説明

位置合わせ方法、ホトマスクおよびウエハ

【課題】より高精度かつ簡便な位置合わせを実現することができる位置合わせ方法、ウエハおよびホトマスクを提供する。
【解決手段】窓部240および反射部340は、移動方向に平行な対角線を有する矩形の形状に形成されている。したがって、ウエハをホトマスクに対して相対的に移動させると、窓部240と反射部340が重なる部分が二次関数的に変化するため、窓部240から観察できる反射光の光量も二次関数的に変化するので、ユーザは、その光量の変化をより敏感に検出することが可能となり、より容易に反射光の光量が最大となる位置にステージ1の位置を調整することができるので、結果として、より高精度かつ簡便な位置合わせを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光リソグラフィ技術における位置合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大規模集積回路(LSI)等の半導体素子を製造する技術として、光リソグラフィ技術が知られている。この光リソグラフィ技術とは、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウエハ上にホトレジストと呼ばれる感光性有機物質を塗布し、ホトステッパ、ホトスキャナ、ホトアライナ等と呼ばれる露光装置を用いて、ホトマスクに描かれた素子や回路のパターンをそのホトレジストに焼き付けるものである。このホトレジストを現像し、ホトレジスト直下のウエハを選択的にエッチングすることにより、ウエハ上に電子回路が形成される。
【0003】
このような光リソグラフィ技術において、露光装置によりホトマスクに描かれたパターンをホトレジストに焼き付ける際には、ウエハとホトマスクとの位置合わせを正確にすることが必要である。特に、電子回路が積層構造を有する場合には、ウエハとホトマスクとの位置がずれていると、下層の回路と上層の回路との間で接続不良が生じてしまうので、正確な位置合わせが重要である。
【0004】
この位置合わせを行う技術は、大きく2つに分類することができる。
1つ目は、大規模集積回路に代表されるサブミクロン以下の極めて小さな電子回路を作成する場合の位置合わせ技術であって、ホトステッパまたはホトスキャナと呼ばれる露光装置を用いて行われるものである。この露光装置は、実寸よりも数倍(4倍、5倍)大きなパターンが形成された大きなホトマスクをウェハ上で移動させながら縮小投影露光することにより、ホトレジストに極めて小さなパターンを転写するものである(例えば、非特許文献1参照。)。この場合の位置合わせは、ホトマスクと露光装置との間、および、露光装置とウエハの間という少なくとも2箇所で行う必要があり、かつ、極めて小さい電子回路を作成するために、高精度に行わなければならない。このため、従来では、関係する全ての構成要素を高精度な干渉計でモニタしながら全体を制御している。したがって、装置構成が大規模となるため、操作が複雑であるとともに、高コストであった。
【0005】
これに対して、2つ目は、1μm程度の精度を要求する比較的大きな電子回路を作成する場合の位置合わせ技術であって、コンタクトアライナや等倍のパタン転写機と呼ばれる露光装置を用いて行われるものである。この場合の位置合わせは、ウエハ上に単純な十字マークを、ホトマスクにその十字マークを囲むようなマークをそれぞれ形成しておき、これらをウエハとホトマスクの距離方向から見たときにマーク同士の隙間が一様となるよう、オペレータが拡大鏡を用いて肉眼でマークを観察しながらウエハを搭載したステージを移動させることにより行われている。したがって、2つ目の位置合わせ技術は、1つ目の位置合わせ技術よりも簡単な装置構成で実現できるので、操作が簡便であり、かつ、コストを抑えることができる。
【0006】
【非特許文献1】滝川忠宏他、「ULSIリソグラフィ技術の革新」、第1版、株式会社サイエンスフォーラム、1994年11月10日、p.264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した2つ目の位置合わせ技術では、精度がマークの見え方に大きく依存するために、拡大鏡の性能やオペレータの体調によっては、所望する精度の位置合わせを実現することが困難であった。
【0008】
そこで、本願発明は、より高精度かつ簡便な位置合わせを実現することができる位置合わせ方法、ホトマスクおよびウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る位置合わせ方法は、ホトマスクに形成された第1のマークとウエハに形成された第2のマークとに基づいて、ホトマスクとこのホトマスクに対して光学的に平行に配置されたウエハとを相対的に平行移動させることによりホトマスクとウエハとの位置合わせを行う位置合わせ方法であって、第1のマークは、光を透過する窓からなり、第2のマークは、光を反射する反射部を構成し、第1のマークおよび第2のマークは、移動方向に平行な対角線を有する矩形の形状に形成され、第2のマークにより反射され第1のマークを透過した反射光の光量に基づいて、ホトマスクとウエハとの位置合わせを行うことを特徴とする。
