説明

人体検知装置及び該人体検知装置を備えた画像処理装置

【課題】人の接近を高精度に判定することができる人体検知装置等を提供する。
【解決手段】それぞれ一対の正負電極10a,10b,20a,20bを有する第1及び第2の焦電型センサ10,20と、各焦電型センサを被覆するレンズ3を備える。垂直状被取付面51に対して直交する面からなる検知エリア6において、第1の焦電型センサの正負電極に対応する第1の正極視野100aと負極視野100b、第2の焦電型センサの正負電極に対応する第2の正極視野200aと負極視野200bを含む検知ブロック300、301が、第1の正極視野と負極視野を結ぶ仮想線100cまたはその延長線と、第2の正極視野と負極視野を結ぶ仮想線200cまたはその延長線が交差する態様で形成されている。交点から被取付面51への垂線について、各仮想線同士が線対称に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人を検知するための人体検知装置、及びこの人体検知装置を備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コピー機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、さらにはこれらの装置の機能を集約したMFP(Multi Function Peripherals)と称される多機能デジタル複合機等の画像処理装置には、ユーザが近づいたときに装置を省エネモードから通常モードに復帰させてウォームアップを行うために、ユーザが近づいたことを検知するための人体検知装置が備えられているものがある。
【0003】
また、このような人検知装置として、省電力かつ低コストな構成で人体検知が行える焦電型センサ(焦電型赤外線センサともいう)を用いたものが知られている。
【0004】
この焦電型センサは、センサの検知範囲を人が横断したときの温度変化に基づいて検知を行うが、前記画像処理装置に搭載する場合は、装置を使用するために接近する人(ユーザ)の移動方向とセンサとがほぼ向き合う状態となるように、センサが装着されることから、人が接近しても検知範囲の温度変化が小さく検知感度が悪くなる。このため、人の接近を高精度に判定できる人体検出装置の実現が望まれている。
【0005】
なお、特許文献1には、デュアル素子型焦電センサの人体検知時の移動方向により出力波形の位相が反転する特徴を利用し、出力波形を認識して人の移動方向を判定することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、1枚の焦電体板に2つの焦電検出部を設けた焦電エレメントを有し、垂直壁に取り付けた場合に、前記2つの焦電検出部を結ぶ仮想直線が水平床と約45度で交差するセンサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−160856号公報
【特許文献2】特開平6−88875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記公報に記載の技術によっても、人の接近を高精度に判定するには十分ではなく、さらなる精度の増大が望まれている。
【0009】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、人の接近を高精度に判定することができる人体検知装置を提供し、さらには該人体検知装置を備えた画像処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)被取付体に装着される人体検知装置であって、前記被取付体の垂直状の被取付面に装着されるとともに、それぞれ一対の正負電極を有する第1及び第2の焦電型センサと、各焦電型センサを被覆するレンズを備え、前記レンズにより、前記被取付体の垂直状被取付面に対して直交する面に形成された検知エリアにおいて、前記第1の焦電型センサの正負電極に対応する第1の正極視野と負極視野、及び前記第2の焦電型センサの正負電極に対応する第2の正極視野と負極視野を含む検知ブロックが、前記第1の正極視野と負極視野を結ぶ第1の仮想線またはその延長線と、前記第2の正極視野と負極視野を結ぶ第2の仮想線またはその延長線とが前記検知エリア上で交差する態様で形成されており、かつ、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線との交点を通り、前記被取付体の垂直状被取付面におろした垂線を対称軸として、第1の仮想線と第2の仮想線が前記検知エリア上で線対称に形成されていることを特徴とする人体検知装置。
