説明

両面塗布装置及び塗液の両面塗布方法

【課題】中心開口部を有する被処理基板の両面に、中心開口部に塗液が侵入するのを防止しつつ、簡易な工程で均一に塗液を塗布することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】本発明の塗布装置1は、中心開口部2aを有する被処理基板2の両主面に塗液を塗布する塗布装置であって、被処理基板2を、その中心開口部2aを閉塞して保持するチャッキング部11を有する回転駆動機構3と、被処理基板2の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズル18と、これを被処理基板2の一方の主面に沿って走査するように移動操作する第1の旋回駆動機構17と、被処理基板2の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズル28と、これを被処理基板3の他方の主面に沿って走査するように移動操作する第2の旋回駆動機構31と、第1の塗液噴出口23における塗液の噴出量と、第2の塗液噴出口29における塗液の噴出量を独立に制御する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗液の両面塗布方法に関し、特に、中心開口部を有する基板の両主面に塗液を塗布するのに好適な両面塗布装置と塗液の両面塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、フレキシブルディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大されその重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMR(Magneto-Resistive)ヘッド、およびPRML(Partial Response Maximum Likelihood)技術の導入以来、磁気記録媒体の面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMR(Giant Magneto-Resistive)ヘッド、TMR(Tunnel Magneto-Resistive)ヘッドなども導入され、1年に約100%ものペースで増加を続けている。これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
【0003】
最新の磁気記録装置においてはトラック密度が110kTPIにも達している。しかし、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じやすくなる。このことはそのままビットエラーレート(Bit Error rate)の低下につながるため、磁気記録媒体における磁気記録密度向上に対して障害となっている。
【0004】
面記録密度をこれまで以上に上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。しかし、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
また、トラック間距離が近づくために、磁気記録装置は極めて高精度のトラックサーボ技術を要求されると同時に、記録を幅広く実行し、再生は隣接トラックからの影響をできるだけ排除するために、記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法ではトラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、そのために十分にSNRを確保することが難しいという問題がある。
【0005】
このような熱揺らぎの問題やSNRの確保、あるいは十分な出力確保を達成する方法の一つとして、磁気記録媒体の表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を物理的に分離することによってトラック密度を上げようとする試みがなされている。このような技術を以下にディスクリートトラック法、それによって製造された磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と称する。
【0006】
ディスクリートトラック媒体の一例として、表面に凹凸パターンを形成した非磁性基板に磁気記録媒体を形成して、物理的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成してなる磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この磁気記録媒体は、表面に複数の凹凸のある基板の表面に軟磁性層を介して強磁性層が形成されており、その表面に保護膜を形成したものである。この磁気記録媒体では、凸部領域に周囲と物理的に分離された磁気記録領域が形成されている。
この磁気記録媒体によれば、軟磁性層での磁壁発生を抑制できるため熱揺らぎの影響が出にくく、隣接する信号間の干渉もないので、ノイズの少ない高密度磁気記録媒体を形成できるとされている。
【0007】
ディスクリートトラック法には、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法と、予め基板表面に直接、あるいはトラック形成のための薄膜層に凹凸パターンを形成した後に、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法とがある(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。このうち、前者の方法が、磁気層加工型とよばれ、表面に対する物理的加工が媒体形成後に実施されるため、媒体が製造工程において汚染されやすいという欠点があり、かつ製造工程が極めて複雑であった。
一方で、後者の方法は、エンボス加工型と呼ばれ、製造工程中の汚染は発生し難いが、基板に形成された凹凸形状が、成膜後の膜にも引き継がれることになるため、磁気記録媒体上を浮上しながら記録再生を行う記録再生ヘッドの浮上姿勢、浮上高さが安定しないという問題点がある。
また、基板にコーティングを施す装置として、円盤状の基板を垂直面に沿って保持しながらその周回りに回転させるとともに、液体材料を収容したコーティング容器に対し回転中の基板を上下させて基板を液体材料に浸漬し、液体材料から基板を引き上げ、該基板に付着した余分な液体材料を基板の回転により振り落として均一化することができる装置が知られている(特許文献4参照)。
更に、レジスト塗布装置として、円盤状のウエハの外周部を爪により把持して水平な面内で回転自在に保持し、該基板の上方と下方に個別にノズルを配置して回転している基板の上下両面にレジストの塗布ができる装置が知られている(特許文献5参照)。また、この例のレジストの塗布装置では、ウエハの回転によりレジスト液の振り切りを行うことが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【特許文献2】特開2004−178793号公報
【特許文献3】特開2004−198794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本願発明者らが、ディスクリートトラック法における以上のような問題点を解消すべく検討を重ねた結果、磁性層を形成した後に、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン(磁気記録パターン)以外の領域を反応性プラズマに曝すことにより、磁気記録トラック同士を磁気的に分離可能である、との知見を得ている。
即ち、この方法では、具体的には磁性層の全面にレジストを塗布し、このレジスト層を磁気記録パターンに対応するようにパターニングした後、磁性層を反応性プラズマにさらす。これにより、磁性層のレジスト層が形成されていない領域の磁気特性が改質され、磁性層の磁気記録トラック同士が磁気的に分離される。
【0010】
本発明者らが研究しているこの方法では、凹凸加工を行っていないので、凹凸加工に起因する媒体の汚染を回避しつつ、簡易な工程でディスクリートトラック媒体を製造することができる。また、得られたディスクリートトラック媒体は、凹凸を有していないので、浮上型ヘッドを安定に浮上走行させることができる。
【0011】
ところで、先に説明した方法では、前述のように磁性層の全面にレジストを塗布する工程を行う必要がある。
ここで、例えば、磁気ディスク装置で用いられる磁気記録媒体(磁気ディスク)では、両面に磁性層が形成されることから、レジストも両面に塗布することになる。しかし、例えば半導体プロセス等で汎用されている従来のレジストの塗布装置は、レジストを、片面にのみ塗布するように構成されているため、この塗布装置を用いて基板の両面にレジストを塗布しようとすると、同じレジストの塗布工程を2回繰り返し行うことになる。このため、工程数が多くなり、また、レジストの塗布工程に要する時間が長くなるという不都合が生じる。
【0012】
また、磁気ディスクは、その中心部に、磁気ディスク装置へのチャッキングに使用される中心開口部を有しており、この中心開口部にレジストのような異物が残存していると、チャッキング位置が不正確になり、磁気ディスク自体やチャッキング装置が汚染されてしまう。しかし、前述した従来の塗布装置は、単にディスク基板の表面全域にレジストを塗布するように構成されているため、従来の塗布装置を用いてディスク基板にレジストを塗布すると、中心開口部にもレジストが侵入してしまう。この結果、後工程において中心開口部に塗布されたレジストが除去しきれず、得られる磁気ディスクの中心開口部にレジストが残存するおそれがある。
