、オン/オフ電流の変化を測定した。図10で、第1グラフG11はオン電流を表し、第2グラフG22はオフ電流を表す。
【0084】
図10の結果で示したように、比較例によるメモリ要素、すなわち、単層構造のイオン種交換層を使用したメモリ要素の場合、2種のレベルの抵抗状態のみ表し、3種以上の抵抗状態を実現し難い。これは、比較例によるメモリ要素は単一ビットメモリ特性を持ち、マルチビットメモリ特性を付与し難いということを意味する。
【0085】
図4ないし図6及び図8ないし図10の結果をまとめれば、本発明の実施形態によるメモリ要素は、複数層構造のイオン種交換層によりマルチビットメモリ特性を持つことができ、かかる特性は持続的に保持されるということが分かる。また本発明の実施形態によるメモリ要素は、比較例によるメモリ要素より低い電圧で動作するということが分かる。
【0086】
以上で述べた本発明の実施形態によるメモリ要素は、多様な構造のメモリ素子に適用できる。この時、メモリ素子は、メモリ要素に連結されたスイッチング要素をさらに含む。
【0087】
図11は、本発明の実施形態によるメモリ要素を適用したメモリ素子の一例を示す斜視図である。本実施形態によるメモリ素子は、交差点抵抗性メモリ素子である。
【0088】
図11を参照すれば、第1方向、例えば、X軸方向に互いに並べて形成された複数の第1配線W10が備えられる。第1方向、例えば、Y軸方向に形成された複数の第2配線W20が備えられる。第1配線W10及び第2配線W20の交差点に第1積層構造物(第1メモリセル)SS1が備えられる。第1積層構造物SS1は、第1配線W10上に順次に積層された第1バッファ層B10、第1メモリ層M10、第1中間電極N10及び第1スイッチング要素S10を含む。第1メモリ層M10は、ベース層10a及びイオン種交換層20Aを含む。イオン種交換層20Aは、2層以上の複数層構造を持つ。例えば、イオン種交換層20Aは、第1交換層21a及び第2交換層22aを含む。第1積層構造物SS1で第1中間電極N10を基準として、下部構造(すなわち、B10+M10)と上部構造(すなわち、S10)との位置は互いに入れ替わってもよい。第1バッファ層B10及び第1メモリ層M10は、それぞれ図3のバッファ層B1及びメモリ層M1に対応する。第1スイッチング要素S10は、双方向ダイオード、しきいスイッチング素子またはバリスタなどで形成できる。第1スイッチング要素S10が双方向ダイオードである場合、双方向ダイオードは酸化物ダイオードでありうる。シリコンダイオードである場合、約800℃の高温工程で形成せねばならないので、基板の選択に制約があり、高温工程による多様な問題が発生する恐れがある。したがって、常温で容易に形成される酸化物層で第1スイッチング要素S10を構成する時、多様な利点がある。しかし、本発明で第1スイッチング要素S10の物質としてシリコンを排除するものではない。場合によって、第1スイッチング要素S10は、シリコンやその他の多様な他の物質で構成されてもよい。第1配線W10及び第1中間電極N10は、それぞれ図1の第1電極E1及び第2電極E2に対応する。第2配線W20は、第1配線W10と同じ物質で形成できるが、場合によっては、そうでないこともある。また第1バッファ層B10は形成しなくてもよい。
【0089】
図11の第2配線W20上に第2メモリセル及び第3配線がさらに備えられる。その一例が、図12に示されている。
【0090】
図12を参照すれば、図11を参照して説明した第1配線W10、第2配線W20及びこれらの間の第1積層構造物(第1メモリセル)SS1が設けられる。そして、第2配線W20の上面と一定間隔離隔して第3配線W30がさらに備えられる。第3配線W30は第2配線W20と交差し、等間隔で配列される。第2配線W20と第3配線W30との交差点には第2積層構造物(第2メモリセル)SS2が備えられる。第2積層構造物SS2は、第1積層構造物SS1を上下にひっくり返した構造(すなわち、逆構造)を持つか、または第1積層構造物SS1と同じ積層構造を持つことができる。ここでは、第2積層構造物SS2が第1積層構造物SS1の逆構造を持つ場合が図示されている。さらに具体的に説明すれば、第2積層構造物SS2は、第2配線W20上に順次に積層された第2スイッチング要素S20、第2中間電極N20、第2メモリ層M20及び第2バッファ層B20を含む。第2メモリ層M20は、イオン種交換層20B及びベース層10bを含む。イオン種交換層20Bは、2層以上の複数層構造を持つ。例えば、イオン種交換層20Bは、第1交換層21b及び第2交換層22bを含む。イオン種交換層20B及びベース層10bは、それぞれ第1積層構造物SS1のイオン種交換層20A及びベース層10aと同じ材料の層でありうる。第2スイッチング要素S20は、第1スイッチング要素S10の逆構造を持つが、場合によっては、第1スイッチング要素S10と同じ積層構造を持つこともある。すなわち、第2スイッチング要素S20のスイッチング方向は、第1スイッチング要素S10と逆であるか、または同一である。第2バッファ層B20は、第1バッファ層B10と同じ材料の層である。場合によっては、第2バッファ層B20を形成しなくてもよい。第2積層構造物SS2で第2中間電極N20を基準として、下部構造(すなわち、S20)と上部構造(すなわち、M20+B20)との位置は互いに入れ替わってもよい。第3配線W30及び第2中間電極N20は、それぞれ図1の第1電極E1及び第2電極E2に対応するか、または第2電極E2及び第1電極E1に対応する。
