説明

低スコーチ性ポリマー組成物

本発明は、少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する不飽和ポリオレフィン、少なくとも1のスコーチ防止剤、および少なくとも1の架橋剤を含んでいる、架橋性ポリマー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出の際に低いスコーチ(変色)を示すポリマー組成物に関する。さらに、本発明は、当該ポリマー組成物を含んでいる物品、特に電力ケーブルのような多層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリオレフィンの不飽和度は、その重合プロセスのために選択された特定の条件に左右される。高圧法並びに低圧法の条件について、このことは言える。たとえばポリエチレンがラジカル重合によって製造される(いわゆる低密度ポリエチレンLDPE)ならば、該ポリマー内の二重結合の数は、普通、極めて少ない。しかし、多くの状況においては、該ポリマー分子中に官能基を導入し、または該ポリマーの架橋を達成するのに役立つことができる、より高い不飽和度を有するポリマーを使用することが望ましい。
【0003】
ポリエチレンのようなポリオレフィンの架橋は、多くの用途、たとえば押出(たとえば、管、ケーブル絶縁物質またはケーブル外被の押出)、ブロー成形、または回転成形と密接に関係している。特に、ケーブルの技術においては、ケーブルの高温度における耐変形性が改良されることができるので、架橋は特別に関心を持たれている。
【0004】
特許文献1では、エチレンと特定のタイプの多不飽和コモノマーとの高圧ラジカル重合によって、改良された架橋特性を有する不飽和低密度ポリエチレン(LDPE)が調製された。LDPEコポリマーの不飽和の量を増加すると、架橋剤と一緒にされたときの架橋活性が増加する。
【0005】
上述のように、架橋性ポリオレフィンは、押出によって電力ケーブル上にコーティング層を施与することができるので関心を持たれている。電力ケーブルのこのような押出方法では、金属性導体は一般に、まず半導電層によって、引き続いて絶縁層およびもう一つの半導電層によって被覆される。これらの層は、普通、架橋されており、普通には架橋されたエチレンホモポリマーおよび/またはエチレンコポリマーから造られる。
【0006】
過酸化物のようなフリーラジカル発生剤を、ポリマー状物質の押出の前またはその間に添加することによって、架橋は達成されることができる。過酸化物の早めの分解を最小限にするために十分に低い温度であるが、適切な溶融および均一化を達成するためには十分に高い温度で実施される押出の間、フリーラジカル発生剤は好ましくはずっと安定でなければならない。さらに、高められた温度での後続の架橋段階において、架橋剤は分解しなければならない。たとえば、有意の量の過酸化物が押出機中で早くも分解し、それによって時期尚早の架橋が開始されるならば、得られたケーブルの種々の層に、いわゆる「スコーチ」、すなわち異質物、表面のでこぼこおよびひょっとしたら変色を、これはもたらす。したがって、押出の間のフリーラジカル発生剤の何らかの有意の分解は、避けられなければならない。他方において、押出されたポリオレフィン層の高められた温度における熱処理は、高い架橋速度および高い架橋効率をもたらさなければならない。
【0007】
特許文献2および3では、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンがポリマー組成物に添加されて、スコーチの生成が抑制される。これらの出願は不飽和ポリオレフィンに関するものではない。
【0008】
さらに、架橋段階の間に、架橋剤の分解の故に副生成物が生成されうる。ほとんどの副生成物はケーブル内に捕捉されるので、その揮発性部分はいわゆる脱ガス段階において除去されなければならない。より多くの副生成物が生成されればされるほど、脱ガス時間はそれだけ長くなりおよび/または脱ガス温度はそれだけ高くなる。しかしながら、穏やかな脱ガス条件が好まれるだろう。より穏やかな脱ガス条件は、脱ガスの間にケーブルを損傷する危険も下げるだろう。
【特許文献1】国際公開第93/08222号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第0453204号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0475561号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1の目的は、押出の際には低いスコーチを示すが、押出後に加硫されると改良された架橋特性を有するポリオレフィン組成物を提供することである。特に、スコーチ挙動に有害な影響を及ぼさないで、架橋速度を上げることおよび/または架橋剤の量を下げることが目的である。さらに、短縮された脱ガス時間でおよび/または穏やかな脱ガス条件下に、特により低い脱ガス温度で脱ガスされることができる架橋されたポリマー物品を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許請求の範囲に記載されたポリマー組成物および方法によって、これらの目的は解決される。
