説明

位相同期発振器および送信機

【課題】従来に比べて正確にロック状態およびアンロック状態を判定することができる位相同期発振器を提供する。
【解決手段】位相同期発振器はサンプリング位相検波器SPDを備える。サンプリング位相検波器は、基準信号と、電圧制御発振器VCOから出力される発振信号の位相差に応じた電圧信号を出力する。シュミット回路34は、サンプリング位相検波器の出力に応じてパルス信号を生成する。判定回路は、パルス信号の有無に応じてロック/アンロックを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング位相検波器(SPD)を備える位相同期発振器およびそれを利用する送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプリング位相検波器(SPD)を利用した位相同期発振器(PLO)は広く知られる。こうした位相同期発振器はマイクロ波帯のような高周波の送信機や受信機で周波数変換用の局部発振器として広く利用される。位相同期発振器を用いた送信機では位相同期発振器の同期すなわちロックが外れると、目的の送信周波数以外の送信電波が出力され妨害波となることから、位相同期発振器の同期すなわちロックが外れた場合、ロックが外れたことを検出し送信を停止する。
【0003】
特許文献1に開示されるように、ロックの外れすなわちアンロックの検出にあたってループフィルタの出力電圧が用いられる。ループフィルタの出力電圧は電圧制御発振器の発振周波数と基準信号との位相差に相当する。ループフィルタの出力電圧が所定の正常範囲に入ると、その状態はロック状態として判定される。ループフィルタの出力電圧が所定の正常範囲から外れると、その状態はアンロック状態として判定される。アンロック状態が検出されると、位相同期発振器に含まれるサーチオシレータは電圧制御発振器の制御電圧をスイープする。こうして再び位相同期発振器のロックが確立されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−177418号公報
【特許文献2】特開2004−304251号公報
【特許文献3】特開平6−164381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の位相同期発振器ではロックの確立にあたって電圧制御発振器の発振周波数はロックレンジより狭いプルインレンジに入らなければならない。しかしながら、ロック状態と判定する電圧制御発振器の制御電圧範囲をロックレンジに対応する範囲に設定した場合、アンロック状態からサーチオシレータで制御電圧をスイープすると、実際にロック可能なプルインレンジに入る前にロック状態と誤判定される。この対策としてロック状態と判定する制御電圧範囲をプルインレンジに対応する範囲に設定した場合、実際には制御電圧はロックレンジ内にありロック状態を保持しているにも拘わらずアンロックと誤判定されてしまう。以上から制御電圧の範囲のみで正確にロック/アンロックを判定することは困難である。
【0006】
本発明のいくつかの態様によれば、従来に比べて正確にロック状態およびアンロック状態を判定することができる位相同期発振器を提供することができる。本発明のいくつかの態様によれば、そういった位相同期発振器を利用する送信機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1形態によれば、基準信号を出力する基準信号発振器と、制御電圧に応じた発振周波数で発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記基準信号および前記発振信号の位相差に応じた電圧信号を出力するサンプリング位相検波器と、前記サンプリング位相検波器の出力に応じて矩形波を生成するシュミット回路と、前記矩形波の有無に応じてロック/アンロックを判定する判定回路とを備える位相同期発振器が提供される。
【0008】
基準信号および発振信号の位相差が縮小すると、基準信号発振器と電圧制御発振器との間でロック状態が確立される。このとき、シュミット回路は矩形波を出力しない。ロック状態が解除されると、シュミット回路は矩形波を出力する。こうしたシュミット回路の特性に基づき判定回路は正確にロック状態およびアンロック状態を判定することができる。
【0009】
