説明

位置推定装置及び位置推定システム

【課題】GPS位置情報の誤差を低減して自車両の絶対位置を高精度に推定する。
【解決手段】位置推定装置は、路側通信装置200から送信された絶対位置情報を受信する通信部51と、自車両のGPS位置情報を検出するGPSセンサ53と、車速を計測する車速計測部52と、車速計測部52により計測された車速を用いて、GPSセンサ53により検出されたGPS位置情報を、通信部51により絶対位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正すると共に、通信部51により受信された絶対位置情報と、補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定する車両位置推定部54と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムにおいて高精度の情報を提示し、又は車両の走行位置に応じて最適な車両制御を行う等のために、自車両の位置を高精度で推定する必要がある。
【0003】
特許文献1には、移動体を精度良く検出するための移動体検出装置が開示されている。具体的には、移動体検出装置は、距離データ上において互いの距離が所定値以下に接近している観測点を連結体としてグループ化するグループ化手段と、グループ化手段によって得られた2時刻における距離データ上の各連結体について、互いの距離が所定値以下に近接しておりかつ大きさの差異が所定値以下である2時刻間での連結体対を同一物として同定する対象物追跡手段と、対象物追跡手段により同定される連結体の2時刻間の距離と方位の各変化量を、車両運動推定装置によって推定された距離の変位量と方位の変位量を用いて補正して、連結体の2時刻間の変位量とする移動体変位量算定手段と、を有している。
【0004】
特許文献2には、他車両の位置をすばやく検出する他車両位置検出装置が開示されている。具体的には、他車両位置検出装置は、自車両におけるGPS位置情報を取得する自車両GPS位置情報取得手段と、地図データを格納する地図データ格納部と、前記自車両におけるGPS位置情報と、前記地図データとよりマップマッチングを行い、自車両の位置を補正するマップマッチング処理手段と、前記自車両におけるGPS位置情報と、前記マップマッチング処理手段によって補正された自車両の位置とを用いて、GPS位置情報の誤差を推定する誤差推定手段と、該誤差推定手段によって推定されたGPS位置情報の誤差を用いて、前記他車両GPS位置情報取得手段によって取得された他車両におけるGPS位置情報の補正を行う他車両位置補正手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−160116号公報
【特許文献2】特開2007−85909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、道路交通量が多く周辺に多くの移動体が存在する場合は、レーザセンサが直接物体を検出するだけでは、自車両の周辺の静止物情報が十分に収集できない問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、自車両の絶対位置を精度良く求めることが難しく、またGPS位置情報と地図データとのマップマッチング自体に推定誤差が含まれている。このため、GPS位置情報の正確な誤差を算出することができず、正確に他車両位置を検出できない問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、GPS位置情報の誤差を低減して自車両の絶対位置を高精度に推定することができる位置推定装置及び位置推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明である位置推定装置は、通信装置から送信された絶対位置情報を受信する受信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、車速を計測する車速計測手段と、前記車速計測手段により計測された車速を用いて、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報を、前記受信手段により絶対位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正する補正手段と、前記受信手段により受信された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を備えている。
【0010】
請求項2の発明である位置推定装置は、通信装置から送信された当該通信装置に対する自車両の相対位置情報を受信する受信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、前記受信手段により受信された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記移動量測定手段により測定された移動量と、に基づいて、前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を備えている。
【0011】
