説明

交通情報管理システム

【課題】プローブカーから管理センタへ送信するプローブ情報の総量抑制を、そのプローブ情報に基づいて生成する道路交通情報の精度低下を招くことなく実現すること。
【解決手段】管理センタ7側では、複数のプローブカーの車載端末1からアップロードされたプローブ情報を解析することにより、交通渋滞している単位道路区間を特定可能な道路交通情報を生成し、その道路交通情報を、放送局9から地上波デジタル放送などにより送信する。車載端末1内のカーナビゲーション装置2は、複数の単位道路区間についての交通渋滞状況を、自車両の走行に応じて順次判定し、その判定結果と、受信機3により受信した道路交通情報により示される上記単位道路区間についての交通渋滞状況との間に所定の差異がある場合のみ、当該単位道路区間で収集したプローブ情報を移動体通信端末4により管理センタ7ヘアップロードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカーを利用した交通情報管理システム、特にはプローブカーからのプローブ情報に基づいて道路状況を特定可能な道路交通情報を生成する交通情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、公道上を走行する車両を、交通流動に係る情報を収集するためのセンサとして機能させるプローブカーシステム(フローティング・カー・データシステムとも呼ばれる)のような交通情報管理システムの導入が進められている。このようなシステムでは、プローブカーの現在位置、走行速度、時刻などのプローブ情報を、通信手段を通じて収集する管理センタを設置し、その管理センタ側で、収集したプローブ情報を解析して道路状況(交通渋滞、凍結路或いは降雪路など)に関する種々の道路交通情報を生成し、その道路交通情報を車両運転者などに提供する構成とされるものである。
【0003】
上記プローブカーシステムの一例として、従来では、プローブカー側に、自車両が走行したエリアの時刻及び位置情報より成るプローブ情報を定周期毎に記録すると共に、そのプローブ情報を、定周期、渋滞検出時などの所定のタイミングで管理センタ側に送信(アップロード)する車載端末を設け、管理センタ側では、車載端末からのプローブ情報をデータベースに蓄積すると共に、現在のプローブ情報と過去のプローブ情報とを用いて渋滞状況を検出し、その検出内容及び地図データベースを参照して提供渋滞情報を作成する構成としたものが考えられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−251698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プローブカーシステムでは、プローブ情報の収集並びに管理センタ側でのプローブ情報の取り込みをリアルタイムに近い状態で行うことが望ましく、このため、特許文献1にも記載されているように、プローブカー側では、定周期毎に記録したプローブ情報を、定周期、渋滞検出時などのタイミングで送信する構成とされるのが通常である。このため、実際にシステムを運用するに当たっては、複数のプローブカーから管理センタへ送信されるデータ量が大きくなる事態が避けられず、これにより管理センタ側の負荷が無闇に増大するという問題点があった。特に、プローブカーシステムにおいては、プローブカーから管理センタへのプローブ情報の送信を、通信サービス会社が運用する移動体通信網を利用して行う構成とされるのが通常であり、従って、その通信コストの高騰を無視できないという事情がある。このため、プローブ情報の送信を、上記のようなタイミングで頻繁に行う必要がある従来構成のシステムでは、通信コストがネックになってビジネスモデルとして成立し難いという課題もあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プローブカーから管理センタへ送信するプローブ情報の総量抑制を、そのプローブ情報に基づいて生成する道路交通情報の精度低下を招くことなく実現できる交通情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の交通情報管理システムによれば、プローブカーに搭載された車載端末は、収集したプローブ情報を、自身に備えられた通信手段により管理センタヘアップロードする。一方、管理センタ側では、複数のプローブカーからアップロードされたプローブ情報を解析することにより、道路状況を特定可能な道路交通情報を生成し、その道路交通情報を、放送系統(例えば、地上波デジタル放送、FM文字放送、VICSなどが考えられる)を通じて送信する。従って、車載端末側では、このように送信(放送)される道路交通情報を、自身に備えられた受信手段により瞬時に受信できることになる。
【0007】
車載端末には、プローブ情報のアップロードに使用される前記通信手段及び渋滞情報の受信に使用される前記受信手段の他に、道路状況判定手段及び通信制御手段が設けられている。この場合、道路状況判定手段は、複数の単位道路区間についての道路状況を、自車両の走行に応じて順次判定する。また、通信制御手段は、道路状況判定手段により判定した単位道路区間についての道路状況と、前記受信手段が受信した道路交通情報により示される当該単位道路区間についての道路状況との間に所定の差異がある場合のみ、その単位道路区間で収集したプローブ情報を通信手段により管理センタヘアップロードするようになる。
【0008】
つまり、車載端末から管理センタヘプローブ情報をアップロードするための通信動作は、単位道路区間における実際の道路状況と、受信手段により受信した道路交通情報により示される道路状況との間に、所定の差異があった場合のみ実施されることになるから、そのような通信動作が無駄に行われることがなくなり、結果的に、プローブカーから管理センタへ送信するプローブ情報の総量を抑制できるようになる。従って、管理センタ側の負荷が無闇に増大することがなくなると共に、通信手段を通じた通信コストが従来システムのように高騰する恐れがなくなり、ビジネスモデルとして十分に成立するものである。また、管理センタから送信される道路交通情報により示される単位道路区間についての道路状況と、対応する単位道路区間での実際の道路状況とが異なる状態となったときには、車載端末が当該単位道路区間で収集した最新のプローブ情報が管理センタへアップロードされることになるから、管理センタ側で生成する道路交通情報の精度が低下する恐れがなくなるものである。
