説明

位相制御装置及び定着装置

【課題】交流電圧の周波数、交流電圧の振幅の最大値等の種々の条件が変動しても、位相制御時に、負荷への電力供給のオン/オフを、交流電圧のゼロクロスポイントに正確に合わせることができる技術を提供する。
【解決手段】ゼロクロス信号Pの立ち上がりエッジから時間TONが経過した時点をゼロクロスポイントとして位相制御を行うようになっている場合、ゼロクロス信Pのパルス幅Wが大きくなるほど、時間TONを長くする。例えば、電圧の周波数が小さくなるほど、時間TONは大きくなるように補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧の位相制御を行う位相制御装置、及びこの位相制御装置を備える定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源から、電気機器への電力供給を開始するときに、この電気機器の有する負荷に大きな突入電流が流れることがある。蛍光灯等の照明装置がこの電気機器と電源を共用している場合、この突入電流の発生によって、照明装置にちらつき(フリッカ現象)が発生することがある。
【0003】
電気機器として画像形成装置を例に挙げる。画像形成装置の中には、画像を記録紙上に熱圧着によって定着させるため、ハロゲンヒータ等の発熱体を備えるものがある。発熱体は消費電力が大きいので、発熱体の点灯時には大きな突入電流が流れる。その結果、画像形成装置と交流電源を共有している照明装置には、フリッカ現象が発生しやすい。
【0004】
このフリッカ現象を防止するために、負荷への電圧供給の位相制御を行って、大きな突入電流の発生を防止する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、定着ヒータの通電をオン/オフするスイッチと、スイッチを作動させるトリガー回路と、ゼロクロスポイントから所定時間経過後に定着ヒータの通電を開始する制御手段と、を備える画像形成装置が記載されている。
【0005】
従来の位相制御では、ゼロクロス検出回路の出力するゼロクロス信号のエッジから一定時間経過した時点をゼロクロスポイントとし、このゼロクロスポイントを基準として、定着ヒータの通電のオン/オフを切り換えている。
【特許文献1】特開平9‐106215号公報(段落[0008]〜[0009]、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼロクロス信号の幅は、電源電圧の変動、電圧周波数の変動、回路を構成する各素子の性能のばらつき、機内の温度等の要因によって変化する。すると、ゼロクロス信号のエッジから所定時間経過時に定着ヒータの通電をオンにしても、オンのタイミングと実際のゼロクロスポイントとのずれが大きくなる。このようにずれが大きくなると、位相制御を行っているにもかかわらず、突入電流が大きくなり、フリッカ現象を効果的に防止することができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑み、様々な条件下においても、電気機器における大きな突入電流の発生を防ぐことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の位相制御装置は、交流電源から負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御装置であって、交流電圧の振幅が所定値以下である期間の幅のパルス信号を出力するゼロクロス信号出力部と、上記パルス信号の立ち上がりのエッジから所定時間経過した時点をゼロクロスポイントとして、上記負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御部と、上記パルス信号の幅を検出する信号幅検出部と、上記信号幅検出部の検出結果から、上記パルス信号の幅が大きくなるほど上記所定時間を長くする補正部と、を備える。
【0009】
この位相制御装置によると、ゼロクロス信号出力部からのパルス信号幅を変動させるような種々の条件の変動が起きても、位相制御の効果を発揮し、大きな突入電流の発生を防ぐことが可能となる。
【0010】
ゼロクロス信号出力部からのパルス信号幅を変動させる要因として、交流電圧の周波数、交流電圧の振幅の最大値、及び装置内の温度等が挙げられる。
【0011】
