説明

位置検出装置および位置検出プログラム並びに施設図面データ

【課題】施設外部から救助活動を支援する指揮者が的確に指示することが可能な位置検出装置および位置検出プログラム並びに施設図面データを提供する。
【解決手段】救助活動支援装置は、救助者の位置を示す経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データを送信する位置通信装置からの無線信号を受信する無線手段と、建物の見取図G1を示す平面図データ、およびこの見取図上の左右方向に平行な仮想直線L1上の2点の経度および緯度を示す測量座標データを関連付けた施設データが格納される記憶手段と、測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線L1の傾きから表示画面の左右方向(仮想直線L2)に対する見取図の傾きを補正角度θとして演算し、この補正角度θに基づいて平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、救助者の位置を示すマークを位置情報に基づいて重畳させて表示画面に出力する制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災や災害などで施設内に取り残された被災者を救出するために、救助者の活動をサポートしたり、施設内に所在する被監視者の位置を把握することで安全管理を行ったりすることが可能な位置検出装置および位置検出プログラム並びに施設図面データに関する。
【背景技術】
【0002】
救助者の活動を支援するための装置として特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載の防災システムは、構造物の内部に存在する発信器の三次元座標を演算する演算部と、3Dレーザスキャナを用いて取得された構造物の三次元座標データに基づいて構造物の外観画像や内観画像をディスプレイに表示させると共に、この画像に発信器に対応する特定画像を表示させる画像合成部を有するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2007−11617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の防災システムでは、3Dレーザスキャナを用いて構造物の三次元座標データを機械座標(水準点に対する座標であって、地球上での絶対的な位置を特定する座標)として取得しているので、この構造物を表示画面に表示する際には、機械座標に基づいて表示を行うことになる。
【0005】
しかし、建物の画像を表示画面に表示する際に、表示画面の上下方向と、この上下方向に直交する左右方向とに沿った仮想軸を基準の座標軸として、取得された機械座標に基づいて構造物の画像の表示を行うと、実際の建築状況に即して建物の画像が表示されるため、平面視して長方形状の建物が表示画面の対角線に沿って斜めに表示されたり、建物の正面が表示画面の下方に向くところが上側に向いたりして、見えにくい状態となってしまう。そうなると救助活動を建物の外から指示する指揮者の指示が不適なものとなったり指示が遅れたりするおそれがあり、救助活動に支障が生じてしまう。このことにより、救助活動支援装置などの位置検出装置は、監視者である指揮者に対して、被監視者である救助者の位置を、直感的に、かつ的確に把握できるように表示することが重要である。
【0006】
そこで本発明は、被監視者を施設外部から監視する監視者が的確に被監視者の位置を把握することが可能な位置検出装置および位置検出プログラム並びに施設図面データを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置検出装置は、施設内に所在する被監視者の位置を示す経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データを送信する位置通信装置からの通知を受信する通信手段と、前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データが格納される記憶手段と、前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の位置検出装置では、制御手段が、まず、見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上に割り当てられた2点の測量座標データに基づいて、この2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算する。つまり、この補正角度が、表示画面の上下方向を経線方向(緯度方向)、左右方向を緯線方向(経度方向)としたときの平面図の傾きとなる。従って、制御手段が、この補正角度に基づいて平面図データを回転させた補正平面図データを表示画面に表示させることで、見取図の上下方向および左右方向を表示画面の上下方向および左右方向に一致させた状態で表示させることできる。そして、制御手段が、この補正平面図データに被監視者の位置を示すマークを位置データに基づいて重畳させることで、監視者が被監視者の位置を、正確に、かつ迅速に把握することができるので、施設の外部から被監視者を観察する監視者は、的確に被監視者の位置を認識することができる。
【0009】
また、本発明の位置検出装置は、施設内に所在する被監視者の位置を示す経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データを送信する位置通信装置からの通知を受信する通信手段と、前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データが格納される記憶手段と、前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させ、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する制御手段とを備えたことを特徴とする。
制御手段が平面図データの座標系を基準に表示画面に表示するときには、補正角度に基づいて平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させる。そうすることで、見取図の上下方向および左右方向を表示画面の上下方向および左右方向に一致させた状態で、見取図を表示させることでき、かつ被監視者の位置を示すマークも、回転した測量座標系に即して表示させることができる。従って、監視者が被監視者の位置を、正確に、かつ迅速に把握することができるので、施設の外部から被監視者を観察する監視者は、的確に被監視者の位置を認識することができる。
【0010】
前記記憶手段には、更に施設データとして、施設の各階ごとの見取図を示す平面図データに、前記各階の高さを示す階高さデータが関連付けられて格納され、前記制御手段は、前記通信手段が受信した前記位置データに含まれる被監視者が所在する高さを示す高さ位置データから、対応する階の見取図を示す平面図データを選択して補正平面図データを生成する機能を備えるのが望ましい。
各階ごとの見取図を平面図データとして記憶手段に格納しておき、被監視者がいる高さを示す高さ位置データと、各階の高さを示す階高さデータとに基づいて自動的に対応する階の平面図データを選択することで、施設が2階以上ある場合でも対応することが可能となる。従って、被監視者が下階から上階、上階から下階へと移動しても、被監視者が所在する階の平面図データが表示されることで、監視者が被監視者を追従することができる。ここで、階高さとは、各階が位置する高さである。この高さは、基準となる位置からの垂直距離を示す。例えば、被監視者が所在する高さを示す高さ位置データがGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により測位されるものであるならば、位置データはWGS-84系の準拠楕円体面を基準とした高さで表されているので、平面図データの階高さの基準は、この座標系に準拠させる。そうすることで、被監視者がいる高さを示す高さ位置データに対応する階高さデータの階の平面図データを選択することができる。
【0011】
前記制御手段は、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域に、所定マークを重畳させる機能を備えるのが望ましい。
被監視者が救助活動を行う救助者であれば、救助活動は各部屋に救助を必要とする人がいるか否かを確認しながら行う必要がある。また、被監視者が工場で作業する作業員であれば、事故の発生時には作業員の安否が心配されるので、工場内のどの位置に作業員が配置されているのかを把握しながら安否確認を行う必要がある。監視者は救助者が確認した部屋または区画された領域、または作業者の安全が確保されている部屋または区画された領域に、目印として所定マークを重畳させることで、これらの場所に救助を必要とする人がいないこと、または作業員の安全が確保されていることをチェックすることができる。従って、チェック漏れを防止することができる。
【0012】
前記制御手段は、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域を塗りつぶす機能を備えるのが望ましい。
制御手段が、確認が完了した部屋または領域に所定マークを重畳させる他に、塗りつぶすようにしても同様の効果を得ることができる。
【0013】
前記制御手段は、前記平面図データが紙図面の見取図をスキャナ装置により読み取られることで生成された電子データである場合に、前記スキャナ装置が紙媒体を読み取る際に発生した斜行角度を検出し、平面図データを回転させるときに、検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させるのが望ましい。
