乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構
【課題】左旋回時と右旋回時において、操向手段の操作に対し旋回方向内側のサイドクラッチが略同じ時期に入切動作を行うようにして、旋回性能の向上を図る。
【解決手段】操向手段と左右のサイドクラッチ45・45とをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材71と、該カム部材71とローラ74を介して作用する左右の操作アーム75・75と、該操作アーム75・75を介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材72・72とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材71とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材71を回動させるロッド65を備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材71を回動中心に対して左右非対称な形状に構成した。
【解決手段】操向手段と左右のサイドクラッチ45・45とをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材71と、該カム部材71とローラ74を介して作用する左右の操作アーム75・75と、該操作アーム75・75を介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材72・72とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材71とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材71を回動させるロッド65を備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材71を回動中心に対して左右非対称な形状に構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向手段の操作に連動してサイドクラッチの入切動作を行う乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗用型田植機においては、リヤアクスルケース内に配置されたリヤアクスル軸に左右のサイドクラッチを設け、旋回操作時に、旋回方向内側の後車輪に対するサイドクラッチを切って、内側の後車輪への動力伝達をサイドクラッチ切換機構によりステアリングハンドルの回動操作に連動させて遮断することで、機体の旋回性能の向上が図られていた。該サイドクラッチ切換機構は、リンク機構とカム機構とを備えてステアリングハンドルと左右のサイドクラッチとの間に介設され、ステアリングハンドルからのクラッチ操作力をリンク機構及びカム機構を介してサイドクラッチに伝達し、該サイドクラッチの入切動作を行うように構成されていた。すなわち、アクスルケースに設けられた支点軸にカム部材とカム部材と当接可能なローラを有する左右の各操作アームとをそれぞれ水平回動可能に支持し、該カム部材とステアリングハンドルとをロッドで連動連結し、ステアリングハンドルによる旋回操作時にロッドを前後方向に押し引きしてカム部材を回動させ、左右どちらか一方の操作アーム上のローラに当接させて、操作アームを回動させることで、アクスル軸上に設けたクラッチ操作部材をサイドクラッチに作用させて、サイドクラッチを切り、旋回方向内側の車輪が駆動しないように構成されていた。
【特許文献1】特開2002−340021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の乗用型田植機に備えられるサイドクラッチ切換機構においては、ステアリングハンドルの回動操作に連動してロッドが前後方向に押し引きされる際に、ロッドの押し時と引き時で当該ロッドの撓み量に差が生じるが、カム部材が左右対称な形状に構成され、ロッドはカムの一端に連結されていたため、ステアリングハンドルの左又は右方向への所定回動量に対しカム部材が左右の操作アームに作用する時期がずれることがあった。つまり、左旋回時と右旋回時において、ロッドの撓み量だけ旋回方向内側のサイドクラッチの入切動作が行われる時期がずれることがあった。そのため、走行機体の旋回半径が左右で若干異なるものとなり、旋回性能が損なわれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、操向手段と左右のサイドクラッチとをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材と、該カム部材とローラを介して作用する左右の操作アームと、該操作アームを介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材を回動させるロッドを備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記カム部材の回動中心を、機体左右中心から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッドを配置したものである。
【0007】
請求項3においては、前記操向手段の回動時に前記ロッドが撓む方向に回動したときの前記カム部材のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離を、前記ロッドが引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、操向手段の操作に連動してロッドが前後方向に押し引きされる際に、ロッドの押し時と引き時で当該ロッドの撓み量に差が生じるが、旋回方向に関わらずサイドクラッチを略同じ時期に入切動作させることができる。したがって、左右旋回半径を同一として、旋回性能の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2においては、機体左右中心近傍に駆動部などを配設することができ、走行機体における各部の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0011】
請求項3においては、ロッドの押し時における撓み量が引き時における伸び量よりも大きくなるが、ロッドの押し時の方がカム部材の回動中心から作用位置までの距離が長いので、同じ回動角であっても押し時のほうが長く作用させることができて、ロッドの撓みを吸収することができ、左旋回時と右旋回時における操向操作に伴うサイドクラッチの入切動作時期のずれを解消できる。また、左右旋回半径に誤差が発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施例に係るサイドクラッチ切換機構を備える乗用型田植機の全体的な構成を示した斜視図、図2は走行機体の斜視図、図3は走行機体前部の側面図、図4はサイドクラッチ切換機構を示す図、図5は走行機体後部の下方斜視図、図6はカム機構の前方斜視図、図7はカム機構の後面図、図8は直進状態におけるカム機構の平面図、図9はカム部材の平面図、図10は左旋回開始状態におけるカム機構の平面図、図11は右旋回開始状態におけるカム機構の平面図である。
【0014】
図1、図2に示すように、乗用型田植機1には走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降可能に装着された植付装置17とが備えられている。走行機体2は、主に機体前後方向に延伸された左右一対のフレームからなるメインフレーム3・3と、左右のメインフレーム3・3の間に配置された機体前後方向に長い一体型ケース体からなるミッションケース4と、左右のメインフレーム3の間でミッションケース4に連結されて機体後方に延伸された正面断面視下向きコ字形状の連結フレーム5とから構成されている。
【0015】
前記ミッションケース4の機体前後方向中途部の左右両側面にフロントアクスルケース6が突設され、該フロントアクスルケース6の左右両端に前車輪7が取り付けられている。また、連結フレーム5の後端部にリヤアクスルケース8が取り付けられ、該リヤアクスルケース8の左右両端に後車輪9が取り付けられている。そして、リヤアクスルケース8に左右一対の支持フレーム10が立設され、該支持フレーム10に上及び下リンクからなる平行リンク機構11を介して植付装置17が連結されている。
