説明

位相同期回路及びその制御方法

【課題】従来技術の位相同期回路では、入力クロックの切り替え時において、安定した出力クロックを生成することができないという問題があった。
【解決手段】本発明にかかる位相同期回路は、入力クロックを選択するセレクタ3と、入力クロックを分周する1/m分周器4と、フィードバッククロックを分周する1/n分周器5と、位相差検出器と、電圧保持回路30を有する電圧制御発振器10と、電圧保持回路31を有する電圧制御発振器11と、電圧制御発振器10,11のうちいずれかの出力を出力クロックとして出力するセレクタ13と、電圧制御発振器10,11のうちいずれかの出力をフィードバッククロックとして出力するセレクタ12と、備え、保持モードの電圧制御発振器が出力クロックfoutを生成し、通常モードの電圧制御発振器がフィードバッククロックを生成している場合に、入力クロックの切り替えが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期回路及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力クロックに同期した出力クロックを生成する、いわゆるPLL(Phase Locked Loop)回路が広く知られている。
【0003】
特にモバイル用途のLSI(Large scale integration)において、消費電力の削減のため、PLL回路は、入力クロック生成用の原振動発振器を他の回路と共用する場合がある。また、PLL回路は、複数の原振動発振器のうち動作しているいずれかを選択して用いる場合がある。
【0004】
このように、PLL回路に供給される入力クロックの切り替えが行われる場合、その間、PLL回路の動作を停止させるのが一般的である。しかし、この場合、PLL回路の後段に接続された回路の動作も停止させる必要があった。そのため、PLL回路の後段に接続された回路の動作を停止させても問題ないように設計する必要があった。このような状況を避けるため、入力クロックの切り替え時においても、動作を停止させることなく、所望の周波数を維持した出力クロックを生成できるPLL回路が求められていた。
【0005】
このような要求に対する解決策が特許文献1に開示されている。図6に、特許文献1に開示されたPLL回路(位相同期回路)101を示す。図6に示すように、PLL回路101は、セレクタ103と、1/m分周器104と、1/n分周器105と、スイッチ回路106a,106bと、位相差検出器107と、ローパスフィルタ108と、電圧制御発振器109と、を備える。また、図6には、制御回路102も示されている。
【0006】
PLL回路101は、制御回路102から与えられる各制御信号に基づいて、入力クロックの切り替え動作が制御される。セレクタ103は、クロックf1とクロックf2のうちいずれかを入力クロックとして選択して、1/m分周器104に対して出力する。1/m分周器104は、入力クロックを分周した第1分周クロックをスイッチ回路106aに対して出力する。スイッチ回路106aは、第1分周クロックの反転信号及び一定電圧のうち、制御信号Maskに基づいて選択されたいずれかを、位相差検出器107に対して出力する。1/n分周器105は、電圧制御発振器109によって生成された出力クロックfoを分周した第2分周クロックを、スイッチ回路106bに対して出力する。スイッチ回路106bは、第2分周クロックの反転信号及び一定電圧のうち、制御信号Maskに基づいて選択されたいずれかを、位相差検出器107に対して出力する。位相差検出器107は、2つの入力信号の位相差に基づいた電流を生成する。ローパスフィルタ108は、位相差検出器107から出力された電流に応じた電圧(節点N1の電圧)を生成する。そして、電圧制御発振器109は、節点N1の電圧に基づいた周波数の出力クロックfoを生成する。
【0007】
PLL回路101では、入力クロックの切り替えを行う場合、まず、スイッチ回路106a,106bが位相差検出器107に対して一定電圧を出力するように設定される。それにより、節点N1の電圧変動が抑制される。この状態で、セレクタ103による入力クロックの切り替えが行われる。また、この状態で、1/m分周器104及び1/n分周器105がリセットされるとともに、1/m分周器104及び1/n分周器105の分周比が、切り替え後の入力クロックに対応したものに変更される。これにより、電圧制御発振器109を自走状態とさせたままで、かつ、出力クロックfoの波形が乱れることが抑制された状態で、入力クロックの切り替えを行うことができる。つまり、PLL回路101は、入力クロックの切り替え時においても、動作を停止させることなく、所望の周波数を維持した安定した出力クロックfoを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−60895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、入力クロックとして用いられるクロックf1とクロックf2とは同期していない。したがって、従来技術のPLL回路の場合、図7に示すように、入力クロックの切り替え時(例えばクロックf1からクロックf2への切り替え時)において、切り替え後の入力クロック(例えばクロックf2)と、切り替え前の入力クロック(例えばクロックf1)に基づいて生成された出力クロックfoと、の間に位相差が生じてしまう。それにともない、第1分周クロックと第2分周クロックとの間に位相差が生じてしまう。それにより、従来技術のPLL回路は、第1分周クロックと第2分周クロックとを再びロック(同期)させるまでの間、出力クロックが不安定になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる位相同期回路は、複数のクロックのいずれかを入力クロックとして選択する第1セレクタと、前記入力クロックを分周する第1分周器と、フィードバッククロックを分周する第2分周器と、前記第1分周器により分周されたクロックと前記第2分周器により分周されたクロックとの位相差を検出する位相差検出器と、前記位相差に応じた入力電圧を保持する第1電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第1中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第1電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第1中間クロックを生成する第1電圧制御発振器と、前記位相差に応じた入力電圧を保持する第2電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第2中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第2電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第2中間クロックを生成する第2電圧制御発振器と、前記第1及び第2中間クロックのいずれかを選択し、出力クロック及び前記フィードバッククロックとして出力する選択回路と、を備え、前記第1及び第2中間クロックのうち、保持モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックが出力クロックとして出力され、通常モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックが前記フィードバッククロックとして出力される場合に、前記入力クロックとして選択される前記クロックが前記セレクタによって切り替えられる。
