説明

仕事関数顕微鏡及び光電子顕微鏡

【課題】高倍率の仕事関数顕微鏡を提供する。
【解決手段】仕事関数顕微鏡1は、光を放出する高輝度紫外光ランプ2と、高輝度紫外光ランプ2から放出された光を分光して試料22の表面に導き、試料表面の仕事関数に応じた光電子放出を生じさせるダブルモノクロメータ3と、ダブルモノクロメータ3からの光が照射された試料表面の仕事関数に応じて生じた光電子放出に基づいて、試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡ユニット23とを備え、ダブルモノクロメータ3は、前段分光ユニット4と後段分光ユニットとを有しており、前段分光ユニット4と後段分光ユニットとの少なくとも一方に、トロイダル鏡7を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を放出する光源と、光源から放出された光を分光して試料表面に導き、試料表面の仕事関数に応じた光電子放出を生じさせる分光器と、分光器からの光が照射された試料表面の仕事関数に応じて生じた光電子放出に基づいて、試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡ユニットとを備えた仕事関数顕微鏡、及び光電子顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属等の試料表面に水銀ランプからの光あるいは重水素ランプからの光を照射したときに発生する低速光電子に基づいて、試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡(PEEM)が広く使われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
また、水銀ランプ、重水素ランプからの光を分光器により分光して金属等の試料表面に照射する仕事関数顕微鏡の構成も知られている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
図18は、Cu/W(110)のPEEM像を示す図である。W(110)上のCuの成長過程を、水銀ランプ励起のPEEM像により観察することができる。図17に示すCu/W(110)のPEEM像の視野径は、10μmである。図18に示されたNは、基板上の銅層の数を表す。このNは、LEEMの量子サイズ効果により決定したものである。PEEM像では、Nが大きくなるにつれ、そのCu層の領域が明るく観察されており、この実験結果から、Cu層が厚くなればなるほど、仕事関数が小さくなる(光電子収量が大きい)ことが予想される。
【0005】
図19は、Cu/W(110)の被覆率に対する仕事関数の変化を示すグラフである。このCu/W(110)の系については、Bauerらにより、(マクロな)仕事関数が、図18に示すように、既に測定されている。横軸は、Nを単位とした、平均的な層数として被覆率が与えられている。図18では、仕事関数は、N=2の手前で極小値を示し、その後、Nが増大するにつれて仕事関数が増大している。つまり、Cuの層数が増加すればするほど、仕事関数は増大する。その結果、光放出電子顕微鏡(PEEM)によって観察すれば、Cuの層が厚いところが暗く観察されるはずであり、図17の観察結果と矛盾する。
【0006】
以上のように、図18のPEEMによる観察結果と図19の(マクロな)仕事関数の測定結果とは矛盾している。こうしたことから、分光した紫外線を励起源としてPEEM像を取得し、空間分解された仕事関数を測定することができる仕事関数顕微鏡が望まれている。
【特許文献1】特開2005−106547号公報(平成17年4月21日公開)
【特許文献2】特開2000−215841号公報(平成12年8月4日公開)
【非特許文献1】後藤敬典他著、PEEMによる仕事関数の絶対計測とAESの仕事関数補正、マイクロビームアナリシス第141委員会第110回研究会資料、日本学術振興会、平成14年12月2日(月)〜12月3日(火)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の分光器により試料表面に光を照射する仕事関数顕微鏡の構成では、迷光が生じてシャープなカットオフを得ることができず、また、輝度が低いため、高倍率により試料を観察することが出来ないという問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、輝度がほとんど低下しない明るい像を得ることができ、高倍率の仕事関数顕微鏡及び光電子顕微鏡を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る仕事関数顕微鏡は、上記課題を解決するために、光を放出する光源と、前記光源から放出された光を分光して試料表面に導き、前記試料表面の仕事関数に応じた光電子放出を生じさせる分光器と、前記分光器からの光が照射された試料表面の仕事関数に応じて生じた前記光電子放出に基づいて、前記試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡ユニットとを備え、前記分光器は、入射した前記光を反射する第1反射手段と、前記第1反射手段によって反射された光を回折する回折格子と、前記回折格子により回折した光を反射して前記試料表面に導く第2反射手段とを有し、前記第1反射手段と前記第2反射手段との少なくとも一方に、非球面鏡を設けたことを特徴とする。
【0010】