請求項3の発明である位置推定システムは、絶対位置情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された絶対位置情報を送信し、外部から送信された情報を受信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、前記第1の通信手段から送信された絶対位置情報を受信する第2の通信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、車速を計測する車速計測手段と、前記車速計測手段により計測された車速を用いて、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報を、前記第2の通信手段によりGPS位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正する補正手段と、前記第2の通信手段により受信された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有し、前記第2の通信手段は、更に前記自車両絶対位置推定手段により推定された絶対位置を示す絶対位置情報を前記路側通信装置へ送信する車載通信装置と、を備え、前記路側通信装置の第1の通信手段は、前記車載通信装置の第2の通信手段から送信された絶対位置情報を受信し、前記記憶手段は、前記第1の通信手段により受信された絶対位置情報を記憶する。
【0012】
請求項4の発明である位置推定システムは、絶対位置情報を記憶する記憶手段と、外部に情報を送信し外部から送信された情報を受信する第1の通信手段と、GPS位置情報を補正する補正手段と、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有する路側通信装置と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、車速を計測する車速計測手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記車速計測手段により計測された車速と、を前記路側通信装置に送信し外部からの情報を受信する第2の通信手段と、を有する車載通信装置と、を備え、 前記路側通信装置の第1の通信手段は、前記車載通信装置から送信されたGPS位置情報と車速を受信し、前記補正手段は、前記第1の通信手段により受信された車速を用いて、前記第1の通信手段により受信されたGPS位置情報を前記第1の通信手段が当該GPS位置情報を受信した時点の自車両の絶対位置に補正し、前記自車両絶対位置推定手段は、前記記憶手段に記憶された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定し、前記記憶手段は、前記車両絶対位置推定手段により推定された自車両の絶対位置を示す絶対位置情報を記憶し、前記第1の通信手段は前記自車両の絶対位置を前記車載通信装置に送信する。
【0013】
請求項5の発明である位置推定システムは、車両を検出する車両検出手段と、車両検出手段により検出された車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置算出手段により算出された相対位置を送信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、前記第1の通信手段から送信された自車両との相対位置情報を受信する第2の通信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、前記第2の通信手段により受信された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記移動量測定手段により測定された移動量と、に基づいて、前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有する車載通信装置と、を備えている。
【0014】
請求項6の発明である位置推定システムは、車両を検出する車両検出手段と、車両検出手段により検出された車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置算出手段により算出された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、GPS位置情報と前記移動量測定手段により測定された移動量とに基づいて前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、外部から送信されたGPS位置情報を受信して前記自車両絶対位置推定手段に供給し、前記自車両絶対位置推定手段により推定された自車両の絶対位置を送信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出された自車両のGPS位置情報を前記路側通信装置に送信し、前記路側通信装置から送信された自車両の絶対位置を受信する第2の通信手段と、を有する車載通信装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、3及び4の発明によれば、通信装置から送信された絶対位置情報と、絶対位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、GPS位置情報に含まれる誤差を低減して高精度に自車両の絶対位置を推定することができる。
【0016】
請求項2、5及び6の発明によれば、自車両のGPS位置情報と、移動量測定手段により測定された移動量と、に基づいて、自車両の絶対位置を推定することにより、移動中の自車両の絶対位置を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同一車線を走行している自車両と先行車両との状態を説明する図である。
【図3】第1の実施形態の位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態の位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】(A)及び(B)は、周辺監視センサで取得された静止物データであるレーザレーダの観測結果を示す図である。