この点に鑑み、先の特許文献4に記載されたコーティング装置にあっては、基板の両面に同時に液体材料を塗布できるものの、垂直面に沿って支持した基板を液体材料に対し上下させて浸漬する機構であるため、基板中心開口部にも液体材料を塗布してしまうおそれが高い装置であった。また、先の特許文献5に記載されたレジスト塗布装置にあっても、基板の上下両面にレジスト液を塗布できるものの、中心開口部を有していない半導体ウエハを適用対象とした塗布装置であり、中心開口部を有する基板へのレジスト液の塗布の際の上述の問題については何等配慮されていない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、中心開口部を有する被処理基板の両面に、中心開口部に塗液が侵入するのを防止しつつ、簡易な工程で均一に塗液を塗布し、塗膜を形成することができる両面塗布装置及び両面塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本願発明者は鋭意研究した結果、本願発明に到達した。
(1)本発明の両面塗布装置は、中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、前記被処理基板をその中心開口部を介して保持する保持機構を有し、前記被処理基板をその周回りに回転させる回転駆動機構と、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、この第1の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の一方の主面と離間しつつ、この一方の主面に沿って走査するように移動操作する第1の塗液用ノズル移動機構と、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルと、この第2の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の他方の主面と離間しつつ、この他方の主面に沿って走査するように移動操作する第2の塗液用ノズル移動機構とを備え、前記第1の塗液用ノズル移動機構により移動操作される第1の塗液用ノズルと、前記第2の塗液用ノズル移動機構により移動操作される第2の塗液用ノズルが、いずれも、前記保持機構に保持された被処理基板の中心開口部には塗液を噴出せず、同被処理基板の内周縁よりも外側にのみ塗液を噴出自在にしてなることを特徴とする。
【0015】
(2)本発明の両面塗布装置は、中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、前記被処理基板をその中心開口部を介して保持する保持機構を有し、前記被処理基板をその周回りに回転させる回転駆動機構と、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、この第1の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の一方の主面と離間しつつ、この一方の主面に沿って走査するように移動操作する第1の塗液用ノズル移動機構と、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルと、この第2の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の他方の主面と離間しつつ、この他方の主面に沿って走査するように移動操作する第2の塗液用ノズル移動機構とを備え、前記第1の塗液用ノズルに隣接させて前記被処理基板に塗布された塗液を洗浄する第1のリンス液用ノズルと、前記第2の塗液用ノズルに隣接させて前記被処理基板に塗布された塗液を洗浄する第2のリンス液用ノズルを設け、これら第1のリンス液用ノズルと第2のリンス液用ノズルを前記被処理基板の一方の主面あるいは他方の主面に沿って移動自在に設け、これら第1のリンス液用ノズルと第2のリンス液用ノズルによるリンス液の噴出により、被処理基板上の塗膜を部分的に洗浄除去する機能を具備したことを特徴とする。
(3)本発明の両面塗布装置は、(1)または(2)に記載の保持機構が前記被処理基板を保持した状態において該被処理基板の中心開口部を閉塞して中心開口部への塗液の進入を防止する機能を具備したことを特徴とする。
【0016】
(4)本発明の両面塗布装置は、前記第1のリンス液用ノズルの先端を前記保持機構に保持された被処理基板の一方の主面に対峙させた状態でリンス液噴出口を介して前記被処理基板の一方の主面の外周縁側に向けて斜め方向にリンス液を噴出自在に構成し、前記第2のリンス液用ノズルを前記保持機構に保持された被処理基板の他方の主面に対峙させた状態でリンス液噴出口を介して前記被処理基板の他方の主面の外周縁側に向けて斜め方向にリンス液を噴出自在に構成したことを特徴とする。
(5)本発明の両面塗布装置は、(1)〜(4)のいずれかに記載の第1の塗液用ノズルを支持する第1のノズル旋回アームと、前記第2の塗液用ノズルを支持する第2のノズル旋回アームを前記保持機構の周囲に個別に設け、各旋回アームの前記被処理基板と平行な面に沿う旋回動作に応じて前記第1の塗布用ノズルと前記第2の塗布用ノズルをそれらの塗液噴出口を前記被処理基板の各主面に対峙させて移動自在に支持してなることを特徴とする。
(6)本発明の両面塗布装置は、前記第1のノズル旋回アームと前記第2のノズル旋回アームを前記保持機構を中心として左右対象に配置し、前記第1のノズル旋回アームの塗液噴出口と前記第2のノズル旋回アームの塗液噴出口を各自独立に前記被処理基板の中心開口部側の内周縁側から前記被処理基板の外周縁側まで移動自在に支持してなることを特徴とする。
(7)本発明の塗液の両面塗布方法は、中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布方法であって、前記被処理基板を水平に保持し、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルを用い、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出させ、前記被処理基板を回転させて被処理基板の両主面に塗膜を形成した後、前記被処理基板の一方の主面にリンス液を噴出する第1のリンス液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面にリンス液を噴出する第2のリンス液用ノズルを用い、前記被処理基板の外周縁側に形成されている塗膜の厚い部分にリンス液を噴出させ、前記被処理基板を回転させて該塗膜の厚い部分を部分的にリンス液とともに除去して膜厚を均一化することを特徴とする。
(8)本発明の塗液の両面塗布方法は、(7)に記載の第1のリンス液用ノズルのリンス液噴出口と前記第2のリンス液用ノズルのリンス液噴出口をいずれも前記被処理基板の外周縁側よりも内周側に配置した状態において、リンス液を被処理基板の内周側から外周縁側に向けて斜め方向に噴出して前記塗膜にリンス液を吹き付けた後、前記被処理基板を回転させて該被処理基板外周縁側の塗膜の厚い部分を部分的に除去することを特徴とする。
(9)本発明の塗液の両面塗布方法は、前記被処理基板を水平に保持する際、被処理基板の中心開口部を閉塞して塗液の浸入を阻止した後、前記第1の塗液用ノズルと第2の塗液用ノズルを用いて塗液を噴出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗布装置が、一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルとを備えることにより、被処理基板の両主面に同時に塗液を供給することができるので、被処理基板の一方の主面に塗液を供給した後、他方の主面に塗液を供給する必要があった従来装置に比べて、被処理基板の両方の主面に、簡易な工程で、短時間に塗液を塗布し、塗膜を形成することができる。
【0018】
第1、第2の塗液用ノズルに加えて第1、第2のリンス液用ノズルを備えることにより、被処理基板の両面に塗液を噴出して塗膜を形成後、第1、第2のリンス液用ノズルから塗膜上にリンス液を噴出して塗膜の一部を洗い流し、塗膜形成後にその厚みを部分的に調整することができる。
被処理基板に噴出する塗液として粘性の高い塗液を用いた場合、被処理基板の回転後に生成される塗膜は被処理基板の外周縁側が厚く形成される傾向がある。この場合、被処理基板の外周縁側に第1、第2のリンス液用ノズルからリンス液を噴出させて被処理基板を回転させることにより、被処理基板の外周縁側の塗膜を部分的に除去することができるので、内周側から外周側まで均一な厚さの塗膜を得ることができる。
【0019】
また、本発明の塗布装置では、被処理基板を保持す保持機構が、被処理基板の中心開口部を閉塞する機能を有しているので、塗液を塗布した時、被処理基板の中心開口部に塗液が侵入するのを防止でき、中心開口部を避けてレジスト層などの塗膜を形成することができる。
従って、被処理基板として磁気記録媒体の非磁性基板に適用した場合、得られた磁気記録媒体は、記録再生装置のチャッキング装置を中心開口部に係合させてチャッキングした際、正確な位置にチャッキングすることができ、中心開口部に残存したレジストに起因するチャッキング装置等の汚染を回避することができる。また、記録密度が向上していて磁気記録トラックが微細化されている磁気記録媒体にあっても正確なチャッキングができることで、磁気情報の良好な読出精度を確保できる磁気記録媒体の提供に寄与する。
【0020】
