説明

二重遮断給油バルブ

二重遮断給油バルブ(102)は、燃料タンクの満タンレベルに応答して、再循環ライン(108)及びキャニスタライン(110)を閉じる。このバルブは、再循環ライン及びキャニスタラインにそれぞれ対応する1つの以上のシール面(150)を有する少なくとも1つのフロート(122)を有している。このシール面は、フロートバルブの上部に設けられている。燃料タンク(100)内の燃料が満タンレベルに達したとき、フロートが上方に移動して、再循環ライン及びキャニスタラインをほぼ同時に閉じる。一実施形態では、このバルブは、再循環ライン及びキャニスタラインに対応する2つのバルブ開口が同心上に配置された同軸シールを有している。他の実施形態では、シール面は、例えば、リボンシール、2つの分離したシール面、又は、燃料システム内の再循環ライン及びキャニスタラインの位置に対応する他のあらゆるシール構造とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照する関連出願)
本出願は、2006年2月13日付提出の特許文献1及び2006年10月12日付提出の特許文献2の利益を主張しており、これらの開示は、参考として本説明に含まれる。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/772722号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願第60/851159号明細書
【0002】
本発明は、車両燃料システム用の遮断バルブに関し、より具体的には、この燃料システムにおいて、2つ以上の蒸発ガス通路を遮断するように設計されたバルブに関するものである。
【背景技術】
【0003】
車両燃料システムは、タンク内の燃料が満タンレベルに達したのを検出する機構を含んでいる。そして、この機構は、給油ノズルを遮断して、追加の燃料がタンクに入るのを防止してタンク内の圧力を所望のレベル以下に維持する。この機構の一部は、燃料タンクと蒸発ガス貯留キャニスタとの間の通気ラインにT接続を介して、又は、燃料タンクに直接接続される再循環ラインを含んでいる。この再循環ライン(「ディップチューブ」としても知られる)は、燃料タンクに接続された場合、燃料タンクが満タンレベルのとき、液体又は液体感知バルブによって遮断される。この燃料システムは、一般的に、燃料蒸発ガスを吸着して大気に放出されるのを防止するキャニスタを使用する。蒸発ガスは、キャニスタラインを形成する管を通って流れ、このキャニスタラインも、燃料が満タンレベルのときには遮断されるべきである。理想的には、再循環ライン及びキャニスタラインは、燃料タンクが満タンレベルに達したとき、同時に遮断されて、液体燃料がこれらのライン間で流通するのを防止して、液体燃料がいずれのラインにも流入しないようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再循環ライン及びキャニスタラインの両方を液体の流入から保護するため、本発明は、再循環ライン及びキャニスタラインを同時に閉じることによって燃料タンクの満タンレベルに応答する二重遮断給油バルブを提供することを大体において目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバルブは、再循環ライン及びキャニスタラインのそれぞれに対応する1以上のシール面を有する少なくとも1つのフロートを含む。このシール面は、フロートバルブのフロートの上部に配置される。燃料タンク内の燃料が満タンレベルに達したとき、このフロートは、上方に移動して、再循環ライン及びキャニスタラインを同時に閉じる。
【0006】
本発明の一実施形態では、このバルブは、ディップチューブ及び蒸発ガス通気通路に対応する2つのバルブ開口が同心上に配置される同軸シールを有している。他の実施形態では、これらのシール面は、例えば、2つの分離したシール面とすることができ、又は、燃料タンク内のディップチューブ及び蒸発ガス通気通路の配置に対応する他のあらゆるシール形状とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の燃料制限通気バルブ(FLVV)102を含む燃料システム100の代表的な概略図であり、このバルブ102は、2重遮断給油バルブとして作動する。このシステム100は、燃料タンク103及び給油ノズル(図示せず)の周囲をシールするように設計されたシール106を有する給油管104を含んでいる。再循環ライン108は、燃料タンク103を給油管104に接続して、燃料蒸発ガスを燃料タンク103から給油管104に再循環させるのに対して、キャニスタライン110は、燃料タンク103を過剰な燃料蒸発ガスを貯留するキャニスタ(図示せず)に接続する。再循環ライン108及びキャニスタライン110の端部は、タンク103内に開口し、FLVV102は、両方のラインを同時に閉じて液体燃料が一方のラインから他方のラインへ流入するのを防止するように設けられている。FLVV102の閉弁によって、再循環ライン108内の負圧が増大して、給油ノズルが遮断されることになる。これにより、燃料タンク103内の燃料蒸発ガスの圧力が上昇し、この圧力は、機械的なシールが漏れた場合、又は、機械的なシール構造を有していない従来の燃料システムを使用した場合、遮断された燃料を吹出す
