説明

位置検出システム

【課題】電界強度と位置検出用端末の位置との関係を容易に取得でき、この関係を用いて位置検出対象端末の位置を精度良く推定することができる位置検出システムを提供すること。
【解決手段】電子タグ11が内蔵された位置検出対象端末1から発信された電波の電界強度を測定する位置検出用基地局3と、予め定めた位置に設置され、位置検出対象端末1に内蔵された電子タグ11を識別する電子タグリーダ2と、位置検出用基地局3及び電子タグリーダ2に接続され、電子タグリーダ2が位置検出対象端末1に内蔵された電子タグ11を識別した時に測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末1の位置を推定する制御局4とにより、位置検出システムを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タグが内蔵された位置検出対象端末を用いた位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタスコンピューティング技術の活用が注目されており、建物もこれに対応することが必要となっている。中でも、人間の位置情報の取得機能はユビキタス技術の中核となっており、早急な対応が望まれている。
【0003】
位置情報を取得するシステムとしては、人間に所持させた位置検出対象端末から発信された電波の基地局における受信信号強度RSS(Received Signal Strength)から位置情報を求めるものや電波の到来時間TOA(Time Of Arrival)または電波の到来時間差(Time Difference Of Arrival)から位置情報を求めるものがある。
【0004】
しかしながら、これらのシステムでは、見通し外通信となる箇所や、マルチパスが多い環境では十分な位置推定精度が得られないという課題がある。
【0005】
見通し外通信やマルチパスの影響を軽減する手段としては、定期的または不定期に位置検出エリア内の複数箇所における電界強度を測定し、その強度をフィードバックする位置検出システムが一般的に考えられる。
【0006】
電界強度の測定するシステムとしては、地図表示・入力部から入力した位置の情報と電界強度測定データとを関連付けるもの(例えば、特許文献1参照)や、ニューラルネットを利用して位置情報と電界強度との関連を学習するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−136436号公報
【特許文献2】特開平10−94040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、地図表示・入力部から入力した位置の情報と電界強度測定データとを関連付けるシステムによれば、位置入力の精度や、作業効率の点で課題があり、ニューラルネットを利用して位置情報と電界強度との関連を学習するシステムによれば、初期の学習のために物理的な位置を多数実測しなければならないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電界強度と位置検出用端末の位置との関係を容易に取得でき、この関係を用いて位置検出対象端末の位置を精度良く推定することができる位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電子タグが内蔵された位置検出対象端末から発信された電波の電界強度を測定する位置検出用基地局と、予め定めた位置に設置され、位置検出対象端末に内蔵された電子タグを識別する電子タグリーダと、前記位置検出用基地局及び前記電子タグリーダに接続され、前記電子タグリーダが位置検出対象端末に内蔵された電子タグを識別した時に測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定する制御局とを有したことを特徴とする。
【0011】
また、上記発明において、前記制御局は、位置検出対象端末ごとに、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶することを特徴とする。
【0012】
また、上記発明において、前記制御局は、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて逐次記憶するデータベースと、該データベースに記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定する位置推定手段とを有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる位置検出システムは、電子タグリーダが位置検出対象端末に内蔵された電子タグを識別した時に測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定するので、意識することなく、電界強度と位置検出対象端末の位置との関係を容易に取得できる。そして、この関係を用いれば、位置検出対象端末の位置を精度良く推定することができる。
【0014】
また、本発明にかかる位置検出システムは、位置検出対象端末ごとに、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶するので、発信する電波の電界強度に関し位置検出対象端末の個体差が大きい場合であっても位置検出対象端末の位置を精度良く推定することができる。
【0015】
また、本発明にかかる位置検出システムは、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けてデータベースに逐次記憶し、データベースに記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定するので、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係が平準化され、位置検出対象端末の位置を精度良く推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる位置検出システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である位置検出システムの概略構成を示す概念図であり、図2は、図1に示した位置検出システムの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る位置検出システムは、建物の内部を移動する人間の位置情報を取得するものであって、人間に所持させた位置検出対象端末1を用いて位置情報を取得するようになっている。位置検出対象端末1は、無線通信によって情報を送受信する無線IP電話等の位置検出対象エリアとなる建物の内部で用いられるネットワーク機器であって、電子タグ11(Radio Frequency Identification(以下、RFIDと称する)タグ)が内蔵されている。