【0009】
請求項2記載の交通情報管理システムによれば、管理センタ側では、複数のプローブカーからアップロードされたプローブ情報を解析することにより、前記道路交通情報として、交通渋滞が発生した状態にある単位道路区間での車両の旅行速度または旅行時間を補正するための補正旅行情報を生成し、その補正旅行情報を、放送系統を通じて送信する。車載端末に備えられた情報記憶手段には、各単位道路区間における平均旅行速度または平均旅行時間を示す区間旅行情報群が記憶されており、道路状況判定手段は、上記情報記憶手段に記憶されている区間旅行情報と、前記受信手段が受信した補正旅行情報とに基づいて、交通渋滞が発生している単位道路区間における自車両の推定旅行速度(道路状況に対応)を算出する。また、通信制御手段は、交通渋滞が発生している単位道路区間についての推定旅行速度と、当該単位道路区間での自車両の実際の走行速度との差分が予め設定されたしきい値を超えている場合のみ、その単位道路区間で収集したプローブ情報を通信手段により管理センタヘアップロードするようになる。
【0010】
このため、プローブ情報をアップロードするための通信動作が無駄に行われることがなくなり、結果的に、プローブカーから管理センタへ送信するプローブ情報の総量を抑制できるようになる。また、単位道路区間での渋滞が解消されたときには、その単位道路区間での推定旅行速度と自車両の実際の走行速度との差分が予め設定されたしきい値内に収まることになって、車載端末が、収集した最新のプローブ情報を管理センタへアップロードするようになるから、管理センタ側で生成する渋滞情報の精度が低下する恐れがなくなるものである。
【0011】
この場合、情報記憶手段に記憶しておく区間旅行情報群は、最新のデータに漸次更新することが望ましいものであるが、古くなるのに伴い大きく変動することがないデータであってリアルタイムで更新する必要がない性質のものであるから、カーディーラーなどでのメンテナンス、或いは通信コストが安価な通信手段(例えば、ガソリンスタンドなどの適宜な場所に設置された無線LAN)などにより更新すれば良く、この面からも通信コストを抑制できるようになる。
【0012】
請求項3記載の交通情報管理システムによれば、車載端末は、自車両の過去の走行経路に対応した複数の単位道路区間について、少なくとも各単位道路区間を特定可能な情報及び各単位道路区間の車両走行速度などを含む走行履歴情報を逐次蓄積するものであり、管理センタは、このように蓄積された走行履歴情報を、各地のサービス拠点に設置された第2の通信手段を通じて収集すると共に、収集した走行履歴情報を統計的に処理することにより前記各単位道路区間における平均旅行速度または平均旅行時間を示す区間旅行情報群を算出して蓄積する。そして、このように蓄積された区間旅行情報群が、適宜タイミングで車載端末側の情報記憶手段に移植されるものであり、結果的に、情報記憶手段に記憶しておく区間旅行情報群のメンテナンスを正確且つ容易に行い得るようになる。
【0013】
請求項4記載の交通情報管理システムによれば、車載端末は、道路状況判定手段により判定される単位道路区間での道路状況が各単位道路区間の境界で変化したときのみ、プローブ情報を通信手段により管理センタヘアップロードする。このため、自車両が複数の単位道路区間を連続的に走行する場合において、各単位道路区間の道路情況に変化がない場合には、プローブ情報のアップロードが停止されることになるから、プローブカーから管理センタへ送信するプローブ情報の総量を抑制できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、プローブカーシステムとして構築された交通情報管理システム全体の構成が機能ブロックの組み合わせにより概略的に示されている。この図1において、プローブカー(図示せず)に搭載される車載端末1は、カーナビゲーション装置2(道路状況判定手段、通信制御手段に相当)を中心に構成されたもので、このカーナビゲーション装置2に対して、地上波デジタル放送及びFM文字放送を受信可能な受信機3(受信手段に相当)、携帯電話機のような移動体通信端末4(通信手段に相当)、無線LAN用の通信モジュール5、例えばフラッシュメモリのような書換え可能な不揮発性メモリより成る記憶装置6(情報記憶手段に相当)を接続した構成となっている。
【0015】
この場合、カーナビゲーション装置2は、周知のナビゲーション機能の他に、プローブ情報の収集機能を備えている。即ち、具体的に図示しないが、カーナビゲーション装置2は、自車両に備えられた車速センサからの車速信号、ブレーキシステムやABSなどの作動状況を示す信号のような種々の車両走行情報が入力される構成となっており、自身のカーナビゲーション機能により収集した車両現在位置を示す情報、上記車速信号により示される自車両の走行速度などの種々の車両走行情報を含むプローブ情報を収集する機能を備えている。
【0016】
この他、カーナビゲーション装置2は、収集したプローブ情報を移動体通信端末4により管理センタ7へ選択的にアップロードする機能、自車両が走行中の道路に係る渋滞状態を判定する機能を備えており(これらの機能については後述する)、また、以下に述べるような自車両の走行履歴情報を逐次蓄積する機能も備えている。
【0017】
即ち、上記走行履歴情報は、例えば、自車両の過去の走行経路(出発地から到着地までの経路)に対応した複数の単位道路区間について、各単位道路区間を特定可能な経緯度情報(例えば、各単位道路区間の始点をそれぞれ示す経緯度情報群、最後尾の単位道路区間の終点を示す経緯度情報)、それら単位道路区間の道路種別(高速道、一般道などの区別)を示す道路リンク番号、車両走行日時、車両走行速度などを、逐次蓄積することにより得られるものである。
【0018】
尚、上記単位道路区間を、道路地図データにより示される道路リンクと一致させる構成も可能であり、このような構成とする場合には、上記走行履歴情報を、自車両の過去の走行経路に沿った道路リンク番号、車両走行日時、車両走行速度などにより構成すれば良いことになる。