本発明の第2形態によれば、局部発振器から出力される発振周波数信号に基づき入力信号の周波数を変換するミキサを備え、前記局部発振器は、基準信号を出力する基準信号発振器と、制御電圧の大きさに応じた発振周波数で発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記基準信号および前記発振信号の位相差に応じた電圧信号を出力するサンプリング位相検波器と、前記サンプリング位相検波器の出力に応じて矩形波を生成するシュミット回路と、前記矩形波の有無に応じてロック/アンロックを判定する判定回路とを備えることを特徴とする送信機が提供される。
【0010】
基準信号および発振信号の位相差が縮小すると、基準信号発振器と電圧制御発振器との間でロック状態が確立される。このとき、シュミット回路は矩形波を出力しない。ロック状態が解除されると、シュミット回路は矩形波を出力する。こうしたシュミット回路の特性に基づき判定回路は正確にロック状態およびアンロック状態を判定することができる。こうした判定に応じて送信機の動作は制御されることができる。
【0011】
送信機は、前記ミキサの出力を増幅するパワーアンプをさらに備えてもよい。前記判定回路は、前記アンロックを判断すると、前記パワーアンプの動作を停止することができる。アンロック状態のときパワーアンプの消費電力は低減されることができる。
【0012】
送信機は、前記ミキサの出力を増幅するパワーアンプと、前記ミキサの出力を増幅して前記パワーアンプに供給するRFアンプと、前記矩形波の波数を計数し、前記判定回路に計数値を供給するカウンタ回路とをさらに備えてもよい。前記判定回路は、前記計数値が第1の値を超えると前記RFアンプの動作を停止し、前記計数値が第1の値より大きい第2の値を超えると前記パワーアンプの動作を停止することができる。
【0013】
ここでは、RFアンプに比べてパワーアンプは電源のオンから熱飽和状態に達しその出力が安定するまで時間がかかる。したがって、アンロック状態の程度に応じてRFアンプおよびパワーアンプのオンオフが制御されると、消費電力が低減されるとともに、ロック状態への復帰後に速やかな回路動作の安定化が実現されることができる。
【0014】
送信機は、前記入力信号を処理し、処理後の信号を前記ミキサに供給するIFアンプと、前記ミキサの出力を増幅するパワーアンプと、前記ミキサの出力を増幅して前記パワーアンプに供給するRFアンプと、前記矩形波の波数を計数し、前記判定回路に計数値を供給するカウンタ回路とをさらに備えてもよい。前記判定回路は、前記計数値が第1の値を超えると前記IFアンプの動作を停止し、前記計数値が第1の値より大きい第2の値を超えると前記RFアンプの動作を停止し、前記計数値が第2の値より大きい第3の値を超えると前記パワーアンプの動作を停止することができる。
【0015】
ここでは、IFアンプに比べてRFアンプは電源のオンから熱飽和状態に達しその出力が安定するまで時間がかかる。同様に、RFアンプに比べてパワーアンプは電源のオンから熱飽和状態に達しその出力が安定するまで時間がかかる。したがって、アンロック状態の程度に応じてIFアンプ、RFアンプおよびパワーアンプのオンオフが制御されると、消費電力が低減されるとともに、ロック状態への復帰後に速やかな回路動作の安定化が実現されることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、従来に比べて正確にロック状態およびアンロック状態を判定することができる位相同期発振器は提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る送信機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】位相同期発振器の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】ループフィルタ回路の構成を詳細に示すブロック図である。