(2)前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線と第2の仮想線が交差している前項1に記載の人体検出装置。
(3)前記レンズは該レンズ内に複数の単位レンズが形成された複眼レンズであり、前記複眼レンズによって、前記検知ブロックが複数形成されている前項1または2に記載の人体検知装置。
(4)前記被取付体の被取付面に装着される第1及び第2のセンサ装置の取付角度、及び/または第1及び第2の焦電型センサのセンサ装置内での角度を変更することにより、前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線の交差角度を変更する前項1〜3のいずれかに記載の人体検知装置。
(5)前記レンズは、被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向と平行な方向である横断方向とで倍率が異なるものに形成されることにより、前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線の交差角度を変更する前項1〜4のいずれかに記載の人体検知装置。
(6)前記複眼レンズにおける複数の単位レンズのピッチが、被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向及び/または垂直状被取付面と平行な方向である横断方向に変化している前項3に記載の人体検知装置。
(7)前記第1及び第2の焦電型センサからの検知信号に基づいて、人の移動方向を判定する判定手段を備えている前項1〜6のいずれかに記載の人体検知装置。
(8)人体検知装置が装着される被取付体に接近するときに、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力の絶対値が加算されるように、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力を加算または減算する演算手段を備え、前記判定手段は、前記演算手段の演算結果に基づいて人の移動方向を判定する前項7に記載の人体検知装置。
(9)人体検知装置が装着される被取付体に接近するときに、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力の絶対値が加算されるように、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力を加算または減算する演算手段と、前記演算手段の演算結果に基づいて人の移動方向を判定する判定手段とを備え、前記判定手段は、前記演算手段による前記複数の検知ブロック毎の演算結果に基づいて、人の移動方向を判定する前項3〜6のいずれかに記載の人体検知装置。
(10)前記検知ブロックは、前記被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向に複数形成され、前記判定手段は、前記演算手段による前記複数の検知ブロック毎の演算結果の最大値が徐々に増加している時に、人体検知装置が装着される被取付体に人が接近していると判定する前項9に記載の人体検知装置。
(11)前記判定手段は、第1の焦電型センサからの検知信号と第2の焦電型センサからの検知信号のタイミング差、最大振幅値、最大振幅値となるタイミングにより、人の移動方向を判定する前項1〜10のいずれかに記載の人体検知装置。
(12)前項1〜11のいずれかに記載の人体検知装置が装着されている画像処理装置。
【発明の効果】
【0011】
前項(1)に記載の発明によれば、第1の焦電型センサの一対の正負電極に対応する第1の正極視野と負極視野、及び第2の焦電型センサの一対の正負電極に対応する第2の正極視野と負極視野を含む検知ブロックが、前記第1の正極視野と負極視野を結ぶ第1の仮想線またはその延長線と、第2の正極視野と負極視野を結ぶ第2の仮想線またはその延長線とが検知エリア上で交差するように形成され、かつ、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線との交点から、前記被取付体の垂直状被取付面におろした垂線を対称軸として、第1の仮想線と第2の仮想線が前記検知エリア上で線対称に形成されているから、人が人体検知装置に接近すると、第1の焦電型センサと第2の焦電型センサから、ほぼ同じタイミングで同位相または逆位相の出力信号が出力される。従って、例えば、これらの両出力を同位相の場合は加算し、逆位相の場合は減算することにより、1つの焦電型センサの出力から判定する場合に較べて大きな出力信号に基づいて人の接近を検知することができ、高精度の検知を行うことができる。
