説明

不整地用四輪走行車

【課題】キャビンの保護フレームの着脱作業が容易で、保護フレームの取付剛性も高く維持できる不整地用四輪走行車を提供することを目的としている。
【解決手段】 左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2と、前記前車輪1と前記後車輪2との間にキャビンフレーム4により形成されると共に操作部及びシート15を収納するキャビン5と、前記前車輪1の一部を覆う前フェンダー9とを備えている。前記キャビン5の前部から前記キャビン5の上方を経て前記キャビン5の後部に亘る保護フレーム3を備えている。前記キャビンフレーム4の前部に、前記前フェンダー9に形成された貫通孔29を通り前記前フェンダー9の上側に突出する保護フレーム取付用の前側取付部25を設け、該前側取付部25に前記保護フレーム3の前下端部30を取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪と、左右一対の後車輪と、前記前車輪と前記後車輪との間にキャビンフレームにより形成されると共に操作部及びシートを収納するキャビンと、前記前車輪の一部を覆う前フェンダーとを備えている不整地用四輪走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の不整地用四輪走行車には、キャビン内の搭乗者を保護するために、キャビンの前部から前記キャビンの上方を経て前記キャビンの後部に亘る保護フレームが備えられている。
【0003】
前記保護フレームの従来の取付構造としては、前フェンダーに形成した取付部に保護フレームの前下端部を直接取り付けた構造(従来例1,特許文献1)、保護フレームを車輌前端部のバンパーまで延ばし、バンパーに取り付けた構造(従来例2,特許文献2)、保護フレームの前下端部を、ボンネット又は前フェンダーに形成した貫通孔から下方に突出させ、ボンネット内又は前フェンダー内で車輌のフレーム部材に取り付けた構造(従来例3)、あるいはキャビンフレームと保護フレームとを、キャビンから側方に露出した状態で一体に形成した構造等がある。
【特許文献1】米国意匠特許、USD439,548 S1公報
【特許文献2】米国意匠特許、USD432,701 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例1のように、前フェンダーに保護フレームの前下端部を直接取り付ける構造では、保護フレームの取付剛性を維持するために補強部材により補強する必要があり、部品点数が多くなると共に、重量も増加する。
【0005】
従来例2のように、保護フレームを車輌前端部のバンパーまで延ばす構造では、保護フレームが大形化すると共に、保護フレームが運転者の視界に入り易い。
【0006】
従来例3のように、保護フレームの前下端部をボンネット内又は前フェンダー内でフレーム部材等に取り付ける構造では、保護フレームの着脱に手間がかかる。また、ボンネット等の内部にエンジン又は電装品等が収納されている場合には、ボンネットに形成した貫通孔と保護フレームとの間にシールを施し、内部に雨水などが侵入しないように構成する必要がある。
【0007】
従来例4では、保護フレームがキャビンフレームと共にすべて外部に露出しているので、外観の維持が困難になると共に、輸送する場合に広い積載スペースが必要となる。
【0008】
本発明は、キャビンの保護フレームの着脱作業が容易で、保護フレームの取付剛性を高く維持でき、保護フレームによる重量増加を抑えることができ、しかも良好な外観を維持できる不整地用四輪走行車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、左右一対の前車輪と、左右一対の後車輪と、前記前車輪と前記後車輪との間にキャビンフレームにより形成されると共に操作部及びシートを収納するキャビンと、前記前車輪の一部を覆う前フェンダーと、を備えている不整地用四輪走行車において、前記キャビンの前部から前記キャビンの上方を経て前記キャビンの後部に亘る保護フレームを備え、前記キャビンフレームの前部に、前記前フェンダーに形成された貫通孔を通り前記前フェンダーの上側に突出する保護フレーム取付用の前側取付部を設け、該前側取付部に、前記保護フレームの前下端部を取り付けている。
【0010】
上記構成によると、保護フレームの前下端部を、キャビンフレームに形成した前側取付部に取り付けているので、保護フレームの取付剛性を高く維持でき、しかも、前側取付部は、前フェンダーから上側に突出しているので、車輌に対して保護フレームを簡単に着脱できる。また、保護フレームを簡単に着脱できることにより、不整地用四輪走行車を輸送する場合に、保護フレームを外して積載スペースを小さくできると共に、積み卸し作業も容易になる。
【0011】
