説明

伝熱プリプレグ及びその製造方法とこれを用いた伝熱プリント配線板

【課題】従来のプリント配線板の場合、その伝熱性を高めた場合、割れやすくなるという課題があった。
【解決手段】プリント配線板の製造に用いるプリプレグとして、開口率の大きなガラス織布13を用い、ガラス織布13の表面のみならず、ガラス織布13の開口部18に、エポキシ樹脂や無機フィラーからなる伝熱体20を充填してなる伝熱プリプレグ11を用いることで、その熱伝導性を高めても割れにくい伝熱プリント配線板27を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱が要求されるパワー系半導体、及び高機能半導体等の各種電子部品を高密度化に実装する際に用いられる伝熱プリプレグ及びその製造方法とこれを用いた伝熱プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品実装用のプリント配線板としては、ガラスエポキシ樹脂からなるプリプレグと銅箔とからなる部材を、複数枚積層、一体化し、硬化したものが用いられている。更に機器の小型化、高性能化に伴い、電子部品の発熱が課題となることも多く、放熱性(あるいは伝熱性)を有するプリント配線板が求められる。次に伝熱プリント配線板について説明する。
【0003】
例えば熱伝導性を高めた結晶性エポキシ樹脂を用いて、熱伝導性を高めるものが提案されている。図6を用いてその一例を説明する。すなわち図6(A)(B)は、共にメソゲン基を有する結晶性ポリマーを、磁場を用いて配向させ、熱伝導率を高くしようとする様子を説明する断面図である(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図6(A)(B)において、複数個の磁石1(例えば磁場発生手段としての永久磁石)の間には、矢印2で示した磁力線が発生している。そしてこの矢印2で示した磁力線の間に、金型3の中にセットした樹脂4(例えば硬化する前の液体状態の結晶性エポキシ樹脂)を置き、この磁場の中で樹脂4を熱硬化させる。図6(A)は樹脂4に対して垂直な方向に磁場をかける様子を、図6(B)は平行な方向の磁場をかける様子を示す。
【0005】
しかし元々磁化されにくい結晶性エポキシを配向させるためには、磁束密度5〜10テラスの高磁場中で、温度150〜170℃に加熱した金型3の内部で、10分〜1時間硬化させる等の特殊な処理が必要になる。またこうして形成した結晶性エポキシ樹脂は、熱伝導性や物理強度(例えば曲げ強度)に異方性を有している可能性がある。その結果、こうした結晶性エポキシ樹脂を用いて作製したプリプレグやプリント配線板は、方向依存性(あるいは異方性)を有してしまうため、柔軟性が低下する(例えば耐折り曲げ性が低下する、あるいは曲げると割れやすい)という課題が発生しやすい。
【0006】
一方、従来からプリプレグの熱伝導率を高めるために、無機質充填材を高密度に添加することが提案されていた。しかし無機質充填材を高密度に添加したシート状のプリプレグは、硬くて曲がりにくく、捲回しただけで割れることもある。また、熱伝導率の低いガラス繊維に対する無機質充填材の量を増やすためにはガラス織布を薄くする必要があり、強度が低下する。
【0007】
そしてこのように硬くて曲がりにくいプリプレグを積層、硬化してなるプリント配線板自体も、曲げると折れやすくなる。そのため、こうしたプリント配線板に電子部品を機械実装する際あるいは実装後のプリント配線板の機器への装着時に、課題が発生する可能性がある。
【0008】
こうした課題に対して、熱伝導性と取り扱い性(例えば、プリプレグシートの作業性、耐折り曲げ性)の両方を改善しようとする提案がなされていた。
【0009】
図7は、折り曲げ性を改善した従来の伝熱プリプレグの一例を示す断面図であり、例えば特許文献2で提案されたものである。図7において、従来の伝熱プリプレグ5は、ガラス繊維6、熱硬化性樹脂層(内層部分)7、無機質充填材添加熱硬化性樹脂層(外層部分)8から構成されている。ここで無機質は、外層部分を構成する無機質充填材添加熱硬化性樹脂層8の熱伝導率を高めるために添加したものである。そして図7に示すように、無機質充填材添加熱硬化性樹脂層8は、従来の伝熱プリプレグ5の外層部分を構成し、ガラス繊維6を覆う部分(いわゆる内層部分)は、無機質充填材を含まない熱硬化性樹脂層7とする。無機質充填材が含浸しないガラス繊維6の層が存在することによって、ガラス繊維6の剛性が増加することなく(あるいはガラス繊維6の柔軟性を保つことで)、シート状の従来の伝熱プリプレグ5の折り曲げ性(あるいは柔軟性)を高めるものである。
【0010】
しかし図7に示した構成では、従来のプリプレグ5の厚み方向での熱伝導性が阻害されてしまう可能性がある。これはガラス繊維6や熱硬化性樹脂層7の熱伝導率が、外層部分の無機質充填材添加熱硬化性樹脂層8に比べて、熱伝導率が低いためである。
【特許文献1】特開2004−225054号公報
【特許文献2】特開平3−17134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように従来のプリント配線板の場合、プリント配線板の熱伝導率を高めようとすると、折り曲げると割れやすくなると言った柔軟性が低下しやすく、柔軟性を高めようとすると熱伝導率を高めることが困難になるという課題があった。
【0012】
