説明

位相調整回路

【課題】データレートの高低にかかわらずデータ信号と遅延クロック信号との位相関係を最適に調整する位相調整回路を実現する。
【解決手段】離散的にデータ信号Dataとクロック信号CLKとの位相を調整する位相調整回路は、クロック信号CLKを遅延させて遅延クロック信号Rclkを生成する遅延線(10A)、データ信号Dataと遅延クロック信号CLKとの位相を比較する位相比較器(20)、位相比較器(20)の比較結果に基づいて、遅延制御信号SSxを出力する遅延制御部(30)、クロック信号CLKの周波数に基づいて、遅延制御信号RSxを出力する遅延制御部(40A)を備えている。ここで、遅延線(10A)は、制御信号に基づいて、クロック信号に対する遅延クロック信号の遅延量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相調整回路に関し、特に、離散的にデータ通信におけるクロック信号とデータ信号との間の位相調整技術に属する。
【背景技術】
【0002】
高速データ伝送を実現するためには、データ信号をクロック信号に同期させて入出力する必要がある。特に、クロック信号の周波数が100MHzを越える場合には、PLL(Phase Locked Loop)やDLL(Delay Locked Loop)を用いて、半導体集積回路の外部から供給される外部クロック信号と半導体集積回路の内部において使用される内部クロック信号とを同期させなければならない。
【0003】
図8は、従来の位相調整回路の構成を示す。当該位相調整回路は、クロック信号CLKを遅延させて遅延クロック信号Rclkを生成するデジタル遅延線100と、データ信号Dataと遅延クロック信号Rclkとの位相を比較する位相比較器101と、位相比較器101の比較結果に基づいてデジタル遅延線100における信号遅延量を制御する遅延制御部102とを備えたデジタルDLLとして実現されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
デジタルDLLは、設計が容易であり、また、回路規模が比較的小さいといった特徴を有する。したがって、位相調整回路にデジタルDLLを用いることによって、回路面積及び消費電力の低減、さらに、プロセス変更時の設計容易性といった効果が期待される。
【特許文献1】特開平9―261018号公報
【特許文献2】特開平11―88153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、デジタル遅延線は複数の遅延ユニットから構成されている。そして、これら遅延ユニットの直列接続段数を変えることで、デジタル遅延線のゲインが調整される。遅延ユニット一段あたりの信号遅延量、すなわち、デジタル遅延線で設定される遅延分解時間は、データレートに対してなるべく小さい値に設定した方がデータ信号と遅延クロック信号のタイミングを最適に調整するのに都合がよい。しかし、デジタル遅延線の遅延分解時間が小さすぎると、データ信号及びクロック信号の位相変動に対して位相調整速度が追いつかないことが懸念される。
【0006】
位相調整速度は、デジタル遅延線の遅延分解時間に時間あたりの調整回数をかけたものであり、調整回数はデータ信号の遷移とクロック信号の遷移とを位相比較器で比較する回数である。したがって、データレートが低速で時間あたりの遷移回数が少ない場合には、位相変動速度に対して位相調整速度が追いつかず、クロック信号でデータ信号を正しくラッチできないということが起こる可能性がある。
【0007】
現在、データレートの異なるさまざまな伝送規格が規定されている。これらさまざまな伝送規格に準拠した通信の性能を最適化するには、デジタル遅延線のゲインをデータレートに応じて設定すべきである。すなわち、高速データレートの場合には、位相調整の分解能を高めてきめ細かな調整を行う一方、低速データレート場合には、回路規模を抑制するためにもある程度低めの分解能で位相調整を行い、位相調整可能なレンジを十分に確保する必要がある。
【0008】
しかし、上述したように、デジタル遅延線の遅延分解時間(最小遅延量ともいう)は、デジタル遅延線を構成する遅延ユニット一段あたりの遅延量で決定され、この遅延量は固定である。したがって、従来の位相調整回路では、データレートに応じて最適な遅延分解時間を変化させることは困難である。
【0009】
上記問題に鑑み、本発明は、データレートの高低にかかわらずデータ信号と遅延クロック信号との位相関係を最適に調整することが可能な位相調整回路を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は、離散的にデータ信号とクロック信号との位相を調整する位相調整回路として、前記クロック信号を遅延させて遅延クロック信号を生成する遅延線と、前記データ信号と前記遅延クロック信号との位相を比較する位相比較器と、前記位相比較器の比較結果に基づいて、第1の遅延制御信号を出力する第1の遅延制御部と、前記クロック信号の周波数に基づいて、第2の遅延制御信号を出力する第2の遅延制御部とを備えたものとする。ここで、前記遅延線は、前記第1及び第2の遅延制御信号に基づいて、前記クロック信号に対する前記遅延クロック信号の遅延量を決定するものとする。