【0019】
前記記憶装置6には、前記単位道路区間での平均旅行速度Vaを示す区間旅行情報群を蓄積した旅行速度データベースが記憶されている。この旅行速度データベースは、例えばカーナビゲーション装置2にデフォルトデータとして記憶しておくことができるが、道路事情の変化に応じた適正なデータに更新することが望ましいため、本実施例では、上記平均旅行速度Vaを管理センタ7側で逐次算出し、これに基づいて上記旅行速度データベースの構築及び更新を行うようにしている。
【0020】
即ち、管理センタ7においては、プローブカーにおいて蓄積されている前記走行履歴情報を後述のようなタイミングで収集して蓄積すると共に、その蓄積情報を統計的に処理することにより、各単位道路区間における車両走行日時の種類(曜日・祝祭日・日付・時間帯)毎の平均旅行速度Va(同一の単位道路区間を種別が異なる道路で共用している場合(例えば、高速道路の下に一般道路がある場合)は、その道路種別毎の平均旅行速度Va)を算出する。管理センタ7側には、このように算出した各平均旅行速度Vaを、それぞれに対応する単位道路区間を示す経緯度情報及び道路種別と共に区間旅行情報として記録すると共に、それらの区間旅行情報群を、曜日・祝祭日・日付・時間帯毎に分類整理した旅行速度データベースを構築している。
【0021】
そして、上記管理センタ7側に構築された旅行速度データベースは、適宜なタイミングで車載端末1側の記憶装置6に移植されるものであるが、その移植はリアルタイムで行う必要がないから、通信費がかからない手段、つまり、例えば、各地のサービス拠点(例えばガソリンスタンド)に設置された無線LANベースステーション10(第2の通信手段に相当)を通じた近距離データ通信による手段、或いはカーディーラーのようなサービス拠点に設置されたパソコン用通信端末(図示せず:第2の通信手段に相当)を通じてデータ転送する手段などにより行われるものである。尚、このパソコン用通信端末とは、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)などのワイヤレス通信手段を含むことは勿論、USBなどのワイヤード通信手段も含む概念である。また、管理センタ7側においてプローブカーから走行履歴情報を収集する処理も、リアルタイムで行う必要がないから、上述同様の通信費がかからない手段により行われるものである。
【0022】
管理センタ7は、プローブカーシステムの中核をなすものであり、複数の車載端末1から移動体通信端末4及び携帯電話基地局8を経由してアップロードされたプローブ情報を解析することにより、各単位道路区間での現時点での平均的な走行速度をリアルタイムデータとして算出すると共に、このように算出した各単位道路区間でのリアルタイム平均走行速度Vxと、各単位道路区間における前記平均旅行速度Vaとを比較し、Vx<(Va−α)の関係(αはしきい値)にあった場合には、それら各平均旅行速度Va及びVxの差分を示す補正旅行速度Vr(=Va―Vx)及び対応する単位道路区間を特定可能な経緯度情報を含む補正旅行速度情報(補正旅行情報、道路交通情報に相当)を生成する機能を備えている。尚、上記しきい値αは、リアルタイム平均走行速度Vxと平均旅行速度Vaとの差が比較的小さい場合、つまり単位道路区間が渋滞状態にないと考えられる場合に、これを無視するために設定されたものである。
【0023】
そして、管理センタ7は、上記のように生成した最新の補正旅行速度情報を、放送局9(放送系統に相当)から地上波デジタル放送及びFM文字放送によりリアルタイムに送信する構成となっている。
【0024】
また、管理センタ7は、車載端末1側の通信モジュール5との間でのデータ通信を、ガソリンスタンドなどの適宜なサービス拠点に設置された複数の無線LANベースステーション10(1つのみ図示)を通じて実行可能に構成されている。
【0025】
さて、図2ないし図4のフローチャートには、カーナビゲーション装置2による制御内容のうち、本発明の要旨に関係した部分が示されており、以下これらについて関連した作用と共に説明する。
【0026】
即ち、図2には、プローブカーとしての機能を果たすために必要なプローブ情報処理ルーチンの内容が示され、図3及び図4には、それぞれ割り込みルーチンとして実行される放送受信処理ルーチン及び走行履歴情報送信処理ルーチンの内容が示されている。
【0027】
この場合、図3の放送受信処理ルーチンでは、放送局9から送信される補正旅行速度情報(単位道路区間を特定可能な経緯度情報と当該単位道路区間での補正旅行速度Vrを含む情報)を受信機3により受信したか否かを判断し(ステップa1)、受信したときには、その補正旅行速度情報を更新記憶するステップa2を実行した後にリターンし、非受信状態ではそのままリターンする。
【0028】
また、図4の走行履歴情報送信処理スルーチンでは、自車両が無線LANベースステーション10による通信エリア内に入ったか否かを、例えば当該ベースステーション10からのキャリア信号の受信の有無に基づいて判断し(ステップa3)、その通信エリア内に入ったときのみ、自車両の過去の走行経路について蓄積した前述の走行履歴情報(各単位道路区間を特定可能な経緯度情報、道路種別を示すための道路リンク番号、車両走行日時、車両走行速度など)を、通信モジュール5から無線LANベースステーション10を通じて管理センタ7へ送信するステップa4を実行した後にリターンし、上記通信エリア外にある状態(キャリア信号の非受信状態)ではそのままリターンする。
【0029】
尚、管理センタ7側に構築された旅行速度データベースの記憶装置6への移植も、上述のように自車両が無線LANベースステーション10による通信エリア内に入ったタイミングで行う構成としても良いものである。但し、このような移植は、記憶装置6に記憶されている旅行速度データベースのバージョンが、管理センタ7側の旅行速度データベースのバージョンより古くなっている場合のみ行なえば良いことは勿論である。
【0030】
図2に示すプローブ情報処理ルーチンでは、まず、自車両が現在走行中の道路が渋滞状態にあるか否かを判断する(ステップA1)。このような渋滞の有無の判断は、例えば、図示しない車速センサからの車速信号に基づいて得られる自車両の平均走行速度Vを利用して行う構成となっており、本実施例では、以下(1)、(2)、(3)のような渋滞判定手法を併用している。