そこで本発明は、プリプレグを構成するガラス織布に着目し、プリント配線板の熱伝導率を高めながらも、その柔軟性を保てるプリプレグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明は、硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる伝熱プリプレグであって、この伝熱プリプレグは、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布または不織布と、このガラス織布に含浸した半硬化樹脂体とからなり、前記半硬化樹脂体は、半硬化状態の樹脂と、その樹脂中に分散した無機フィラーと、から構成した伝熱プリプレグとするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の伝熱プリプレグ及びその製造方法とこれを用いた伝熱プリント配線板によれば、プリプレグの厚み方向における伝熱性に影響を与えるガラス織布部分に、積極的に開口部を形成し、この開口部に伝熱体を充填することで、熱伝導率の低いガラス織布または不織布を介さずに、厚み方向に熱を伝えるルートを形成することで、厚み方向の熱伝導率を高めることができる。従って、無機質充填材が比較的低い密度でも厚み方向の高熱伝導化を実現できるためプリプレグの柔軟性を確保できる。また、ガラス織布の厚みを厚くしても同様の効果が得られる。
【0015】
これにより、シート状でのプリプレグ自体での取り扱い性、更にはこのプリプレグシートを積層、硬化して作製したプリント配線板の機械的強度を高められる(例えば、曲げても割れにくい)。
【0016】
そして本発明の伝熱プリプレグを用いて作製した伝熱プリント配線板を用いることで、半導体の温度が低減し、熱対策が容易になる。また、電子部品等を高密度実装することができ、液晶テレビやプラズマTV、各種電子機器の小型化、高性能化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における伝熱プリプレグについて説明する。
【0018】
図1(A)、(B)は、それぞれ実施の形態における伝熱プリプレグの断面図と、上面図である。
【0019】
まず図1(A)を用いて説明する。図1(A)は、実施の形態1における伝熱プリプレグの断面図である。図1(A)において、11は伝熱プリプレグ、12はガラス繊維、13はガラス織布、14は半硬化樹脂体、15は矢印である。矢印15は、ガラス繊維12が織られてなるガラス織布13の開口部(この開口部はバスケットホール部と呼ばれることもある)を示している。
【0020】
図1(A)に示すように、実施の形態1で説明する伝熱プリプレグ11は、ガラス繊維12を開口部(図1(A)の矢印15で示す部分)を積極的に形成するように織り上げてなるガラス織布13と、このガラス織布13に含浸させた半硬化樹脂体14から構成したものである。そしてガラス織布13の開口部(矢印15で示した部分)や、ガラス織布13の表面は、半硬化樹脂体14で覆われている(あるいは充填されている)。
【0021】
次に図1(B)を用いて、ガラス繊維12に形成した開口部(図1(A)の矢印15で示した部分)について説明する。図1(B)は、図1(A)に示した伝熱プリプレグ11の上面図に相当する。
【0022】
図1(B)において、伝熱プリプレグ11のガラス織布13を示すため、半硬化樹脂体14は図示していない。図1(B)において、16は縦糸、17は横糸であり、縦糸16や横糸17は共に複数本のガラス繊維12を束ねたものからなる。18は開口部である。開口部18は、縦糸16と横糸17の無い部分(縦糸16と横糸17の間に発生した隙間、図1(B)では長方形(あるいは四角形)に図示しているが、この形状に限定する必要はない)である。
【0023】
実施の形態1では、ガラス織布13に、図1(B)に示すように積極的に開口部18を形成し、この開口部18に図1(A)に示すように、半硬化樹脂体14を充填することで、伝熱プリプレグ11の厚み方向での伝熱性を高めることになる。
【0024】
なおガラス織布13における開口率は、20%以上50%以下が望ましい。開口率が20%未満の場合、伝熱プリプレグ11の厚み方向の熱伝導性(つまり開口部18を介した熱伝導)に影響を与える場合がある。また開口率が50%を超えた場合、伝熱プリプレグ11の引張り強度に影響を与える可能性がある。
【0025】
ここで開口率とは、スクリーン印刷等に使われるスクリーンにおいて、オープニング率とも呼ばれる割合に相当する。この開口率は、ガラス織布13を投影した場合における、全体に対する開口部18の面積割合を百分率(単位は%)で表示したものである。
【0026】
なお開口率は、図1(B)等に示した開口部18だけでなく、ガラス繊維12の本数を減らして編み上げた場合に発生する、互いに平行なガラス繊維12の隙間や互いに交差するガラス繊維12の隙間に無数に発生する小さな(例えばガラス繊維12の直径の0.5倍から2.0倍程度の、あるいは数ミクロン程度の)開口部18も含む(図示していない)。
【0027】
ガラス織布13(あるいはガラス不織布、なおガラス不織布は図示していない)の厚みは、10ミクロン以上300ミクロン以下が望ましい。ガラス織布13(ガラス不織布も含む)の厚みが10ミクロン未満の場合、伝熱プリプレグ11(あるいは伝熱プリプレグ11を硬化してなる伝熱プリント配線板)の機械強度(例えば引張り強度等)に影響を与える可能性がある。ガラス織布13(あるいはガラス不織布)の厚みが300ミクロンを越えた場合、伝熱プリプレグ11の厚みが増加してしまうため、取り扱い性(例えば、捲回しにくい等)に影響を与える場合がある。
【0028】
なおガラス織布13の代わりにガラス不織布を用いることで、その開口率を上げられるため、伝熱プリプレグ11の伝熱性を高められる。またガラス織布13を用いることで、伝熱プリプレグ11のXY方向での強度を上げる効果が得られるため、その寸法安定性、機械強度を高める効果が得られる。