【0091】
図11及び図12で、第1及び第2積層構造物SS1、SS2は円柱状に図示されているが、これらは四角柱または下方へ行くほど幅が広くなる形態などの多様な変形形状を持つ。例えば、第1及び第2積層構造物SS1、SS2は、第1及び第2配線W10、W20の交差点と第2及び第3配線W20、W30の交差点との外部に拡張した非対称的形態を持ってもよい。その外にも図11及び図12の構造は多様に変形される。
【0092】
ここで、図示していないが、図12の抵抗性メモリ素子は、第3配線W30上に、第1積層構造物SS1及び第2配線W20の積層構造物と同じ構造を持つ積層構造物をさらに含む。
【0093】
または本発明の実施形態による抵抗性メモリ素子は、第3配線W30上に、第1積層構造物SS1、第2配線W20、第2積層構造物SS2及び第3配線W30の積層構造物と同じ構造を持つ積層構造物を少なくとも1セット以上さらに含む。
【0094】
または本発明の実施形態による抵抗性メモリ素子は、第3配線W30上に、第1積層構造物SS1、第2配線W20、第2積層構造物SS2、第3配線W30、第1積層構造物SS1及び第2配線W20が順次に積層された積層構造物と同じ構造を持つ積層構造物を少なくとも1セット以上さらに含む。
【0095】
図11及び図12のメモリ素子で、第1メモリ層M10は、複数層構造のイオン種交換層20Aにより優秀なメモリ特性及び動作特性を持つ。特に、第1メモリ層M10は、イオン種交換層20Aによりマルチビットメモリ特性を持つことができ、低い電圧で動作する。これと類似して、図12の第2メモリ層M20も、イオン種交換層20Bによりマルチビットメモリ特性を持つことができ、低い電圧で動作する。その理由は、図1ないし図10を参照して説明した通りであるため、これについての詳細な説明は略する。
【0096】
このように本発明の実施形態によるメモリ素子は、マルチビットメモリ特性を持つため、単位面積当り保存される情報量増大に有利である。すなわち、高集積メモリ素子の実現に有利である。メモリ素子の線幅を縮めるスケールダウン方法の場合、工程的な限界によってメモリ素子の集積度を高めるのに多くの難点がある。しかし、本発明の実施形態のように、一つのメモリセルにマルチビットデータを保存すれば、単位面積当り保存される情報量を単一ビットメモリ対比2倍あるいはそれ以上に増大させる。したがって、本発明の実施形態はメモリ素子の高集積化に有利である。
【0097】
図13は、本発明の実施形態によるメモリカード500を概略的に示す概念図である。
【0098】
図13を参照すれば、コントローラ510とメモリ520とは、電子信号を交換できる。例えば、コントローラ510の指令(command)によって、メモリ520とコントローラ510とはデータを交換できる。したがって、メモリカード500は、メモリ520にデータを保存するか、またはメモリ520からデータを出力できる。メモリ520は、図1ないし図12を参照して説明した不揮発性メモリ素子のうちいずれか一つを含む。これらのメモリカード500は、多様な移動式(携帯用)電子装置に記録媒体として使われる。例えば、メモリカード500は、MMC(multimedia card)またはSD(secure digital)カードなどでありうる。
【0099】
図14は、本発明の実施形態による電子システム600を示すブロック図である。
【0100】
図14を参照すれば、プロセッサー(processor)610、入出力装置630及びメモリ620は、バス640を通じて相互データ通信を行える。プロセッサー610は、電子システム600をプログラムして制御する機能を行える。入出力装置630は、電子システム600にデータを入力するか、または電子システム600からデータを出力するのに使われる。電子システム600は、入出力装置630を使用して外部装置(図示せず)、例えば、パソコンやネットワークに連結され、外部装置とデータを交換できる。
【0101】
メモリ620は、プロセッサー610の動作のためのコードやプログラムを保存できる。メモリ620は、図1ないし図12を参照して説明した不揮発性メモリ素子のうちいずれか一つを含む。これらの電子システム600は、メモリ620を必要とする多様な電子制御システム、例えば、携帯電話、MP3プレーヤ、ナビゲーション装置、SSD(solid state disk)または家庭用機器(household appliance)などの実現に使われる。
【0102】