【0010】
上記位置合わせ方法において、第1のマークおよび第2のマークは、複数形成されるようにしてもよい。また、第1のマークおよび第2のマークは、一直線上に形成されるようにしてもよい。さらに、第1のマークおよび第2のマークは、同心円の円周上に形成されるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明に係るホトマスクは、上記位置合わせ方法に使用されるホトマスクであって、上記第1のマークを備えたことを特徴とする。
また、本発明に係るウエハは、上記位置合わせ方法に使用されるウエハであって、上記第2のマークを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1のマークが光を透過する窓からなり、第2のマークが光を反射する反射部を構成し、第1のマークおよび第2のマークが移動方向に平行な対角線を有する矩形の形状に形成され、第2のマークにより反射され第1のマークを透過した反射光の光量に基づいて、ホトマスクとウエハとの位置合わせを行うことにより、当該ウエハをホトマスクに対して相対的に移動させると、第1のマークと第2のマークが重なる部分が二次関数的に変化するため、第1のマークを透過した反射光の光量も変化するので、この変化に基づいてウエハとホトマスクの位置合わせを行うことにより、より高精度かつ簡便な位置合わせを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
<露光装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る位置合わせ方法を使用する露光装置の内部構成を模式的に示す図である。この図1に示す露光装置は、ウエハ3を載置する載置面11を有するステージ1と、ホトマスク2を載置面と略平行に対向配置する支持部(図示せず)と、露光に用いられる光源(図示せず)とを少なくとも備えている。このような露光装置は、レジストが塗布されたウエハ3をX方向およびY方向に移動可能なステージ1の載置面11に載置し、ウエハ3にホトマスク2を通じて露光することにより、ホトマスク2に形成されたパターン21をレジストに転写するものである。露光の後、ウエハ3を現像液に浸して余分なレジストを除去すると、ウエハ3には、ホトマスク2のパターン21に対応するパターン31が形成されることとなる。
なお、以下の説明において、載置台11の平面に沿った1の方向をX方向、載置台11の平面に沿いかつX方向と直交する方向をY方向、X方向およびY方向と直交する方向、すなわちステージ1とホトマスク2の距離方向をZ方向とする。また、X方向において、図1の紙面に対して左から右に向かう方向を正、Y方向において、図1の紙面に対して手前から奥に向かう方向を正、Z方向において、図1の紙面に対して下から上に向かう方向を正とする。
【0015】
ホトマスク2は、平面視略矩形の形状を有し、所定のパターン21が形成されたホトマスクから構成されている。例えば、ホトマスク2は、X方向の長さが120[mm]、Y方向の長さが120[mm]となっている。このようなホトマスク2には、図2に示すように、Y方向に沿った両辺の略中央部近傍に一対の位置合わせ部22が形成されている。この位置合わせ部22は、電子線描画装置等により形成される。このような位置合わせ部22の詳細については後述する。
【0016】
ウエハ3は、シリコンウエハ等の所定の回路が形成されるウエハからなる。例えば、ウエハ3は、直径100[mm]のシリコンウエハから構成されている。このようなウエハ3には、図3に示すように、ウエハ3の縁部近傍に一対の位置合わせ部32が所定のパターン31が形成される領域を挟んで形成されている。この位置合わせ部22は、電子線描画装置等により形成される。このような位置合わせ部32の詳細については後述する。
【0017】
<位置合わせ部の構成>
次に、位置合わせ部22,32の構成について参照して説明する。
【0018】
≪位置合わせ部22の構成≫
図4に示すように、ホトマスク2に形成される位置合わせ部22は、中心200の同心円からなり、所定の長さずつ直径が大きくなる第1〜第4の円201〜204と、第4の円204の動径に対応する線分からなる第1〜第20の線分211〜230と、第1〜第4の円201〜204と第1〜第20の線分211〜230の交点またはその交点近傍に形成された複数の窓部240とから構成されている。例えば、第4の円201の直径は、50[μm]であり、第1〜第4の円201〜204の間隔は、10[μm]である。
