説明

二峰性アイオノマー組成物を含有する物品

カルボキシレート官能化エチレンハイコポリマーまたはターポリマー(80,000〜500,000DaのMw)とカルボキシレート官能化エチレンローコポリマー(2,000〜30,000DaのMw)との部分または完全中和混合物が提供される。これらの組成物は、フィルム、多層構造体および他の製品に使用される。これらの組成物は好ましくは物品の表面上に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に援用される、2007年11月16日出願の米国仮特許出願第61/003,432号明細書の優先権を米国特許法第120条のもとで主張するものである。
【0002】
本発明は、高分子量E/X/Yコポリマーと低分子量E/Zコポリマーとを含む二峰性アイオノマー組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明が関連する最新技術をより十分に説明するために幾つかの特許、特許出願および刊行物が本説明に引用される。これらの特許、特許出願および刊行物のそれぞれの開示全体が、本明細書に参照により援用される。
【0004】
消費者製品などの、多くの製品において、製品の表面の特性が実用性および心地良さの両方を備えることが重要である。ポリマー材料は、摩滅、摩耗、すり減り、および引っ掻きからの表面損傷に対する耐性、ならびに機械的強度および強靱性などの重要な表面特性を提供する可能性がある。
【0005】
例えば、装飾フィルムは、運動靴用のアップリケを製造するために使用されてもよい。装飾フィルムは、高い柔軟性、摩滅、摩耗、すり減り、および引っ掻きからの表面損傷に対する高い耐性、ならびに高い機械的強度および強靱性などの特性によって特徴付けられる少なくとも1つの耐摩耗性の外層を有してもよい。かかる装飾フィルムは、熱可塑性ウレタン(TPU)から製造されてきた。
【0006】
装飾フィルムとして有用な幾つかの組成物はまた、布およびシート商品用の耐摩耗性層を提供するためのコーティング組成物として使用されるかまたは再処方されてもよい。これらの用途向けのコーティング組成物は、TPUおよび可塑化または柔軟性ポリ塩化ビニル(f−PVC)を含む。
【0007】
f−PVCのフィルムは通常、フィルム柔軟性を高めるためにフタレート可塑剤などの可塑剤を含む。可塑剤は、時間と共にポリマーから移動し、フィルム柔軟性を低下させ、かつ、フィルムと接触する材料を潜在的に汚染する可能性がある。長期柔軟性への要望およびf−PVCなどのハロゲン化ポリマーの環境影響に関する懸念から、別のコーティング組成物が代替品として望まれる。
【0008】
二峰性アイオノマー組成物およびゴルフボールでのそれらの使用は、米国特許第6,562,906号明細書;同第6,762,246号明細書;同第7,037,967号明細書;および同第7,273,903号明細書に;ならびに2007年8月17日出願の米国特許出願第11/893,831号明細書に記載されている。二峰性アイオノマー組成物は、約80,000〜約500,000Daの重量平均分子量(Mw)を有するエチレンα,β−エチレン系不飽和C3~8のカルボン酸コポリマー(ハイコポリマー)と約2,000〜約30,000Daの(Mw)を有するエチレンα,β−エチレン系不飽和C3~8のカルボン酸コポリマー(ローコポリマー)とを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に、単層フィルム、シートもしくはチューブ、多層フィルム、シートもしくはチューブ、または多層構造体である物品であって、前記物品が、
(i)1種以上のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3〜C8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、酢酸ビニル、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択される軟化コモノマーの共重合単位を表し、Xの量はE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量はE/X/Yコポリマーの0〜約45重量%であり、E/X/Yコポリマーは80,000〜500,000Daの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する)を含むハイコポリマーと;
(ii)1種以上のE/Zコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、Zはアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位を表し、Zの量はE/Zコポリマーの約3〜約25重量%であり、E/Zコポリマーは2,000〜30,000Daの範囲のMwを有する)を含むローコポリマーと
を含む二峰性アイオノマー組成物を含む、それから本質的になる、それから製造される少なくとも1つの表面層を有し、
ここで、E/X/YコポリマーおよびE/Zコポリマー中の合わせた酸性基の少なくとも35%が名目上中和されてカルボン酸塩を形成する物品が記載される。
【0010】
(1)二峰性アイオノマー組成物の第1表面を第1基材の表面の少なくとも一部と接触させ、および任意選択的に二峰性アイオノマー組成物の第2表面を第2基材の表面の少なくとも一部と接触させる工程と;
(2)二峰性アイオノマー組成物に高周波電磁放射線、および任意選択的に圧力、熱、またはそれらの組み合わせを適用し、それによって二峰性アイオノマー組成物を軟化させるかまたは溶融させる工程と;
(3)軟化または溶融した二峰性アイオノマー組成物をそのまま固め、それによって二峰性アイオノマー組成物の第1表面を第1基材に接合させ、および二峰性アイオノマー組成物の第2表面を、存在する場合、第2基材に接合させる工程と
を含む多層物品の製造方法であって、
二峰性アイオノマー組成物が上記のように特徴付けられ、第1基材および任意の第2基材が、熱可塑性フィルムおよびシート、気泡質発泡体、織布、編布および不織布、紙、パルプおよび板紙製品、木材および木材製品、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革および皮革様製品、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに上記のように特徴付けられる第2二峰性アイオノマー組成物からなる群から独立して選択される方法もまた提供される。
【0011】
製品の表面の少なくとも一部が二峰性アイオノマー組成物を含む製品もまた提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の定義は、具体的な場合において特に限定されない限り、本明細書で用いられる用語に適用される。本明細書に用いられる技術的および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解される意味を有する。矛盾が生じた場合には、本明細書での定義を含めて、本明細書が優先される。商標および商号は、大文字標記で印字される。
【0013】
本明細書で用いるところでは、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「を含む(including)」、「含有する(containing)」、「で特徴付けられる(characterized by)」、「有する(have)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を指す。例えば、所定の要素リストを含むプロセス、方法、物品、もしくは装置は、それら所定の要素のみに必ずしも限定されず、明確にリストされないか、またはかかるプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素をさらに含んでもよい。
【0014】
移行句「からなる(consisting of)」は、所定の要素リストに明記されないいかなる要素、工程、または原料も排除し、それらと通常関係がある不純物を除いて列挙されるもの以外の材料の包含をリストから締め出す。語句「からなる(consists of)」が、序文の直後ではなく、クレームの本体の条項にあるとき、それは当該条項に記述される要素のみを限定し;他の要素は全体としてクレームから排除されない。
【0015】
移行句「から本質的になる」は、明記される材料または工程と、特許請求される発明の基本的なおよび新規な特性に実質的に影響を及ぼさないものとにクレームの範囲を限定する。「から本質的になる」クレームは、「からなる」形式で書かれる閉鎖クレームと「含む」形式で草稿される完全開放クレームとの間の中間点を占める。任意の添加剤にとって適切であるレベルでの、本明細書に定義されるような任意の添加剤、および少量の不純物は、用語「から本質的になる」によって組成物から排除されない。
【0016】
組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセス、もしくは構造の一部が「含む(comprising)」などの開放端用語を用いて本明細書に記載されるとき、特に明記しない限り、この記載はまた、組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセス、もしくは構造の一部の要素「から本質的になる」または「からなる」実施形態を包含する。
【0017】
冠詞「a」および「an」は、本明細書に記載される組成物、プロセスまたは構造の様々な要素および成分に関連して用いられ得る。これは、便宜上および組成物、プロセスまたは構造の一般的な意味を与えるためであるにすぎない。かかる記載は、要素または成分の「1つまたは少なくとも1つ」を包含する。さらに、本明細書で用いるところでは、単数形冠詞はまた、複数が排除されることが具体的な前後関係から明らかではない限り、要素または成分の複数の記載を包含する。
【0018】
用語「または(or)」は、本明細書で用いるところでは、包括的であり;すなわち、語句「AまたはB」は、「A、B、またはAおよびBの両方」を意味する。より具体的には、条件「AまたはB」は次のいずれか1つで満たされる:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(存在しない);Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する);またはAおよびBの両方とも真である(または存在する)。排他的な「または」は本明細書では、例えば、「AまたはBのどちらか」および「AまたはBの1つ」などの用語で示される。
【0019】
用語「約」は、量、サイズ、調合、パラメーター、ならびに他の量および特性が正確ではないおよび正確である必要がないが、許容範囲、換算係数、丸め、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、要望に応じて、おおよそであってもおよび/またはより大きくてももしくはより小さくてもよいことを意味する。一般に、量、サイズ、調合、パラメーターまたは他の量もしくは特性は、そのようであると明記されようとされまいと「約」または「おおよそ」である。
【0020】
本明細書に記述される範囲は、特に明記しない限りそれらの終点を含む。量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、1つ以上の好ましい範囲または好ましい上方値と好ましい下方値のリストとして示されるとき、これは、かかるペアが別々に開示されてもされなくても、任意の上方範囲限界または好ましい値と任意の下方範囲限界または好ましい値との任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示するとして理解されるべきである。本発明の範囲は、範囲を明確にするときに列挙される具体的な値に限定されない。
【0021】
材料、方法、または機械が用語「当業者に公知の」、「通常の」または同義語もしくは同義語句と共に本明細書に記載されるとき、この用語は、本出願を出願する時点で通常である材料、方法、および機械がこの記載によって包含されることを意味する。現在は通常ではないが、類似の目的のために好適であるとして当該技術分野で認められるようになりうる材料、方法、または機械もまた包含される。
【0022】
特に明記しない限り、全ての百分率、部、比、および同様な量は、重量によって定義される。「有限量」は、0.0001重量%などの、任意の非ゼロ量である。
【0023】
本明細書で用いるところでは、用語「コポリマー」は、2種以上のコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを意味する。これに関連して、コポリマーは、その成分コモノマーに関してまたはその成分コモノマーの量に関して、例えば「エチレンと9重量%のアクリル酸とを含むコポリマー」、または類似の記述で本明細書に記載されてもよい。かかる記載は、それが共重合単位としてのコモノマーに言及しないという点において;それがコポリマーについての通常の命名法、例えばInternational Union of Pure and Applied Chemistry(国際純正応用化学連合)(IUPAC)命名法を含まないという点において;生成物−バイ−プロセス専門用語を用いないという点において;または別の理由のために形式張らないと考えられ得る。しかしながら、本明細書で用いるところでは、その成分コモノマーに関してのまたはその成分コモノマーの量に関してのコポリマーの記載は、コポリマーが明記されたコモノマーの共重合単位を(明記されるときには明記される量で)含有することを意味する。限定された状況でそうであると明記されない限り、コポリマーが所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物ではないことは当然の結果として生じる。用語「ダイポリマー」は、2種のモノマーから本質的になるポリマーを意味し、用語「ターポリマー」は、3種のモノマーから本質的になるポリマーを意味する。
【0024】
用語「ローコポリマー」は本明細書で用いるところでは、より低い分子量を有する二峰性組成物の成分を意味する。用語「ハイコポリマー」は本明細書で用いるところでは、より高い分子量を有する二峰性組成物の成分を意味する。用語「Mw」は重量平均分子量を意味し、用語「Mn」は数平均分子量を意味する。「二峰性アイオノマー」は、ハイコポリマーのMwおよびローコポリマーのMwが高分解能カラムのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってブレンドのMwを測定するときに2つの別個の分子量ピークが観察されるように十分に異なり、ハイコポリマーとローコポリマーとの合わせた酸部分がカチオンで少なくとも部分的に中和されているハイコポリマーとローコポリマーとの混合物を意味する。
【0025】
用語「メルトインデックス」または「MI」は、特に明記しない限り、MIの値がg/10分単位で報告されて、2160g重量を使用して190℃でASTM D1238に従って測定されるようなメルトインデックスを意味する。
【0026】
用語「(メタ)アクリル酸」および省略形「(M)AA」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」および「アルキル(メタ)アクリレート」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸のアルキルエステルを意味する。
【0027】
本明細書で用いるところでは、用語「中間層」は、その主面が両方とも構造体の他の層に直接接着している多層構造体の任意の層を意味する。用語「外側層」、「面層」、「スキン層」および「表面層」は、その主面のたった1つが構造体の別の層に直接接着している多層構造体の任意の層を意味するために同じ意味で用いられる。全ての多層構造体は、2つ、たった2つの外側層を有し、そのそれぞれは多層構造体のたった1つの他の層に接着した主面を有する。
【0028】
用語「内層」は、多層構造体の他の層と比べて構造体またはパッケージの内容物に最も近い多層構造体またはパッケージの面層を意味する。「内層」はまた、異形材または輪状ダイを通して同時に共押出された複数の同心円状に配置された層の最も内側の層を意味する。例えば、用語「内層」は、容器の内側の表面を形成する層に関して用いられる。用語「外層」は、多層構造体またはパッケージの他の層と比べて内容物から最も遠い多層構造体またはパッケージの面層を意味する。「外層」はまた、異形材または輪状ダイを通して同時に共押出された複数の同心円状に配置された層の最も外側の層を意味する。例えば、用語「外層」は、容器の外側の表面を形成する層に関して用いられる。
【0029】
本明細書に記載される多層状フィルム、シートおよび構造体の全ての層は、限定された状況で特に明記しない限り、直接にまたは間接に、互いに接着している。層に関して、「直接接着している」は、サブジェクト層が介在する結合層、接着層または他の層なしにオブジェクト層に接着していることを意味する。「介在層を介して接着している」は、結合層または接着層などの、少なくとも1つの層がサブジェクト層とオブジェクト層との間に配置されていることを意味する。
【0030】
多層状フィルム、シートおよび構造体の層に関して本明細書で用いるところでは、単語「間に」は、例えば2つの他の指定層間にあるとして記載されるサブジェクト層を指す際、2つの他の指定層の1つもしくは両方へのサブジェクト層の直接接着を意味してもよいし、またはそれは、サブジェクト層が1つ以上の介在層を介して指定層の1つもしくは両方に接着していることを意味してもよい。他の文脈では、用語「間に」は、特に明記しない限り、その通常の意味を保有する。
【0031】
本明細書に記載される二峰性アイオノマー組成物は、耐引っ掻き性の装飾的な擦り切れない布などを製造するためのコーティング組成物として非常に有用である。成分および中和対イオンの適切な選択によって、熱可塑性の二峰性アイオノマー組成物は、向上した耐引っ掻き性、耐摩耗性、耐摩滅性または耐擦り減り性を提供する。二峰性アイオノマー組成物はまた、高い柔軟性、ソフトタッチおよび暖かみ、基材布または紙への強い結合強度、高周波(HF)溶接性、透明性(低い曇り度)、光沢、印刷性、着色性、および向上した溶融加工性の1つ以上を実証する可能性がある。それは、布、紙、または他の基材と組み合わせられたときに、一般的なハロゲンを含まないエチレンコポリマーによって達成不可能な優れた性能能力を可能にする可能性がある特性の組み合わせを提供する。
【0032】
二峰性アイオノマー組成物は、他のエチレンコポリマーおよび従来型アイオノマーが不十分な耐摩耗性、不十分なHF溶接性または不十分な柔軟性を実証する用途に使用されてもよい。例えば、二峰性アイオノマー組成物は、可塑化PVCおよび柔軟な熱可塑性ウレタン(TPU)に取って代わるために使用されてもよい。それはまた、他の極性および非極性ポリマー、フィラーおよび添加剤との向上した接着性および相溶性を実証する可能性がある。二峰性アイオノマーはまた、高められた温度でのおよび応力下での変形に対する抵抗によって測定されるように、熱安定性の点で従来型アイオノマーよりも性能向上を達成する可能性がある。二峰性アイオノマーはまた、従来型アイオノマーと比較して老化時に減少した脆化を示す可能性がある。
【0033】
ハイコポリー
二峰性アイオノマーのハイコポリマー成分は好ましくは、約80,000〜約500,000DaのMwを有する「直接」酸コポリマー(グラフト化コポリマーとは対照的に)である。同様に好ましくは、それは、約1〜約15、より好ましくは約1〜約10の多分散性(Mw/Mn)を有する。
【0034】
それは好ましくは、第3の軟化モノマーを含有していてもよい、α−オレフィン、特にエチレン、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、コポリマーである。「軟化」は、ポリマーがあまり結晶質にされないことを意味する。
【0035】
ハイコポリマーとして使用されるコポリマーは、E/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3~8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート、ならびに酢酸ビニルから選択される軟化コモノマーの共重合単位を表す)と記載されてもよい。
【0036】
Xは、E/X/Yポリマーの約2〜約30(または約2〜20、好ましくは5〜25、より好ましくは8〜20)重量%で存在し、Yは、E/X/Yポリマーの0〜45重量%で存在する。
【0037】
Yがハイコポリマーの0%であるハイコポリマー(すなわち、限定なしに、エチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸ダイポリマーを含む、E/Xダイポリマー)に注目すべきである。
【0038】
E/X/Yターポリマー(式中、Xは、ポリマーの2〜20(好ましくは5〜25、より好ましくは8〜20)重量%で存在し、Yは、ポリマーの45重量%以下の有限値(3、好ましくは10重量%の下限から25、30または45重量%の上限まで)で存在する)にもまた注目すべきである。好適なターポリマーには、限定なしにエチレン/アクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/エチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/イソブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/エチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/イソブチルアクリレート、およびエチレン/アクリル酸/酢酸ビニルターポリマーが含まれる。
【0039】
ハイポリマーは好ましくは、約0.1〜約600g/10分、または約25〜約300g/10分、または約60〜約250g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0040】
エチレン酸コポリマーの製造方法は公知である。高レベルの酸(X)のエチレン酸コポリマーは、米国特許第5,028,674号明細書に記載されているような「共溶媒技術」を用いてかまたはより低い酸のコポリマーが製造される圧力より幾分高い圧力を用いることによって連続重合器で製造されてもよい。
【0041】
好適なハイコポリマーの例およびそれらの分子量は表Aに示される。「E」は共重合エチレンを表し、「MAA」は共重合メタクリル酸を表し、「AA」は共重合アクリル酸を表し、「nBA」は共重合n−ブチルアクリレートを表し、数字は、コポリマー中に存在する共重合コモノマーの重量%を示す。「NA」は該当なしを意味する。
【0042】
【表1】