この特徴により、入射した光を反射する第1反射手段と、回折格子により回折した光を反射して試料表面に導く第2反射手段との少なくとも一方に、非球面鏡が設けられる。このため、収差を減少させることができ、分光器の出射スリットに結像する像の広がりを抑えることができる。このため、分光器の入射スリットの像を、輝度をほとんど低下させることなく、出射スリットに結ぶことができる。従って、輝度がほとんど低下しない明るい像を得ることができ、高倍率の仕事関数顕微鏡を提供することができる。
【0011】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記非球面鏡は、前記第1反射手段に設けられており、前記第1反射手段には、前記非球面鏡によって反射された光を反射して前記回折格子に導く平面鏡がさらに設けられ、前記第2反射手段には、前記回折格子により回折した光を反射する球面鏡が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1反射手段の球面鏡を非球面鏡に置き換えて、収差を減少させて、分光器の出射スリットに結像する像の広がりを抑えることができ、輝度がほとんど低下しない明るい像を得ることができる高倍率の仕事関数顕微鏡を提供することができる。
【0013】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記非球面鏡は、トロイダル鏡であることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、トロイダル鏡であると、上下左右の球面の半径が異なるので、その半径をそれぞれ変えることにより、収差を容易に減少させることができる。
【0015】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記分光器は、ダブルモノクロメータによって構成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、ダブルモノクロメータによって分光器を構成するので、迷光を低減することができ、シャープなカットオフが得られる仕事関数顕微鏡を提供することができる。
【0017】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記分光器は、前段分光ユニットと後段分光ユニットとを有し、前記前段分光ユニットは、入射した前記光を反射する非球面鏡と、前記非球面鏡により反射された光を反射する第1平面鏡と、前記平面鏡により反射された光を回折する前段回折格子と、前記回折格子により回折した光を反射して前記後段分光ユニットに導く第1球面鏡とを含み、前記後段分光ユニットは、前記前段分光ユニットからの光を反射する第2球面鏡と、前記第2球面鏡により反射された光を回折する後段回折格子と、前記後段回折格子により回折した光を反射する第2平面鏡と、前記第2平面鏡により反射された光を反射して前記試料表面に導く第3球面鏡とを含むことが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、簡単な構成によりダブルモノクロメータを構成でき、迷光を低減して、シャープなカットオフが得られる仕事関数顕微鏡を提供することができる。
【0019】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記回折格子は、反射型回折格子であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、回折格子が反射型なので、透過型回折格子よりも分光器をコンパクトに構成することができる。
【0021】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記光源は、高輝度紫外光ランプであることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、試料表面の仕事関数を測定するために必要な波長域を確実にカバーすることができる。
【0023】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記分光器の出射スリットにおける像を前記試料表面に結像させる無収差結像レンズ系をさらに備えることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、無収差結像レンズ系により球面収差を除去することができる。
【0025】
本発明に係る仕事関数顕微鏡では、前記無収差結像レンズ系は、大気中に配置されて前記分光器からの光を透過させる第1無収差レンズと、真空中に配置されて前記第1無収差レンズを透過した光を前記試料表面に導く第2無収差レンズとを含むことが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、簡単な構成により無収差結像レンズ系を実現することができる。
【0027】
本発明に係る光電子顕微鏡は、上記課題を解決するために、光源からの光を試料に照射する光電子顕微鏡であって、前記光源からの光を平行光線にするコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズからの平行光線を前記試料の表面に集光する集光レンズとを備え、前記集光レンズは、球面収差と色収差との双方を除去した無収差結像レンズ系によって構成されていることを特徴とする。
【0028】
この特徴によれば、無収差結像レンズ系によって球面収差と色収差との双方が除去され、高輝度の光電子顕微鏡を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る仕事関数顕微鏡は、以上のように、前記第1反射手段と前記第2反射手段との少なくとも一方に、非球面鏡を設けたので、高倍率の仕事関数顕微鏡を提供することができるという効果を奏する。
【0030】