【図7】第2の実施形態の変形例である位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態の変形例における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る位置推定装置と路側通信装置との通信状態を説明する図である。
【図10】第3の実施形態に係る位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施形態における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】第4の実施形態に係る位置推定装置と路側通信装置との通信状態を説明する図である。
【図13】第4の実施形態に係る位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図14】第4の実施形態における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る位置推定装置10の構成を示すブロック図である。位置推定装置10は、衛星からのGPS(Global Positioning System)信号を受信して自車両のGPS位置情報を検出するGPSセンサ11と、自車両の周辺を走行する車両(周辺車両)に搭載された車両通信装置100からそれぞれ送信されたGPS位置情報を受信する受信部12と、自車両の進行方向に対する横方向の絶対位置を推定する車両横位置推定部17と、車両の挙動を制御する車両制御部18と、情報を提示する情報提示部19と、を備えている。
【0020】
車両通信装置100は、GPS位置情報を測位するGPSセンサ101と、GPSセンサ101で測位されたGPS位置情報を他の車両に送信する送信部102と、を備えている。
【0021】
第1の実施形態では、同一車線を同一方向に走行中の車両間でGPS位置情報が送受信される場合を考える。
【0022】
図2は、同一車線を走行している自車両と先行車両との状態を説明する図である。図6の中心にいる車両を自車両として説明する。ここで、光通信を利用すれば通信相手である車両を容易に特定できるため、同一車線を走行中の車両に限定した通信を実現することが可能である。
【0023】
図3は、第1の実施形態の位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【0024】
周辺車両に搭載された車両通信装置100のGPSセンサ101は、衛星からの信号に基づいて、当該周辺車両のGPS位置情報を測位する(ステップS1)。送信部102は、GPSセンサ101で測位されたGPS位置情報を他の周辺車両に送信する。
【0025】
一方、自車両に搭載された位置推定装置10の受信部12は、周辺車両から送信されたGPS位置情報を受信する(ステップS2)。位置推定装置10のGPSセンサ11は、GPS測位により自車両のGPS位置情報を検出する(ステップS3)。車両横位置推定部17は、GPS測位結果を統合する(ステップS4)。具体的には、車両横位置推定部17は、GPSセンサ11で検出されたGPS位置情報と、受信部12で受信された周辺車両のGPS位置情報と、の平均化処理を行うことにより、精度の高い横位置を算出する。ここで横位置とは、進行方向に直交する横方向の絶対位置をいう。
【0026】
車両横位置推定部17の計算原理は以下のとおりである。図2において、車両間の距離は未知であるが、各車両は同一車線を走行中するように拘束されおり、各車両はほぼ同じ直線上に存在すると考えられる。つまり、各車両のGPS位置情報は進行方向に一致する直線上に並ぶはずである。しかし,現実にはGPS位置情報の実測値はそれぞれ誤差を含んでいるため、進行方向に直交する方向(横位置)にずれが生じる。GPSの測位誤差はランダム性を持っているため、通信で得た前後車両のGPS測位結果を平均化処理することによって、横方向のずれを低減することができる。
【0027】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部位には同一の符号を付し、主に異なる点について説明する。
【0028】
図4は、第2の実施形態に係る位置推定装置10Aの構成を示すブロック図である。位置推定装置10Aは、図1に示した位置推定装置10の構成に加えて、自車の周辺を監視する周辺監視センサ13と、周辺車両との相対位置を算出する相対位置算出部14と、自車の絶対位置を推定する車両位置推定部15と、を備えている。
【0029】
他車両に搭載された車両通信装置100Aは、GPSセンサ101と、送信部102と、周辺監視センサ103と、を備えている。
【0030】
周辺監視センサ13、103は、自車両の周辺を監視できるものであれば特に限定されず、例えば、レーザレーダ装置、撮像装置等が該当する。第2の実施形態以降では、周辺監視センサとしてレーザレーダ装置を例に挙げて説明する。
【0031】
図5は、第2の実施形態の位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【0032】
車両通信装置100AのGPSセンサ11は、GPS測位により自車両のGPS位置情報を検出する(ステップS11)。周辺監視センサ103は、周辺に存在する移動物体(車両、歩行者等)や静止物等の障害物データを取得し、その障害物データのうち、移動量の推定や地図情報として利用可能な静止物についてのデータ(以下、「静止物データ」という。)を抽出する(ステップS12)。静止物データの抽出方法については、特に限定されるものではなく、公知の技術を用いることができる。送信部102は、GPSセンサ101で検出されたGPS位置情報、周辺監視センサ103で取得された静止物データを通信信号に変換した後、逐次周辺車両に送信する。