制御手段が補正角度を演算して回転させる際に、斜行した状態の平面図データでは、監視者が表示画面で観察するときに微妙なずれが生じる。制御手段が検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させることで、表示画面に平面図を正確に再現することができる。
【0014】
本発明の位置検出プログラムは、施設内に所在する被監視者の位置を通知する位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データと、記憶手段に格納される前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データに基づいて、被監視者の位置を表示手段に表示させる位置検出プログラムであって、コンピュータを、前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算する演算手段、前記補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成する回転手段、前記補正平面図データに、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する位置表示手段として機能させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の位置検出プログラムは、施設内に所在する被監視者の位置を通知する位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データと、記憶手段に格納される前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データに基づいて、被監視者の位置を表示手段に表示させる位置検出プログラムであって、コンピュータを、前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算する演算手段、前記補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させる回転手段、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する位置表示手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明の位置検出プログラムは、コンピュータ上で動作させることで、本発明の位置検出装置として機能させることができる。
【0017】
また、本発明の位置検出プログラムは、前記コンピュータを、更に、前記位置データに含まれる被監視者が所在する高さを示す高さ位置データと、前記記憶手段に格納された施設の各階ごとの見取図を示す平面図データに関連付けられた各階の高さを示す階高さデータとに基づいて、対応する階の見取図を示す平面図データを選択する高さ判定手段、前記選択された平面図データに基づいて補正平面図データを生成する回転手段として機能させるのが望ましい。
コンピュータに、被監視者がいる高さを示す高さ位置データと、各階の高さを示す階高さデータとに基づいて、記憶手段に格納される各階ごとの平面図データから、自動的に対応する階の平面図データを選択させることで、施設が2階以上ある場合でも対応することが可能となる。従って、被監視者が下階から上階、上階から下階へと移動しても、被監視者が所在する階の平面図データが表示されることで、監視者が被監視者を追従することができる。
【0018】
また、本発明の位置検出プログラムは、前記コンピュータを、更に、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域に、所定マークを重畳させるマーク付与手段として機能させるのが望ましい。
コンピュータに、監視者は救助者が確認した部屋または区画された領域、または作業者の安全が確保されている部屋または区画された領域に、目印として所定マークを重畳させることで、これらの場所に救助を必要とする人がいないこと、または作業員の安全が確保されていることをチェックすることができる。従って、チェック漏れを防止することができる。
【0019】
また、前記コンピュータを、更に、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域を塗りつぶす塗りつぶし手段として機能させるのが望ましい。
コンピュータに、確認が完了した部屋または領域に所定マークを重畳させる他に、塗りつぶすようにさせても同様の効果を得ることができる。
【0020】
更に、本発明の位置検出プログラムは、前記回転手段が、前記平面図データが紙図面の見取図をスキャナ装置により読み取られることで生成された電子データである場合に、前記スキャナ装置が紙媒体を読み取る際に発生した斜行角度を検出し、平面図データを回転させるときに、検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させるのが望ましい。
補正角度を演算して回転させる際に、斜行した状態の平面図データでは、監視者が表示画面で観察するときに微妙なずれが生じる。コンピュータに、検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させることで、表示画面に平面図を正確に再現することができる。
【0021】
また、本発明の施設図面データは、施設内に所在する被監視者の位置を示す位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データに基づいて、コンピュータに被監視者の位置を表示画面に表示させるための施設図面データであって、前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを備え、前記見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データは、前記コンピュータによる前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する処理に使用されることを特徴とする。
本発明の施設図面データは、コンピュータに測量座標系に対する見取図の傾きを補正角度として演算させるために、平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを設けているので、施設の正面が表示画面の下方に向くところが上側に向いたりして、見えにくい状態となってしまうことが防止できる。
【0022】
また、本発明の施設図面データは、施設内に所在する被監視者の位置を示す位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データに基づいて、コンピュータに被監視者の位置を表示画面に表示させるための施設図面データであって、前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを備え、前記見取図上の2点の経度および緯度を示す測量座標データは、前記コンピュータによる前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させ、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する処理に使用されることを特徴とする。
本発明の施設図面データは、コンピュータに測量座標系に対する見取図の傾きを補正角度として演算させるために、平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを設けているので、見取図の上下方向および左右方向を表示画面の上下方向および左右方向に一致させた状態で、表示させることでき、かつ被監視者の位置を示すマークも、回転した測量座標系に即して表示させることができる。
【0023】
更に、本発明の施設図面データは、前記施設の各階に対応する平面図データに対応付けられた各階の高さを示す階高さデータを備え、前記階高さデータは、前記コンピュータが受信した被監視者が所在する高さを示す高さ位置データに応じて前記各階に対応する平面図データが選択され、前記選択された平面図データを表示画面に出力する処理に使用されるものであるのが望ましい。
施設の各階に対応する平面図データに対応付けられた各階の高さを示す階高さデータを備えることで、被監視者がいる高さを示す高さ位置データと、各階の高さを示す階高さデータとに基づいて自動的に対応する階の平面図データを選択することができる。従って、施設が2階以上ある場合でも対応することが可能となる。これにより、被監視者が下階から上階、上階から下階へと移動しても、被監視者が所在する階の平面図データが表示されることで、監視者が被監視者を追従することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表示画面の上下方向および左右方向に一致した平面図を表示させることができるので、施設の外部から被監視者を観察する監視者は、的確に被監視者の位置を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る位置検出装置の一例である救助活動支援装置を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る救助活動支援システム全体の構成を示す図である。図2は、図1に示す救助活動支援システムに用いられる位置通信装置の構成を示すブロック図である。図3は、図1に示す救助活動支援システムに用いられる救助活動支援装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、救助活動支援システム1は、火災や災害などで、病院や介護施設などの要介護者や、ホテルに滞在する宿泊客などを消防隊員などの救助者が救助活動を行う際に用いられるものである。
救助活動支援システム1は、救助者Rが携帯する位置通信装置2と、救助者Rの位置を建物B内の見取図に重畳させて表示する救助活動支援装置3とを備えている。位置通信装置2と救助活動支援装置3とは、電気通信回線NWを介して通信可能に接続されている。