そこで、請求項2に記載するように、請求項1の位相制御装置において、上記信号幅検出部は、交流電圧の周波数を検出する周波数検出部であり、上記補正部は、上記周波数が小さくなるほど上記所定時間を長くするようになっていてもよい。
【0012】
また、請求項3に記載するように、請求項1の位相制御装置において、上記信号幅検出部は、交流電圧の振幅の最大値を検出する振幅検出部であり、上記補正部は、上記最大値が小さくなるほど上記所定時間を長くするようになっていてもよい。
【0013】
また、請求項4に記載するように、請求項1〜3のいずれか1項の位相制御装置において、装置内の温度を検出する温度検出部をさらに備え、上記補正部は、上記温度に合わせて上記所定時間をさらに補正するようになっていてもよい。
【0014】
以上に述べた位相制御装置は、記録紙上に画像を定着させる定着装置に適用可能である。そこで、請求項5に記載の定着装置は、画像が載せられた上記記録紙に熱を加える加熱部と、上記加熱部へ供給される交流電圧の振幅が所定値以下である期間の幅のパルス信号を出力するゼロクロス信号出力部と、上記パルス信号の立ち上がりのエッジから所定時間経過した時点をゼロクロスポイントとして、上記負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御部と、上記パルス信号の幅を検出する信号幅検出部と、上記信号幅検出部の検出結果から、上記パルス信号の幅が大きくなるほど上記所定時間を長くする補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の位相制御装置によると、ゼロクロス信号出力部からのパルス信号幅を変動させるような種々の条件の変動が起きても、位相制御の効果を発揮し、大きな突入電流の発生を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔1〕第1実施形態
本発明の実施の一形態にかかる複写機100について、以下、図面を参照して説明する。
【0017】
<1.複写機100の概要>
まず、図1を参照して、複写機100の概要について説明する。図1は複写機100の要部構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、複写機100は、ユーザからの指示を受け付ける操作パネル2、原稿から画像データを取得する画像読取部3、画像データに基づいて現像剤からなる画像を形成する画像形成部4、画像形成部4で形成された画像を記録紙上に転写する転写部5、熱圧着により、転写後の画像を記録紙上に定着させる定着装置6、及び、複写機100内の各部を制御する主制御装置7等を備える。
【0019】
操作パネル2は、ハードキーを備えると共に、ソフトキーを表示可能な液晶表示パネルを有するタッチパネル等を備える。
【0020】
画像読取部3は、レンズやミラー等の光学部材及びCCD等の光電変換装置を備える。
【0021】
画像形成部4としては、電子写真方式により画像を形成する装置を好適に用いることができる。
【0022】
定着装置6については、下記<2.>欄にて述べる。
【0023】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びその他の記憶媒体により実現可能である。この場合、制御装置7の制御機能は、CPUがROM内の制御プログラムを読み出して実行することによって実現される。RAMは、CPUの作業領域として機能し得る。
【0024】
<2.定着装置6>
(2-1)定着装置6の概要
次に、図2を参照して、定着装置6における電源電圧の位相制御について説明する。
【0025】
図2に示すように、定着装置6は、ノイズフィルタ回路61、整流回路62、AC/DC電源回路、スイッチ部64、ヒータ65、位相制御装置67等を備える。ヒータ65は、電源配線R及びGND配線Gを介して交流電源200に接続されている。
【0026】
ノイズフィルタ回路61は、電源配線R及びGND配線G上で、交流電源200とヒータ65との間に配されており、交流電圧からノイズを除去する。
【0027】
整流回路62は、電源配線R及びGND配線G上で、ノイズフィルタ回路61とヒータ65との間に配されており、ノイズを除去された電圧を全波整流する。すなわち、交流電圧は、整流回路62によって全波整流されることで、負の半波が正に反転され、全波が正方向に整えられる。この全波整流後の交流電圧の波形は、ツェナーダイオード671cへの入力電圧波形Vr(図4(a))と同様となる。そこで、全波整流後の電圧についても、図4(a)を参照して説明することがある。