本発明に係る光電子顕微鏡は、以上のように、集光レンズを、球面収差と色収差との双方を除去した無収差結像レンズ系によって構成するので、高輝度の光電子顕微鏡を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の一実施形態について図1ないし図16に基づいて説明すると以下の通りである。図1は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡1の構成を示す模式図である。
【0032】
仕事関数顕微鏡1は、光を放出する高輝度紫外光ランプ2を備えている。高輝度紫外光ランプ2は、例えば重水素ランプによって構成する。高輝度紫外光ランプ2から放出された光は、無収差レンズ17a・17bから構成される無収差結像レンズ系17を透過する。無収差結像レンズ系17は、ダブルモノクロメータ3の前段分光ユニット4に設けられた入射スリット6に像を結ぶ。
【0033】
図2は、ダブルモノクロメータ3内の光線図である。ダブルモノクロメータ3は、前段分光ユニット4と後段分光ユニット5とを有している。前段分光ユニット4の入り口には、入射スリット6が設けられている。前段分光ユニット4の内部には、非球面鏡であるトロイダル鏡7と、平面鏡8と、反射型グレーティング(回折格子)9と、球面鏡10とが設けられている。後段分光ユニット5の入り口には、中間スリット11が設けられている。後段分光ユニット5の内部には、球面鏡12と、反射型グレーティング13と、平面鏡14と、球面鏡15とが設けられている。後段分光ユニット5の出口には、出射スリット16が設けられている。
【0034】
ダブルモノクロメータ3と無収差結像レンズ系17と高輝度紫外光ランプ2とは、一体に構成されている。
【0035】
無収差結像レンズ系17からの光は、入射スリット6を通り抜けて、トロイダル鏡7により反射され、さらに平面鏡8によって反射されてグレーティング9に入射し、グレーティング9により回折する。グレーティング9により回折した光は、球面鏡10によって反射されて前段分光ユニット4から出射し、後段分光ユニット5に設けられた中間スリット11を通り抜けて球面鏡12により反射される。球面鏡12により反射された光は、グレーティング13によって回折して反射し、平面鏡14に入射する。平面鏡14に入射した光は、平面鏡14によって反射され、さらに球面鏡15によって反射されて、出射スリット16を通り抜けて後段分光ユニット5から出射する。
【0036】
仕事関数顕微鏡1には、真空チャンバ24が設けられている。真空チャンバ24の内部には、試料22が置かれている。仕事関数顕微鏡1は、無収差結像レンズ系18を有している。無収差結像レンズ系18は、出射スリット16と真空チャンバ24との間に配置された無収差レンズ18aと、真空チャンバ24の内部に配置された無収差レンズ18bとを有している。無収差結像レンズ系18は、試料22上に像を結ぶために設けられている。無収差レンズ18aは、大気中に配置されており、無収差レンズ18bは、真空中に配置されている。無収差レンズ18aは、出射スリット16からの光を平行光束にする。
【0037】
無収差レンズ18aと真空チャンバ24との間には、光路切替ミラー21が配置されている。仕事関数顕微鏡1には、水銀ランプ19が設けられている。光路切替ミラー21と水銀ランプ19との間には、無収差レンズ20が設けられている。水銀ランプ19からの光は、無収差レンズ20により平行光束にされ、可動式の光路切替ミラー21により、光路を切り替えることができるようになっている。光の強度は、光路の途中に配置されたフォトダイオードにより測定することができる。後段分光ユニット5と試料22との間の無収差結像レンズ系18は、真空チャンバ24に取り付けられている。この無収差結像レンズ系18の光軸とダブルモノクロメータ3の光軸とを合わせるため、ダブルモノクロメータ3の全体が微調整ステージ(図示せず)に載置されている。
【0038】
出射スリット16から出射した光は、無収差レンズ18a、光路切替ミラー21及び無収差レンズ18bを透過して試料22の表面に入射し、試料表面の仕事関数に応じた光電子が放出される。
【0039】
仕事関数顕微鏡1は、光放出電子顕微鏡(PEEM)ユニット23を備えている。PEEMユニット23は、試料22の表面から放出された光電子に基づいて、試料表面のコントラスト画像を生成する。
【0040】
この仕事関数顕微鏡1では、高輝度紫外光ランプ2のアパーチャ(直径0.5mm)の像を倍率1で前段分光ユニット4の入射スリット6に結像し、後段分光ユニット5の出射スリット16の像を倍率1で試料22上に結像している。高輝度を得るためには、ダブルモノクロメータ3内で、入射スリット6の像を出射スリット16上に1対1で結像させればよい。
【0041】
通常のツェルニ・ターナ型の分光器では、入射スリットからの光を球面鏡、平面鏡を介してグレーティングに入射し、さらに球面鏡を経た後、出射スリットに結像させている。
【0042】
しかしながら、このような通常のツェルニ・ターナ型分光器の配置構成では、光の分散方向と垂直な方向に光が伸びてしまい、これにより輝度が低下するという問題がある。
【0043】
本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡の分光器では、入射スリット6から見て最初に配置されている球面鏡を非球面鏡としている。非球面鏡とすることにより、収差を低減することができ、出射スリット16における像の広がりを抑えることができる。
【0044】