【0011】
本発明にかかる位相同期回路の制御方法は、複数のクロックのいずれかを入力クロックとして選択する第1セレクタと、前記入力クロックを分周する第1分周器と、フィードバッククロックを分周する第2分周器と、前記第1分周器により分周されたクロックと前記第2分周器により分周されたクロックとの位相差を検出する位相差検出器と、前記位相差に応じた入力電圧を保持する第1電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第1中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第1電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第1中間クロックを生成する第1電圧制御発振器と、前記位相差に応じた入力電圧を保持する第2電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第2中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第2電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第2中間クロックを生成する第2電圧制御発振器と、前記第1及び第2中間クロックのいずれかを選択し、出力クロック及び前記フィードバッククロックとして出力する選択回路と、を備えた位相同期回路の制御方法であって、前記第1及び第2中間クロックのうち、保持モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックを出力クロックとして出力し、通常モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックを前記フィードバッククロックとして出力し、前記入力クロックとして選択される前記クロックを前記セレクタによって切り替える。
【0012】
上述のような回路構成により、入力クロックの切り替え時において、安定した出力クロックを生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、入力クロックの切り替え時において、安定した出力クロックの生成が可能な位相同期回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる位相同期回路を示すブロック図である。
【図2】チャージポンプ8の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる位相同期回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる位相同期回路を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる位相同期回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】従来技術の位相同期回路を示すブロック図である。
【図7】従来技術の位相同期回路の入力クロック切り替え時における波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0016】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1にかかるPLL回路(位相同期回路)1のブロック図を示す。尚、制御回路2もあわせて図1に示す。
【0017】
図1に示すように、PLL回路1は、セレクタ3と、1/m分周器(DIV_m;第1分周器)4と、1/n分周器(DIV_n;第2分周器)5と、マスク回路(MASK)6と、タイミング検出回路(PD)7と、チャージポンプ(CHP)8と、ローパスフィルタ(LPF)9と、電圧制御発振器(VCO1;第1電圧制御発振器)10と、電圧制御発振器(VCO2;第2電圧制御発振器)11と、セレクタ12と、セレクタ13と、を備える。なお、タイミング検出回路7とチャージポンプ8とにより、位相差検出器を構成する。また、セレクタ12とセレクタ13とにより選択回路を構成する。
【0018】
PLL回路1は、制御回路2から与えられる制御信号のうち、制御信号inselに基づいて、入力クロックとして選択されるクロックの選択を切り替える。なお、制御回路2は、制御ポート16から与えられる「系切り替え信号(PCS(Phase Change Signal))」に基づいて、制御信号insel、reset_b、set_m、set_n、mask、hold1、hold2、outsel1及びoutsel2を生成する。制御回路2により生成されるinsel、reset_b、set_m、set_n、mask、hold1、hold2、outsel1及びoutsel2は、PLL回路1に、所定の順番で所定のタイミングで与えられる。
【0019】
(セレクタ3)
セレクタ3には、第1入力ポート14からクロックfin1が入力される。また、セレクタ3には、第2入力ポート15からクロックfin2が入力される。セレクタ3は、制御回路2から与えられる制御信号inselに基づいて、クロックfin1又はクロックfin2のいずれかを入力クロックとして選択する。例えば、制御信号inselがロウレベルの信号(L)であれば、セレクタ3はクロックfin1を選択して出力し、制御信号inselがハイレベル信号(H)であれば、セレクタ3はクロックfin2を選択して出力する。セレクタ3によって選択された入力クロックは、1/m分周器4に入力される。
【0020】
(1/m分周器4)
1/m分周器4は、セレクタ3とマスク回路6との間に設けられる。1/m分周器4は、セレクタ3から与えられる入力クロックを分周し、分周して得たクロック(第1分周クロック)faを、マスク回路6の一方の入力端子に対して出力する。1/m分周器4は、いわゆるカウンタによって構成される。
【0021】
制御回路2から与えられる制御信号reset_bにより、1/m分周器4のカウント状態はリセットされる。また、制御回路2から与えられる制御信号set_mにより、1/m分周器4における分周比が設定される。本実施の形態では、制御信号set_mがロウレベルの場合、1/m分周器4には、分周比m1(m1は自然数)が設定される。一方、制御信号set_mがハイレベルの場合、1/m分周器4には分周比m2(m2は自然数)が設定される。
【0022】
(1/n分周器5)
1/n分周器5は、後述するセレクタ12とマスク回路6との間に設けられる。1/n分周器5は、電圧制御発振器10から出力される出力クロック(第1中間クロック)fout1及び電圧制御発振器11から出力される出力クロック(第2中間クロック)fout2のうち、選択された一方の出力クロック(フィードバッククロック)を分周し、分周して得たクロック(第2分周クロック)fbを出力する。なお、1/n分周器5は、1/m分周器4と同様に、カウンタによって構成される。
【0023】
制御回路2から与えられる制御信号reset_bにより、1/n分周器5のカウント状態はリセットされる。また、制御回路2から与えられる制御信号set_nにより、1/n分周器5における分周比が設定される。本実施の形態では、制御信号set_nがロウレベルの場合、1/n分周器5には分周比n1(n1は自然数)が設定される。一方、制御信号set_nがハイレベルの場合、1/n分周器5には分周比n2(n2は自然数)が設定される。
【0024】