圧力となる。このシステム100は、キャニスタライン110に接続する通気バルブ112を含んでもよいが、このバルブ112は、本発明の一部ではない。
【0008】
図1乃至5は、再循環ライン108とキャニスタライン110とが同心上に配置されているシステム100の構造を示している。これらの図は、キャニスタライン110が再循環ライン108の外側に配置されているのを示しているが、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、再循環ライン108は、キャニスタライン110の外側に配置して、FLVV102でこれらのライン108、110を閉じるようにすることもできる。また、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、再循環ライン108及びキャニスタライン110は、互いに隣合せて配置して(例えば図6に示すように)、FLVV102でこれらのラインを閉じるようにしてもよいことに注意されたい。
【0009】
図2乃至4は、本発明の一実施形態に従ったFLVV102を示している。この実施形態では、FLVV102は、同軸シール構造を有している。FLVV102は、フロート122の周囲を囲む円筒状のハウジング120を含み、フロート122は、弾性部材124(例えばスプリング)によって付勢されている。蓋126は、ハウジング120の上部の閉止部材として作用する。一つの実施形態では、ハウジング120は、蓋126の周囲に形成された複数のタブ130に係合する複数のスロット128を有している。その他の方法を使用して蓋をハウジングに取付けてもよい。
【0010】
本実施形態では、蓋126は、第2開口136を有する管134の周囲を囲む1つ以上の第1開口132を有し、同軸構造を形成している。第1開口132は、蓋126の上部平坦面から突出された第1管(リング)138に形成されている。この第1管138は、O−リングシール等の第1シール142を保持する第1溝140を含んでいる。管134は、第1リング138を超えて延びて、O−リングシール等の第2シール144を有し、この第2シール144は第2開口136の周囲を囲んでいる。管134上にリップ146を形成して、第2シール144を支持してもよい。本実施形態のFLVV102の内部は、あらゆる公知のフロートバルブ構造とすることができる。
【0011】
図2に示されるように、第1シール142と第2シール144との同軸構造は、再循環ライン108とキャニスタライン110との同心構造に対応する。この実施形態では、再循環ライン108の端部は、キャニスタライン110の端部よりも高い位置にある。FLVV102の上方で、管134は、再循環ライン108内に延びて、第1シール142が再循環ライン108の内壁に当接してシールする。再循環ライン108の端部は、FLVV102が適当に位置決めされたとき、リップ146に当接して支持されてもよい。第2シール144は、キャニスタライン110の内壁に当接してシールし、再循環ライン108の周囲を同心上に囲んでいる。キャニスタライン110の端部は、FLVV102が適当に位置決めされたとき、蓋126の上面に当接して支持されてもよい。
【0012】
燃料タンク103内の燃料レベルが満タンレベルより低いとき、フロート122は、ハウジング120の下部に留まり、再循環ライン108とキャニスタライン110は、開いたままとなる。このため、燃料蒸発ガスは、燃料タンク103と再循環ライン108とキャニスタライン110との間をハウジング120の側分開口146を通して自由に流通することができる。燃料タンク103内の燃料レベルが満タンレベルに達したとき、液体燃料は、側部開口146を通ってハウジング120内へ流入し、フロート122を上昇させて、蓋126の第1及び第2開口132、136を閉じ、これにより、再循環ライン108及びキャニスタライン110を同時に閉じる。この二重遮断機能は、両方のライン108、110を迅速に同時に遮断できるようにし、タンク圧力の上昇及びこれらのライン間に流入する液体燃料を最小限にする。
【0013】
図5は、本発明の他の実施形態に従ったFLVV102を示している。この実施形態では、フロート122は、その上面に取付けられたリボンバルブ150を有している。リボンバルブ150は、リボンの可撓性を利用して、追加の部品、又は、2つの別個のシール面に適応する形状を必要とすることなく、両方の開口132、134を同時にシールする。リボンは可撓性を有しており、シール面は硬く固定されているので、好ましい実施形態では、(外側の)第1開口132に関連するシール面は、(中央の)第2開口134に関連するシール面よりも僅かに長く(すなわち、リボン/フロートに、より近くに)なっている。これにより、この液体シールは、燃料が燃料タンクから漏れて、いずれのラインに流入するのも確実に防止する。
【0014】