図3は、ダブルモノクロメータ3に設けられた出射スリット16上のイメージを説明するための図である。グラフg1は、入射スリット6を通過する直径0.5mmの光線のイメージを示している。グラフg5は、ダブルモノクロメータ3に球面鏡を使用した従来の構成の場合の出射スリット16上のイメージを示している。グラフg3は、ダブルモノクロメータ3の球面鏡のうちの1つを非球面鏡とした本実施の形態の構成の場合の出射スリット16上のイメージを示している。グラフg1・g3・g5の横軸及び縦軸の単位はmmである。横軸方向が分散方向である。
【0045】
出射スリット16上においては、分散方向と垂直な縦軸方向に像が伸びて、輝度の低下が生じる。グラフg5に示すように、球面鏡を使用した場合は、分散方向と垂直な縦軸方向への像の伸びが顕著であり、縦軸方向に7mm程度まで広がっている。これに対して、非球面鏡を用いた場合は、グラフg3に示すように、縦軸方向に若干伸びているが、ほぼ円形の像となっており、輝度をほとんど低下させることなく、入射スリット6上の像を出射スリット16上に結ぶことができる。
【0046】
グラフg6・g2・g4は、グラフg5・g1・g3の横軸方向に沿った断面における輝度分布をそれぞれ示している。グラフg7は、グラフg5・g1・g3の縦軸方向に沿った断面における輝度分布を示している。グラフg6・g7に示されるように、球面鏡を使用した場合は、グラフg5において縦軸方向に像が広がった分だけ、入射スリット上の像に比べて輝度が大きく低下しており、非球面鏡を用いたグラフg3の場合の輝度約80と比較して、約8分の1の輝度約10程度に低下している。非球面鏡を用いたグラフg3の輝度約80の場合は、入射スリット上の輝度約90の場合の9割程度となっており、本実施の形態によれば、高輝度紫外光ランプ2からの光を、取り込み角の範囲内でほとんど損失なく試料22に照射することができる。
【0047】
図4は、仕事関数顕微鏡1による試料22のPEEM像を説明するための図である。図4に示される上側の2つのPEEM像i1・i2は、視野径150μmのPEEM像である。下側の2つのPEEM像i3・i4は、視野径50μmのPEEM像である。左側の2つのPEEM像i2・i4が、従来の高輝度水銀ランプからの光に基づくPEEM像である。右側の2つのPEEM像i1・i3が、本実施の形態に係るダブルモノクロメータ3により分光した光に基づくPEEM像である。
【0048】
試料22は、Pbを蒸着したW(110)である。PEEM像i1・i2・i3・i4において白い点として観察されるものが、3次元のPb島である。
【0049】
ダブルモノクロメータ3により分光した光の波長は、220.05nm(=5.65eV)である。入射スリット6は1mmとし、中間スリット11は4mmとし、出射スリット16は0.975mmとした。
【0050】
このダブルモノクロメータ3の逆線分散は、0.22nm/mmである。このため、分光した光のバンド幅は、2.15nm(=0.06eV)である。水銀ランプを使用し、視野径150μmのPEEM像i2の撮像時間は0.88秒(溜め込み0.22秒×4枚で平均)であった。ダブルモノクロメータ3による分光光を使用し、視野径150μmのPEEM像i1の撮像時間は4分(溜め込み1分×4枚で平均)であった。水銀ランプを使用し、視野径50μmのPEEM像i4の撮像時間は0.88秒(溜め込み0.22秒×4枚で平均)であった。ダブルモノクロメータ3による分光光を使用し、視野径50μmのPEEM像i3の撮像時間は40分(溜め込み10分×4枚で平均)であった。
【0051】
ダブルモノクロメータ3は、試料22への光の照射位置を調整するために、移動可能に構成されている。ダブルモノクロメータ3によって分光された光の光路には、分光光の強度をモニタするフォトダイオード(図示せず)が設けられている。フォトダイオードには新たに追加したレンズを介して分光光が入射するように構成されており、PEEM像の観察に不必要な部分の光をできる限り効率よくモニタすることができるように構成されている。
【0052】
図5は、仕事関数顕微鏡1に設けられた無収差結像レンズ系のスポット径を説明するための図である。無収差結像レンズ系18は、球面収差と色収差との双方を除去したレンズ系である。無収差レンズ18a・18bをCaF製のレンズによって構成し、収差を除去している。無収差レンズ18a・18bには、透過率を向上させるために、反射防止膜をコートしている。構成した無収差結像レンズ系18の特性を図5に示す。即ち、無収差結像レンズ系18に入射する光のスポット径を0.5mmとし、そこから発散角13.4°(F4.3、F:分光器のF値)で光を出射して、2組のレンズにより集光した場合のスポット径を、いくつかの波長で計算した結果を示している。上段は、2枚レンズによって無収差結像レンズ系18を構成した場合のスポット径を示しており、下段は、3枚レンズによって無収差結像レンズ系18を構成した場合のスポット径を示している。
【0053】
2枚レンズによって無収差結像レンズ系18を構成した場合は、波長λ=300nmのときはスポット径は0.522mmであるが、波長λ=260nmになるとスポット径は0.868mmに増大し、さらに波長λ=230nmになるとスポット径は1.274mmにさらに増大する。また、波長λ=340nmになるとスポット径は0.702mmに増大し、さらに波長λ=380nmになるとスポット径は0.854mmにさらに増大する。このように、2枚レンズでは、波長の変化に応じてスポット径が大きく変化し、色収差を完全には除去することができない。
【0054】