【0043】
ローコポリマー
ローコポリマーは好ましくは、約2,000〜約30,000Daの分子量(Mw)を有する「直接」酸コポリマーである。好ましくはそれらは、約1〜約10、より好ましくは約1〜約6の多分散性(Mw/Mn)を有する。それらは好ましくは、α−オレフィン、特にエチレン、C3~8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸、特にアクリル酸およびメタクリル酸、コポリマーである。好ましくは、これらのコポリマー中の酸部分は、コポリマーの約3〜約30(または5〜20、または3〜15、最も好ましくは5〜10)重量%である。
【0044】
これらのローコポリマーはまた、酸コポリマーワックスとも言われてもよい。好適な例は、Honeywell Specialty Wax and Additives(Morristown,NJ)から商業的に入手可能である(例えば、4369の数平均分子量のエチレン/5重量%アクリル酸コポリマーであると考えられる、AC 540、およびそれらの分子量と共に表Bに示される他のもの)。
【0045】
それらの比較的低い分子量のために、これらのローポリマーは、高められた温度で有意味なまたは測定可能なメルトインデックスを有するには余りにも粘度が低い。代わりに、それらのMwは、それらのBrookfield粘度との相関で測定される。流体の粘度を測定するためのこの技法は、例えば、ASTM D2196、D2983またはD3236−1978に概説されている。Brookfield粘度は、センチポアズ単位で報告され、この値は、Brookfield Viscometer(粘度計)が操作されるスピンドル速度または剪断速度によって測定される。Brookfield粘度データ(140℃で測定された)は、Honeywellによってまたはその前身、Allied Signal Corporationによって提供された。
【0046】
【表2】

【0047】
アイオノマー
アイオノマーは、コポリマー中のカルボン酸基の少なくとも幾らかが中和されて相当するカルボン酸塩を形成する酸コポリマーである。存在するカルボン酸基が塩基性化合物によって少なくとも部分的に中和されてアルカリ金属イオン、遷移金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはカチオンの組み合わせを含む塩を形成する、アイオノマーは、上記のハイおよびローコポリマーから製造されてもよい。アイオノマーの製造方法は、例えば、米国特許第3,264,272号明細書に開示されている。
【0048】
酸コポリマーを中和するために好適な化合物には、塩基性アニオンとアルカリ金属カチオン(例えば、リチウムもしくはナトリウムもしくはカリウムイオン)、遷移金属カチオン(例えば、亜鉛イオン)またはアルカリ土類金属カチオン(例えばマグネシウムもしくはカルシウムイオン)およびかかるカチオンの混合物または組み合わせとを有するイオン性化合物が含まれる。エチレン酸コポリマーを中和するために使用されてもよいイオン性化合物には、アルカリ金属ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドが含まれる。他の有用なイオン性化合物には、アルカリ土類金属ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物またはアルカリ土類金属のアルコキシドが含まれる。遷移金属ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドもまた使用されてもよい。酸性基を中和することができる化合物の量は、酸コポリマー中の酸部分の標的量を中和するために化学量論的に計算される量の化合物を加えることによって決定されてもよい(本明細書では「%名目中和」または「名目上中和される」と言われる)。こうして、全体として、示されたレベルの名目中和を達成することができるように十分な塩基性化合物がブレンド中で利用可能にされる。
【0049】
ハイコポリマーのおよびローコポリマーのアイオノマーは、別々に製造されるとき、上記の方法によって製造されてもよい。中和度および酸レベルは好ましくは、ハイコポリマーの生じたアイオノマーとローコポリマーのアイオノマーとが溶融加工可能であるようにである。ハイコポリマーから製造される好適なアイオノマーの例には、表Cに記述されるものが挙げられる。
【0050】
【表3】