【0012】
しかも、例えば人体検知装置に対して人が斜めに移動するような場合は、第1の焦電型センサからの出力信号と第2の焦電型センサからの出力信号のタイミング、最大振幅値、最大振幅値となるタイミング等が異なったものとなり、これらを判定することにより、人の移動方向を的確に判定することも可能になる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、高精度な人の接近検知を確実に行うことができる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、複眼レンズによって検知ブロックが複数形成されているから、より高精度の検知を行うことができる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、被取付体の被取付面に装着される第1及び第2のセンサ装置の取付角度、及び/または第1及び第2の焦電型センサのセンサ装置内での角度を変更することにより、検知ブロックにおける最適な人体検知感度を実現できる。
【0016】
前項(5)に記載の発明によれば、接離方向と横断方向とで倍率が異なるものに形成することにより、検知ブロックにおける最適な人体検知感度を実現できる。
【0017】
前項(6)に記載の発明によれば、複眼レンズにおける複数の単位レンズのピッチを、接離方向及び/または横断方向に変化させることにより、前記接離方向及び/または横断方向において、検知ブロックの配置の疎密状態を変化させることができ、より精度の高い検知を行うことができる。
【0018】
前項(7)に記載の発明によれば、第1及び第2の焦電型センサからの出力信号に基づいて、人の移動方向を判定することができる。
【0019】
前項(8)に記載の発明によれば、第1の焦電型センサと第2の焦電型センサのそれぞれからの出力信号を加算または減算することにより、1つの焦電型センサの出力から判定する場合に較べて大きな出力信号に基づいて、人の被取付体への接近方向の判定を高精度に行うことができる。
【0020】
前項(9)に記載の発明によれば、複数の検知ブロック毎の演算結果に基づいて、人の移動方向を判定するから、1個の検知ブロックの演算結果に基づいて判定する場合よりも高精度な判定を行うことができる。
【0021】
前項(10)に記載の発明によれば、人体検知装置に人が接近していることを高精度に検知することができる。
【0022】
前項(11)に記載の発明によれば、第1の焦電型センサからの出力信号と第2の焦電型センサからの出力信号のタイミング差、最大振幅値、最大振幅値となるタイミングにより、人の移動方向を判定することができる。
【0023】
前項(12)に記載の発明によれば、人が画像処理装置に接近していることを高精度に検知でき、ユーザが近づいたときに装置を省エネモードから通常モードに復帰させてウォームアップを行う等の処理を精度良く行える画像処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態に係る人体検知装置が装着された画像処理装置としての画像形成装置の正面図である。
【図2】(A)はセンサ装置の平面図であり、(B)は(A)のIIB−IIB線の断面図である。
【図3】センサ装置の装着状態を説明するための図面である。
【図4】(A)は、画像処理装置におけるセンサ装置の取付面に対して直交する面からなる検知エリアに、検知ブロックが形成されている状態を説明するための斜視図、(B)は検知ブロックを説明するための平面図である。
【図5】第1及び第2の焦電センサからの出力信号を処理して、人の移動方向を判定する判定回路のブロック図である。
【図6】人の移動方向の判定処理を説明するための検知信号等の波形図である。
【図7】第1、第2のセンサ装置の画像形成装置への取付角度を変更する場合の説明図である。
【図8】基板に対する焦電型センサの配置角度を変更したセンサ装置を画像形成装置に装着する場合の説明図である。
【図9】レンズが複眼レンズである場合のセンサ装置の平面図である。
【図10】複眼レンズを用いた場合に複数の検知ブロックが形成されている状態を説明するための検知エリア及び検知ブロックの上面図である。
【図11】複数の検知ブロックから得られる信号に基づいて人の移動方向を判定する場合を説明するための検知信号等の波形図である。
【図12】検知ブロックにおける2組の正極視野と負極視野の形成状態を変化させることにより、検知精度を変化させる場合を説明するための検知ブロックの上面図である。
【図13】人が画像形成装置に対して斜めに移動したことを検出する方法を説明するための検知信号等の波形図である。