これに対して3枚レンズによって無収差結像レンズ系18を構成した場合は、波長λ=300nmのときのスポット径は0.527mmであり、波長λ=260nmになってもスポット径は0.533mmと、ほとんど変化せず、さらに波長λ=230nmになってもスポット径は0.505mmでほとんど変化しない。また、波長λ=340nmになってもスポット径は0.510mmと、ほとんど変化せず、さらに波長λ=380nmになってもスポット径は0.514mmでほとんど変化しない。このように、3枚レンズによって無収差結像レンズ系18を構成すると、入射する光のスポット径の波長依存性がほとんどなくなり、かつ、スポット径の広がりもほとんどないことがわかる。この結果に基づいて、本実施の形態に係る無収差結像レンズ系18は、3枚レンズによって構成している。
【0055】
図6(a)(b)は、無収差結像レンズ系の透過率を説明するための図である。反射防止膜は、無収差レンズ18a・18bの他、無収差レンズ17a・17bにもコートしている。この反射防止膜は、耐熱的にも問題がないので、試料22の直前の真空中に配置された無収差レンズ18bにも適用することができる。反射防止膜をコートしない無収差レンズの透過率は、2面で約96%である。これに対して、反射防止膜をコートすると、透過率は、2面で約98.5%以上に向上する。2枚の組み合わせ無収差レンズの透過率は、2枚1組で、図6(a)に示すように、92.2%から97%に改善される。3枚の組み合わせ無収差レンズの透過率は、88.5%から95.6%に改善される。
【0056】
図1に示す本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡1では、高輝度紫外光ランプ2から試料22までの間に合計4組の無収差レンズ17a・17b・18a・18bを光が通る。このため、各無収差レンズ17a・17b・18a・18bを2枚レンズによって構成すると、全体として、反射防止膜無しでは72.1%であった透過率が、88.6%に向上する。各無収差レンズ17a・17b・18a・18bを3枚レンズによって構成すると、反射防止膜無しでは61.3%であった透過率が、反射防止膜をコートすることにより、83.4%に向上する。
【0057】
本実施の形態の分光器は、前段分光ユニット4と後段分光ユニット5とを有するダブルモノクロメータ3によって構成されているので、迷光を低減することができる。例えば、分光器をシングルモノクロメータによって構成すると、迷光は1×10−4以下であるのに対し、ダブルモノクロメータ3によって構成すると、迷光は1×10−9以下に低減する。
【0058】
ダブルモノクロメータには、加分散タイプと零分散タイプとがある。分解能の観点から見れば、加分散タイプの方が有利であるが、加分散タイプは分解能が優れている分だけバンド幅が狭くなり、光強度が落ちる。仕事関数顕微鏡では輝度の高い光源が必要であるため、本実施の形態のダブルモノクロメータ3は、零分散タイプによって構成している。
【0059】
輝度については、無収差レンズを組み合わせることにより、高輝度化を図っている。無収差レンズは、高輝度紫外光ランプ2からの光に基づく像を入射スリット6に結像する無収差結像レンズ系17と、出射スリット16の像を試料22上に結像する無収差結像レンズ系18との2箇所で用いている(無収差レンズ17a・17b・18a・18b)。
【0060】
可動式の光路切替ミラー21で光路を切り替えるように構成することにより、水銀ランプ19を高輝度紫外光ランプ2と併用することができる。
【0061】
仕事関数を測定するためには、220nm(5.65eV)〜350nm(3.55eV)程度の波長域をカバーする必要がある。水銀ランプでは、250nm付近から短波長で急激な強度の減少が生じるので、仕事関数を測定するために使用することはできない。
【0062】
本実施の形態では、高輝度紫外光ランプ2からの光により仕事関数を測定する。高輝度紫外光ランプ2からの光の発光スペクトルでは、160nm付近に非常に強い線があり、長波長側では、なだらかに光の強度が下がっていく。
【0063】
市販の高輝度紫外光ランプには、30Wのものと150W(ないしは200W)のものがある。高輝度紫外光ランプの光源の大きさは、アパーチャサイズによって決まる。30Wの高輝度紫外光ランプではアパーチャサイズが直径0.5mmであり、150Wクラスの高輝度紫外光ランプであると、アパーチャサイズが直径1mmである。150Wの高輝度紫外光ランプの方が強度自身は強いが、輝度で考えると両者の差はほとんどないか、むしろ30Wの方が高い場合もある。
【0064】
本実施の形態では、アパーチャサイズの小さな150Wクラスの高輝度紫外光ランプによる構成も検討したが、熱的に殆ど不可能であり、また、150Wクラスになると、ランプ自身がかなり大型になり、水冷も必要になってくる。このため、本実施の形態では、30Wの高輝度紫外光ランプを光源として採用した。
【0065】
ダブルモノクロメータ3で用いるグレーティング9・13の候補として、1200本/mmでブレーズ波長が200nmのものと、1800本/mmでブレーズ波長が250nmのものがあった。このどちらを選択するかにあたり、光の強度及び分解能の両者で検討を行った。
【0066】
光の強度は、グレーティングの回折効率によって決まる。波長230nmでは、1800本/mmのグレーティングは、1200本/mmのグレーティングよりも、約1.3倍強度が大きい。波長300nmでは、1800本/mmのグレーティングは、1200本/mmのグレーティングよりも、約1.46倍強度が大きい。
【0067】
実際に得られる光の強度は、上記の回折効率と波長分散によるバンド幅の違いにより決まる。1200本/mmのグレーティングと1800本/mmのグレーティングとの間の分散比は、1:1.5である。本実施の形態の零分散タイプのダブルモノクロメータ3では、この分散比がそのまま使えるので、分散による光量は、1200本/mmのグレーティングの方が1.5倍大きいことになる。
【0068】