救助活動支援装置3は、消防本部H1や、地域の消防署H2に設置されたり、消防車(指令車も含む)Cで搬送され、火災現場で使用されたりするものである。監視者である指揮者が、消防本部H1や、地域の消防署H2、または現場に所在して、救助活動支援装置3を見ながら、被監視者である救助者Rの救助活動を支援する。
【0027】
位置通信装置2は、救助者Rの位置をGPS衛星を使用して救助活動支援装置3へ無線で通知するものである。位置通信装置2は、図2に示すように無線手段21と、GPS測位手段22と、報知手段23と、識別情報送信手段24とを備えている。位置通信装置2は、携帯電話が使用できる。
【0028】
無線手段21は、GPS測位手段22から入力した位置データを変調して無線信号としてアンテナ21aを介して救助活動支援装置3へ送信したり、救助活動支援装置3からの無線信号をアンテナ21aを介して受信して、復調することで報知データを生成して報知手段23へ出力したりする機能を備えている。GPS測位手段22は、GPS衛星を使用して三次元測位することで、地上の平面的な位置だけでなく高さ方向の位置も測定できるもので、経度を示す経度位置データおよび緯度を示す緯度位置データと、高度を示す高さ位置データとを位置データとして出力する機能を備えている。なお、実施の形態では、経度および緯度はWGS−84座標系を用いているが、施設内で救助者の位置が特定できれば他の座標系を使用してもよい。
【0029】
報知手段23は、救助活動支援装置3からの報知情報を救助者Rに通知するもので、音により通知する場合にはブザー、光により通知する場合にはランプ、文字情報により通知する場合には小型のLCD(Liquid Crystal Display)、または有機EL(Electro-Luminescence)などとすることができる。光や音または表示文字などで、建物Bの外にいる指揮者と通信することで、トランシーバなどでの会話による通信だけでなく、簡便な意志の疎通を図ることができる。
【0030】
識別情報送信手段24には、他の位置通信装置と識別可能な識別情報が格納されており、この識別情報を無線手段21を介して救助活動支援装置3へ送信する機能を備えている。
【0031】
救助活動支援装置3は、デスクトップタイプやノートブックタイプのパーソナルコンピュータが使用できる。電源の確保が容易でない現場での使用を考慮すると、救助活動支援装置3は無線通信機能を付加したノートブックタイプのパーソナルコンピュータが望ましい。このようなコンピュータに位置検出プログラムを動作させることで救助活動支援装置3として機能させることができる。
救助活動支援装置3は、図3に示すように無線手段31と、入力手段32と、表示手段33と、記憶手段34と、制御手段35とを備えている。
【0032】
無線手段31は、制御手段35から入力した送信データ(報知データ)を変調して無線信号としてアンテナ31aを介して位置通信装置2へ送信したり、位置通信装置2からの無線信号をアンテナ31aを介して受信し、復調することで受信データ(位置データ)を生成して制御手段35へ出力したりする通信手段としての機能を備えている。
【0033】
入力手段32は、キーボード、マウスとすることができ、入力されたデータは制御手段35へ出力される。表示手段33は、CRT(Cathode Ray Tube)や、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)などが使用でき、制御手段35から出力された表示データを表示する。
【0034】
記憶手段34は、大容量の情報を高速に読み書き可能な不揮発性のメモリであり、例えばハードディスク装置や、光ディスク装置やフラッシュメモリなどとすることができる。記憶手段34には、施設図面データが格納されている。この施設図面データは、建物の各階の見取図を示す平面図データと、この見取図上の3点の位置を示す図面の座標(図面座標データ)と、この3点の経度(経度座標データ)、緯度(緯度座標データ)、および各階の高さ(階高さデータ)を示す測量座標データとが互いに関連付けられて施設データとして格納されている他、見取図の縮尺を示す縮尺度データと、紙図面をスキャナ装置で読み取った際に発生する傾斜角度を示す斜行修正データとが格納されている。また、施設図面データは、建物をデジタルカメラで撮像した外観写真や、建物の周辺の地図画像が、建物の平面図データに関連付けられている。
【0035】
ここで、施設データについて、更に図4から図5に基づいて説明する。図4(A)〜同図(D)は、建物Bの各階を示す見取図である。図5は、建物Bと各見取図との高さに関する対応関係を示す図である。なお、図4および図5では、施設の一例である建物Bとして介護施設を例に図示している。
例えば、図1に示す建物Bが3階建で屋上がある場合には、平面図データとしては、図4(A)から同図(D)に示される建物Bの各階の見取図G1〜G4が準備される。この平面図データは、この建物Bを建設するときのCADデータをそのまま流用したり、消防本部にて管理されている建物Bの紙図面をスキャナ装置で読み込んでイメージデータとしたりすることができる。また、新たに見取図をCAD入力して平面図データとすることも可能である。
【0036】
紙図面をイメージデータとするときには、BMP(Bit MaP)ファイル,JPEG(Joint Photographic Experts Group)ファイル,TIFF(Tagged Image File Format)ファイル,GIF(Graphics Interchange Format)ファイル,PNG(Portable Network Graphics)ファイルなどの一般的な静止画ファイル形式とすることができる。しかし、管理する建物が増加することで平面図データとなるイメージデータが増大することを考慮すれば、イメージデータは圧縮処理されているファイル形式とすることが望ましい。
【0037】
そして、例えば、図4(A)に示す1階の見取図G1におけるポイントP11〜P13に対応する建物Bの位置の経度、緯度と、見取図G1が対応する1階の高さをそれぞれ測量して測量座標データ(経度座標データ,緯度座標データ,階高さデータ)とし、この測量座標データを1階の見取図G1のポイントP11〜P13が位置する図面座標データに関連付けて施設データとする。この関連付けは、見取図G1となるイメージデータをCADソフトにて所定レイヤで読み込んだ後に、他のレイヤで見取図G1のポイントP11〜P13に対応する位置の測量座標データを入力することでできる。つまり、この2つのレイヤを重畳させることで、これらが関連付けられた施設データとすることができる。また、見取図G1となる平面図データがCADデータである場合でも同様に、CADデータを所定レイヤで読み込み、測量座標データが入力された他のレイヤと重畳させることで、これらが関連付けられた施設データとすることができる。
【0038】
ポイントP11,P12は左右方向検知用ポイントであり、ポイントP13は上下方向検知用ポイントである。このような施設データが記憶手段34には格納されている。なお、測定のポイントについては、図4(B)から同図(D)に示す2階および3階と、屋上のそれぞれの見取図G2〜G4においても、図4(A)に示す1階の場合と同様に、ポイントP21〜P43が設定されている。
【0039】
このポイントP11,P12は、見取図G1の左右方向と平行な仮想線上に位置している。図4(A)に示す1階の見取図G1では、事務所の出入り口側の外壁面を見取図G1の左右方向と平行な仮想線と見なすことができるので、事務所の出入り口側の外壁面の両端がポイントP11,P12として指定されている。同様に、図4(B)に示す2階の見取図G2では娯楽室からリハビリ室までの外壁面を見取図G2の左右方向と平行な仮想線と見なすことができるので、その外壁面の両端がポイントP21,P22として指定されている。
【0040】
図3に戻って、制御手段35は、救助活動支援装置3全体を統括制御するものであり、高さ判定手段35aと、演算手段35bと、回転手段35cと、塗りつぶし手段35dと、位置表示手段35eと、マーク付与手段35fと、斜行角度検出手段35gと、施設データ設定手段35hとを備えている。また、制御手段35は、入力手段32より入力された指示に基づいて報知情報を生成し、無線手段31を介して位置通信装置2へ送信する機能を備えている。
【0041】
高さ判定手段35aは、位置通信装置2からの高さ位置データと、各階の平面図データに関連付けられた測量座標データの高さとを比較し、救助者が何階に所在しているかを判定し、各階の平面図データの中から対応する階の平面図データを選択する機能を備えている。
【0042】
演算手段35bは、例えば図4(A)に示す1階であればポイントP11およびポイントP12を結ぶ仮想直線の傾きから表示画面の上下方向または左右方向に対する見取図の傾きを補正角度として演算する機能を備えている。
【0043】
回転手段35cは、演算手段35bにより演算された補正角度に基づいて、平面図データを回転させた補正平面図データを生成する機能を備えている。
【0044】
塗りつぶし手段35dは、平面図データで示される各部屋または区画された領域を、他の部屋とは区別可能な色で塗りつぶす機能を備えている。
【0045】
位置表示手段35eは、回転手段35cにより生成された補正平面図データに対して、位置通信装置2からの位置データに基づいて救助者の位置を示すマークを重畳させて表示手段33へ出力する機能を備えている。位置表示手段35eは、このマークを表示するときには位置通信装置2から送信される識別情報に基づいて識別可能に表示する。ここで識別可能とは、マークの形、色、大きさ、または文字または記号などを、位置通信装置2ごとに異ならせて表示することを示す。従って、救助者Rが位置通信装置2を装着するときに救助者Rと識別情報との対応を取っていれば、複数の救助者Rが同時にマークとして表示手段33に表示されても、それぞれのマークと救助者Rと対応付けることができるので、容易に救助者Rを特定することが可能である。