【0011】
本発明に従う架橋性ポリマー組成物は、
(i)少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する不飽和ポリオレフィン
(ii)少なくとも1のスコーチ防止剤、および
(iii)少なくとも1の架橋剤
を含んでいる。
【0012】
本発明の文脈において、「炭素−炭素二重結合の全量」の語句は、ビニル基、ビニリデン基およびトランスビニレン基から生じる二重結合を言う。二重結合の各タイプの量は、実験の部に示されたように測定される。
【発明の効果】
【0013】
ポリオレフィン成分内に本発明に従う炭素−炭素二重結合の全量を含ませると、改良された架橋特性を達成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
好まれる実施態様では、炭素−炭素二重結合の全量は、少なくとも0.15/1000C原子である。別の好まれる実施態様では、炭素−炭素二重結合の全量は、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35、少なくとも0.40、少なくとも0.45、少なくとも0.50、少なくとも0.55、少なくとも0.60、少なくとも0.65、少なくとも0.70、少なくとも0.75または少なくとも0.80/1000C原子である。
【0015】
ビニル基の全量は、好ましくは少なくとも0.04/1000炭素原子である。別の好まれる実施態様では、これは少なくとも0.08、少なくとも0.10、少なくとも0.15、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35、少なくとも0.40、少なくとも0.45、少なくとも0.50、少なくとも0.55、少なくとも0.60、少なくとも0.65、少なくとも0.70、少なくとも0.75または少なくとも0.80ビニル基/1000炭素原子である。もちろん、ビニル基は炭素−炭素二重結合の特定のタイプであるので、所定の不飽和ポリオレフィンについてのビニル基の全量は、その二重結合の全量を超えない。
【0016】
二つのタイプのビニル基が識別されることができる。一つのタイプのビニル基は、重合プロセスによって(たとえば、二級ラジカルのβ開裂反応によって)生成され、またはビニル基を導入する連鎖移動剤の使用から得られる。もう一つのタイプのビニル基は、不飽和ポリオレフィンの調製のために使用される多不飽和コモノマーから生じることができ、後でより極めて詳細に説明される。
【0017】
好ましくは、多不飽和コモノマーから生じるビニル基の量は、少なくとも0.03/1000炭素原子である。別の好まれる実施態様では、多不飽和コモノマーから生じるビニル基の量は、0.06、少なくとも0.09、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.18、少なくとも0.21、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35または少なくとも0.40/1000炭素原子である。
【0018】
多不飽和コモノマーから生じるビニル基に加えて、ビニル基の全量はさらに、プロピレンのようなビニル基を導入する連鎖移動剤から生じるビニル基を含んでいることができる。
【0019】
本発明の好まれる不飽和ポリオレフィンは、0.860、0.880、0.900、0.910、0.915、0.917、または0.920g/cmより高い密度を有することができる。
【0020】
該ポリオレフィンは、単峰性または多峰性、たとえば双峰性であることができる。
【0021】
本発明においては、不飽和ポリオレフィンは好ましくは、不飽和ポリエチレンまたは不飽和ポリプロピレンである。最も好ましくは、不飽和ポリオレフィンは不飽和ポリエチレンである。低密度の不飽和ポリエチレンが好まれる。好まれる実施態様では、不飽和ポリエチレンは、エチレンモノマー単位を少なくとも60重量%有する。別の好まれる実施態様では、不飽和ポリエチレンは、エチレンモノマー単位を少なくとも70重量%、少なくとも80重量%または少なくとも90重量%有する。
【0022】
好ましくは、少なくとも1のオレフィンモノマーと少なくとも1の多不飽和コモノマーとを共重合することによって、不飽和ポリオレフィンは調製される。好まれる実施態様では、該多不飽和コモノマーは、少なくとも8炭素原子およびその非共役二重結合間に少なくとも4炭素原子を有する炭素直鎖からなり、該非共役二重結合のうち少なくとも1は末端結合である。
【0023】