【0033】
一方、自車両に搭載された位置推定装置10Aの受信部12は、周辺車両から送信された通信信号を受信してその信号を復号することで(ステップS13)、周辺車両において取得されたGPS位置情報と静止物データを入手する。一方で、位置推定装置10Aの周辺監視センサ13は、自車両周辺に存在する静止物データを抽出する。
【0034】
相対位置算出部14は、周辺監視センサ13で抽出された静止物データに基づいて、自車両に対する周辺車両(通信車両)の相対位置を算出する(ステップS14)。
【0035】
車両位置推定部15は、時刻(t−1)における自車両の絶対位置を推定する(ステップS15)。ここでは、自車両の周辺にn台の周辺車両1、2、・・・、nがあるものとする。
【0036】
最初に、車両位置推定部15は、周辺車両1のGPS位置情報と、自車両に対する周辺車両1の相対位置と、に基づいて、自車両のGPS位置情報(X,Y)を算出する。次に、車両位置推定部15は、例えば周辺車両2のGPS位置情報と、自車両に対する周辺車両2の相対位置と、に基づいて、自車両のGPS位置情報(X,Y)を算出する。同様にして、車両位置推定部15は、周辺車両3、4、・・・、nの情報を用いて、自車両のGPS位置情報(X,Y)、(X,Y)、・・・、(X,Y)を算出する。
【0037】
そして、相対位置算出部14は、n個の自車両のGPS位置情報及びGPSセンサ11で直接測位された自車両のGPS位置情報を平均化することにより、時刻(t−1)における自車両の絶対位置を推定する。
【0038】
ここで、GPS測位によるGPS位置情報や周辺監視センサによる相対位置は、それぞれ観測誤差を含んでいる。そこで、相対位置算出部14は、上述のように各周辺車両のGPS位置情報及び相対位置を用いて自車両のGPS位置情報をそれぞれ算出し、各自車両のGPS位置情報及び自車両で直接測定されたGPS位置情報を平均化することにより、GPS測位結果に含まれるランダムノイズを低減できるので、高精度の自車両の絶対位置を算出できる。
【0039】
次に、車両位置推定部15は、自車両及び他車両で観測された静止物データの時間変化に基づいて、所定のサンプリング期間、すなわち時刻(t−1)から時刻tにおける自車両の移動量を推定する(ステップS16)。
【0040】
図6(A)及び(B)は、周辺監視センサで抽出された静止物データであるレーザレーダの観測結果を示す図である。時刻(t−1)及び時刻tにおけるレーザレーダの観測結果を照合してその差分から自車両の移動量が推定される。
【0041】
ここで、車両位置推定部15は、自車両が多数の周辺車両に囲まれてしまい、自車両で直接静止物体を観測できない場合でも、周辺車両の周辺監視センサ103で観測された静止物の静止物データを用いることができるので、自車両の移動量の推定精度を向上することができる。
【0042】
なお、受信部12は、自車両から死角の方向(例えば進行方向に対して左後方)にある他車両からのデータを受信してよい。これにより、自車両から死角の方向にある状況を考慮することができ、自車両の移動量が高精度に求められる。
【0043】
最後に、車両位置推定部15は、ステップS15で算出した時刻(t−1)の絶対位置と、ステップS16で推定した時刻(t−1)から時刻tにおける移動量とを統合することにより、現在の時刻tにおける自車両の絶対位置を推定する(ステップS17)。ここでは、車両位置推定部15は、高精度化されたGPS測位結果と自車の移動量とを例えばカルマンフィルタ、パーティクルフィルタ等で統合することによって、更なる誤差低減を実現することができる。
【0044】
そして、車両位置推定部15において推定された絶対位置情報は、車両制御部18や情報提示部19へ送られ、交差点での一旦停止やナビゲーションなどの運転支援システムの実現に利用される。
【0045】
以上のように、位置推定装置10Aは、各周辺車両のGPS位置情報及び相対位置を用いて自車両のGPS位置情報をそれぞれ算出し、これらのGPS位置情報及び自車両で直接測定されたGPS位置情報を平均化する。この結果、GPS測位結果に含まれるランダムノイズを低減できるので、高精度の自車両の絶対位置を算出できる。さらに、位置推定装置10Aは、その自車両の絶対位置と自車両の移動量とを統合することにより、現在の位置を高精度に推定することができる。
【0046】
(変形例)
図7は、第2の実施形態の変形例である位置推定装置10Bの構成を示すブロック図である。位置推定装置10Bは、図4に示した位置推定装置10Aの構成に加えて、周辺監視センサで取得された観測結果を地図情報として記憶する地図情報記憶部14を、を備えている。
【0047】
地図記憶部16は、自車両の周辺監視センサ13によって観測された静止物データと、その観測時点で車両位置推定部15により推定された自車両の絶対位置情報と、を逐次記憶する。また、地図記憶部16は、受信部12で受信された情報を逐次記憶してもよい。具体的には、地図記憶部16は、他車両の周辺監視センサ103によって観測された静止物データと、その観測時点でGPSセンサ101により測位された当該他車両のGPS位置情報と、を逐次記憶してもよい。
【0048】
図8は、第2の実施形態の変形例における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。なお、図5のステップと同じステップには同一の符号を付し、主に異なるステップについて説明する。
【0049】
ステップS15が終了した後、車両位置推定部15は、ステップS15で算出された時刻(t−1)における自車両の絶対位置に対応する地図データを、地図記憶部16から読み出す(ステップS21)。