【0051】
好ましくはハイコポリマーのMwは、混合物の分子量分布が高分解能カラムのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるときにハイコポリマーについてのピークがローコポリマーについてのピークからはっきりと分離されるほど十分にローコポリマーのMwと離れている。好ましくは、より低いMwのハイコポリマーがより低いMwのローコポリマーと(例えば80,000DaのMwのハイコポリマーが2,000DaのMwのローコポリマーと)ブレンドされる。この好ましさは、ハイコポリマーのMwが増加するにつれてあまり重要ではなくなる。
【0052】
好ましくは、ハイコポリマーは、ハイコポリマーとローコポリマーとを合わせた総重量を基準にして約40〜約95重量%で存在する。同様に好ましくは、ローコポリマーは、ハイコポリマーとローコポリマーとの総重量を基準にして約5〜約60重量%、または約5〜約50重量%、または約5〜約25重量%、または約5〜約20重量%の範囲で存在する。
【0053】
ハイコポリマーおよびローコポリマー中の酸部分の少なくとも約35%が、1種以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含むカルボン酸塩へ中和される。
【0054】
二峰性アイオノマー組成物の成分は、任意の好適な技法によって組み合わせられてもよい。例えば、二峰性アイオノマー組成物は、別々に製造された溶融加工可能なアイオノマーを溶融ブレンドすることによって製造されてもよく、次に、アイオノマーの生じたブレンドの所望の名目中和を達成するために同じまたは異なるカチオンを含む塩基性化合物でさらに中和されてもよい。好ましくは未中和のハイコポリマーとローコポリマーとが溶融ブレンドされ、所望のより高いまたは完全中和を一工程で達成できるようにその場で中和される。
【0055】
いずれにしても、中和は、ハイまたはローコポリマーを、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含む塩基性化合物と反応させることによって達成されてもよい。好ましいカチオンには、リチウム*、ナトリウム*、カリウム*、マグネシウム*、カルシウム*、バリウム、鉛、スズ、もしくは亜鉛**は、より好ましいカチオンを示す)、またはこれらのカチオンの2種以上の組み合わせが含まれる。好ましくは組成物中のカチオンの少なくとも20当量%、少なくとも35当量%、少なくとも50当量%、または少なくとも75当量%が亜鉛カチオンである。
【0056】
好ましくは、生じた二峰性アイオノマー中のハイコポリマーとローコポリマーとの酸部分は、ハイおよびローコポリマー中の酸部分の総数を基準にして、約40〜約100%、または約40〜約85%、または約40〜約75%、または約50〜約90%、または約50〜約85%、または約50〜約75%または約60〜約80%のレベルに部分または完全中和される。
【0057】
塩基性化合物は、酸コポリマーまたはそれのアイオノマーにニートで加えられてもよいし、または、酸コポリマーなどの、ポリマー材料とプレミックスされて「マスターバッチ」を形成し、それが酸コポリマーまたはそれのアイオノマーに加えられてもよい。
【0058】
(1)E/X/Yターポリマー(式中、X(例えばメタクリル酸またはアクリル酸)はコポリマーの5〜20重量%であり、Y(例えば、ブチルアクリレートなどのアルキルアクリレート)はコポリマーの10〜45重量%である)を含むハイコポリマー成分と、(2)ローコポリマーとを含む二峰性組成物であって、合わせた酸基の40〜100%が、1種以上のアルカリ、アルカリ土類、または遷移金属イオンのカルボン酸塩へ中和されている組成物に注目すべきである。
【0059】
他の熱可塑性ポリマー
任意選択的に、二峰性アイオノマー組成物は、ハイコポリマーとローコポリマーとのブレンドの100重量部を基準にして、200重量部以下の1種以上の他の熱可塑性ポリマーおよび/または170重量部以下の1種以上のフィラーを含有してもよい。例えば、組成物は、(a)二峰性アイオノマー組成物と(b)(a)+(b)を基準にして約1〜約60重量%の少なくとも1種の他の熱可塑性ポリマーとから本質的になってもよい。
【0060】
組成物の任意の熱可塑性ポリマー成分は、他の(従来型)アイオノマー、他のエチレンコポリマー、官能化コポリマー、ポリエステル、ポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマ−、ポリ塩化ビニル、および熱可塑性ポリウレタンから選択されてもよく、これらのクラスのポリマーは当該技術分野ではよく知られている。
【0061】
エチレンコポリマーは、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、一酸化炭素、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の極性コモノマーと共重合したエチレンを含む。好適なエチレンコポリマーには、限定なしに、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマー、エチレンアルキルメタクリレートコポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酸アイオノマーが含まれる。
【0062】
エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーには、EVAダイポリマー、EVAターポリマーおよびより高次のコポリマーが含まれる。「EVAダイポリマー」は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合単位のみからなるコポリマーを表現する。「EVAターポリマー」は、エチレン、酢酸ビニルおよび追加のコモノマーの共重合によって製造されるコポリマーを表現する。共重合酢酸ビニル単位は、EVAコポリマーの好ましくは約5〜約35重量%、より好ましくは約8〜約20重量%である。EVAコポリマーには、商標ELVAX(登録商標)でE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)(本明細書では以下「DuPont」)から入手可能なものが含まれる。
【0063】
エチレンアルキルアクリレートコポリマーまたはエチレンアルキルメタクリレートコポリマーは、それぞれ、エチレンとアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとの共重合単位を含む。好ましくは、アルキル基は1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよびn−ブチルアクリレートが好ましいコモノマーである。これらのコポリマー中に存在するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートコモノマーの共重合単位の重量百分率は、コポリマーの2、3重量%から40重量%以上ほどに高くまで、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの、好ましくは約5〜約35重量%、より好ましくは約8〜約20重量%に広く変わってもよい。エチレンアルキルアクリレートコポリマーには、ELVALOY(登録商標)AC商標でDuPontから入手可能なものが含まれる。エチレン−n−ブチルアクリレート−一酸化炭素ターポリマーなどのエチレンアルキルアクリレート一酸化炭素ターポリマーもまた使用されてもよい。
【0064】
本明細書で用いるところでは、官能化ポリマーは、エチレンとC4〜C8の不飽和酸無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8の不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8の不飽和酸のジエステルからなる群から選択されるコモノマーとの共重合単位を含むエチレンコポリマー、およびかかるコポリマーの混合物であってもよい。エチレンコポリマーは、約3〜約25重量%のコモノマーの共重合単位を含んでもよい。これらの官能化ポリマーは、グラフトコポリマーよりもむしろ、高圧フリーラジカルランダム共重合のプロセスによって得られる。モノマー単位は、ポリマー主鎖または鎖中へ組み込まれ、前もって形成されたポリマー主鎖上へペンダント基として感知できる程度に組み込まれない。コポリマーは、ダイポリマーまたは、ターポリマーもしくはテトラポリマーなどのより高次のコポリマーであってもよく、好ましくはランダムコポリマーである。エチレンコポリマーの好適なコモノマーには、無水マレイン酸および無水イタコン酸などの不飽和酸無水物;マレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、フマル酸水素プロピル、およびフマル酸水素2−エチルヘキシルを含む、ブテン二酸(例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸)のC1〜C20のアルキルモノエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、シトラコン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、およびフマル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのブテン二酸のC1〜C20のアルキルジエステルが含まれる。好ましいコモノマーには、無水マレイン酸およびマレイン酸水素エチルが含まれる。
【0065】
酸無水物変性ポリマーはまた、官能化ポリマーとして用いるために好適であり、酸無水物グラフト化ホモポリマーまたはコポリマーを含む。これらには、0.1〜10重量%の不飽和ジカルボン酸無水物でグラフトされたポリマーが含まれる。それらは、グラフト化オレフィンポリマー、例えばグラフト化ポリエチレン、グラフト化EVAコポリマー、グラフト化エチレンアルキルアクリレートコポリマーまたはグラフト化エチレンアルキルメタクリレートコポリマーであってもよい。好適な酸無水物変性ポリマーは、米国特許出願第11/644,976号明細書に開示されている。
【0066】
好適なエチレン酸コポリマーは、ハイコポリマーに関して上に記載された通りである。好適な他のアイオノマーはまた、ハイコポリマーのアイオノマーに関して詳細に記載されている。好適なエチレン酸コポリマーおよびアイオノマーは、両方ともDuPontから入手可能な、NUCREL(登録商標)エチレン酸コポリマーおよびSURLYN(登録商標)アイオノマーを含めて、商業的に入手可能である。
【0067】
注目に値する二峰性組成物は、(メタ)アクリル酸がポリマーの2〜30重量%であり、かつ、酸部分の約40〜100%が、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含むカルボン酸塩へ中和されているエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーなどの、追加の熱可塑性樹脂のような他のアイオノマーを含む。二峰性アイオノマーは、30重量%以下の追加のアイオノマーと混合されてもよく、二峰性アイオノマーに典型的な特性(下に議論されるHF−溶接性などの)を依然として保持する。
【0068】
ポリエステルは当該技術分野ではよく知られており、エステル化またはエステル交換によってアルコールとジカルボン酸(それのエステルを含む)とから誘導される任意の重縮合生成物を含む。アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール、メトキシポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、またはそれらの2種以上の組み合わせなどの2〜約10個の炭素原子を有するグリコールが含まれる。ジカルボン酸には、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、イソフタル酸、1,10−デカンジカルボン酸、フタル酸、ドデカン二酸、エステル形成等価物(例えば、ジメチルフタレートなどのジエステル)、またはそれらの2種以上の組み合わせが含まれる。ポリエステルには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレンジオアート(PEN)、またはそれらの2種以上の組み合わせが含まれる。ポリエステルブレンドは好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが主成分であるブレンドである。ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0069】
ポリエステルにはまた、ポリカプロラクトン(PCL)としてもまた知られる、6−ヒドロキシヘキサン酸を含むポリマー、ならびに3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸および3−ヒドロキシヘプタン酸を含むポリマーを含む、2〜7個(またはそれ以上)の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の重合から製造されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)組成物が含まれる。5個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸を含むPHAポリマーには、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)などの、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、4−ヒドロキシバレレートおよび−ヒドロキシバレレートを含むポリマーが含まれる。PHA組成物にはまた、PHBとPCLとのブレンドなどの、2種以上のPHAポリマーのブレンドが含まれる。ポリエステルおよびポリエステルの製造方法は当該技術分野ではよく知られているので、これらの説明は、簡略にするために本明細書では省略される。用語「ポリエステル」は本明細書で用いるところでは、上記のポリマーのいずれかまたは全てを一般に意味する。
【0070】
使用するために好適なポリアミド(例えばナイロン)は、ラクタムもしくはアミノ酸の重合によって(例えばナイロン6もしくはナイロン11)、またはヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとコハク酸、アジピン酸、もしくはセバシン酸などの二塩基酸との縮合によって製造されてもよい。ポリアミドはまた、追加のコモノマーの共重合単位を含んでターポリマーまたはより高次のポリマーを形成してもよい。ポリアミドには、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6,9、ナイロン12,12、それらのコポリマーならびに非晶質および半結晶性ポリアミドのブレンドが含まれる。本明細書で用いるところでは、用語ポリアミドにはまた、Honeywell International Inc.から商号AEGISポリアミドでまたは三菱ガス化学株式会社からIMPERMポリアミド(ナイロンMXD6)で商業的に入手可能なものなどのポリアミドナノ−複合体が含まれる。好ましいポリアミドには、ポリイプシロンカプロラクタム(ナイロン6);ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6);ナイロン11;ナイロン12、ナイロン12,12ならびにナイロン6/6,6;ナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,6/12;ナイロン6/6、およびナイロン6/6Tなどのコポリマーおよびターポリマーが含まれる。より好ましいポリアミドは、ポリイプシロンカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)であり、ナイロン6が最も好ましい。
【0071】
コポリエーテルエステルは、米国特許第3,651,014号明細書;同第3,766,146号明細書;および同第3,763,109号明細書に議論されている。それらは、エステル結合によって頭尾連結した多様な繰り返し長鎖単位と短鎖単位とを含み、長鎖単位は式
【化1】

で表され、短鎖単位は式
【化2】

で表され、
式中、Gは、約400〜6,000の分子量および約2.0〜4.3の炭素対酸素比を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;ただし、前記短鎖エステル単位は合計して前記コポリエーテルエステルの約15〜95重量パーセントになる。好ましいコポリエーテルエステルポリマーは、ポリエーテルセグメントがテトラヒドロフランの重合によって得られ、ポリエステルセグメントがテトラメチレングリコールとフタル酸との重合によって得られるものである。コポリエーテルエステル中へ組み込まれたポリエーテル単位が多ければ多いほど、ポリマーはよりソフトになる。エーテル:エステルモル比は、90:10〜10:90、好ましくは80:20〜60:40と変わってもよく;ショアD硬度は70未満、好ましくは約40未満であってもよい。
【0072】
コポリエーテルアミドは、米国特許第4,331,786号明細書に記載されているように、よく知られている。それらは、線状の規則正しい鎖の剛性ポリアミドセグメントと一般式
【化3】

