説明

二次励磁型発電システム

【課題】二次励磁型発電機に接続される変換器を保護するためにクローバ回路があるが、クローバ回路にはサイリスタが主に用いられる。サイリスタがオンした場合、二次励磁型発電機の回転子が回転していると回転子のコイルに電圧が励起されるため、サイリスタがオンを継続する。サイリスタがオフしないと二次励磁型発電機の回転子側のコイルが短絡されているため発電ができない。このため、サイリスタがオンした後も、なんらかの方法でサイリスタをオフし、二次励磁発電システムが発電できるように移行することが課題である。
【解決手段】クローバ回路のサイリスタに流れる電流をサイリスタの保持電流以下にすることによって、サイリスタがオフするため、二次励磁発電システムが発電できるようになる。クローバ回路のサイリスタに流れる電流を保持電流以下にするため、二次励磁型発電機の回転子の停止,短絡回路、又は切離し回路を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の擾乱に対応した二次励磁型発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の擾乱により二次励磁型発電機の回転子巻線に過大な電流が発生し電力変換器に過大な電流が流れ込み電力変換器にストレスがかかる。このため、従来技術では〔特許文献1〕や〔特許文献2〕が示しているように電力変換器のストレスを軽減するため、クローバ回路内のサイリスタをオンし、回転子巻線の過大な電流をクローバ回路内のサイリスタに流すことで対処していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−18486号公報
【特許文献2】特開2007−244136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、クローバ回路内のサイリスタがオンした後、回転子が回転を継続すると残留磁束により回転子巻線に電圧が励起されサイリスタがオンを継続する。サイリスタがオンを継続すると二次励磁型発電機の回転子巻線が短絡されているため、回転子側変換器が運転できないため二次励磁型発電機は発電することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、サイリスタがオンした後、二次励磁型発電システムが発電できるようにする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明は二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、前記サイリスタを点弧した後、前記二次励磁型発電機の回転を停止することを特徴とするものである。
【0007】
更に、本発明は二次励磁型発電システムにおいて、前記二次励磁型発電機に接続された風車に対して、該風車の翼ピッチを変化させて前記二次励磁型発電機の回転を停止することを特徴とするものである。
【0008】
また、上記課題を達成するために、本発明は二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、前記回転子側の巻線を短絡する接触器を短絡することを特徴とするものである。
【0009】
更に、本発明は二次励磁型発電システムにおいて、前記接触器を短絡して、前記サイリスタに印加される電圧を低減してサイリスタをオフすることを特徴とするものである。
【0010】
また、上記課題を達成するために、本発明は二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、前記サイリスタを点弧した後、前記回転子側の巻線とダイオード間の接触器を開放することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明は二次励磁型発電システムにおいて、前記接触器を開放して、前記サイリスタに印加される電圧を低減してサイリスタをオフすることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記課題を達成するために、本発明は二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、前記サイリスタを点弧した後、該サイリスタに並列に設けられた転流回路によってサイリスタをオフすることを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明は二次励磁型発電システムにおいて、前記サイリスタを点弧した後、該サイリスタに流れる電流を全て前記転流回路に流して、サイリスタをオフすることを特徴とするものである。
【0014】
また、上記課題を達成するために、本発明は二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続し、該サイリスタに対して並列にエネルギー消費装置を接続した二次励磁型発電システムにおいて、前記回転子側の変換器の直流側電荷を放電するためにエネルギー消費装置を動作させることを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明は二次励磁型発電システムにおいて、前記二次励磁型発電機の回転子を停止させることなく、二次励磁型発電システムが発電を再開することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転子巻線の過大な電流をクローバ回路により逃がした後で、発電を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の風力発電装置の回路構成の説明図。
【図2】実施例2の風力発電装置の回路構成の説明図。
【図3】実施例3の風力発電装置の回路構成の説明図。
【図4】実施例4の風力発電装置の回路構成の説明図。