【0029】
なお開口率の測定が難しい場合は、通気度で開口率を評価することもできる。なお通気度の測定には、JIS L1096 8.27.1 A法(フラジール形法)や、国際規格(ASTM D737、TAPPI T251等を参考にすることができる。発明者らの実験によると、通気度は300cc/cm2/sec以上600cc/cm2/sec以下が望ましい結果が得られた。通気度が200cc/cm2/sec未満の場合、ガラス繊維の開口部への半硬化樹脂体14の充填効果が得られない場合がある。通気度が600cc/cm2/secより大きいガラス織布の場合、強度が低くなったり、高価で取扱いが難しいものとなる場合がある。
【0030】
更に伝熱プリプレグ11をXY方向に縮みにくくすることで、伝熱プリプレグ11のZ方向(厚み方向)を伸びにくくすることができる。この結果、プリント配線板のZ方向の信頼性(例えば、スルーホール部分の接続信頼性)を高める効果が得られる。これはZ方向の熱膨張が抑えられるためである。
【0031】
またガラス織布13(ガラス不織布も含む)の、開口率を高めることで、伝熱プリプレグ11のレーザやドリルによるビア孔の加工性を高める効果も得られる。
【0032】
なお伝熱プリプレグ11の厚みは、20ミクロン以上500ミクロン未満が望ましい。伝熱プリプレグ11の厚みが20ミクロン未満の場合、伝熱プリプレグ11(あるいは伝熱プリプレグ11を硬化してなる伝熱プリント配線板)の機械強度(例えば引張り強度等)に影響を与える可能性がある。また厚みが500ミクロンを超えた場合、取り扱い性(例えば、捲回しにくい等)に影響を与える場合がある。
【0033】
なおガラス織布13の厚みより、伝熱プリプレグ11の厚みの方を厚くすることが望ましい。これは伝熱プリプレグ11の方を、ガラス織布13の厚みより厚くすることで、上付き樹脂(いわゆる、ガラス織布13の表面を覆う余分な半硬化樹脂体14)の厚みを確保できる。そしてこの上付き樹脂を一定量、確保することで、例えば後述する図4(A)、(B)における内層パターンとなる銅箔23の厚みの吸収効果が得られる。この厚み吸収効果によって、例えば後述する図4(C)に示す伝熱プリント配線板27の表面に、凹凸が発生しにくくなる。
【0034】
次に図2を用いて、伝熱プリプレグ11の製造方法の一例について説明する。図2は、伝熱プリプレグ11の製造方法の一例を断面で説明する模式図である。図2において、19は設備であり、プリプレグの製造設備の一部(例えば、ロール等の回転部分)を模式的に示すものである。20は伝熱体、21は槽である。槽21の中には、半硬化樹脂体14を形成する部材、つまり伝熱体20を、所定の溶剤(例えばメチルエチルケトン、シクロペンタノン等)に溶解した状態でセットしている。
【0035】
まずガラス織布13として、厚み15ミクロン、開口率5%のものを作製した。そして図2に示すように、ガラス織布13を、設備19にセットし、矢印15aに示す方向に送り、槽21にセットした伝熱体20を含浸させる。そして設備19を、矢印15bに回しながら、ガラス織布13に含浸させた伝熱体20の含浸量を調整する。そして乾燥機等(図示していない)の中を矢印15cのように流して伝熱体20から溶剤成分を除去する。更に加熱等により伝熱体20に含まれる樹脂成分を半硬化状態(本硬化の前の状態、いわゆるBステージ状態)とし、半硬化樹脂体14とする。こうして伝熱プリプレグ11を、連続的に作製する。なお伝熱プリプレグ11の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0036】
次に槽21にセットする伝熱体20について説明する。伝熱体20は、伝熱プリプレグ11が硬化後に熱伝導率が0.5W/(m・K)以上、20W/(m・K)以下となる材料を選ぶことが望ましい。硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)未満の場合、開口部18を介した熱伝導の効果が得られにくい場合がある。また熱伝導率が20W/(m・K)を越える材料は、高価であり、取り扱いが難しい場合がある。
【0037】
ここで硬化後に0.5W/(m・K)以上、20W/(m・K)以下を実現するには、少なくとも伝熱体20として、樹脂とこの樹脂中に分散した無機フィラーと、から構成することが望ましい。
【0038】
そしてこの樹脂としてはエポキシ樹脂を、無機フィラーとしてはアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、酸化マグネシウム、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーとすることができる。
【0039】
更には、樹脂をエポキシ樹脂とゴム樹脂の混合物、あるいはエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂の混合物とすることもできる。なおエポキシ樹脂等を硬化させるための硬化剤等を必要に応じて添加することは言うまでもない。
【0040】
なおこれら樹脂を半硬化状態とすることで、伝熱プリプレグ11となる。
【0041】
なお伝熱プリプレグ11に占める半硬化樹脂体14の割合は、伝熱プリプレグ11全体の40体積%以上95体積%以下が望ましい。40体積%未満の場合、伝熱プリプレグ11の伝熱性が低下する場合がある。また95体積%より高い場合、伝熱プリプレグ11の柔軟性に影響を与える場合があるためである。
【0042】
次に伝熱プリプレグ11を用いて、熱伝導性の高いプリント配線板を作製する様子について説明する。
【0043】