本発明は、上記不整地用四輪走行車において、前記前側取付部に、車幅方向の外方に向く取付面を形成し、該取付面に前記保護フレームの前下端部を、車幅方向の外方から取り付けることができる。
【0012】
上記構成によると、車幅方向の荷重に対する保護フレームの強度を向上させることができると共に、保護フレームの取付作業も、車幅方向の外方から簡単に行うことができる。
【0013】
本発明は、上記不整地用四輪走行車において、前記保護フレームの前下端部は、車幅方向の外方から挿入されるボルトにより前記取付面に締着することができる。
【0014】
上記構成によると、保護フレームの取付作業が、一層容易になる。
【0015】
本発明は、上記不整地用四輪走行車において、前記保護フレームの後下端部の取付構造に関しても、保護フレームと前下端部と同様な取付構造を採用することができる。すなわち、前記キャビンの側方を覆う側部カバーよりも上方に突出する保護フレーム取付用の後側取付部を設け、該後側取付部に、前記保護フレームの後下端部を取り付けることができる。また、前記後側取付部に、車幅方向の外方に向く取付面を形成し、該取付面に、前記保護フレームの後下端部を、車幅方向の外方から取り付けることができる。さらに、前記保護フレームの後下端部は、車幅方向の外方から挿入される取付ボルトにより前記後側取付部の前記取付面に締着することができる。
【0016】
このように、保護フレームの後下端部の取付構造に関しても前下端部と同様な取付構造を採用することにより、前下端部の取付構造で説明した各効果を一層充実させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図5は本発明にかかる不整地用四輪走行車であり、これらの図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、説明の都合上、搭乗者から見た左右方向を、車輌の左右方向としている。
【0018】
[不整地用四輪走行車の全体構造]
図1は不整地用四輪走行車の斜視図であり、不整地用四輪走行車は、車輌の前部に左右一対の前車輪1を備え、車輌の後部に左右一対の後車輪2を備え、前車輪1と後車輪2との間に金属製のキャビンフレーム4で形成されたキャビン5を備え、キャビン5の後方に荷台6を備え、キャビン5の前方に、樹脂製又は金属製のボンネット8、左右一対の樹脂製又は金属製の前フェンダー9及びバンパー10を備えている。各前フェンダー9は、ボンネット8と一体成形されると共に各前車輪1の上方及び後方を覆っており、側面視で概ね倒立L字状に形成されている。
【0019】
キャビン5の上部は金属パイプ製の保護フレーム3で囲まれており、該保護フレーム3は、左右一対の側部フレーム部材3aと、該左右の側部フレーム部材3aの上端部同士を連結する前後一対の上部連結部材3bと、左右の側部フレーム部材3aの後部同士をX字状に連結する後部連結部材3cとから構成されている。後部フレーム部材3cには、左右一対のヘッドレスト14が設けられ、右側の側部フレーム部材3aの前上端部には、取手19が設けられている。
【0020】
キャビン5内には、左側に運転シート15が設置され、右側に同乗者シート16が設置され、前部にダッシュボード(操作部)17が設けられ、該ダッシュボード17の左側部分にハンドル18が設けられている。シート15,16の下側にはエンジンルーム21が設けられ、該エンジンルーム21の左右両側は側部カバー22により覆われている。また、運転シート15の左側並びに同乗者シート16の右側には、下開きコの字状のガード20がそれぞれ設けられている。
【0021】
図2は不整地用四輪走行車の左側面図であり、キャビンフレーム4は、キャビン5の下端部に略水平に配置された下側キャビンフレーム部4aと、該下側キャビンフレーム部4aの前端部から前傾状態で立ち上がる前側キャビンフレーム部4bと、前記下側キャビンフレーム部4aの後端部から後傾状態で立ち上がる後部キャビンフレーム部4cと、から構成されている。
【0022】
下側キャビンフレーム部4aは平面視で概ね矩形状に形成されている。
【0023】
前側キャビンフレーム部4bは、前方から見て概ね矩形状に形成されており、前側キャビンフレーム部4bの左右両側部分は左右の前フェンダー9内にそれぞれ収納され、前側キャビンフレーム部4bの上端部の左右角部は、左右の前フェンダー9内の概ね後上端部の近傍に位置している。
【0024】
後側キャビンフレーム部4cは後方から見て矩形状に形成されており、後側キャビンフレーム部4cの左右両側部分はそれぞれ側部カバー22により覆われている。
【0025】
前側キャビンフレーム部4bの上端部の左右角部には、保護フレーム取付用の前側取付部25がそれぞれ形成されており、各前側取付部25は後傾状態で上方に延び、前フェンダー9の後上端部を貫通し、前フェンダー9から上方に突出している。