【0011】
これによると、遅延クロック信号を生成する遅延線は、位相比較器の比較結果に基づいて第1の遅延制御部から出力される第1の遅延制御信号、及びクロック信号の周波数に基づいて第2の遅延制御部から出力される第2の遅延制御信号に基づいて、クロック信号に対する遅延クロック信号の遅延量を決定する。したがって、データ信号と遅延クロック信号との位相差だけではなく、遅延線に入力されるクロック信号の周波数、ひいてはデータ信号のデータレートに基づいて、遅延線のゲインを変更することができる。
【0012】
具体的には、前記遅延線は、入力された信号を遅延させて出力する複数の遅延ユニットと、前記第1及び第2の遅延制御信号のいずれか一方に基づいて、前記複数の遅延ユニットの直列接続段数を切り替える接続制御部とを有するものであり、前記複数の遅延ユニットのそれぞれは、前記第1及び第2の遅延制御信号の他方に基づいて、信号遅延量を調整する遅延調整部を有するものとする。
【0013】
より具体的には、前記第1及び第2の遅延制御信号の他方は、デジタル信号であり、前記遅延調整部は、並列接続された複数の負荷を有し、前記デジタル信号に基づいて、前記複数の負荷の接続の有無を切り替えるものとする。
【0014】
また、より具体的には、前記第1及び第2の遅延制御信号の他方は、アナログ信号であり、前記遅延調整部は、前記アナログ信号に基づいて、信号遅延量を変化させるものとする。
【0015】
また、具体的には、前記遅延線は、入力された信号を遅延させて出力する複数の遅延ユニットを有する複数の遅延ユニット群と、前記第1及び第2の遅延制御信号のいずれか一方に基づいて、前記複数の遅延ユニット群の直列接続段数を切り替える第1の接続制御部とを有するものであり、前記複数の遅延ユニットのそれぞれは、前記第1及び第2の遅延制御信号の他方に基づいて、前記遅延ユニット群における複数の遅延ユニットの並列接続段数を切り替える第2の接続制御部を有するものとする。
【0016】
また、具体的には、前記第2の遅延制御部は、前記クロック信号を生成する発振器を有するPLLであり、前記第2の遅延制御信号は、前記発振器を制御する信号であるとする。
【0017】
より具体的には、前記発振器は、デジタル制御発振器であり、前記第2の遅延制御信号は、前記デジタル制御発振器を制御するデジタル信号であるとする。
【0018】
また、より具体的には、前記発振器は、電圧制御発振器であり、前記第2の遅延制御信号は、前記電圧制御発振器を制御する電圧信号であるとする。
【0019】
また、具体的には、前記第2の遅延制御部は、前記クロック信号が入力される遅延回路を有するDLLであり、前記第2の遅延制御信号は、前記遅延回路を制御する信号であるとする。
【0020】
より具体的には、前記遅延回路は、デジタル遅延線であり、前記第2の遅延制御信号は、前記デジタル遅延線を制御するデジタル信号であるとする。
【0021】
また、より具体的には、前記遅延回路は、電圧制御遅延回路であり、前記第2の遅延制御信号は、前記電圧制御遅延回路を制御する電圧信号であるとする。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によると、ケーブル等の伝送経路を有するデータ伝送における位相調整回路に関して、デジタル遅延線を利用してもデータレートと遅延線ゲインの関係を最適に設定することが可能となり、低面積、省電力、プロセスポーティング容易化、設計容易化といったデジタル遅延線の優位性と、データ受信性能とを両立することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る位相調整回路の構成を示す。本位相調整回路は、クロック信号CLKを遅延させて遅延クロック信号Rclkを生成する遅延線10Aと、データ信号Dataと遅延クロック信号Rclkとの位相を比較する位相比較器20と、位相比較器20の比較結果に基づいて制御信号SSx(xは添字)を出力する遅延制御部30と、クロック信号CLKの周波数に基づいて制御信号RSx(xは添字)を出力する遅延制御部40Aとを備えている。データ信号Dataは、図示しないラッチ回路において、本位相調整回路から出力された遅延クロック信号Rclkでサンプリングされる。
【0024】
遅延線10Aは、制御信号SSx及びRSxに基づいて、クロック信号CLKに対する遅延クロック信号Rclkの遅延量を決定する。図2は、遅延線10Aの回路構成の一例を示す。本遅延線10Aは、複数(本例では3個)の遅延ユニット11と、制御信号SSxに基づいてこれら遅延ユニット11の直列接続段数を切り替える接続制御部12とを備えている。
【0025】