前記の説明で多くの事項が具体的に記載されているが、これらは発明の範囲を限定するものというより、実施形態の例示として解釈されねばならない。例えば、当業者ならば、本発明の実施形態でメモリ素子の構造を多様に変形できるということが分かる。具体的な例として、本発明の実施形態によるメモリ要素で、イオン種交換層20、20A、20Bは3層またはそれ以上の複数層構造を持つことができるということが分かる。また図1及び図3のメモリ要素に少なくとも一つの追加的な物質層がさらに備えられうるということが分かり、図1及び図3のメモリ要素は、図11及び図12の交差点メモリ素子だけではなく、その他の多様なメモリ素子に適用できるということが分かる。また本発明の思想は、抵抗性メモリ素子だけでなく、他のメモリ素子にも適用できるということが分かる。したがって、本発明の範囲は説明された実施形態のみによって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想により定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、不揮発性メモリ素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0104】
10、10A、10B ベース層
20、20A、20B イオン種交換層
21、21a、21b 第1交換層
22、22a、22b 第2交換層
B1、B10、B20 バッファ層
E1、E2 電極
M1、M10、M20 メモリ層
ME1、ME2 メモリ要素
N10、N20 中間電極
S10、S20 スイッチング要素
SS1、SS2 積層構造物
W10〜W30 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と離隔する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた抵抗変化メモリ層と、を備え、
前記抵抗変化メモリ層はベース層及びイオン種交換層を備え、
前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含む、不揮発性メモリ要素。
【請求項2】
前記ベース層が酸素供給層であり、
前記イオン種交換層が酸素交換層である、請求項1に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項3】
前記不揮発性メモリ要素が、マルチビットメモリ特性を持つ、請求項1または2に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項4】
前記イオン種交換層が、第1交換層及び第2交換層を含み、
前記第1交換層が、前記ベース層と前記第2電極との間に備えられ、
前記第2交換層が、前記第1交換層と前記第2電極との間に備えられる、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項5】
前記第1交換層と前記第2交換層とが、相異なる金属酸化物で形成される、請求項4に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項6】
前記第2交換層の比抵抗が、前記第1交換層の比抵抗より高い、請求項4に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項7】
前記第2交換層の酸素親和性が、前記第1交換層の酸素親和性より大きいか、または同じである、請求項4に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項8】
前記ベース層に対する前記第2交換層の伝導帯オフセットが、前記ベース層に対する前記第1交換層の伝導帯オフセットより大きい、請求項4に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項9】
前記第2交換層の厚さが、前記第1交換層の厚さより小さいか、または同じである、請求項4に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項10】
前記第1交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項5に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項11】
前記第2交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項5または10に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項12】
前記ベース層が、金属酸化物を含む、請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項13】
前記ベース層の酸素濃度が、前記イオン種交換層の酸素濃度より低い、請求項12に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項14】