【0050】
次に、車両位置推定部15は、ステップS21で読み出した時刻(t−1)における地図データと、自車両及び他車両で観測された時刻tにおける静止物データとを照合し、その差分から自車両の移動量を推定する(ステップS22)。
【0051】
そして、車両位置推定部15は、ステップS15で算出した時刻(t−1)の絶対位置と、ステップS21で推定した移動量とを統合することにより、現在の時刻tにおける自車両の絶対位置を高精度に推定する。
【0052】
最後に、車両位置推定部15は、統合結果に基づいて地図情報を作成・更新し、作成・更新された地図データ及びその位置情報を地図記憶部16に保存する(ステップS23)。
【0053】
これにより、上記位置推定装置10Bは、一度走行した道路の地図データを地図記憶部16に記憶しておけば、自車両の移動量を容易に推定することができ、この結果、現在の自車両の絶対位置を高精度に推定することができる。
【0054】
[第3の実施形態]
つぎに、本発明の第3の実施形態について説明する。第3及び第4の実施形態では、路車間通信について説明する。
【0055】
図9は、第3の実施形態に係る位置推定装置50と路側通信装置200との通信状態を説明する図である。同図に示すように、路側通信装置200は、例えば道路の走行車線上に設置されており、その走行車線を走行している車両に搭載された位置推定装置50と通信する。
【0056】
図10は、第3の実施形態に係る位置推定装置50の構成を示すブロック図である。位置推定装置50は、路側通信装置200と通信する通信部51と、自車両の車速を計測する車速計測部52と、自車両のGPS位置情報を計測するGPSセンサ53と、自車両の絶対位置を推定する車両位置推定部54と、車両を制御する車両制御部56と、情報を提示する情報提示部57と、を備えている。
【0057】
路側通信装置200は、車両と通信する通信部201と、各車両から送信された絶対位置情報をセンサ情報として記憶するセンサ情報記憶部202とを備えている。なお、センサ情報記憶部202に記憶される絶対位置情報は、路側通信装置200の通信エリアを表す。
【0058】
通信部201は、車両が当該路側通信装置200の通信エリアを通過する毎に、その車両に対してセンサ情報記憶部202に記憶されている絶対位置情報を送信すると共に、その車両から絶対位置情報を受信する。このとき、センサ情報記憶部202は、通信部201で絶対位置情報が受信される毎に、その受信された絶対位置情報を記憶する。
【0059】
図11は、第3の実施形態における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【0060】
位置推定装置50の車速計測部52は、自車両の車速を計測する(ステップS31)。また、GPSセンサ53は、約1秒間隔でGPS測位を繰り返し自車両のGPS位置情報を計測する(ステップS32)。通信部51は、路側通信装置200と通信して、絶対位置情報を受信する(ステップS33)。
【0061】
次に、車両位置推定部54は、車速計測部52で計測された車速情報を用いて、GPSセンサ53により直近の時間で取得した自車両のGPS位置情報を、通信時の自車両の位置を表すように補正する(ステップS34)。これにより、車両位置推定部54は、路側通信装置200からデータを受信した通信エリアの位置情報を算出する。
【0062】
そして、車両位置推定部54は、算出した通信位置情報と、路側通信装置200から得た絶対位置の蓄積データを統合(例えば平均処理)することにより、GPS測位結果に含まれるランダム誤差を低減して、高精度の絶対位置を推定する(ステップS35)。通信部51は、車両位置推定部54で算出された絶対位置情報を路側通信装置200へ送信する(ステップS36)。
【0063】
一方、路側通信装置200の通信部201は、位置推定装置50から送信された絶対位置を受信し、これをセンサ情報記憶部202へ保存する。これを繰り返すにつれて、路側通信装置200のセンサ情報記憶部202で記憶される絶対位置が更新され(ステップS37)、絶対位置の精度は次第に高くなる。路側通信装置200は、GPSセンサを備える必要はなく、小型化で実現できるとともにコストを抑えることもできる。
【0064】
以上のように、位置推定装置50は、路側通信装置200から送信される高精度の絶対位置情報と自車両の車速とに基づいて、通信時の自車両の絶対位置を高精度に算出し、その絶対位置と自車両のGPS位置情報とを平均化することにより、GPS誤差のない高精度の絶対位置を推定することができる。
【0065】
また、路側通信装置200は、位置推定装置50と通信してセンサ情報を記憶するだけであり、複雑な演算処理を行う必要がない。このため、コストをかけることなく、高精度の絶対位置の推定を実現することができる。
【0066】
第3の実施形態では、車両位置推定部54が位置推定装置50に設けられた例を挙げたが、車両位置推定部54は路側通信装置200に設けられてもよい。このとき、路側通信装置200では、通信部201が位置推定装置50から車速と自車両のGPS位置情報を受信し、車両位置推定部54が受信され情報を用いて自車両の絶対位置を推定し、通信部201が推定した自車両の絶対位置を位置推定装置50へ送信すればよい。
【0067】
[第4の実施形態]
つぎに、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
図12は、第4の実施形態に係る位置推定装置50Aと路側通信装置200Aとの通信状態を説明する図である。同図に示すように、路側通信装置200Aは、例えば路側帯に設置されている。そして、路側通信装置200Aは、走行車線を走行している車両を検出し、検出した車両との相対位置情報を生成して、この相対位置情報を走行中の車両に送信する。走行車線を走行する車両に搭載された位置推定装置50Aは、自車両でGPS測位したGPS位置情報と、路側通信装置200Aからの相対位置情報と、に基づいて、自車両の絶対位置を推定する。