で表される柔軟性のあるポリエーテルセグメントとを含み、
式中、PAは、4〜14個の炭素原子を含有する炭化水素鎖を有するラクタムもしくはアミノ酸から、または4〜20個の炭素原子を有する鎖長制限脂肪族ジカルボン酸の存在下に、脂肪族C6〜C9のジアミンから形成される直鎖状飽和の脂肪族ポリアミド配列であり;前記ポリアミドは300〜15,000の平均分子量を有し;PEは、直鎖状もしくは分岐の脂肪族ポリオキシアルキレングリコール、それらの混合物またはそれらに由来するコポリエーテルから形成されるポリオキシアルキレン配列であり、前記ポリオキシアルキレングリコールが6,000以下の分子量を有し、nは、前記ポリエーテルアミドコポリマーが約0.8〜約2.05の固有粘度を有するほどに十分な繰り返し単位の数を示す。これらのポリエーテルアミドの製造は、そのCOOH基が鎖端にあるジカルボン酸ポリアミドを、一般式Ti(OR)4(式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状、分岐の脂肪族炭化水素ラジカルである)を有するテトラアルキルオルトチタネートなどの触媒の存在下に、鎖端でヒドロキシル化されたポリオキシアルキレングリコールと反応させる工程を含む。再び、コポリエーテルアミド中へ組み込まれたポリエーテル単位が多ければ多いほど、ポリマーはよりソフトになる。エーテル:アミド比は、エーテル:エステル比について上に記載された通りであり、ショアD硬度も同様である。
【0073】
弾性ポリオレフィンは、エチレンとプロピレン、ヘキセン、オクテンおよび任意選択的に1,4−ヘキサジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンもしくはノルボルナジエンなどの高級主要オレフィンとを含むポリマーである。弾性ポリオレフィンは、無水マレイン酸でグラフトすることによって官能化されてもよい。
【0074】
熱可塑性ポリウレタンは、ハードブロックとソフト弾性ブロックとからなる直鎖状のまたはわずかに鎖分岐したポリマーである。それらは、ソフトヒドロキシ末端弾性ポリエーテルまたはポリエステルを、メチレンジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)などのジイソシアネートと反応させることによって製造される。これらのポリマーはグリコール、ジアミン、二酸、またはアミノアルコールで鎖延長されてもよい。イソシアネートとアルコールとの反応生成物はウレタンと呼ばれ、これらのブロックは比較的ハードで、高溶融である。これらのハードな、高溶融ブロックは、ポリウレタンの熱可塑性性質に関与する。
【0075】
ブロックスチレンジエンコポリマーは、ポリスチレン単位とポリブタジエン、ポリイソプレンまたはこれらの2つのコポリマーに由来するポリジエン単位とを含む。このコポリマーの場合には、ポリオレフィンを水素化して飽和ゴム状主鎖セグメントを得ることが可能である。これらの材料は通常、SBS、SISまたはSEBS熱可塑性エラストマーと言われる。それらはまた、グラフト化によってまたは共重合によってのどちらかによって、無水マレイン酸で官能化されてもよい。
【0076】
フィラー
1種以上のフィラーが、フィラーと関連する利益のいずれかを提供するために二峰性組成物中に含められてもよい。例えば、任意のフィラー成分が、二峰性アイオノマー組成物にまたは他の材料とのそれらのブレンドに追加の密度を付与するために選択されてもよい。好ましい密度は用途に依存する。フィラーは、約4gm/ccより大きい、好ましくは5gm/chより大きい密度を有する無機物であってもよく、組成物の総重量を基準にして0〜約60重量%の量で存在してもよい。有用なフィラーには、TiO2、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸鉛および炭化タングステン、酸化スズ、ならびにそれらの他の周知の相当する塩および酸化物が含まれる。フィラーは好ましくは、それらが完全によりも少なく中和されるときに上記のアイオノマーと反応しないかまたはほとんど反応しない。フィラーは、二峰性アイオノマー組成物の透明性が望まれるときには好適ではない可能性がある。
【0077】
他の成分
組成物は、ポリマー技術分野で一般に使用され、よく知られている少量の任意の材料をさらに含んでもよい。かかる材料には、可塑剤、粘度安定剤および加水分解安定剤を含む安定剤、例えばIRGANOX 1010などの一次および二次酸化防止剤、紫外線吸収剤および安定剤、帯電防止剤、染料、顔料または他の着色剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、スリップ添加剤、シリカまたはタルクなどのブロッキング防止剤、剥離剤、および/またはそれらの混合物が含まれる。他の任意の添加剤には、上記のような無機フィラー;顔料としてかまたは増白剤として使用される、TiO2;蛍光増白剤;界面活性剤;およびポリマー技術分野で公知の他の成分が含まれる。多くのかかる添加剤は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(カーク−オスマー化学技術事典)、第5版、John Wiley & Sons(Hoboken、2005年)に記載されている。
【0078】
これらの通常の原料は、それらが組成物の基本的なおよび新規な特性を損なわず、かつ、組成物から製造された組成物の性能に顕著に悪影響を及ぼさない限り、全組成物の一般に0.01〜15重量%、好ましくは0.01〜5重量%または0.01〜10重量%である量で組成物中に存在してもよい。
【0079】
本組成物へのかかる通常成分の任意の組み込みは、任意の公知の方法によって、例えば、乾式ブレンディングによって、様々な成分の混合物を押し出すことによって、通常のマスターバッチ技法などによって実施されてもよい。再び、Kirk Othmer Encyclopediaを参照されたい。
【0080】
二峰性アイオノマー組成物を含む物品
フィルムは、フィルムの少なくとも1つの表面が本二峰性アイオノマー組成物を含むという条件で、単層もしくは多層フィルムとして製造されてもよい。フィルムは、周知の手順に従ってキャストまたはブローンフィルムを製造するために(共)押出によって製造されてもよい。シートはフィルムに似ているが、フィルムより厚いと考えられる。便宜上下記の説明はフィルムに関するが、この説明はまたシートにも適用されることが理解されるべきである。
【0081】
二峰性アイオノマー組成物は、例えば、キャストまたはブローンフィルムダイ押出技法によって単層フィルムへ変換されてもよい。
【0082】
二峰性アイオノマー組成物の耐引っ掻き特性がフィルムの一面、例えばパッケージの内側に限定されることが望ましい場合、二峰性アイオノマー組成物は、1つ以上の他のポリマー層と共に二峰性アイオノマー組成物を含むまたはそれから本質的になる表面層を含む多層フィルムを製造するために共押出されても、押出コーティングされても、溶液コーティングされても、または積層されてもよい。多層フィルムの製造技法は、当該技術分野でよく知られている。
【0083】
例えば、フィルムは、構造層またはバルキング層、接着層および/またはヒートシール層を有してもよい。幾つかの場合には、単層がヒートシール層および構造層の両方として機能してもよい。好ましくは、多層フィルムは、二峰性アイオノマーの表面層を含む。存在するとき、構造層またはバルキング層は、強度、ボディおよび/または厚さを多層フィルムに提供し、薄いスキン層または表面層での二峰性アイオノマーの使用を可能にする。接着層は、多層構造体の2層間またはフィルムと基材との間の接合を容易にする。接着層は、望ましくは露出二峰性アイオノマー層を保持しながら材料を二峰性アイオノマーフィルムに接合させるために有用である。ヒートシール層は、外層、すなわちシーリングプロセス中に加熱されたシーリング手段(例えば、シーリング棒のジョー)と接触する層の溶融温度より実質的に下の温度でそれ自体にまたは基材に接合する(シールする)ことができるシーラント組成物を含み、その結果、外層の外観はシーリングプロセスによって影響を受けず、ポリマーはシーリング手段にくっつかないであろう。多層構造体において、外層は二峰性アイオノマー組成物を含んでもよい。
【0084】
多層フィルムまたは構造体の追加の層は、例えばそして限定なしに、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ウレタン、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマー、エチレンアルキルメタクリレートコポリマー、エチレン酸コポリマー、エチレン酸アイオノマーを含む極性コモノマーと共重合したエチレン、エチレンと少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸、および環状酸無水物、かかる酸のモノエステルおよびジエステルからなる群から選択されるコモノマーとの共重合単位を含む酸無水物変性ポリマーおよびコポリマーを含む官能化コポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ならびにこれらのポリマーのいずれかの2種以上の組み合わせまたはブレンドを含んでもよい。接着層はまた、例えば、コポリエステル、コポリアミドまたはポリウレタンなどの低分子量の熱可塑性接着剤であってもよい。さらに、二峰性アイオノマーフィルムは、水性または溶剤希釈型、熱可塑性または熱硬化性であってもよい、液体塗布エマルジョンまたは分散系を含有してもよい。
【0085】
好適なポリエチレンには、ポリエチレンホモポリマーおよび、直鎖状低密度ポリエチレンなどの、エチレンとα−オレフィンとのコポリマー、ならびにメタロセン触媒、シングルサイト触媒および束縛構造触媒の存在下に製造されたエチレンのホモポリマーまたはエチレンとα−オレフィンモノマーとのコポリマー(本明細書では以下メタロセンポリエチレン、またはmPE)が含まれる。
【0086】
メタロセン触媒重合には、メタロセン触媒の使用を含む重合プロセスならびに束縛構造およびシングルサイト触媒の使用を含むそれらのプロセスが含まれる。重合は、液相プロセス、気相プロセスなどとして行われてもよい。メタロセン技術は、米国特許第5,272,236号明細書;同第5,278,272号明細書;同第5,507,475号明細書;同第5,264,405号明細書および同第5,240,894号明細書に記載されている。
【0087】
幾つかの場合にはポリマーのブレンド、特にエチレンコポリマーのブレンドが接着層またはヒートシール層の成分として有用である可能性がある。例えば、米国特許第6,545,091号明細書;同第5,217,812号明細書;同第5,053,457号明細書;同第6,166,142号明細書;同第6,210,765号明細書;および米国特許出願第11/644,976号明細書に記載されている接着組成物が使用されてもよい。
【0088】
追加の層は、耐摩耗性表面として機能する多層フィルムの能力を損なわない量で使用される通常の添加剤をさらに含んでもよい。これらの通常の添加剤の例は、上に記載されている。任意の添加剤は、追加の層の成分として使用されるとき、様々な量で、例えば、層用の組成物の総重量の約20重量%以下の量で存在してもよい。
【0089】
フィルムは、フィルムの即時急冷またはキャスティングの後にさらに延伸されてもよい。本方法は、溶融ポリマーの流れ(または溶融ポリマーの多層層流)を(共)押出する工程と、(共)押出物を急冷する工程と急冷(共)押出物を少なくとも一方向に延伸する工程とを含む。延伸は、例えば、加熱ありまたは加熱なしで、伸張または幅出しによって成し遂げられてもよい。
【0090】
二峰性アイオノマー組成物は、様々な技法および方法によって変換され、基材に適用されてもよい。興味のある基材には、熱可塑性フィルムおよびシート;気泡質発泡体(連続気泡もしくは独立気泡、または連続気泡と独立気泡との組み合わせを有し、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよびポリオレフィンなどの1つ以上の材料を含む);織布、編布および不織布;紙、パルプおよび板紙製品;木材および木材製品;金属(アルミニウム、銅、鉄、鋼など);ガラス(板ガラス、ガラス繊維、ガラス繊維バットなど);石;セラミック;ならびに皮革および皮革様製品(「人工皮革」を含む)が含まれる。布基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、LYCRA(Invista Corp.(Wichita,KS)から入手可能な)、KEVLAR(登録商標)繊維(DuPontから入手可能な)、羊毛、綿、絹、セルロースなどおよびこれらの材料の2種以上のブレンドを含む織布、編布または不織布であってもよい。紙、木材、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革などの基材はまた、研磨、特殊加工、コーティング、塗装、ワニス掛け、印刷、腐食防止剤の塗布等々の処理による仕上げ面を含んでもよい。熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂は、特に完全な球形形状にないときにまたは二峰性アイオノマー組成物で完全に被覆されないときに基材としてまた使用されてもよい。
【0091】
上記のフィルムは、限定なしに、押出積層、共押出積層、カレンダー加工積層、接着剤支援積層、熱積層、シーリング、またはホットロール積層、フレーム積層、およびヒートシーリングなどの熱プロセスを用いる溶接を含む方法によって基材に適用されてもよい。
【0092】
例えば、二峰性アイオノマーを含むフィルムは、中間層組成物を介してフィルムを基材に接着させるために、溶融形態で適用された中間層組成物を用いて基材ウェブに積層されてもよい。この構造体の一製造方法は、フラットダイを通して中間層組成物を押し出すことによって形成された、中間層組成物の溶融カーテンを、それらが冷たい(チル)ロールと接触するときに高速で移動するフィルムと基材との間にレイダウンする工程を含む。
【0093】
幾つかの用途において、二峰性アイオノマー組成物は、例えば、押出コーティング、カーテン押出、および共押出コーティングを含む、当該技術分野で公知の方法を用いて基材上へコートされてもよい。押出コーティングは次の通り行われてもよい:ブレンドの乾燥顆粒(および、存在する場合、他の層用の組成物の顆粒)が単軸スクリュー押出機で溶融させられる。溶融ポリマーはフラットダイを通過して溶融ポリマーカーテンを形成し、ここで、個々の層の組成物は層流で存在する。溶融カーテンは、移動する基材上へ落下して基材上へ直ちに押し付けられ、急冷ドラムによって急冷される。二峰性アイオノマーは、不織布基材への強い結合を有する。
【0094】
少なくとも1つの追加の層が二峰性アイオノマー組成物と基材との間に配置される、共押出コーティングに注目すべきである。10〜30重量%の、9重量%のマレイン酸水素エチルとのエチレンコポリマーと70〜90重量%の、20重量%のメチルアクリレートとのエチレンコポリマーとを含む組成物が、押出積層によってまたは共押出コーティングによってのどちらかで、二峰性アイオノマー層を布基材に接着させるために有用である。
【0095】
二峰性アイオノマー組成物はまた、粉末として製造されてもよい。粉末粒子は、600ミクロン以下、400ミクロン以下、または200ミクロン以下の顆粒サイズを有してもよい。粉末組成物は、サイズが約100〜約600ミクロン、または約150〜約200ミクロンに変わる顆粒を含んでもよい。組成物は、基材への適用に好適な粒度を提供するためにミリングされても、粉砕されてもまたは公知の方法によって別のやり方で処理されてもよい。