【図4】電圧制御発振器の発振周波数と制御電圧との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る送信機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る位相同期発振器で判定回路の構成を詳細に示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る位相同期発振器で他の具体例に係る判定回路の構成を詳細に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は本発明の第1実施形態に係る送信機11の構成を概略的に示す。送信機11はIFアンプ12を備える。IFアンプ12には例えば950MHz〜1450MHzの入力信号すなわち中間周波信号(IF)が入力され増幅される。この種の送信機11は例えばブロックアップコンバータ(BUC)といった衛星通信機用送信機その他の無線送信機で例えられることができる。
【0020】
送信機11は局部発振器すなわち位相同期発振器13を備える。位相同期発振器13はPLL(フェーズロックループ)回路の働きで13.05GHzの局部発振信号(LO)を出力する。位相同期発振器13の詳細は後述される。
【0021】
IFアンプ12および位相同期発振器13はミキサ14に接続される。ミキサ14で中間周波信号と位相同期発振器13の局部発振信号が混合される。その結果、中間周波信号の周波数と局部発振信号の周波数の和である高周波信号(RF信号)に中間周波信号は周波数変換される。
【0022】
ミキサ14はRFアンプ15に接続される。RFアンプ15はミキサ14の出力を増幅する。
【0023】
RFアンプ15にはパワーアンプ16が接続される。パワーアンプ16は所定の出力電力までRFアンプ15の出力信号を増幅する。パワーアンプ16の出力すなわちRF信号はアンテナ17から無線信号として空間に伝搬する。こうして送信機11から無線信号が送信される。
【0024】
パワーアンプ16とアンテナ17との間にはスイッチ18が挿入される。スイッチ18は、パワーアンプ16とアンテナ17との間で接続(オン)と切断(オフ)とを切り替える。スイッチ18には位相同期発振器13が接続される。スイッチ18の接続および切断にあたって位相同期発振器13から制御信号が出力される。制御信号の出力にあたって位相同期発振器13はロック状態とアンロック状態とを判定する。「ロック状態であること」が判断されると、スイッチ18は接続される。「アンロック状態であること」が判断されると、スイッチ18は切断される。スイッチ18の切断に応じてRF信号の送信は停止される。
【0025】
図2は位相同期発振器13の第1実施形態を示す。第1実施形態に係る位相同期発振器13は基準信号発振器19を備える。基準信号発振器19は例えば水晶発振器であり基準周波数の基準信号を出力する。位相同期発振器13は電圧制御発振器(VCO)21を備える。電圧制御発振器21は制御電圧の大きさに応じた発振周波数で発振信号を出力する。制御電圧の大きさに応じて発振信号の周波数は変化する。
【0026】
基準信号発振器19および電圧制御発振器21はサンプリング位相検波器(SPD)22に接続される。サンプリング位相検波器22は基準信号と発振信号との位相差に応じたビートを出力する。サンプリング位相検波器22は例えば1個のステップリカバリーダイオードと2個のショットキーダイオードとを含む。サンプリング位相検波器22は、基準信号発振器19から入力される基準信号をその周波数の狭パルス信号に変換する。変換で得られる狭パルス信号によって、サンプリング位相検波器22は、電圧制御発振器21から入力される発振信号をサンプリングする。両者の位相差が縮小すればするほどビートの出力レベルは高まる。ここで、ビート周波数fbeatは次式で表される。
【数1】

なお、frefは基準信号の周波数を示す。fVCOは発振信号の周波数を示す。Nは自然数を示す。電圧制御発振器21の発振周波数が基準周波数の整数倍に一致すると、すなわち、fVCO=N・frefが確立されると、ビートは直流成分のみとなる。
【0027】
サンプリング位相検波器22の出力端子にはループフィルタサーチオシレータ混成回路23が接続される。サンプリング位相検波器22の出力すなわちビートはループフィルタサーチオシレータ混成回路23に供給される。ループフィルタサーチオシレータ混成回路23の出力端子は電圧制御発振器21の制御端子に接続される。ループフィルタサーチオシレータ混成回路23の出力は制御電圧として電圧制御発振器21に供給される。
【0028】