【0028】
AC/DC電源回路63は、電源配線R及びGND配線G上で、整流回路62とヒータ65との間に配され、AC/DC変換回路や、全波整流後の電圧をヒータ65に適した値に調整するトランス等の電子部品を備える。
【0029】
スイッチ部64は、電源配線R上、AC/DC電源回路63とヒータ65との間に設けられており、オン/オフすることで、ヒータ65を通電状態/非通電状態に切り換えることができる。つまり、スイッチ部64は、ヒータ65への電力供給をオン/オフする。なお、スイッチ部64としては、SSR(Solid State Relay)等の従来公知のスイッチ素子を用いることができる。
【0030】
ヒータ65は、図示しないローラ部材であるヒートローラ内に設けられている。ヒータ65は通電状態になることで温度が上昇するようになっている。定着装置6は、ヒートローラに対向して配される圧着ローラを備えており、この圧着ローラとヒートローラとの間に記録紙を挟んで、記録紙に熱及び圧力を加えることにより、画像を記録紙上に定着させる。
【0031】
(2-2)位相制御装置67
図2に示すように、位相制御装置67は、ゼロクロス検出回路671、温度計672、制御部673等を備える。
【0032】
ゼロクロス検出回路671は、交流電圧の振幅が一定値以下であるときに、ゼロクロス信号を出力するようになっている。具体的には、ゼロクロス検出回路671は、入力側回路671aと出力側回路671bとを備える。
【0033】
入力側回路671aは、整流回路62とノイズフィルタ61との間で電源配線R及びGND配線Gにそれぞれ接続される2つのダイオードと、各ダイオードに接続される抵抗器と、両抵抗器に接続されるツェナーダイオード671cと、ツェナーダイオード671cに接続される発光ダイオード671dとを備える。発光ダイオード671dは、ツェナーダイオード671cに対して、ツェナーダイオード671cとは逆の向きに接続される。
【0034】
出力側回路671bは、発光ダイオード671dからの光を受光するフォトトランジスタ671e、各種抵抗器、及びトランジスタ等を備え、制御部67に接続されている。入力側回路671aの発光ダイオード671d及びフォトトランジスタ671eはフォトトランジスタ671fを構成する。つまり、発光ダイオード671dは入力側素子、フォトトランジスタ671eは出力側素子である。
【0035】
温度計672は、ヒータ65の近傍に配される。温度計672が得た温度情報は、制御部673に送られる。
【0036】
制御部673は、図示しない電源からの電力供給を受けて、スイッチ部64のオン/オフを制御することができる。制御部673について、図3のブロック図を参照して説明する。
【0037】
図3に示すように、制御部673は、周波数検出部673a、電圧検出部673b、メモリ673c、タイミング決定部673d、スイッチ制御部673eを備える。制御部673の各部は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。ソフトウェアによって実現される場合、制御部673は、CPU、ROM、RAM、及びその他の記憶媒体等を備える。ROM内には、CPUが制御部673の各機能部の機能を実現するためのプログラムが格納されている。
【0038】
メモリ673cは、不揮発性のメモリであり、補正係数αを記憶する。具体的には、メモリ673cは、3つの補正係数テーブルA1〜A3を記憶する。補正係数テーブルA1〜A3では、後述の時間TONの補正に用いられる3種類の補正係数α(α1〜α3)が、電源電圧の周波数、電圧値、機内の温度等のそれぞれと対応付けられて、格納されている。各補正係数αの詳細、及び制御部673の他の機能部については、下記(2-3)欄にて述べる。
【0039】
(2-3)位相制御
上述の図に、さらに図4〜図6を参照して、位相制御時の定着装置6の動作について説明する。
【0040】
[ゼロクロス信号]
位相制御時に利用されるゼロクロス信号について、図4を参照して説明する。図4(a)はツェナーダイオード671cへ入力される交流電圧Vr、図4(b)はフォトカプラ671fの順方向電圧Vf、図4(c)はゼロクロス信号Pの波形を表すチャートである。
【0041】