【0069】
図13は、第4の実施形態に係る位置推定装置50Aの構成を示すブロック図である。位置推定装置50Aは、自車両のGPS位置情報を計測するGPSセンサ53と、自車両の絶対位置を推定する車両位置推定部54と、車両を制御する車両制御部56と、情報を提示する情報提示部57と、路側通信装置200Aとの間で通信を行う通信部58と、を備えている。
【0070】
また、路側通信装置200Aは、走行車線を走行する車両をそれぞれ観測する周辺観測センサ203と、各々の車両との相対位置を算出する相対位置算出部204と、相対位置算出部204で算出された情報を送信し、位置推定装置50との間で通信を行う通信部205と、を備えている。周辺観測センサ203は、走行車線を走行する車両を検出できれば特に限定されるものではなく、レーザレーダ装置、撮像装置等でもよい。本実施形態では、周辺観測センサ203はレーザレーダ装置として説明する。
【0071】
図14は、第4の実施形態における位置検出ルーチンを示すフローチャートである。
【0072】
路側通信装置200Aの周辺観測センサ203は、レーザレーダの観測結果から車両を計測する(ステップS41)。相対位置算出部204は、周辺観測センサ203の観測結果に基づいて、当該路側通信装置200Aに対する検出した車両との相対位置(距離や方位、または路側通信装置200Aを中心とする座標系での位置でも可)を算出する(ステップS42)。通信部205は、相対位置算出部204で算出された情報をコード化して、検出した車両に対して通信信号を送信する(ステップS43)。
【0073】
一方、位置推定装置50Aの通信部58は、路側通信装置200Aからの送信信号を受信して復号して相対位置情報を取得する(ステップS44)。一方で、自車に搭載されたGPSセンサ53は、自車両のGPS位置情報を測定する(ステップS45)。
【0074】
車両位置推定部54は、路側通信装置200Aから送信された相対位置情報の時間差分に基づいて、自車量の移動量を推定する(ステップS46)。そして、車両位置推定部54は、ステップS46で推定された移動量と、GPS位置情報を統合することにより、精度の高い自車両の絶対位置を推定する(ステップS47)。
【0075】
この際、路側通信装置200Aの絶対位置は必要としない。また、周辺観測センサ203はレーザレーダでなくても車両との相対位置を算出可能な計測装置であればよいのは勿論である。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【0077】
例えば、受信部12、58、102、送信部102、205、通信部51、201は、光通信(例えば、レーザ発光ダイオード(LED)、カメラ、フォトダイオード等)を利用しても良い。特に受光装置としてカメラを利用した光通信であれば、どの車両から送られたデータであるのかを把握しやすい。またレーザレーダなど測距センサと組み合わせれば、相対位置の算出を簡易な処理で実現することができる。
【0078】
第4の実施形態では、車両位置推定部54が位置推定装置50Aに設けられた例を挙げたが、車両位置推定部54は路側通信装置200Aに設けられてもよい。このとき、路側通信装置200Aでは、通信部205が位置推定装置50Aから自車両のGPS位置情報を受信する。また、車両位置推定部54が相対位置情報の時間差分に基づいて自車量の移動量を推定し、この移動量と受信されたGPS位置情報を統合することにより自車両の絶対位置を推定する。そして、通信部205が自車両の絶対位置を位置推定装置50Aへ送信すればよい。
【符号の説明】
【0079】
10,10A,10B,50,50A 位置推定装置
11,53 GPSセンサ
12 受信部
13 周辺監視センサ
14 相対位置算出部
15,54 車両位置推定部
16 地図記憶部
17 車両横位置推定部
18,56 車両制御部
19,57 情報提示部
51,58,205 通信部
52 車速計測部
100,100A 車両通信装置
200,200A 路側通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置から送信された絶対位置情報を受信する受信手段と、
自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、
車速を計測する車速計測手段と、
前記車速計測手段により計測された車速を用いて、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報を、前記受信手段により絶対位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正する補正手段と、
前記受信手段により受信された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、
を備えた位置推定装置。
【請求項2】
通信装置から送信された当該通信装置に対する自車両の相対位置情報を受信する受信手段と、
自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、
前記受信手段により受信された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、
前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記移動量測定手段により測定された移動量と、に基づいて、前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、