なお、入力クロックとしてクロックfin1が用いられる場合、1/m分周器4には分周比m1、1/n分周器5には分周比n1が設定される。一方、入力クロックとしてクロックfin2が用いられる場合、1/m分周器4には分周比m2、1/n分周器5には分周比n2が設定される。また、1/m分周器4及び1/n分周器5の分周比は、入力クロック切替前後で出力クロックfoutの周波数が所望の周波数に維持されるように設定される。
【0025】
(マスク回路6)
マスク回路6は、例えば、2個のスイッチ回路6a,6bを備える。1/m分周器4から出力されるクロックfaが、後述するタイミング検出回路7の入力端子aに入力される前段階で、スイッチ回路6aに入力される。また、1/n分周器5から出力されるクロックfbが、後述するタイミング検出回路7の入力端子bに入力される前段階で、スイッチ回路6bに入力される。
【0026】
かかる構成を採用することにより、入力クロックとして選択されるクロックが切り替えられる、いわゆる「系切り替え」が行われる場合においても、PLL回路1の出力ポート17から出力される出力クロックfoutの波形に乱れが生じることを抑制できる。つまり、PLL回路1は、入力クロックの切り替え時においても、動作を停止させることなく、所望の周波数を維持した安定した出力クロックを生成することができる。この点については、後述する説明からも明らかとなる。
【0027】
本実施の形態では、スイッチ回路6aがNAND20(不図示)である場合を例に説明する。また、本実施の形態では、スイッチ回路6bがNAND21(不図示)である場合を例に説明する。NAND20,21は、2入力1出力の論理回路である。
【0028】
NAND20の一方の入力端子には、1/m分周器4の出力端子が接続され、1/m分周器4により分周されたクロックfaが与えられる。NAND20の他方の入力端子には、制御回路2が接続され、制御回路2から制御信号maskの反転信号が与えられる。
【0029】
NAND20の出力状態は、制御回路2から与えられる制御信号maskに基づいて決定される。即ち、NAND20は、制御信号maskがロウレベルの電圧であれば、1/m分周器4から出力されるクロックfaを反転して出力する。制御信号maskがハイレベルの電圧であれば、NAND20は、常にハイレベルの信号を出力する。
【0030】
即ち、スイッチ回路6aは、制御回路2から与えられる制御信号maskに基づいて、1/m分周器4により分周されたクロックfa又はハイレベルの電圧信号(実質的に一定の電圧)のいずれかをタイミング検出回路7の入力端子aに向けて選択的に出力する。
【0031】
スイッチ回路6bの構成はスイッチ回路6aの構成に等しい。つまり、スイッチ回路6bを構成するNAND21は、スイッチ回路6aを構成するNAND20に相当する。
【0032】
ただし、NAND21の一入力端子には、1/n分周器5の出力端子が接続され、1/n分周器5により分周されたクロックfbが与えられる。NAND21の他方の入力端子には、制御回路2が接続され、制御回路2から制御信号maskの反転信号が与えられる。
【0033】
NAND21の出力状態は、NAND20と同様に、制御回路2から与えられる制御信号maskに基づいて決定される。即ち、NAND21は、制御信号maskがロウレベルの電圧信号であれば、1/n分周器5から出力されるクロックfbを反転して出力する。制御信号maskがハイレベルの電圧信号であれば、NAND21は、常にハイレベルの電圧信号を出力する。
【0034】
即ち、スイッチ回路6bは、制御回路2から与えられる制御信号maskに基づいて、1/n分周器5により分周されたクロックfb又はハイレベルの電圧信号(実質的に一定の電圧)のいずれかをタイミング検出回路7の入力端子bに向けて選択的に出力する。
【0035】
(タイミング検出回路7)
タイミング検出回路7は、2入力2出力の論理回路である。タイミング検出回路7の入力端子aは、スイッチ回路6aの出力端子に接続される。タイミング検出回路7の入力端子bは、スイッチ回路6bの出力端子に接続される。タイミング検出回路7の出力端子UPbarは、後述するチャージポンプ8の一方の入力端子(第1制御端子)に接続される。タイミング検出回路7の出力端子DOWNは、後述するチャージポンプ8の他方の入力端子(第2制御端子)に接続される。
【0036】
タイミング検出回路7は、入力端子aに与えられるクロックの立ち下がりを検出すると、出力端子UPbarから出力されていた電圧信号(第1タイミング信号)をハイレベルからロウレベルに変更する。また、タイミング検出回路7は、入力端子aに与えられるクロックの立ち上がりを検出すると、第1タイミング信号をロウレベルからハイレベルに変更する。
【0037】
一方、タイミング検出回路7は、入力端子bに与えられるクロックの立ち下がりを検出すると、出力端子DOWNから出力されていた電圧信号(第2タイミング信号)をロウレベルからハイレベルに変更する。また、タイミング検出回路7は、入力端子bに与えられるクロックの立ち上がりを検出すると、第2タイミング信号をハイレベルからロウレベルに変更する。
【0038】
チャージポンプ8は、例えば、直列接続されたP型のMOSトランジスタTR1(不図示)とN型のMOSトランジスタTR2(不図示)とを出力段に有する。TR1のソースは、電源電位(VDD)に接続される。TR1のゲート(第1制御端子)は、タイミング検出回路7の出力端子UPbarに接続される。TR1のドレインは、TR2のドレインに接続される。TR2のゲート(第2制御端子)は、タイミング検出回路7の出力端子DOWNに接続される。TR2のソースは、接地電位(GND)に接続される。
【0039】
チャージポンプ8は、1/m分周器4により分周されたクロックと1/n分周器5により分周されたクロックとの間の位相差に応じた電流(位相差電流)を生成する。チャージポンプ8の動作については、図2を用いて後述する。
【0040】
(ローパスフィルタ9)
図1に示すように、ローパスフィルタ9は、タイミング検出回路7と後述する電圧制御発振器10,11との間の節点N1に並列接続される。ローパスフィルタ9は、少なくとも1つのキャパシタを含んで構成される。
【0041】
1/m分周器4により分周されたクロックfaと1/n分周器5により分周されたクロックfbとの間の位相差に応じた電流(位相差電流)がチャージポンプ8で生成されると、ローパスフィルタ9に含まれるキャパシタは充電(チャージ)又は放電(ディスチャージ)される。ローパスフィルタ9に含まれるキャパシタの充放電に基づいて、節点N1における電圧Vinは変動する。これによって、通常モードにおける電圧制御発振器10の出力クロックfout1の周波数が調整される。同様に、通常モードにおける電圧制御発振器11の出力クロックfout2の周波数が調整される。尚、節点N1における電圧Vinは、電圧制御発振器10,11の入力電圧を構成する。
【0042】
(電圧制御発振器10)
図1に示すように、電圧制御発振器10では、入力端子がチャージポンプ8、ローパスフィルタ9に接続され、出力端子が後述するセレクタ12,13の一方の入力端子にそれぞれ接続される。電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1は、セレクタ12,13の一方の入力端子にそれぞれ与えられる。
【0043】