【図14】複眼レンズにおいて単位レンズのピッチを変更した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、この発明の一実施形態に係る人体検知装置が装着された画像処理装置としての画像形成装置の正面図である。
【0027】
図1において、画像形成装置5の垂直状の正面パネルからなる被取付面51に第1のセンサ装置1及び第2のセンサ装置2の2個のセンサ装置が装着されている。
【0028】
第1のセンサ装置1は図2に示すように、基板3の上面中央部に、正極電極10aと負極電極10bを有する第1の焦電型センサ10が配置されるとともに、基板3には焦電型センサ10を被覆する態様でレンズ4が設けられている。同様に、センサ装置2も、基板3の上面中央部に、正極電極20aと負極電極20bを有する第2の焦電型センサ20が配置されるとともに、基板3には焦電型センサ20を被覆する態様でレンズ4が設けられている。
【0029】
前記第1、第2のセンサ装置1及び2は、図3に第1及び第2の焦電型センサ10、20のみを代表して示すように、画像形成装置5の前記被取付面51に横向きハの字状の配置で、かつ相互の正極電極10aと20aが接近側で対向し、相互の負極電極10bと20bが離間側で対向する向きで、装着されている。
【0030】
また、このような配置の第1、第2のセンサ装置1及び2の装着状態と、各レンズ4の屈折率や焦点距離等の調整により、図4(A)に示すように、前記画像形成装置5の被取付面51に対して直交する水平面に形成された検知エリア6において、前記第1の焦電型センサ10の一対の正負電極10a及び10bに対応する一対の第1の正極視野100aと負極視野100bが形成されている。同様に、検知エリア6において、前記第2の焦電型センサ20の一対の正負電極20a及び20bに対応する一対の第2の正極視野200aと負極視野200bが形成されている。そして、これらの正極視野100a及び負極視野100bと、正極視野200a及び負極視野200bの2組により、人体を検知する検知ブロック300がひとつ形成されている。
【0031】
なお、検知エリア6は水平面でなく垂直面に形成されていても良く、画像形成装置5の被取付面51に対して直交する面に形成されていれば良い。
【0032】
前記検知ブロック300において、第1の焦電型センサ10による前記第1の正極視野100aと負極視野100b、第2の焦電型センサ20による第2の正極視野200aと負極視野200bは、第1の正極視野100aと負極視野100bを結ぶ第1の仮想線100cの長さと、第2の正極視野200aと負極視野200bを結ぶ第2の仮想線200cの長さが等しく、第1、第2の各仮想線のほぼ中央部で交差した状態となっている。また、第1の仮想線100cと第2の仮想線200cの交点Pを通り画像形成装置5の被取付面51におろした垂線Lを対称軸として、前記第1の仮想線100cと第2の仮想線200cが検知エリア6上で線対称に形成されている。
【0033】
検知ブロック300において、第1の仮想線100cと第2の仮想線200cを垂線Lを対称軸として検知エリア6上で線対称に形成したのは次の理由による。
【0034】
即ち、このように形成することにより、第1の正極視野100a及び負極視野100bと、第2の正極視野200a及び負極視200bのうち、垂線Lの両側で対向するもの同士について、画像形成装置5の被取付面51からの距離がそれぞれ等しくなる。このため、人が画像形成装置5の被取付面51と直交する方向Q(この方向は人が画像形成装置5に接近または離間する方向であるから接離方向Qという)に移動して画像形成装置5に接近した時に、第1の焦電型センサ10及び第2の焦電型センサ20から、ほぼ同じタイミングでほぼ同じ期間、同位相または逆位相の検知出力を生じさせることができる。そして、これを加算または減算することにより、1つの焦電型センサの出力から判定する場合に較べて大きな出力信号を得ることができ、この大きな出力信号に基づいて人の接近を高精度に検知することができるためである。
【0035】
なお、この目的のためには、第1の正極視野100aと負極視野100bを結ぶ第1の仮想線100cと、第2の正極視野200aと負極視野200bを結ぶ第2の仮想線200cが、各仮想線の端部で交差していても良く、また、仮想線同士は交差することなくハの字状等に配置され、仮想線の延長線同士が交差していても良い。
【0036】