以上の回折効率、分散比から、1200本/mmのグレーティングの光量を1とすると、1800本/mmのグレーティングの光量は、
230nmにおいて、(1.30/1.5)=0.87、
300nmにおいて、(1.46/1.5)=0.98、
となる。
【0069】
この結果から、どちらのグレーティングを用いても、光の強度的には、さほど大きな違いがないことがわかる。
【0070】
モノクロメータの分解能は、出射スリット上でのスペクトルの広がり(逆線分散)とスリット幅とによって決まる。零分散タイプのダブルモノクロメータの場合、1200本/mmのグレーティングの逆線分散は、3.2nm/mmであり(波長が250nmで0.06eV/mm)、1800本/mmのグレーティングでは、2.2nm/mmである(波長が250nmで0.04eV/mm)。当然の結果として、1800本/mmのグレーティングの方が、分解能が高いことが分かる。
【0071】
上述した光の強度と分解能とから総合的に判断して、本実施の形態では、1800本/mmでブレーズ波長が250nmのグレーティングによって、グレーティング9・13を構成した。
【0072】
図7(a)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡によるイメージ像(スリット像)を示す図であり、図7(b)は、従来の仕事関数顕微鏡によるイメージ像を示す図である。図7(a)(b)ともに、光源サイズは0.5mmであり、1800本/mmのグレーティングを使用し、光源からの光の波長は250nmである。完全に焦点が合った位置の出口スリット像が示されている。図7(a)(b)において、縦方向が波長方向である(後に説明する像もすべて同じである)。図7(a)(b)に示す像は、全体が約0.5mmの大きさである。図7(b)に示すイメージ像は、球面鏡による従来の構成の場合の像であり、図7(a)に示す本実施の形態のイメージ像よりも波長方向に伸びていることが判る。
【0073】
図8(a)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡によるスポット像を示す図であり、図8(b)は、従来の仕事関数顕微鏡によるスポット像を示す図である。光源は点光源である。1800本/mmのグレーティングを使用し、光源からの光の波長は250nmである。
【0074】
図8(a)に示すスポット像は、点光源を出口スリット付近に投影した時の像である。やはり、縦方向が波長方向である。正方形の枠は、0.1mm(100μm)の大きさである。5個の正方形のうちの中央の正方形枠内には、点光源を焦点位置に投影したときの像が示されている。左の2個の正方形枠内には、出口スリットの手前に投影したときの像が示されている。最も左側の正方形枠内の像は、分光器内の光位置スリットよりも1mm(1000μm)手前に投影したときの像であり、左から2番目の正方形枠内の像は、0.5mm(500μm)手前に投影したときの像である。焦点位置に投影したときは、像は0.1mmの正方形枠内に入っている。投影位置が焦点からずれると、図8(a)に示すように、スポット像が大きくなり、正方形枠からはみ出すが、図8(b)に示す従来の構成によるスポット像と比較すると、はみ出しの程度は、はるかに小さく、ぼけの程度がはるかに小さいことは一目瞭然である。
【0075】
図8(b)に示す従来の球面鏡による構成に基づくスポット像は、点光源を焦点位置に投影したときでも、0.1mmの正方形枠内からはみ出る。投影位置が焦点からずれると、スポット像は、急激にぼやける。
【0076】
図9(a)は、従来の仕事関数顕微鏡による他のイメージ像(スリット像)を示す図であり、図9(b)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡による他のイメージ像(スリット像)を示す図である。1800本/mmのグレーティングを使用し、光源からの光の波長は250nmである。図9(a)に示すように、従来の構成(通常の球面鏡による構成)によるスリット像は、大きく縦伸びしていることが判る。
【0077】
図10(a)は、従来の仕事関数顕微鏡による他のスポット像を示す図であり、図10(b)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡による他のスポット像を示す図である。1800本/mmのグレーティングを使用し、光源からの光の波長は250nmである。
【0078】
前述した図9(a)(b)に示すスリット像が、焦点位置をずらした場合、それぞれ、どのように変化するかを示したものが、図10(a)(b)である。図10(a)(b)のそれぞれの5個の正方形枠内に点像が示されているが、中央の正方形枠が焦点位置である。それぞれ光軸方向に±5mmおよび±10mmずらした場合の点像が示されている。図10(a)(b)の正方形枠の大きさは縦横とも5mmである。図10(a)(b)に示される矢印方向は、波長方向を表している。この矢印方向に対して垂直な方向がスリット方向である。
【0079】
図11は、本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図である。1枚目のレンズで光をコリメートし、2枚目のレンズで集光する。どちらのレンズも焦点距離は80mmである。レンズのW.D.は70mm以上であり、レンズ外径は30mm以下である。1枚目のコリメートレンズでコリメートした後のビーム径は、分光器のF値が4.3(拡がり角度:全角13.4°)であり、レンズの焦点距離が80mmなので、約9.3mmである。この光を焦点距離80mmのレンズで集光させたときの収差図を示している。
【0080】