【0026】
後側キャビンフレーム部4cの上端部の左右角部には、保護フレーム取付用の後側取付部26がそれぞれ形成されており、各後側取付部26は後傾状態で上方に延び、側部カバー22の上端よりも上方に突出している。
【0027】
側部フレーム部材3aは側面視で概ね台形状に形成されており、前記前側取付部25から後傾状態で上方に延びると共に、キャビン5の上端部で略水平後方に延び、さらに、キャビン5の後上端部から略垂直下方に延び、後側取付部26に至っている。
【0028】
図3は不整地用四輪走行車の平面図であり、左右の前フェンダー9の後上端部には、それぞれ円形の貫通孔29が形成されており、前側取付部25は、貫通孔29を通って前フェンダー9の上方に突出している。
【0029】
[保護フレームの取付構造]
図4は、右側の側部フレーム部材3aの前下端部30の取付箇所を、後上方から見た拡大斜視図である。この図4において、前部キャビンフレーム部4bの上端部の左右角部にはコーナー金具28が溶接等によりそれぞれ固着されており、該コーナー金具28に各前側取付部25が溶接等により固着されている。
【0030】
貫通孔29から上方に突出する右側の前側取付部25は、右側半分を平面状に切り落とすことにより半割円柱状に形成されており、これにより、車幅方向の外方(右方)に向く平面状の取付面25aを形成している。一方、右側の側部フレーム部材3aの前下端部30は、左側半分を切り落とすと共に、右端部を平面状に切り落とすことにより、厚肉板状に形成されている。
【0031】
右側の側部フレーム部材3aの厚肉板状の前下端部30を、右側の前側取付部25の平面状取付面25aに車幅方向の外方(右側)から重ね合わせ、車幅方向の外方(右方)から側部フレーム部材3aの前下端部30に上下一対のボルト32を挿入し、前側取付部25に螺着することにより、右側の側部フレーム部材3aの前下端部30を右側の前側取付部25に締着している。
【0032】
図5は、右側の側部フレーム部材3aの後下端部31の取付箇所を、前上方から見た拡大斜視図である。この図5において、側部カバー22の上端から上方に突出している右側の後側取付部26は、右側半分を切り落とすことにより半割円柱状に形成され、これより、車幅方向の外方(右方)に向く平面状の取付面26aを形成している。一方、右側の側部保護フレーム部材3aの後下端部31は、左側半分を切り落とすと共に、右端部を平面状に切り落とすことにより、概ね厚肉板状に形成されている。
【0033】
右側の側部フレーム部材3aの厚肉板状の後下端部31を、右側の後側取付部26の平面状取付面26aに車幅方向の外方(右側)から重ね合わせ、車幅方向の外方(右方)から側部フレーム部材3aの後下端部31に上下一対のボルト33を挿入し、後側取付部26に螺着することにより、右側の側部フレーム部材3aの後下端部31を右側の後側取付部26に締着している。
【0034】
なお、図3において、左側の側部フレーム部材3aの前下端部30及び後下端部31の取付構造は、前述の右側の側部フレーム部材3aの取付構造と左右対称であり、詳しい説明は省略する。
【0035】
[実施の形態の作用効果]
(1)不整地用四輪走行車を、トラックあるいは船等に積載して輸送する際には、保護フレーム3を取り外して積載する。これにより、積載スペースを小さくでき、輸送費を削減できると共に、積み卸し作業も容易になる。
【0036】
(2)前側取付部25は前フェンダー9から上方に突出し、後側取付部26は側部カバー22の上端よりも上方に突出しているので、前フェンダー9及び側部カバー22が邪魔になることなく、保護フレーム3の着脱作業を容易に行うことができる。
【0037】
(3)保護フレーム3の前下端部30及び後下端部31を、キャビンフレーム4に形成された前側取付部25及び後側取付部26に取り付けているので、保護フレーム3の取付剛性を高く維持することができる。
【0038】
(4)前側取付部25及び後側取付部26の各取付面25a,26aを、車幅方向の外方に向けて形成し、該取付面25a,26aに車幅方向の外方から保護フレーム3の前下端部30及び後下端部31を重ね合わせているので、車幅方向の荷重に対する保護フレーム3の強度を向上させることができ、また、車幅方向の外方から挿入するボルト32,33により保護フレーム3の前下端部30及び後下端部31を締着するので、保護フレーム3の取付作業を、車幅方向の外方から簡単に行うことができる。
【0039】
(5)前フェンダー9に貫通孔29を形成し、前側取付部25を挿通しているので、たとえば前フェンダーに直接前側取付部を形成する構造に比べ、前フェンダー9の型成形作業が簡単である。また、保護フレーム3を伝って雨水等が下方に流れても、前フェンダー9に内に流入し、地面に放出されるので、上記貫通孔29と前側取付部25との間にシール装置等を設ける必要がない。すなわち、貫通孔29を形成することによって部品点数が増えることはない。