【0016】
前記植付装置17は、主にミッションケース4の後端から後方に突出されたPTO軸36と自在継手軸41を介して連結されて動力が伝達される左右一対の伝動ケース13と、走行機体2の後部に上端が接近するように前傾配置された苗載台14と、各伝動ケース13の下面に配置されたフロート15と、各伝動ケース13の左右両側に取り付けられ、圃場面と苗載台14の下端との間を上下昇降しながら苗載台14上の苗マットから1株ずつに分割して植え付けする植付爪を備えた植付機構とから構成されている。そして、前記連結フレーム5の後部に設けられた昇降用油圧シリンダ16が平行リンク機構11に関連して取り付けられて、植付装置17が走行機体2に対し昇降可能とされている。
【0017】
また、前記走行機体2を上から覆うように車体カバー18がメインフレーム3に取り付けられ、該車体カバー18の後部上方にシート19が配設されている。そして、該シート19の前方にボンネット20が配置されて、車体カバー18の前部上面に固定されている。ボンネット20の左右両側方には予備苗載台21が配置され、図3にも示すように、ボンネット20内においては、その後側にエンジン22やその付属品である、気化器、調速機、エアマフラ、スタータ用コイラ(ロープ式始動装置)、消音器などが配置されている。
【0018】
前記エンジン22の下方にはミッションケース4が配置されている。図4に示すように、ミッションケース4内においては、その前側に操向用のステアリング駆動機構25が設けられ、後側に走行駆動系とPTO駆動系へ動力を伝達可能とする動力伝達機構26が設けられている。そして、該ミッションケース4の左右一側側面から外側方へ突出した入力軸4aとエンジン22の出力軸22aとの間に、弛み調節機構27付きのプーリ28・29及びベルト30からなるベルト伝動機構を設けて、出力軸22aから入力軸4aに動力が伝達可能とされ、該入力軸4aからミッションケース4内の動力伝達機構26に動力が伝達されるように構成されている。
【0019】
前記動力伝達機構26には、入力軸4aから伝達される回転数を変速させる歯車式変速機構35、該歯車式変速機構35からミッションケース4後壁を貫通して後方へ突出されるPTO軸36、該PTO軸36への動力の伝達の入切動作を行うPTOクラッチ、差動機構38から左右両側方へ突出するフロントアクスル軸39・39、歯車式変速機構35からミッションケース4側壁を貫通して入力軸4aと反対側に突出される出力軸、該出力軸への動力の伝達の入切動作を行う主クラッチなどが備えられている。
【0020】
前記PTO軸36は、前記植付装置17に設けられた伝動ケース13の入力軸と機体前後方向に延伸された自在継手軸41を介して連動連結され、該入力軸に動力を伝達することができるように構成されている。自在継手軸41は前部が機体左右中心O1上に延出されて、ミッションケース4とリヤアクスルケース8とを連結する前記連結フレーム5に覆われるようにその内側空間に配置され、前後中途部でリヤアクスルケース8上に支持されている。
【0021】
前記ミッションケース4の出力軸は、前記リヤアクスルケース8前面から前方に突出された入力軸8aと機体前後方向に延伸された伝動軸42を介して連動連結されて、該入力軸8aに動力を伝達することができるように構成されている。伝動軸42は、機体左右中心O1よりも左右一側にずれた位置に前記自在継手軸41前部と略平行に設けられて、連結フレーム5の外側方に配置されている。
【0022】
前記リヤアクスルケース8内においては、図5にも示すように、入力軸8aが一対のかさ歯車を介して左右に延伸して配置されたリヤアクスル軸44に連動連結され、該リヤアクスル軸44の左右両端にそれぞれサイドクラッチ45・45を介してサイドクラッチ軸46・46が連結されている。そして、左右の各サイドクラッチ軸46が減速機構47を介して後車輪9の車軸48と連動連結されて、車軸48に入力軸8aから動力が伝達可能とされている。こうして、サイドクラッチ45・45の入切動作を後述のリンク機構70Aとカム機構70Bとからなるサイドクラッチ切換機構を用いて行うことにより、左右の後車輪9・9を同期して駆動したり、左右どちらか一方の後車輪9のみを駆動したりすることができるように構成されている。
【0023】
一方、前記左右のフロントアクスル軸39・39は、ミッションケース4前後中途部の左右両側面に突出するように設けられたフロントアクスルケース6・6内に配置され、減速機構を介して前車輪7・7の車軸40・40と連動連結されている。こうして、車軸40・40にミッションケース4の入力軸4aから動力が伝達可能とされて、前車輪7・7を駆動することができるように構成されている。
【0024】
また、ミッションケース4前部に内蔵されたステアリング駆動機構25からステアリング下軸51がミッションケース4上壁を貫通して上方へ突出され、該ステアリング下軸51の上端にユニバーサルジョイントを介してステアリング上軸52の下端が屈曲可能に連結されている。ステアリング上軸52がボンネット20上方まで延出され、その上端に操向手段となるステアリングハンドル53が取り付けられている。ステアリング下軸51とステアリング上軸52はボンネット20内前側に配置され、それぞれミッションケース4前部上に固設された筒状の下コラム54と、該下コラム54に支持された筒状の上コラム55とで覆われている。
【0025】
そして、前記ステアリング駆動機構25から回転軸57がミッションケース4を貫通して下方へ突出されて、該回転軸57に前アーム58が前方へ突出するように設けられるとともに、後アーム59が左右一側方へ突出するように設けられて、該前アーム58と後アーム59とが回転軸57の回転に伴って一体的に回動可能とされている。前アーム58はコンロッドやタイロッドとともにリンク機構62を構成し、ステアリングハンドル53の回動により前車輪7・7の操舵方向を変更することができるようになっている。
【0026】
前記後アーム59はロッド65や回動アーム66とともに前記サイドクラッチ切換機構のうちのリンク機構70Aを構成するようになっている。すなわち、後アーム59の先端にロッド65の前端が枢結され、該ロッド65がリヤアクスルケース8の手前まで前後方向に延伸されて、その後端が回動アーム66の一端に支持されている。回動アーム66はその他端が連結フレーム5を上下方向に貫通する支点軸67の下端に固設され、連結フレーム5の内側に前記自在継手軸41を避けて固設されたボス68に当該支点軸67を挿通して回動可能に支持されている。そして、連結フレーム5上方へ突出した支点軸67の上端に前記サイドクラッチ切換機構のカム機構70Bの一部をなすカム部材71が固設され、該カム部材71と回動アーム66とが後アーム59の回動に伴ってロッド65を前後方向に押し引き操作することにより一体的に水平回動するようにしてリンク機構70Aが構成されている。なお、ロッド65の前後中途部にはターンバックル65aが設けられ、ロッド65の前後長が容易に調整可能とされ、左右のサイドクラッチ45の入切動作を調整できるようにしている。
【0027】
また、前記カム部材71は、左右の各サイドクラッチ45の入切動作を行う左右一対のクラッチ操作部材72・72と、カム部73a・73aを有する左右のアーム軸73・73と、ローラ74・74を有する左右の操作アーム75・75などとともにカム機構70Bを構成するようになっている。左右のクラッチ操作部材72・72はリヤアクスルケース8内においてリヤアクスル軸44上に摺動自在に設けられ、それぞれ左右の各サイドクラッチ45・45近傍に配置されている。そして、左右の各クラッチ操作部材72の内側面にアーム軸73の下部に形成されたカム部73aが接合されている。
【0028】
前記左右の各アーム軸73はリヤアクスルケース8上面から上方へ突出されており、その上端に操作アーム75の一端が固設されて、操作アーム75とアーム軸73のカム部73aとが一体的に水平回動可能とされている。左右の操作アーム75・75はカム部材71の後方で、その他端が機体左右中心O1より左右両側に等間隔離間した位置に配置され、正面視でそれぞれカム部材71の左右両端と略重複するように設けられている。そして、該操作アーム75・75の他端上に支軸を上下方向に配置したローラ74・74が回転自在に支持され、該カム部材71の外周後側に形成されたカム部71aに当接可能とされている。
【0029】