【0019】
図2に示すように、位置検出対象端末1は、電子タグ11のほか、ネットワーク通信部12、制御部13を有している。電子タグ11は、タグ通信部(アンテナ)111と識別情報記憶部112とを有し、識別情報記憶部112には、識別情報(RFID)が記憶してある。電子タグ11は、後述する電子タグリーダ2からの取得要求に従って、電子タグ11の識別情報(RFID)を電子タグリーダ2に送信するようになっている。ネットワーク通信部12は、必要に応じて情報を送受信するようになっており、少なくとも、内蔵された電子タグ11の識別情報(RFID)を電子タグリーダ2に送信した場合に、位置検出対象端末1の識別情報(ID)を含む電波を発信するようになっている。これら、電子タグ11(タグ通信部111)及びネットワーク通信部12は、制御部13に接続されている。制御部13は、位置検出対象端末1の全体の制御を司るものであり、上述した電子タグ11、ネットワーク通信部12も制御するようになっている。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施の形態である位置検出システムは、位置検出対象エリアAの内部、例えば、床あるいは天井の内部に設置された複数(図1に示す形態では3つ)の電子タグリーダ2と、位置検出対象エリアAの内部あるいは近傍に設置された複数(図1に示す形態では3つ)の位置検出用基地局3と、電子タグリーダ2及び位置検出用基地局3に接続された一の制御局4とを有している。
【0021】
図1に示すように、全ての電子タグリーダ2は、予め定めた位置に設置されており、図1に示す形態では、電子タグリーダ2の設置位置を、それぞれ学習ポイントA、学習ポイントB、学習ポイントCとして特定されるようになっており、各学習ポイントの設置位置座標は、制御局4において取得できるようになっている。
【0022】
図2に示すように、電子タグリーダ2は、通信部21、入出力部22、制御部23を有している。通信部21は、電子タグ11に対して識別情報(RFID)の取得を要求するとともに、電子タグ11から送信された電子タグ11の識別情報(RFID)を受信する部分であって、図1に示すように、垂直方向に細長い指向性を有している。入出力部22は、制御局4との間で情報を送受信するためのインタフェースである。これら、通信部21、入出力部22は、制御部23に接続されている。制御部23は、電子タグリーダ2の全体の制御を司るものであり、通信部21が識別情報(RFID)を受信した場合に、当該識別情報(RFID)に電子タグリーダ2の識別情報を関連付けた受信情報を制御局4に出力するようになっている。
【0023】
図1に示すように、全ての位置検出用基地局3は、位置検出対象エリアAの内部に位置する位置検出対象端末1から発信された電波を受信可能であって、図1に示す形態では、位置検出用基地局A、位置検出用基地局B、位置検出用基地局Cとして特定されるようになっている。
【0024】
図2に示すように、位置検出用基地局3は、通信部31、電界強度測定部32、入出力部33、制御部34を有している。
【0025】
通信部31は、位置検出対象端末1との間で情報を送受信する部分であり、位置検出対象端末1から発信された電波を全て受信するようになっている。したがって、位置検出対象エリアAの内部に位置する位置検出対象端末1から電波が発信された場合には、全ての位置検出用基地局3が電波を受信することになる。
【0026】
電界強度測定部32は、通信部31に接続されており、通信部31において受信された電波の電界強度を所定のタイミング(例えば、所定時間ごと)で測定するようになっている。
【0027】
入出力部33は、制御局4との間で情報を送受信するためのインタフェースである。
【0028】
これら、通信部31、電界強度測定部32、入出力部33は、制御部34に接続されている。制御部34は、位置検出用基地局3の全体の制御を司るものであり、通信部31において受信した電波の識別情報(ID)と電界強度測定部32において測定された電界強度とを関連付けて制御局4に出力するようになっている。
【0029】
図1に示すように、全ての電子タグリーダ2と全ての位置検出用基地局3とは、制御局4に接続してある。制御局4は、電子タグリーダ2が位置検出対象端末1に内蔵された電子タグ11の識別情報(RFID)を識別した時に全ての位置検出用基地局3が測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末1の位置を推定するものである。
【0030】
図2に示すように、制御局4は、タグリーダ入出力部41、基地局入出力部42、制御部43、データベース44を有している。タグリーダ入出力部41には、全ての電子タグリーダ2が接続され、電子タグリーダ2が識別した位置検出対象端末1の識別情報(RFID)を電子タグリーダ2の識別情報と関連付けた受信情報を取得できるようになっている。基地局入出力部42には、全ての位置検出用基地局3が接続され、電界強度取得要求を受信した位置検出用基地局3がそれぞれ測定した電界強度を位置検出対象端末1の識別情報(ID)及び位置検出用基地局3の識別情報と関連付けて取得できるようになっている。
【0031】
これら、タグリーダ入出力部41、基地局入出力部42は、制御部43に接続されている。制御部43は、制御局4の全体の制御を司るものであり、さらに、データベース44が接続してある。制御部43は、電子タグリーダ2が位置検出対象端末1に内蔵された電子タグ11の識別情報(RFID)を識別した時に、電子タグリーダ2から当該電子タグリーダ2の識別情報と電子タグ11の識別情報(RFID)とを取得するとともに、全ての位置検出用基地局3から位置検出用基地局3の識別番号、位置検出対象端末1の識別情報(ID)、及び測定した電界強度を取得する。その後、制御部43は、位置検出対象端末1の識別情報(ID)(電子タグの識別情報(RFID)であってもよい。)ごとに、各位置検出用基地局3において測定された電界強度と、電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けてデータベース44に記憶するようになっている。
【0032】
そして、制御部43は、データベース44に位置検出対象端末1ごとに記憶された電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係から、位置検出対象端末1ごとに電界強度と位置検出対象端末1の位置との関係を推定するようになっている。
【0033】