【0031】
(1)記憶装置6に記憶されている旅行速度データベース内の区間旅行情報群のうち、その時点の日時種類(曜日・祝祭日・日付・時間帯)に対応した区間旅行情報から、現在走行中の単位道路区間に係る平均旅行速度Vaを取得し、対応する単位道路区間の走行を終えた時点で、上記平均旅行速度Vaと、当該単位道路区間での自車両の平均走行速度Vとの関係が所定の関係、例えばV<Va/3であった場合に、その単位道路区間で渋滞が発生していると判断する。
【0032】
(2)カーナビゲーション装置2用の道路地図データ中に各道路についての法定速度を記憶しておき、自車両の平均走行速度Vが走行中の道路の法定速度に対して例えば1/2以下となった状態が所定時間以上継続したときに渋滞発生と判断する。
【0033】
(3)カーナビゲーション装置2用の道路地図データには、高速道路、細街路などの道路種別データが含まれており、その道路種別データと自車両の走行速度及びブレーキ動作状態との関係に基づいて渋滞を判定する。具体的には、例えば高速道路走行中には、所定時間における走行速度の平均値が所定速度(例えば30km/h)以下であった場合には渋滞発生と判断し、また、細街路走行中には、予め設定された周期以下で車両の走行と停止が所定回数以上繰り返された場合に渋滞発生と判断する。
【0034】
尚、渋滞の発生を判断する手段としては、上記(1)、(2)、(3)に限らず、例えば、車両の前方景色を撮影するように設置された車載カメラによる撮影画像を解析処理した結果により判断する手段、走行速度とブレーキ動作状態との関係の解析結果により判断する手段などにより実現することができる。
【0035】
ステップA1において渋滞発生と判断した場合には、渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップA2)。この渋滞フラグは、ステップA1で渋滞発生していると判断した最新の走行済み単位道路区間の1つ前の走行済み単位道路区間の渋滞状態を確認するためのものであり、「1」が渋滞、「0」が非渋滞を示す。従って、ステップA2において「YES」と判断される状態は、最新の走行済み単位道路区間が前の単位道路区間に引き続いて渋滞していることを示し、また、当該ステップA2において「NO」と判断される状態は、最新の走行済み単位道路区間が渋滞区間の始まりであることを示す。
【0036】
ステップA2において「NO」と判断した場合(渋滞フラグが「0」であった場合)には、渋滞フラグを「1」にセットし(ステップA3)、渋滞開始(渋滞区間に入ったこと)を示すプローブ情報を、移動体通信端末4から携帯電話基地局8を通じて管理センタ7へ送信し(ステップA4)、この後に判断ステップA5へ移行する。また、ステップA2において「YES」と判断した場合(渋滞フラグが「1」であった場合)には、ステップA3及びA4をジャンプして判断ステップA5へ移行する。
【0037】
つまり、単位道路区間の境界で渋滞に係る道路情況が変化したとき、具体的には、自車両が走行した単位道路区間が渋滞していると判定した場合において、その単位道路区間が渋滞区間の始まりであったときには、プローブ情報のアップロードを行う。これに対して、単位道路区間の境界で渋滞に係る道路情況が変化しなかったとき、具体的には、前の単位道路区間から引き続いて渋滞しているときにはプローブ情報をアップロードしないことになる。
【0038】
上記ステップA4において送信する渋滞開始時プローブ情報の収集区間(以下、渋滞発生時情報収集区間と呼ぶ)は、渋滞が始まった単位道路区間(最新の走行済み単位道路区間)と、その1つ前(必要に応じて2つ以上前でも良い)の単位道路区間とに設定されるものであり、その収集情報の内容は以下の通りである。
【0039】
即ち、渋滞開始時プローブ情報としては、例えば、渋滞発生時情報収集区間が属する道路リンク番号、渋滞発生時情報収集区間の始点の通過時刻情報、その始点の経緯度・車両走行方向・車両走行速度を示す始点情報、始点から最小単位区間(例えば10m)を走行する毎の上記始点情報からの差分情報(経緯度・車両走行方向・車両走行速度の各初期値からの差分を示す情報:車両走行方向、車両走行速度の差分は零の場合もある)、渋滞発生時情報収集区間の終点情報(経緯度情報)が少なくとも含まれる。尚、上記のような差分情報を収集するタイミングは、車両が所定距離走行したタイミングに限らず、車両の停止タイミング及び車両の発進タイミング(所謂SS/ST列(ショートストップ/ショートトリップ列)であっても良い。
【0040】
この他に、渋滞開始時プローブ情報には、カーナビゲーション装置2における経路案内機能が機能しているか否かを示す情報や、車両走行に係る種々の動態状態(左折或いは右折操作が行われた状態(ウインカスイッチが所定時間以上継続して動作された状態)、ハザードスイッチの動作状態、自車両がタクシーであった場合における実車・及び空車情報など)を示す情報を含ませることもできる。尚、上記車両に係る動態状態を示す情報は、管理センタ7側でのプローブ情報の処理時において、例えば、ハザードスイッチの動作状態は車両が停止しているものと判断して処理対象から除外するといったデータクレンジング処理のために使用される。
【0041】
一方、前記ステップA1において渋滞が発生していないと判断した場合にも、渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップA6)。この場合、ステップA6において「NO」と判断される状態は、最新の走行済み単位道路区間が1つ前の走行済み単位道路区間に引き続いて渋滞していないことを示し、また、当該ステップA2において「YES」と判断される状態は、最新の走行済み単位道路区間の1つ前の走行済み単位道路区間で渋滞区間が終わったことを示す。
【0042】
ステップA6において「YES」と判断した場合(渋滞フラグが「1」であった場合)には、渋滞フラグを「0」にリセットし(ステップA7)、渋滞終了(渋滞区間を通過したこと)を示すプローブ情報を、移動体通信端末4から携帯電話基地局8を通じて管理センタ7へ送信し(ステップA8)、この後に前記判断ステップA5へ移行する。また、ステップA6において「NO」と判断した場合(渋滞フラグが「0」であった場合)には、ステップA7及びA8をジャンプして判断ステップA5へ移行する。