前記カム部材71は板状部材からなり、前記支点軸67を中心として左右両側に延伸して左右非対称に構成されている。本実施例では、カム部材71は機体左右中心O1よりも右側にずれた位置で支点軸67に支持され、言い換えれば、支点軸67は機体左右中心O1よりも右側に配置し、ロッド65は機体左右中心O1よりも反対側の左側に配置している。該カム部材71の左右両端はそれぞれ操作アーム75・75上のローラ74・74近傍に位置するまで左右方向に延伸されて、左側部が右側部よりも左右方向で長幅となる左右非対称な形状とされている。なお、左右のアーム75・75の長さは同じ長さとしている。
【0030】
つまり、ステアリングハンドル53を回動すると、ロッド65は押され又は引かれてカム部材71は回動し、該カム部材71の左側部又は右側部においてローラ74・74を介して左右の各操作アーム75・75を回動してサイドクラッチ45・45を作用させるが、ロッド65は押し時に撓み、操作遅れが生じる。即ち、支点軸67からローラ74当接位置までの距離が同じであると、旋回時に左右同じ角度ステアリングハンドル53を回動しても、ロッド65を引っ張り操作する角度は略設定角度でサイドクラッチが「切」となるが、ロッド65を押して操作する側は、撓む分設定角度よりも大きな角度にならないとサイドクラッチが切れないことになり、旋回半径が大きくなってしまう。そこで、ロッド65を押して左操作アーム75を作用させる側は、ステアリングハンドル53を同じ角度操作しても、左操作アーム75を同じ角度回動できるようにするために、支点軸67からローラ74の当接位置までの距離を、右側よりも左側を長く(長幅と)している。これにより、ステアリングハンドル53を同じ角度操作すると、カム部材71の左側のローラ74当接位置までのストロークは右側よりも大きくなり、操作遅れが生じることがなくなり、左右略同等に旋回することが可能となる。そして、直進方向にステアリングハンドル53を向けた状態を中立位置としたとき、カム部71aの左側が左操作アーム75上のローラ74に当接せず、中立位置から作動するまでの間で抵抗ができるだけ小さくなるようにして、右側が右操作アーム75上のローラ74に当接するように支点軸67を回動中心として水平方向に回動可能に支持されている。
【0031】
前記カム部材71におけるカム部71aの外周形状は、支点軸67の後部から右側は、支点軸67を中心とした同一半径の円弧部分71cを形成して、サイドクラッチ45の「切」作動開始位置となる中途部に、前方へ凹む屈曲部分71dを形成して、右側方へ延伸して右短部に至る形状となっている。支点軸67の後部から左側は前記円弧部分71cの接線が斜め左前方へ延伸するようにして、サイドクラッチ45の「切」作動開始位置となる中途部に、後方へ凸となるように「く」字状に屈曲した屈曲部分71bを形成し、該屈曲部分71bより更に角度を大きくして左斜め前方へ延伸して左端部に至る形状となっている。そして、ステアリングハンドル53の回動によりカム部材71の回動に伴って左右の操作アーム75・75上のローラ74・74に左又は右の屈曲部分71b・71dが当接して、更に同方向に回動するとサイドクラッチ45・45が切れ始め、このように切動作開始位置とした屈曲部分71b・71dから外側の傾斜は、支点軸67より遠い側の左側の傾斜を大きくして、ハンドル操作と「切」動作が左右略同じとなるようにしている。
【0032】
こうして、カム部材71が中立状態にある場合には、カム部71aが左操作アーム75上のローラ74に当接せず、右操作アーム75上のローラ74に円弧部分71cに当接して、左右のサイドクラッチ45・45がともに入った状態とされている。そしてステアリングハンドル53を左回りに回転して、ロッド65が後方へ押されると、カム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回り(図8において反時計回り)に水平回動する。旋回する場合には更にステアリングハンドル53は回動されて、カム部71aの左屈曲部分71bが左操作アーム75上のローラ74に当接し、カム部材71が更に同方向に回動する。このときロッド65は撓みながら後方へ押されるが、支点軸67からの屈曲部分71bの位置は屈曲部分71dまでの距離よりも長いため、左右同じ回動角であっても移動距離は長くなり、撓み長さを吸収できるようになっている。これにより、ローラ74がカム部材71に押動されることになり、左操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で右回り(図8において時計回り)に水平回動され、該左操作アーム75の回動によりアーム軸73の下部に形成したカム部73aが左クラッチ操作部材72に当接し、該左クラッチ操作部材72が左サイドクラッチ45側に押されて、左サイドクラッチ45が切れる。このとき、右操作アーム75上のローラ74は、カム部材71のカム部71aに円弧部分71cで当接した状態となるが、カム部材71に押動されずにその回動に伴って円弧部分71cに沿って転動しながら左右中央付近に向かって移動することになるため、右操作アーム75は回動されず、右サイドクラッチ45は入った状態のままとなる。
【0033】
逆に、ステアリングハンドル53を右回りに回転すると、ロッド65は引っ張られることになり、カム部材71が中立状態から支点軸67を中心として平面視で右回りに水平回動する。そして、カム部71aの円弧部分71cに当接した右操作アーム75上のローラ74が円弧部分71cに沿って転動しながら右屈曲部分71dに向かって移動する。そして、該右屈曲部分71dがローラ74に当接した状態で、カム部材71が更に同方向に回動することで、ローラ74が屈曲部分71dからその側方のカム部71aに転動しながら当接し、カム部71aに沿って右端付近まで移動する。このとき、ロッド65は引っ張られているが、その伸びは殆どない。これにより、ローラ74がカム部材71に押動されることになり、右操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で左回りに水平回動され、該右操作アーム75の回動によりアーム軸73の下部に形成されたカム部73aが右クラッチ操作部材72に当接し、該右クラッチ操作部材72が右サイドクラッチ45側に押されて、右サイドクラッチ45が切れる。このとき、左操作アーム75上のローラ74は、カム部材71のカム部71aに当接しないため、左操作アーム75は回動されず、左サイドクラッチ45は入った状態のままとなる。
【0034】
このようなリンク機構70Aとカム機構70Bかなるサイドクラッチ切換機構をステアリングハンドル53と左右のサイドクラッチ45・45との間に設けた構成において、走行機体2を左側に旋回させる場合、ステアリングハンドル53が左回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で左回りに回動し、該前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して左向きに変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が押されて後方へ移動する。該ロッド65の後方への移動により回動アーム66が平面視で左回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回りに回動する。
【0035】
そして、ステアリングハンドル53が所定角度以上回動して走行機体2が旋回状態となると、カム機構70Bで平面視で左回りに回動中のカム部材71のカム部71aが左サイドクラッチ45の切動作開始位置となる左屈曲部分71bで左操作アーム75上のローラ74に当接し、円弧部分71cで右操作アーム75上のローラ74に当接する。この状態からステアリングハンドル53が更に同方向に回動するに従って、カム部材71が左操作アーム75上のローラ74を後方へ押し、左操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で右回りに回動する。該アーム軸73の回動によりその下部に形成されたカム部73aも同方向に回動し、該カム部73aにより左クラッチ操作部材72が押されて左サイドクラッチ45側に摺動し、左サイドクラッチ45が切れる。これにより、左後車輪9への動力伝達が遮断されて、左後車輪9が駆動されなくなり、走行機体2が左に旋回しやすくなる。
【0036】