ループフィルタサーチオシレータ混成回路23はループフィルタ24およびサーチオシレータ25を備える。ループフィルタ24はビートから低周波成分すなわち直流成分を取り出す。この低周波成分は、基準信号と発振信号との位相差を反映する誤差電圧に相当する。サンプリング位相検波器22から出力されるビートの出力レベルが低下すると、サーチオシレータ25が機能する。サーチオシレータ25は例えば0[V]から正の方向に制御電圧をスイープする。
【0029】
ループフィルタサーチオシレータ混成回路23には判定回路26が接続される。判定回路26には、サーチオシレータ25の動作状態が入力される。判定回路26はサーチオシレータ25の動作状態に基づき位相のロック状態およびアンロック状態を判定する。判定回路26はロック状態およびアンロック状態の判定に基づきスイッチ18の制御信号を生成する。制御信号はスイッチ18に供給される。前述のように、「アンロック状態であること」が判定されると、スイッチ18は切断される。
【0030】
図3に示されるように、ループフィルタサーチオシレータ混成回路23は積分回路29を備える。積分回路29は電圧制御発振器21の制御電圧を出力する。積分回路29には第1オペアンプ31が組み込まれる。第1オペアンプ31の反転入力端子と出力端子との間にはキャパシタ32と第1抵抗素子33とが挿入される。第1オペアンプ31の反転入力端子にはビートが入力される。第1オペアンプ31の非反転入力端子には基準電圧Vccが入力される。
【0031】
ループフィルタサーチオシレータ混成回路23はシュミット回路34を備える。シュミット回路34の出力は第2抵抗素子35を経て積分回路29に供給される。シュミット回路34は矩形波を生成する。積分回路29は、シュミット回路34から供給される矩形波を積分し三角波すなわちスイープ信号を出力する。シュミット回路34には第2オペアンプ36が組み込まれる。第2オペアンプ36の非反転入力端子と出力端子との間には第3抵抗素子37が挿入される。第2オペアンプ36の反転入力端子には基準電圧Vccが入力される。第2オペアンプ36の非反転入力端子には第4抵抗素子38を経て第1オペアンプ31の出力が入力される。第2オペアンプ36の出力は第2抵抗素子35を経て第1オペアンプ26の反転入力端子に供給される。同時に、第2オペアンプ36の出力は判定回路26に供給される。ここで、第1オペアンプ31、第2オペアンプ36、キャパシタ32、第1抵抗素子33、第2抵抗素子35、第3抵抗素子37および第4抵抗素子38はサーチオシレータ25を形成する。
【0032】
第1オペアンプ31の反転入力端子にはバッファ回路39が接続される。サンプリング位相検波器22から出力されるビートはバッファ回路39を経て第1オペアンプ31の反転入力端子に供給される。第3オペアンプ41の出力端子はその反転入力端子に直接に接続される。第3オペアンプ41の非反転入力端子にはサンプリング位相検波器22から出力されるビートが入力される。第3オペアンプ41の出力は第5抵抗素子42を経て第1オペアンプ31の反転入力端子に供給される。こうして積分回路29にはビートとシュミット回路34の出力とが並列に接続される。ここで、第1オペアンプ31、第3オペアンプ41、キャパシタ32、第1抵抗素子33、第5抵抗素子42はループフィルタ24を形成する。
【0033】
次に送信機11の動作を説明する。位相同期発振器13でロック状態が維持される場合を想定する。電圧制御発振器21にはロックレンジに対応する電圧値範囲(以下「ロックレンジ範囲」という)で制御電圧が印加される。ループフィルタ24すなわち積分回路29は、位相同期発振器13から規定の周波数の発振信号が出力されるように制御電圧を出力する。制御電圧がロックレンジ範囲内に維持される限り、ロック状態は保持される。規定の送信周波数域で無線信号は送信される。このとき、基準信号発振器19の基準信号と電圧制御発振器21の発振信号との位相差は縮小することから、サンプリング位相検波器22ではビートの出力レベルは上昇する。その結果、第5抵抗素子42を流れる電流の電流値は第2抵抗素子35を流れる電流の電流値を上回る。サーチオシレータ25は停止する。
【0034】
こうしたサーチオシレータ25の停止時、シュミット回路34から矩形波は出力されない。判定回路26はロックを判定する。判定回路26はスイッチ18の接続を維持する。その結果、規定の送信周波数域で無線信号の送信が実現される。
【0035】