図3(A)(B)は、共に伝熱プリプレグ11の表面に銅箔を固定(あるいは一体化)する方法の一例を説明する断面図である。図3(A)(B)において、22はプレス、23は銅箔、24は積層体である。
【0044】
まず図3(A)に示すように、半硬化樹脂体14と、これを含浸させたガラス繊維12と、からなる伝熱プリプレグ11の一面以上に銅箔23をセットする。そして、プレス22を、矢印15に示すように動かし、伝熱プリプレグ11の一面以上に銅箔23を貼り付ける。なお図3(A)(B)において、プレス22にセットする金型等は図示していない。そしてこれら部材を所定温度で加圧一体化する。その後、図3(B)に示すようにプレス22を矢印15の方向に引き離す。こうして銅箔23を伝熱プリプレグ11の一面以上に固定し、積層体24とする。このようにして接着剤等を用いずに銅箔23を伝熱プリプレグ11の上に固定することで、出来上がった積層体24の高伝熱化を実現する。
【0045】
次に積層体24の一面以上に固定した銅箔23を所定形状にパターニングする。なおパターニングの工程(フォトレジストの塗布、露光、現像、銅箔23のエッチング、フォトレジストの除去工程等)は図示していない(省略している)。
【0046】
次に図4(A)〜(C)を用いて、積層体24を積層し、4層の伝熱プリント配線板を作製する様子を説明する。
【0047】
図4(A)〜(C)は、共に多層(例えば4層)プリント配線板を作製する様子を断面で説明する模式図である。図4(A)〜(C)において、25は孔、26は銅メッキ部、27は伝熱プリント配線板である。
【0048】
まず図4(A)に示すように、少なくともその一面以上に、銅箔23を所定パターン形状に加工した積層体24を用意する。そしてこの積層体24を挟むように、伝熱プリプレグ11をセットする。更に伝熱プリプレグ11の外側に、銅箔23をセットする。なお市販の銅箔23を用いる場合、その粗面側を伝熱プリプレグ11側にセットすることで、銅箔23と伝熱プリプレグ11との接着力(例えば、アンカー効果や投錨効果)を高められる。そしてこの状態でプレス装置(図示していない)を用いて、これら部材を加圧、加熱、一体化する。このプレス時に加熱することで、伝熱プリプレグ11に含まれる半硬化樹脂体14が軟化し、伝熱プリプレグ11上に固定した銅箔23のパターンの埋め込み(あるいはパターンによる段差の埋め込み)や、銅箔23との密着力を高める効果が得られる。また接着剤を用いることなく、銅箔23を固定する効果も得られる。こうして積層体24を作製する。
【0049】
次にこの積層体24の所定位置に孔25を形成し、図4(B)の状態とする。図4(B)において、孔25はドリルやレーザ等(共に図示していない)で形成したものである。
【0050】
その後、孔25の内壁等に銅メッキを行い、図4(C)の状態とする。図4(C)に示すようにして、銅メッキ部26によって、内層や表層に形成した銅箔23の間の層間接続を行う。次にソルダーレジスト(図示していない)等を形成することで、伝熱プリント配線板27となる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2として、実施の形態1に用いた半硬化樹脂体14や伝熱体20を構成する部材について説明する。
【0052】
伝熱体20としては、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂に、熱伝導性を高める無機フィラー、伝熱プリント配線板27の柔軟性(あるいは割れにくさ)を高めるために、ゴム樹脂等を添加したものを使うことができる。
【0053】
まず、ゴム樹脂を添加する場合について説明する。ここで、ゴム樹脂としては、NBR(ニトリルゴム)等を用いることができる。
【0054】
ニトリルゴム(NBR)以外にも、ゴム樹脂としては水素化ニトリルゴム(HNBR)、ふっ素ゴム(FKM、FFKM)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(VMQ、FVMQ)、ウレタンゴム(AU、EU)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ノルボルネンゴム(NOR)、熱可塑性エラストマー(TPE)等から一つ以上を選ぶことができる。
【0055】
またこれらのゴム樹脂は、微粒子状で添加しても良い。微粒子状で添加することで、少ない添加量で、機械的強度を向上させる効果が得られる。これは微粒子で添加することで、エポキシ樹脂とゴム樹脂との界面が増加するためと考えられる。なおゴム樹脂の粒径は0.1ミクロン以上10ミクロン以下(望ましくは1ミクロン以下)が望ましい。粒径が0.1ミクロン未満のゴム樹脂は特殊で高価な場合がある。また粒径が10ミクロンを超えると、伝熱プリプレグ11の薄層化に影響を与える場合がある。
【0056】
次に熱可塑性樹脂を添加する場合について説明する。ゴム樹脂の代わりに、熱可塑性樹脂を添加しても良い。例えば伝熱体20として、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂に、熱伝導性を高めるための無機フィラー、プリント配線板としての成形性を高めるために、熱可塑性樹脂を添加することができる。なお熱可塑性樹脂のTg(Tgはガラス転移温度)は130℃以下の熱可塑性樹脂を添加したものを使うことができる。また半導体の使用上限温度が125℃であるため、125℃を超える必要が無い。そのためTgを125℃以下(バラツキを考慮すると130℃以下)とすることで、それ以下の温度でプリント配線板に一定の柔軟性(あるいは丈夫さ、耐衝撃性)を与えられる。なおプリント配線板(あるいは伝熱プリプレグ11)の長期の保存性を考えた場合、熱可塑性樹脂のTgは50℃以上にすることも可能である。