本発明の両面塗布方法によれば、被処理基板の一方の面と他方の面に第1の塗液用ノズルと第2の塗液用ノズルにより別々に塗液を噴出した後、第1のリンス液用ノズルと第2のリンス液用ノズルによって被処理基板の両面にリンス液を吹き付けて被処理基板を回転することにより、塗液の噴出と被処理基板の回転により形成した塗膜において必要以上に厚い部分が生じた場合であっても、塗膜の厚い部分にリンス液を噴出した後に被処理基板を回転させて塗膜の厚い部分を両面同時に除去できるので、被処理基板の両面に均一な膜厚の塗膜を形成できる。
被処理基板を回転させて塗膜を形成する場合、リンス液を被処理基板の内周側から外周側に向けて斜め方向に噴出して塗膜の厚い部分に効果的にリンス液を吹き付けることができ、被処理基板の内周側にリンス液を到達させることなく、外周側に集中的に供給できるので、粘性の高い塗液を用いて被処理基板を回転させて塗膜とした場合、外周側に生成し易い厚い塗膜を部分的に除去して塗膜の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の両面塗布装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<ディスクリート型磁気記録媒体の構成>
本発明の両面塗布装置を用いて塗膜が形成される被処理基板の一例としてのディスクリート型磁気記録媒体の一例について説明する。図16にディスクリート型磁気記録媒体の断面構造を例示する。
この磁気記録媒体100は、中心開口部101aを有する非磁性基板101の両方の主面(上面と下面)に、それぞれ、軟磁性層、中間層などを含む複層構造の下地層102と、磁気的パターンが形成された磁性層103と、改質部104と、保護膜105が形成されており、さらに最表面に図示略の潤滑膜が形成された構造を有している。
なお、図16においては非磁性基板101の厚さより、下地層102、磁性層103、改質部104、保護膜105の厚さをそれぞれ誇張して大きく記載しているが、実際の積層構造において非磁性基板101の厚さがこれらの層や膜より遙かに厚いことは勿論であり、図16においてはこれらの層や膜を見易くするために誇張して実際より厚く記載している。
【0022】
磁気記録媒体100においては記録密度を高めるため、磁気的パターンを有する磁性層103の磁性部の幅Wは200nm以下、改質部104である非磁性部の幅Lは100nm以下とすることが好ましい。従ってトラックピッチP(=W+L)は300nm以下の範囲で、記録密度を高めるためにはできるだけ狭くする。
【0023】
本発明で使用する非磁性基板101としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス等のガラス製基板またはシリコン基板を用いることが好ましい。またこれら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、中でも0.1nm以下であることが好ましい。
【0024】
上記のような非磁性基板101の表面に形成される磁性層103は、面内磁気記録層でも垂直磁気記録層でもかまわないがより高い記録密度を実現するためには垂直磁気記録層が好ましい。これら磁気記録層は主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。
例えば、面相磁気記録媒体用の磁気記録層としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層からなる積層構造が利用できる。
垂直磁気記録媒体用の磁気記録層としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる磁性層を積層したものを利用することができる。
【0025】
磁気記録層の厚さは、例えば3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とする。磁気記録層は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。磁性層103の膜厚は再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメータは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
【0026】
本実施形態において、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部に相当する磁性層103以外の領域の磁気特性が改質されて非磁性部である改質部104とされており、これら磁気記録パターンが改質部104により磁気的に分離されている。これにより、隣接する磁性層103の磁気記録パターン間の信号干渉が防止される。
磁性層103の磁気特性の改質とは、具体的には、基板上に均一膜として形成した磁性層の保磁力、残留磁化等を部分的に変化させることを指し、その変化の一例として、保磁力を下げ、残留磁化を下げることを指す。このような磁気特性の改質は、一例として、非磁性基板上に均一成膜した磁性層の磁気記録パターン以外の領域を、後述する反応性プラズマに曝すことによってなすことができ、反応性プラズマに曝した部分が改質部104とされる。
ところで、改質方法の一例として、スタンパなどにより版押しして凹凸を形成し、磁性膜の一部をパターン化して磁気記録パターンと改質部に物理的に区分けする方法により得られるディスクリートトラック媒体用の被処理基板に本発明の両面塗布装置を適用できるのは勿論であるので、先に説明した磁気記録媒体100は本発明の両面塗布装置を適用することができる被処理基板の一例として説明している。
【0027】
保護膜105としては、炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アモルファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO、Zr、TiNなど、通常用いられている保護膜材料を用いることができる。また、保護膜105が2層以上の層から構成されていてもよい。
保護膜105の膜厚は10nm未満とすることが好ましい。保護膜105の膜厚が10nmを越えるとヘッドと磁性層103との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるおそれがある。
保護膜105の上には適宜潤滑層を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、通常1〜4nmの厚さで潤滑層を形成する。
【0028】
この一例としての磁気記録媒体100であるならば、磁性層103の磁気記録パターン以外の領域の磁気特性が改質されて改質部104とされていることにより、磁気記録パターンが磁気的に確実に分離され、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、優れた高記録密度特性を得ることができる。また、この例の磁気記録媒体100であれば、基板上に凹凸を形成していないので表面の平滑性に優れ、磁気ヘッドの低浮上化を実現することができる。
【0029】
<両面塗布装置の構成>
次に、本発明の両面塗布装置の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の塗布装置の全体構成を示すもので、一の方向から見た部分断面図、図2は同塗布装置の全体構成を他の方向から見た部分断面図、図3(A)は塗布装置の主要部を示す上面図、図3(B)は塗布装置の主要部を模式的に示す縦断面図、図4は、塗布装置が備える収納カップ開閉機構を示す上面図、図5は、塗布装置が備える収納カップ開閉機構を模式的に示す縦断面図である。
図1〜図3に示すように、本発明の両面塗布装置1は、ドーナツ円盤状の被処理基板2を保持して回転駆動するための回転駆動機構3と、被処理基板2の一方の面に液材を供給するための第1の塗液供給手段4と、被処理基板2の他方の面に塗液を供給するための第2の塗液供給手段5と、回転駆動機構3に保持された被処理基板2を収納するための被処理基板収納部6とを有しており、これら各部は、装置本体外壁を構成する金属材よりなる筐体内7に配設されている。
【0030】
回転駆動機構3は、図3に拡大して示すようにスピンドルモータ8と、このスピンドルモータ8の駆動軸であるスピンドル軸9の先端に取り付けられたプーリ10と、被処理基板2を保持するチャッキング部(保持機構)11が設けられた回転軸12と、回転軸12の下端側に取り付けられたプーリ13を具備して構成されている。プーリ10とプーリ13はベルト14を介して連動するように構成されている。
被処理基板1のためのチャッキング部(保持機構)11は、回転軸12の上端に一体的に設けられていて、水平向きとした被処理基板2の中心開口部2aを嵌め込み固定できる構成とされている。このチャッキング部11は回転軸12の上端部に設けられて被処理基板2の中心開口部2aを嵌め込む受部11aと、その受部11aの上端に形成されているネジ軸にねじ込まれて螺合されているナット部11bとを具備してなる。このチャッキング部11では、受部11aに被処理基板2の中心開口部2aを嵌め込み挿通させ、ナット部11bをネジ締めすることにより、被処理基板2を水平に固定し、被処理基板2を回転軸12とともに一体に回転できるように構成されている。また、チャッキング部11の受部11aに装着された状態において被処理基板2の中心開口部2aが受部11aにより閉塞された状態になる。