各遅延ユニット11は、入力された信号を遅延させて出力するものであり、特に、制御信号RSxに基づいて信号遅延量を調整する遅延調整部110を備えている。遅延調整部110は、複数(本例では3個)の容量と、これら容量に直列に接続され、制御信号RSxに基づいてこれら容量の並列接続段数を制御する複数(本例では3個)のトランジスタとを備えている。すなわち、遅延線10Aの最小遅延量は制御信号RSxに従って離散的に変更されるようになっている。
【0026】
一方、図3は、遅延線10Aの回路構成の別例を示す。本遅延線10Aは、複数(本例では3個)の遅延ユニット13を有する複数(本例では3個)の遅延ユニット群14と、制御信号SSxに基づいてこれら遅延ユニット群14の直列接続段数を切り替える接続制御部12とを備えている。各遅延ユニット13は、NANDゲート130、及びこれに接続されたスリーステートインバータ131を備えている。NANDゲート130及びスリーステートインバータ131のゲート遅延の合計が各遅延ユニット13の遅延量となる。
【0027】
遅延ユニット群14において、各スリーステートインバータ121は、それぞれ制御信号RSxの一部(RS1等)によって出力制御される。遅延ユニット群14に属する複数の遅延ユニット13は並列接続され、その出力は接点Nx(xは添字)で共通している。そして、その並列接続段数は制御信号RSxに従って変化する。接点Nxの負荷容量は、遅延ユニット13の接続状態にかかわらず一定であるため、遅延ユニット群14において、遅延ユニット13の並列接続段数が多いほど遅延ユニット群14の遅延量は小さくなる。すなわち、遅延線10Aの最小遅延量は制御信号RSxに従って離散的に変更されるようになっている。
【0028】
図1に戻り、遅延制御部40Aは、クロック信号CLKと遅延クロック信号Rclk2との位相を比較する位相比較器401と、位相比較器401の比較結果に基づいて制御信号RSxを出力する遅延制御部402と、制御信号RSxに従ってクロック信号CLKを遅延させて遅延クロック信号Rclk2を生成するデジタル遅延線403とを備えたデジタルDLLとして構成されている。遅延制御部402は、遅延クロック信号Rclk2がクロック信号CLKの1周期遅れとなるようにデジタル遅延線403を制御する。図示しないが、デジタル遅延線403は遅延ユニットを有しており、制御信号RSxに従ってクロック信号CLKに対する遅延クロック信号Rclk2の遅延量を制御する。すなわち、遅延制御部402が出力する制御信号RSxは、クロック信号CLKの周波数に応じてデジタル遅延線403における遅延ユニットを最適制御するものである。したがって、この制御信号RSxによって遅延線10Aを制御することにより、遅延線10Aによる信号遅延量、すなわち、遅延線10Aのゲインをクロック信号CLKの周期に連動させることができる。ここで、データ信号Dataとクロック信号CLKの周波数は所定の関係にあるため、実質的に、データ信号Dataのデータレートに応じて遅延線10Aのゲインが制御される。
【0029】
具体的には、制御信号RSxに従って、遅延線10Aは、クロック信号CLKが低速のときには最小遅延量が大きくなるように、また、クロック信号CLKが高速のときには最小遅延量が小さくなるように制御される。これにより、低速データレート時にはデータ位相の大きな変動に対応可能となり、高速データレート時には遅延クロック信号Rclkのジッタが抑制されるようになる。したがって、データレートの高低にかかわらず、データ信号Dataと遅延クロック信号Rclkとの位相関係を最適に調整することができる。
【0030】
デジタル遅延線403における遅延ユニット(不図示)の段数と、図2に示した遅延ユニット11、又は図3に示した遅延ユニット群14の段数との比率に応じて、デジタル遅延線403における遅延ユニット単体の遅延量と遅延ユニット11又は遅延ユニット群14単体の遅延量とが上記比率となるようにすればよい。例えば、デジタル遅延線403における遅延ユニットの段数と、遅延ユニット11又は遅延ユニット群14の段数が同じであれば、デジタル遅延線403における遅延ユニット単体の遅延量と遅延ユニット11又は遅延ユニット群14単体の遅延量とを同じ値に設定するとよい。
【0031】
好ましくは、デジタル遅延線403における遅延ユニット(不図示)を、図2に示した遅延ユニット11、又は図3に示した遅延ユニット群14と同様の回路構成にする。これにより、遅延線10Aの最小遅延量とクロック信号CLKの周期との間の線形性をより高めることができる。クロック信号CLKに対する遅延線10Aの最小遅延量の応答性精度が必要でなければ、デジタル遅延線403における遅延ユニットと遅延ユニット11又は遅延ユニット群14は互いに異なる回路構成であってもよい。
【0032】