【図5】実施例5の風力発電装置の回路構成の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電力変換器では、クローバ回路内のサイリスタがオンした後、二次励磁型発電機の回転子を停止させ、サイリスタに流れる電流を低減し、サイリスタをオフすることで、二次励磁発電システムが発電できるようにする。以下、本発明の実施例の詳細を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1の構成を示す回路図である。ここでは風力用の発電機を例に説明するが、揚水発電等その他の用途にも適用可能である。
【0020】
まずは、図1の発電電力を出力する回路および装置について説明する。風力発電機は、二次励磁型の発電機で、二次励磁型発電機9の固定子側の巻線は、外部信号で開閉可能な例えば固定子側の遮断器2に接続される。また遮断器2は変換器側の遮断器3と電力系統1に接続される。遮断器3は例えばY結線された変換器側のコンデンサ5および変換器側のリアクトル4を介して系統側の電力変換器6の交流側に接続される。系統側の電力変換器6の直流側は平滑コンデンサを介して回転子側の電力変換器7の直流側に接続される。回転子側の電力変換器7の交流側は、回転子側のリアクトル8を介して二次励磁型の発電機9の回転子巻線に接続される。
【0021】
また前記回転子側の電力変換器7の交流側に並列に整流器10の交流側が接続され、整流器10の直流側はサイリスタ11に接続される。二次励磁型発電機9の回転子は、ギアやクラッチなどを介して風力発電用の風車20に接続されており、風の力を受けて回転する。系統側の電力変換器6と回転子側の電力変換器7は、例えば、電力半導体のスイッチング素子(GTO,IGBT,パワーMOSFETなど)を用いて構成されており、それぞれ、交流を直流、直流を交流に変換する機能を備えている。
【0022】
次に、発明が解決しようとする課題で述べたサイリスタ11がオンを継続する原因について説明する。電力系統の擾乱により二次励磁型発電機9の回転子巻線に過大な電流が発生し回転子側の電力変換器7に過大な電流が流れ込み回転子側の電力変換器7にストレスがかかる。回転子側の電力変換器7のストレスを軽減するため、クローバ回路内のサイリスタ11をオンし回転子巻線の過大な電流をサイリスタ11に流す。サイリスタ11をオンすると同時に固定子側の遮断器2を開放し、二次励磁型発電機9を電力系統1から切り離すが、二次励磁型発電機9の固定子の鉄心には残留磁束が残るため、二次励磁型発電機9の回転子が回転していると二次励磁型発電機9の回転子巻線には電圧が励起される。二次励磁型発電機9の回転子巻線の電圧が整流器10を介してサイリスタ11に電圧が印加されるため、二次励磁型発電機9が回転を継続するとサイリスタ11がオンを継続する。
【0023】
次に、本発明の実施例1で二次励磁発電システムが発電を再開できるようにする構成を説明する。サイリスタ11がオンを継続する原因は、二次励磁型発電機9が回転を継続していることにある。よって、サイリスタ11がオフするために、例えば、風車20の回転を風車20の翼に風を受けないよう翼のピッチを変化することで二次励磁型発電機9の回転子の回転を停止させて、回転子巻線に励起される電圧を低減し、サイリスタに流れる電流がサイリスタの保持電流以下にしてサイリスタ11がオフすることで、回転子側の電力変換器7を運転できるようにして、二次励磁発電システムが発電を再開できるように制御する。
【実施例2】
【0024】
図2は本発明の実施例2の構成を示す回路図である。実施例1と同様に風力用の発電機を例に説明するが、揚水発電等その他の用途にも適用可能である。
【0025】
まずは、図1と図2の構成の相違点を説明する。図2は図1の構成に回転子側短絡用の接触器12が追加されている点が異なる。
【0026】
次に、本発明の実施例2の二次励磁発電システムが発電を再開できるようにする構成を説明する。二次励磁型発電機9の回転子が回転していると二次励磁型発電機9の回転子巻線には電圧が励起されるが、二次励磁型発電機9の回転子巻線の電圧が整流器10を介してサイリスタ11に電圧が印加されるため、サイリスタ11がオンを継続する。そこで、回転子側短絡用の接触器12で二次励磁型発電機9の回転子巻線を短絡することで、サイリスタ11に印加される電圧を低減し、サイリスタに流れる電流がサイリスタの保持電流以下にしてサイリスタ11がオフすることで、回転子側の電力変換器7を運転できるようにして、二次励磁発電システムが発電を再開できるよう制御する。
【0027】
このように、実施例2では、二次励磁型発電機9の回転子を停止させることなく、二次励磁発電システムが発電を再開できる利点を有する。
【実施例3】
【0028】
図3は本発明の実施例3の構成を示す回路図である。実施例1と同様に風力用の発電機を例に説明するが、揚水発電等その他の用途にも適用可能である。
【0029】
まずは、図1と図3の構成の相違点を説明する。図3は図1の構成に整流器切離用接触器13が追加されている点が異なる。
【0030】
次に、本発明の実施例3の二次励磁発電システムが発電を再開できるようにする構成を説明する。整流器切離用の接触器13で二次励磁型発電機9の回転子巻線から整流器10とサイリスタ11から切り離すことで、サイリスタ11に印加される電圧を低減するし、サイリスタ11がオフすることで、回転子側の電力変換器7を運転できるようにして、二次励磁発電システムが発電を再開できるよう制御する。
【0031】
実施例3も実施例2同様に、二次励磁型発電機9の回転子を停止させることなく、二次励磁発電システムが発電を再開できる利点を有する。
【実施例4】
【0032】
図4は本発明の実施例4の構成を示す回路図である。実施例1と同様に風力用の発電機を例に説明するが、揚水発電等その他の用途にも適用可能である。
【0033】
まずは、図1と図4の構成の相違点を説明する。図4は図1の構成に転流回路14が追加されている点が異なる。
【0034】
次に、本発明の実施例4の二次励磁発電システムが発電を再開できるようにする構成を説明する。サイリスタ11に流れる電流を全て転流回路14側に流し、サイリスタ11がオフすることで、回転子側の電力変換器7を運転できるようにして、二次励磁発電システムが発電を再開できるよう制御する。