回転軸12のチャッキング部11の下方には、後述するエアの流れを制御する傘型のエア制御部15が回転軸12に設けられている。エア制御部15は、回転軸12の外周面に沿って張り出すように設けられ、下方にポケット15aが形成されるように傘型をなしている。
【0031】
以上のように構成された回転駆動機構3では、スピンドルモータ8が駆動されることによってプーリ10が回転駆動されると、その回転がベルト14を介してプーリ13に伝達され、回転軸12が水平回りに回転駆動される。回転軸12が回転駆動されることにより、回転軸12に保持された被処理基板2が、スピンドルモータ8の回転方向および回転数に応じて水平回りに回転操作されるようになっている。
【0032】
第1の塗液供給手段4は、図3(A)中矢印A方向および矢印B方向に旋回自在に設けられた第1のノズル旋回アーム16と、第1のノズル旋回アーム16を旋回駆動する第1の旋回駆動機構(第1の塗液用ノズル移動機構)17と、第1のノズル旋回アーム16の左右両側に取り付けられた第1の塗液用ノズル18及び第1のリンス液用ノズル19と、第1の塗液用ノズル18に塗液を供給する第1の塗液供給手段20(図1参照)と、第1のリンス液用ノズル19にリンス液を供給する第1のリンス液供給手段21(図1参照)とを有する。
【0033】
第1のノズル旋回アーム16は、帯板状に形成され、この第1のノズル旋回用アーム16の左右両側に第1の塗液用ノズル18と第1のリンス液用ノズル19が配置されている。図3(B)に詳細に示すように、第1のノズル旋回アーム16の先端部は、下方に屈曲され、その先端部側に、第1の塗液用ノズル18及び第1のリンス液用ノズル19を支持するためのノズル取付部が設けられている。後述する第1の塗液供給手段20および第1のリンス液供給手段21によって供給される塗液やリンス液は、各ノズル18、19に供給される。
第1の塗液用ノズル18及び第1のリンス液用ノズル19の先端側は、それぞれ、チャック部11に水平支持した状態の被処理基板2の上面の高さ位置より若干上方の位置となるように第1のノズル旋回アーム16に取り付けられている。第1の塗液用ノズル18及び第1のリンス液用ノズル19は、パイプ状に構成されている。
【0034】
図3(A)に示すように第1の塗液用ノズル18は、平面視した状態において、第1のノズル旋回アーム16から少し先に突き出た部分から鈍角をなすように水平面に沿って折り曲げられ、その先端部18aが図3(A)に示す第1の塗液用ノズル18の1つの旋回位置において被処理基板2の円状の中心開口部2aの周縁に外接するように延出され、第1の塗液用ノズル18の先端は図3(B)に示すように更に略90゜下向きに折り曲げられていて、この第1の塗液用ノズル18の先端開口が、被処理基板2の上面に向いて下向きに塗液を噴出する第1の塗液噴出口23を構成する。この第1の塗液噴出口23は、第1の塗液噴出口23を被処理基板2の上面直上に位置させたとき、被処理基板2の上面と所定距離離間して対峙される。
【0035】
図3(A)に示すように第1のリンス液用ノズル19は、先の第1の塗液用ノズル18と同じように第1のノズル旋回アーム16に装着されている。また、第1のリンス液用ノズル19は、第1のノズル旋回アーム16から少し先に突き出た部分から鈍角をなすように水平面に沿って折り曲げられ、先の第1の塗液用ノズル18とほぼ平行に同じ向きに延出されている。また、第1のリンス液用ノズル19の先端は、先の第1の塗液用ノズル18の先端部18aが図3(A)に示す如く被処理基板2の円状の中心開口部2aの周縁に外接した位置において、被処理基板2の半径の中央部側の上面中央位置に配置されるとともに、その先端開口24の向きを被処理基板2の外周端側であって、第1の塗液用ノズル18側に向くようにして、折り曲げられている。この第1のリンス液用ノズル19の先端開口24は、被処理基板2の一方の主面(上面)の外周縁部にリンス液を噴出する第1のリンス液噴出口24を構成する。
【0036】
第1の旋回駆動機構17は、第1の駆動モータ25と、第1の駆動モータ25の駆動軸の先端に取り付けられた第1の旋回支軸22とを有する。第1の旋回支軸22の上端には、第1のノズル旋回アーム16の基端部が取り付けられている。この第1のノズル旋回アーム16は水平面に沿って旋回し、先の第1の塗液用ノズル18と第1のリンス液用ノズル19とを水平方向に旋回させながら各ノズルを被処理基板2に対して接近させるか離間させる。即ち、第1の駆動モータ25が駆動されることにより第1の旋回支軸22が旋回駆動されると、第1のノズル旋回アーム16は、第1の駆動モータ25の回転方向に応じて図2中矢印A方向あるいはB方向に旋回操作される。
ここで、第1のノズル旋回アーム16の長さ及び屈曲位置、旋回支軸22の長さは、第1の塗液噴出口23及び第1のリンス液噴出口24と、被処理基板2の上面との離間距離が、適正範囲となるように設定されている。
【0037】
第1の塗液供給手段20は、塗液が貯留された塗液用加圧タンク51と、その一端が第1の塗液用ノズル18の基端部に接続され、他端が塗液用加圧タンク51に接続された第1の塗液供給管52と、この塗液供給管52と塗液用加圧タンク51との間に設けられた図示略の第1の塗液用バルブを具備し、図示略の制御部よってバルブの開閉が制御されるように構成されており、この第1の塗液用バルブの開閉操作により、第1の塗液噴出口23からの塗液噴出量及び塗液噴出時間が制御される。
塗液としては、熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂、SOG等の各種レジストを溶媒に溶解した溶液等が挙げられる。塗液の粘度は、0.5〜1cPの範囲のものが好ましい。
【0038】
リンス液供給手段21は、リンス液が貯留されたリンス液用加圧タンク53と、その一端が第1のリンス液用ノズル19の基端部に接続され、他端がリンス液用加圧タンク53に接続された第1のリンス液供給管54と、この第1のリンス液供給管54とリンス液用加圧タンク53との間に設けられた図示略の第1のリンス液用バルブを有する。第1のリンス液用バルブは、図示略の制御部よって開閉が制御されるように構成されており、この第1のリンス液用バルブの開閉操作により、第1のリンス液噴出口24からのリンス液噴出量及びリンス液噴出時間が制御される。
リンス液は、塗膜に供給されることにより、塗膜の一部を溶解除去して、その厚さを均一化する機能を有するものである。
リンス液としては、塗液を溶解し、且つ、塗液との反応性が低いものが用いられる。
【0039】
以上のように構成された第1の塗液供給手段4では、第1の駆動モータ25が駆動されると、第1のノズル旋回アーム16が、第1の駆動モータ25の回転方向に応じて図2中矢印A方向または矢印B方向に旋回操作され、第1の塗液用ノズル18の第1の塗液噴出口23及び第1のリンス液用ノズル19の第1のリンス液噴出口24が、旋回支軸22を中心に円弧状に水平移動して被処理基板2に対して接近するか離間する方向に移動するようになっている。
【0040】
以上の構成により、第1の塗液噴出口23は、後述する収納カップ34から離れた第1の位置(初期位置)、被処理基板2の外周縁部の近傍である第2の位置(待機位置)、被処理基板2の上面の内周縁部の直上である第3の位置(塗布開始位置)、被処理基板2の上面の外周縁側の直上である第4の位置(塗布終了位置)の間を相互に移動する。また、第1のリンス液噴出口24も、この第1の塗液噴出口23の移動に追従して移動する。
【0041】
第1の塗液噴出口23が、被処理基板2の上面上にあるとき、第1の塗液用ノズル18に塗液が供給されると、その塗液は第1の塗液噴出口23から下向きに噴出され、被処理基板2の上面に供給される。
また、第1のリンス液噴出口24が、図3(A)、(B)に示す如く被処理基板2の上面上にあるとき、第1のリンス液用ノズル19にリンス液が供給されると、そのリンス液は第1のリンス液噴出口24から被処理基板2の外周縁部に向かって噴出され、被処理基板2の上面外周縁部に供給される。
【0042】
第2の塗液供給手段5は、第2のノズル旋回アーム26、第2の塗液用ノズル28及び第2のリンス液用ノズル27の構成が、先の第1のノズル旋回アーム16、第1の塗液用ノズル18及び第1のリンス液用ノズル19と同等であり、第1の塗液供給手段4と同様の構成とされている。
即ち、第2の塗液供給手段5において、第2のノズル旋回アーム26は、第1のノズル旋回アーム16と同様に帯板状に形成されている。図3(B)に示すように、第2のノズル旋回アーム26は、その途中で大きく下方に屈曲され、その先端側のノズル取付部に、第2の塗液用ノズル28及び第2のリンス液用ノズル27が支持されている。第2のノズル旋回アーム26に取り付けられた各ノズル27、28は、被処理基板2の下面の高さ位置より若干下方側に延出配置されている。
【0043】
第2の塗液用ノズル28と第2のリンス液用ノズル27は、先の第1の塗液供給手段4に設けられている第1の塗液用ノズル18と第1のリンス液用ノズル19と対象な向きに折り曲げられ、各々配置されている。
この形態の第2の塗液用ノズル28の先端開口は、被処理基板2の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液噴出口29を構成する。この第2の塗液噴出口29は、第2の塗液噴出口29が被処理基板2の下面の直下にあるとき、被処理基板2の下面と所定距離離間して対峙する。第2のリンス液用ノズル27の先端開口は、被処理基板2の下面外周縁部に向いてリンス液を噴出する第2のリンス液噴出口30を構成する。この第2のリンス液噴出口30は、第2のリンス液噴出口30が、被処理基板の他方の主面の内周縁部の直下にあるとき、被処理基板2の他方の主面の外周縁部と、所定距離離間して対峙する。