また、電圧制御発振器10は、電圧保持回路(HOLD;第1電圧保持回路)30を有する。電圧保持回路30では、入力端子がチャージポンプ8、ローパスフィルタ9に接続され、出力端子が電圧制御発振器10内における後段の内部回路(不図示)に接続される。電圧制御発振器10は、制御回路2から与えられる制御信号hold1に基づいて、節点N1における直前の電圧Vinを保持するか否かを制御する。例えば、制御信号hold1がハイレベル(保持モード)の場合、電圧保持回路30は、節点N1の直前の電圧Vinを保持し、後段の内部回路に対して出力する。一方、制御信号hold1がロウレベル(通常モード)の場合、電圧保持回路30は、節点N1の直前の電圧Vinを保持することなく、入力された電圧Vinをそのまま後段の内部回路に対して出力する。
【0044】
電圧制御発振器10は、電圧保持回路30から出力される電圧の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を出力する。例えば、制御信号hold1がハイレベルの場合、電圧制御発振器10は、電圧保持回路30に保持された固定電圧の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を出力する。一方、制御信号hold1がロウレベルの場合、電圧制御発振器10は、節点N1における電圧Vinの電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を出力する。即ち、節点N1の電圧Vinの電圧レベルが低くなると、電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1の周波数は低くなる。節点N1の電圧Vinの電圧レベルが高くなると、電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1の周波数は高くなる。
【0045】
(電圧制御発振器11)
図1に示すように、電圧制御発振器11では、入力端子がチャージポンプ8、ローパスフィルタ9に接続され、出力端子が後述するセレクタ12,13の他方の入力端子にそれぞれ接続される。電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2は、セレクタ12,13の他方の入力端子にそれぞれ与えられる。
【0046】
また、電圧制御発振器11は、電圧保持回路(HOLD;第2電圧保持回路)31を有する。電圧保持回路31では、入力端子がチャージポンプ8、ローパスフィルタ9に接続され、出力端子が電圧制御発振器11内における後段の内部回路(不図示)に接続される。電圧制御発振器11は、制御回路2から与えられる制御信号hold2に基づいて、節点N1における直前の電圧Vinを保持するか否かを制御する。例えば、制御信号hold2がハイレベル(保持モード)の場合、電圧保持回路31は、節点N1の直前の電圧Vinを保持し、後段の内部回路に対して出力する。一方、制御信号hold2がロウレベル(通常モード)の場合、電圧保持回路31は、節点N1の直前の電圧Vinを保持することなく、入力された電圧Vinをそのまま後段の内部回路に対して出力する。
【0047】
電圧制御発振器11は、電圧保持回路31から出力される電圧の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout2を出力する。例えば、制御信号hold2がハイレベルの場合、電圧制御発振器11は、電圧保持回路31に保持された固定電圧の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout2を出力する。一方、制御信号hold2がロウレベルの場合、電圧制御発振器11は、節点N1における電圧Vinの電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout2を出力する。即ち、節点N1の電圧Vinの電圧レベルが低くなると、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2の周波数は低くなる。節点N1の電圧Vinの電圧レベルが高くなると、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2の周波数は高くなる。
【0048】
上記2つの電圧制御発振器10,11を採用することにより、入力クロックとして選択されるクロックが切り替えられる、いわゆる「系切り替え」が行われる場合においても、PLL回路1の出力ポート17から出力される出力クロックfoutの波形に乱れが生じることを抑制できる。つまり、PLL回路1は、入力クロックの切り替え時においても、動作を停止させることなく、所望の周波数を維持した安定した出力クロックを生成することができる。この点については、後述する説明からも明らかとなる。
【0049】
(セレクタ12)
図1に示すように、セレクタ12では、一方の入力端子が電圧制御発振器10の出力端子に接続され、他方の入力端子が電圧制御発振器11の出力端子に接続され、出力端子が1/n分周器5の入力端子に接続される。セレクタ12の一方の入力端子には、電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1が入力される。セレクタ12の他方の入力端子には、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2が入力される。そして、セレクタ12は、制御回路2から与えられる制御信号outsel1に基づいて、出力クロックfout1及び出力クロックfout2のいずれか一方を選択して出力する。例えば、制御信号outsel1がロウレベルの信号(L)であれば、セレクタ12は出力クロックfout1を選択して出力する。一方、制御信号outsel1がハイレベルの信号(H)であれば、セレクタ12は出力クロックfout2を選択して出力する。セレクタ12によって選択された出力クロックは、1/n分周器5に入力される。
【0050】
(セレクタ13)
図1に示すように、セレクタ13では、一方の入力端子が電圧制御発振器10の出力端子に接続され、他方の入力端子が電圧制御発振器11の出力端子に接続され、出力端子が出力ポート17に接続される。セレクタ13の一方の入力端子には、電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1が入力される。セレクタ13の他方の入力端子には、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2が入力される。そして、セレクタ13は、制御回路2から与えられる制御信号outsel2に基づいて、出力クロックfout1及び出力クロックfout2のいずれか一方を選択し、出力クロックfoutとして出力する。例えば、制御信号outsel1がロウレベルの信号(L)であれば、セレクタ13は出力クロックfout1を選択して出力クロックfoutとして出力する。一方、制御信号outsel1がハイレベルの信号(H)であれば、セレクタ12は出力クロックfout2を選択して出力クロックfoutとして出力する。
【0051】
ここで、図2を用いて、チャージポンプ8の動作について説明する。
【0052】
図2に示すように、タイミング検出回路7の出力端子UPbarから出力される第1タイミング信号がロウレベルであり、出力端子DOWNから出力される第2タイミング信号がロウレベルであるとき、チャージポンプ8は「チャージ状態」にある。即ち、第1タイミング信号がロウレベルであるとき、TR1はオン状態であり、第2タイミング信号がロウレベルであるとき、TR2はオフ状態である。そして、チャージポンプ8からローパスフィルタ9に電流が入力される。換言すると、ローパスフィルタ9に含まれるキャパシタは、チャージポンプ8にて生成された電流により充電される。
【0053】