【0043】
つまり、単位道路区間の境界で渋滞に係る道路情況が変化したとき、具体的には、自車両が走行した単位道路区間で渋滞が発生していないと判定した場合において、その単位道路区間の前の区間では渋滞が発生していたとき(自車両が走行した単位道路区間で始めて渋滞が解消されたとき)には、プローブ情報のアップロードを行う。これに対して、単位道路区間の境界で渋滞に係る道路情況が変化しなかったとき、具体的には、前の単位道路区間から引き続いて非渋滞状態にあったときには、プローブ情報をアップロードしないことになる。
【0044】
上記ステップA8において送信する渋滞終了時プローブ情報の収集区間は、渋滞が始まった単位道路区間から渋滞が終わった単位道路区間までの区間に設定されるものであり、その収集情報の内容は、前述した渋滞開始時プローブ情報と同様の内容とされる。
【0045】
ステップA5では、前記放送受信処理ルーチン(図3参照)で記憶した補正旅行速度情報により特定される単位道路区間(以下、これを特定単位道路区間と呼ぶ)を走行したか否かを判断するものであり、「NO」と判断した場合(走行した単位道路区間が補正旅行速度情報と無関係な場合)には、そのままステップA1へリターンする。
【0046】
これに対して、ステップA5で「YES」と判断した場合には、推定旅行速度Voを算出するためのステップA9を実行する。このステップA9では、記憶装置6に記憶されている旅行速度データベース内の区間旅行情報群のうち、その時点の日時種類(曜日・祝祭日・日付・時間帯)に対応した区間旅行情報から、現在走行中の特定単位道路区間に係る平均旅行速度Vaを取得すると共に、前記放送受信処理ルーチンの実行に応じて更新記憶した補正旅行速度情報から上記特定単位道路区間に対応した補正旅行速度Vrを取得し、この補正旅行速度Vrを前記平均旅行速度Vaから減算することにより推定旅行速度Voを算出する(つまり、Vo=Va−Vr)。
【0047】
ステップA9の実行後には、推定旅行速度Voと、対応する特定単位道路区間における自車両の平均走行速度Vとの差分の大きさを判定する(ステップA10)。
このステップA10において、自車両の平均走行速度Vが推定旅行速度Voに比べてある程度以上遅いと判断した場合、例えば、Vo/2>Vのような関係となったと判断した場合(平均走行速度Vがしきい値であるVo/2を超えて小さくなった場合)には、走行した特定単位道路区間での渋滞が一段と激しくなったことを示す渋滞激化プローブ情報を、移動体通信端末4から携帯電話基地局8を通じて管理センタ7へ送信し(ステップA11)、この後にステップA1へリターンする。尚、このステップA11において送信する渋滞激化プローブ情報の収集区間は、対応する特定単位道路区間に設定されるものであり、その収集情報の内容は、前述した渋滞開始時プローブ情報(ステップA4参照)と同様の内容とされる。
【0048】
また、ステップA10において、自車両の平均走行速度Vが推定旅行速度Voに比べてある程度以上速いと判断した場合、例えば、Vo×2<Vのような関係となったと判断した場合(平均走行速度Vがしきい値であるVo×2を超えて大きくなった場合)には、走行した特定単位道路区間での渋滞が解消されたことを示す渋滞解消プローブ情報を、移動体通信端末4から携帯電話基地局8を通じて管理センタ7へ送信し(ステップA12)、この後にステップA1へリターンする。尚、このステップA12において送信する渋滞解消プローブ情報の収集区間も、対応する特定単位道路区間に設定されるものであり、その収集情報の内容は、渋滞激化プローブ情報と同様の内容とされる。
【0049】
一方、ステップA10において、Vo/2≦V≦Vo×2のような関係になったと判断した場合(推定旅行速度Voと平均走行速度Vとの差分が予め設定されたしきい値以下であると判断した場合)は、そのままステップA1へリターンする。
【0050】
図5及び図6のフローチャートには、管理センタ7による制御内容のうち、車載端末1から携帯電話基地局8を通じてアップロードされてくるプローブ情報(渋滞開始時プローブ情報、渋滞終了時プローブ情報、渋滞激化プローブ情報、渋滞解消プローブ情報)を受信したときの信号処理ルーチンの内容が示されており、以下これについて説明する。
【0051】
即ち、この信号処理ルーチンでは、図5に示すように、まず、受信したプローブ情報の種類を判定し(ステップB00)、渋滞激化プローブ情報または渋滞解消プローブ情報を受信したときには、図6に示すステップC1以降の処理(これについては後述する)を実行する。これに対して、渋滞開始時プローブ情報または渋滞終了時プローブ情報を受信したときには、前回の渋滞終了時プローブ情報から今回の渋滞開始時プローブ情報により示される区間(非渋滞区間)、または、前回の渋滞開始時プローブ情報から今回の渋滞終了時プローブ情報により示される区間(渋滞区間)をそれぞれN区間に分割し、渋滞区間に対応したN個の区間に区間渋滞フラグを設定する(ステップB01)。
【0052】
この後には、第m(1〜Nの整数:初期値は「1」)番目に設定されている区間渋滞フラグの種類を判断する(ステップB1)。その区間渋滞フラグが渋滞を示すものであった判断した場合には、第n番目(自然数:初期値は「1」)の最小単位区間に係る渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップB2)。尚、この渋滞フラグは、最小単位区間が渋滞状態にある場合に「1」とされるものである。
【0053】
上記ステップB2で「NO」と判断した場合には、当該最小単位区間が渋滞状態にあるか否かを、その最小単位区間での車両走行速度を示す情報(これは渋滞開始時プローブ情報または渋滞激化プローブ情報により示される)を利用して判定する(ステップB3)。尚、このような判断は、例えば、前述した(1)〜(3)のような渋滞判定手法と同様の手法或いは他の適宜な手法により行われる。
【0054】