【0096】
粉末は、粉末が基材の有効幅にわたって均一に分配され、その後、基材上に組成物の一様なコーティングを提供するために溶融され、平滑化され、冷却される、粉末散乱などの技法によって基材に適用されてもよい。かかる方法は、カーペット裏地のために自動車工業で、コンベヤーベルト、芯材、医療織物を製造するために、および他の衣類用途で用いるために好適である可能性がある。
【0097】
粉末はまた、粉末が加熱された彫刻ローラーの空洞に入れられ、ある模様で予熱基材に移され、赤外チャネルで焼結され、平滑化装置でカレンダー掛けされる粉末ドット法に使用されてもよい。粉末ドット法は、軽量の上着用の芯材、およびシャツカラー、靴の中敷き、上着および他の衣類用途用の固定材料を製造するために用いられてもよい。
【0098】
粉末組成物は、光および温度に敏感な基材のためのペーストドット塗布に使用されてもよい。粉末の分散系は、回転印刷スクリーンによってドットのパターンで基材に塗布され、ドットは、熱風ノズル乾燥機を用いて乾燥させられてもよい。
【0099】
二峰性アイオノマーコーティング組成物はまた、水性分散系コーティングによって基材に塗布されてもよい。
【0100】
これらの方法は、二峰性アイオノマーが材料を一緒に接着させるために使用される、HF溶接用途向けに好適な材料を製造するのに有用である可能性がある。良好な高周波(HF)または無線周波(RF)溶接性は、装飾フィルムおよびコーティング組成物にとって別の望ましい特性である。フレキシブルポリ塩化ビニル(f−PVC)は、そのHFシーリング可能性、蒸気およびガスバリヤー性、および可撓性のためにHF活性フィルムに使用されてきた。高周波溶接は、フィルムを基材に、フィルムをそれ自体に、別のフィルムに、または織物布になど、物品を別の物品に接着させるための縫い合わせおよび熱接合法の代替手段である。HF溶接は、多層フィルムなどの構造体のHF活性成分またはHF活性層を単に加熱して当該成分を軟化させるまたは溶融させることを含む。選択的な加熱は、高周波電磁放射線のフィールドでの処理によって成し遂げられる。対照的に、熱接合法は、構造体中の接合層または成分を軟化させるまたは溶融させるために熱を全体構造を通して移動させることを必要とする。いずれにしても、軟化したまたは溶融した層または成分はその次に、それが固くなった後にフィルム構造体を別の構造体または基材に接合させる。
【0101】
HF溶接は熱接合法よりも有利である可能性がある。HF溶接は、熱接合法に必要とされる時間の何分の1かでフィルムを接合させる可能性があり、延伸フィルムおよび熱的に敏感な染料などの、熱的に敏感な材料を分解させる可能性がより少ない。また、HF溶接は、熱による構造変形を最小限にし、複雑な形状の接合を可能にする。幾つかの二峰性アイオノマー組成物は、高周波(HF)溶接可能なフィルム、多層構造体、または物品を製造するために特に好適である。高周波溶接は、フレキシブル包装、フレキシブルバッグ製造、織物積層に、ならびにヘッドライナーおよび遮光板などの自動車構成要素を製造するのに有用である。HF活性フィルムおよび物品は、HF溶接機、好ましくは無線周波(RF)溶接機を組み込むHFプロセスを用いてそれら自体にまたは他の基材に溶接可能である。HF溶接機には、RF溶接機およびマイクロ波溶接機が含まれる。市販のHF溶接機には、Callanan Company(Alloyd RF Sealing Systems)、Weldan、Colpitt、Kiefel Technologies、Thermatron、およびRadyneから入手可能なものが含まれる。RF溶接機は、27.12MHz、13.56MHz、または40.68MHzの周波数で動作してもよい。マイクロ波溶接機はまた、二峰性アイオノマーフィルムを溶接するまたはシールするために好適である可能性があり、2.45ギガヘルツ(GHz)、5.87GHz、または24.12GHzの周波数で動作してもよい。二峰性アイオノマーフィルムのHF溶接は、23℃以上に設定されたダイまたは工具温度のHFシーリング装置を運転することを含んでもよい。ダイまたは工具温度を上げると、HF活性ポリマー組成物のHF活性化を向上させ、それによってシール時間を短縮する可能性がある。ダイまたは工具温度は、二峰性アイオノマーフィルムをHF溶接するために40℃以上、さらには60℃以上であってもよいが、望ましくは120℃より低くてもよい。フィルムの重量平均溶融温度より高いダイまたは工具温度は通常、フィルムを基材にヒートシールまたは溶融溶接し、HF溶接に必要であるものよりも高い可能性がある。
【0102】
HF活性フィルムは、任意の厚さ、例えば1〜100ミル(25〜2500マイクロメートル(μm))、好ましくは5〜50ミル(125〜1000μm)のものであってもよい。HF活性フィルムは好ましくは、ASTM方法D−882に従って試験されるときに縦方向(MD)および横方向(TD)に2,000psi(14MPa)より大きい引張強度、400%より大きい極限伸び、ならびに4,000psi(28MPa)〜30,000psi(207MPa)の2%割線弾性率値を示す。より好ましくは、HF活性フィルムは、ASTM方法D−1922に従って試験されたときに200グラム/ミル(8グラム/μm)より大きいMDおよびTD Elmendorf引裂強度をさらに示す。前述の特性を持ったフィルムは、熱積層およびHF溶接などのその後の変換操作にとって、ならびに医療バッグ、織物ラミネート、および自動車内装ラミネートなどの最終使用用途にとって十分に耐久性がある。
【0103】
熱プロセスとHFプロセスとの組み合わせもまた実現可能である。例えば、布などの基材への本明細書に記載されるようなフィルムの熱積層は、フィルム/布複合材料を形成する。2つのかかるフィルム/布複合材料を一緒にフィルム/フィルム界面でHF溶接すると(または同じフィルム/布複合材料をそれ自体折り重ねてフィルム/フィルム界面を形成すると)、布/フィルム/布多層構造体が得られる。
【0104】
露出したHF活性二峰性アイオノマー層とHF不活性層とを含むHF溶接可能な多層フィルムもまた提供される。多層フィルムは、「AB」、または「ABA」構造(ここで、「A」は、二峰性アイオノマーHF活性層に相当し、「B」は、HF不活性または弱HF活性層に相当する)を有してもよい。「ABC」型構造体(ここで、「C」は、「B」とは異なるHF不活性または弱HF活性層である)もまた好適である。少なくとも1つの層、好ましくは少なくとも1つの露出層が二峰性アイオノマー層であるという条件で、任意の数の異なるまたは繰り返し層が考えられる。
【0105】
HF活性フィルムおよび物品は多くの用途を有する。例えば、HF活性フィルムの2シートを層化するか、または同じHF活性フィルムを折り重ね、シートの周辺周りにHFシールすると、バッグまたはパウチが形成される。かかるバッグは、流体配送バッグまたは液体廃棄物収集バッグなどの医療用途、液体貯蔵、温パックおよび冷パック用などのゲルパッケージ、ならびに飲料貯蔵パウチに好適である可能性がある。
【0106】
有用な用途は、衣類または履物上へ積層することができる製造設計向けである。二峰性アイオノマーフィルムは、望ましい耐温度性、耐水性および耐洗剤性、柔軟性、弾性、および布および織物への接着性を示し、接着芯入れ、縫い目テーピングまたは耐水性コーティングなどの衣類用途向けにそれらを好適なものにする。
【0107】
HF活性フィルムは、短繊維がHF活性フィルムの表面に接着させられた、フロック加工フィルムであってもよい。例えば、HF活性フロック加工フィルムは、フロック加工繊維がHF活性フィルムから遠く離れた接着剤の表面上に配置された状態で、HF活性フィルムの表面上に配置された液体接着剤を含有してもよい。接着剤を乾燥または硬化させると、フロック加工繊維がHF活性フィルムに接合する。好適なフロック加工繊維には、長さが約0.5mm以上であってもよいポリエステル、ナイロン、レーヨン、または他の天然もしくは合成繊維が含まれる。好適な液体接着剤には、水性および溶剤希釈型の熱可塑性または熱硬化性接着剤が含まれる。かかる接着剤は多くの場合、アクリル、ウレタン、エポキシ、またはポリ酢酸ビニル化学をベースにしている。望ましくは、フロック加工フィルムは、一表面上にフロッキング、および反対面上にHF活性二峰性アイオノマー層を含有する。HF溶接は、フロック加工フィルムを、衣服などの、織基材または不織基材に接着させてもよい。HF活性フロック加工フィルムのための特に有用な用途は、フロック加工フィルムデザインがその上にHF溶接された運動衣または装飾衣の製造である。フロック加工フィルムは一般に、フロック加工面上でフェルト様またはベロア様感触を有する。
【0108】
100℃より高い重量平均溶融温度を有するHF活性フィルムは、特に織布または不織布への、自動車内装積層を含む高温用途向けに特に好適である。例えば、自動車遮光板は、フィルム/布組成物が堅いコアの周りにHF溶接された状態で、フィルム/布組成物を形成するために布に熱積層されたHF活性フィルムを含んでもよい。さらに、フィルムを含有するフィルム/布ラミネートは、ヘッドライナー構造体、ドアパネル、座席カバー、およびカーペットマットへ加工されてもよい。
【0109】
二峰性アイオノマー組成物は、PVCまたはTPUのハロゲンを含まない代替品としての機能を果たす可能性がある。二峰性アイオノマー組成物は、例えば、運動靴用途向けの装飾フィルムに好適である。二峰性アイオノマー組成物の別の用途は、コーティング布用途における可塑化またはフレキシブルPVCの代替品としてである。PVCおよびTPUと比較して、二峰性アイオノマー組成物は、長時間にわたって黄変が著しくより少ない。
【0110】
二峰性アイオノマー組成物を含むフィルムおよびラミネート構造体は、消費財のための多種多様な包装に使用されてもよい。それらは、ラップ、パッケージライナー、パッケージ挿入物、蓋およびテープとして使用されてもよく、バッグ、パウチおよび他の加工構造体へ成形される。
【0111】
二峰性アイオノマー組成物を含むフィルムは、包装材料を得るために箔、紙、板紙または不織繊維材料などの基材に積層されてもよい。フィルムは、二峰性アイオノマー組成物を含む面が包装材料で面層として残るように、基材に積層されてもよい。包装材料はまた、包装材料を提供するために、その中の製品に関する情報を消費者に提供するために、および/またはパッケージの心地良い外観を提供するために、例えば、印刷、エンボス化、および/または着色によってさらに処理されてもよい。
【0112】
二峰性アイオノマー組成物は、食品チップ、クッキー、粉末および顆粒などの摩耗製品による引っ掻きから容器の内部を保護するための内層として有用である可能性がある。例えば、二峰性アイオノマー組成物は、「複合缶」、すなわち、少なくとも1つのはめ込み式閉端および任意選択的に開閉可能な、再シール可能なはめ込み式端付きボール紙チューブの内側に適用されてもよい。かかる複合缶は、ポテトチップおよびコーンチップなどの食品品目を包装するために使用される。二峰性アイオノマー組成物を含む表面層付きフィルムは、二峰性アイオノマー層がパッケージの内層であるようにパウチ、バッグ等々のパッケージへ加工されてもよい。
【0113】
他の場合には、二峰性アイオノマー組成物は、パッケージの外表面をハンドリングによる引っ掻きから保護するために、およびパッケージにソフトな感触を提供するためにパッケージの外層として使用されてもよい。例えば、クリーム、ローション、シャンプー、練り歯磨き、香料等々の化粧品ならびにパーソナルおよびヘルスケア製品は、外層が二峰性アイオノマーを含む状態で容器に包装されてもよい。容器には、ジャー、ボトル、バイアル、チューブなどが含まれる。積層チューブは、練り歯磨きおよびシャンプーなどのパーソナルケア製品を包装するために有用である。積層チューブは、フラットシートを開口端中空シリンダーへ成形し、波形にし、シリンダーの一端をシールし、他端を閉鎖装備品へシールすることによって製造され、ここで、装備品は、スクリューキャップまたはフリップキャップなどの閉鎖手段を有してもよい。
【0114】
印刷され、着色され、顔料着色され、エンボス化され、テクスチャー加工されているなどの二峰性アイオノマー組成物を含むフィルムに注目すべきである。かかるフィルムは、屋内標識、屋外標識、車両標識、広告用掲示板などを含む、看板または装飾表示に有用である。二峰性アイオノマーフィルムの良好な印刷性ならびに金属(例えばアルミニウム)および布への接着性は、これらの目的のために有用である。二峰性アイオノマーフィルムの高い透明性はそれらを、かかる表示においてバックライト付きであるために特に有用であるものにする。
【0115】
幾つかの造形品は、熱可塑性フィルムもしくはシートがその軟化温度より上に加熱され、所望の形状へ成形される、熱成形プロセスによって製造されてもよい。フィルムまたはラミネートのこの成形可能なシートは通常、成形ウェブと言われる。様々なシステムおよび装置が熱成形プロセスに用いられ、成形ウェブの所定の形状への適切な成形を提供するために真空支援およびプラグ支援構成要素が多くの場合に同伴する。熱成形プロセスおよびシステムはよく知られている。
【0116】
熱成形品は、材料の単層もしくは多層シートがトレイ、コップ、缶、バケツ、タブ、箱またはボウルなどの凹面を形成する形状を有してもよい。フラットシートは、滞留時間(例えば30〜40秒間)の間ずっとシートの上方および下方から(例えば315℃黒体放射体によって)加熱され、その時間中にシートの表面温度は、シートの名目成形温度に向かって上昇するであろう。熱サイクルの終わりに、シートは直ちに、加熱されていない、場合によっては冷却されていてもよい空洞金型の上方の適当な位置に置かれ、金型周辺に固定される。短期間(例えば2秒)の間の金型内からの真空は、シートを金型中へ引き入れる。冷却期間後に、熱成形品は金型から取り出される。あるいはまた、プラグが軟化シートを空洞金型中へ押し込んでもよい。どちら方法も、シートが元々有したものより薄い断面および大きい表面積を有する形状へシートが延伸されているかまたは引っ張られている物品を提供する。
【0117】
熱成形品は多くの場合、様々な消費財を包装するための容器として使用される。熱成形品はまた、物品に形状マッチするカバー、例えばキーボード用のソフトな保護カバーを製造するために有用である可能性がある。カバーは、キーボードの形状に実質的に適合し、柔軟性があり、その結果それはタイピング中に適所にとどまる可能性がある。
【0118】
別の形状適合物品は、塗料またはクリアコート仕上げの切れ端または引っ掻き傷などの、道路デブリからの損傷を防ぐために車両の前面に取り付けられる保護カバーである。二峰性アイオノマー組成物の透明性、高光沢性、非黄変性は、それが仕上げを不鮮明にすることなくそれを保護するので、かかる用途向けにそれを非常に好適なものにする。カバーは、二峰性アイオノマー組成物のシートから成形、切断、折り重ね、接合、熱成形などの様々な組み合わせによって製造されてもよい。
【0119】
容器、クロージャおよびフィルムなどの、二峰性アイオノマー成形品は、食料品、化粧品、ヘルスおよびパーソナルケア製品、医薬品等々の商品を包装するために有用である。
【0120】
容器には、トレイ、コップ、缶、バケツ、タブ、箱、ボウル、ボトル、バイアル、ジャー、チューブなどが含まれる。容器は、水、ミルク、および他の飲料などの液体を包装するために有用である可能性がある。あるいはまた、それは薬、医薬品またはパーソナルケア製品を含有してもよい。ボトルに包装されてもよい他の液体には、食用油、シロップ、ソース、および離乳食などのビューレなどの食品が含まれる。粉末、顆粒および他の流動性固体もまたボトルに包装されてもよい。
【0121】