またこの実施形態では、前記接離方向Qにおいて、第1の正極視野100aと第2の正極視野200a、第1の負極視野100bと第2の負極視野200bがそれぞれ対向し、画像形成装置5の被取付面51と平行な方向R(この方向は人が画像形成装置5の側を横断する方向であるから横断方向Rという)においては、第1の正極視野100aと第2の負極視野200b、第2の正極視野200aと第1の負極視野100bが、それぞれ垂線Lの両側で対向する配置となされている。これにより、人が接離方向Qにおいて画像形成装置5に接近した時に、第1の焦電型センサ10及び第2の焦電型センサ20から、逆位相の検知信号が出力される。
【0037】
図5は、前記第1及び第2の焦電センサ10、20からの出力信号を処理して、人の移動方向を判定する判定回路のブロック図である。
【0038】
この判定回路は、第1及び第2の焦電センサ10、20からの出力信号を演算する演算部7と、演算部7による演算結果に基づいて、人の移動方向を判定する判定部8を備えている。なお、演算部7及び判定部8はCPU、RAM等を備えたコンピュータシステムによって構成されている。
【0039】
図4(A)に示した検知エリア6に前記接離方向Qから人が進入し、画像形成装置5に接近するときに、人が検知ブロック300を通過すると、第1の焦電センサ10は赤外線変化を検知して図6(A)の検知信号S1を出力する。一方、前記第1の正極視野100a及び負極視野100bと、第2の正極視野200a及び負極視野200bとは、第1の仮想線100cと第2の仮想線200cが前記垂線Lを対称軸として線対称となるように形成され、かつ前記接離方向Qにおいて、相互の正極視野100a、200a同士が対向し、相互の負極視野100bと200b同士が対向した配置となっているから、第2の焦電センサ20が赤外線変化を検知すると、図6(A)のように、検知信号S1と同タイミングで逆位相の検知信号S2を出力する。
【0040】
前記演算部7は、各センサ10、20からの検知信号S1からS2を減算することにより、図6(A)の判定用信号Sを出力する。判定部8は、演算部7から出力された判定用信号Sの最大値等の値から、人が画像形成装置5に接近していると判定する。
【0041】
演算部7で得られた判定用信号Sの最大値は、それぞれ単独の検知信号S1、S2の最大値よりも大きな値となるから、第1及び第2の焦電型センサ10、20の組み合わせにより人体検知感度が相対的に増大することになり、判定部8による判定精度が向上する。
【0042】
一方、人が横断方向Rに移動し、画像形成装置5の側を通過(横断)するときに、人が検知ブロック300を通過すると、第1の焦電センサ10は赤外線変化を検知して図6(B)の検知信号S1を出力する。一方、第2の焦電センサ20は赤外線変化を検知して検知信号S1と同タイミングで同位相の検知信号S2を出力する。
【0043】
前記演算部7は、各センサ10、20からの検知信号S1からS2を減算することにより、図6(B)の判定用信号Sを出力する。各検知信号S1、S2は同位相であるから、判定用信号Sは出力されない。
【0044】
なお、演算部7が第1及び第2の焦電型センサ10、20からの検知信号S1からS2を減算するのは、画像形成装置5への接近時の検知信号S1、S2が逆位相であることから、これら検知信号を合成した判定用信号Sの最大値を大きくして、接近方向の感度を増大させるためである。また、接近方向の感度を増大させるのは、ユーザが画像形成装置5を使用するためには画像形成装置5へ必ず接近することから、この接近方向への移動を確実に検知して、画像形成装置5を省エネモードから通常モードに復帰させる等の操作が必要になるからである。
【0045】
なお、接近時の検知信号S1、S2が同位相となるように、第1及び第2の焦電型センサ10、20による第1、第2の正負電極視野100a、100b、200a、200bが形成配置されている場合は、演算部7で、各センサからの検知信号S1、S2を加算すればよい。
【0046】
つまり、ユーザが画像形成装置5へ接近するときに、検知信号S1、S2の絶対値が加算されて、判定用信号が大きくなるように、検知信号S1、S2を加算または減算すればよい。
【0047】
このように、画像形成装置5の側を横断する時は、各センサからの検知信号S1、S2を打ち消して判定用信号を小さくし、画像形成装置5に接近する時は各センサからの検知信号S1、S2を重畳して大きな判定用信号を出力させることで、画像形成装置5への接近を高精度に判定することができる。
【0048】