【0057】
なおゴム樹脂同様に熱可塑性樹脂も、微粒子状態として、エポキシ樹脂等にて添加しても良い。こうすることで、少量でも機械的強度の改善効果が得られる。またゴム樹脂、熱可塑性樹脂の併用、更には他の微粒子系の樹脂(例えば、コアシェル構造の微粒子、あるいはアクリレート系共重合体、PMMA等の微粒子)を添加しても、同様な機械的強度の改善効果が得られる。
【0058】
更に熱可塑性樹脂の一種であるアクリル系樹脂を微粒子形状とし、これを効力緩和剤、複合材料強化材の用途のため添加することもできる。この場合も、その粒径は0.1ミクロン以上10ミクロン以下(望ましくは5ミクロン以下、更には1ミクロン以下)が望ましい。粒径が0.1ミクロン未満のものは、エポキシ樹脂中への分散が難しい場合がある。また粒径が10ミクロンを超えると、伝熱性や成形性に影響を与える場合がある。なおアクリル系の樹脂は、熱可塑性の樹脂である。また熱可塑性の樹脂を、微粒子状態で添加する場合、これら樹脂の添加量を減らすことができる。これは、微粒子で添加することで、主成分となるエポキシ樹脂等との界面が増加するためである。
【0059】
なおこれらゴム樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは微粒子等の添加による柔軟性の改善は、エポキシ樹脂の硬化後(例えば、伝熱プリント配線板27の状態)のみならず、エポキシ樹脂の半硬化状態(例えば、伝熱プリプレグ11の状態)でも発現できる。その結果、伝熱プリプレグ11の柔軟性を大幅に改善できる。なおエポキシ樹脂中に、ゴム樹脂や熱可塑性樹脂を微粒子状で添加し、硬化した場合、その断面をSEM(電子顕微鏡)観察した場合にこれら微粒子が観察できないもの(あるいは分子レベルで界面が消失するもの)とすることが望ましい。硬化後にこれら微粒子がそのまま微粒子状態で残った場合、その界面に応力集中する可能性があるためである。
【0060】
また発明者らの実験では、これら部材の添加によって、柔軟性の改善のみならず、耐白化性(白化とは、例えばガラス繊維12と、半硬化樹脂体14や硬化済の樹脂部分と、の剥離を言う)を高める効果も得られることが判った。これは、無機フィラーを添加したことによるガラス繊維12と樹脂部分との接着力への影響や熱膨張係数の変化に対して、添加したゴム樹脂、熱可塑性樹脂、あるいはこれら樹脂材料を添加することで接着強化あるいは応力緩和等の効力があったためと思われる。その結果、実施の形態2等で提案する伝熱プリプレグ11を複数枚積層、硬化する場合に、たとえ積層条件等に色々な変動が発生した場合であっても白化の抑制効果が得られる。
【0061】
なおエポキシ樹脂の内、60重量%以上100重量%以下を結晶性エポキシ樹脂とすることで、樹脂部分での熱伝導率を高めることができる。結晶性エポキシ樹脂の、エポキシ樹脂全体に占める割合が60重量%未満の場合、結晶性エポキシ樹脂の添加効果が得られない場合がある。またエポキシ樹脂全てを(あるいは100重量%を)結晶性エポキシとすることで、熱伝導を高められる。また硬化後の結晶性エポキシ樹脂は、場合によっては割れやすくなる場合があるが、ゴム樹脂や熱可塑性樹脂等を添加することで、割れにくくできる。なおこれらを微粒子として添加することで、熱伝導に対する影響を抑えられる。
【0062】
(化1)は、結晶性エポキシ樹脂の一例を示す構造式である。
【0063】
【化1】

【0064】
(化1)において、結晶性エポキシ樹脂の構造式におけるXは、S(硫黄)もしくはO(酸素)、C(炭素)、なし(短結合)である。またR1、R2、R3、R4はCH、H、t−Bu等である。またR1〜R4は同じであっても良い。
【0065】
(化2)は、結晶性エポキシ樹脂の硬化に用いる硬化剤の構造図である。
【0066】
【化2】

【0067】
(化2)の構造式においてXは、S(硫黄)、O(酸素)もしくは短結合である。(化1)の主剤と、(化2)の硬化剤を混合し、重合させたものも結晶性エポキシ樹脂と呼んでもよい。
【0068】
なお主剤と硬化剤の割合は、エポキシ当量から計算する。また硬化剤として(化2)以外の硬化剤を使っても良い。なお結晶性エポキシ樹脂としては、以下の(化3)〜(化8)に示したものも使うことができる。
【0069】
【化3】

【0070】
【化4】

【0071】
【化5】

【0072】
【化6】

【0073】
【化7】

【0074】
【化8】

【0075】
(化3)〜(化8)は、共に結晶性エポキシ樹脂の一例を示す構造図である。このような結晶性エポキシ樹脂は、融点が50〜121℃程度で、更に溶解粘度も低い(例えば、150℃における粘度は6〜20mPa・s)ため、無機フィラーを混合、分散させやすい効果が得られる。なおこれら結晶性エポキシ樹脂の重合度は20以下(更に10以下、望ましくは5以下)が適当である。重合度が20より大きい場合、分子が大きくなりすぎて結晶化しにくくなる場合がある。
【0076】
なお結晶性エポキシ樹脂を用いた場合、ここに添加する熱可塑性樹脂にフェニル基を有したものを用いることで、その熱伝導率と機械的強度の両方を向上させることができる。次に、熱可塑性樹脂にフェニル基を有したものを添加する効果について説明する。
【0077】
結晶性エポキシ樹脂(フェニル基を有するものが望ましい)に、同じフェニル基を有した熱可塑性樹脂を添加することで、結晶性エポキシの結晶性を保持しながら、その柔軟性を高めることができる。ここでフェニル基を有した熱可塑性樹脂としては、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PES(ポリエーテルスルホン)等のフェニル基を主鎖に含んだ熱可塑性樹脂を用いることができる。こうした熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂に添加しても、熱伝導性に影響を与えにくい。またこうした熱可塑性樹脂を添加することで、出来上がった伝熱プリント配線板27の強度(例えば割れにくさ)を高める効果が得られる。