図6及び7は、再循環ライン108とキャニスタライン110とが同心上ではなく隣合って配置された本発明の実施形態を示している。図6は、再循環ライン108及びキャニスタライン110に整合する2つのラインシールを備えた傾斜可能なシール機構152を有している。このシール機構152の僅かな傾斜運動は、ライン108、110の僅かな位置のばらつきを補って、フロート122が上昇すると同時に、これらをシール154によって緊密に閉じることができる。図7は、それぞれがハウジング120の内部にフロート122を収容する2つのフロートバルブ160を有する構造を示している。フロートバルブ160は、フロート122がそれぞれライン108、110を同時に閉じるようにタンク103内に設けられている。図7は、それぞれが1つのフロートを保持する2つの分離したハウジングを示しているが、2つのフロートを単一のハウジング内に収容してもよい。
【0015】
本発明の燃料システムは、再循環ラインとキャニスタラインとを同時に閉じるバルブ構造を組込むことによって、タンク内の燃料が所定の満タンレベルに達したとき、確実に迅速にノズルを遮断することができる。迅速な閉弁動作は、タンク圧の上昇を最小限にし、また、2つのラインを同時に閉じることにより、これらのライン間に液体が流入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る二重遮断給油バルブを含む燃料システムを表す代表的な概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る図1のシステム内の二重遮断給油バルブの代表的な概略縦断面図である。
【図3】図2の二重遮断給油バルブの斜視図である。
【図4】図3を4−4線に沿って破断した図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る二重遮断給油バルブの代表的な概略縦断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る二重遮断給油バルブの代表的な概略縦断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係る二重遮断給油バルブの代表的な概略縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料システムにおいて、第1ライン及び第2ラインを閉じるための燃料制限通気バルブであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されて、上面にシール機構が配置されたフロートと、
前記ハウジングに取付けられ、前記第1ラインに対応する第1開口及び前記第2ラインに対応する第2開口を有する蓋とを備え、
前記フロートは、前記シール機構が前記第1及び第2開口をほぼ同時に閉じるように設けられていることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記第1開口と前記第2開口とは、同心上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記蓋は、更に、該蓋の平坦面から延びて前記第1開口を有する第1管と、前記第1管を超えて延びて、前記第2開口を有する第2管とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
更に、前記第1開口の周囲を囲む第1シール及び前記第2開口の周囲を囲む第2シールを備えていることを特徴とする請求項2に記載のバルブ。
【請求項5】
前記第1開口は、前記第2開口の周りに配置された複数の開口からなることを特徴とする請求項2に記載のバルブ。
【請求項6】
更に、前記蓋の平坦面から延びて、前記複数の開口からなる第1開口を有する第1管と、
前記複数の開口からなる第1開口の周囲を囲む1つ第1シールと、
前記第1管を超えて延びて、前記第2開口を有する第2管と、
前記第2開口の周囲を囲む第2シールとを備えていることを特徴とする請求項5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記第1管は、前記第1シールを保持する溝を有し、前記第2管は、前記第2シールを支持するリップを有していることを特徴とする請求項6に記載のバルブ。
【請求項8】
前記シール機構は、前記第1及び第2開口の両方をシール可能な可撓性を有するリボンシールを備えていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項9】
前記シール機構は、前記第1及び第2開口の両方をシール可能な2つのラインシールを有するピボット支持されたシールであることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項10】
前記フロートは、2つの分離したフロートを備え、それぞれのフロートは、前記第1ライン及び前記第2ラインの対応する一方のシール機構を有していることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項11】
燃料タンクと、
前記燃料タンクに接続された給油管と、
前記給油管と燃料タンクとの間を接続して、第1の開口によって前記燃料タンク内に開口する再循環ラインと、