また、図7に示すように、第1のセンサ装置1、第2のセンサ装置2の画像形成装置5の被取付面51への取付角度を変更することにより、検知ブロック300における第1の仮想線100cと第2の仮想線200cの交差角度を変え、人を検知した時の検知信号S1、S2の波形を変化させ、最適な検知精度を実現しても良い。あるいは、第1のセンサ装置1、第2のセンサ装置2の取付角度を変えるのではなく、図8に示すように、基板3に対する焦電型センサ10、20の配置角度を変更したセンサ装置1、2を画像形成装置5に装着することで、検出ブロック300内の第1の仮想線100cと第2の仮想線200cの交差角度を変えても良い。あるいは、レンズ4の倍率を接離方向Qと横断方向Rとで異なるものに形成することにより、第1の仮想線100cと第2の仮想線200cの交差角度を変えても良い。
【0049】
図9は、この発明の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、第1及び第2の各センサ装置1、2のレンズ4を、縦横方向に多数の単位レンズ41が形成された複眼レンズ4により構成したものである。そして、各単位レンズ41の屈折率や焦点距離等を調整することにより、第1の焦電型センサ10による第1の正極視野100a及び負極視野100bと、第2の焦電型センサ20による第2の正極視野200a及び負極視野200bとが、次のように形成されている。
【0050】
即ち、図10(A)に示すように、画像形成装置5の被取付面51に対して直交する水平面に形成された検知エリア6において、第1のセンサ装置1におけるレンズ4の1つの単位レンズ41と、第2のセンサ装置2におけるレンズ4の1つの単位レンズ41とによって、1つの検知ブロック301が形成されると共に、各センサ装置1、2におけるレンズ4のそれぞれの対応する単位レンズ41によって、複数個の検知ブロック301が検知エリア6に分散形成されている。
【0051】
各検知ブロック301は、図4(B)に示した検知ブロック300と同様の構成となされている。即ち、図10(B)に示すように、第1の焦電型センサ10による前記第1の正極視野100aと負極視野100b、第2の焦電型センサ20による第2の正極視野200aと負極視野200bは、第1の正極視野100aと負極視野100bを結ぶ第1の仮想線100cの長さと、第2の正極視野200aと負極視野200bを結ぶ第2の仮想線200cの長さが等しく、各仮想線のほぼ中央部で交差した状態となっている。また、2つの仮想線100cと200cの交点Pを通り画像形成装置5の被取付面51に対しておろした垂線Lを対称軸として、前記2つの仮想線100cと200cが検知エリア6上で線対称に形成されている。なお、第1の仮想線100cと第2の仮想線200cが、各仮想線の端部で交差していても良く、また、仮想線同士は交差することなくハの字状等に配置され、仮想線の延長線同士が交差していても良い。
【0052】
さらに、各検知ブロック301では、接離方向Qにおいて、第1の正極視野100aと第2の正極視野200a、第1の負極視野100bと第2の負極視野200bがそれぞれ対向し、横断方向Rにおいては、第1の正極視野100aと第2の負極視野200b、第2の正極視野200aと第1の負極視野100bが垂線Lの両側でそれぞれ対向する配置となされている。これにより、人が画像形成装置5に接近した時に、第1の焦電型センサ10及び第2の焦電型センサ20から、逆位相の検知信号が出力される。
【0053】
なお、図10のように複数の検知ブロック301が配置された人体検知装置において、人Xの移動方向の判定は、図5に示したのと同じ構成の判定回路で行われる。例えば、人Xが接離方向Qに移動して画像形成装置5に接近すると、第1、第2の焦電型センサ10、20からは逆位相の検知信号が出力され、これが演算部7で減算され、減算後の判定用信号に基づいて判定部8で判定される。
【0054】
この場合、検知エリア6において接離方向Qに複数の検知ブロック301が形成されているから、人Xが画像形成装置5に接近するに従って、第1、第2の焦電型センサ10、20との距離が近くなるから、第1の焦電型センサ10からの検知信号S1と、第2の焦電型センサ20からの検知信号S2を演算部7で減算した時の判定用信号Sの最大値が、図11に示すように、検知ブロック300毎にP1、P2、P3のように徐々に大きくなる。このため、人が接近していることをより確実にかつ高精度に判定できる。
【0055】
ところで、図10のように、各正負極視野を結ぶ第1の仮想線100c及び第2の仮想線200cが相互の中間点で交差する検知ブロック301を形成した場合、検知ブロック301の各正負極視野を頂点とする四角形の形状によって、検知精度を変化させることができる。
【0056】