【0019】
ここで、第1の線分211は、中心200からX方向の正の方向に第4の円204の円周まで延在した線分からなり、第2〜第5の線分212〜215は、中心200を回転中心として第1の線分211を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第6の線分216は、中心200からY方向の正の方向に第4の円204の円周まで延在した線分からなり、第7〜第10の線分217〜220は、中心200を回転中心として第1の線分211を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第11の線分221は、中心200からX方向の負の方向に第4の円204の円周まで延在した線分からなり、第12〜第15の線分222〜225は、中心200を回転中心として第11の線分211を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第16の線分226は、中心200からY方向の負の方向に第4の円204の円周まで延在した線分からなり、第17〜第20の線分227〜230は、中心200を回転中心として第16の線分226を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
【0020】
また、窓部240は、対角線がX方向およびY方向に沿った矩形の形状を有する開口からなる。例えば、反射部340は、一辺が2[μm]の正方形の形状を有している。なお、窓部240は、光が透過するのであれば開口に限定されず、例えば、窓部240に対応する箇所を周囲よりも薄く削った構成とするようにしてもよい。
【0021】
このような窓部240は、以下に示す位置に形成される。
まず、X方向またはY方向に沿った線分、すなわち第1の線分211,第6の線分216,第11の線分221および第16の線分226と第1〜第4の円201〜204との交点においては、この交点と対角線の交点が一致するように窓部240が形成される。
また、第1の線分211または第11の線分221から中心200に対して時計回りおよび反時計回りにn番目の線分と第1〜第4の円201〜204との交点については、その交点からY方向に沿って第1の線分211または第11の線分221から離れる方向に0.1×n[μm]の位置に、対角線の交点が位置するように窓部240が形成される。
同様に、第6の線分216または第16の線分226から中心200に対して時計回りおよび反時計回りにn番目の線分と第1〜第4の円201〜204との交点については、その交点からX方向に沿って第6の線分216または第16の線分226から離れる方向に0.1×n[μm]の位置に、対角線の交点が位置するように窓部240が形成される。
【0022】
例えば、図5に示すように、第1の円201および第2の円202と第2の線分212との交点においては、この交点からY方向の正の方向に0.1[μm]離れた位置に、対角線の交点が一致するように窓部240が形成されている。
【0023】
いずれにしても、窓部240は、形成される位置にかかわらず、対角線がX方向およびY方向に沿った矩形の形状を有している。
【0024】
≪位置合わせ部32の構成≫
図6に示すように、ウエハ3に形成される位置合わせ部32は、中心300の同心円からなり所定の長さずつ直径が大きくなる第1〜第4の円301〜304と、第4の円304の動径に対応する線分からなる第1〜第20の線分311〜330と、第1〜第4の円301〜304と第1〜第20の線分311〜330との各交点に形成された反射部340とから構成されている。例えば、第4の円301の直径は、50[μm]であり、第1〜第4の円301〜304の間隔は、10[μm]である。
【0025】
ここで、第1の線分311は、中心300からX方向の正の方向に第4の円304の円周まで延在した線分からなり、第2〜第5の線分312〜315は、中心300を回転中心として第1の線分311を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第6の線分316は、中心300からY方向の正の方向に第4の円304の円周まで延在した線分からなり、第7〜第10の線分317〜320は、中心300を回転中心として第1の線分311を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第11の線分321は、中心300からX方向の負の方向に第4の円304の円周まで延在した線分からなり、第12〜第15の線分322〜325は、中心300を回転中心として第11の線分311を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