【0044】
第2の塗液供給手段5において、第2のノズル旋回アーム26を旋回駆動する第2の旋回駆動機構(第2の塗液用ノズル移動機構)31、第2の塗液用ノズル28に塗液を供給する第2の塗液供給手段及び第2のリンス液供給手段28にリンス液を供給する第2のリンス液供給手段は、それぞれ、第1の旋回駆動機構17、第1の塗液供給手段20及び第1のリンス液供給手段21と同様の構成とされている。
以上のように構成された第2の塗液供給手段5では、第2の駆動モータ32が駆動されると、第2のノズル旋回アーム26が、第2の駆動モータ32の駆動方向に応じて図2中矢印A方向または矢印B方向に旋回操作され、第2の塗液用ノズル28の第2の塗液噴出口29及び第2のリンス液用ノズル27の第2のリンス液噴出口30が、旋回支軸33を中心に円弧状に移動する。
【0045】
以上により、第2の塗液噴出口29は、後述する収納カップ34から離れた第1´の位置(初期位置)、被処理基板2の外周縁部の近傍である第2´の位置(待機位置)、被処理基板2の下面の内周縁部の直下である第3´の位置(塗布開始位置)、被処理基板2の他方の主面の外周縁部の直下である第4´の位置(塗布終了位置)の間を相互に移動する。また、第2のリンス液噴出口30も、この第2の塗液噴出口29の移動に追従して移動する。
【0046】
第2の塗液噴出口29が、被処理基板2の下面直下にあるとき、第2の塗液用ノズル28に塗液が供給されると、その塗液は第2の塗液噴出口29から噴出され、被処理基板2の下面に供給される。
また、第2のリンス液噴出口30が、被処理基板2の下面の内周縁部の直下にあるとき、第2のリンス液用ノズル27にリンス液が供給されると、そのリンス液は第2のリンス液噴出口30から噴出され、被処理基板2の下面の外周縁部に向いて供給される。
【0047】
被処理基板収納部6は、塗液の塗布工程に際して、回転駆動機構3に保持された被処理基板2を収納する収納カップ34と、収納カップ34を昇降操作する収納カップ移動機構35と、収納カップ34の開放側を開閉する収納カップ開閉機構36とを有する。
収納カップ34は、ドーナツ円盤状の底部37と、底部37の外周縁に沿って設けられた側壁部38とを有する。
底部37の中心開口部には、回転駆動機構3の回転軸12が挿通され、回転駆動機構3のチャッキング部11及びエア制御部15は底部37より上方に位置されている。また、底部37の内周縁部37aは、上方に屈曲し、回転軸12との間に隙間dを形成している。収納カップ34が後述する収納位置にあるとき、底部37の内周縁部37aの上端部は、回転軸12に設けられた傘型のエア制御部15のポケット15a内に収容された状態になる。
底部37の外周側には、排気管40Aにより区画された排気口39が設けられている。排気口39には、排気管40Aを介して排気ポンプが接続されている。収納カップ34内に供給されたエアは、排気ポンプが動作状態にあるとき、排気口39から排気され、排気管を通過して外部に排出される。
【0048】
側壁部38の上端部には、収納カップ内に供給されるエアの流れを制御するエア制御部材40が取り付けられている。
エア制御部材40は、平面視でドーナツ円盤状をなしている。エア制御部材40の外周縁は側壁部38の上端部に取り付けられ、エア制御部材40の内周側の開口は、被処理基板2や各ノズル18、19、27、28を収納カップ34内に搬入出する開放部を構成する。また、エア制御部材40は、内周側の端部から外周側に向かって下向きに下降する傾斜面40aを有している。後述するエアの流れによって開放部から収納カップ34内に供給されるエアは、この傾斜面40aに沿って外周側に送流され、先の排気口39に到達する。なお、収納カップ34の内部側のコーナ部分には排出管40Bが形成されていて、この排出管40Bが両面塗布装置の筐体7に収容された回収タンクTに接続されて処理済みの塗液を回収できるように構成されている。
【0049】
収納カップ移動機構35は、収納カップ34を、回転軸12の軸方向に沿って上下に移動操作(昇降操作)する。これにより、収納カップ34は、被処理基板2より下方となる非収納位置から被処理基板2が該収納カップ34の内部に収納された状態になる収納位置との間を相互に移動する。
収納カップ移動機構35においては、装置全体を取り囲む筐体7の内部に水平に架設されたフレーム35Aにピストン装置35B、35Bが取り付けられ、これらのピストン装置35Bに上下移動自在に設けられているピストンロッド35Cを有し、これらのピストンロッド35Cに収納カップ34の底部フレーム34Aが支持されることで収納カップ34が上下移動自在に支持されている。
【0050】
図4及び図5に示すように、収納カップ開閉機構36は、図4中矢印C方向及び矢印D方向に旋回自在に設けられた旋回アーム41と、旋回アーム41を旋回駆動する旋回駆動機構42と、旋回アーム41の先端に取り付けられたカバー43とを有する。
カバー43は、収納カップ34の開放部より大径の円盤状をなし、その上面中央に旋回アーム取り付け部44が設けられ、この旋回アーム取り付け部44に、旋回アーム41の先端が取り付けられている。すなわち、カバー43は、この旋回アーム取り付け部44を介して旋回アーム41の先端に取り付けられている。
旋回駆動機構42は、旋回モータ45と、旋回モータ45の駆動軸の先端に、該駆動軸と同軸方向となるように取り付けられた旋回支軸46とを有する。旋回支軸46には、旋回アーム44がその軸方向と直交するように固定されている。
なお、旋回支軸46の長さ及び旋回アーム41の固定位置は、カバー43が後述する閉位置にあるとき、カバー43が、エア制御部材40より若干上方であって第1、第2の旋回アーム16、26に干渉しない位置に配置されるように設定されている。
【0051】
以上のように構成された収納カップ開閉機構36では、旋回モータ45が駆動されると、旋回支軸46が回転駆動され、旋回アーム41が、旋回モータ45の回転方向に応じて図4中矢印C方向及び矢印D方向に旋回操作される。このように旋回アーム41が旋回操作されることにより、カバー43は、旋回支軸46を中心に水平移動し、収納カップ34から離れた開位置と収納カップ34の開放部を覆う閉位置との間を移動する。
【0052】
また、この形態の被処理基板収納部6では、カバー43が閉位置にあるとき、排気口39から排気することによって、カバー43とエア制御部材40との隙間d、及び、回転軸12と収納カップ34の底部37との隙間dからエアが供給される。カバー43とエア制御部材40との隙間dから供給されたエアは、エア制御部材40の傾斜面4aに沿って外周側に送流され、排気口39から排気される。また、回転軸12と収納カップ34の底部37との隙間dから供給されたエアは、傘型のエア制御部15の下側のポケット15a内を通過して底部37に沿って外周側に送流され、排気口39から排気される。収納カップ34内に、このようなエアの流れが生じることにより、被処理基板2に塗布された塗液が効率よく乾燥される。エアの種類は、特に限定されないが、マイクロダストを除去したクリーンエアなどの空気流あるいは窒素等の不活性ガスを混合したガスなどを適用することができる。
【0053】
そして、この形態の塗布装置1は、各種情報の入力を行う操作部と、各部の動作を制御する制御部とを備えている。
操作部としては、例えば、キーボードやタッチパネル等を用いることができる。
制御部は、演算部やメモリー等を内蔵するコンピュータで構成されており、操作部からの信号(入力)が随時入力され、この信号に基づき、予め設定されたプログラムに従って、各部の動作を制御する。特に、この形態の塗布装置において、それらの制御部は、被処理基板2の両主面に塗液を供給する工程で、第1の塗液噴出口23から噴出する塗液の噴出量及び第1の塗液噴出口23の走査速度と、第2の塗液噴出口29から噴出する塗液の噴出量及び第2の塗液噴出口29の走査速度を、被処理基板2の両主面で形成される塗膜の厚さが略等しくなるように、それぞれ、独立に制御する機能を有することが好ましい。 また、塗膜の外周縁部にリンス液を供給する工程で、第1のリンス液噴出口24から噴出するリンス液の噴出量及び第1のリンス液噴出口24の走査速度と、第2のリンス液噴出口30から噴出するリンス液の噴出量及び第2のリンス液噴出口30の走査速度を、被処理基板2の両主面でリンス液の供給量が略等しくなるように、それぞれ、独立に制御する機能を有することが好ましい。
【0054】
<ディスクリート磁気記録媒体の製造>
次に、この塗布装置1による塗液の塗布工程を、図16に示すディスクリート磁気記録媒体の製造工程の一部に適用した場合を例にして説明する。
図6〜図15は、塗布装置の動作を工程順に説明する模式図、図16は、被処理基板の一例を示す縦断面図、図17は非磁性基板101上に下地層102と磁性層103を形成した状態を示す縦断面図、図18は本発明の塗布装置によってレジスト層が形成された状態を示す縦断面図、図19は、レジスト層をパターニングすることによって形成されたレジストパターンを示す縦断面図である。
【0055】
まず、中心開口部を有する非磁性基板101の両方の主面に、常法に従って、軟磁性層及び中間層などからなる下地層102を形成する。次にこの下地層102の上に磁性層103を形成する。磁性層103は、例えばスパッタ法などの成膜法により薄膜として下地層102の上面全域に形成する。以上のようにして各膜が形成された被磁性基板101の断面構造を図17に示す。
次に、磁性層103の表面に、全面的にレジスト層を形成した後、このレジスト層を磁気記録パターンに対応する平面形状でパターニングし、レジストパターンを形成する。