例えば、図12(A)に示すように、接離方向Qに長い縦長の検知ブロック301aと、図12(B)に示すようにほぼ正方形の検知ブロック301bと、図12(C)に示すように、横断方向Rに長い横長の検知ブロック301cとでは、検知精度が異なる。図12(A)の検知ブロック301aでは、人が画像形成装置5に接近した時に各焦電型センサ10、20から大きな出力が生じ、図12(C)の検知ブロック301cでは、人が画像形成装置5の側を平行に横断した時に、各焦電型センサ10、20から大きな出力が生じる。つまり、検知ブロック301a、301b、301cの順で画像形成装置5に対する接近方向の検知精度が高く、検知ブロック301c、301b、301aの順で画像形成装置5と平行に横断する時の検知精度が高い。
【0057】
そこで、図10のように、複数の検知ブロック301を前記接離方向Qに形成した場合、画像形成装置5の離間側から接近側に向かって、検知ブロック301c、301b、301aと検知ブロックの形状を変化させても良い。この場合は、人が画像形成装置5に接近するに従って、第1の焦電型センサ10からの検知信号S1と、第2の焦電型センサ20からの検知信号S2を演算部7で減算した時の判定用信号Sの最大値の増加度合いが、検知ブロック毎にさらに大きくなる。このため、接近方向の検出精度を更に向上することができる。
【0058】
なお、複数の検知ブロック301を前記横断方向Rに形成した場合、一方側から他方側に向かって、検知ブロックを301a、301b、301cと変化させておき、判定用信号Sの変化を把握することにより、人が左右方向のどちらへ移動しているかを判断することも可能になる。
【0059】
図13は、人が画像形成装置5の被取付面51に対して斜めに移動したことを検出する方法を説明するものである。
【0060】
図4あるいは図10のように配置された検知ブロック300、301において、人が画像形成装置5の被取付面51に対して斜めに移動した場合、第1の焦電センサ10からの検知信号S1と、第2の焦電センサ20からの検知信号S2には、例えば図13に示すように、検知信号の出力開始タイミングに時間T3だけ遅れが生じる。この遅れは、いずれの焦電型センサが温度変化を先に検出するかに依存しており、このため、人が画像形成装置5の被取付面51に対して左右方向のどちらへ移動しているかを判定できる。一方、検知信号S1の最大値V1と検知信号S2の最大値V2、及び検知信号S1、S2のそれぞれ出力開始から最大値V1、V2のタイミングまでの時間T1及びT2にも差を生じる。このため、最大値V1及びV2の値と、出力開始から最大値までの前記時間T1及びT2とから、移動方向(角度)を判定できる。
【0061】
図14は、この発明の更に他の実施形態を示すものである。
【0062】
この実施形態では、図14(A)に示すように、前記接離方向Qにおいて、複眼レンズ4の単位レンズ41のピッチD1及びD2が、変化している。このように構成することで、接離方向Qにおいて、図14(B)に示すように、複数の検知ブロック301のピッチD11、D12を異ならせて、検知ブロック301の配置の疎密状態を変化させることができ、より精度の高い検知を行うことができる。
【0063】
なお、接離方向Qではなく横断方向Rにおいて、複眼レンズ4の単位レンズ41のピッチを変化させても良い。また、接離方向Q及び横断方向Rの両方で、ピッチを変化させても良い。
【0064】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、各センサ装置1、2のそれぞれにレンズ4を設けたが、第1及び第2の焦電センサ10、20に対して1つの共通するレンズを用いても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 第1のセンサ装置
2 第2のセンサ装置
3 基板
4 レンズ
5 画像形成装置
51 被取付面
10 第1の焦電型センサ
10a 正電極
10b 負電極
20 第2の焦電型センサ
20a 正電極
20b 負電極
100a 第1の正極視野
100b 第1の負極視野
200a 第2の正極視野
200b 第2の負極視野
100c 第1の仮想線
200c 第2の仮想線
300、301、301a〜301c 検知ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に装着される人体検知装置であって、
前記被取付体の垂直状の被取付面に装着されるとともに、それぞれ一対の正負電極を有する第1及び第2の焦電型センサと、各焦電型センサを被覆するレンズを備え、
前記レンズにより、前記被取付体の垂直状被取付面に対して直交する面に形成された検知エリアにおいて、前記第1の焦電型センサの正負電極に対応する第1の正極視野と負極視野、及び前記第2の焦電型センサの正負電極に対応する第2の正極視野と負極視野を含む検知ブロックが、前記第1の正極視野と負極視野を結ぶ第1の仮想線またはその延長線と、前記第2の正極視野と負極視野を結ぶ第2の仮想線またはその延長線とが前記検知エリア上で交差する態様で形成されており、