【0078】
次にゴム樹脂や、熱可塑性樹脂等と、エポキシ樹脂の比率について説明する。全樹脂に対して、ゴム樹脂や熱可塑性樹脂のいずれか一方だけの添加量は、1重量%以上10重量%以下の範囲内とすることが望ましい。ゴム樹脂や熱可塑性樹脂のいずれか一方だけの添加量が、全樹脂に対して1重量%未満の場合、添加効果が得られない場合がある。またゴム樹脂や熱可塑性樹脂のいずれか一方だけの添加量が、10重量%を超えると、エポキシ樹脂の割合が低下するため、出来上がった伝熱プリント配線板27の熱伝導率が影響を受ける可能性がある。
【0079】
なおこれら部材を、微粒子として添加することで、添加量を減らすことができる。この場合、ゴム樹脂や熱可塑性樹脂のいずれか一方だけの添加量の加減を、0.5重量%以上とすることができる。0.5重量%未満の場合、微粒子として添加してもその効果が得られない場合がある。なおゴム樹脂と、熱可塑性樹脂の両方を組み合わせることも可能である。
【0080】
なお無機フィラーと全樹脂(ここで全樹脂とは、ゴム樹脂や熱可塑性樹脂、結晶性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、硬化剤等の合計の意味である)の比率において、無機フィラーは50〜95体積%(つまり残りの全樹脂は50〜5体積%)の範囲内が望ましい。無機フィラーの割合が50体積%未満の場合、出来上がった伝熱プリント配線板27の熱伝導率が低下する場合がある。また無機フィラーの割合が95体積%より大きくなると、プリント配線板としての積層性、孔加工性等に影響を与える場合がある。
【0081】
また無機フィラーの平均粒径は、0.01μm以上50μm以下の範囲が望ましい。平均粒径が小さいほど比表面積が増えるため、放熱面積が増え、放射効率が高まるが、平均粒径が0.01μm以下になると、比表面積が大きくなり、伝熱体20の混練が難しくなる。また50μmを超えると、ガラス織布13に形成した開口部18への充填が難しくなる。
【0082】
なお無機フィラーの充填率を増加するために、異なる粒度分布を有する複数種の無機フィラーを選び、これらを混合して使用しても良い。
【0083】
次に実施の形態3として、実施の形態1〜2で作製した伝熱プリント配線板27の測定結果の一例について説明する。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1〜2で作製した伝熱プリント配線板27の特性等について測定した結果の一例を説明する。
【0085】
(実験1)
実験1としてガラス織布の開口率と、熱伝導の関係について調べた結果を、表1、表2に示す。表1は従来のガラス織布6(IPC規格が2116、密度が縦60本/インチ、横58本/インチ、フィラメントの種類はE225、フィラメント直径約7ミクロン、フィラメント数約200本)に対して、樹脂分比率(単位は体積%)を変化させて作製したプリプレグの硬化後の熱伝導率の測定結果の一例である。
【0086】
【表1】

【0087】
表1より、従来のガラス織布6を用いた場合、ガラス織布6を覆う半硬化樹脂体14の樹脂分比率を高くするほど、出来上がった(あるいは硬化後の)プリプレグの熱伝導率が高くなることが判る。
【0088】
表2は、実施の形態で用いたガラス織布13を用いた場合の熱伝導率の測定結果の一例である。表2は実施の形態で用いたガラス織布13(IPC規格が2116、密度が縦60本/インチ、横58本/インチ、フィラメントの種類はE450、フィラメント直径約5ミクロン、フィラメント数約200本)に対して、樹脂分比率(単位は体積%)を変化させて作製したプリプレグの硬化後の熱伝導率の測定結果の一例である。
【0089】
【表2】

【0090】
表1と表2を比較すると、樹脂分比率が低い場合でも、高開口率のガラス織布を用いることで、熱伝導率を高められることが判る。更に樹脂分比率を50体積%から60体積%、70体積%、80体積%と高くすることで、熱伝導率を高くできることが判る。
【0091】
このように、従来のガラス織布6に比べて、より細いフィラメントを用いたガラス織布13を用いることで、その伝熱性を高めることができた。
【0092】
このようにガラス織布13を高開口率にするには、ガラス織布を構成するガラス繊維(フィラメントとも呼ばれる)の直径を細く(例えば、7ミクロンから、6ミクロン、更には4ミクロンへと)することが効果的である。またガラス織布13の密度(縦糸と横糸の密度、一般的にインチ当たりの本数で呼ばれる)を同じままで、ガラス繊維の本数を減らす(例えば、E225で知られる約200本を150本、100本等に減らす)ことも効果的である。このように、より細いガラス繊維を選ぶ、ガラス繊維の数を減らす、あるいは両方を組合せる等の手法によって、高開口率のガラス織布を安価に作製できるため、伝熱プリント配線板27のコストダウンが可能となる。
【0093】
(実験2)
実験2として、伝熱プリプレグ11を用いた伝熱プリント配線板27の強度を測定した結果を示す。伝熱プリプレグ11を用いて伝熱プリント配線板27を作製する場合、プリント配線板として要求される一定の物理的強度(例えば、曲げに対する強度)が必要となる。これらの強度等の評価であるが、ガラス織布13に伝熱体20を含浸させた状態で特性を評価すると、ガラス織布13の影響が大きく、伝熱プリプレグ11自体、あるいはこれを硬化してなる伝熱プリント配線板27の単体での特性(割れにくさ、欠けにくさ、耐力等)の評価が難しい場合がある。そこで実験1としてガラス織布13を用いない半硬化樹脂体14部分だけについて、積層、硬化し実験2として評価した。