【0046】
マーク付与手段35fは、平面図データで示される各部屋または区画された領域に、他の部屋と区別可能とするために、平面図データにマークを重畳させる機能を備えている。本実施の形態では、○内に「確」を付与したマークを重畳させている。
【0047】
斜行角度検出手段35gは、紙図面を読み取る際の斜行角度を検出し、平面図データに関連付けて記憶手段34に格納する機能を備えている。
施設データ設定手段35hは、記憶手段34に格納された平面図データを読みだし、平面図データ上の任意の3点に、実際に位置する経度を示す経度座標データおよび緯度を示す緯度座標データと、平面図データの階の高さを示す階高さデータとを関連付けて記憶手段34に施設データとして格納する機能を備えている。
【0048】
読取制御手段35jは、スキャナ装置4を制御して、紙図面を読み込むことで生成された平面図データを受信して記憶手段34に格納する機能を備えている。コンピュータ上でTWINドライバを動作させることで読取制御手段35jとして機能させることができる。
【0049】
救助活動支援装置3は、図示しない外部接続インタフェース、例えばUSB(Universal Serial Bus)ポートに、平面図が記載された紙図面を読み取り平面図データを生成するスキャナ装置4を接続することができる。スキャナ装置4により読み取られた平面図データは、記憶手段34に格納される。スキャナ装置4は自動給紙機構付きのイメージリーダ装置とすることができるが、フラットベッドタイプのイメージリーダ装置でもよい。スキャナ装置4は自動給紙機構付きのイメージリーダ装置としたときには複数枚の紙図面を自動的に順次読み取ることができるので、煩雑な読み取り作業が軽減される。
【0050】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る救助活動支援システムの使用状態および動作について、更に図6から図14を参照しながら説明する。図6はスキャナ装置で紙図面を読み込んだときに発生する斜行を説明するための図、図7は平面図データに測量座標データを関連付けるための操作画面の一例を示す図、図8(A)および同図(B)は見取図上のポイントの位置を検査する方法を説明するための図、図9はサムネイル画面の一例を示す図、図10は傾斜した状態の1階の見取図、図11は補正された1階の見取図、図12は区画された領域が塗りつぶされた状態の見取図、図13はマークが付与された状態の見取図、図14は補正された2階の見取図である。
【0051】
まず、事前の準備として記憶手段34に施設図面データのデータベースを構築する。このデータベースは、救助活動支援装置3として機能するコンピュータに構築してもよいし、他のコンピュータで施設図面データのデータベースを構築した後に、救助活動支援装置3として機能させるコンピュータに移入してもよい。
【0052】
データベースの構築作業としては、平面図データを紙図面の見取図から読み込む場合とCADデータを利用する場合とがある。
平面図データを紙図面から読み込む場合には、まず読取制御手段35jを起動して、紙図面である見取図をスキャナ装置4にて読み取り、記憶手段34に格納する。
【0053】
紙図面を自動給紙機構付きのスキャナ装置4で読み取る際には、図6に示すように紙図面が斜行することがある。つまり、紙図面がスキャナ装置4の自動給紙機構によりイメージ読み取り機構に搬送されるときに、進行方法に対して斜めに傾いた状態で読み込まれることで、平面図データとして生成されたイメージ画像が表示画面の垂直方向および水平方向に対して傾斜した状態となってしまう。
【0054】
スキャナ装置4側で斜行の補正を行うものもあるが、斜行補正機能がないスキャナ装置4である場合には、斜行角度検出手段35gが、読み込まれた平面図データの前側の端辺と進行方向と直交する直線とのなす角度α、若しくは平面図データの側辺と進行方向とのなす角度βを斜行角度φとして検出し、この角度を斜行修正データとして平面図データに関連付けて記憶手段34に格納する。
【0055】
この斜行角度φは、図6に示すように傾いていればプラス角度とし、反対の方向に傾いていればマイナス角度とすることができる。
平面図データを格納するときに予め斜行を修正してから格納することもできるが、本実施の形態では、平面図データが斜行していても、そのままの状態でこの平面図データと共に斜行修正データが関連付けられて格納されている。
【0056】
平面図データがCADで作成された電子データや紙図面の見取図をスキャナ装置で読み取ることで生成された電子データに対して、図7に示す操作画面にて、予め測量した建物の測量点と、この測量点に対応する平面図データ上の点とを関連付ける作業を行う。従って、図7に示す操作画面での関連付け作業の前に、例えば見取図G1ならば予めポイントP11〜P13を決定しておき、現地での測量および見取図G1上でのポイント設定(座標プロット)は完了しておく必要がある。
但し、この見取図G1の平面図データが紙図面をスキャナ装置4で読み取ったものであり、その際に斜行した状態で読み込まれたものであれば、見取図G1上でのポイント設定は見取図G1が斜行した状態で設定されている。
【0057】
図7に示す操作画面OPは、施設データ設定手段35hにより表示される。操作画面OPの上段には、建物を示す名称を入力するための名称入力欄R1が設けられている。操作画面OPの中段には、階ごとにポイント設定された点(A点〜C点)の測量座標データが表示される測量座標表示領域A1が設けられている。操作画面OPの上段右上には、図面データであるファイルを読み込むための「ファイルを読込み」ボタンB1が設けられている。
【0058】
操作画面OPの測量座標表示領域A1の左側下方には、「階の座標プロット」に関して、「相似形チェック」ボタンB2と、「相似形チェック」ボタンB2の右側に位置する「座標プロット」ボタンB3と、「相似形チェック」ボタンB2および「座標プロット」ボタンB3の下方に位置するXY測量座標表示領域A2とが設けられている。
XY測量座標表示領域A2の下側にはZ測量座標表示領域A3が設けられている。
操作画面OPの下段中央には、測量(WGS−84)の測量座標データを入力する測量データ入力領域A4が設けられている。この測量データ入力領域A4には、見取図の縮尺を指定する縮尺設定欄R2と、入力するポイントを指定するプルダウンメニューであるポイント指定欄R3と、ポイントに関して測量による経度を入力するX測量座標入力欄R4と、緯度を入力するY測量座標入力欄R5と、階高さ(地盤面の高さを含む)を入力するZ測量座標入力欄R6とが設けられている。また、測量データ入力領域A4には、見取図上にポイントを指定するポイント指定ボタンB4と、入力した測量値をXY測量座標表示領域A2とZ測量座標表示領域A3とに表示させる「移行」ボタンB5とが設けられている。
【0059】
このように構成された操作画面OPの操作方法を説明する。
例えば、紙図面を読み込んで生成された平面図データやCADでの作図による平面図データの場合には、1階の見取図G1のファイルを「ファイルを読み込み」ボタンB1を押下することで、記憶手段34から読み込まれ、表示手段33に表示される。このとき、1階の見取図G1を別ウィンドウで表示しておく。
次に、縮尺設定欄R2により1階の見取図G1の縮尺を指定する。ここでは1:500を指定している。次に、ポイント指定ボタンB4を押下して別ウィンドウで表示している1階の見取図G1のポイントP11を指定することで、見取図G1上のポイントP11をA点として、このA点に対応する座標(図面座標データ)を取り込む。
次に、ポイントP11に関して測量した測量値をそれぞれ入力する。この測量値は、例えば、GPS測量機を使用して測量された緯度、経度および高さをそれぞれ入力する。
具体的には、ポイントP11の経度をX測量座標入力欄R4へ入力し、緯度をY測量座標入力欄R5へ入力する。次に、階高さをZ測量座標入力欄R6へ入力する。
これらを入力すると、「移行」ボタンB5を押下することで、X測量座標入力欄R4、Y測量座標入力欄R5、Z測量座標入力欄R6に入力された測量値がXY測量座標表示領域A2とZ測量座標表示領域A3へ移行することで表示される。
同様に、ポイントP12,P13についても平面図G1上にて指定した後、B点およびC点に対応させて測量値を入力する。
次に、「相似形チェック」ボタンB2を押下して、指定された図面座標データと入力された測量値である測量座標データとが正しく入力されているか否かの検査を行う。ここで、測量値の検査について、図8(A)および同図(B)に基づいて説明する。
【0060】
図8(A)に示すように、「相似形チェック」ボタンB2を押下することで、見取図G1のポイントP11〜P13に対応させて入力した測量座標データによってできる仮想三角形が、ポイントP11〜P13に対応する図面座標データのそれぞれを結ぶことでできる仮想三角形と、相似か否かが判定される。
その結果、図8(B)に示すように、相似でない場合には、施設データ設定手段35hは、ポイントP11〜P13のそれぞれの間の長さ(距離)を、見取図G1の縮尺を示す縮尺度データに基づいて検査する。つまり、図面座標データに基づいて算出したポイントP11,P12の間の長さと縮尺度データから実際の距離を算出し、その距離が、測量座標データに基づいて算出したポイントP11,P12の間の距離と一致しているか否かを検査する。同様に、ポイントP11,P13の間、ポイントP12,P13の間の距離を算出する。そうすることで、図8(B)の例では、ポイントP11,P12の間は同じであるが、ポイントP11,P13の間、ポイントP12,P13の間が異なることがわかる。従って、ポイントP13の位置が正しくないということが判定できる。
【0061】
しかし、ポイントP13の位置が正しくないということがわかっても、例えば、見取図G1を作成した後に、実際の工事で形状変更があった場合や、単純に緯度・経度の入力ミスなど図面座標データが位置ずれしているか、測量座標データが位置ずれしているかは判別ができない。従って、施設データ設定手段35hは、ポイントP13が正しくないことを操作者に表示手段33にメッセージとして報知することだけで、後の判断を操作者に委ねている。