なお、この状態において、第2タイミング信号がハイレベルに変化すると、タイミング検出回路7はリセット状態となる。よって、チャージポンプ8が「チャージ状態」にあるとき、チャージポンプ8からローパスフィルタ9に入力される電流は、1/m分周器4により分周されたクロックfaと、1/n分周器5により分周されたクロックfbとの位相差に応じた位相差電流となる。具体的には、制御信号hold1がロウレベルの場合における出力クロックfout1の位相遅れ量を反映した電流である。あるいは、制御信号hold2がロウレベルの場合における出力クロックfout2の位相遅れ量を反映した電流である。
【0054】
また、図2に示すように、第1タイミング信号がハイレベルであり、第2タイミング信号がハイレベルであれば、チャージポンプ8は「ディスチャージ状態」にある。即ち、第1タイミング信号がハイレベルであれば、TR1はオフ状態であり、第2タイミング信号がハイレベルであれば、TR2はオン状態である。そして、ローパスフィルタ9からチャージポンプ8に電流が入力される。換言すると、ローパスフィルタ9に含まれるキャパシタからチャージポンプ8に電流が入力され、チャージポンプ8に電流が生成される。
【0055】
なお、この状態において、第1タイミング信号がロウレベルに変化すると、タイミング検出回路7はリセット状態となる。よって、チャージポンプ8が「ディスチャージ状態」にあるとき、チャージポンプ8からローパスフィルタ9に入力される電流は、1/m分周器4により分周されたクロックと、1/n分周器5により分周されたクロックとの位相差に応じた位相差電流となる。具体的には、制御信号hold1がロウレベルの場合における出力クロックfout1の位相進み量を反映した電流である。あるいは、制御信号hold2がロウレベルの場合における出力クロックfout2の位相進み量を反映した電流である。
【0056】
(タイミングチャート)
ここで、入力クロックとして用いるクロックを切り替える(系切り替え)動作について、図3を用いて説明する。図3の例では、入力クロックとして用いるクロックをクロックfin1からクロックfin2に切り替える場合について説明する。
【0057】
系切り替えが行われる前の時刻t1〜時刻t2の間においては、タイミング検出回路7の入力端子aには、1/m分周器4により分周されたクロックfaが、スイッチ回路6aにより反転されたうえで与えられる(不図示)。また、タイミング検出回路7の入力端子bには、1/n分周器5により分周されたクロックfbが、スイッチ回路6bにより反転されたうえで与えられる(不図示)。
【0058】
このとき、制御信号hold1がロウレベルであるため、電圧制御発振器10は、通常モードの動作を示す。つまり、電圧制御発振器10は、節点N1における電圧Vinの電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を出力する。一方、制御信号hold2がハイレベルであるため、電圧制御発振器11は、保持モードの動作を示す。つまり、電圧制御発振器11は、電圧保持回路31に保持されている固定電圧に応じた周波数の出力クロックfout2を出力する。なお、制御信号inselがロウレベルであるため、セレクタ3は、クロックfin1を選択して1/m分周器4に対して出力する。また、制御信号outsel1がロウレベルであるため、セレクタ12は、出力クロックfout1を選択して1/n分周器5に対して出力する。制御信号outsel2がロウレベルであるため、セレクタ13は、出力クロックfout1を選択して、出力クロックfoutとして出力ポート17に対して出力する。また、制御信号set_mがロウレベルであるため、1/m分周器4は分周比m1に設定されている。制御信号set_nがロウレベルであるため、1/n分周器5は分周比n1に設定されている。
【0059】
時刻t2では、制御ポート16から制御回路2に与えられる「系切り替え信号(PCS)」がロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。これを受けて、制御回路2は制御信号insel、reset_b、set_m、set_n、mask、hold1、hold2、outsel1及びoutsel2を生成する。なお、「系切り替え信号」がハイレベルのときクロックfin2が選択され、「系切り替え信号」がロウレベルのときクロックfin1が選択される。また、時刻t2では、セレクタ13による出力クロックfoutの切り替えが行われないため、PLL回路1は、入力クロック切り替え前のクロックfin1に基づく出力クロックfoutを出力し続ける。
【0060】
時刻t3では、スイッチ回路6aの他方の入力端子及びスイッチ回路6bの他方の入力端子に対して制御回路2から与えられる制御信号maskがロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。このとき、上述のとおり、スイッチ回路6aの出力は、ハイレベルの電圧信号に固定される。同様に、スイッチ回路6bの出力も、ハイレベルの電圧信号に固定される。制御信号maskは、時刻t9までハイレベルに維持される。
【0061】
タイミング検出回路7は、上述のとおり、入力端子aに入力されるクロックのエッジを検出し、入力端子bに入力されるクロックのエッジを検出する。入力端子a、入力端子bの入力電圧が上述のようにハイレベルの電圧信号(実質的に一定の電圧)に固定されることにより、タイミング検出回路7の出力端子UPbarから出力される電圧信号(第1タイミング信号)及び出力端子DOWNから出力される電圧信号(第2タイミング信号)は変更されなくなる。即ち、タイミング検出回路7の出力端子UPbarから出力される電圧信号はハイレベルに維持される。また、タイミング検出回路7の出力端子DOWNから出力される電圧信号はロウレベルに維持される。そして、チャージポンプ8のTR1、TR2は、ともにオフ状態となる。それにより、節点N1における電圧Vinは、所定の電圧レベルに固定される。
【0062】
時刻t4では、制御回路2から電圧保持回路30に与えられる制御信号hold1がロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。それにより、電圧保持回路30は、節点N1における直前の電圧Vinの電圧レベルを保持する。つまり、電圧保持回路30は、通常モードから保持モードに切り替わる。電圧制御発振器10は、電圧保持回路30に保持された固定電圧の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を出力する。同時に、制御回路2から電圧保持回路31に与えられる制御信号hold2がハイレベル(H)からロウレベル(L)に変更される。つまり、電圧保持回路31は、保持モードから通常モードに切り替わる。それにより、電圧保持回路31は、入力された電圧Vinを電圧制御発振器11における後段の内部回路に対してそのまま出力する。電圧制御発振器11は、節点N1における電圧Vinの電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout2を出力する。
【0063】