また、走行機体2を左旋回状態から直進状態に戻す場合には、ステアリングハンドル53が右回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で右回りに回動し、前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して直進状態となるように変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が引かれて前方へ移動する。該ロッド65の前方への移動により回動アーム66が平面視で左回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で右回りに回動する。該カム部材71の回動により、カム機構70Bでカム部材71のカム部71aとその左端付近で当接した状態の左操作アーム75上のローラ74がカム部71aの左屈曲部分71bに向かって移動し、該左屈曲部分71bでカム部材71のカム部71aから離れることとなる。そして、ステアリングハンドル53が回動開始前の直進位置となることで、カム部材71が中立状態とされ、左サイドクラッチ45が再び入った状態となる。これにより、左後車輪9への動力伝達が行われて、左後車輪9が駆動し、走行機体2が直進状態となる。
【0037】
一方、走行機体2を右側に旋回させる場合、ステアリングハンドル53が右回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で右回りに回動し、該前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して右向きに変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が引かれて前方へ移動する。該ロッド65の前方への移動により回動アーム66が平面視で右回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で右回りに回動する。
【0038】
そして、ステアリングハンドル53が所定角度以上回動して走行機体2が旋回状態となると、カム機構70Bで平面視で右回りに回動中のカム部材71のカム部71aが、円弧部分71cで当接した状態の右操作アーム75上のローラ74と、右サイドクラッチ45の切動作開始位置となる右屈曲部分71dで右操作アーム75上のローラ74に当接し、左操作アーム75上のローラ74とは当接しない状態に保持される。この状態からステアリングハンドル53が更に同方向に回動するに従って、カム部材71が右操作アーム75上のローラ74を後方へ押し、右操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で左回りに回動する。該アーム軸73の回動によりその下部に形成されたカム部73aも同方向に回動し、該カム部73aにより右クラッチ操作部材72が押されて右サイドクラッチ45側に摺動し、右サイドクラッチ45が切れる。これにより、右後車輪9への動力伝達が遮断されて、右後車輪9が駆動しなくなり、走行機体2が右に旋回しやすくなる。
【0039】
また、走行機体2を右旋回状態から直進状態に戻す場合には、ステアリングハンドル53が左回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で左回りに回動し、前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して直進状態となるように変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が押されて後方へ移動する。該ロッド65の後方への移動により回動アーム66が平面視で右回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回りに回動する。該カム部材71の回動により、カム機構70Bでカム部材71のカム部71aとその右端付近で当接した状態の右操作アーム75上のローラ74がカム部71aの右屈曲部分71dに向かって移動し、ステアリングハンドル53が回動開始前の直進位置となることで、右屈曲部分71dから円弧部分71cに移動してカム部材71が中立状態とされ、右サイドクラッチ45が再び入った状態となる。これにより、右後車輪9への動力伝達が行われて、右後車輪9が駆動し、走行機体2が直進状態となる。
【0040】
以上のように、ステアリングハンドル53と左右のサイドクラッチ45とをリンク機構70A及びカム機構70Bにて連動連結し、該カム機構70Bにステアリングハンドル53の操作に連動して回動するカム部材71と、該カム部材71とローラ74を介して作用する左右の操作アーム75・75と、該操作アーム75・75を介して左右のサイドクラッチ45・45に作用するクラッチ操作部材72とを備え、該リンク機構70Aにステアリングハンドル53とカム部材71とを連結し、該ステアリングハンドル53により押し引きされてカム部材71を回動させるロッド65を備えた乗用型田植機1のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材71を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したことから、ステアリングハンドル53の回動操作に連動してロッド65が前後方向に押し引きされる際に、ロッド65の押し時と引き時で当該ロッド65の撓み量に差が生じるが、旋回方向に関わらずカム部材71の左側部又は右側部と左又は右の各操作アーム75・75とを略同時期に作用させることができる。つまり、左旋回時と右旋回時において、ステアリングハンドル53の左又は右方向への所定回動量に対し旋回方向内側となるサイドクラッチ45を略同じ時期に、略同じ量操作部材を回動させて、入切動作させることができる。したがって、走行機体2の旋回半径を左右で同一として、旋回性能の向上を図ることができる。
【0041】
また、前記カム部材71の回動中心となる支点軸67を、機体左右中心O1から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッド65を配置したことから、機体左右中心O1近傍に駆動部、例えばPTO軸36に連動連結する自在継手軸41を配設することができ、走行機体2における各部の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0042】
さらに、前記操向手段となるステアリングハンドル53の回動時に前記ロッド65が撓む方向に回動したときの前記カム部材71のクラッチ作用位置とカム部材71の回動中心となる支点軸67の距離を、前記ロッド65が引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したことから、ロッド65の押し時における撓み量が引き時における伸び量よりも大きくなるが、ロッド65の押し時の方がカム部材71の回動中心から作用位置までの距離が長いので、同じ回動角であっても押し時のほうが長く作用させることができて、ロッド65の撓みを吸収することができ、左旋回時と右旋回時における操向操作に伴うサイドクラッチ45の入切動作時期のずれを解消できる。また、左右旋回半径に誤差が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るサイドクラッチ切換機構を備える乗用型田植機の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】走行機体の斜視図。
【図3】走行機体前部の側面図。
【図4】サイドクラッチ切換機構を示す図。
【図5】走行機体後部の下方斜視図。
【図6】カム機構の前方斜視図。
【図7】カム機構の後面図。
【図8】直進状態におけるカム機構の平面図。
【図9】カム部材の平面図。
【図10】左旋回開始状態におけるカム機構の平面図。
【図11】右旋回開始状態におけるカム機構の平面図。
【符号の説明】
【0044】
45 サイドクラッチ
53 ステアリングハンドル(操向手段)
65 ロッド
70A リンク機構
70B カム機構
71 カム部材
72 クラッチ操作部材
74 ローラ