かつ、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線との交点を通り、前記被取付体の垂直状被取付面におろした垂線を対称軸として、第1の仮想線と第2の仮想線が前記検知エリア上で線対称に形成されていることを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線と第2の仮想線が交差している請求項1に記載の人体検出装置。
【請求項3】
前記レンズは該レンズ内に複数の単位レンズが形成された複眼レンズであり、
前記複眼レンズによって、前記検知ブロックが複数形成されている請求項1または2に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記被取付体の被取付面に装着される第1及び第2のセンサ装置の取付角度、及び/または第1及び第2の焦電型センサのセンサ装置内での角度を変更することにより、前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線の交差角度を変更する請求項1〜3のいずれかに記載の人体検知装置。
【請求項5】
前記レンズは、被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向と平行な方向である横断方向とで倍率が異なるものに形成されることにより、前記検知ブロックにおいて、前記第1の仮想線またはその延長線と第2の仮想線またはその延長線の交差角度を変更する請求項1〜4のいずれかに記載の人体検知装置。
【請求項6】
前記複眼レンズにおける複数の単位レンズのピッチが、被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向及び/または垂直状被取付面と平行な方向である横断方向に変化している請求項3に記載の人体検知装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の焦電型センサからの検知信号に基づいて、人の移動方向を判定する判定手段を備えている請求項1〜6のいずれかに記載の人体検知装置。
【請求項8】
人体検知装置が装着される被取付体に接近するときに、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力の絶対値が加算されるように、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力を加算または減算する演算手段を備え、
前記判定手段は、前記演算手段の演算結果に基づいて人の移動方向を判定する請求項7に記載の人体検知装置。
【請求項9】
人体検知装置が装着される被取付体に接近するときに、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力の絶対値が加算されるように、前記第1及び第2の焦電型センサからの出力を加算または減算する演算手段と、
前記演算手段の演算結果に基づいて人の移動方向を判定する判定手段とを備え、
前記判定手段は、前記演算手段による前記複数の検知ブロック毎の演算結果に基づいて、人の移動方向を判定する請求項3〜6のいずれかに記載の人体検知装置。
【請求項10】
前記検知ブロックは、前記被取付体の垂直状被取付面と直交する方向である接離方向に複数形成され、
前記判定手段は、前記演算手段による前記複数の検知ブロック毎の演算結果の最大値が徐々に増加している時に、人体検知装置が装着される被取付体に人が接近していると判定する請求項9に記載の人体検知装置。
【請求項11】
前記判定手段は、第1の焦電型センサからの検知信号と第2の焦電型センサからの検知信号のタイミング差、最大振幅値、最大振幅値となるタイミングにより、人の移動方向を判定する請求項1〜10のいずれかに記載の人体検知装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の人体検知装置が装着されている画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−242140(P2012−242140A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109939(P2011−109939)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】