前記ベース層の金属酸化物が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項12または13に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項15】
前記ベース層の金属酸化物が、TaOを含み、ここで、xは、0<x<2.5を満たす、請求項14に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項16】
前記第1電極と前記メモリ層との間に備えられたバッファ層をさらに含む、請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項17】
前記バッファ層が、前記第1電極と前記メモリ層との間の電位障壁を高める材料を含む、請求項16に記載の不揮発性メモリ要素。
【請求項18】
請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の不揮発性メモリ要素を含む、メモリ素子。
【請求項19】
前記不揮発性メモリ要素に連結されたスイッチング要素をさらに含む、請求項18に記載のメモリ素子。
【請求項20】
複数の第1配線と、
前記第1配線と交差する複数の第2配線と、
前記第1及び第2配線間の第1交差点それぞれに備えられた第1メモリセルと、を備え、
前記第1メモリセルそれぞれが、抵抗変化メモリ層を備え、
前記抵抗変化メモリ層それぞれが、ベース層及びイオン種交換層を備え、
前記イオン種交換層が、少なくとも2つの層を含む、メモリ素子。
【請求項21】
前記ベース層が酸素供給層であり、
前記イオン種交換層が酸素交換層である、請求項20に記載のメモリ素子。
【請求項22】
前記メモリ層が、マルチビットメモリ特性を持つ、請求項20または21に記載のメモリ素子。
【請求項23】
前記第1メモリセルが、
前記メモリ層と前記第2配線との間に備えられたスイッチング要素と、
前記メモリ層と前記スイッチング要素との間に備えられた中間電極と、をさらに備える、請求項20ないし22のうちいずれか1項に記載のメモリ素子。
【請求項24】
前記イオン種交換層が、第1交換層及び第2交換層を含み、
前記第1交換層が、前記ベース層と前記第2交換層との間に備えられる、請求項20ないし23のうちいずれか1項に記載のメモリ素子。
【請求項25】
前記第1交換層と前記第2交換層とが、相異なる金属酸化物で形成された、請求項24に記載のメモリ素子。
【請求項26】
前記第2交換層の比抵抗が、前記第1交換層の比抵抗より高い、請求項24に記載のメモリ素子。
【請求項27】
前記第2交換層の酸素親和性が、前記第1交換層の酸素親和性より大きいか、または同じである、請求項24に記載のメモリ素子。
【請求項28】
前記ベース層に対する前記第2交換層の伝導帯オフセットが、前記ベース層に対する前記第1交換層の伝導帯オフセットより大きい、請求項24に記載のメモリ素子。
【請求項29】
前記第1交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項25に記載のメモリ素子。
【請求項30】
前記第2交換層が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項25または29に記載のメモリ素子。
【請求項31】
前記ベース層が、金属酸化物を含む、請求項20ないし30のうちいずれか1項に記載のメモリ素子。
【請求項32】
前記ベース層の金属酸化物が、Ta酸化物、Zr酸化物、Y酸化物、イットリア安定化ジルコニア、Ti酸化物、Hf酸化物、Mn酸化物、Mg酸化物及びこれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項31に記載のメモリ素子。
【請求項33】
前記ベース層の金属酸化物が、TaOを含み、ここで、xは、0<x<2.5を満たす、請求項32に記載のメモリ素子。
【請求項34】
前記第1メモリセルが、前記第1配線と前記メモリ層との間に備えられたバッファ層をさらに含む、請求項20ないし33のうちいずれか1項に記載のメモリ素子。
【請求項35】
前記第2配線と交差するように配列された複数の第3配線と、
前記第2及び第3配線間の第2交差点それぞれに備えられた第2メモリセルと、をさらに備える、請求項20ないし34のうちいずれか1項に記載のメモリ素子。
【請求項36】
前記第2メモリセルが、前記第1メモリセルの逆構造またはそれと同じ構造を持つ、請求項35に記載のメモリ素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−46066(P2013−46066A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179246(P2012−179246)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】