を備えた位置推定装置。
【請求項3】
絶対位置情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された絶対位置情報を送信し、外部から送信された情報を受信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、
前記第1の通信手段から送信された絶対位置情報を受信する第2の通信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、車速を計測する車速計測手段と、前記車速計測手段により計測された車速を用いて、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報を、前記第2の通信手段によりGPS位置情報が受信された時点の自車両の絶対位置に補正する補正手段と、前記第2の通信手段により受信された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有し、前記第2の通信手段は、更に前記自車両絶対位置推定手段により推定された絶対位置を示す絶対位置情報を前記路側通信装置へ送信する車載通信装置と、を備え、
前記路側通信装置の第1の通信手段は、前記車載通信装置の第2の通信手段から送信された絶対位置情報を受信し、前記記憶手段は、前記第1の通信手段により受信された絶対位置情報を記憶する
ことを特徴とする位置推定システム。
【請求項4】
絶対位置情報を記憶する記憶手段と、外部に情報を送信し外部から送信された情報を受信する第1の通信手段と、GPS位置情報を補正する補正手段と、自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有する路側通信装置と、
自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、車速を計測する車速計測手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記車速計測手段により計測された車速と、を前記路側通信装置に送信し外部からの情報を受信する第2の通信手段と、を有する車載通信装置と、を備え、
前記路側通信装置の第1の通信手段は、前記車載通信装置から送信されたGPS位置情報と車速を受信し、前記補正手段は、前記第1の通信手段により受信された車速を用いて、前記第1の通信手段により受信されたGPS位置情報を前記第1の通信手段が当該GPS位置情報を受信した時点の自車両の絶対位置に補正し、前記自車両絶対位置推定手段は、前記記憶手段に記憶された絶対位置情報と、前記補正手段により補正されたGPS位置情報と、を平均化することにより、自車両の絶対位置を推定し、前記記憶手段は、前記車両絶対位置推定手段により推定された自車両の絶対位置を示す絶対位置情報を記憶し、前記第1の通信手段は前記自車両の絶対位置を前記車載通信装置に送信する
ことを特徴とする位置推定システム。
【請求項5】
車両を検出する車両検出手段と、車両検出手段により検出された車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置算出手段により算出された相対位置を送信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、
前記第1の通信手段から送信された自車両との相対位置情報を受信する第2の通信手段と、自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、前記第2の通信手段により受信された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出されたGPS位置情報と、前記移動量測定手段により測定された移動量と、に基づいて、前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、を有する車載通信装置と、
を備えた位置推定システム。
【請求項6】
車両を検出する車両検出手段と、車両検出手段により検出された車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置算出手段により算出された相対位置情報に基づいて、前記自車両の移動量を測定する移動量測定手段と、GPS位置情報と前記移動量測定手段により測定された移動量とに基づいて前記自車両の絶対位置を推定する自車両絶対位置推定手段と、外部から送信されたGPS位置情報を受信して前記自車両絶対位置推定手段に供給し、前記自車両絶対位置推定手段により推定された自車両の絶対位置を送信する第1の通信手段と、を有する路側通信装置と、
自車両のGPS位置情報を検出する自車両GPS位置情報検出手段と、前記自車両GPS位置情報検出手段により検出された自車両のGPS位置情報を前記路側通信装置に送信し、前記路側通信装置から送信された自車両の絶対位置を受信する第2の通信手段と、を有する車載通信装置と、
を備えた位置推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−18180(P2012−18180A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219153(P2011−219153)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2007−322118(P2007−322118)の分割
【原出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】