また、第16の線分326は、中心300からY方向の負の方向に第4の円304の円周まで延在した線分からなり、第17〜第20の線分327〜330は、中心300を回転中心として第16の線分326を反時計回りおよび時計回りにそれぞれ5°および10°回転させた線分からなる。
【0026】
また、反射部340は、対角線がX方向およびY方向に沿った矩形の形状を有し光を反射する構成を有している。例えば、反射部340は、一辺が2[μm]の正方形の形状を有している。このような反射部340は、周囲と異なる層に形成したり、反射部340に対応する箇所を削ったり、反射部340の周囲を削ったりすることにより、周囲よりも反射率が高くなるように形成されるが、これにより実現される反射は必ずしも鏡面反射ではない。
【0027】
反射部340は、その対角線の交点が第1〜第4の円301〜304と第1〜第20の線分311〜330との交点と一致するように形成される。例えば、図7に示すように、第1の円301および第2の円302と第2の線分312との交点には、この交点に対角線の交点が一致するように反射部340が形成されている。
【0028】
いずれにしても、反射部340は、形成される位置にかかわらず、対角線がX方向およびY方向に沿った矩形の形状を有している。
【0029】
上述した位置合わせ部22と位置合わせ部32は、位置合わせ部22同士の中心200の距離と位置合わせ部32同士の中心300の距離とは、等しくなるように形成されている。例えば、その距離は、60[mm]となっている。
【0030】
<位置合わせ動作>
次に、本実施の形態に係る露光装置におけるホトマスク2とウエハ3との位置合わせ動作について説明する。なお、この位置合わせは、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とがZ方向から見たときに同じ位置に位置するようにする動作を意味する。
【0031】
まず、ステージ1の載置面11上にウエハ3を載置する。このとき、ウエハ3は、オリフラ(orientation flat)部33に基づいて回転方向を合わせた上で、載置面11上に載置される。
【0032】
ウエハ3を載置すると、ユーザは、ホトマスク2とウエハ3の粗い位置合わせを行う。これは、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とがZ方向に一直線に並ぶように、肉眼でホトマスク2とウエハ3とを確認しながらステージ1をX方向またはY方向に移動させることにより行われる。このような粗い調整により、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とを、数10[μm]の精度で合わせることができる。
【0033】
粗い調整が行われると、この粗い調整よりもより精密な粗調整を行う。この粗調整は、X方向およびY方向それぞれについて行われる。
【0034】
まず、X方向の粗調整を行う場合、ユーザは、ウエハ3に対して可視光線を照射した状態で、ホトマスク2の位置合わせ部22を肉眼または拡大鏡を覗きながら、ステージ1をX方向に移動させる。ウエハ3上に形成された位置合わせ部32の反射部340は、照射された可視光線をホトマスク2に向かって反射させるので、何れかの反射部340と何れかの窓部240とがZ方向に並ぶと、ユーザは、その反射部340による反射光をその窓部240から観察することができる。これにより、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とを、Z方向にほぼ同じ位置に並べることができる。
【0035】
このとき、ユーザは、位置合わせ部22の第1〜第5の線分211〜215と第1の円201との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群(図4の符号aで示す)に注目する。図6に示すように、ウエハ3の位置合わせ部32には、反射部340がY方向に密に並んでいる。特に、窓部群aに対応する、第1〜第5の線分311〜315と第1の円301との交点に形成された反射部340からなる反射部群(図6の符号αで示す)においては、第2〜第4の円302〜304との交点に形成された反射部群よりも、反射部340がY方向に密に並んでいる。したがって、ウエハ3をX方向に移動させると、窓部群aのうちの何れかの窓部240の少なくとも一部と反射部群αのうちの何れかの反射部340の少なくとも一部とがZ方向に並ぶこととなる。窓部群aのうちの何れかの窓部240から反射光を観察すると、ユーザは、その反射光がある程度明るく見えるようステージ1のX方向の移動量を調整する。反射光がある程度明るく見えるようになると、X方向の粗調整を終了する。
【0036】
次に、Y方向の粗調整を行う。この場合、X方向の粗調整の場合と同様、ウエハ3に対して可視光線を照射した状態で、ホトマスク2の位置合わせ部22を覗きながら、ステージ1をY方向に移動させる。
【0037】