時刻t5では、制御回路2からセレクタ12に与えられる制御信号outsel1がロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。それにより、セレクタ12は、出力クロックfout2を選択し、フィードバッククロックとして1/n分周器5に対して出力する。このとき、制御回路2からセレクタ13に与えられる制御信号outsel2はロウレベル(L)の状態を維持する。したがって、セレクタ13は、出力クロックfout1の選択を維持し、出力クロックfoutとして出力ポート17に対して出力する。つまり、時刻t5においても、セレクタ13による出力クロックfoutの切り替えが行われないため、PLL回路1は、入力クロック切り替え前のクロックfin1に基づく出力クロックfoutを出力し続ける。PLL回路1は、時刻t10まで、入力クロック切り替え前のクロックfin1に基づく出力クロックfoutを出力し続ける。なお、制御信号maskがハイレベルであるため、タイミング検出回路7による位相比較は行われない。つまり、ループは切れたままの状態である。
【0064】
時刻t6では、制御回路2から1/m分周器4及び1/n分周器5に与えられる制御信号reset_bがハイレベル(H)からロウレベル(L)に変更される。1/m分周器4及び1/n分周器5では、リセット端子にロウレベルの電圧が与えられ、カウンタ値がリセットされる。制御信号reset_bは、時刻t8までロウレベルに維持される。
【0065】
時刻t7では、制御回路2からセレクタ3に与えられる制御信号inselがロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。これにより、セレクタ3は、クロックfin1からクロックfin2に選択を切り替え、入力クロックとして1/m分周器4に対して出力する。
【0066】
また、時刻t7では、制御回路2から1/m分周器4に与えられる制御信号set_mがロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。これにより、1/m分周器4には分周比m2が設定される。同時に、制御回路2から1/n分周器5に与えられる制御信号set_nがロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。これにより、1/n分周器5には分周比n2が設定される。つまり、時刻t7において、1/m分周器4及び1/n分周器5には、クロックfin2に対応した分周比が設定される。
【0067】
時刻t8では、制御回路2から1/m分周器4及び1/n分周器5に与えられていた制御信号reset_bが、ロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。これによって、1/m分周器4及び1/n分周器5は、リセットが解除され、同時にカウントを始める。しかし、1/m分周器4から出力される第1分周クロックfaと、1/n分周器5から出力される第2分周クロックfbと、の間には、クロックfin1とクロックfin2との間の位相差に基づく位相差が存在する。
【0068】
時刻t9では、制御回路2からスイッチ回路6a、6bに与えられていた制御信号maskがハイレベル(H)からロウレベル(L)に変更される。これと同時に、タイミング検出回路7の入力端子aには、第1分周クロックfaが反転されたクロックが与えられる。また、タイミング検出回路7の入力端子bには、第2分周クロックfbが反転されたクロックが与えられる。つまり、マスク回路6によるマスクは解除される。これにより、PLL回路1では、タイミング検出回路7による位相比較が再開され、第1分周クロックfaと第2分周クロックfbとの間の位相差の合わせ込み(ロック動作)が行われる。このとき、制御回路2からセレクタ13に与えられる制御信号outsel2はロウレベル(L)の状態を維持する。したがって、セレクタ13は、電圧制御発振器10から出力される出力クロックfout1の選択を維持し、出力クロックfoutとして出力ポート17に対して出力する。つまり、セレクタ13は、電圧保持回路30に保持された固定電位の電圧レベルに応じた周波数の出力クロックfout1を、出力クロックfoutとして出力する。言い換えると、PLL回路1は、前述のように、入力クロック切り替え前のクロックfin1に基づく出力クロックfoutを出力し続ける。
【0069】
そして、所定の期間が経過した時刻t10では、制御回路2からセレクタ13に与えられる制御信号outsel2がロウレベル(L)からハイレベル(H)に変更される。それにより、セレクタ13は、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2を選択し、出力ポート17に対して出力する。つまり、セレクタ13は、ロック動作が完了するまでの間は、入力クロック切り替え前のクロックfin1に基づいて生成される出力クロックfout1を、出力クロックfoutとして出力し続ける。そして、セレクタ13は、ロック動作が完了した後に、入力クロック切り替え後のクロックfin2に基づいて生成される出力クロックfout2を、出力クロックfoutとして出力する。言い換えると、セレクタ13は、出力クロックfout2の動作が安定しない間は、安定した出力クロックfout1を出力クロックfoutとして出力し、出力クロックfout2の動作が安定した後に、出力クロックfout2を出力クロックfoutとして出力する。
【0070】
このような回路構成により、ロック動作に基づく出力クロックfout2の変動は、出力クロックfoutに伝搬されなくなる。つまり、PLL回路1は、入力クロックの切り替え時において、ロック動作に基づく出力クロックfout2の変動に影響されることなく、所望の周波数を維持した安定した出力クロックfoutを出力し続けることができる。
【0071】
なお、入力クロックをクロックfin2からクロックfin1に切り替える場合についても、上記と同様の手順にて動作が行われる。この場合の動作手順を、図3のタイミングチャートに当てはめて説明する。時刻t2にてPCSがハイレベルからロウレベルに切り替わる。時刻t4にて制御信号hold1がハイレベルからロウレベルに切り替わる。同時に、制御信号hold2がロウレベルからハイレベルに切り替わる。時刻t5にて制御信号outsel1がハイレベルからロウレベルに切り替わる。時刻t7にて制御信号set_m、制御信号set_n及び制御信号inselがそれぞれハイレベルからロウレベルに切り替わる。時刻t10にて制御信号outsel2がハイレベルからロウレベルに切り替わる。その他の動作手順は、入力クロックをクロックfin1からクロックfin2に切り替える場合と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
このように、本実施の形態にかかるPLL回路(位相同期回路)1は、電圧保持機能を有する電圧制御発振器10,11を備える。そして、PLL回路1は、入力クロックの切り替え時において、フィードバッククロックと切り替え後の入力クロックとの間のロック動作が完了するまでの間は、切り替え前の入力クロック(例えばクロックfin1)に基づく出力クロックfoutを出力する。そして、PLL回路1は、ロック動作が完了した後は、切り替え後の入力クロック(例えばクロックfin2)に基づく出力クロックfoutに切り替えて出力する。それにより、PLL回路1は、入力クロックの切り替え時において、ロック動作の影響を受けずに、所望の周波数を維持した安定した出力クロックfoutを出力することができる。
【0073】
なお、本実施の形態にかかるPLL回路1は、出力クロックfoutを切り替える場合において、出力クロックfout1,fout2間に位相差が存在したとしても、波形の乱れを最小限(切り替え時点のみ)にすることができる。一方、従来技術のPLL回路は、切り替え後の入力クロックとフィードバッククロックとの間のロック動作が完了するまでの間、不安定な出力クロックを出力し続けてしまう。つまり、本実施の形態にかかるPLL回路は、入力クロックの切り替え時において、従来技術よりも安定した出力クロックfoutを出力することができる。