【0040】
[その他の実施の形態]
(1)前側取付部25の取付面25a及び後側取付部26の取付面26aは、必ずしも車幅方向の外方に向くように形成する必要はなく、前方あるいは後方に向くように形成することも可能である。
【0041】
(2)前記実施の形態では、ボルト32,33により、保護フレーム3の前下端部30及び後下端部31を締着しているが、本発明はこのような固着構造には限定されず、前下端部30及び後下端部31を、前側取付部25及び後取付部25に嵌合し、抜け止め用のピンにより抜け止めをおこなう構造とすることも可能である。
【0042】
(3)本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲において、各種変形例が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、各種不整地用四輪走行車に適用可能であり、たとえば、図1及び図3において、運転シート15と同乗者シート16との2つのシートの代わりに、一体的なベンチシートを備えた不整地用四輪走行車に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかる不整地用四輪走行車の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の不整地用四輪走行車の左側面図である。
【図3】図1の不整地用四輪走行車の平面図である。
【図4】図1の不整地用四輪走行車の保護フレームの前下端部の取付構造を示す拡大斜視図である。
【図5】図1の不整地用四輪走行車の保護フレームの後下端部の取付構造を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 前車輪
2 後車輪
3 保護フレーム
9 前フェンダー
22 側部カバー
25 保護フレーム取付用の前側取付部
25a 取付面
26 保護フレーム取付用の後側取付部
26a 取付面
29 貫通孔
30 保護フレームの前下端部
31 保護フレームの後下端部
32、33 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前車輪と、左右一対の後車輪と、前記前車輪と前記後車輪との間にキャビンフレームにより形成されると共に操作部及びシートを収納するキャビンと、前記前車輪の一部を覆う前フェンダーと、を備えている不整地用四輪走行車において、
前記キャビンの前部から前記キャビンの上方を経て前記キャビンの後部に亘る保護フレームを備え、
前記キャビンフレームの前部に、前記前フェンダーに形成された貫通孔を通り前記前フェンダーの上側に突出する保護フレーム取付用の前側取付部を設け、
該前側取付部に、前記保護フレームの前下端部を取り付けていることを特徴とする不整地用四輪走行車。
【請求項2】
請求項1記載の不整地用四輪走行車において、
前記前側取付部には、車幅方向の外方に向く取付面が形成され、
該取付面に、前記保護フレームの前下端部を、車幅方向の外方から取り付けていることを特徴とする不整地用四輪走行車。
【請求項3】
請求項2記載の不整地用四輪走行車において、
前記保護フレームの前下端部は、車幅方向の外方から挿入されるボルトにより前記前側取付部の前記取付面に締着されていることを特徴とする不整地用四輪走行車。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の不整地用四輪走行車において、
前記キャビンフレームの後部に、前記キャビンの側方を覆う側部カバーよりも上方に突出する保護フレーム取付用の後側取付部を設け、
該後側取付部に、前記保護フレームの後下端部を取り付けていることを特徴とする不整地用四輪走行車。
【請求項5】
請求項4記載の不整地用四輪走行車において、
前記後側取付部には、車幅方向の外方に向く取付面が形成され、
該取付面に、前記保護フレームの後下端部を、車幅方向の外方から取り付けていることを特徴とする不整地用四輪走行車。
【請求項6】
請求項5記載の不整地用四輪走行車において、
前記保護フレームの後下端部は、車幅方向の外方から挿入されるボルトにより前記後側取付部の前記取付面に締着されていることを特徴とする不整地用四輪走行車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−62736(P2008−62736A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241295(P2006−241295)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】