ボトルプリフォームとして好適な射出成形中空品は、成形品の例である。ブロー成形品の例には、ブローンボトルなどの容器が挙げられる。ボトルおよび容器工業では、射出成形プリフォームのブロー成形は、広く受け入れられてきた。二峰性アイオノマー組成物を含む外層は、ソフトな感触および耐引っ掻き性をボトルに提供する。
【0122】
ボトルプリフォームの射出成形は、様々な層の溶融材料を金型中へ運び、溶融材料を冷却させることによって行われてもよい。この成形は、開口端と閉端とが中空容積を包含した状態で実質的にチューブである物品を提供する。その後のブロー成形後に、開口端はボトルのネックを提供し、閉端はボトルのベースを提供する。この成形は、開口端での様々なフランジおよび突出部が強化筋および/またはクロージャ手段、例えばキャップ用のスクリュー細線を提供するようにであってもよい。多層プリフォーム成形のために、溶融材料は、それらが同心層の層流を形成するように輪状ダイから金型中へ射出されてもよい。溶融材料は、中間層用の材料が入る前に二峰性アイオノマー外層および内層用の材料が金型空洞に入り、空洞の端から端まで層流の最先端を形成するように金型中へ導入される。ある期間、層は、層状の同心層流で金型空洞に入る。次に、中間層用の材料の流れは中止され、外層および内層用の材料が層流の後縁を提供する。流れは、全体空洞が満たされるまで続き、後縁がそれ自体シールするかまたは融合してプリフォームの閉端を形成する。
【0123】
ボトルを製造するために、プリフォームを再加熱して、それが所望の形状をとるように造形金型中での同時軸延伸およびブローイングによって二軸膨張してもよい。ネック領域はブロー成型の影響を受けないが、プリフォームの底部および特に壁部は延伸されて薄くなる。
【0124】
押出ブロー成形が二峰性アイオノマー組成物の外層を有する容器を製造するために用いられてもよい。この技法では、溶融ポリマーの多層流がチューブ状の形状で連続的に押し出される。チューブが所望の長さに達したとき、金型は閉まり、パリソンはカットされる。パリソンのボトムは挟まれて閉じられ、トップは、保持ジョーのセットで適所に保持される。容器形成は、容器の金型側で真空を適用し、容器の内部へ空気を吹き込み、パリソンを金型の形状に適合させることによって完成される。任意選択的に、容器は、その形成中に製品で満たされ、シールされてもよい(ブロー−充填−シールプロセス)。
【0125】
成形品の他の例には、容器用の射出成形または圧縮成形キャップまたはクロージャが挙げられる。ほとんどの容器は、容器からのまたは容器中への漏洩から容器の内容物を十分にシールするためのクロージャまたはキャップを有する。多くの場合に、キャップは、消費者が容器の内容物にアクセスするので、繰り返し取り外しおよび再取り付けのために設計されている。二峰性アイオノマーの表面層は、かかるキャップおよびクロージャにソフトな感触を提供する。
【0126】
クロージャまたはキャップは、射出成形または圧縮成形によって製造されてもよい。キャップは、トップと容器のネック周りを閉鎖する従属スカート(depending skirt)とからなってもよい。キャップは、スクリュークロージャおよび/またはスナップクロージャを容器に提供する連続または不連続の細線を含んでもよい。それらはまた、分配特性、改ざん明証特性および子供用安全特性を組み込んでもよい。他の装飾または機能特性もまた存在してもよい。それらはまた、他の材料(例えば、金属蓋部分または二峰性アイオノマー以外のプラスチック材料を利用する部分を有するキャップ)との組み合わせを含んでもよい。内張なしのキャップは、二峰性アイオノマー組成物から成形されてもよい。あるいはまた、キャップは、キャップのシェル中へ挿入されている別個の内張を有してもよい。内張は、キャップのシェル中へ圧縮成形されてもよい。他のクロージャには、ワインボトルまたは香料ボトルなどの容器の開口部中へ挿入されるプラスチックストッパーまたは「コルク」が含まれる。
【0127】
オーバーモールディングでは、二峰性アイオノマー組成物は、金属またはプラスチックピースなどの、基材の少なくとも一部一面にまたは周りに成形される。基材は、射出成形機の金型工具内に置かれる。金型工具は、閉じられるとき、射出成形する二峰性アイオノマー材料でのオーバーモールディングに備えて基材を受け取るための大きさに作られる空洞を画定する。金型工具の内壁は、最終オーバーモールドピースの形状を画定する。金型工具は、射出プロセスの間ずっと工具内に基材を適当な位置に置き、固定するために役立つ、内向きに突出するピンを含んでもよい。ピンは、射出サイクルの終わり近くに圧力応答ピン調整装置によって金型工具中へ引っ込められる。スプルーもまた金型工具に存在し、それを通って射出成形材料が射出される。
【0128】
加熱されている、場合によっては可塑化されていてもよい二峰性アイオノマー成形材料が射出成形機によって圧力下に射出されるとき、成形材料はスプルーを通って流れ、空洞を満たす。空洞内の内圧は、金型空洞が完全に満たされたときに増加する。基材を空洞内の適当な位置に置くピンは、感圧ピン調整装置に連結されている。金型空洞中の圧力が所定のレベルに達したとき、ピンは金型空洞壁中へ引っ込められ、成形材料がピンによって空けられた空間を満たす。オーバーモールディングプロセスが完了すると、金型工具は開けられ、完成造形品が取り出される。
【0129】
生じた物品は、基材の少なくとも一部一面に二峰性アイオノマー組成物のケーシングを有する。オーバーモールドケーシングは、完成アセンブリの所望の外部形状および基材の形状に依存して、約0.005インチから1インチ超の肉厚を有してもよい。ケーシングの肉厚は一様であっても、基材周りの様々な場所で変わってもよいが;ほとんどの用途向けには、肉厚は0.5インチ未満または0.1インチ未満であってもよい。
【0130】
異形材は、特定の形状を有することで、および異形材押出として知られるそれらの製造方法で定義される。異形材は、異形材は、熱可塑性単層メルト−フローもしくは少なくとも1つの層が二峰性アイオノマー組成物を含む多層メルトフローを、所望の形状を維持することができる押出物を形成するダイのオリフィスを通して押し出すことによって始まる溶融押出プロセスによって加工される。押出物は、所望の形状を維持しながらその最終寸法へ引っ張られ、次に形状を固定するために空気または水浴中で急冷され、それによって異形材を生成してもよい。簡単な異形材の形成では、押出物は、いかなる構造支援もなしに形状を維持する。より複雑な形状では、支持手段が形状保持に役立つために用いられてもよい。好ましくは、二峰性アイオノマー組成物が異形材の外層を占めて異形材のソフトタッチの耐引っ掻き性表面を提供する。
【0131】
異形材の共通形状は管材料である。液体および蒸気の包装および輸送のための管材料アセンブリはよく知られており、管材料は、流体および添加剤とほぼ絶えず接触していてもよい。管材料は、消耗流体、例えば飲料の包装、貯蔵および輸送に、ならびに医療用途に、例えば静脈内治療用の液剤の包装、貯蔵および輸送に使用されてもよい。他の異形材押出品には、二峰性アイオノマー組成物を含むジャケット付きワイヤおよびケーブルが含まれる。
【0132】
包装材料としての使用に加えて、造形品または布は、医療、ヘルスケアおよびパーソナルケア用途、食品の調理および貯蔵、衣類および衣服、建設および工業用途になど、ソフト感触および耐引っ掻き特性が望ましい多種多様な用途に使用されてもよい。
【0133】
コーティング布は、衣類、掛布、建物備え付け家具、テント、防水布、自動車内装、旗および標識、ならびに高い耐摩耗特性を必要とする他の用途のために使用されてもよい。衣類および衣服用途には、レインコートなどの保護衣、スポーツウェア、靴および靴内張、帽子、ヘルメット、腕時計バンドなどが含まれる。コーティング構造体はまた、少なくとも1つの二峰性アイオノマー層とギフト包装紙およびギフト箱などの印刷または非印刷紙または板紙層とを含んでもよい。
【0134】
家庭およびパーソナル品目には、ヘアセッティングおよび整髪用具、櫛および他のパーソナルケア用具、メガネ、電話機、コンピューターマウス装置およびマウスパッド、キーパッド、キーパッドカバー、ビデオディスプレイ、筆記用具、計算機、カメラ、ペール、ごみ容器、ゲームボードおよびピース、玩具、クレジットカード、本、財布、札入れおよびカードケース、傘の柄、ならびに家具が含まれる。二峰性アイオノマー組成物は、冷蔵庫、食器洗い機、洗濯機、ドライヤー、電子レンジ等々の家庭電化製品用の保護表面を提供する可能性がある。
【0135】
耐摩耗性のコート構造体は、サッカーボールスキンなどのスポーツ用品、室内装飾品を含む家具、履物、および本の表紙ならびにバインダーにおける人工皮革のために使用されてもよい。人工皮革は、薄い保護表面層、印刷された、テクスチャー加工された熱可塑性樹脂(PVCなどの)層、熱可塑性樹脂(PVCなどの)発泡体層および布層を含んでもよい多層構造体である。本明細書に記載される二峰性アイオノマー組成物は、保護表面層として使用される。
【0136】
二峰性アイオノマー組成物は、建造物に使用される木材、金属、石、セラミック、およびガラス基材にソフトな保護表面を提供する。建造物およびビルディング室内装備品用途には、壁紙、床タイルまたはシート、床マット、羽目、窓ガラス、ならびに他の表面用に使用されるフィルム、シートおよび布が含まれる。他のビルディング室内装備品には、ロッカー、家畜小屋、納屋、医療処置室など用の内張または掛布、棚および引き出し内張、シャワーカーテン、床マットなどが含まれる。テーブルトップ、カウンターおよび他の表面は、二峰性アイオノマー表面層で加工されてもよい。造形品は、複合製材などの建材用に使用されてもよい。他の造形品には、ソフトな感触および耐引っ掻き性が望ましい、触れられるまたは取り扱われる便座、ドアの取っ手および他のハードウェアなどの装備品が含まれる。
【0137】
工業用途には、ハンドル、取っ手、ノブ、工具の取っ手など、およびワイヤなどの、手と接触する機械および車両部品が含まれる。オーバーモールディングは、かかる物品を製造するための有用なプロセスである。
【0138】
本発明はまた、二峰性アイオノマー組成物を第1基材および任意の第2基材の表面の少なくとも一部に接合させるための高周波電磁放射線の使用方法を提供する(HF溶接)。本方法は、多層物品を製造するために有用である。
【0139】
二峰性アイオノマー組成物は、単層もしくは多層フィルムもしくはシート、粉末または顆粒の形態で使用されてもよい。
【0140】
本方法は、二峰性アイオノマー組成物の表面を、HF溶接の前に別の基材の表面の少なくとも一部に、直接または介在層を介して、接着させる工程を含んでもよい。
【0141】
接着の方法には、押出積層、押出コーティング、共押出積層および共押出コーティング、積層、カレンダー加工積層、接着剤支援積層、熱積層、シーリング、ホットロール積層を用いる熱溶接、フレーム積層、およびヒートシーリング、RF溶接、粉末散乱、粉末ドットならびにペーストドットプロセスが含まれる。
【0142】
基材は独立して、熱可塑性フィルムおよびシート、気泡質発泡体、織布、編布および不織布、紙、パルプおよび板紙製品、木材および木材製品、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革および皮革様製品、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに二峰性アイオノマー組成物からなる群から選択される。再び、好適な基材は、上により詳細に記載されている。
【0143】
本方法にはまた、二峰性アイオノマーフィルムが第1基材であり;二峰性アイオノマーフィルムの2つのシートを層状にする工程、または同一の二峰性アイオノマーフィルムをそれ自体上に折り重ねる工程;および高周波電磁放射線を適用することによってシートの周辺をシールしてバッグまたはパウチを形成する工程を含む方法が含まれる。
【0144】
本発明は、防水布、旗、標識、室内装飾品、レインコートなどの防水衣を含む衣類、保護掛布、自動車内装内張、映写膜、皮革商品、アップリケ、装飾フィルム、装飾ラップ、サッカーボールカバーを含む運動競技用器材用のカバーまたは保護表面、装飾箱、本の表紙、バインダー、管材料、柔軟および硬質パッケージを含むパッケージング、バッグ、医療液を含有するためのパウチ(IVバッグ)、熱成形品、ワイヤ、スキー、スキー靴、スノーボードおよびスケートボード、防水布、旗、標識、室内装飾品、履物、衣類、防水衣、レインコート、保護掛布、保護カバー、壁紙、ブラインドまたはカーテン、キーボード保護カバー、自動車内装内張、映写膜、皮革商品、アップリケ、装飾フィルム、履物用の装飾パッチ、装飾ラップ、サッカースキンを含む運動競技用器材用のカバーまたは保護表面、装飾箱、本の表紙、バインダー、管材料、フレキシブルパッケージング、硬質パッケージング、バッグ、医療液を含有するためのパウチ、熱成形品、ワイヤ、および実質的に本明細書に示されるおよび記載されるような任意の他の製品を含む、上記の二峰性アイオノマー組成物を含む表面層を含む製品をさらに提供する。
【実施例】
【0145】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。本発明を実施するために現在考えられる好ましいモードを記述する、これらの実施例は、本発明を例示することを意図し、限定することを意図しない。
【0146】
使用される原材料
ハイコポリマーについてこれらの実施例で用いられる省略形を上の表Aに、ローコポリマーについてのそれらを表Bに、アイオノマーについてのそれらを表Cに特定する。
【0147】
中和剤のコンセントレートには:
NA−1:ZnOと酢酸亜鉛とのブレンド
NA−2:HC−3中の50重量%のMg(OH)2
が含まれる。
【0148】
フィルムは、28mm二軸スクリュー押出機で調製し、プラークは、射出成形機で調製した。
【0149】
実施例1〜8
90:10のブレンド比でのHC−3とLC−2とのブレンドを、単軸スクリュー押出機を用いてNA−1で70%まで中和して1.35のMIを有する二峰性アイオノマー(BMI−1)を調製した。80:20のブレンド比でのHC−3とLC−2とのブレンドを、単軸スクリュー押出機を用いてNA−2で中和して4.5のMIを有する二峰性アイオノマー(BMI−2)を調製した。BMI−1を、下の表1にまとめられるようにI−3、I−4および/またはBMI−2と混合した。これらの組成物を、実施例1〜8に示される2〜50ミル厚さのフィルムもしくはシートへ押出ブローンまたはキャストした。これらのフィルムを、下記のようにRF溶接性および耐引っ掻き性について試験した。
【0150】
RF溶接
無線周波(RF)溶接研究は、10kWの最大出力を有し、27MHzで動作するSolidyne Industrial RF Generator(発生器)を用いることによって行った。2つの別個のプラスチックフィルムシートを2つの電極間に置いた。これらの電極を2インチ直径ラムで60psiの圧縮空気を使って押し付けた。電界強度を、電極間の電圧を上げるかまたは下げることによって2.0kV〜9.5kVに調節した。これらの実施例では、0の電極ギャップ(フラット)、90のカウンター設定および85ミルKapton緩衝剤を使用して、RFエネルギーを6.4kVで6または8秒の溶接時間フィルムサンプルに適用し、次に溶接サンプルを4秒の滞留時間圧力下に一緒に保持し、溶融ポリマーを固めた。HFシールされたフィルムの2つの層を、T−剥離試験を用いて剥離してシール強度を評価し、次の通り格付けした:
良好:2つのフィルムは、シールの破壊またはフィルム引裂なしに引き離すことはできない。
不十分:2つのフィルムは容易に引き離すことができる。
なし:2つのフィルムはHF処理下にシールしなかった。
RFシール研究の結果を表1に報告する。
【0151】
【表4】