75 操作アーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向手段の操作に連動してサイドクラッチの入切動作を行う乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗用型田植機においては、リヤアクスルケース内に配置されたリヤアクスル軸に左右のサイドクラッチを設け、旋回操作時に、旋回方向内側の後車輪に対するサイドクラッチを切って、内側の後車輪への動力伝達をサイドクラッチ切換機構によりステアリングハンドルの回動操作に連動させて遮断することで、機体の旋回性能の向上が図られていた。該サイドクラッチ切換機構は、リンク機構とカム機構とを備えてステアリングハンドルと左右のサイドクラッチとの間に介設され、ステアリングハンドルからのクラッチ操作力をリンク機構及びカム機構を介してサイドクラッチに伝達し、該サイドクラッチの入切動作を行うように構成されていた。すなわち、アクスルケースに設けられた支点軸にカム部材とカム部材と当接可能なローラを有する左右の各操作アームとをそれぞれ水平回動可能に支持し、該カム部材とステアリングハンドルとをロッドで連動連結し、ステアリングハンドルによる旋回操作時にロッドを前後方向に押し引きしてカム部材を回動させ、左右どちらか一方の操作アーム上のローラに当接させて、操作アームを回動させることで、アクスル軸上に設けたクラッチ操作部材をサイドクラッチに作用させて、サイドクラッチを切り、旋回方向内側の車輪が駆動しないように構成されていた。
【特許文献1】特開2002−340021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の乗用型田植機に備えられるサイドクラッチ切換機構においては、ステアリングハンドルの回動操作に連動してロッドが前後方向に押し引きされる際に、ロッドの押し時と引き時で当該ロッドの撓み量に差が生じるが、カム部材が左右対称な形状に構成され、ロッドはカムの一端に連結されていたため、ステアリングハンドルの左又は右方向への所定回動量に対しカム部材が左右の操作アームに作用する時期がずれることがあった。つまり、左旋回時と右旋回時において、ロッドの撓み量だけ旋回方向内側のサイドクラッチの入切動作が行われる時期がずれることがあった。そのため、走行機体の旋回半径が左右で若干異なるものとなり、旋回性能が損なわれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、操向手段と左右のサイドクラッチとをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材と、該カム部材とローラを介して作用する左右の操作アームと、該操作アームを介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材を回動させるロッドを備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記カム部材の回動中心を、機体左右中心から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッドを配置したものである。
【0007】
請求項3においては、前記操向手段の回動時に前記ロッドが撓む方向に回動したときの前記カム部材のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離を、前記ロッドが引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、操向手段の操作に連動してロッドが前後方向に押し引きされる際に、ロッドの押し時と引き時で当該ロッドの撓み量に差が生じるが、旋回方向に関わらずサイドクラッチを略同じ時期に入切動作させることができる。したがって、左右旋回半径を同一として、旋回性能の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2においては、機体左右中心近傍に駆動部などを配設することができ、走行機体における各部の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0011】
請求項3においては、ロッドの押し時における撓み量が引き時における伸び量よりも大きくなるが、ロッドの押し時の方がカム部材の回動中心から作用位置までの距離が長いので、同じ回動角であっても押し時のほうが長く作用させることができて、ロッドの撓みを吸収することができ、左旋回時と右旋回時における操向操作に伴うサイドクラッチの入切動作時期のずれを解消できる。また、左右旋回半径に誤差が発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施例に係るサイドクラッチ切換機構を備える乗用型田植機の全体的な構成を示した斜視図、図2は走行機体の斜視図、図3は走行機体前部の側面図、図4はサイドクラッチ切換機構を示す図、図5は走行機体後部の下方斜視図、図6はカム機構の前方斜視図、図7はカム機構の後面図、図8は直進状態におけるカム機構の平面図、図9はカム部材の平面図、図10は左旋回開始状態におけるカム機構の平面図、図11は右旋回開始状態におけるカム機構の平面図である。
【0014】
図1、図2に示すように、乗用型田植機1には走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降可能に装着された植付装置17とが備えられている。走行機体2は、主に機体前後方向に延伸された左右一対のフレームからなるメインフレーム3・3と、左右のメインフレーム3・3の間に配置された機体前後方向に長い一体型ケース体からなるミッションケース4と、左右のメインフレーム3の間でミッションケース4に連結されて機体後方に延伸された正面断面視下向きコ字形状の連結フレーム5とから構成されている。
【0015】
前記ミッションケース4の機体前後方向中途部の左右両側面にフロントアクスルケース6が突設され、該フロントアクスルケース6の左右両端に前車輪7が取り付けられている。また、連結フレーム5の後端部にリヤアクスルケース8が取り付けられ、該リヤアクスルケース8の左右両端に後車輪9が取り付けられている。そして、リヤアクスルケース8に左右一対の支持フレーム10が立設され、該支持フレーム10に上及び下リンクからなる平行リンク機構11を介して植付装置17が連結されている。
【0016】
前記植付装置17は、主にミッションケース4の後端から後方に突出されたPTO軸36と自在継手軸41を介して連結されて動力が伝達される左右一対の伝動ケース13と、走行機体2の後部に上端が接近するように前傾配置された苗載台14と、各伝動ケース13の下面に配置されたフロート15と、各伝動ケース13の左右両側に取り付けられ、圃場面と苗載台14の下端との間を上下昇降しながら苗載台14上の苗マットから1株ずつに分割して植え付けする植付爪を備えた植付機構とから構成されている。そして、前記連結フレーム5の後部に設けられた昇降用油圧シリンダ16が平行リンク機構11に関連して取り付けられて、植付装置17が走行機体2に対し昇降可能とされている。
【0017】
また、前記走行機体2を上から覆うように車体カバー18がメインフレーム3に取り付けられ、該車体カバー18の後部上方にシート19が配設されている。そして、該シート19の前方にボンネット20が配置されて、車体カバー18の前部上面に固定されている。ボンネット20の左右両側方には予備苗載台21が配置され、図3にも示すように、ボンネット20内においては、その後側にエンジン22やその付属品である、気化器、調速機、エアマフラ、スタータ用コイラ(ロープ式始動装置)、消音器などが配置されている。
【0018】
前記エンジン22の下方にはミッションケース4が配置されている。図4に示すように、ミッションケース4内においては、その前側に操向用のステアリング駆動機構25が設けられ、後側に走行駆動系とPTO駆動系へ動力を伝達可能とする動力伝達機構26が設けられている。そして、該ミッションケース4の左右一側側面から外側方へ突出した入力軸4aとエンジン22の出力軸22aとの間に、弛み調節機構27付きのプーリ28・29及びベルト30からなるベルト伝動機構を設けて、出力軸22aから入力軸4aに動力が伝達可能とされ、該入力軸4aからミッションケース4内の動力伝達機構26に動力が伝達されるように構成されている。
【0019】
前記動力伝達機構26には、入力軸4aから伝達される回転数を変速させる歯車式変速機構35、該歯車式変速機構35からミッションケース4後壁を貫通して後方へ突出されるPTO軸36、該PTO軸36への動力の伝達の入切動作を行うPTOクラッチ、差動機構38から左右両側方へ突出するフロントアクスル軸39・39、歯車式変速機構35からミッションケース4側壁を貫通して入力軸4aと反対側に突出される出力軸、該出力軸への動力の伝達の入切動作を行う主クラッチなどが備えられている。
【0020】