【0062】
測量値のチェックが完了すると、「座標プロット」ボタンB3を押下する。この「座標プロット」ボタンB3の押下により施設データ設定手段35hは、平面図データのポイントP11〜P13の位置を示す図面座標データに、経度を経度座標データ、緯度を緯度座標データを関連付けると共に、平面図データに、階高さを階高さデータとした測量座標データと、縮尺を示す縮尺データとを関連付けて記憶手段34に格納する。そして、それぞれのポイントP11〜P13に関する値を、測量座標表示領域A1に表示する。
この手順を順次、1階から屋上までの見取図G1〜G4全部に実施することで、建物Bに関する測量座標データの入力(座標プロット)が完了する。
【0063】
このようにして記憶手段34に施設図面データのデータベースが構築されると、救助活動支援装置3は救助活動に使用することができる。
火災が発生した建物Bに到着した指揮者は、救助活動支援装置3を操作して図9に示すサムネイル画面を表示させる。制御手段35は、指揮者の操作により記憶手段34から読み込んだ見取図G1〜G4と建物Bの外観写真と、地図画像などを表示手段33にサムネイル表示する。
【0064】
指揮者がサムネイル画面から1階の見取図G1を入力手段32により選択すると、制御手段35は記憶手段34から見取図G1を示す平面図データを読み込む。そして、制御手段35の演算手段35bにより見取図G1を示す平面図データの傾きを演算する。
【0065】
例えば、見取図G1をポイントP11およびポイントP12の経度座標データおよび緯度座標データに基づいて表示手段33の表示画面にそのまま表示したとする。この場合に、表示画面の上下方向が経線に沿った経線方向(緯度が増減する緯度方向)、左右方向が緯線に沿った緯線方向(経度が増減する経度方向)とした直交する座標軸(測量座標系の座標軸)を基準とするとノースアップ(北が上方を向いた)画面となるため、見取図G1は実際の建築状況に即して表示されるので、建物Bが北に対して傾斜した状態で建設されていれば見取図G1が傾斜した状態で表示されることになる。そうなると建物Bの表示や文字表示が傾斜した状態となるだけでなく、矩形状の見取図G1全体の縮小度合いも大きくする必要があるため、更に見えにくい状態である。
【0066】
測量座標データ(経度座標データ,緯度座標データ)が示すポイントP11,P12を結ぶ仮想直線L1(図10においては壁面W1と同じ。)と、ポイントP11を通過する測量座標系の経度方向(図10においては一点鎖線の仮想直線L2で示す。)とのなす角を補正角度θとして演算手段35bにより演算することで、見取図G1の傾きを算出することができる。
【0067】
この演算は、見取図G1上のポイントP11,P12を結ぶ仮想直線L2が見取図G1の左右方向と平行な仮想線なので、以下の式(1)で算出することができる。
補正角度θ=tan-1[(Y’−Y)/(X’−X)]・・・(1)
但し、ポイントP11の経度をX、緯度をYとし、ポイントP12の経度をX’、緯度をY’とする。
【0068】
そして、この補正角度θに基づいて回転手段35cが見取図G1を示す平面図データをポイントP11,P12の図面座標データに基づいて回転させることで、補正された見取図G1である補正平面図データを生成する。このとき、補正角度θが正の値であるときには時計回り、負の値のときは反時計回りに回転させる。
【0069】
また、回転手段35cは、平面図データを回転させるときに、補正角度θと斜行角度φとを加算した角度で補正平面図データを生成する。そうすることで、斜行した状態で読み取られた平面図データを補正することができる。このとき、斜行角度φがマイナス角度であれば、補正角度θと加算することで、回転角度は補正角度θより少なくなる。
補正平面図データを生成するときに、平面図データを回転させるだけでなく、表示サイズも表示手段33の画面サイズ(解像度)に応じて拡大縮小すると、より一層見やすい見取図とすることができる。
【0070】
次に、無線手段31を介して位置通信装置2から受信した位置データのうち経度位置データおよび緯度位置データに基づいて位置表示手段35eが、図11に示すように補正された見取図G1上に、建物B内に突入した救助者の位置を示すマークM1,M2を重畳させる。このマークM1,M2は、位置通信装置2の識別情報送信手段24からの識別情報に応じて表示される。救助活動を行う際に消防隊では、救助者二人一組として行動し、二組を1チームとして編成している。そして、中規模の消防隊では2チーム、大規模の消防隊ではそれ以上のチームが編成されている。従って、火災の規模によって突入する救助者の数も異なるが、少なくとも2名の救助者が突入することになるので、救助者が建物B内に突入したときには、それぞれの救助者の位置を指揮者が把握できるのが望ましい。
【0071】
図11に示す見取図G1では、2名の救助者が突入した場合の例である。この場合では、位置通信装置2のそれぞれに割り当てられた識別情報と救助者との対応を予め取っておくことで、マークM1として表示された星形(☆)と,マークM2として表示された二重丸(◎)とが表示手段33に表示される。従って、外からは判りにくい建物B内での二人の救助者の位置を容易に判別することが可能である。
【0072】
このように補正された見取図G1として表示される補正平面図データを生成して表示することで、表示画面の上下方向および左右方向に一致した平面図を表示させることができる。従って、迅速に建物B内の状況を把握することができる。また、矩形状の見取図G1全体を矩形状の表示画面全体に無駄なく表示させることができるので、縮小度合いを最小限にすることができる。従って、救助活動支援装置3は、建物B外部から救助活動を支援する指揮者が的確に指示することが可能である。
【0073】
次に、救助者が1階の事務所に誰もいないことを確認する旨の連絡が、例えば救助者が携帯するトランシーバなどで指揮者に通知されると、指揮者は入力手段32を操作して、1階の区画された事務所の塗りつぶしを指示する。この指示により塗りつぶし手段35dは、図12に示すように壁Wや扉Dなどで区画された領域Sを、他の部屋とは区別可能な色で塗りつぶす。例えば、見取図G1が白地に壁や文字などが黒で表示されていれば、確認済みを示す色としては黄色などで塗りつぶすことで他の部屋と区別することが可能である。
【0074】
この塗りつぶしは、平面図データがCADデータであれば、壁や扉の各線データにより区画された領域を範囲とし、平面図データがスキャナ装置で読み込んだイメージデータであれば濃淡の差から壁または扉を認識することで区画された領域を判定した範囲とすることができる。
【0075】
また、領域Sを塗りつぶす以外に、誰もいないことを見取図内に表すために、マークを領域Sに付与することも可能である。本実施の形態1では、指揮者が入力手段32を操作して、1階の事務所を指定してマークの付与を指示する。この指定は、マウスで指定してもよいし、キーボードのカーソルキーで指定するようにしてもよい。この指示によりマーク付与手段35fは、図13に示すように領域Sに、○内に「確」を付与したマークM3を重畳させている。このように領域SにマークM3を付与することで、塗りつぶしたことと同様の効果を得られるだけでなく、紙図面の見取図から平面図データを生成した場合など、領域Sの範囲を示すデータがなく領域Sの範囲を設定することが困難なときでも、確認した旨の印を付与することができる。
【0076】
塗りつぶし手段35dによる領域Sの塗りつぶしか、マーク付与手段35fによるマークM3の付与かは、設定によりいずれかのみが使用できるようにしておいてもよいし、監視者がいずれか一方を操作により指示して選択するようにしてもよい。
また、塗りつぶし手段35dにより塗りつぶしが行われたことや、またはマーク付与手段35fによりマークが付与されたことは、塗りつぶし手段35dまたはマーク付与手段35fにより記憶手段34に、確認した旨の履歴(ログ)が格納される。履歴としては、監視者名(確認者名)、付与責任者、確認時間、災害物件名等とすることができる。
【0077】
救助者が階段Kを通じて2階に上がった場合には、位置通信装置2からの位置データのうち高さ位置データが2階の見取図G2と関連付けられた測量座標データの階高さデータを超える。高さ判定手段35aが救助者が所在する高さが2階位置となったことを判定すると、演算手段35bに対して2階の見取図G2に対して傾斜の度合いを演算するように指示する。以下、1階の見取図G1を表示したときと同様に2階の見取図G2の補正平面図データを生成して図14に示すように表示手段33に表示する。そうすることで、2階に救助者が移動しても的確に救助活動を行うことができる。もし、二人の救助者が上下階に分かれたときには、一方の救助者が移動することで自動的に切り替わった2階の見取図G2の代わりに、図9に示すサムネイル画面を呼び出し、他方の救助者がいる階の見取図を選択することで、監視したい救助者がいる階の位置を迅速に把握することができる。
【0078】
建物B内での救助活動では、救助者が同じ階を移動する水平的な移動だけでなく、上階へ移動したり、下階へ移動したりする垂直方向での移動が必要である。このような場合に、建物Bの表示と共に救助者の位置を表示画面に表示しようとすると、三次元の立体図面データが利用される。例えば、特許文献1(特開2007−11617号公報)に記載の防止システムでは、3Dスキャナを用いて取得された構造物の三次元画像データを含む基礎データに基づいて、コンピュータが画像データを再現する画像作成用のソフトウェア(プログラム)を備えており、三次元画像データをディスプレイ上に再現できる。再現される画像は、任意に選択でき、例えば、建物全体、任意の高さまたは任意の高さ範囲(例えば、地表面から5〜8mの高さの範囲)の建物部分を上、下、横、斜めの方向から見た画像を再現したり、特定の空間領域(特定の部屋、特定階の廊下)だけを指定して拡大し、その空間領域を任意の方向(角度)から表示したりすることもできる。更に、ディスプレイに表示される構造物又は構造物部分は、その構造物の座標系(X軸,Y軸,Z軸)を回転又は移動することによって、任意の方向に回転または移動できる。そして、画像データは座標情報の他に色情報と照度情報を有するため、ディスプレイに再現された画像は、デジタルカメラで撮影した写真画像と同様に高精細で且つリアルなものである。