【0074】
実施の形態2
図4に、本発明の実施の形態2にかかるPLL回路(位相同期回路)1aのブロック図を示す。PLL回路1aは、図1に示すPLL回路1と比較して、ロック検出回路40をさらに備える。また、制御回路2の代わりに、制御回路2aが用いられる。
【0075】
ロック検出回路40の一方の入力端子には、マスク回路6の一方の出力端子(NAND20の出力端子)が接続され、第1分周クロックfaの反転信号が与えられる。ロック検出回路40の他方の入力端子には、マスク回路6の他方の出力端子(NAND21の出力端子)が接続され、第2分周クロックfbの反転信号が与えられる。そして、ロック検出回路40は、制御信号ldetを生成し、制御回路2aに対して出力する。制御回路2aは、制御信号ldetに応じた制御信号outsel2を出力する。その他の回路構成は、図1に示すPLL回路1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
図1に示すPLL回路1の場合、入力クロックの切り替え時において、ロック動作に要する時間が不明であった。したがって、図1に示すPLL回路1の場合、ロック動作に要する時間を検証等によって予め調べておき、出力クロックfoutの切り替え時刻(時刻t10)を設定する必要があった。一方、図4に示すPLL回路1aの場合、ロック検出回路40によって第1分周クロックfaと第2分周クロックfbとがロック(同期)しているか否かが検出され、ロックしている場合には、セレクタ13によって出力クロックfoutの切り替えが行われる。それにより、図4に示すPLL回路1aは、図1に示すPLL回路1の場合よりも、より速やかに、より確実に、出力クロックfoutの切り替えを行うことが可能である。
【0077】
図4に示すPLL回路1aの具体的な動作について、図5に示すタイミングチャートを用いて説明する。図5の例では、入力クロックとして用いるクロックをクロックfin1からクロックfin2に切り替える場合について説明する。図5に示すように、時刻t1から時刻t9までのPLL回路1aの動作は、図1に示すPLL回路1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
時刻t9では、制御回路2aからスイッチ回路6a、6bに与えられていた制御信号maskがハイレベル(H)からロウレベル(L)に変更される。これと同時に、タイミング検出回路7の入力端子aには、第1分周クロックfaが反転されたクロックが与えられる。また、タイミング検出回路7の入力端子bには、第2分周クロックfbが反転されたクロックが与えられる。
【0079】
このとき、ロック検出回路40は、第1分周クロックfaと第2分周クロックfbとの位相差を検出する。つまり、ロック検出回路40は、第1分周クロックfaと第2分周クロックfbとがロックしているか否かを検出する。例えば、第1の分周クロックfaと第2の分周クロックfbとがロックしていない場合、ロック検出回路40は、ロウレベルの制御信号ldetを出力する。一方、第1の分周クロックfaと第2の分周クロックfbとがロックしている場合、ロック検出回路40は、ハイレベルの制御信号ldetを出力する。したがって、ロック検出回路40は、時刻t9の後、ロック動作が完了するまでの間は、ロウレベルの制御信号ldetを出力する。そして、ロック検出回路40は、ロック動作が完了した後に、制御信号ldetをロウレベルからハイレベルに切り替える。
【0080】
時刻t10では、制御信号ldetのハイレベルへの切り替わりを受けて、制御回路2aからセレクタ13に与えられていた制御信号outsel2がロウレベルからハイレベルに変更される。それにより、セレクタ13は、電圧制御発振器11から出力される出力クロックfout2を選択し、出力クロックfoutとして出力ポート17に対して出力する。つまり、セレクタ13は、ロック動作が完了するまでの間は、出力クロックfout1を出力クロックfoutとして出力し、ロック動作が完了した後は、出力クロックfout2を出力クロックfoutとして出力する。言い換えると、セレクタ13は、出力クロックfout2の動作が安定した後に、当該出力クロックfout2を出力クロックfoutとして出力する。このような回路構成により、ロック動作に基づく出力クロックfout2の変動は、出力クロックfoutに伝搬されなくなる。つまり、PLL回路1aは、ロック動作に基づく出力クロックfout2の変動に影響されることなく、所望の周波数を維持した安定した出力クロックfoutを出力することができる。さらに、PLL回路1aは、ロック検出回路40によってロック動作の完了を検出することができるため、より速やかに、より確実に出力クロックfoutの切り替えを行うことが可能である。
【0081】
なお、入力クロックをクロックfin2からクロックfin1に切り替える場合についても、上記と同様の手順にて動作が行われる。
【0082】
以上のように、上記実施の形態にかかるPLL回路(位相同期回路)は、電圧保持機能を有する2つの電圧制御発振器10,11を備える。そして、上記実施の形態にかかるPLL回路は、入力クロックの切り替え時において、ロック動作が完了するまでの間は、切り替え前の入力クロック(例えばクロックfin1)に基づく出力クロックfoutを出力し、ロック動作が完了した後は、切り替え後の入力クロック(例えばクロックfin2)に基づく出力クロックfoutに切り替えて出力する。それにより、本実施の形態にかかるPLL回路は、入力クロックの切り替え時において、ロック動作の影響を受けずに、所望の周波数を維持した安定した出力クロックfoutを出力することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上記実施の形態では、マスク回路6を備えた場合を例に説明したが、これに限られない。マスク回路6を備えずに、リセット可能なタイミング検出回路7を備えた回路構成にも適宜変更可能である。この場合、入力クロック切り替え時において、タイミング検出回路7をリセット状態とし、タイミング検出回路7から出力される第1タイミング信号、第2タイミング信号を、チャージポンプ8に電流が発生しないように設定する。それにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
また、再ロックに要する時間が長くなる可能性があるが、マスク回路6を備えない回路構成にも適宜変更可能である。好適には、入力クロック切り替え時において、1/m分周器4及び1/n分周器5をリセット状態とし、タイミング検出回路7の入力端子a及び入力端子bに入力される電圧をハイレベルに設定する。これにより、タイミング検出回路7から出力される第1タイミング信号、第2タイミング信号は、チャージポンプ8に電流が発生しないように設定される。つまり、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0085】
また、1/m分周器4及び1/n分周器5をリセットするタイミングは、セレクタ3によるクロックの選択の切り替えと同時に行う必要はない。
【符号の説明】
【0086】
1,1a PLL回路
2,2a 制御回路
4 1/m分周器
5 1/n分周器
6 マスク回路
7 位相比較器
8 チャージポンプ
9 ローパスフィルタ
10,11 電圧制御発振器
3,12,13 セレクタ
20,21 NAND
30,31 電圧保持回路
40 ロック検出回路
TR1,TR2 トランジスタ