なお、図2に示した遅延調整部110を構成する各容量の容量値は必ずしも同じでなくてもよく、大小の差を付けておいてもよい。同様に、図3に示した遅延ユニット群14を構成する各遅延ユニット13は必ずしも同一の構成でなくてもよい。すなわち、遅延ユニット群14を構成する各遅延ユニット13のゲインが互いに異なるように設定しておき、制御信号RSxに従っていずれか一つの遅延ユニット13が接続されるようにしてもよい。
【0033】
また、図2及び図3に示した遅延線10Aにおいて、制御信号SSxと制御信号RSxとを入れ換えて構成してもよい。すなわち、遅延制御部30から出力された制御信号SSxに従って遅延線10Aの最小遅延量を変更するようにしてもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る位相調整回路の構成を示す。本位相調整回路は、図1に示した位相調整回路における遅延制御部40Aに代えて、遅延制御部40Bを備えている。
【0035】
遅延制御部40Bは、基準クロック信号REFと帰還クロック信号Fclkとの位相を比較する位相比較器411と、位相比較器411の比較結果に基づいて制御信号RSxを出力するループフィルタ412と、制御信号RSxに従ってクロック信号CLKを生成するデジタル制御発振器413と、クロック信号CLKを分周して帰還クロック信号Fclkを生成する分周器414とを備えたデジタルPLLとして構成されている。
【0036】
図示しないが、デジタル制御発振器413は遅延ユニットを有しており、制御信号RSxに従ってクロック信号CLKを生成する。したがって、この制御信号RSxによって遅延線10Aを制御することにより、遅延線10Aのゲインをクロック信号CLKの周期に連動させることができる。ここで、データ信号Dataとクロック信号CLKの周波数は所定の関係にあるため、実質的に、データ信号Dataのデータレートに応じて遅延線10Aのゲインが制御される。
【0037】
以上のように、クロック信号CLKを生成するデジタルPLLの内部制御に連動して遅延線10Aを制御することで、クロック信号CLKの周波数に応じた最小遅延量の調整が可能である。
【0038】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る位相調整回路の構成を示す。本位相調整回路は、図1に示した位相調整回路における遅延線10A及び遅延制御部40Aに代えて、遅延線10B及び遅延制御部40Cを備えている。
【0039】
遅延線10Bは、制御信号SSx及びVcに基づいて、クロック信号CLKに対する遅延クロック信号Rclkの遅延量を決定する。制御信号Vcは、アナログ信号(電圧信号)である。図6は、遅延線10Bの回路構成の一例を示す。本遅延線10Bは、複数(本例では3個)の遅延ユニット15と、制御信号SSxに基づいてこれら遅延ユニット15の直列接続段数を切り替える接続制御部12とを備えている。
【0040】
各遅延ユニット15は、入力された信号を遅延させて出力するものであり、特に、ゲートにバイアス電圧Vb1及びVb2がそれぞれ与えられるPMOSトランジスタ16a及びNMOSトランジスタ16bを備えている。これらトランジスタは遅延調整部に相当する。バイアス電圧Vb1及びVb2は、それぞれ、制御信号Vcを、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの制御用に変換したものである。したがって、遅延ユニット15の遅延量は制御信号Vcに従って連続的に変更されるようになっている。また、制御信号Vcに応じて連続的に変化する遅延ユニット15の遅延量に、制御信号SSxに従って離散的に設定される遅延ユニット15の直列接続段数をかけたものが遅延線10Bのゲインとなる。
【0041】
図5に戻り、遅延制御部40Cは、図1に示した遅延制御部40Aにおける遅延制御部402及びデジタル遅延線403に代えて、位相比較器401の比較結果に基づいて制御信号Vcを出力する遅延制御部404及び制御信号Vcに従ってクロック信号CLKを遅延させて遅延クロック信号Rclk2を生成する電圧制御遅延回路405を備えている。遅延制御部404は、遅延クロック信号Rclk2がクロック信号CLKの1周期遅れとなるように電圧制御遅延回路405を制御する。図示しないが、電圧制御遅延回路405は遅延ユニットを有しており、制御信号Vcに従ってクロック信号CLKに対する遅延クロック信号Rclk2の遅延量を制御する。すなわち、遅延制御部404が出力する制御信号Vcは、クロック信号CLKの周波数に応じて電圧制御遅延回路405における遅延ユニットを最適制御するものである。したがって、この制御信号Vcによって遅延線10Bを連続的に制御することにより、遅延線10Bのゲインをクロック信号CLKの周期に連動させることができる。ここで、データ信号Dataとクロック信号CLKの周波数は所定の関係にあるため、実質的に、データ信号Dataのデータレートに応じて遅延線10Bのゲインが制御される。
【0042】