ゼロクロス検出回路671において、入力側回路671aのダイオード及び抵抗を経た交流電圧Vrは、図4(a)に示す通りの波形を描く。この電圧Vrはツェナーダイオード671cへ入力される。この電圧Vrがツェナー電圧Vzより大きくなると、ツェナーダイオード671cに通常とは逆方向の電流が流れる。そして、そして、フォトカプラ671fの順方向電圧Vfは、図4(b)に示すように、ツェナーダイオード671cによって、ツェナー電圧Vzでクリップされる。
【0042】
図4(c)に示すように、出力側回路671bでは、フォトトランジスタ671eがオフになっているときは、パルス信号であるゼロクロス信号Pが制御部673に出力される。そして、交流電圧Vrがツェナー電圧Vzを超えるときは、発光ダイオード671dに電流が流れてフォトトランジスタ671eがオンになるので、ゼロクロス信号Pは出力されない。以上のように、ゼロクロス信号Pの幅Wは、電圧Vrがツェナー電圧Vz以下である期間の幅と同一となる。
【0043】
[電源投入時の位相制御]
複写機100の電源投入時、つまりヒータ64への通電開始時に行われる位相制御について、図5を参照して説明する。図5は、スイッチ制御部673eにより位相制御を示すフローチャートである。
【0044】
スイッチ制御部673eは、ゼロクロス信号Pの立ち上がりエッジから時間TONが経過すると(図4(c)、図5のステップS11でYes)、スイッチ制御部673eは、スイッチ部64をオンするようにリモート信号を出力する(図4(a)の“オン”、図5のステップS12)。こうしてスイッチ部64がオンされることで、ヒータ65は通電状態となる。
【0045】
スイッチ部64をオンしてから時間TOFFが経過すると(図4(a)、図5のステップS13でYes)、スイッチ制御部673eはスイッチ部64をオフする(図4(a)の“オフ”、図5のステップS14)。
【0046】
上記「時間TON」は、ゼロクロス信号Pの立ち上がりエッジから、交流電圧の波形のゼロクロスまでの距離に相当する時間に設定される。また、後述するように、時間TONは適宜補正される。
【0047】
また、スイッチ制御部673eは、複数の時間TOFFを備えており、1回の位相制御動作中、半波又は1波ごとに、用いられる時間TOFFは長くなる。つまり、スイッチ64をオフにするときの位相角が徐々に増大する。その結果、スイッチ部64がオンになる期間が徐々に長くなるので、ヒータ65への供給電力は徐々に増加する。
【0048】
以上の位相制御が行われるのは、複写機100の電源投入時、スリープ状態からの復帰時等である。
【0049】
[時間TONの補正]
ゼロクロス信号Pのパルス幅Wは、交流電圧の周波数、電圧値、温度等によって変動する。そのため、時間TONが固定されていると、これらの要因によってパルス幅Wが変動したときに、スイッチ部64をオンにするタイミングと、ゼロクロスポイントとのずれが大きくなる。このずれが大きくなると、電源投入時等において、突入電流を小さく抑えるという位相制御の効果が充分に得られない。その結果、交流電源200に接続されている照明機器において、フリッカ現象が発生する。
【0050】
これに対して、本実施形態の複写機100では、制御部673によって、ゼロクロス信号のパルス幅Wの変動に合わせて時間TONが補正されることで、スイッチ部64をオンするタイミングがゼロクロスポイントに合わせられるようになっている。そのため、複写機100の電源投入時における照明機器でのフリッカ現象の発生を、効果的に防止することができる。
【0051】
時間TONの補正の詳細について、図6を参照して説明する。図6は、時間TONの補正時の制御部673の処理を示すフローチャートである。
【0052】
図6に示すように、タイミング決定部673dは、電源電圧の周波数、電圧値、装置内の温度等、ゼロクロス信号のパルス幅Wに影響を与える要素を参照する(ステップS21)。そして、補正係数テーブルA1〜A3から、参照結果に対応する補正係数α(α1〜α3)をそれぞれ選択する(ステップS22)。そして、タイミング決定部673dは、選択した補正係数α(α1〜α3)を、初期値Tに乗じることで、補正後の時間TONを取得する(ステップS23)。
【0053】
ステップS21でタイミング決定部673dが参照する交流電圧の周波数は、周波数検出部673aが、位相制御開始前に数パルスのゼロクロス信号のエッジを検出し、単位時間内でのエッジの検出回数を検出することで取得する。また、電圧値は、電圧検出部673bが、電源電圧の振幅の最大値を検出することで得られる。なお、本実施形態では、電圧検出部673bは、電圧値として、交流電圧の振幅の最大値Vmax(図4(a))を検出する。温度は、温度計672が測定する。