ステップB3において渋滞状態にあると判定したときには、対応する最小単位区間に係る渋滞フラグを「1」にセットするステップB4、その最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップB5を順次実行した後に、変数nを「1」だけインクリメントするステップB6を実行する。また、ステップB3において非渋滞状態にあると判定したときには、ステップB4をジャンプした後にステップB5、B6を順次実行する。
【0055】
一方、前記ステップB2において渋滞フラグが「1」であると判断した場合には、対応する最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップB7を実行した後に前記ステップB6へ移行する。
ステップB6の実行後には、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了したか否かを判断し(ステップB8)、終了していない状態では前記ステップB2以降の処理を再実行する。
【0056】
これに対して、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了した場合には、変数mを「1」だけインクリメントし(ステップB9)、この後に、m>Nの関係になったか否かを判断する(ステップB10)。m≦Nの関係にある状態では前記ステップB1以降の処理を再実行するが、m>Nの関係になったときには初期状態へリターンする。
【0057】
前記ステップB1において、区間渋滞フラグが非渋滞を示すものであると判断した場合にも、当該プローブ情報に含まれるN個の分割区間に係るデータ処理を順次実行する。具体的には、まず、第n番目の最小単位区間に係る渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップB11)。
このステップB11で「YES」と判断した場合には、当該最小単位区間が渋滞状態にあるか否かを、その最小単位区間での車両走行速度を示す情報(これは渋滞終了時プローブ情報または渋滞解消プローブ情報により示される)を利用して判定する(ステップB12)。
【0058】
ステップB12において非渋滞状態であると判定したときには、渋滞フラグを「0」にリセットするステップB13を実行した後に、最小単位区間の速度情報を初期化する処理、つまり、当該最小単位区間が属する単位道路区間での平均旅行速度Vaを速度情報として更新記憶する処理を実行し(ステップB14)、この後に、変数nを「1」だけインクリメントするステップB15を実行する。また、ステップB12において渋滞状態であると判定したときには、対応する最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップB16を実行した後に前記ステップB15へ移行する。
ステップB15の実行後には、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了したか否かを判断し(ステップB17)、終了していない状態では前記ステップB11以降の処理を再実行する。
【0059】
これに対して、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了した場合には、変数mを「1」だけインクリメントし(ステップB18)、この後に、m>Nの関係になったか否かを判断する(ステップB19)。m≦Nの関係にある状態では前記ステップB1以降の処理を再実行するが、m>Nの関係になったときには初期状態へリターンする。
【0060】
前記ステップB00において、受信したプローブ情報の種類が渋滞激化プローブ情報または渋滞解消プローブ情報であった場合には、図6に示すステップC1以降の処理を実行するものであり、当該ステップC1では、受信プローブ情報の種類を判断する。
【0061】
受信したプローブ情報が渋滞激化プローブ情報であった場合には、当該プローブ情報に含まれる複数の最小単位区間(10m)に係るデータ処理を順次実行する。具体的には、まず、第n(自然数:初期値は「1」)番目の最小単位区間に係る渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップC2)。
【0062】
このステップC2で「NO」と判断した場合には、当該最小単位区間が渋滞状態にあるか否かを、その最小単位区間での車両走行速度を示す情報(これは渋滞開始時プローブ情報または渋滞激化プローブ情報により示される)を利用して判定する(ステップC3)。尚、このような判断は、例えば、前述した(1)〜(3)のような渋滞判定手法と同様の手法或いは他の適宜な手法により行われる。
【0063】
ステップC3において渋滞状態にあると判定したときには、対応する最小単位区間に係る渋滞フラグを「1」にセットするステップC4、その最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップC5を順次実行した後に、変数nを「1」だけインクリメントするステップC6を実行する。また、ステップC3において非渋滞状態にあると判定したときには、ステップC4をジャンプした後にステップC5、C6を順次実行する。
【0064】
一方、前記ステップC2において渋滞フラグが「1」であると判断した場合には、対応する最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップC7を実行した後に前記ステップC6へ移行する。
ステップC6の実行後には、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了したか否かを判断し(ステップC8)、終了していない状態では前記ステップC2以降の処理を再実行し、終了した状態ではそのままリターンする。
【0065】
前記ステップC1において、受信したプローブ情報が渋滞解消プローブ情報であると判断した場合にも、当該プローブ情報に含まれる複数の最小単位区間に係るデータ処理を順次実行する。具体的には、まず、第n番目の最小単位区間に係る渋滞フラグが「1」であるか否かを判断する(ステップC9)。
このステップC9で「YES」と判断した場合には、当該最小単位区間が渋滞状態にあるか否かを、その最小単位区間での車両走行速度を示す情報(これは渋滞終了時プローブ情報または渋滞解消プローブ情報により示される)を利用して判定する(ステップC10)。
【0066】