エチレンおよびプロピレンが、好まれるオレフィンモノマーである。最も好ましくは、エチレンがオレフィンモノマーとして使用される。コモノマーとしてはジエン化合物が好まれ、たとえば1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、またはこれらの混合物である。さらに、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはこれらの混合物のようなジエンが挙げられることができる。
【0024】
以下の式
CH=CH−[Si(CH−O]−Si(CH−CH=CH(ここで、n=1以上である。)
を有するシロキサンが、多不飽和コモノマーとして使用されることもできる。例として、ジビニルシロキサン、たとえばα,ω−ジビニルシロキサンが挙げられることができる。
【0025】
多不飽和コモノマーに加えて、さらなるコモノマーが任意的に使用されることができる。C〜C20アルファオレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−ノネン、極性コモノマー、たとえばアクリレート、メタクリレートまたはアセテートから、このような任意的なコモノマーは選択される。
【0026】
例として、架橋性ポリマー組成物は、1以上の極性コモノマー単位の少量、たとえば不飽和ポリオレフィングラム当たり1〜100マイクロモル、2〜80マイクロモルおよび5〜60マイクロモルの極性コモノマー単位を有してもよい。
【0027】
任意の慣用の重合プロセスによって、不飽和ポリオレフィンは製造されることができる。好ましくは、これはラジカル重合、たとえば高圧ラジカル重合によって製造される。高圧重合は、管状反応器またはオートクレーブ反応器中で達成されることができる。好ましくは、これは管状反応器である。高圧ラジカル重合についてのさらなる詳細は特許文献1に示され、その内容は引用によって本明細書に取り込まれる。しかし、配位重合のような別のタイプの重合プロセスによって、たとえば任意のタイプの担持および非担持重合触媒を使用する低圧プロセスで、不飽和ポリオレフィンは調製されることもできる。該重合触媒の例として、デュアルサイト(dual site)およびシングルサイト(single site)を包含するマルチサイト(multi−site)の触媒系、たとえばチーグラー・ナッタ、クロム、遷移金属化合物のメタロセン、後周期遷移金属化合物の非メタロセンがあり、当該遷移金属化合物および後周期遷移金属化合物は、周期表(IUPAC 1989年)の第3〜10族に属する。配位重合プロセスおよび上述の触媒は、当該分野において周知であり、商業的に入手できまたは公知の文献に従って製造されることができる。
【0028】
本発明に従う架橋性ポリマー組成物は、さらに架橋剤を含んでいる。本発明の文脈では、架橋反応を開始することができるラジカルを発生する能力がある任意の化合物であると、架橋剤は定義される。好ましくは、少なくとも1の−O−O−結合または少なくとも1の−N=N−結合を、架橋剤は有する。より好ましくは、架橋剤は当該分野において公知の過酸化物である。
【0029】
架橋剤、たとえば過酸化物は好ましくは、架橋性ポリマー組成物の重量当たり0.1〜3.0重量%、より好ましくは0.15〜2.6重量%、最も好ましくは0.2〜2.2重量%の量で添加される。
【0030】
架橋に使用される過酸化物として、以下の化合物、すなわち過酸化ジ−t−アミル、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ジ(t−ブチル)、過酸化ジクミル、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、過酸化ジベンゾイルが挙げられることができる。
【0031】
好ましくは、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ジクミル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ジ(t−ブチル)、またはこれらの混合物から、過酸化物は選択される。最も好ましくは、過酸化物は過酸化ジクミルである。
【0032】
本発明に従う架橋性ポリマー組成物は、さらにスコーチ防止剤を含んでいる。本発明の文脈では、「スコーチ防止剤」は、ポリマー組成物を押出す際に、当該スコーチ防止化合物なしに押出された同じポリマー組成物と比較すると、スコーチの生成を低減する化合物であると定義される。スコーチを防止する特性に加えて、スコーチ防止剤は同時に架橋性能を促進する、すなわち高めるようなさらなる効用をもたらすことができる。
【0033】
好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、置換若しくは非置換ジフェニルエチレン、キノン誘導体、ハイドロキノン誘導体、単官能性ビニル含有エステルおよびエーテル、またはこれらの混合物から、スコーチ防止剤は選択される。より好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、置換若しくは非置換ジフェニルエチレン、またはこれらの混合物から、スコーチ防止剤は選択される。最も好ましくは、スコーチ防止剤は2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンである。