このように三次元の立体図面を表示するような装置は、高機能であり、且つ処理速度も相当高いものが要求される。
【0079】
しかし、監視者が三次元の立体図面を利用して被監視者の位置を認識しようとすると、表示画面には奥側と手前側とで構造物を表現する線が重なり合ってしまい認識しにくい。この重なり合いを回避するためは、壁や天井を面として着色するなどの表示処理が必要なので、更なる画像処理が必要となるだけでなく、壁の向こう側に所在する救助者(被監視者)が認識できなくなってしまうという不都合が生じる。従って、位置検出装置としては、指揮者(監視者)が複数階ある建物の中に所在する被監視者の位置を的確に把握でき、且つ高い処理能力を有していなくても遅滞なく表示できるのが望ましい。
【0080】
本発明の実施の形態1に係る位置検出装置の一例である救助活動支援装置は、各階ごとの見取図を平面図データとして格納されると共に、この平面図データに階高さデータが関連付けられて格納される記憶手段34と、被監視者である救助者Rがいる高さを示す高さ位置データと、各階の高さを示す階高さデータとに基づいて自動的に対応する階の見取図である平面図データを選択する高さ判定手段35aと、選択された平面図データに位置通信装置2からの位置データに基づいて救助者Rの位置を示すマークM1,M2を重畳させて表示手段33へ出力する位置表示手段35eとを備えている。
【0081】
この構成により、建物が2階以上ある場合でも監視者は被監視者の位置を迅速に把握することが可能である。平面図データは、二次元の平面的なデータなのでデータ容量は三次元の立体図面より少なくてすむ。従って、表示に要する処理能力が高くなくてもよい。また、監視者である指揮者は、見取図内で救助者Rを示すマークM1,M2をすぐ見つけることができる。
【0082】
各階の平面図データを擬似的な三次元立体構成とすることにより、平面図データの階高さと救助者の高さ位置とに基づいて高さ判定手段35aが救助者の高さがどの階に位置するかを判定することができるので、自動的に救助者が所在する階の見取図を選択的に表示させることができる。従って、本実施の形態1に係る救助活動支援システム1は、直感的に、かつ的確に救助者の位置を確認することができる。
【0083】
以上のように、本実施の形態1に係る救助活動支援装置3によれば、施設データとして建物の見取図を示す平面図データを使用して指揮者に見やすい状態で表示することができる。特に、施設データの基礎となる平面図データは、CADで作図された図面データはもとより、建物の紙図面をスキャナ装置で読み込んでイメージデータを採用することができるので活用範囲が広い。それは、消防本部では、地域の消防署や他の関係機関との情報の共有化や迅速な救助活動を実施するために、要介護者が所在する施設や学校などの教育機関に、建物のCADデータの提供を要請している。しかし、新たに建設されたものならCADデータの提供も可能であるが、以前に建設されたものでは紙図面で提供されているのが実体である。つまり、ほとんどが電子化されていない。このような状態でも、本発明の救助活動支援装置は、紙図面で提供される見取図をスキャナ装置で読み込むことで生成されるイメージデータを平面図データとし、この平面図データに基づいて救助活動を支援することにより、地域の消防活動に貢献することができる。
また、本実施の形態1では、図10に示す見取図G1の傾きとして表示画面の左右方向に対する補正角度θを算出していたが、例えば、ポイントP13をポイントP11の上下方向に平行な仮想直線上に位置されることで、見取図G1の上下方向に対する傾きを算出するようにしてもよい。
【0084】
本実施の形態1では、救助活動支援装置3内の記憶手段34に、介護施設の施設図面データが格納されている。この施設図面データとして格納される平面図データのそれぞれは二次元の図面データであるので、三次元立体図面のデータよりデータ量が少ない。従って、転送時間が短時間で済むので、消防本部H1や消防署H2に設置されたコンピュータの記憶手段に施設図面データを格納しておき、救助活動支援装置3を搭載した消防車Cが出動して移動している最中に、火災現場となった建物に関する施設図面データを、電気通信回線NWを介して消防本部H1または消防署H2に設置されたコンピュータから送信するようにしてもよい。
また、二次元の図面データである平面図データはデータ容量が少ないので、消防本部H1や消防署H2以外のその他の組織にも、施設図面データを転送しておくことで、大規模な災害に対して協働作業による包括的な救助活動を行うことができる。
例えば、三次元立体図面データでは、データ容量が大きく、紙図面に印刷しても、奥側と手前側とで構造物を表現する線が重なり合ってしまったり、この重なり合いを回避するためは、壁や天井を面として着色すると、壁の向こう側の部屋の状態が分からなくってしまったりする。二次元の図面データであれば、画面で見ても紙図面にしても、容易に施設内の様子を把握することができる。
なお、本実施の形態1に係る救助活動支援システム1では、位置通信装置2として携帯電話を使用しているが、建物内でのGPSによる測位は、衛星からのGPS信号が大幅に減衰してしまうため良好に受信できないおそれがある。その場合には、AGPS(Assisted GPS)を使用することで、より精度よく救助者Rの位置を特定することが可能である。
【0085】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る位置検出システムを、図15および図16に基づいて説明する。図15(A)〜同図(F)は、本実施の形態2に係る位置検出システムの位置検出装置に用いられる施設図面データの一例を示す工場の1階から6階の見取図である。図16は、傾斜した状態の1階の見取図である。
【0086】
本発明の実施の形態2に係る位置検出システムでは、施設図面データとして、図15(A)〜同図(F)に示すように建物の例として工場の図面を使用することで、実施の形態1と同様に救助活動支援システム1として機能させる以外に、災害発生時や事故発生時に、監視者となる工場管理者が、被監視者となる従業員が安全な場所にいるか、または避難したかを確認するための安全管理システムとして機能するものである。また、位置検出システムは、監視範囲が広い工場の見取図を使用することで、平時においても、工場管理者が、広い工場内で従業員の所在を確認するためのものとしても使用することができる。
【0087】
施設図面データは、図16に示される工場の見取図で示される平面図データに、少なくとも2点、本実施の形態2では図面座標データで示される3点(ポイントP51〜P53)の経度および緯度と、それぞれの階の高さとを示す測量座標データが関連付けられた施設データを備えている。
【0088】
外形が平面視矩形状の工場の左右方向の2つの角部に位置するポイントP51とポイントP52とを結ぶ仮想直線(図示せず)は見取図上で左右方向と一致している。また、上下方向の2つの角部に位置するポイントP52とポイントP53とを結ぶ仮想直線(図示せず)は見取図上で上下方向と一致している。従って、ポイントP51およびポイントP52、またはポイントP52およびポイントP53の測量座標データ(経度座標データ,緯度座標データ)と式(1)とに基づいて演算手段35bにより補正角度を算出することができる。
【0089】
演算手段35bにより補正角度が算出されると、回転手段35cによりこの補正角度に基づいて平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、従業員の位置を示すマークを、従業員に携行させた位置通信装置2からの位置データに基づいて重畳させて表示手段33へ出力させる。
【0090】
このように、施設図面データを実施の形態1にて示した介護施設とする以外に、工場などの施設の見取図などを使用することで、救助活動支援装置3(図3参照)を安全管理などを目的とした位置検出装置として機能させることできるので、工場管理者が従業員の位置を直感的に、かつ的確に確認することができる。
【0091】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る位置検出システムを、図17に基づいて説明する。図17は、本実施の形態3に係る救助活動支援装置を示す図である。なお、図17においては同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0092】
本実施の形態3に係る救助活動支援システム1xは、位置通信装置20として、救助者Rが携行するICタグ2xと、所定範囲ごとに設置された無線信号受信装置2yと、それぞれの無線信号受信装置2yからの救助者Rの位置を示すデータを救助活動支援装置3へ送信する位置送信装置2zとを備えている。
【0093】
ICタグ2xは、電池を内蔵したアクティブ型のRFID(Radio Frequency IDentification)とすることができる。ICタグ2xは、無線信号受信装置2yと数十mの通信可能な出力を備えている。
【0094】
無線信号受信装置2yは、ICタグ2xの位置を特定可能な範囲ごとに設置されている。例えば、無線信号受信装置2yは、各階の部屋ごと、広いホールや工場であればICタグ2xからの無線信号が受信可能な範囲ごとに設置されることで、救助者Rが建物B内のどこにいてもICタグ2xからの無線信号を受信することができる。無線信号受信装置2yは、救助者Rが携行するICタグ2xからの識別情報を含む無線信号を受信することで、救助者RのICタグ2xが同じ部屋内にいることや、ICタグ2xからの無線信号が受信可能な範囲内にいることを、位置送信装置2zへ送信する。