図12は、本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長300nm)である。図13は、波長230nmのときの収差図である。図14は波長380nmのときの収差図を示しており、図15は波長260nmのときの収差図を示している。図16は、波長340nmのときの収差図を示している。
【0081】
本実施の形態では、入射スリット6から見て最初に配置されている球面鏡を非球面鏡とした例を示したが、本発明はこれに限定されない。すべての球面鏡を非球面鏡としてもよいし、また、入射スリット6から見て最後に配置されている球面鏡を非球面鏡としてもよい。すなわち、分光器内に配置されている球面鏡のうちの少なくとも1つの球面鏡を非球面鏡とすれば収差が減少し、出射スリット16における像の広がりを抑えることができる。
【0082】
また、非球面鏡の例としてトロイダル鏡の例を説明したが、本発明はこれに限定されない。トロイダル鏡以外の非球面鏡であっても、収差が減少し、出射スリット16における像の広がりを抑えることができる。容易に作製することができる点で、トロイダル鏡が好ましい。
【0083】
図17は、本実施の形態に係る光電子顕微鏡31の構成を示す模式図である。前述した球面収差と色収差との双方を除去した3枚レンズは、光電子顕微鏡31に対しても適用することができる。
【0084】
水銀ランプ、重水素ランプ並びにこれらと同等のランプ等の光源32から発した紫外線波長領域の光線は、一対の非球面レンズからなるコンデンサレンズ33を通過して平行光線となり、その後、光源ハウジング34内を経由して、透過窓35を介して真空チャンバ37内に進行し、集光レンズ38により、試料39の表面に集光した状態で照射される。透過窓35は、図示しない排気機構により10−7Pa未満の超高真空の圧力状態に維持される真空チャンバ37との間の隔壁36に設けられる。この透過窓35は、平板形状の石英窓で構成されるため、コンデンサレンズ33で平行光線となった紫外光は、透過窓35で進路を変えることなく、平行光線のまま集光レンズ38に入射する。
【0085】
集光レンズ38を、前述の球面収差と色収差との双方を除去した3枚レンズによって構成すると、球面収差と色収差との双方が除去され、高輝度の光電子顕微鏡を実現することができる。また、コンデンサレンズ33を、球面収差と色収差との双方を除去した3枚レンズによって構成してもよい。
【0086】
なお、本実施の形態では、3枚レンズまたは2枚レンズにより球面収差と色収差との双方を除去する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。4枚以上のレンズによって球面収差と色収差との双方を除去するように構成してもよい。
【0087】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、光を放出する光源と、光源から放出された光を分光して試料表面に導き、試料表面の仕事関数に応じた光電子放出を生じさせる分光器と、分光器からの光が照射された試料表面の仕事関数に応じて生じた光電子放出に基づいて、試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡ユニットとを備えた仕事関数顕微鏡、及び光電子顕微鏡に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡の構成を示す模式図である。
【図2】上記仕事関数顕微鏡に設けられたダブルモノクロメータ内の光線図である。
【図3】上記ダブルモノクロメータに設けられた出射スリット上のイメージを説明するための図である。
【図4】上記仕事関数顕微鏡による試料のPEEM像を説明するための図である。
【図5】上記仕事関数顕微鏡に設けられた無収差結像レンズ系のスポット径を説明するための図である。
【図6】(a)(b)は、上記無収差結像レンズ系の透過率を説明するための図である。
【図7】(a)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡によるイメージ像を示す図であり、(b)は、従来の仕事関数顕微鏡によるイメージ像を示す図である。
【図8】(a)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡によるスポット像を示す図であり、(b)は、従来の仕事関数顕微鏡によるスポット像を示す図である。
【図9】(a)は、従来の仕事関数顕微鏡による他のイメージ像を示す図であり、(b)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡による他のイメージ像を示す図である。
【図10】(a)は、従来の仕事関数顕微鏡による他のスポット像を示す図であり、(b)は、本実施の形態に係る仕事関数顕微鏡による他のスポット像を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図である。
【図12】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長300nm)である。
【図13】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長230nm)である。
【図14】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長380nm)である。
【図15】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長260nm)である。
【図16】本実施の形態に係る分光器の出射スリットを1対1で結像させたときの収差図(波長340nm)である。