【0034】
好ましくは、スコーチ防止剤の量は、架橋性ポリオレフィン組成物の重量当たり0.005〜1.0重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜0.8重量%の範囲内にある。さらに好まれる範囲は、架橋性ポリオレフィン組成物の重量当たり0.03〜0.75重量%、0.05〜0.70重量%および0.07〜0.50重量%である。
【0035】
本発明の不飽和ポリオレフィン成分は、少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000C原子を付与されているので、二重結合のない物質と比較してより反応性である。その場合、該不飽和ポリマー状物質はよりスコーチを被りやすいと推定されるかも知れない。しかし、本発明の不飽和ポリオレフィン組成物を用いると、該組成物が高い反応性を有するにもかかわらず、加硫段階における良好な架橋特性および改良された耐スコーチ性を維持することが、意外なことに可能である。
【0036】
該ポリマー組成物はさらなる添加剤、たとえば酸化防止剤、安定剤、加工助剤、および/または架橋助剤を含有してもよい。酸化防止剤として、ヒンダードまたはセミヒンダードフェノール、芳香族アミン、脂肪族ヒンダードアミン、有機ホスフェート、チオ化合物、およびこれらの混合物が挙げられることができる。典型的な架橋助剤は、アリル基を有する化合物、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、およびジ、トリ、またはテトラアクリレートを包含することができる。さらなる添加剤として、難燃添加剤、酸捕捉剤、無機フィラーおよび電圧安定剤が挙げられることができる。
【0037】
酸化防止剤が、任意的には2以上の酸化防止剤の混合物が使用されるならば、添加される量は、不飽和ポリオレフィンの重量当たり0.005〜2.5重量%の範囲であることができる。不飽和ポリオレフィンが不飽和ポリエチレンであるならば、(1または複数の)酸化防止剤は好ましくは、該不飽和ポリエチレンの重量当たり0.005〜0.80重量%、より好ましくは0.01〜0.60重量%、さらにより好ましくは0.05〜0.50重量%の量で添加される。不飽和ポリオレフィンが不飽和ポリプロピレンであるならば、(1または複数の)酸化防止剤は好ましくは、該不飽和ポリプロピレンの重量当たり0.005〜2重量%、より好ましくは0.01〜1.5重量%、さらにより好ましくは0.05〜1重量%の量で添加される。
【0038】
さらなる添加剤は0.005〜3重量%、より好ましくは0.005〜2重量%の量で存在することができる。難燃添加剤および無機フィラーは、これより多い量で添加されることができる。
【0039】
上記の架橋性ポリマー組成物から、架橋条件下に処理されてそれによって架橋レベルが上げられることによって、架橋された組成物が調製されることができる。高温度における、たとえば少なくとも160℃の温度における処理によって、架橋は達成されることができる。過酸化物が使用されるときは一般に、対応する過酸化物の分解温度まで温度を上げることによって、架橋は開始される。
【0040】
不飽和ポリオレフィン内に少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子が存在し、スコーチ防止剤と組み合わされている故に、より低い架橋温度が使用されることができ、それによって十分に高い架橋レベルがそれでもなお到達される。温度に敏感な物質が使用される場合には、より低い架橋温度は有益である。さらに、より低い架橋温度は、より少ない量の揮発性副生成物をもたらすことができる。
【0041】
架橋が起きると、特に過酸化物によって開始されると、架橋された組成物中に残留物が残される。これらの副生成物を除去するために、架橋された組成物をいわゆる脱ガス段階に付することが好まれる。典型的には、脱ガスは高温度で達成される。架橋された組成物中に、生成された副生成物が少なければ少ないほど、脱ガス条件はそれだけ穏やかになりおよび/または必要とされる脱ガス時間はそれだけ短くなる。
【0042】
少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000C原子を有する不飽和ポリオレフィンを用意することによって架橋が容易になっているので、同じ架橋度を達成するために必要な架橋剤の量は下げられることができる。その結果、架橋の際に生成される副生成物の量は下げられることができ、より穏やかな脱ガス条件が選択されることができる。より少ない酸化防止剤レベルが同様に使用され、それでもなお熱酸化老化に対する良好な耐性が維持されることができることも、下げらされた過酸化物含有量による付加的な効果である。
【0043】