具体的には、制御信号Vcに従って、遅延線10Bは、クロック信号CLKが低速のときには最小遅延量が大きくなるように、また、クロック信号CLKが高速のときには最小遅延量が小さくなるように制御される。これにより、低速データレート時にはデータ位相の大きな変動に対応可能となり、高速データレート時には遅延クロック信号Rclkのジッタが抑制されるようになる。したがって、データレートの高低にかかわらず、データ信号Dataと遅延クロック信号Rclkとの位相関係を最適に調整することができる。
【0043】
なお、遅延制御部30を、制御信号SSxに代えて制御信号Vcを出力するように変更するとともに、遅延制御部40Cを、図1に示したようなデジタルDLLで構成して制御信号SSxを出力するように変更してもよい。このような変更を施しても、低速データレート時の遅延線10Bのゲインを高速データレート時よりも高く設定することができる。
【0044】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る位相調整回路の構成を示す。本位相調整回路は、図5に示した位相調整回路における遅延制御部40Cに代えて、遅延制御部40Dを備えている。
【0045】
遅延制御部40Dは、図4に示した遅延制御部40Bにおけるループフィルタ412及びデジタル制御発振器413に代えて、位相比較器411の比較結果に基づいて制御信号Vcを出力するループフィルタ415及び制御信号Vcに従ってクロック信号CLKを生成する電圧制御発振器416を備えている。図示しないが、電圧制御発振器416は遅延ユニットを有しており、制御信号Vcに従ってクロック信号CLKを生成する。したがって、この制御信号Vcによって遅延線10Bを連続的に制御することにより、遅延線10Bのゲインをクロック信号CLKの周期に連動させることができる。ここで、データ信号Dataとクロック信号CLKの周波数は所定の関係にあるため、実質的に、データ信号Dataのデータレートに応じて遅延線10Aのゲインが制御される。
【0046】
以上のように、クロック信号CLKを生成する周波数シンセサイザ又はクロックリカバリーPLLの内部制御に連動して遅延線10Bを制御することで、クロック信号CLKの周波数に応じた最小遅延量の調整が可能である。
【0047】
なお、遅延制御部30を、制御信号SSxに代えて制御信号Vcを出力するように変更するとともに、遅延制御部40Dを、図4に示したようなデジタルPLLで構成して制御信号SSxを出力するように変更してもよい。このような変更を施しても、低速データレート時の遅延線10Bのゲインを高速データレート時よりも高く設定することができる。
【0048】
また、上記説明では、クロック信号CLKの周波数を検出するためにDLL又はPLLを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、通信プロトコルにデータレート情報を埋め込んでおいて、論理回路でこのデータレートを検出するようにしてもよい。この場合、低速データレート時には遅延線のゲインを上げ、高速データレート時には遅延線のゲインを下げるように制御すればよい。なお、遅延線のゲイン調整前でもある程度のエラーレートでの受信性能を保証する必要がある。
【0049】
また、上記説明では、低速データレート時に遅延線のゲインを上げ、高速データレート時に遅延線のゲインを下げるとしているが、データレートとデータ信号Dataとのジッタ特性の関係や遅延調整回路以降の受信回路の特性等を考慮して、データレートと遅延線のゲインとの関係を任意に設定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る位相調整回路は、データレートの高低にかかわらずデータ信号と遅延クロック信号との位相関係を最適に調整可能であるため、データ伝送システムにおける受信LSIの位相調整回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態に係る位相調整回路の構成図である。
【図2】図1に示した遅延線の回路構成の一例を示す図である。
【図3】図1に示した遅延線の回路構成の別例を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る位相調整回路の構成図である。
【図5】第3の実施形態に係る位相調整回路の構成図である。
【図6】図5に示した遅延線の回路構成の一例を示す図である。
【図7】第4の実施形態に係る位相調整回路の構成図である。
【図8】従来の位相調整回路の構成図である。
【符号の説明】
【0052】
10A,10B 遅延線
11,13,15 遅延ユニット
12 接続制御部(第1の接続制御部)
14 遅延ユニット群
20 位相比較器
30 遅延制御部(第1の遅延制御部)
40A,40B,40C,40D 遅延制御部(第2の遅延制御部)
110 遅延制御部
131 接続制御部(第2の接続制御部)
403 デジタル遅延線
405 電圧制御遅延回路
413 デジタル制御発振器