【0152】
耐引っ掻き性
試験フィルムまたはプラークを、ASTM D7187に従ってCSM Instruments(Switzerland)によって製造されたナノ−引っ掻き試験機を用いて耐引っ掻き性について試験した。10および50マイクロニュートンの力を、プラークの表面上を引っ張られる20μm直径の圧子先端を持った圧子に適用した。この装置は、引っ掻きマークが表面上に目に見えるニュートン単位の力を測定する。残存深さを、初期マイクロ引っ掻き試験から2分の緩和後に測定した。旗材料からのTPU−コーティング布(C1)およびレインコート材料からのTPU単層フィルム(C2)の市販サンプルを比較サンプルとして使用した。各材料の2つの試験についての結果を表2および3に報告する。
【0153】
【表5】

【0154】
【表6】

【0155】
実施例9〜10
90:10のブレンド比での(実施例9)および80:20のブレンド比での(実施例10)HC−1とLC−3とのブレンドを単軸スクリュー押出機で、NA−2で中和して下に示される中和のレベルの二峰性アイオノマーを調製した。
【0156】
【表7】

【0157】
実施例11〜14
90重量%のアイオノマーI−1と10重量%のLC−3とのペレットブレンドを、二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドし、NA−2で70%の名目中和レベルまで中和して二峰性アイオノマーBMI−3を調製した。90重量%のアイオノマーI−2と10重量%のLC−4とのペレットブレンドを、二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドし、Na2CO3コンセントレートで60%の名目中和レベルまで中和して二峰性アイオノマーBMI−4を調製した。ブレンドを次に、二峰性アイオノマー、すなわちBMI−3、BMI−4ならびに従来型アイオノマー、すなわちアイオノマーI−1およびアイオノマーI−2の50:50比で、二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドすることによって調製した。
【0158】
【表8】

【0159】
実施例15〜17
90:10比での11%MAAを含有するNaおよびZnアイオノマー、すなわち、それぞれアイオノマーI−5およびアイオノマーI−6と、LC−3とをベースにする二峰性アイオノマーを、Na2CO3コンセントレートまたはNA−1を使用して上の実施例と類似のブレンディング/中和条件下に二軸スクリュー押出機で調製した。
【0160】
【表9】

【0161】
実施例18
90:10重量比でのHC−2とLC−3とのブレンドを、単軸スクリュー押出機で、NA−2で中和して2g/10分のMIおよび63%の名目中和レベルの二峰性アイオノマーを調製した。
【0162】
実施例19
90:10重量比でのアイオノマーI−7とLC−4とのブレンドを、単軸スクリュー押出機で、NA−1で中和してBMI−7を得た。
【0163】
実施例20
90:10重量比でのアイオノマーI−8とLC−4とのブレンドを、単軸スクリュー押出機で、Na2CO3コンセントレートで中和してBMI−8を得た。
【0164】
実施例21〜24
HC−1を単軸スクリュー押出機で、Mg(OH)2コンセントレートNA−2で部分中和し(約51%)、その後90:10(実施例21)および85:15(実施例22)比でLC−1とブレンドし、およそ51%中和を維持するためにNA−2でさらに中和した。
【0165】
HC−1はまた、単軸スクリュー押出機で、NA−1で部分中和し(約51%)、その後90:10(実施例23)および85:15(実施例24)比でLC−1とブレンドした。
【0166】
実施例25〜28
実施例8の組成物を、26インチの型枠開口部、2.25インチのプラグ、1.5インチのブレード、−0.5インチのリード、およびエアギャップ6インチで、CLOEREN EBR 40−インチスロットダイを用いてコロナ処理紙上へ押出コートした。マット仕上げチルロールを、60psiのニップロール圧力でのEDLON−TEFLON圧力ロールで、70°Fに設定した。次の異なる設定条件を用いた:
4.0kWコロナ処理付きで300フィート/分のライン速度での450°F樹脂溶融温度で1.0および0.5および0.25ミル厚さ。
5.3kWコロナ処理付きで150フィート/分のライン速度での550°F樹脂溶融温度で1.0ミル厚さ。
【0167】
この方法はスムーズに進行し、紙への組成物の良好な接着と共に、満足できる手触りを有するコート紙を生成した。
【0168】
実施例29〜31
実施例1および3の組成物を、26インチの型枠開口部、2.25インチのプラグ、1.5インチのブレード、−0.5インチのリード、およびエアギャップ6インチで、530°FのCLOEREN EBR 40−インチスロットダイを用いてコロナ処理(0.9kW/平方フィート)布上へ押出コートした。マット仕上げチルロールを、60psiのニップロール圧力でのEDLON−TEFLON圧力ロールで、70°Fに設定した。ライン速度は70フィート/分であった。組成物を5.0ミル厚さでコートした。
【0169】
コーティング布を、(1)75重量%の実施例1と25重量%のアイオノマーI−9との組成物の2.0ミル(0.050mm)層と;
(2a)20重量%の、9重量%のマレイン酸水素エチルとのエチレンコポリマー(8g/10分のMI)と80重量%の、20重量%のメチルアクリレートとのエチレンコポリマーとの組成物(ここで、この組成物は1.8重量%の共重合マレイン酸水素エチルを有する)の8.0ミル(0.203mm)層;
または(2b)ブレンドが15.4g/10分のMIを有する、60重量%の、27重量%のn−ブチルアクリレートとのエチレンコポリマー(MI=4g/10分)と、20重量%の、35重量%のn−ブチルアクリレートとのエチレンコポリマー(MI=40g/10分)と、20重量%の、9重量%のマレイン酸水素エチルとのエチレンコポリマー(8g/10分のMI)との組成物の8.0ミル(0.203mm)層
のどちらかとの
布上への共押出によって調製して二峰性アイオノマー組成物のスキン層および(2a)または(2b)のどちらかの中間バルク層が布構造体に接着した3層構造体を得た。
【0170】
共押出コーティングを、Sano 4−押出機、5層共押出コーティングおよび共押出キャストフィルムラインを用いて行った。層(1)用の組成物の成分を、水分吸収を最小限にするために使用直前にペレットブレンドした。組成物(1)を1つの押出機に入れ、フラットダイを通過させて2.0ミル(0.050mm)層を得た。組成物(2a)または(2b)を2つの押出機に入れ、それぞれをフラットダイに供給して4.0ミル(0.102mm)層(合計8.0ミル(0.203mm))を得た。クラフト紙をバッキング層として使用し、布ドロップシートを、共押出コーティング中にクラフト紙とポリマーカーテンとの間に置いた。多層構造体を、層(1)と接触したチルローラーのニップに通して最終コーティング布構造体を得た。
【0171】
幾つかの異なるタイプの布サンプルを基材として使用した。サンプルを、重量(gm/平方メートルまたはポンド/平方フィート)、織り方または不織、およびサイジング方法の1つ以上の点で変えた。基材タイプには、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ポリプロピレン織布、ポリエステル織布、および綿織布、ナイロン織布、およびポリエステル/綿ブレンド織布が含まれた。押出コーティングおよび共押出コーティングプロセスはスムーズに進行し、布へのコーティングの良好な接着と共に、満足できる手触りを有するコーティング布を生成した。
【0172】
追加の実施例組成物は、表4にまとめられるように調製した。実施例32は、従来型アイオノマーとブレンドされたときに他の実施例によって経験される熱履歴を再現するために2回押出機に通した。キャストフィルムを調製し、Graves Tear(引裂)をASTM手順D1004に従って評価した。Internal Haze(内部曇り度)をASTM手順D1003(1992年改訂)に従って測定した。MD=縦方向、TD=横方向である。キャストフィルムの引張特性を表5にまとめる。
【0173】
【表10】