【0095】
位置送信装置2zは、建物B内に設置されたそれぞれの無線信号受信装置2yと通信可能に接続されていると共に、救助活動支援装置3と電気通信回線NW(図1参照)を介して通信可能に接続されている。位置送信装置2zは、ICタグ2xを検出した無線信号受信装置2yの位置に基づいて予め設定された位置データ(経度位置データ,緯度位置データ,高さ位置データ)をICタグ2xの識別情報と共に、救助活動支援装置3へ送信する。
【0096】
実施の形態1では救助者Rが位置通信装置2を携行して電気通信回線NWに対して直接通信するようにしていたが、屋内でのGPSによる測位は、衛星からのGPS信号が大幅に減衰してしまうため良好に受信できないおそれがある。本実施の形態3に係る救助活動支援システム1xでは、救助者Rが携行しているICタグ2xからの無線信号を、部屋ごとに設置された無線信号受信装置2yが受信することで救助者Rの位置を特定しているので、通信状態が阻害されることがない。
【0097】
本実施の形態3では、位置送信装置2zがICタグ2xを検出する無線信号受信装置2yごとに予め設定されている位置データを、救助活動支援装置3へ送信しているので、検出可能な精度としては部屋単位、または半径数十mの範囲ごとである。従って、無線信号受信装置2yおよび位置送信装置2zは簡易な構成で実現できる。しかし、救助者Rの位置を高い精度で検出したい場合には、無線信号受信装置2yとしてICタグ2xまでの距離と基準方向からの角度を検出する機能を設けることで、部屋内のどの位置に救助者Rが所在しているかが判別でき、位置送信装置2zによりその位置に対応させて位置データを救助活動支援装置3へ送信するようにしてもよい。
【0098】
また、本実施の形態3では、アクティブ型のICタグ2xとしているが、パッシブ型でも無線信号受信装置2yにより検出可能であれば使用することができる。更に、救助者Rの位置が検出できれば、他の屋内測位システムでも採用することができる。
なお、本実施の形態3に係る救助活動支援システム1xは、実施の形態2と同様に、従業員の安全管理を目的とした安全管理システムとして機能させることも可能である。救助活動支援装置3を、安全管理を目的とした装置として機能させる場合には、位置送信装置2zと、救助活動支援装置3との間は、無線信号による通信でなくてもよいので、無線手段31の代わりに有線による通信手段を備えるようにしてもよい。
【0099】
このように、本実施の形態3に係る救助活動支援システム1xでは、救助者Rの位置を特定するためにICタグ2xを救助者Rに携帯させ、そしてICタグ2xの位置を無線信号受信装置2yおよび位置送信装置2zで送信することにより、実施の形態1に係る救助活動支援システム1と同様に、直感的に、かつ的確に救助者Rの位置を確認することができる。
【0100】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る救助活動支援装置を、図面に基づいて説明する。図18は、本発明の実施の形態4に係る救助活動支援装置の構成を示すブロック図である。図19(A)および同図(B)は、測量座標系の回転を説明するための図である。なお、図18については、図3と同じ構成のものは同符号を付している。
【0101】
本実施の形態4に係る救助活動支援装置は、平面図データの座標系に合わせて測量座標系の座標軸を回転させることを特徴とするものである。
【0102】
建物は、緯度・経度により表される測量座標系の北方向と、建物を表す見取図の上方向とが偶然同じ場合を除き、一致するように設計されていないので、例えば図10に示すように、緯度・経度を示す軸方向に対して斜めの状態となっていることが多い。しかし、この建物を示す見取図G1〜G4(図4参照)などは、矩形状の領域に対して収まりよくするために建物の配置を、図面上の上下方向および左右方向に合わせている。これは、手書きで紙図面を作成する場合でも、CADで図面を作成する場合でも同様である。そして、CADで図面を作成したときの平面図データや、紙図面をスキャナ装置で読み込んで生成された平面図データを表示するときには、この矩形状の領域の一の角部、例えば左下を平面図データの座標系の原点とし、左右方向をX軸、上下方向をY軸として表示される。
【0103】
具体的には、図19(A)に示すように、建物Bの1階の見取図G1を示す平面図データを、表示手段33の表示画面に表示するときに、この平面図データの座標系の座標軸(X軸,Y軸)を基準に表示すると、見取図G1は正しく表示される。
【0104】
しかし、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点として割り当てたポイントP11,P12の緯度と経度に基づいた測量座標系を、表示画面の上下方向および左右方向、つまり図面データの座標系と一致させてしまうと、被監視者を示すマークを表示された平面図データに重畳させて表示するときに、被監視者の位置が、見取図G1上と実際の建物B内の位置とは異なる位置に表示されるおそれがある。
【0105】
図18に示す救助活動支援装置10では、演算手段35bが補正角度を演算し、この補正角度に基づいて回転手段35cxが平面図データの座標系の座標軸を基準に、測量座標系の座標軸を回転させる。
【0106】
つまり、測量座標データに基づいてポイントP11,P12を結ぶ仮想直線L3の測量座標系における経度方向に対する傾きを補正角度θとして演算する。この補正角度θは、前述した式(1)により算出することができる。
次に、回転手段35cxが、この補正角度θに基づいて平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸(経度方向および緯度方向)を回転させる。
そして、位置表示手段35eが、被監視者の位置を示すマークM4を、位置通信装置2(図1参照)からの位置データに基づいて平面図データに重畳させて表示手段33の表示画面に出力する。
【0107】
そうすることで、見取図G1の上下方向および左右方向を表示画面の上下方向および左右方向に一致させた状態で、見取図G1を表示させることでき、かつ被監視者の位置を示すマークM4も、回転した測量座標系に即して表示させることができる。従って、監視者が被監視者の位置を、正確に、かつ迅速に把握することができるので、建物の外部から被監視者を観察する監視者は、的確に被監視者の位置を認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、火災や災害などで容易に施設内部に入れない状況のときに、救助者の救助活動を施設外部から指示して支援するための救助活動支援装置や、施設内に所在する被監視者の位置を把握することで安全管理を行ったりすることが可能な安全管理支援装置などの位置検出装置および位置検出プログラム並びに施設図面データに好適である。また、本発明は、施設としては、要介護者が所在する病院や介護施設、工場などの他に、動物園やショッピングモール、博物館の展示ルームなどで使用することができる。その場合には、観客や買い物客などに位置通信装置としてGPS機能付き携帯電話を携行させることで、人気の度合いや、観客・買い物客の動線などの検出、動態調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1に係る救助活動支援システム全体の構成を示す図である。
【図2】図1に示す救助活動支援システムに用いられる位置通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す救助活動支援システムに用いられる救助活動支援装置の構成を示すブロック図である。
【図4】(A)〜(D)は、建物の各階を示す見取図である。
【図5】建物と各見取図との対応関係を示す図である。
【図6】スキャナ装置で紙図面を読み込んだときに発生する斜行を説明するための図である。
【図7】平面図データに測量座標データを関連付けるための操作画面の一例を示す図である。
【図8】(A)および(B)は、見取図上のポイントの位置を検査する方法を説明するための図である。
【図9】サムネイル画面の一例を示す図である
【図10】傾斜した状態の1階の見取図である。
【図11】補正された1階の見取図である。
【図12】区画された領域が塗りつぶされた状態の見取図である。
【図13】マークが付与された状態の見取図である。
【図14】補正された2階の見取図である。
【図15】(A)〜(F)は、本実施の形態2に係る位置検出システムの位置検出装置に用いられる施設図面データの一例を示す工場の1階から6階の見取図である。
【図16】傾斜した状態の1階の見取図である。
【図17】本実施の形態3に係る救助活動支援装置を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態4に係る位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図19】(A)および(B)は、測量座標系の回転を説明するための図である。
【符号の説明】
【0110】
1,1x 救助活動支援システム
2,20 位置通信装置
21 無線手段
21a アンテナ
22 GPS測位手段
23 報知手段
24 識別情報送信手段
2x ICタグ
2y 無線信号受信装置
2z 位置送信装置
3,10 救助活動支援装置
31 無線手段
31a アンテナ
32 入力手段
33 表示手段
34 記憶手段
35 制御手段
35a 高さ判定手段
35b 演算手段
35c,35cx 回転手段
35d 塗りつぶし手段
35e 位置表示手段
35f マーク付与手段
35g 斜行角度検出手段
35h 施設データ設定手段
35j 読取制御手段
4 スキャナ装置
NW 電気通信回線
H1 消防本部
H2 消防署
C 消防車
B 建物
G1〜G4 見取図
P11〜P13,P21〜P23,P31〜P33,P41〜P43 ポイント
P51〜P53 ポイント
M1、M2,M3,M4 マーク
R 救助者
D 扉
K 階段
W 壁
S 領域