このとき、ユーザは、位置合わせ部22の第6〜第10の線分216〜220と第1の円201との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群(図4の符号bで示す)に注目する。図6に示すように、ウエハ3の位置合わせ部32には、反射部340がX方向に密に並んでいる。特に、窓部群bに対応する、第1〜第5の線分311〜315と第1の円301との交点に形成された反射部340からなる反射部群(図6の符号βで示す)においては、第2〜第4の円302〜304との交点に形成された反射部群よりも、反射部340がX方向に密に並んでいる。したがって、ウエハ3をY方向に移動させると、窓部群bのうちの何れかの窓部240の少なくとも一部と反射部群βのうちの何れかの反射部340の少なくとも一部とがZ方向に並ぶこととなる。窓部群bのうちの何れかの窓部240から反射光を観察すると、ユーザは、その反射光がある程度明るく見えるようステージ1のY方向の移動量を調整する。反射光がある程度明るく見えるようになると、Y方向の粗調整を終了する。
【0038】
粗調整が終了すると、最後に微調整を行う。この微調整は、X方向およびY方向それぞれについて行われる。
【0039】
まず、X方向の微調整を行う。このとき、ユーザは、位置合わせ部22の第6〜第10の線分216〜220と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群(図4の符号cで示す)に注目する。この窓部群が、対応するウエハ3の位置合わせ部32における反射部群(図6の符号γで示す)、すなわち、第6〜第10の線分316〜320と第2〜第4の円302〜304との交点に形成された反射部340からなる反射部群γとが、Z方向において一致するようにステージ1のY方向の位置を調整する。具体的には、窓部群cにおける第6の線分216上の窓部240と反射部群γにおける第6の線分316上の反射部340とが、Z方向において一致するようにステージ1のY方向の位置を調整する。これらは、X方向に沿い、同じ間隔で、かつ、同じ形状に形成されているので、一致させることが可能である。したがって、ユーザは、窓部群cにおける第1の線分211上の窓部240全てから反射光が観察され、かつ、その反射光の光量が最大となるように、ステージ1のY方向の位置を調整する。
【0040】
ここで、窓部240と反射部340とは、対角線がX方向またはY方向に沿った矩形の形状有している。したがって、窓部240と反射部340とがZ方向に重なっているときにステージ1をX方向またはY方向に移動させると、窓部240で観察できる反射部340からの反射光の光量は二次関数的に変化する。この現象について図8を参照して説明する。
【0041】
窓部240および反射部340の一辺の長さをLとすると、これらが厳密に一致した場合、その重なった箇所の面積Sallは、L×Lとなる。一方、厳密に一致した状態からX方向にΔxだけずれたとすると、窓部240と反射部340とが重なった箇所の面積S1は、下式(1)で表される。
【0042】
1=(L−Δx/21/2)×(L−Δx/21/2
=L×L−21/2×L×Δx+Δx2/2 ・・・(1)
【0043】
このように、窓部240と反射部340とが重なった箇所の面積S1は、Δxの二次関数で表される。したがって、ステージ1をX方向またはY方向に移動させると、面積S1が二次関数的に変化するので、窓部240から観察できる反射光の光量も二次関数的に変化することとなる。このように光量が二次関数的に変化するので、ユーザは、その光量の変化をより敏感に検出することが可能となり、結果として、より容易に反射光の光量が最大となる位置にステージ1の位置を調整することができる。
【0044】
また、窓部群cに含まれる窓部240は、第6の線分216から離れるに連れてX方向に沿ってずれるように形成されている。このため、窓部群cの窓部240から観察される光量は、Y方向に並んだ窓部240の集合毎に変化することとなる。したがって、第6の線分216上の窓部240が対応する反射部340とZ方向に一致した場合、それらの窓部240からは最大の光量が検出されるが、第6の線分216の隣の線分である第7の線分217および第9の線分219近傍の窓部240からはその最大の光量よりも低い第1の光量が、第6の線分216の2つ隣の第8の線分218および第10の線分210近傍の窓部240からは第1の光量よりもさらに低い第2の光量が検出されることとなる。したがって、Y方向に並んだ窓部240の集合から検出される光量が、第6の線分216から離れるにつれて低くなるように、ステージ1の位置を微調整する。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、窓部240から観察される光量がY方向に並んだ窓部240の集合毎に変化するので、ユーザは、その光量の変化をより敏感に検出することが可能となり、結果として、より容易に反射光の光量が最大となる位置にステージ1の位置を調整することができる。