本発明の架橋性ポリマー組成物は、架橋剤の量を下げることを可能にするのみならず、有意により短い時間内にそれから揮発性副生成物が除去可能であるところの架橋された組成物ももたらす。特に、少ない量の有害な揮発性副生成物を有する高品質の架橋されたポリマー組成物を製造するために、脱ガス時間が有意に短縮される。本発明の文脈では、揮発性副生成物は何らかの低分子化合物を含んでおり、該低分子化合物は架橋段階後にポリマー組成物内に捕捉され、該ポリマー状物質の有意の分解を避けるために十分な低い温度における熱処理によって除去可能である。特に架橋段階の間に、これらの揮発性生成物は生成される。
【0044】
本発明の好ましい架橋されたポリマー組成物においては、参照物質中の揮発物のレベルを同一のレベル、すなわち該架橋されたポリマー組成物の0.5重量%以下に下げるために必要である時間と比較して少なくとも10%短い時間後において、該架橋されたポリマー組成物中に依然残留する除去可能揮発物のパーセントレベルが、該架橋されたポリマー組成物の0.5重量%以下であり、ここで該参照物質は、0.37の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する不飽和ポリオレフィンと架橋剤とから、しかしスコーチ防止剤なしで調製された架橋されたポリマー組成物である。除去可能揮発物のパーセントレベルを架橋されたポリマー組成物の0.5重量%以下に下げるための時間は、実験の部で説明されるように板について測定される。
【0045】
架橋された組成物は好ましくは、実験の部で説明されるような1.8mmの架橋された板についてHD632 A:1 1998、第2部に従って測定された1.12重量%未満の、175℃における0〜30分間の全重量変化を有する。
【0046】
好ましくは、架橋されたポリマー組成物は、IEC 60811−2−1に従って測定された175%未満、より好ましくは100%未満、さらにより好ましくは90%未満のホットセット伸び値を有する。ホットセット伸び値は架橋度に関連している。ホットセット伸び値が小さければ小さいほど、それだけ多くその物質は架橋されている。
【0047】
6〜7cm×6〜7cmの面積を有する1.8mm厚さの板について測定された、60℃における168時間の脱ガス後の全重量損失は、2.2重量%未満、より好ましくは2.1重量%未満、さらにより好ましくは2.0重量%未満、最も好ましくは1.9重量%未満でなければならない。
【0048】
重量損失および重量変化のデータは、板についての測定によって得られた。本発明で使用された全ての板は、実験の部において「(b)ホットセット、TGAおよび板の脱ガスの測定用の板のプレス成形」の下に説明されたのと同じ方法に従って作られた。
【0049】
本発明の架橋性ポリマー組成物から、少なくとも1の層が当該ポリマー組成物を含んでいる多層物品が調製されることができる。架橋が起きると、架橋された多層物品が得られる。好ましくは、該多層物品(架橋されたものも、架橋されていないものも)は電力ケーブルである。
【0050】
本発明の文脈では、電力ケーブルは、任意の電圧で作用するエネルギーを移送するケーブルであると定義される。電力ケーブルにかけられる電圧は、交流(AC)、直流(DC)、または過渡(インパルス)であることができる。好まれる実施態様では、多層物品は1kVより高い電圧で使用される電力ケーブルである。別の好まれる実施態様では、本発明に従って調製された電力ケーブルは、6kVより高い、10kVより高い、33kVより高い、66kVより高い、72kVより高い、または110kVより高い電圧で使用される。
【0051】
本発明の架橋性組成物が押出によって基体上に施与される方法で、多層物品は調製されることができる。このような押出方法では、架橋性組成物の成分を混合する順番は、下記のように様々であることができる。
【0052】
好まれる実施態様に従うと、不飽和ポリオレフィンは1以上の酸化防止剤と、ひょっとしたらさらなる添加剤と一緒に、固形のペレットまたは粉体の状態で混合されるか、あるいは溶融混合によって混合され、引き続いて該溶融物からペレットが形成される。その後、架橋剤、好ましくは過酸化物およびスコーチ防止剤が第二段階で、該ペレットまたは粉体に添加される。あるいは、スコーチ防止剤は既に第一段階で、(1または複数の)酸化防止剤とともに添加されることができた。最終ペレットは押出機、たとえばケーブルの押出機に供給される。
【0053】
別の好まれる実施態様に従うと、2段階方法の代わりに、好ましくはペレット若しくは粉体の形態をした不飽和ポリオレフィン、架橋剤、スコーチ防止剤、任意的な(1または複数の)酸化防止剤および/またはさらなる添加剤が、単軸または二軸のコンパウンドの押出機に加えられる。好ましくは、コンパウンド押出機は注意深い温度制御の下に稼動される。
【0054】
別の好まれる実施態様に従うと、全成分の混合物、すなわち架橋剤およびスコーチ防止剤、任意的な(1または複数の)酸化防止剤および/またはさらなる添加剤を含む混合物が、不飽和ポリオレフィンから造られたペレットまたは粉体の上に添加される。
【0055】