環境温度の変化や振動といった要因に基づき電圧制御発振器21の発信周波数がロックレンジから外れると、電圧制御発振器21は制御電圧の振れに対応しきれない。ロック状態は解除される。このとき、基準信号発振器19の基準信号と電圧制御発振器21の発振信号との位相差は増大することから、サンプリング位相検波器22から出力されるビートの出力レベルは低下する。その結果、第2抵抗素子35を流れる電流の電流値は第5抵抗素子42を流れる電流の電流値を上回る。サーチオシレータ25は動作を開始する。シュミット回路34は矩形波を出力する。積分回路29は矩形波の出力に応じて三角波を出力し強制的に電圧制御発振器21の制御電圧をスイープする。周波数は徐々に増加する。
【0036】
同時に、矩形波の出力に応じて判定回路26はアンロックを判定する。判定回路26はスイッチ18を切断する。その結果、無線信号の送信は停止される。指定の送信周波数域から外れた周波数の無線信号の送信は回避される。
【0037】
電圧制御発振器21の発振周波数が徐々に増加しプルインレンジに入ると、位相同期発振器13はロック状態を確立する。サンプリング位相検波器22はビートを出力する。その結果、第5抵抗素子42を流れる電流の電流値は第2抵抗素子35を流れる電流の電流値を上回る。サーチオシレータ25は停止する。ループフィルタ24すなわち積分回路29は、位相同期発振器13から規定の周波数の発振信号が出力されるように制御電圧を出力する。制御電圧がロックレンジ範囲内に維持される限り、ロック状態は保持される。
【0038】
発振周波数がプルインレンジに入りロック状態が確立されると、シュミット回路34の出力から矩形波は消失する。矩形波の消失に応じて判定回路26はロックを判定する。判定回路26はスイッチ18を接続させる。その結果、無線信号の送信は再開される。規定の送信周波数域で無線信号の送信が実現される。
【0039】
図4に示されるように、一般に電圧制御発振器21では規定の発振周波数f0に対して発振周波数の可変範囲fL〜fHが規定される。発振周波数の可変範囲fL〜fHは制御電圧の下限値VtLおよび上限値VtHで特定される。可変範囲fL〜fH内では制御電圧の大きさと発振周波数との間に例えば比例関係が確立される。可変範囲fL〜fH内にプルインレンジf1〜f2は設定される。プルインレンジf1〜f2は制御電圧の第1電圧値V1および第2電圧値V2で特定される。同様に、可変範囲fL〜fH内にロックレンジf3〜f4が設定される。ロックレンジf3〜f4はプルインレンジf1〜f2よりも広い。ロックレンジf3〜f4は制御電圧の第3電圧値V3および第4電圧値V4で特定される。ロック状態からアンロック状態に移行する際に制御電圧はロックレンジの電圧範囲V3〜V4から外れる。このとき、前述のように、シュミット回路34は矩形波を出力し、積分回路29はスイープ信号を出力する。判定回路26は矩形波の出力に応じてアンロックを判定する。したがって、ロック状態からアンロック状態への移行は正確に判定されることができる。反対に、アンロック状態からロック状態に移行する際に制御電圧はプルインレンジの電圧範囲V1〜V2の外側からプルインレンジの電圧範囲V1〜V2に進入する。プルインレンジへの進入に応じてサーチオシレータすなわちシュミット回路34の出力から矩形波は消失し、制御電圧のスイープは停止する。判定回路26は矩形波の消失に応じてロックを判定する。したがって、アンロック状態からロック状態への移行は正確に判定されることができる。
【0040】
図5は本発明の第2実施形態に係る送信機11aの構成を概略的に示す。図中、第1実施形態に係る送信機11と均等な構成には同一の参照符号が付されそれらの詳細な説明は割愛される。この送信機11aでは第2実施形態に係る位相同期発振器13aからIFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16にそれぞれ制御信号が供給される。供給される制御信号に応じてIFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16のオンオフが制御される。こうしたオンオフの制御にあたって位相同期発振器13aは複数段階にアンロック状態を判別する。
【0041】