416 電圧制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散的にデータ信号とクロック信号との位相を調整する位相調整回路であって、
前記クロック信号を遅延させて遅延クロック信号を生成する遅延線と、
前記データ信号と前記遅延クロック信号との位相を比較する位相比較器と、
前記位相比較器の比較結果に基づいて、第1の遅延制御信号を出力する第1の遅延制御部と、
前記クロック信号の周波数に基づいて、第2の遅延制御信号を出力する第2の遅延制御部とを備え、
前記遅延線は、前記第1及び第2の遅延制御信号に基づいて、前記クロック信号に対する前記遅延クロック信号の遅延量を決定する
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項2】
請求項1に記載の位相調整回路において、
前記遅延線は、
入力された信号を遅延させて出力する複数の遅延ユニットと、
前記第1及び第2の遅延制御信号のいずれか一方に基づいて、前記複数の遅延ユニットの直列接続段数を切り替える接続制御部とを有するものであり、
前記複数の遅延ユニットのそれぞれは、
前記第1及び第2の遅延制御信号の他方に基づいて、信号遅延量を調整する遅延調整部を有する
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項3】
請求項2に記載の位相調整回路において、
前記第1及び第2の遅延制御信号の他方は、デジタル信号であり、
前記遅延調整部は、並列接続された複数の負荷を有し、前記デジタル信号に基づいて、前記複数の負荷の接続の有無を切り替えるものである
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項4】
請求項2に記載の位相調整回路において、
前記第1及び第2の遅延制御信号の他方は、アナログ信号であり、
前記遅延調整部は、前記アナログ信号に基づいて、信号遅延量を変化させるものである
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項5】
請求項1に記載の位相調整回路において、
前記遅延線は、
入力された信号を遅延させて出力する複数の遅延ユニットを有する複数の遅延ユニット群と、
前記第1及び第2の遅延制御信号のいずれか一方に基づいて、前記複数の遅延ユニット群の直列接続段数を切り替える第1の接続制御部とを有するものであり、
前記複数の遅延ユニットのそれぞれは、
前記第1及び第2の遅延制御信号の他方に基づいて、前記遅延ユニット群における複数の遅延ユニットの並列接続段数を切り替える第2の接続制御部を有する
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項6】
請求項1に記載の位相調整回路において、
前記第2の遅延制御部は、前記クロック信号を生成する発振器を有するPLLであり、
前記第2の遅延制御信号は、前記発振器を制御する信号である
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項7】
請求項6に記載の位相調整回路において、
前記発振器は、デジタル制御発振器であり、
前記第2の遅延制御信号は、前記デジタル制御発振器を制御するデジタル信号である
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項8】
請求項6に記載の位相調整回路において、
前記発振器は、電圧制御発振器であり、
前記第2の遅延制御信号は、前記電圧制御発振器を制御する電圧信号である
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項9】
請求項1に記載の位相調整回路において、
前記第2の遅延制御部は、前記クロック信号が入力される遅延回路を有するDLLであり、
前記第2の遅延制御信号は、前記遅延回路を制御する信号である
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項10】
請求項9に記載の位相調整回路において、
前記遅延回路は、デジタル遅延線であり、
前記第2の遅延制御信号は、前記デジタル遅延線を制御するデジタル信号である
ことを特徴とする位相調整回路。
【請求項11】
請求項9に記載の位相調整回路において、
前記遅延回路は、電圧制御遅延回路であり、
前記第2の遅延制御信号は、前記電圧制御遅延回路を制御する電圧信号である
ことを特徴とする位相調整回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−110323(P2007−110323A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297742(P2005−297742)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】