【0035】
実施例4も実施例2同様に、二次励磁型発電機9の回転子を停止させることなく、二次励磁発電システムが発電を再開できる利点を有する。
【実施例5】
【0036】
図5は、実施例5の構成を示す回路図である。実施例1と同様に風力用の発電機を例に説明するが、揚水発電等、その他の用途にも適用可能である。
【0037】
まずは、図1と図5の構成の相違点を説明する。図5は図1の構成に系統側の電力変換器6と回転子側の電力変換器7の直流側から放電抵抗15を介してクローバ回路のサイリスタ11に並列に接続されたエネルギー消費装置16が追加されている点が異なる。
【0038】
次に、本発明の実施例5の構成,動作を説明する。停止時に系統側の電力変換器6と回転子側の電力変換器7間の直流側にある平滑コンデンサ17の電荷を放電するために、放電抵抗15を介してサイリスタ11またはエネルギー消費装置16を動作させて平滑コンデンサ17の電荷を放電させる。サイリスタ11をオンさせて平滑コンデンサ17の電荷を放電した場合、実施例1のように二次励磁型発電機9の回転子を停止させることにより、サイリスタ11をオフする必要がある。しかしながら、エネルギー消費装置16で平滑コンデンサ17の電荷を放電した場合、エネルギー消費装置16内のスイッチング素子18にパイポーラトランジスタ,IGBT,パワーMOSFETなどの自己消弧型スイッチング素子を用いている場合は、スイッチング素子18に印加される電圧に関係なくスイッチング素子18をオフすることができるため、二次励磁型発電機9の回転子を停止させることなく、二次励磁型発電システムが発電を再開することを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の二次励磁型発電システムは、風力用の発電機システム以外にも、揚水発電システム等その他の二次励磁型発電機を利用した発電システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電力系統
2 固定子側遮断器
3 変換器側遮断器
4 変換器側リアクトル
5 変換器側コンデンサ
6 系統側の電力変換器
7 回転子側の電力変換器
8 回転子側リアクトル
9 二次励磁型発電機
10 整流器
11 サイリスタ
12 回転子側短絡用接触器
13 整流器切離用接触器
14 転流回路
15 放電抵抗
16 エネルギー消費装置
17 平滑コンデンサ
18 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、
前記サイリスタを点弧した後、前記二次励磁型発電機の回転を停止することを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項2】
請求項1の二次励磁型発電システムにおいて、
前記二次励磁型発電機に接続された風車に対して、該風車の翼ピッチを変化させて前記二次励磁型発電機の回転を停止することを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項3】
二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、
前記回転子側の巻線を短絡する接触器を短絡することを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項4】
請求項3の二次励磁型発電システムにおいて、
前記接触器を短絡して、前記サイリスタに印加される電圧を低減してサイリスタをオフすることを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項5】
二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、
前記サイリスタを点弧した後、前記回転子側の巻線とダイオード間の接触器を開放することを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項6】
請求項5の二次励磁型発電システムにおいて、
前記接触器を開放して、前記サイリスタに印加される電圧を低減してサイリスタをオフすることを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項7】
二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続した二次励磁型発電システムにおいて、
前記サイリスタを点弧した後、該サイリスタに並列に設けられた転流回路によってサイリスタをオフすることを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項8】
請求項7の二次励磁型発電システムにおいて、
前記サイリスタを点弧した後、該サイリスタに流れる電流を全て前記転流回路に流して、サイリスタをオフすることを特徴とする二次励磁型発電システム。
【請求項9】
二次励磁型発電機の回転子側の巻線に回転子側の変換器が接続され、該変換器に並列にダイオードを通してサイリスタを接続し、該サイリスタに対して並列にエネルギー消費装置を接続した二次励磁型発電システムにおいて、
前記回転子側の変換器の直流側電荷を放電するためにエネルギー消費装置を動作させることを特徴とする発電装置。
【請求項10】
請求項9の二次励磁型発電システムにおいて、
前記二次励磁型発電機の回転子を停止させることなく、二次励磁型発電システムが発電を再開することを特徴とする二次励磁型発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50167(P2011−50167A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196217(P2009−196217)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】