詳述すると、図6に示されるように、位相同期発振器13aの判定回路26aはパルス生成回路44を備える。パルス生成回路44は、サーチオシレータ25のシュミット回路34から出力される矩形波の立ち上がりのタイミングでパルスを生成する。パルス生成回路44はカウンタ回路45に接続される。カウンタ回路45は単位時間あたりでパルス数を計数する。単位時間は例えば10[msec]のタイムサイクルに設定されればよい。計測時間はタイマ46で計測される。カウンタ回路45には演算制御回路47が接続される。単位時間あたりのパルス数は演算制御回路47に供給される。演算制御回路47は単位時間あたりのパルス数に基づき複数段階にアンロック状態を分別し、分別結果に基づいてIFアンプ12、RFアンプ15、パワーアンプ16およびスイッチ18に制御信号1、制御信号2、制御信号3および制御信号4を各々出力する。
【0042】
具体的には、例えばタイムサイクル内でパルスが全く計数されなければ、演算制御回路47は位相同期発振器13aがロック状態であると判定する。このとき、演算制御回路47はIFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16の動作を通常通りに維持すべくIFアンプ12、RFアンプ15、パワーアンプ16およびスイッチ18にオン信号としての制御信号1、制御信号2、制御信号3および制御信号4を各々出力する。
【0043】
タイムサイクル内で1回〜3回のパルスが計数されると、瞬間的なアンロック状態が想定される。演算制御回路47は低度のアンロック状態であると判定する。位相同期発振器13aは瞬時にロック状態に復帰する。このとき、演算制御回路47は通常通りにRFアンプ15およびパワーアンプ16の動作を維持しつつIFアンプ12の動作を停止すべく制御信号1をオフにする。IFアンプ12の消費電力は削減される。同時に、演算制御回路47はスイッチ18を切断すべく制御信号4をオフにする。
【0044】
タイムサイクル内で4回〜6回の矩形波が計数されると、一時的なアンロック状態が想定される。位相同期発振器13aは短期間でロック状態に復帰する可能性が高い。演算制御回路47は中度のアンロック状態であると判定する。このとき、演算制御回路47はパワーアンプ16の動作を通常通りに維持しつつIFアンプ12およびRFアンプ15の動作を停止すべく制御信号1および制御信号2をオフにする。IFアンプ12およびRFアンプ15の消費電力は削減される。同時に、演算制御回路47はスイッチ18を切断すべく制御信号4をオフにする。
【0045】
タイムサイクル内で7回以上の矩形波が計数されると、不安定なロック状態が想定される。短期間にロック状態に復帰する可能性は低い。演算制御回路47は高度のアンロック状態であると判定する。このとき、演算制御回路47はIFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16の動作を停止すべく制御信号1、制御信号2および制御信号3をオフにする。IFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16の消費電力は削減される。同時に、演算制御回路47はスイッチ18を切断すべく制御信号4をオフにする。
【0046】
IFアンプ12に比べてRFアンプ15は電源のオンから熱飽和状態に達しその出力が安定するまで時間がかかる。同様に、RFアンプ15に比べてパワーアンプ16は電源のオンから熱飽和状態に達しその出力が安定するまで時間がかかる。したがって、前述のように、アンロック状態の程度に応じてIFアンプ12、RFアンプ15およびパワーアンプ16のオンオフが制御されると、確実に消費電力が低減されるとともに、ロック状態への復帰後に速やかな回路動作の安定化が実現されることができる。
【0047】
その他、カウンタ回路45の計数値は単純にロック状態およびアンロック状態の判定にあたって利用されてもよい。例えば、タイムサイクル内で1回でも矩形波が計数されたら演算制御回路47はアンロックを判定してもよい。この場合、次以降のタイムサイクルで矩形波が検出されなくなるまでアンロック状態の判定が維持されればよい。タイムサイクル内で10回以上の矩形波が計数されたら演算制御回路47はアンロックを判定してもよい。この場合には、次以降のタイムサイクルで矩形波の計数が10回を下回るまでアンロックの判定が維持されればよい。いずれの場合でも、タイムサイクル内の矩形波の回数に応じてアンロック状態はきめ細かく判定されることができる。