θ 補正確度
φ 斜行角度
L1,L2,L3 仮想直線
OP 操作画面
A1 測量座標表示領域
A2 XY測量座標表示領域
A3 Z測量座標表示領域
A4 測量データ入力領域
B1 「ファイルを読込み」ボタン
B2 「相似形チェック」ボタン
B3 「座標プロット」ボタン
B4 ポイント指定ボタン
B5 「移行」ボタン
R1 名称入力欄
R2 縮尺設定欄
R3 ポイント指定欄
R4 X測量座標入力欄
R5 Y測量座標入力欄
R6 Z測量座標入力欄
α,β 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内に所在する被監視者の位置を示す経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データを送信する位置通信装置からの通知を受信する通信手段と、
前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データが格納される記憶手段と、
前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する制御手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
施設内に所在する被監視者の位置を示す経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データを送信する位置通信装置からの通知を受信する通信手段と、
前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データが格納される記憶手段と、
前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させ、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する制御手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
前記記憶手段には、更に施設データとして、施設の各階ごとの見取図を示す平面図データに、前記各階の高さを示す階高さデータが関連付けられて格納され、
前記制御手段は、前記通信手段が受信した前記位置データに含まれる被監視者が所在する高さを示す高さ位置データから、対応する階の見取図を示す平面図データを選択して補正平面図データを生成する機能を備えた請求項1または2記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域に、所定マークを重畳させる機能を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記平面図データで示される各部屋または区画された領域を塗りつぶす機能を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記平面図データが紙図面の見取図をスキャナ装置により読み取られることで生成された電子データである場合に、前記スキャナ装置が紙媒体を読み取る際に発生した斜行角度を検出し、平面図データを回転させるときに、検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させる請求項1から5のいずれかの項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
施設内に所在する被監視者の位置を通知する位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データと、記憶手段に格納される前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データに基づいて、被監視者の位置を表示手段に表示させる位置検出プログラムであって、
コンピュータを、
前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算する演算手段、
前記補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成する回転手段、
前記補正平面図データに、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する位置表示手段
として機能させることを特徴とする位置検出プログラム。
【請求項8】
施設内に所在する被監視者の位置を通知する位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データと、記憶手段に格納される前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データに基づいて、被監視者の位置を表示手段に表示させる位置検出プログラムであって、
コンピュータを、
前記測量座標データに基づいて前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算する演算手段、
前記補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させる回転手段、
被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する位置表示手段
として機能させることを特徴とする位置検出プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、更に、
前記位置データに含まれる被監視者が所在する高さを示す高さ位置データと、前記記憶手段に格納された施設の各階ごとの見取図を示す平面図データに関連付けられた各階の高さを示す階高さデータとに基づいて、対応する階の見取図を示す平面図データを選択する高さ判定手段、
前記選択された平面図データに基づいて補正平面図データを生成する回転手段として機能させる請求項7または8記載の位置検出プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、更に、
前記平面図データで示される各部屋または区画された領域に、所定マークを重畳させるマーク付与手段として機能させる請求項7から9のいずれかの項に記載の位置検出プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、更に、
前記平面図データで示される各部屋または区画された領域を塗りつぶす塗りつぶし手段として機能させる請求項7から9のいずれかの項に記載の位置検出プログラム。
【請求項12】
前記回転手段は、前記平面図データが紙図面の見取図をスキャナ装置により読み取られることで生成された電子データである場合に、前記スキャナ装置が紙媒体を読み取る際に発生した斜行角度を検出し、平面図データを回転させるときに、検出された斜行角度を補正角度に加算して回転させる請求項7から11のいずれかの項に記載の位置検出プログラム。
【請求項13】
施設内に所在する被監視者の位置を示す位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データに基づいて、コンピュータに被監視者の位置を表示画面に表示させるための施設図面データであって、
施設の見取図を示す平面図データに、この見取図上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを備え、
前記見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データは、前記コンピュータによる前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データを回転させた補正平面図データを生成すると共に、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて重畳させて表示画面に出力する処理に使用されることを特徴とする施設図面データ。
【請求項14】
施設内に所在する被監視者の位置を示す位置通信装置からの経度位置データおよび緯度位置データを含む位置データに基づいて、コンピュータに被監視者の位置を表示画面に表示させるための施設図面データであって、
前記施設の見取図を示す平面図データに、この見取図の上下方向または左右方向に平行な仮想直線上の2点の経度および緯度を示す測量座標データが関連付けられた施設データを備え、
前記見取図上の2点の経度および緯度を示す測量座標データは、前記コンピュータによる前記2点を結ぶ仮想直線の測量座標系の座標軸に対する傾きを補正角度として演算し、この補正角度に基づいて前記平面図データの座標系の座標軸を基準に測量座標系の座標軸を回転させ、被監視者の位置を示すマークを前記位置データに基づいて前記平面図データに重畳させて表示画面に出力する処理に使用されることを特徴とする施設図面データ。
【請求項15】
前記施設の各階に対応する平面図データに対応付けられた各階の高さを示す階高さデータを備え、前記階高さデータは、前記コンピュータが受信した被監視者が所在する高さを示す高さ位置データに応じて前記各階に対応する平面図データが選択され、前記選択された平面図データを表示画面に出力する処理に使用される請求項13または14記載の施設図面データ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−193564(P2009−193564A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198947(P2008−198947)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【特許番号】特許第4288302号(P4288302)
【特許公報発行日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(307010694)トモデータサービス有限会社 (5)
【Fターム(参考)】