前記PTO軸36は、前記植付装置17に設けられた伝動ケース13の入力軸と機体前後方向に延伸された自在継手軸41を介して連動連結され、該入力軸に動力を伝達することができるように構成されている。自在継手軸41は前部が機体左右中心O1上に延出されて、ミッションケース4とリヤアクスルケース8とを連結する前記連結フレーム5に覆われるようにその内側空間に配置され、前後中途部でリヤアクスルケース8上に支持されている。
【0021】
前記ミッションケース4の出力軸は、前記リヤアクスルケース8前面から前方に突出された入力軸8aと機体前後方向に延伸された伝動軸42を介して連動連結されて、該入力軸8aに動力を伝達することができるように構成されている。伝動軸42は、機体左右中心O1よりも左右一側にずれた位置に前記自在継手軸41前部と略平行に設けられて、連結フレーム5の外側方に配置されている。
【0022】
前記リヤアクスルケース8内においては、図5にも示すように、入力軸8aが一対のかさ歯車を介して左右に延伸して配置されたリヤアクスル軸44に連動連結され、該リヤアクスル軸44の左右両端にそれぞれサイドクラッチ45・45を介してサイドクラッチ軸46・46が連結されている。そして、左右の各サイドクラッチ軸46が減速機構47を介して後車輪9の車軸48と連動連結されて、車軸48に入力軸8aから動力が伝達可能とされている。こうして、サイドクラッチ45・45の入切動作を後述のリンク機構70Aとカム機構70Bとからなるサイドクラッチ切換機構を用いて行うことにより、左右の後車輪9・9を同期して駆動したり、左右どちらか一方の後車輪9のみを駆動したりすることができるように構成されている。
【0023】
一方、前記左右のフロントアクスル軸39・39は、ミッションケース4前後中途部の左右両側面に突出するように設けられたフロントアクスルケース6・6内に配置され、減速機構を介して前車輪7・7の車軸40・40と連動連結されている。こうして、車軸40・40にミッションケース4の入力軸4aから動力が伝達可能とされて、前車輪7・7を駆動することができるように構成されている。
【0024】
また、ミッションケース4前部に内蔵されたステアリング駆動機構25からステアリング下軸51がミッションケース4上壁を貫通して上方へ突出され、該ステアリング下軸51の上端にユニバーサルジョイントを介してステアリング上軸52の下端が屈曲可能に連結されている。ステアリング上軸52がボンネット20上方まで延出され、その上端に操向手段となるステアリングハンドル53が取り付けられている。ステアリング下軸51とステアリング上軸52はボンネット20内前側に配置され、それぞれミッションケース4前部上に固設された筒状の下コラム54と、該下コラム54に支持された筒状の上コラム55とで覆われている。
【0025】
そして、前記ステアリング駆動機構25から回転軸57がミッションケース4を貫通して下方へ突出されて、該回転軸57に前アーム58が前方へ突出するように設けられるとともに、後アーム59が左右一側方へ突出するように設けられて、該前アーム58と後アーム59とが回転軸57の回転に伴って一体的に回動可能とされている。前アーム58はコンロッドやタイロッドとともにリンク機構62を構成し、ステアリングハンドル53の回動により前車輪7・7の操舵方向を変更することができるようになっている。
【0026】
前記後アーム59はロッド65や回動アーム66とともに前記サイドクラッチ切換機構のうちのリンク機構70Aを構成するようになっている。すなわち、後アーム59の先端にロッド65の前端が枢結され、該ロッド65がリヤアクスルケース8の手前まで前後方向に延伸されて、その後端が回動アーム66の一端に支持されている。回動アーム66はその他端が連結フレーム5を上下方向に貫通する支点軸67の下端に固設され、連結フレーム5の内側に前記自在継手軸41を避けて固設されたボス68に当該支点軸67を挿通して回動可能に支持されている。そして、連結フレーム5上方へ突出した支点軸67の上端に前記サイドクラッチ切換機構のカム機構70Bの一部をなすカム部材71が固設され、該カム部材71と回動アーム66とが後アーム59の回動に伴ってロッド65を前後方向に押し引き操作することにより一体的に水平回動するようにしてリンク機構70Aが構成されている。なお、ロッド65の前後中途部にはターンバックル65aが設けられ、ロッド65の前後長が容易に調整可能とされ、左右のサイドクラッチ45の入切動作を調整できるようにしている。
【0027】
また、前記カム部材71は、左右の各サイドクラッチ45の入切動作を行う左右一対のクラッチ操作部材72・72と、カム部73a・73aを有する左右のアーム軸73・73と、ローラ74・74を有する左右の操作アーム75・75などとともにカム機構70Bを構成するようになっている。左右のクラッチ操作部材72・72はリヤアクスルケース8内においてリヤアクスル軸44上に摺動自在に設けられ、それぞれ左右の各サイドクラッチ45・45近傍に配置されている。そして、左右の各クラッチ操作部材72の内側面にアーム軸73の下部に形成されたカム部73aが接合されている。
【0028】
前記左右の各アーム軸73はリヤアクスルケース8上面から上方へ突出されており、その上端に操作アーム75の一端が固設されて、操作アーム75とアーム軸73のカム部73aとが一体的に水平回動可能とされている。左右の操作アーム75・75はカム部材71の後方で、その他端が機体左右中心O1より左右両側に等間隔離間した位置に配置され、正面視でそれぞれカム部材71の左右両端と略重複するように設けられている。そして、該操作アーム75・75の他端上に支軸を上下方向に配置したローラ74・74が回転自在に支持され、該カム部材71の外周後側に形成されたカム部71aに当接可能とされている。
【0029】
前記カム部材71は板状部材からなり、前記支点軸67を中心として左右両側に延伸して左右非対称に構成されている。本実施例では、カム部材71は機体左右中心O1よりも右側にずれた位置で支点軸67に支持され、言い換えれば、支点軸67は機体左右中心O1よりも右側に配置し、ロッド65は機体左右中心O1よりも反対側の左側に配置している。該カム部材71の左右両端はそれぞれ操作アーム75・75上のローラ74・74近傍に位置するまで左右方向に延伸されて、左側部が右側部よりも左右方向で長幅となる左右非対称な形状とされている。なお、左右のアーム75・75の長さは同じ長さとしている。
【0030】
つまり、ステアリングハンドル53を回動すると、ロッド65は押され又は引かれてカム部材71は回動し、該カム部材71の左側部又は右側部においてローラ74・74を介して左右の各操作アーム75・75を回動してサイドクラッチ45・45を作用させるが、ロッド65は押し時に撓み、操作遅れが生じる。即ち、支点軸67からローラ74当接位置までの距離が同じであると、旋回時に左右同じ角度ステアリングハンドル53を回動しても、ロッド65を引っ張り操作する角度は略設定角度でサイドクラッチが「切」となるが、ロッド65を押して操作する側は、撓む分設定角度よりも大きな角度にならないとサイドクラッチが切れないことになり、旋回半径が大きくなってしまう。そこで、ロッド65を押して左操作アーム75を作用させる側は、ステアリングハンドル53を同じ角度操作しても、左操作アーム75を同じ角度回動できるようにするために、支点軸67からローラ74の当接位置までの距離を、右側よりも左側を長く(長幅と)している。これにより、ステアリングハンドル53を同じ角度操作すると、カム部材71の左側のローラ74当接位置までのストロークは右側よりも大きくなり、操作遅れが生じることがなくなり、左右略同等に旋回することが可能となる。そして、直進方向にステアリングハンドル53を向けた状態を中立位置としたとき、カム部71aの左側が左操作アーム75上のローラ74に当接せず、中立位置から作動するまでの間で抵抗ができるだけ小さくなるようにして、右側が右操作アーム75上のローラ74に当接するように支点軸67を回動中心として水平方向に回動可能に支持されている。
【0031】
前記カム部材71におけるカム部71aの外周形状は、支点軸67の後部から右側は、支点軸67を中心とした同一半径の円弧部分71cを形成して、サイドクラッチ45の「切」作動開始位置となる中途部に、前方へ凹む屈曲部分71dを形成して、右側方へ延伸して右短部に至る形状となっている。支点軸67の後部から左側は前記円弧部分71cの接線が斜め左前方へ延伸するようにして、サイドクラッチ45の「切」作動開始位置となる中途部に、後方へ凸となるように「く」字状に屈曲した屈曲部分71bを形成し、該屈曲部分71bより更に角度を大きくして左斜め前方へ延伸して左端部に至る形状となっている。そして、ステアリングハンドル53の回動によりカム部材71の回動に伴って左右の操作アーム75・75上のローラ74・74に左又は右の屈曲部分71b・71dが当接して、更に同方向に回動するとサイドクラッチ45・45が切れ始め、このように切動作開始位置とした屈曲部分71b・71dから外側の傾斜は、支点軸67より遠い側の左側の傾斜を大きくして、ハンドル操作と「切」動作が左右略同じとなるようにしている。