【0054】
ステップS23で使用される補正係数α(α1〜α3)は、以下のように設定されている。交流電圧の周波数が小さくなるほどパルス幅Wは大きくなる。よって、周波数が長くなるほど時間TONが長くなるように、第1補正係数α1は大きく設定されている。また、電圧値が小さくなるほどパルス幅Wは大きくなる。よって、電圧値が小さくなるほど時間TONが長くなるように、第2補正係数α2は大きく設定されている。一方、温度によるパルス幅Wの変動は、回路を構成する素子の性質によって異なり、電圧の周波数や電圧値のように、一定ではない。そのため、温度についての補正係数α3は、個々の装置や回路の構成、各素子のばらつき等を考慮して、適宜設定される。
【0055】
タイミング決定部673dが時間TONの補正(図6)を行うタイミングは、複写機100の電源投入時、電源投入中の一定時間経過毎、印刷枚数が所定値に達する毎等、適宜設定することができ、具体的に限定されるものではない。
【0056】
スイッチ制御部673eは、温度計672の検出結果に基づいて、スイッチ部64をオン/オフすることで、ヒータ65の温度を一定に保つことができる。つまり、温度計672は、時間TONの設定及びヒータ65の温度調節の両方に用いられる。よって、複写機100は、これらの2つの処理に個別の温度計を使用するよりも、装置の構成が簡素化可能であるという利点を有する。ただし、これらの時間TONの設定時に用いられる温度計が、ヒータ65の温度調節に用いられるものとは別に設けられてもよい。
【0057】
〔2〕その他の実施形態
(a)複写機100において、ヒータ64の通電開始時だけでなく、ヒータ64の通電をオフとするときにも、スイッチ制御部673eにより位相制御が行われてもよい。このときには、通電開始時とは逆に、ヒータ64への供給電流が交流電圧の1波又は半波毎に徐々に減少するように、スイッチ部64がオンとなっている期間が徐々に短くされる。この通電オフ時の位相制御にも、スイッチ部64のオン又はオフのタイミングをゼロクロスポイントに合わせるために、図6と同様のフローによるタイミング補正が利用可能である。
【0058】
(b)複写機100は、交流電圧の周波数、電圧値、機内温度等に応じて、通電開始時の位相制御における時間TOFFを補正する第2のタイミング決定部を備えてもよい。この第2のタイミング決定部は、例えば周波数が小さくなれば時間TOFFを長く、電圧値が小さくなるほど時間TOFFを長くするようになっていてもよい。また、温度については、装置や回路の構成、各素子のばらつき等に応じて、各温度に応じた補正係数が設定されていればよい。
【0059】
(c)スイッチ制御部673eは、ヒータ64の通電開始時の位相制御において、第1実施形態ではゼロクロスポイントでスイッチ部64をオンするようになっていたが、逆に、隣り合うゼロクロスポイント間でスイッチ部64をオンにし、その後、ゼロクロスポイントでスイッチ部64をオフにするようになっていてもよい。
【0060】
(d)電圧検出部673dは、交流電圧の振幅の最大値を検出する振幅検出部の一例である。振幅検出部は、電圧検出部673dのように交流電圧の振幅の最大値を直接検出するのではなく、間接的に検出するようになっていてもよい。例えば、振幅検出部は、振幅の最大値を反映する値として、AC/DC変換後の電圧値を検出するようになっていてもよいし、交流電圧の正弦波形のピークトゥピークを検出できるようになっていてもよい。
【0061】
(e)タイミング決定部673dは、電圧の周波数、電圧値、及び温度の各要素について予め設定された補正係数を選択する構成に限定されず、上述の各要素から演算によって補正係数を算出するようになっていてもよい。また、3つの要素の全てに基づいて補正を行うのではなく、周波数又は電圧値のいずれか一方のみに基づいて補正を行うようになっていてもよいし、いずれか一方にさらに温度を組み合わせて補正を行ってもよい。
【0062】
(f)周波数等の上述の3つの要素は、ゼロクロス信号のパルス幅Wに影響を与える要素の例に過ぎないので、周波数検出部673a等に代えて、制御部673に、ゼロクロス信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出する等によってパルス幅Wを測定するパルス幅検出部が設けられていてもよい。この場合、パルス幅検出部によって検出されたパルス幅Wに応じて、タイミング決定部673dが時間TONを補正するようになっていればよい。また、タイミング決定部673が、上述の3つの要素以外に、ゼロクロス信号のパルス幅Wに影響を与える他の要素に基づいて、時間TONを補正するようになっていてもよい。