【0046】
X方向の微調整が終了すると、ユーザは、同様の方法によりY方向の微調整を行う。この場合、ユーザは、位置合わせ部22の第1〜第5の線分211〜215と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群(図4の符号dで示す)に注目する。この窓部群が、対応するウエハ3の位置合わせ部32における反射部群(図6の符号δで示す)、すなわち、第1〜第5の線分311〜315と第2〜第4の円302〜304との交点に形成された反射部340からなる反射部群δとが、Z方向において一致するようにステージ1のX方向の位置を調整する。
【0047】
このようにX方向およびY方向の微調整が行われると、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とがZ方向に同じ位置に位置することとなる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、窓部240および反射部340が移動方向に平行な対角線を有する矩形の形状に形成され、反射部340により反射され窓部240を透過した反射光の光量に基づいて、ホトマスクとウエハとの位置合わせを行うことにより、ウエハ3をホトマスク2に対して相対的に移動させると、窓部240と反射部340が重なる部分が二次関数的に変化するため、窓部240から観察できる反射光の光量も二次関数的に変化するので、ユーザは、その光量の変化をより敏感に検出することが可能となり、より容易に反射光の光量が最大となる位置にステージ1の位置を調整することができるので、結果として、より高精度かつ簡便な位置合わせを実現することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、窓部240および反射部340を複数設けることにより、加工精度によって窓部240や反射部340の形状にばらつきがあった場合でも、反射光の光量の平均値でステージ1の位置を調整することにより、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、窓部240および反射部340を直線上に設けることにより、ホトマスク2の位置合わせ部22とウエハ3の位置合わせ部32とがZ方向に同じ位置に位置した場合には、直線上に並んだ窓部240(第1の線分211,第6の線分216,第11の線分221,第16の線分226上の窓部240)の全てから反射光が観察されることとなる。結果として、ユーザにとって視認性が高くなるので、位置合わせをより高精度に行うことができる。
【0051】
さらに、本実施の形態によれば、位置合わせ部22,32が同心円の形状を有することにより、従来のように単なる十字の形状を有する場合と比較して、ユーザによる視認性が高くなるので、ホトマスク2とウエハ3とを粗調整するときに、容易に位置合わせを行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、位置合わせ部22,32において4つの同心円上に窓部240および反射部340を設けるようにしたが、少なくとも2つの同心円上に窓部240および反射部340を設けることにより、同等の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、位置合わせ部22,32においてX方向およびY方向の正および負の方向という4方向に対してそれぞれ5本の動径を設け、この動径上またはその動径の近傍に窓部240および反射部340をようにしたが、動径の数量は5本に限定されず、少なくとも3本以上の奇数本設けることにより、同等の作用効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、窓部240を透過する反射部340からの反射光を肉眼で確認することにより、ステージ1の位置を調整するようにしたが、公知のカメラや光センサ等からなる光量検出装置を設けて、これにより反射光の光量を検出するようにしてもよい。この場合、ステージ1にX方向およびY方向に移動させるアクチュエータをさらに設け、光量が最大となるようにステージ1を自動的に移動させるようにしてもよい。これにより、自動的に位置合わせを行うことができる。
【0055】