ステップC10において非渋滞状態であると判定したときには、渋滞フラグを「0」にリセットするステップC11を実行した後に、最小単位区間の速度情報を初期化する処理、つまり、当該最小単位区間が属する単位道路区間での平均旅行速度Vaを速度情報として更新記憶する処理を実行し(ステップC12)、この後に、変数nを「1」だけインクリメントするステップC13を実行する。また、ステップC10において渋滞状態であると判定したときには、対応する最小単位区間の車両走行速度を速度情報として更新記憶するステップC14を実行した後に前記ステップC13へ移行する。
【0067】
ステップC13の実行後には、全部の最小単位区間についてデータ処理が終了したか否かを判断し(ステップC15)、終了していない状態では前記ステップC9以降の処理を再実行し、終了した状態ではそのままリターンする。
【0068】
尚、管理センタ7においては、上記のように記憶した各最小単位区間の速度情報に基づいた演算処理により、それら最小単位区間より成る単位道路区間でのリアルタイム平均走行速度Vxを算出するものであり、前述した補正旅行速度Vrの生成を、このリアルタイム平均走行速度Vxと当該単位道路区間の平均旅行速度Vaとの比較に基づいて行うことになる。
【0069】
上記のような制御が行われる結果、本実施例の構成によれば以下に述べるような作用・効果を奏するものである。
即ち、管理センタ7側では、交通渋滞箇所を特定可能な渋滞情報として、各単位道路区間における補正旅行速度Vr及び対応する単位道路区間を特定可能な経緯度情報を含む補正旅行速度情報を生成し、その補正旅行速度情報を、放送局9から地上波デジタル放送及びFM文字放送によりリアルタイムに送信する。従って、車載端末1側では、このように送信される補正旅行速度情報を、自身に備えられた受信機3により瞬時に受信できることになる。
【0070】
車載端末1に備えられた記憶装置6には、各単位道路区間における平均旅行速度Vaを示す区間旅行情報群を蓄積した旅行速度データベースが記憶されており、カーナビゲーション装置2は、上記旅行速度データベース中の区間旅行情報により示される平均旅行速度Vaと、受信機3が受信した補正旅行速度情報中の補正旅行速度Vrとに基づいて、交通渋滞が発生している単位道路区間における自車両の推定旅行速度Voを算出する。また、カーナビゲーション装置2は、交通渋滞が発生している単位道路区間についての推定旅行速度Voと、当該単位道路区間での自車両の実際の走行速度Vとの差分が予め設定されたしきい値を超えている場合のみ、その単位道路区間で収集したプローブ情報(渋滞激化プローブ情報、渋滞解消プローブ情報)を通信手段により管理センタヘアップロードするようになる。
【0071】
つまり、プローブカーの車載端末1から管理センタ7ヘプローブ情報をアップロードするための通信動作は、受信機3により受信した補正旅行速度情報により示される渋滞状況と、対応する単位道路区間の実際の渋滞情況との間に大きな変化がない場合には実施されることがないから、そのような通信動作が無駄に行われることがなくなり、結果的に、プローブカーから管理センタ7へ送信するプローブ情報の総量を抑制できるようになる。従って、管理センタ7側の負荷が無闇に増大することがなくなると共に、移動体通信端末4を通じた通信コストが従来システムのように高騰する恐れがなくなり、ビジネスモデルとして十分に成立するものである。また、単位道路区間での渋滞が解消されたときには、その単位道路区間での推定旅行速度Voと自車両の実際の走行速度Vとの差分が予め設定されたしきい値内に収まることになって、車載端末1が、収集した最新のプローブ情報を管理センタ7へアップロードすることになるから、管理センタ7側で生成する渋滞情報の精度が低下する恐れがなくなるものである。
【0072】
この場合、記憶装置6内の旅行速度データベースに記憶しておく区間旅行情報群は、最新のデータに漸次更新することが望ましいものであるが、古くなるのに伴い大きく変動することがないデータであってリアルタイムで更新する必要がない性質のものであるから、本実施例のように、通信コストが安価な無線LANなどにより更新しても支障がないものである。
【0073】
特に、本実施例では、車載端末1側で、自車両の過去の走行経路に対応した複数の単位道路区間について、少なくとも各単位道路区間を特定可能な情報及び各単位道路区間の車両走行速度などを含む走行履歴情報を逐次蓄積する構成とすると共に、管理センタ7側で、このように蓄積された走行履歴情報を、各地のサービス拠点に設置された無線LANベースステーション10を通じて収集すると共に、収集した走行履歴情報を統計的に処理することにより前記各単位道路区間における平均旅行速度Vaを示す区間旅行情報群を算出して蓄積する構成としており、このように蓄積された区間旅行情報群が、適宜タイミングで車載端末1側の記憶装置6に移植されるものであり、結果的に、記憶装置6内の旅行速度データベースに記憶しておく区間旅行情報群のメンテナンスを正確且つ容易に行い得るようになる。
【0074】
さらに、車載端末1は、単位道路区間での渋滞状況が各単位道路区間の境界で変化したときのみ、プローブ情報を移動体通信端末4により管理センタ7ヘアップロードする構成となっている。このため、自車両が複数の単位道路区間を連続的に走行する場合において、各単位道路区間の渋滞情況に変化がない場合には、プローブ情報のアップロードが停止されることになるから、この面からも、プローブカーから管理センタ7へ送信するプローブ情報の総量を抑制できるようになる。
【0075】
管理センタ7側では、プローブカーからアップロードされたプローブ情報により示される複数の最小単位区間についての速度情報などに基づいて、当該最小単位区間毎に渋滞フラグを記録する構成となっている。このため、渋滞発生箇所を上記渋滞フラグに基づいてきめ細かく認識できることになり、結果的に、渋滞発生箇所について高い信頼性を有した渋滞情報を提供できるようになる。
【0076】
この場合、プローブカー側からアップロードされるプローブ情報のうち、上記最小単位区間に係る経緯度・車両走行方向・車両走行速度を示す情報は、最小単位区間毎の差分情報とされているから、そのプローブ情報のデータ量を抑制する上で有益になる。
【0077】
(その他の実施の形態)