【図17】本実施の形態に係る光電子顕微鏡の構成を示す模式図である。
【図18】Cu/W(110)のPEEM像を示す図である。
【図19】Cu/W(110)の被覆率に対する仕事関数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1 仕事関数顕微鏡
2 高輝度紫外光ランプ(光源)
3 ダブルモノクロメータ(分光器)
4 前段分光ユニット
5 後段分光ユニット
6 入射スリット
7 トロイダル鏡(非球面鏡、第1反射手段)
8 平面鏡(第1反射手段、第1平面鏡)
9 グレーティング(回折格子、前段回折格子)
10 球面鏡(第2反射手段、第1球面鏡)
11 中間スリット
12 球面鏡(第2球面鏡)
13 グレーティング(後段回折格子)
14 平面鏡(第2平面鏡)
15 球面鏡(第3球面鏡)
16 出射スリット
17 無収差結像レンズ系
17a、17b 無収差レンズ
18 無収差結像レンズ系
18a 無収差レンズ(第1無収差レンズ)
18b 無収差レンズ(第2無収差レンズ)
19 水銀ランプ
20 無収差レンズ
21 光路切替ミラー
22 試料
23 光放出電子顕微鏡ユニット
24 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出する光源と、
前記光源から放出された光を分光して試料表面に導き、前記試料表面の仕事関数に応じた光電子放出を生じさせる分光器と、
前記分光器からの光が照射された試料表面の仕事関数に応じて生じた前記光電子放出に基づいて、前記試料表面のコントラスト画像を生成する光放出電子顕微鏡ユニットとを備え、
前記分光器は、入射した前記光を反射する第1反射手段と、
前記第1反射手段によって反射された光を回折する回折格子と、
前記回折格子により回折した光を反射して前記試料表面に導く第2反射手段とを有し、
前記第1反射手段と前記第2反射手段との少なくとも一方に、非球面鏡を設けたことを特徴とする仕事関数顕微鏡。
【請求項2】
前記非球面鏡は、前記第1反射手段に設けられており、
前記第1反射手段には、前記非球面鏡によって反射された光を反射して前記回折格子に導く平面鏡がさらに設けられ、
前記第2反射手段には、前記回折格子により回折した光を反射する球面鏡が設けられている請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項3】
前記非球面鏡は、トロイダル鏡である請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項4】
前記分光器は、ダブルモノクロメータによって構成されている請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項5】
前記分光器は、前段分光ユニットと後段分光ユニットとを有し、
前記前段分光ユニットは、入射した前記光を反射する非球面鏡と、
前記非球面鏡により反射された光を反射する第1平面鏡と、
前記平面鏡により反射された光を回折する前段回折格子と、
前記回折格子により回折した光を反射して前記後段分光ユニットに導く第1球面鏡とを含み、
前記後段分光ユニットは、前記前段分光ユニットからの光を反射する第2球面鏡と、
前記第2球面鏡により反射された光を回折する後段回折格子と、
前記後段回折格子により回折した光を反射する第2平面鏡と、
前記第2平面鏡により反射された光を反射して前記試料表面に導く第3球面鏡とを含む請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項6】
前記回折格子は、反射型回折格子である請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項7】
前記光源は、高輝度紫外光ランプである請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項8】
前記光源から放出された光を前記分光器の入射スリットに結像させる無収差結像レンズ系をさらに備える請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項9】
前記分光器の出射スリットにおける像を前記試料表面に結像させる無収差結像レンズ系をさらに備える請求項1記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項10】
前記無収差結像レンズ系は、大気中に配置されて前記分光器からの光を透過させる第1無収差レンズと、真空中に配置されて前記第1無収差レンズを透過した光を前記試料表面に導く第2無収差レンズとを含む請求項9記載の仕事関数顕微鏡。
【請求項11】
光源からの光を試料に照射する光電子顕微鏡であって、
前記光源からの光を平行光線にするコンデンサレンズと、
前記コンデンサレンズからの平行光線を前記試料の表面に集光する集光レンズとを備え、
前記集光レンズは、球面収差と色収差との双方を除去した無収差結像レンズ系によって構成されていることを特徴とする光電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図4】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−8852(P2008−8852A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181926(P2006−181926)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(503355269)学校法人 大阪電気通信大学 (4)
【Fターム(参考)】