【0094】
なおガラス織布13(不織布も含む)に伝熱体20を含浸させ、半硬化樹脂体14とすることで、伝熱プリプレグ11やこれを硬化してなる伝熱プリント配線板27等が高強度化することは言うまでもない。
【0095】
結晶性エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン製「YL6121H」、東都化学製「YSLV−80XY」、硬化剤として、4−4ジアミノビフェニルエーテル、4−4,ジハイドロキシビフェニルを選び、ここに熱可塑性樹脂やゴム樹脂を添加し、これを所定の溶剤に溶解し伝熱体20とした。
【0096】
図5は、曲げ強度の評価方法の一例を示す模式図である。図5において、28は治具である。図5において、治具28の間に伝熱プリント配線板27をセットし、矢印15で示す方向に治具28を用いて、伝熱プリント配線板27を曲げる。発明者らの実験では、従来品では1〜2mm曲げた時点で折れた(割れた)。一方、本発明の伝熱プリント配線板27では、4〜5mm曲げても折れなかった。なお試料サイズ(伝熱プリント配線板)は、40mm×4mm×t2mmである。
【0097】
以上のようにして、硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる伝熱プリプレグ11であって、この伝熱プリプレグ11は、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布13または不織布と、このガラス織布13に含浸した半硬化樹脂体14とからなり、前記半硬化樹脂体14は、半硬化状態の樹脂と、この樹脂中に分散した無機フィラーとから構成した伝熱プリプレグ11を提供することで、放熱性に優れた伝熱プリント配線板27を安価に提供できる。
【0098】
また伝熱プリプレグ11に占める半硬化樹脂体14の割合は、前記伝熱プリプレグ11全体の40体積%以上95体積%以下とする(つまり伝熱プリプレグ11全体のガラス繊維12の割合を5体積%以上60体積%以下とする)ことで、伝熱プリプレグ11の熱伝導と柔軟性を両立できる。
【0099】
またガラス織布13または不織布を構成するガラス繊維としては、結晶化ガラス繊維、石英ガラス繊維、強化ガラス繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維のいずれか一つ以上の繊維からなる請求項1に記載の伝熱プリプレグ11とすることで、ガラス織布13の開口率を高めた場合でも、その強度を保てる。
【0100】
半硬化樹脂体14は、少なくとも半硬化状態のエポキシ樹脂と、その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、酸化マグネシウム、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーと、からなる伝熱プリプレグ11とすることで、伝熱プリント配線板27の熱伝導率を高められると共に、その強度を高められる。
【0101】
半硬化樹脂体14は、少なくとも半硬化状態のエポキシ樹脂と、ゴム樹脂と、その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、酸化マグネシウム、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーとからなる伝熱プリプレグ11とすることで、伝熱プリント配線板27の熱伝導率を高められると共に、その強度を高められる。
【0102】
半硬化樹脂体14は、少なくともエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂と、その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーとからなる伝熱プリプレグ11とすることで、伝熱プリント配線板27の熱伝導率を高められると共に、その強度を高められる。
【0103】
エポキシ樹脂の内、60重量%以上100重量%以下は、結晶性エポキシ樹脂である伝熱プリプレグ11とすることで、プリント配線板の熱伝導率を高められる。
【0104】
結晶性エポキシ樹脂の重合度は20以下である伝熱プリプレグ11とすることで、伝熱プリント配線板27の熱伝導率を高められる。
【0105】
熱硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる、少なくとも樹脂とその中に分散された無機フィラーとからなる伝熱体20を用意する工程と、前記伝熱体20を、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布13または不織布に含浸させた後、前記伝熱体20を半硬化状態にする工程とを有する伝熱プリプレグ11の製造方法とすることで、放熱性に優れた伝熱プリント配線板27を安価に製造できる。
【0106】
硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる伝熱プリプレグ11と、銅箔とを複数枚積層し硬化してなる伝熱プリント配線板27であって、前記伝熱プリプレグ11は、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布13または不織布と、このガラス織布13に含浸した半硬化樹脂体14とからなり、前記半硬化樹脂体14は、半硬化状態の樹脂と、この樹脂中に分散した無機フィラーとからなる伝熱プリント配線板27を提供することで、携帯電話、プラズマテレビ、電装品、産業用の放熱が要求される機器の小型化、高性能化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明にかかる伝熱プリプレグ及びその製造方法とこれを用いた伝熱プリント配線板を用いることによって、携帯電話、プラズマテレビ、あるいは電装品、あるいは産業用等の放熱が要求される機器の小型化、高性能化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】(A)、(B)は、それぞれ実施の形態における伝熱プリプレグの断面図と、上面図
【図2】伝熱プリプレグの製造方法の一例を断面で説明する模式図
【図3】(A)(B)は、共に伝熱プリプレグの表面に銅箔を固定(あるいは一体化)する方法の一例を説明する断面図
【図4】(A)〜(C)は、共に多層プリント配線板を作製する様子を断面で説明する模式図
【図5】曲げ強度の評価方法の一例を示す模式図
【図6】(A)(B)は、共にメソゲン基を有する結晶性ポリマーを、磁場を用いて配向させ、熱伝導率を高くしようとする様子を説明する断面図
【図7】折り曲げ性を改善した従来の伝熱プリプレグの一例を示す断面図
【符号の説明】
【0109】
11 伝熱プリプレグ
12 ガラス繊維
13 ガラス織布
14 半硬化樹脂体
15 矢印
16 縦糸
17 横糸
18 開口部
19 設備
20 伝熱体
21 槽
22 プレス
23 銅箔
24 積層体
25 孔
26 銅メッキ部
27 伝熱プリント配線板
28 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる伝熱プリプレグであって、この伝熱プリプレグは、
開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布または不織布と、
このガラス織布に含浸した半硬化樹脂体とからなり、
前記半硬化樹脂体は、半硬化状態の樹脂と、この樹脂中に分散した無機フィラーと、から構成した伝熱プリプレグ。
【請求項2】
前記伝熱プリプレグに占める半硬化樹脂体の割合は、前記伝熱プリプレグ全体の40体積%以上95体積%以下である請求項1記載の伝熱プリプレグ。
【請求項3】
ガラス織布または不織布は、結晶化ガラス繊維、石英ガラス繊維、強化ガラス繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維のいずれか一つ以上の繊維からなる請求項1に記載の伝熱プリプレグ。
【請求項4】
半硬化樹脂体は、少なくとも半硬化状態のエポキシ樹脂と、
その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーと、からなる請求項1に記載の伝熱プリプレグ。
【請求項5】
半硬化樹脂体は、少なくとも半硬化状態のエポキシ樹脂と、ゴム樹脂と、
その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、酸化マグネシウム、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーと、からなる請求項1に記載の伝熱プリプレグ。
【請求項6】
半硬化樹脂体は、少なくともエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂と、
その中に分散されたアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、炭素、酸化マグネシウム、ジルコン珪酸塩から選ばれた少なくとも1種類以上からなる無機フィラーと、からなる請求項1に記載の伝熱プリプレグ。
【請求項7】
エポキシ樹脂の内、60重量%以上100重量%以下は、結晶性エポキシ樹脂である請求項4〜6いずれか一つに記載の伝熱プリプレグ。
【請求項8】
結晶性エポキシ樹脂が、以下の構造式である請求項7に記載の伝熱プリプレグ。
【化1】

【請求項9】
結晶性エポキシ樹脂の重合度は20以下である請求項7または8のいずれか一つに記載の伝熱プリプレグ。
【請求項10】
熱硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる、少なくとも樹脂とその中に分散された無機フィラーとからなる伝熱体を用意する工程と、
前記伝熱体を、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布または不織布に含浸させた後、前記伝熱体を半硬化状態にする工程と、
を有する伝熱プリプレグの製造方法。
【請求項11】
硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上20W/(m・K)以下となる伝熱プリプレグと、
銅箔と、
を複数枚積層し硬化してなる伝熱プリント配線板であって、
前記伝熱プリプレグは、開口率が20%以上50%以下で、かつ厚みが10ミクロン以上300ミクロン以下のガラス織布または不織布と、このガラス織布に含浸した半硬化樹脂体と、からなり、
前記半硬化樹脂体は、半硬化状態の樹脂と、この樹脂中に分散した無機フィラーと、からなる伝熱プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−19150(P2009−19150A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183975(P2007−183975)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】