N1 節点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクロックのいずれかを入力クロックとして選択する第1セレクタと、
前記入力クロックを分周する第1分周器と、
フィードバッククロックを分周する第2分周器と、
前記第1分周器により分周されたクロックと前記第2分周器により分周されたクロックとの位相差を検出する位相差検出器と、
前記位相差に応じた入力電圧を保持する第1電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第1中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第1電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第1中間クロックを生成する第1電圧制御発振器と、
前記位相差に応じた入力電圧を保持する第2電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第2中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第2電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第2中間クロックを生成する第2電圧制御発振器と、
前記第1及び第2中間クロックのいずれかを選択し、出力クロック及び前記フィードバッククロックとして出力する選択回路と、を備え、
前記第1及び第2中間クロックのうち、保持モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックが出力クロックとして出力され、通常モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックが前記フィードバッククロックとして出力される場合に、前記入力クロックとして選択される前記クロックが前記セレクタによって切り替えられる位相同期回路。
【請求項2】
前記フィードバッククロックと切り替え後の前記入力クロックとが同期した場合に、前記出力クロックとして選択される中間クロックが前記選択回路によって切り替えられることを特徴とする請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
前記入力クロックとして選択される前記クロックが切り替えられる場合、対応する電圧制御発振器が予め保持モードに設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記位相差検出器と、前記第1及び第2電圧制御発振器と、の間の節点に並列接続されるローパスフィルタをさらに備えた請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項5】
前記位相差検出器は、
前記第1分周器により分周されたクロックに同期した第1タイミング信号を出力し、前記第2分周器により分周されたクロックに同期した第2タイミング信号を出力するタイミング検出回路と、
前記第1タイミング信号及び前記第2タイミング信号に基づいて前記第1分周器により分周されたクロックと前記第2分周器により分周されたクロックとの位相差に応じた位相差電流を生成するチャージポンプ回路と、を備えた請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項6】
前記タイミング検出回路は、
当該タイミング検出回路がリセット状態に設定された場合に、所定電圧を有する前記第1及び第2タイミング信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の位相同期回路。
【請求項7】
前記第1分周器により分周されたクロック及び第2分周器により分周されたクロックと、一対の所定電圧と、のいずれかを選択して前記位相差検出器に対して出力するマスク回路をさらに備えた請求項1〜5のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項8】
前記第1及び第2分周器は、
当該第1及び第2分周器がリセット状態に設定された場合に、それぞれ所定電圧を出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項9】
前記第1及び第2の電圧保持回路は、
それぞれ保持モードにおいて、前記所定電圧に基づいて生成された前記入力電圧を保持することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項10】
前記入力クロックと前記フィードバッククロックとが同期しているか否かを検出するロック検出回路をさらに備え、
前記ロック検出回路によって検出された検出結果に基づいて、前記出力クロックとして選択される中間クロックが前記選択回路によって切り替えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の位相同期回路。
【請求項11】
複数のクロックのいずれかを入力クロックとして選択する第1セレクタと、
前記入力クロックを分周する第1分周器と、
フィードバッククロックを分周する第2分周器と、
前記第1分周器により分周されたクロックと前記第2分周器により分周されたクロックとの位相差を検出する位相差検出器と、
前記位相差に応じた入力電圧を保持する第1電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第1中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第1電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第1中間クロックを生成する第1電圧制御発振器と、
前記位相差に応じた入力電圧を保持する第2電圧保持回路を有し、通常モードでは、前記位相差検出器により検出される位相差に応じた入力電圧に基づいて第2中間クロックを生成し、保持モードでは、前記第2電圧保持回路に保持されている入力電圧に基づいて前記第2中間クロックを生成する第2電圧制御発振器と、
前記第1及び第2中間クロックのいずれかを選択し、出力クロック及び前記フィードバッククロックとして出力する選択回路と、を備えた位相同期回路の制御方法であって、
前記第1及び第2中間クロックのうち、保持モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックを出力クロックとして出力し、
通常モードの電圧制御発振器によって生成される中間クロックを前記フィードバッククロックとして出力し、
前記入力クロックとして選択される前記クロックを前記セレクタによって切り替える位相同期回路の制御方法。
【請求項12】
前記フィードバッククロックと切り替え後の前記入力クロックとが同期した場合に、前記出力クロックとして選択される中間クロックを前記選択回路によって切り替えることを特徴とする請求項11に記載の位相同期回路。
【請求項13】
前記入力クロックとして選択される前記クロックを切り替える場合、対応する電圧制御発振器を予め保持モードに設定することを特徴とする請求項11又は12に記載の位相同期回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−188077(P2011−188077A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48964(P2010−48964)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】