レジスト層の形成は、先に説明した形態の両面塗布装置1を用い、磁性層103が形成された非磁性基板101を被処理基板2として、以下のようにして行う。
【0056】
まず、図6に示すように、両面塗布装置1は、初期状態では、各塗液用ノズル18、28、各リンス液用ノズル19、27、収納カップ34及びカバー43が、それぞれ、第1の位置、第1‘の位置、非収納位置及び開位置とされている。
次に、被処理基板2の中心開口部2aを、チャッキング部11の受部11aに装着し、ナット部11bをネジ締めすることにより、チャッキング操作する。これにより被処理基板2を水平となるように回転軸12に保持する。
【0057】
次に、各部の作動をオンにする。
これにより、図7に示すように、第1の旋回駆動機構17は、第1の塗液噴出口23が、第1の位置(初期位置)から第2の位置(待機位置)に移動するように、第1のノズル旋回アーム16を図2中矢印A方向に旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31も、同様に、第2の塗液噴出口29が、第1‘位置(初期位置)から第2‘の位置(待機位置)に移動するように、第2のノズル旋回アーム26を図2中矢印A方向に旋回駆動する。また、このとき、第1のリンス液噴出口24及び第2のリンス液噴出口30は、それぞれ、第1の塗液噴出口23及び第2の塗液噴出口29に追従して移動する。
【0058】
次に、図8に示すように、収納カップ開閉機構36は、収納カップ34を非収納位置から収納位置に移動操作する。これにより、回転軸12に保持された被処理基板2が、収納カップ34の内部に収納される。
次に、図9に示すように、旋回駆動機構42は、カバー43を開位置から閉位置に移動するように、旋回アーム41を図中矢印C方向に旋回駆動する。また、排気口39からエアを吸い出すことで、カバー43とエア制御部材40との隙間dから、及び、収納カップ34の底部37と回転軸12との隙間dからエアを供給する。供給されたエアは、収納カップ34内を送流され、排気口39から排気される。このとき、エアが供給される空間(被処理基板2が存する空間)は、収納カップ34及びカバー43によって囲まれていることにより、エアが均一に送流される。
次に、図10に示すように、回転駆動機構3は、回転軸12を所定の回転数で回転駆動する。これにより、被処理基板2は、回転軸12の回転方向および回転数に応じて回転する。
【0059】
次に、図11に示すように、第1の旋回駆動機構17が、第1の塗液用噴出口23を第2の位置(待機位置)から第3の位置(塗布開始位置)に移動するように、第1のノズル旋回アーム16を図2中矢印A方向に旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31が、同様に、第1の塗液用噴出口23を第2の位置(待機位置)から第3の位置(塗布開始位置)に移動するように、第2のノズル旋回アーム26を図中矢印A方向に旋回駆動する。また、このとき、第1のリンス液噴出口24及び第2のリンス液噴出口30は、それぞれ、第1の塗液噴出口23及び第2の塗液噴出口29に追従して移動する。
【0060】
次に、塗液供給手段20は、第1の塗液用ノズル18及び第2の塗液用ノズル28に、それぞれ、第1の塗液噴出口23及び第2の塗液噴出口29から所定量の塗液が噴出するように、塗液を供給する。
以上の操作により、第1の塗液噴出口23は、被処理基板2の上面の直上を内周から外周に亘って走査しつつ塗液を供給することができる。それと同時に、第2の塗液噴出口30も、被処理基板2の下面の直下を走査しつつ、被処理基板2の下面に塗液を供給することができる。その結果、被処理基板2の上下両面に、同時に塗液を供給することができる。
【0061】
このとき、制御部は、第1の塗液噴出口23における塗液噴出量及び走査速度と、第2の塗液噴出口29における塗液噴出量及び塗液噴出量を、それぞれ独立に制御する。
ここで、第1の塗液噴出口23は下方に塗液を噴出し、第2の塗液噴出口29は上方に塗液を噴出することから、各噴出口23、29から噴出される塗液はその挙動が異なり、塗液の供給条件(各塗液噴出口における塗液噴出量及び走査速度)を同じにした場合には、上面(一方の主面)と下面(他方の主面)とで形成される塗膜厚が異なってしまう。
これに対して、この塗布装置1では、第1の塗液噴出口23における塗液噴出量及び走査速度と、第2の塗液噴出口29における塗液噴出量及び走査速度とを、それぞれ、独立に制御するので、これらパラメータを、被処理基板2の上面と下面の両方で目的とする塗膜厚が得られるように、別々に設定することができる。したがって、被処理基板2の両主面に、目的とする供給量で同時に塗液を供給することができる。
また、このとき、被処理基板2の中心開口部2aは、チャッキング部11の受部11aによって閉塞されていることと、被処理基板2の回転により塗液が外周方向に移動すること、塗液を噴出する噴出口23、30が被処理基板2の中心開口部2a周縁位置から外側に塗液を噴出することから、中心開口部2aの内側に塗液が侵入することを防止できる。
【0062】
次に、図12に示すように、第1の旋回駆動機構17は、第1の塗液噴出口23が第4の位置(塗布終了位置)から第2の位置(待機位置)に移動するように、第1のノズル旋回アーム16を図3(A)中矢印B方向に旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31も、第2の塗液噴出口29が第4´の位置(塗布終了位置)から第2´の位置(待機位置)に移動するように、第2のノズル旋回アーム26を図中矢印B方向に旋回駆動する。また、このとき、第1のリンス液噴出口24及び第2のリンス液噴出口30は、それぞれ、第1の塗液噴出口23及び第2の塗液噴出口29に追従して移動する。
【0063】
また、回転駆動機構3は、回転軸12の回転数を所定の回転数とする。これにより、被処理基板2は、その回転数に応じて回転し、塗液を被処理基板1の上面側と下面側に拡げることができる。所定時間経過後、回転駆動機構3は被処理基板2の回転を停止する。
被処理基板2が高速で回転することにより、被処理基板2の両主面に供給された塗液は、それぞれ、遠心力によって外周側に振り切られ、厚さが均一化する。その結果、被処理基板2の両主面に、均一な厚さを有する塗膜が形成される。
【0064】
ただし、塗液の粘度が比較的高い場合には、塗液の表面張力により、塗膜の外周縁部において、塗膜の厚さが厚くなる。この塗膜をそのまま乾燥させてレジスト層を形成した場合、外周縁部の厚さが厚いことになる。このような外周縁部の塗膜が厚い被処理基板2を用いて、スタンパにより凹凸を形成するディスクリート型磁気記録媒体の製造に適用した場合、レジスト層の表面にスタンパを圧着させてパターンを転写する場合に、中央部においてスタンパが浮いてしまい、転写されるパターンが不鮮明になるおそれがある。
これに対して、この実施形態の両面塗布装置1では、次のようなリンス処理を行うことにより、外周縁部の過分な塗膜を除去して、厚さの均一な塗膜を形成することができる。
【0065】
まず、図13に示すように、回転駆動機構3は、回転軸12を所定の回転数で回転駆動する。これにより、被処理基板2は、回転軸12の回転方向および回転数に応じて回転する。
次に、第1の旋回駆動機構17は、第1のリンス液噴出口24が被処理基板2の上面外周縁を向くように、第1のノズル旋回アーム16を旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31も、同様に、第2のリンス液噴出口30が被処理基板2の下面の外周縁を向くように第2のノズル旋回アーム26を旋回駆動する。
【0066】
次に、リンス液供給手段21は、第1のリンス液用ノズル19及び第2のリンス液用ノズル27に、それぞれ、第1のリンス液噴出口24及び第2のリンス液噴出口30から所定量の塗液が噴出するように、リンス液を供給する。
これにより、第1のリンス液噴出口24は、被処理基板2の上面に形成された塗膜の外周縁部にリンス液を供給する。それと同時に、第2のリンス液噴出口30は、被処理基板2の下面に形成された塗膜の外周縁部にリンス液を供給する。その結果、被処理基板2の両主面に形成された塗膜の外周縁部に、同時にリンス液が供給され、このリンス液に塗液の一部が溶解する。
このとき、制御部は、第1のリンス液噴出口24におけるリンス液噴出量及び第2のリンス液噴出口30におけるリンス液噴出量を、それぞれ独立に制御する。
【0067】
ここで、第1のリンス液噴出口24は斜め下方に塗液を噴出し、第2のリンス液噴出口30は上方に塗液を噴出することから、各噴出口24、30から噴出されるリンス液はその挙動が異なり、リンス液の供給条件(各リンス液噴出口におけるリンス液噴出量及び走査速度)を同じにした場合には、被処理基板2の上面側と下面とで実際に塗膜に到達供給されるリンス液の量が異なってしまう。
これに対して、この形態の両面塗布装置1では、第1のリンス液噴出口24におけるリンス液噴出量と第2のリンス液噴出口30におけるリンス液噴出量とを、それぞれ、独立に制御するので、これらパラメータを、被処理基板2の上面と下面の両方で目的とするリンス液供給量が得られるように、別々に設定することができる。したがって、被処理基板2の上下両面に、目的とする供給量で同時にリンス液を供給することができる。
【0068】
また、回転駆動機構3は、回転軸12の回転数を所定の回転数に上昇させる。これにより、被処理基板2は、その回転数に応じて回転する。これにより、被処理基板2も回転を停止する。被処理基板2が高速で回転することにより、塗膜の外周縁部に供給されたリンス液は、塗液の一部を溶解した状態で外周側に振り切られる。その結果、外周縁部における過分な塗膜が除去され、内周から外周に亘って厚さの均一な塗膜を得ることができる。所定時間経過後、回転駆動機構3は、回転を停止する。