前記燃料タンクに接続してキャニスタとの間で燃料蒸発ガスを授受するキャニスタラインと、
前記燃料タンク内に配置された燃料制限通気バルブとを備え、
前記燃料制限通気バルブは、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されて、上面にシール機構が配置されたフロートと、
前記ハウジングに取付けられ、前記再循環ラインに対応する第1の開口及び前記キャニスタラインに対応する第2の開口を有する蓋とを備え、
前記フロートは、前記燃料タンク内の給油レベルが所定のレベルに達したとき、前記シール機構が前記第1及び第2の開口をほぼ同時に閉じるように設けられていることを特徴とする車両燃料システム。
【請求項12】
前記再循環ラインと前記キャニスタラインとは、同心上に配置され、前記バルブの蓋の前記第1の開口と前記第2の開口とは、前記再循環ライン及び前記キャニスタラインに対応して同心上に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記バルブの蓋は、更に、該蓋の平坦面から延びて前記第1の開口を有する第1の管と、前記第1の管を超えて延びて、前記第2の開口を有する第2の管とを備えていることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記バルブは、更に、前記第1の開口の周囲を囲む第1のシール及び前記第2の開口の周囲を囲む第2のシールを備えていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の開口は、前記第2の開口の周りに配置された複数の開口からなることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記バルブの蓋は、該蓋の平坦面から延びて前記複数の開口からなる第1の開口を有する第1の管と、
前記複数の開口からなる第1の開口の周囲を囲む第1のシールと、
前記第1の管を超えて延びて前記第2の開口を有する第2の管と、
前記第2の開口の周囲を囲む第2のシールとを備えていることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の管は、前記第1のシールを保持する溝を有し、前記第2の管は、前記第2のシールを支持するリップを有していることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記再循環ラインと、前記キャニスタラインとは、互いに隣合って配置され、前記バルブのシール機構は、リボンシールと、2つのラインシールを有するピボット支持されたシール機構とからなるグループの内から選択された一方であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記フロートは、2つの分離したフロートからなり、それぞれのフロートは、前記再循環ライン及び前記キャニスタラインの対応する一方のシール機構を有していることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
更に、前記給油管に配置されたノズルシール機構を備えていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
燃料タンクと、
前記燃料タンクに接続された給油管と、
前記給油管と燃料タンクとの間を接続して、第1の開口によって前記燃料タンク内に開口する再循環ラインと、
前記再循環ラインに隣合って配置されて前記燃料タンクに接続してキャニスタとの間で燃料蒸発ガスを授受するキャニスタラインと、
前記燃料タンク内に配置されて、前記再循環ラインを閉じるための第1燃料制限通気バルブ及び前記燃料タンク内に配置されて、前記キャニスタラインを閉じるための第2燃料制限通気バルブとを備え、
前記第1及び第2燃料制限通気バルブは、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されて、上面にシール機構が配置されたフロートと、
前記ハウジングに取付けられ、前記再循環ライン及び前記キャニスタラインの対応する一方の開口を有する蓋とを備え、
前記第1及び第2燃料制限通気バルブのフロートは、前記燃料タンク内の給油レベルが所定のレベルに達したとき、前記第1及び第2燃料制限通気バルブのシール機構が前記再循環ライン及び前記キャニスタラインの開口をほぼ同時に閉じるように設けられていることを特徴とする車両燃料システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−526701(P2009−526701A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554869(P2008−554869)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000331
【国際公開番号】WO2007/093881
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】