【0174】
【表11】

【0175】
組成物をまた厚さ0.125インチの標準試験プラークへ射出成形し、幅0.5インチおよび長さ3〜5インチの検体へカットした。サンプルを、ASTM実験室条件(73°Fおよび50%相対湿度)で2週間順化させた。ショア(Shore)硬度、曲げ弾性率およびTabor摩耗を測定した(表6)。
【0176】
【表12】

【0177】
本発明の好ましい実施形態の幾つかが上に記載され、具体的に例示されてきたが、本発明がかかる実施形態に限定されることは意図されない。様々な修正が、以下の特許請求の範囲に記述されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行われる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の形状が球形ではないという条件で、単層フィルム、シートもしくはチューブ、多層フィルム、シートもしくはチューブ、または別の多層構造体である物品であって、前記物品が二峰性アイオノマー組成物を含む少なくとも1つの表面層を有し、前記二峰性アイオノマー組成物が、
(i)1種以上のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3〜C8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、酢酸ビニル、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択される軟化コモノマーの共重合単位を表し、Xの量はE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量はE/X/Yコポリマーの0〜約45重量%であり、E/X/Yコポリマーは80,000〜500,000Daの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する)を含むハイコポリマーと;
(ii)1種以上のE/Zコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、Zはアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位を表し、Zの量はE/Zコポリマーの約3〜約25重量%であり、E/Zコポリマーは2,000〜30,000Daの範囲のMwを有する)を含むローコポリマーと
を含み、
ここで、E/X/YコポリマーおよびE/Zコポリマー中の合わせた酸性基の少なくとも35%が名目上中和されてカルボン酸塩を形成する物品。
【請求項2】
前記ハイコポリマーと前記ローコポリマーとを合わせた総重量を基準にして、ハイコポリマーの重量%が約40〜約95重量%であり、ローコポリマーの重量%が約5〜約60重量%であり、かつ、前記酸基の約40〜100%が名目上中和されて1種以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含むカルボン酸塩を形成する請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記組成物中の前記金属カチオンの少なくとも20当量%が亜鉛カチオンである請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記1種以上のE/X/Yコポリマーの少なくとも1種が、少なくとも1種のE/X/Yコポリマーの総重量を基準にして、約2〜約25重量%のXと約45重量%以下の有限量のYとを含む請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記Xの量がE/X/Yコポリマーの約5〜約25重量%であり、前記Yの量がE/X/Yコポリマーの約10〜約45重量%である請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記Yの量が前記ハイコポリマーの0%である請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記E/Zコポリマー含有率が、前記ハイコポリマーと前記ローコポリマーとを合わせた総重量を基準にして約5〜約40重量%の範囲である請求項1に記載の物品。
【請求項8】
(a)前記二峰性アイオノマー組成物と(b)他のアイオノマー、他のエチレンコポリマー、無水マレイン酸および/または無水マレイン酸モノエステル含有ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマ−、ポリ塩化ビニルおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂とから本質的になる熱可塑性組成物を含む請求項1に記載の物品であって;前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂の量が前記熱可塑性組成物の総重量を基準にして約1〜約60重量%である物品。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が前記他のアイオノマーを含み、前記他のアイオノマーがエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーであり、前記(メタ)アクリル酸が前記ポリマーの2〜30重量%であり、かつ、酸部分の約40〜100%が中和されて1種以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含むカルボン酸塩を形成する請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記二峰性アイオノマー組成物を含む表面層を含む多層フィルムを含む請求項1に記載の物品であって、(i)または(ii)と同じものまたはそれらとは異なるものである1種以上のポリマー樹脂を含む少なくとも1つの追加の層をさらに含み、前記ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマー、エチレンアルキルメタクリレートコポリマー、エチレン酸コポリマー、エチレン酸アイオノマー、酸無水物グラフト変性ポリマー、およびエチレンと、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8の不飽和酸、ならびに環状酸無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8の不飽和酸のモノエステルおよびジエステルからなる群から選択されるコモノマーとの共重合単位を含むコポリマーからなる群から選択される、物品。
【請求項11】
前記二峰性アイオノマー組成物を含むまたはそれから製造された少なくとも1つの表面層と、基材の形状が球形ではないという条件で、熱可塑性フィルムおよびシート、気泡質発泡体、織布、編布および不織布、紙、パルプおよび板紙製品、木材および木材製品、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革および皮革様製品;ならびに熱可塑性または熱硬化性プラスチックからなる群から選択される基材を含む少なくとも1つの追加の層とを含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項12】
(1)請求項1に記載の二峰性アイオノマー組成物の第1表面を第1基材の表面の少なくとも一部と接触させ、および任意選択的に前記二峰性アイオノマー組成物の第2表面を第2基材の表面の少なくとも一部と接触させる工程と;
(2)前記二峰性アイオノマー組成物に高周波電磁放射線、および任意選択的に圧力、熱、またはそれらの組み合わせを適用し、それによって前記二峰性アイオノマー組成物を軟化させるかまたは溶融させる工程と;
(3)前記軟化したまたは溶融した二峰性アイオノマー組成物をそのまま固め、それによって前記二峰性アイオノマー組成物の第1表面を前記第1基材に接合し、および前記二峰性アイオノマー組成物の第2表面を、存在する場合、前記第2基材に接合する工程と
を含む多層物品の製造方法であって、
前記第1基材および前記任意の第2基材が、熱可塑性フィルムおよびシート、気泡質発泡体、織布、編布および不織布、紙、パルプおよび板紙製品、木材および木材製品、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革および皮革様製品、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに請求項1に記載の二峰性アイオノマー組成物からなる群から独立して選択される方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記二峰性アイオノマー組成物の第2表面を、工程(1)の前に、直接または介在層を介して、第3基材の表面の少なくとも一部に接着させる工程を含み、ここで、第2基材が存在せず、前記第3基材が、熱可塑性フィルムおよびシート、気泡質発泡体、織布、編布および不織布、紙、パルプおよび板紙製品、木材および木材製品、金属、ガラス、石、セラミック、および皮革および皮革様製品;熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに前記二峰性アイオノマー組成物と同じものまたはそれとは異なるものであってもよい第2二峰性アイオノマー組成物からなる群から独立して選択され、前記第2二峰性アイオノマー組成物が、
(i)1種以上のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3〜C8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、酢酸ビニル、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択される軟化コモノマーの共重合単位を表し、Xの量はE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、Yの量はE/X/Yコポリマーの0〜約45重量%であり、E/X/Yコポリマーは80,000〜500,000Daの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する)を含むハイコポリマーと;
(ii)1種以上のE/Zコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、Zはアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位を表し、Zの量はE/Zコポリマーの約3〜約25重量%であり、E/Zコポリマーは2,000〜30,000Daの範囲のMwを有する)を含むローコポリマーと
を含み;
ここで、E/X/YコポリマーおよびE/Zコポリマー中の合わせた酸性基の少なくとも35%が名目上中和されてカルボン酸塩を形成する方法。
【請求項14】
前記接着工程が、押出積層、押出コーティング、共押出積層、共押出コーティング、積層、カレンダー加工積層、接着剤支援積層、熱積層、シーリング、ホットロール積層を用いる熱溶接、フレーム積層、ヒートシーリング、無線周波または高周波溶接、水性分散系コーティング、粉末散乱、粉末ドットおよびペーストドットプロセスからなる群から選択される1つ以上のプロセスを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記二峰性アイオノマー組成物が単層または多層のフィルムもしくはシートの形態にある請求項12に記載の方法。
【請求項16】
二峰性アイオノマーフィルムが前記第1基材であり;二峰性アイオノマーフィルムの2つのシートを層状にする工程か、または同一の二峰性アイオノマーフィルムをそれ自体上に折り重ねる工程と;高周波電磁放射線を適用することによってシートの周辺を密封してバッグまたはパウチを形成する工程とを含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記二峰性アイオノマー組成物が粉末または顆粒の形態にある請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第2基材が存在する請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ハイコポリマーと前記ローコポリマーとを合わせた総重量を基準にして、ハイコポリマーの重量%が約40〜約95重量%であり、ローコポリマーの重量%が約5〜約60重量%であり、かつ、前記酸基の約40〜100%が名目上中和されて1種以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属カチオンを含むカルボン酸塩を形成する請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物中の前記金属カチオンの少なくとも20当量%が亜鉛カチオンである請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記1種以上のE/X/Yコポリマーの少なくとも1種が、少なくとも1種のE/X/Yコポリマーの総重量を基準にして、約2〜約25重量%のXと約45重量%以下の有限量のYとを含む請求項12に記載の方法。
【請求項22】
Xが前記E/X/Yコポリマーの約5〜約25重量%であり、Yが前記E/X/Yコポリマーの約10〜約45重量%である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
Yが前記ハイコポリマーの0%である請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記E/Zコポリマー含有率が(i)+(ii)を基準にして約5〜約40重量%の範囲である請求項12に記載の方法。
【請求項25】
製品の表面の少なくとも一部が、
(i)1種以上のE/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3〜C8のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、Yは、酢酸ビニル、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択される軟化コモノマーの共重合単位を表し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%であり、YはE/X/Yコポリマーの約45重量%までの有限量であり、E/X/Yコポリマーは80,000〜500,000Daの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する)を含むハイコポリマーと;
(ii)1種以上のE/Zコポリマー(ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、Zはアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位を表し、ZはE/Zコポリマーの約3〜約25重量%であり、E/Zコポリマーは2,000〜30,000Daの範囲のMwを有する)を含むローコポリマーと
を含むまたはそれらから製造される二峰性アイオノマー組成物を含み、
ここで、E/X/YコポリマーおよびE/Zコポリマー中の合わせた酸性基の少なくとも35%が、相当する塩へ金属イオンで名目上中和されている製品であって、
防水布、旗、標識、室内装飾品、履物、衣類、防水衣、レインコート、保護掛布、保護カバー、壁紙、ブラインドまたはカーテン、キーボード保護カバー、自動車内装内張、映写膜、皮革商品、アップリケ、装飾フィルム、履物用の装飾パッチ、装飾ラップ、サッカーボールスキンを含む運動競技用器材用のカバーまたは保護表面、装飾箱、本の表紙、バインダー、管材料、フレキシブルパッケージング、硬質パッケージング、バッグ、医療液含有用パウチ、熱成形品、およびワイヤからなる群から選択される製品。

【公表番号】特表2011−503330(P2011−503330A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534255(P2010−534255)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/083727
【国際公開番号】WO2009/065100
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】