【0069】
次に、図14に示すように、第1の旋回駆動機構17は、第1の塗液噴出口24が待機位置に移動するように、第1のノズル旋回アーム16を旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31も、同様に、第2の塗液噴出口29が待機位置に移動するように、第2のノズル旋回アーム26を旋回駆動する。
【0070】
次に、図15に示すように、回転駆動機構3は、回転軸12の回転駆動を停止する。これにより、被処理基板の回転も停止する。その結果、図18に示すように、磁性層103の表面に、レジスト層(厚さ:例えば200nm)106が得られる。
先の工程においてこの形態の両面塗布装置1では、収納カップ34及びカバー43によって囲まれた空間内に均一なエア流れを発生させているので、塗膜の乾燥を均一化できるとともに、塗膜に塵埃等の余計な付着物を付着させ難い。
【0071】
次に、旋回駆動機構42は、カバー43を閉位置から開位置に移動するように、旋回アーム41を旋回駆動する。
次に、収納カップ移動機構35は、収納カップ34が収納位置から非収納位置に移動するように、収納カップ34を下降操作する。
【0072】
次に、第1の旋回駆動機構17は、第1の塗液噴出口23が第2の位置(待機位置)から第1の位置(初期位置)に移動するように、第1のノズル旋回アーム16を図2中矢印B方向に旋回駆動する。また、第2の旋回駆動機構31も、同様に、第2の塗液噴出口29が第2‘の位置(待機位置)から第1’の位置(初期位置)に移動するように、第2のノズル旋回アーム26を図2中矢印A方向に旋回駆動する。
次に、上下両面にレジスト層106が形成された被処理基板2を両面塗布装置1の回転軸12から取り外す。
【0073】
以上のように、この形態の両面塗布装置1では、上面側に塗液を噴出する第1の塗液用ノズル18と、下面側に塗液を噴出する第2の塗液用ノズル28とを備えることにより、被処理基板2の両主面に同時に塗液を供給することができるので、被処理基板2の一方の主面に塗液を供給した後、他方の主面に塗液を供給するのに比べて、被処理基板2の両方の主面に、簡易な工程で、短時間に塗液を塗布することができる。
【0074】
また、第1の塗液噴出口23における塗液噴出量及び走査速度と、第2の塗液噴出口29における塗液噴出量及び走査速度を、それぞれ、独立に制御するので、被処理基板2の両方の主面に、略等しい量で塗液を供給して均一膜厚の塗膜を形成することができる。
また、被処理基板2の上面に形成された塗膜の外周縁部に、リンス液を噴出する第1のリンス液用ノズル19と、被処理基板2の下面に形成された塗膜の外周縁部に、リンス液を噴出する第2のリンス液用ノズル27とを備えるので、塗液の粘度が比較的高く、表面張力によって塗膜の外周縁部で膜厚が必要以上に厚くなりそうな場合でも、外周縁部における過分の塗膜を溶解除去することができる。
したがって、被処理基板2の両面に、厚さの均一なレジスト層106を、簡易な工程で、短時間に形成することができる。その結果、例えば、レジスト層の表面にスタンパを圧着させてパターンを転写する場合に、レジスト層の表面とスタンパとが高度に密着し、レジストの表面に正確な形状のパターンを精密に転写することができる。
【0075】
また、この形態の両面塗布装置1では、被処理基板2を保持するチャッキング部11の受部11aが、被処理基板2の中心開口部2aを閉塞する機能を有しているので、塗液を塗布したときに、被処理基板2の中心開口部2aに塗液が侵入するのを防止することができ、中心開口部2aを避けてレジスト層106を形成することができる。
したがって、被処理基板2として非磁性基板に磁性層を形成して得られる磁気記録媒体は、記録再生装置のチャッキング装置を中心開口部に係合させてチャッキングした際、正確な位置にチャッキングすることができ、また、中心開口部に残存したレジストに起因するチャッキング装置等の汚染を回避することができる。
【0076】
次に、図19に示すように、得られたレジスト層106を、磁気記録パターンに対応する平面形状でパターニングし、レジストパターン107を形成する。
レジスト106層をパターニングする方法としては、レジスト層106の上から直接スタンパを密着させ、高圧でプレスする方法等を用いることができる。また、レジストとして、UV硬化型樹脂を用いた場合には、フォトリソグラフィー技術を適用してパターン形成を行うこともできる。
【0077】
前記のプロセスで用いられるスタンパは、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものが使用でき、材料としてはプロセスに耐えうる硬度、耐久性が要求される。たとえばNiスタンパなどが使用できるが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。このスタンパには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成できる。
【0078】
次に、レジストパターン107が形成されていない領域の磁性層の磁気特性を改質し、磁気記録パターンを磁気的に分離する領域を形成する。
この磁気特性の改質の一例としては、レジストパターン107が形成された磁性層を、反応性プラズマに曝すことによって行うことができる。
反応性プラズマとしては、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)や反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)が例示できる。
次に、磁性層103の上から、レジストパターン107を除去する。
レジストの除去は、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、湿式エッチング等の手法を用いることができる。
【0079】
次に、磁性層103の上に、保護膜105及び潤滑剤層を形成する。
保護膜105の形成は、一般的にはダンヤモンド状カーボン(Diamond Like Carbon)の薄膜をP−CVD法などを用いて成膜する方法が行われるが特に限定されるものではない。また、潤滑剤層は、例えば、潤滑剤を含有する溶液を、保護膜の表面に塗布した後、乾燥することによって形成することができる。
【0080】
以上のように、この製造工程では、磁性層の表面に、磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成後、その表面の反応性プラズマにより処理し、その後、レジストを除去して保護層を再形成後、潤滑材を塗布して磁気記録媒体を製造している。このような方法を採用することにより磁性層と反応性プラズマとの反応性をより高めることが可能となる。
また、以上のような工程の他、次のような工程で磁気記録媒体を製造するようにしてもよい。
すなわち、磁性層の上に保護層を形成し、その表面に、本発明の両面塗布装置を用いて磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成し、その後、反応性プラズマによる磁性層の改質処理を行う工程も採用できる。このような工程を採用することにより、反応性プラズマ処理の後に保護膜を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。本発明者らは、磁性層の表面に保護膜を形成した後においても、磁性層と反応性プラズマとの反応を生じさせることが可能であることを実験により確認している。保護膜で覆われているはずの磁性層において反応性プラズマとの反応が生じている理由は、発明者らの考えによると、保護膜の空隙等が存在し、その空隙からプラズマ中の反応性イオンが侵入し、反応性イオンが磁性金属と反応することがある。また、保護膜中を反応性イオンが拡散し、反応性イオンが磁性層まで到達することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の活用例として、中心開口部を有するディスク基板の両側に設けられた磁性層の上に、レジスト層を形成するための塗液を塗布する両面塗布装置が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の両面塗布装置の全体構成を1面から見た模式図である。
【図2】本発明の両面塗布装置の全体構成を他の面から見た模式図である。
【図3】図3(A)は本発明の両面塗布装置の主要部を示す上面図、図3(B)は本発明の両面塗布装置の主要部を模式的に示す縦断面図である。
【図4】本発明の両面塗布装置が備える収納カップ開閉機構を示す上面図である。
【図5】本発明の両面塗布装置が備える収納カップ開閉機構を模式的に示す縦断面図である。
【図6】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、被処理基板チャック工程を示す模式図である。
【図7】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、ノズルの待機位置移動工程を示す模式図である。
【図8】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、収納カップ上昇工程を示す模式図である。
【図9】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、カバーの閉位置移動工程を示す模式図である。