そしてまた、制御部43は、所定時間ごとに、全ての位置検出用基地局3において測定された電界強度に基づいて、位置検出対象端末1の位置を推定するようになっている。
【0034】
図3は、図1及び図2に示した位置検出システムにおける位置検出手順を示すタイムチャートである。
【0035】
図3に示すように、上述した実施の形態である位置検出システムにおいて、電子タグリーダ2が位置検出対象端末1を識別した場合に(ステップS11)、電界強度と位置情報との関係を学習することになる。
【0036】
具体的には、電子タグリーダ2から出力された識別情報(RFID)取得要求に応じて位置検出対象端末1が識別情報(RFID)を送信し、電子タグリーダ2が識別信号(RFID)を受信すると(ステップS1)、学習を開始する。
【0037】
そして、電子タグリーダ2は、受信情報(識別情報(RFID)を含む)を制御局4に送信する(ステップS2)。すると、制御局4は位置検出用基地局3に電界強度取得要求を送信する(ステップS3)。
【0038】
電界強度取得要求を受信した位置検出用基地局3は、位置検出対象端末1から定期的に発信されている電波を受信するとともに、電界強度を測定することになる(ステップS4)。そして、位置検出用基地局3が測定した電界強度は位置検出用基地局3の識別情報と関連付けられて制御局4に送信される(ステップS5)。
【0039】
電界強度を受信した制御局4は、電界強度と位置情報とを関係付けてデータベース44に記憶することになる(ステップS6)。
【0040】
一方、電子タグリーダ2が単に位置検出対象エリアAの内部にある場合には、所定時間が経過するごとに(ステップS11:Yes)、位置検出用基地局3が電界強度を測定することになる(ステップS12)。そして、測定された電界強度は位置検出用基地局3の識別情報と関連付けられて制御局4に送信される(ステップS13)。
【0041】
電界強度を受信した制御局4は、電界強度と位置情報との関係から位置検出対象端末1の位置を推定する(ステップS14)。
【0042】
上述した実施の形態である位置検出システムによれば、電子タグリーダ2が位置検出対象端末1に内蔵された電子タグ11を識別した時に測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末1の位置を推定するので、意識することなく、電界強度と位置検出対象端末1の位置との関係を容易に取得できる。そして、この関係を用いれば、位置検出対象端末1の位置を精度良く推定することができる。
【0043】
また、位置検出対象端末1ごとに、測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けて記憶するので、発信する電波の電界強度に関し位置検出対象端末1の個体差が大きい場合であっても位置検出対象端末1の位置を精度良く推定することができる。
【0044】
さらに、測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置とを関係付けてデータベース44に逐次記憶し、データベース44に記憶してある電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末1の位置を推定するので、測定した電界強度と電子タグリーダ2の設置位置との関係が平準化され、位置検出対象端末1の位置を精度良く推定することができる。
【0045】
上述した実施の形態である位置検出システムは、三角測量により位置検出対象端末の位置を推定することができるように、電子タグリーダ2と位置検出用基地局3をそれぞれ三箇所に設けることとしたが、実質的に一次元となる場合、例えば、壁あるいは壁面パネル等によって両側が画成された廊下等においては、電子タグリーダ2と位置検出用基地局3とをそれぞれ一箇所に設ければ足りることになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態である位置検出システムの概略構成を示す概念図である。
【図2】図1に示した位置検出システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1及び図2に示した位置検出システムにおける位置検出手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1 位置検出対象端末
11 電子タグ
111 タグ通信部
112 識別情報記憶部
12 位置検出対象端末
13 制御部
2 電子タグリーダ
21 通信部
22 入出力部
23 制御部
3 位置検出用基地局
31 通信部
32 電界強度測定部
33 入出力部
34 制御部
4 制御局
41 タグリーダ入出力部
42 基地局入出力部
43 制御部
44 データベース
A 位置検出対象エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子タグが内蔵された位置検出対象端末から発信された電波の電界強度を測定する位置検出用基地局と、
予め定めた位置に設置され、位置検出対象端末に内蔵された電子タグを識別する電子タグリーダと、
前記位置検出用基地局及び前記電子タグリーダに接続され、前記電子タグリーダが位置検出対象端末に内蔵された電子タグを識別した時に測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶する一方、記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定する制御局と
を有したことを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記制御局は、位置検出対象端末ごとに、測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて記憶することを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記制御局は、
測定した電界強度と電子タグリーダの設置位置とを関係付けて逐次記憶するデータベースと、
該データベースに記憶してある電界強度と電子タグリーダの設置位置との関係に基づいて、測定した電界強度の電波を発信する位置検出対象端末の位置を推定する位置推定手段と
を有したことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−121972(P2009−121972A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296780(P2007−296780)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】