また、本実施の形態では、粗調整および微調整を行う際に、まずX方向から調整する場合を例に説明したが、その順番はX方向およびY方向の何れからでも適宜自由に設定することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、例えばX方向の微調整の際、位置合わせ部22の第6〜第10の線分216〜220と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群に注目する場合を例に説明したが、その窓部群に加えて位置合わせ部22の第16〜第20の線分226〜230と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群も共に注目するようにしてもよい。同様に、Y方向の微調整の際、位置合わせ部22の第1〜第5の線分211〜215と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群に注目する場合を例に説明したが、その窓部群に加えて位置合わせ部22の第11〜第15の線分221〜225と第2〜第4の円202〜204との交点またはその交点近傍に形成された窓部240からなる窓部群も共に注目するようにしてもよい。このようにすることにより、窓部240から検出される光量の変化をより敏感に検出することができるので、結果として、より容易に反射光の光量が最大となる位置にステージ1の位置を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、露光装置のように2つの部材の位置合わせを行う各種方法や装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る位置合わせ方法を使用する露光装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図2】ホトマスクの構成を模式的に示す図である。
【図3】ウエハの構成を模式的に示す図である。
【図4】ホトマスクの位置合わせ部の構成を模式的に示す図である。
【図5】ホトマスクの位置合わせ部の要部を模式的に示す図である。
【図6】ウエハの位置合わせ部の構成を模式的に示す図である。
【図7】ウエハの位置合わせ部の要部を模式的に示す図である。
【図8】ホトマスクとウエハの位置合わせ部の一部が重なった状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1…ステージ、2…ホトマスク、3…ウエハ、11…載置面、21…パターン、22…位置合わせ部、31…パターン、32…位置合わせ部、33…オリフラ、200…中心、201〜204…第1〜第4の円、211〜230…第1〜第20の線分、240…窓部、300…中心、301〜304…第1〜第4の円、311〜330…第1〜第20の線分、340…反射部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホトマスクに形成された第1のマークとウエハに形成された第2のマークとに基づいて、前記ホトマスクとこのホトマスクに対して光学的に平行に配置された前記ウエハとを相対的に平行移動させることにより前記ホトマスクと前記ウエハとの位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
前記第1のマークは、光を透過する窓からなり、
前記第2のマークは、光を反射する反射部を構成し、
前記第1のマークおよび前記第2のマークは、移動方向に平行な対角線を有する矩形の形状に形成され、
前記第2のマークにより反射され前記第1のマークを透過した反射光の光量に基づいて、前記ホトマスクと前記ウエハとの位置合わせを行う
ことを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項2】
前記第1のマークおよび前記第2のマークは、複数形成される
ことを特徴とする請求項1記載の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記第1のマークおよび前記第2のマークは、一直線上に形成される
ことを特徴とする請求項2記載の位置合わせ方法。
【請求項4】
前記第1のマークおよび前記第2のマークは、同心円の円周上に形成される
ことを特徴とする請求項3記載の位置合わせ方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載された位置合わせ方法に用いられるホトマスクであって、前記第1のマークを備えたことを特徴とするホトマスク。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載された位置合わせ方法に用いられるウエハであって、前記第2のマークを備えたことを特徴とするウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−147253(P2010−147253A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322915(P2008−322915)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】