【図10】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、被処理基板の低速回転工程を示す模式図である。
【図11】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、塗液塗布工程を示す模式図である。
【図12】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、塗液振り切り工程(被処理基板高速回転工程)を示す模式図である。
【図13】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、リンス液塗布工程を示す模式図である。
【図14】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、リンス液振り切り工程を示す模式図である。
【図15】本発明の両面塗布装置の動作を工程順に示すもので、被処理基板の回転停止工程を示す模式図である。
【図16】本発明の両面塗布装置を用いて製造されるディスクリート磁気記録媒体の一例を示す縦断面図である。
【図17】本発明の両面塗布装置によって塗液が塗布される被処理基板の一例を示す縦断面図である。
【図18】本発明の両面塗布装置によってレジスト層が形成された状態を示す縦断面図である。
【図19】レジスト層をパターニングすることによって形成されたレジストパターンを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1…両面塗布装置、2…被処理基板、2a…中心開口部、3…回転駆動機構、
4…第1の塗液供給手段、5…第2の塗液供給手段、6…被処理基板収納部、7…筐体、11…チャッキング部(保持機構)、11a…受部、11b…ナット部、12…回転軸、16…第1のノズル旋回アーム、
17…第1の旋回駆動機構(第1の塗液用ノズル移動機構)、
18…第1の塗液用ノズル、19…第1のリンス液用ノズル、
23…第1の塗液噴出口、24…第1のリンス液噴出口、
26…第2のノズル旋回アーム、27…第2のリンス液用ノズル、
28…第2の塗液用ノズル、29…第2の塗液噴出口、
30…第2のリンス液噴出口、
31…第2の旋回駆動機構(第2の塗液用ノズル移動機構)、34…収納カップ、
36…収納カップ開閉機構、39…排気口、
40…エア制御部材、40A…排気管、43…カバー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、
前記被処理基板をその中心開口部を介して保持する保持機構を有し、前記被処理基板をその周回りに回転させる回転駆動機構と、
前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、この第1の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の一方の主面と離間しつつ、この一方の主面に沿って走査するように移動操作する第1の塗液用ノズル移動機構と、
前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルと、この第2の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の他方の主面と離間しつつ、この他方の主面に沿って走査するように移動操作する第2の塗液用ノズル移動機構とを備え、
前記第1の塗液用ノズル移動機構により移動操作される第1の塗液用ノズルと、前記第2の塗液用ノズル移動機構により移動操作される第2の塗液用ノズルが、いずれも、前記保持機構に保持された被処理基板の中心開口部には塗液を噴出せず、同被処理基板の内周縁よりも外側にのみ塗液を噴出自在にしてなることを特徴とする両面塗布装置。
【請求項2】
中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、
前記被処理基板をその中心開口部を介して保持する保持機構を有し、前記被処理基板をその周回りに回転させる回転駆動機構と、
前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、この第1の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の一方の主面と離間しつつ、この一方の主面に沿って走査するように移動操作する第1の塗液用ノズル移動機構と、
前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルと、この第2の塗液用ノズルを、その塗液噴出口が前記被処理基板の他方の主面と離間しつつ、この他方の主面に沿って走査するように移動操作する第2の塗液用ノズル移動機構とを備え、
前記第1の塗液用ノズルに隣接させて前記被処理基板に塗布された塗液を洗浄する第1のリンス液用ノズルと、前記第2の塗液用ノズルに隣接させて前記被処理基板に塗布された塗液を洗浄する第2のリンス液用ノズルを設け、
これら第1のリンス液用ノズルと第2のリンス液用ノズルを前記被処理基板の一方の主面あるいは他方の主面に沿って移動自在に設け、これら第1のリンス液用ノズルと第2のリンス液用ノズルによるリンス液の噴出により、被処理基板上の塗膜を部分的に洗浄除去する機能を具備したことを特徴とする両面塗布装置。
【請求項3】
前記保持機構が前記被処理基板を保持した状態において該被処理基板の中心開口部を閉塞して中心開口部への塗液の進入を防止する機能を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の両面塗布装置。
【請求項4】
前記第1のリンス液用ノズルの先端を前記保持機構に保持された被処理基板の一方の主面に対峙させた状態でリンス液噴出口を介して前記被処理基板の一方の主面の外周縁側に向けて斜め方向にリンス液を噴出自在に構成し、前記第2のリンス液用ノズルを前記保持機構に保持された被処理基板の他方の主面に対峙させた状態でリンス液噴出口を介して前記被処理基板の他方の主面の外周縁側に向けて斜め方向にリンス液を噴出自在に構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の両面塗布装置。
【請求項5】
前記第1の塗液用ノズルを支持する第1のノズル旋回アームと、前記第2の塗液用ノズルを支持する第2のノズル旋回アームを前記保持機構の周囲に個別に設け、各旋回アームの前記被処理基板と平行な面に沿う旋回動作に応じて前記第1の塗布用ノズルと前記第2の塗布用ノズルをそれらの塗液噴出口を前記被処理基板の各主面に対峙させて移動自在に支持してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の両面塗布装置。
【請求項6】
前記第1のノズル旋回アームと前記第2のノズル旋回アームを前記保持機構を中心として左右対象に配置し、前記第1のノズル旋回アームの塗液噴出口と前記第2のノズル旋回アームの塗液噴出口を各自独立に前記被処理基板の中心開口部側の内周縁側から前記被処理基板の外周縁側まで移動自在に支持してなることを特徴とする請求項5に記載の両面塗布装置。
【請求項7】
中心開口部を有する被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布方法であって、
前記被処理基板を水平に保持し、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1の塗液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2の塗液用ノズルを用い、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出させ、前記被処理基板を回転させて被処理基板の両主面に塗膜を形成した後、
前記被処理基板の一方の主面にリンス液を噴出する第1のリンス液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面にリンス液を噴出する第2のリンス液用ノズルを用い、前記被処理基板の外周縁側に形成されている塗膜の厚い部分にリンス液を噴出させ、前記被処理基板を回転させて該塗膜の厚い部分を部分的にリンス液とともに除去して膜厚を均一化することを特徴とする塗液の両面塗布方法。
【請求項8】
前記第1のリンス液用ノズルのリンス液噴出口と前記第2のリンス液用ノズルのリンス液噴出口をいずれも前記被処理基板の外周縁側よりも内周側に配置した状態において、リンス液を被処理基板の内周側から外周縁側に向けて斜め方向に噴出して前記塗膜にリンス液を吹き付けた後、前記被処理基板を回転させて該被処理基板外周縁側の塗膜の厚い部分を部分的に除去することを特徴とする請求項7に記載の塗液の両面塗布方法。
【請求項9】
前記被処理基板を水平に保持する際、被処理基板の中心開口部を閉塞して塗液の浸入を阻止した後、前記第1の塗液用ノズルと第2の塗液用ノズルを用いて塗液を噴出することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の塗液の両面塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−70507(P2009−70507A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239536(P2007−239536)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】