【0032】
こうして、カム部材71が中立状態にある場合には、カム部71aが左操作アーム75上のローラ74に当接せず、右操作アーム75上のローラ74に円弧部分71cに当接して、左右のサイドクラッチ45・45がともに入った状態とされている。そしてステアリングハンドル53を左回りに回転して、ロッド65が後方へ押されると、カム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回り(図8において反時計回り)に水平回動する。旋回する場合には更にステアリングハンドル53は回動されて、カム部71aの左屈曲部分71bが左操作アーム75上のローラ74に当接し、カム部材71が更に同方向に回動する。このときロッド65は撓みながら後方へ押されるが、支点軸67からの屈曲部分71bの位置は屈曲部分71dまでの距離よりも長いため、左右同じ回動角であっても移動距離は長くなり、撓み長さを吸収できるようになっている。これにより、ローラ74がカム部材71に押動されることになり、左操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で右回り(図8において時計回り)に水平回動され、該左操作アーム75の回動によりアーム軸73の下部に形成したカム部73aが左クラッチ操作部材72に当接し、該左クラッチ操作部材72が左サイドクラッチ45側に押されて、左サイドクラッチ45が切れる。このとき、右操作アーム75上のローラ74は、カム部材71のカム部71aに円弧部分71cで当接した状態となるが、カム部材71に押動されずにその回動に伴って円弧部分71cに沿って転動しながら左右中央付近に向かって移動することになるため、右操作アーム75は回動されず、右サイドクラッチ45は入った状態のままとなる。
【0033】
逆に、ステアリングハンドル53を右回りに回転すると、ロッド65は引っ張られることになり、カム部材71が中立状態から支点軸67を中心として平面視で右回りに水平回動する。そして、カム部71aの円弧部分71cに当接した右操作アーム75上のローラ74が円弧部分71cに沿って転動しながら右屈曲部分71dに向かって移動する。そして、該右屈曲部分71dがローラ74に当接した状態で、カム部材71が更に同方向に回動することで、ローラ74が屈曲部分71dからその側方のカム部71aに転動しながら当接し、カム部71aに沿って右端付近まで移動する。このとき、ロッド65は引っ張られているが、その伸びは殆どない。これにより、ローラ74がカム部材71に押動されることになり、右操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で左回りに水平回動され、該右操作アーム75の回動によりアーム軸73の下部に形成されたカム部73aが右クラッチ操作部材72に当接し、該右クラッチ操作部材72が右サイドクラッチ45側に押されて、右サイドクラッチ45が切れる。このとき、左操作アーム75上のローラ74は、カム部材71のカム部71aに当接しないため、左操作アーム75は回動されず、左サイドクラッチ45は入った状態のままとなる。
【0034】
このようなリンク機構70Aとカム機構70Bかなるサイドクラッチ切換機構をステアリングハンドル53と左右のサイドクラッチ45・45との間に設けた構成において、走行機体2を左側に旋回させる場合、ステアリングハンドル53が左回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で左回りに回動し、該前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して左向きに変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が押されて後方へ移動する。該ロッド65の後方への移動により回動アーム66が平面視で左回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回りに回動する。
【0035】
そして、ステアリングハンドル53が所定角度以上回動して走行機体2が旋回状態となると、カム機構70Bで平面視で左回りに回動中のカム部材71のカム部71aが左サイドクラッチ45の切動作開始位置となる左屈曲部分71bで左操作アーム75上のローラ74に当接し、円弧部分71cで右操作アーム75上のローラ74に当接する。この状態からステアリングハンドル53が更に同方向に回動するに従って、カム部材71が左操作アーム75上のローラ74を後方へ押し、左操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で右回りに回動する。該アーム軸73の回動によりその下部に形成されたカム部73aも同方向に回動し、該カム部73aにより左クラッチ操作部材72が押されて左サイドクラッチ45側に摺動し、左サイドクラッチ45が切れる。これにより、左後車輪9への動力伝達が遮断されて、左後車輪9が駆動されなくなり、走行機体2が左に旋回しやすくなる。
【0036】
また、走行機体2を左旋回状態から直進状態に戻す場合には、ステアリングハンドル53が右回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で右回りに回動し、前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して直進状態となるように変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が引かれて前方へ移動する。該ロッド65の前方への移動により回動アーム66が平面視で左回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で右回りに回動する。該カム部材71の回動により、カム機構70Bでカム部材71のカム部71aとその左端付近で当接した状態の左操作アーム75上のローラ74がカム部71aの左屈曲部分71bに向かって移動し、該左屈曲部分71bでカム部材71のカム部71aから離れることとなる。そして、ステアリングハンドル53が回動開始前の直進位置となることで、カム部材71が中立状態とされ、左サイドクラッチ45が再び入った状態となる。これにより、左後車輪9への動力伝達が行われて、左後車輪9が駆動し、走行機体2が直進状態となる。
【0037】
一方、走行機体2を右側に旋回させる場合、ステアリングハンドル53が右回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で右回りに回動し、該前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して右向きに変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が引かれて前方へ移動する。該ロッド65の前方への移動により回動アーム66が平面視で右回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で右回りに回動する。
【0038】
そして、ステアリングハンドル53が所定角度以上回動して走行機体2が旋回状態となると、カム機構70Bで平面視で右回りに回動中のカム部材71のカム部71aが、円弧部分71cで当接した状態の右操作アーム75上のローラ74と、右サイドクラッチ45の切動作開始位置となる右屈曲部分71dで右操作アーム75上のローラ74に当接し、左操作アーム75上のローラ74とは当接しない状態に保持される。この状態からステアリングハンドル53が更に同方向に回動するに従って、カム部材71が右操作アーム75上のローラ74を後方へ押し、右操作アーム75がアーム軸73を中心として平面視で左回りに回動する。該アーム軸73の回動によりその下部に形成されたカム部73aも同方向に回動し、該カム部73aにより右クラッチ操作部材72が押されて右サイドクラッチ45側に摺動し、右サイドクラッチ45が切れる。これにより、右後車輪9への動力伝達が遮断されて、右後車輪9が駆動しなくなり、走行機体2が右に旋回しやすくなる。