【0063】
(g)第1実施形態では、定着装置の一例として、複写機に組み込まれた形態を説明したが、これ以外にも、同様の定着装置を、プリンタ、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等、種々の画像形成装置に適用可能である。
【0064】
以上、異なる欄に述べた実施形態を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の一形態に係る複写機100の要部構成を示すブロック図。
【図2】複写機100の定着装置6の要部構成を示すブロック図。
【図3】定着装置6の位相制御装置67の要部構成を示すブロック図。
【図4】ゼロクロス検出回路671の各部における電圧を示すチャートであり、図4(a)はツェナーダイオード671cへ入力される交流電圧Vr、図4(b)はフォトカプラ671fの順方向電圧Vf、図4(c)はゼロクロス信号Pの波形を表す。
【図5】スイッチ制御部673eによる位相制御を示すフローチャート。
【図6】位相制御時のスイッチ部64のオンのタイミングの決定、つまり時間TONの補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
100 複写機
200 交流電源
6 定着装置
64 スイッチ部
65 ヒータ
67 位相制御装置
671 ゼロクロス検出回路
672 温度計
673 制御部
673a 周波数検出部
673b 電圧検出部
673c メモリ
673d タイミング決定部(補正部)
673e スイッチ制御部(位相制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御装置であって、
交流電圧の振幅が所定値以下である期間の幅のパルス信号を出力するゼロクロス信号出力部と、
上記パルス信号の立ち上がりのエッジから所定時間経過した時点をゼロクロスポイントとして、上記負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御部と、
上記パルス信号の幅を検出する信号幅検出部と、
上記信号幅検出部の検出結果から、上記パルス信号の幅が大きくなるほど上記所定時間を長くする補正部と、
を備える位相制御装置。
【請求項2】
上記信号幅検出部は、交流電圧の周波数を検出する周波数検出部であり、
上記補正部は、上記周波数が小さくなるほど上記所定時間を長くするようになっている、
請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項3】
上記信号幅検出部は、交流電圧の振幅の最大値を検出する振幅検出部であり、
上記補正部は、上記最大値が小さくなるほど上記所定時間を長くするようになっている、
請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項4】
装置内の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
上記補正部は、上記温度に合わせて上記所定時間をさらに補正するようになっている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項5】
記録紙上に画像を定着させる定着装置であって、
画像が載せられた上記記録紙に熱を加える加熱部と、
上記加熱部へ供給される交流電圧の振幅が所定値以下である期間の幅のパルス信号を出力するゼロクロス信号出力部と、
上記パルス信号の立ち上がりのエッジから所定時間経過した時点をゼロクロスポイントとして、上記負荷への電力供給の位相制御を行う位相制御部と、
上記パルス信号の幅を検出する信号幅検出部と、
上記信号幅検出部の検出結果から、上記パルス信号の幅が大きくなるほど上記所定時間を長くする補正部と、
を備える定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−27472(P2010−27472A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189272(P2008−189272)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】