【0048】
第2実施形態に係る位相同期発振器13aでは、図7に示されるように、判定回路26bにウインドウコンパレータ48が組み込まれてもよい。図中、第2実施形態に係る位相同期発振器13aと均等な構成には同一の参照符号が付されそれらの詳細な説明は割愛される。ウインドウコンパレータ48にはサーチオシレータ25の積分回路29から電圧制御発振器21の制御電圧が入力される。ウインドウコンパレータ48は特定のプルインレンジf1〜f2の電圧範囲V1〜V2を含む電圧範囲で電圧制御発振器21の制御電圧を抽出する。こうしたウインドウコンパレータ48の働きによれば、たとえ制御電圧の可変範囲VtL〜VtHに複数のプルインレンジが存在しても、位相同期発振器13aは確実に指定の発振周波数でロック状態を確立することができる。指定の発振周波数以外のプルインレンジでフォールスロックの発生は確実に回避されることができる。
【0049】
なお、局部発振信号の周波数は13.05GHzに限定されるものではなく、例えばマイクロ波の周波数帯域で適宜に設定されればよい。すなわち、前述の位相同期発振器13は他の周波数域の局部発振信号の生成にあたって利用されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
11 送信機、11a 送信機、12 IFアンプ、13 位相同期発振器(局部発振器)、13a 位相同期発振器(局部発振器)、14 ミキサ、15 RFアンプ、16 パワーアンプ、19 基準信号発振器、21 電圧制御発振器(VCO)、22 サンプリング位相検波器(SPD)、26 判定回路、26a 判定回路、26b 判定回路、29 積分回路、34 シュミット回路、45 カウンタ回路、48 ウインドウコンパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を出力する基準信号発振器と、
制御電圧の大きさに応じた発振周波数で発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記基準信号および前記発振信号の位相差に応じた電圧信号を出力するサンプリング位相検波器と、
前記サンプリング位相検波器の出力に応じて矩形波を生成するシュミット回路と、
前記矩形波の有無に応じてロック/アンロックを判定する判定回路と
を備えることを特徴とする位相同期発振器。
【請求項2】
請求項1記載の位相同期発振器と、前記位相同期発振器から出力される発振周波数信号に基づき入力信号の周波数を変換するミキサを備えることを特徴とする送信機。
【請求項3】
請求項2に記載の送信機において、
前記ミキサの出力を増幅するパワーアンプをさらに備え、
前記判定回路は、前記アンロックを判断すると、前記パワーアンプの動作を停止することを特徴とする送信機。
【請求項4】
請求項2に記載の送信機において、
前記ミキサの出力を増幅するRFアンプと、
前記RFアンプの出力を増幅するパワーアンプと、
前記矩形波の波数を計数し、前記判定回路に計数値を供給するカウンタ回路とをさらに備え、
前記判定回路は、前記計数値が第1の値を超えると前記RFアンプの動作を停止し、前記計数値が前記第1の値より大きい第2の値を超えると前記パワーアンプの動作を停止することを特徴とする送信機。
【請求項5】
請求項2に記載の送信機において、
前記入力信号を増幅し、増幅後の信号を前記ミキサに供給するIFアンプと、
前記ミキサの出力を増幅するRFアンプと、
前記RFアンプの出力を増幅するパワーアンプと、
前記矩形波の波数を計数し、前記判定回路に計数値を供給するカウンタ回路とをさらに備え、
前記判定回路は、前記計数値が第1の値を超えると前記IFアンプの動作を停止し、前記計数値が前記第1の値より大きい第2の値を超ると前記RFアンプの動作を停止し、前記計数値が前記第2の値より大きい第3の値を超えると前記パワーアンプの動作を停止することを特徴とする送信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−142653(P2012−142653A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291882(P2010−291882)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】