【0039】
また、走行機体2を右旋回状態から直進状態に戻す場合には、ステアリングハンドル53が左回りに回動し始めると、ステアリング駆動機構25を介して前アーム58及び後アーム59が平面視で左回りに回動し、前アーム58の回動により前車輪7・7の操舵方向がリンク機構62を介して直進状態となるように変更されると同時に、後アーム59の回動によりリンク機構70Aでロッド65が押されて後方へ移動する。該ロッド65の後方への移動により回動アーム66が平面視で右回りに回動され、該回動アーム66と一体的にカム部材71が支点軸67を中心として平面視で左回りに回動する。該カム部材71の回動により、カム機構70Bでカム部材71のカム部71aとその右端付近で当接した状態の右操作アーム75上のローラ74がカム部71aの右屈曲部分71dに向かって移動し、ステアリングハンドル53が回動開始前の直進位置となることで、右屈曲部分71dから円弧部分71cに移動してカム部材71が中立状態とされ、右サイドクラッチ45が再び入った状態となる。これにより、右後車輪9への動力伝達が行われて、右後車輪9が駆動し、走行機体2が直進状態となる。
【0040】
以上のように、ステアリングハンドル53と左右のサイドクラッチ45とをリンク機構70A及びカム機構70Bにて連動連結し、該カム機構70Bにステアリングハンドル53の操作に連動して回動するカム部材71と、該カム部材71とローラ74を介して作用する左右の操作アーム75・75と、該操作アーム75・75を介して左右のサイドクラッチ45・45に作用するクラッチ操作部材72とを備え、該リンク機構70Aにステアリングハンドル53とカム部材71とを連結し、該ステアリングハンドル53により押し引きされてカム部材71を回動させるロッド65を備えた乗用型田植機1のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材71を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したことから、ステアリングハンドル53の回動操作に連動してロッド65が前後方向に押し引きされる際に、ロッド65の押し時と引き時で当該ロッド65の撓み量に差が生じるが、旋回方向に関わらずカム部材71の左側部又は右側部と左又は右の各操作アーム75・75とを略同時期に作用させることができる。つまり、左旋回時と右旋回時において、ステアリングハンドル53の左又は右方向への所定回動量に対し旋回方向内側となるサイドクラッチ45を略同じ時期に、略同じ量操作部材を回動させて、入切動作させることができる。したがって、走行機体2の旋回半径を左右で同一として、旋回性能の向上を図ることができる。
【0041】
また、前記カム部材71の回動中心となる支点軸67を、機体左右中心O1から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッド65を配置したことから、機体左右中心O1近傍に駆動部、例えばPTO軸36に連動連結する自在継手軸41を配設することができ、走行機体2における各部の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0042】
さらに、前記操向手段となるステアリングハンドル53の回動時に前記ロッド65が撓む方向に回動したときの前記カム部材71のクラッチ作用位置とカム部材71の回動中心となる支点軸67の距離を、前記ロッド65が引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したことから、ロッド65の押し時における撓み量が引き時における伸び量よりも大きくなるが、ロッド65の押し時の方がカム部材71の回動中心から作用位置までの距離が長いので、同じ回動角であっても押し時のほうが長く作用させることができて、ロッド65の撓みを吸収することができ、左旋回時と右旋回時における操向操作に伴うサイドクラッチ45の入切動作時期のずれを解消できる。また、左右旋回半径に誤差が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るサイドクラッチ切換機構を備える乗用型田植機の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】走行機体の斜視図。
【図3】走行機体前部の側面図。
【図4】サイドクラッチ切換機構を示す図。
【図5】走行機体後部の下方斜視図。
【図6】カム機構の前方斜視図。
【図7】カム機構の後面図。
【図8】直進状態におけるカム機構の平面図。
【図9】カム部材の平面図。
【図10】左旋回開始状態におけるカム機構の平面図。
【図11】右旋回開始状態におけるカム機構の平面図。
【符号の説明】
【0044】
45 サイドクラッチ
53 ステアリングハンドル(操向手段)
65 ロッド
70A リンク機構
70B カム機構
71 カム部材
72 クラッチ操作部材
74 ローラ
75 操作アーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向手段と左右のサイドクラッチとをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材と、該カム部材とローラを介して作用する左右の操作アームと、該操作アームを介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材を回動させるロッドを備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したことを特徴とする乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【請求項2】
前記カム部材の回動中心を、機体左右中心から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッドを配置したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【請求項3】
前記操向手段の回動時に前記ロッドが撓む方向に回動したときの前記カム部材のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離を、前記ロッドが引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【請求項1】
操向手段と左右のサイドクラッチとをリンク機構及びカム機構にて連動連結し、該カム機構に操向手段の操作に連動して回動するカム部材と、該カム部材とローラを介して作用する左右の操作アームと、該操作アームを介して左右のサイドクラッチに作用するクラッチ操作部材とを備え、該リンク機構に操向手段とカム部材とを連結し、操向手段により押し引きされてカム部材を回動させるロッドを備えた乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構において、前記カム部材を回動中心に対して左右非対称な形状に構成したことを特徴とする乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【請求項2】
前記カム部材の回動中心を、機体左右中心から左右一側にずらして配置し、左右他側に前記ロッドを配置したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【請求項3】
前記操向手段の回動時に前記ロッドが撓む方向に回動したときの前記カム部材のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離を、前記ロッドが引っ張り方向に回動した時のクラッチ作用位置とカム部材の回動中心との距離よりも長く構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機のサイドクラッチ切換機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−50796(P2007−50796A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238024(P2005−238024)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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