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のような変形または拡張が可能である。
管理センタ7では、補正旅行速度Vrを含む補正旅行速度情報を生成して放送局9から送信する構成とし、また、記憶装置6には各単位道路区間における平均旅行速度Vaを示す区間旅行情報群を記憶する構成としたが、このような補正旅行速度情報及び区間旅行速度情報に代えて、交通渋滞が発生した状態にある単位道路区間での車両の旅行時間を補正するための補正旅行時間情報(補正旅行情報に相当)及び各単位道路区間における平均旅行時間を示す区間旅行情報群を利用する構成としても良い。
【0078】
管理センタ7から放送局9を通じて送信する道路交通情報により示される道路状況の例として、交通渋滞を挙げたが、凍結路或いは降雪路などの他の道路状況を対象としても良い。尚、車載端末1側で道路の凍結や降雪を判定するためには、ABSの出力信号を利用すれば良い。
管理センタ7側に構築された旅行速度データベースを車載端末1側の記憶装置6へ移植するための通信処理や、プローブカー側で蓄積した走行履歴情報を管理センタ7側で収集する処理を、DSRC(専用狭域通信)のような通信手段により行う構成としても良い。
管理センタ7からプローブカーへ向けて道路交通情報を送信するための送信系統は、車載端末1側に設けられたVICS受信機に対するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施例によるシステム全体の構成を示す機能ブロック図
【図2】カーナビゲーション装置による制御内容を示すフローチャート(その1)
【図3】カーナビゲーション装置による制御内容を示すフローチャート(その2)
【図4】カーナビゲーション装置による制御内容を示すフローチャート(その3)
【図5】管理センタによる制御内容を示すフローチャート(その1)
【図6】管理センタによる制御内容を示すフローチャート(その2)
【符号の説明】
【0080】
1は車載端末、2はカーナビゲーション装置(道路状況判定手段、通信制御手段)、3は受信機(受信手段)、4は移動体通信端末(通信手段)、6は記憶装置(情報記憶手段)、7は管理センタ、9は放送局(放送系統)、10は無線LANベースステーション(第2の通信手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両現在位置及び車両速度などのプローブ情報を収集する車載端末を備えた複数のプローブカーとの間で通信を行う管理センタを備え、その管理センタ側で前記プローブカーからアップロードされたプローブ情報を解析することにより道路状況を特定可能な道路交通情報を生成する交通情報管理システムにおいて、
前記管理センタは、前記道路交通情報を前記プローブカー側で受信可能な放送系統を通じて送信するように構成され、
前記車載端末は、
前記プローブ情報を前記管理センタヘアップロードするための通信手段と、
前記放送系統を通じて送信される前記道路交通情報を受信する受信手段と、
複数の単位道路区間についての道路状況を、自車両の走行に応じて順次判定する道路状況判定手段と、
この道路状況判定手段により判定した単位道路区間についての道路状況と、前記受信手段が受信した道路交通情報により示される当該単位道路区間についての道路状況との間に所定の差異がある場合のみ、その単位道路区間で収集したプローブ情報を前記通信手段により前記管理センタヘアップロードする通信制御手段と、
を備えた構成とされることを特徴とする交通情報管理システム。
【請求項2】
前記管理センタは、前記道路交通情報として交通渋滞が発生した状態にある単位道路区間での車両の旅行速度または旅行時間を補正するための補正旅行情報を生成するように構成され、
前記車載端末は、前記各単位道路区間における平均旅行速度または平均旅行時間を示す区間旅行情報群を記憶した情報記憶手段を備え、
前記道路状況判定手段は、前記情報記憶手段に記憶されている前記区間旅行情報と、前記受信手段が受信した前記補正旅行情報とに基づいて、交通渋滞が発生している単位道路区間における自車両の推定旅行速度を算出するように構成され、
前記通信制御手段は、交通渋滞が発生している単位道路区間についての前記推定旅行速度と、当該単位道路区間での自車両の実際の走行速度との差分が予め設定されたしきい値を超えている場合のみ、前記プローブ情報を前記通信手段により前記管理センタヘアップロードする構成とされていることを特徴とする請求項1記載の交通情報管理システム。
【請求項3】
請求項2記載の交通情報管理システムにおいて、
各地のサービス拠点に、前記車載端末との間で近距離データ通信を実施可能な第2の通信手段を設置し、
前記車載端末は、自車両の過去の走行経路に対応した複数の単位道路区間について、少なくとも各単位道路区間を特定可能な情報及び各単位道路区間の車両走行速度などを含む走行履歴情報を逐次蓄積するように構成され、
前記管理センタは、前記車載端末側に蓄積された前記走行履歴情報を、前記第2の通信手段を通じて収集すると共に、収集した走行履歴情報を統計的に処理することにより前記各単位道路区間における平均旅行速度または平均旅行時間を示す区間旅行情報群を算出して蓄積するように構成され、
前記車載端末側の情報記憶手段に記憶される前記区間旅行情報群は、前記管理センタ側に蓄積された区間旅行情報群を適宜タイミングで移植することにより構成されることを特徴とする交通情報管理システム。
【請求項4】
前記車載端末は、前記道路状況判定手段により判定される前記単位道路区間での道路状況が各単位道路区間の境界で変化したときのみ、前記プローブ情報を前記通信手段により前記管理センタヘアップロードする構成とされていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の交通情報管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−264731(P2007−264731A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85401(P2006−85401)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】