別の好まれる実施態様に従うと、不飽和ポリオレフィンから造られたペレットが、任意的にさらに(1または複数の)酸化防止剤およびさらなる添加剤を含有して、第一段階で、たとえば溶融混合によって調製される。これらのペレットは、次にケーブル押出機中に供給される。その後、架橋剤およびスコーチ防止剤がホッパーへ供給されるか、あるいはケーブル押出機中に直接、供給される。あるいは、これらのペレットがケーブル押出機中に供給される前に、架橋剤および/またはスコーチ防止剤は該ペレットに既に添加されている。
【0056】
別の好まれる実施態様に従うと、不飽和ポリオレフィンから何らの追加の成分も含まないで造られたペレットが、該押出機に供給される。その後、架橋剤およびスコーチ防止剤、任意的に一緒にされる(1または複数の)酸化防止剤および/またはさらなる添加剤が、ホッパーへ供給されるか、あるいはケーブル押出機内のポリマー状溶融物中に直接、供給される。あるいは、これらのペレットがケーブル押出機中に供給される前に、これらの成分のうち少なくとも1、すなわち架橋剤、スコーチ防止剤、酸化防止剤、またはこれらの成分の混合物は該ペレットに既に添加されている。
【0057】
別の好まれる実施態様に従うと、非常に高濃度のマスターバッチが調製される。該マスターバッチは1以上の酸化防止剤、スコーチ防止剤および架橋剤も含んでいることができる。このマスターバッチは、次に不飽和ポリオレフィンに添加されおよび/またはそれと混合される。あるいは、これらの成分のうち2のみが出発マスターバッチ中に存在し、他方、3番目の成分(すなわち、(1または複数の)酸化防止剤、架橋剤、またはスコーチ防止剤のいずれか)が別途に添加される。
【0058】
押出によって電力ケーブルを製造するときには、金属性導体および/またはその少なくとも1のコーティング層、たとえば半導電層または絶縁層の上へとポリマー組成物は施与されることができる。典型的な押出条件は特許文献1に述べられている。
【0059】
好まれる実施態様に従うと、押出は、たとえばケーブルの押出は、以下の関係を満たす温度において実施される。

ここで、
T:℃単位での押出温度、および
t:押出温度Tにおいて、トルクの測定の開始から、トルク曲線の最低値から1dNmのトルクの増加に達するのにかかる分単位での時間
【0060】
さらにより好ましくは、押出(たとえば、ケーブルの押出)は以下の関係を満たす温度において実施される。

ここで、Tおよびtは上記のように定義される。
【0061】
実験の部で「(c)モンサント(Monsanto)スコーチ試験」の下に説明されるプレス成形された円板を使用してMonsanto MDR 2000レオメーターで、トルクの増加は測定される。
【0062】
好ましくは、押出温度は120℃より高い。押出がケーブル押出機で実施される場合には、押出温度は好ましくは120℃〜160℃の範囲内にある。
【0063】
上に示された関係を満たし、かつ本発明に従う架橋性ポリマー組成物を使用する押出方法では、スコーチと押出速度との改良されたバランスが得られる。
【0064】
最終の電力ケーブルを製造するために、押出されたポリマー組成物は架橋条件下に処理され、該架橋条件下での処理は加硫という名称でも知られている。好ましくは、これは少なくとも160℃、さらにより好ましくは少なくとも170℃の温度で処理される。過酸化物が使用されるときは、該温度は好ましくはその分解温度より上まで上げられる。
【0065】
不飽和ポリオレフィン内に少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量が存在し、スコーチ防止剤と組み合わされている故に、より低い架橋温度が使用されることができ、それでもなお十分に高い架橋レベルが到達される。温度に敏感な物質が使用される場合には、より低い架橋温度は有益である。
【0066】
改良された架橋能力の故に、より低い温度設定が連続加硫(CV)管に使用されることができる。剥離可能な外側の半導電性スクリーンが使用されるならば、このことは関連した重要性があるかも知れない。というのは、該剥離可能な外側の半導電性スクリーンは温度により敏感であり、ラインでの処理量がより低くなるからである。したがって、連続加硫管において温度設定がたとえ下げられても、本発明の架橋性ポリマー組成物を用いれば生産量を維持することが可能である。
【0067】
既に上記のように、ケーブル絶縁物中に残される残留物の生成を、架橋段階はもたらすことがある。架橋が過酸化物、たとえば過酸化ジクミルによって開始されるならば、これらの副生成物は典型的にはメタン、エタン、クミルアルコール、α−メチルスチレンまたはアセトフェノンのような化合物を含んでおり、これらはケーブル内に捕捉される。揮発性副生成物を除去するため、ケーブルは好ましくは脱ガス段階に付される。
【0068】
以下の実施例を参照することによって、本発明はこれからさらに詳細に説明される。
【0069】
実施例
【0070】
試験方法/測定方法
【0071】
(a)二重結合の量の測定
【0072】
二重結合の量/1000C原子の測定の手順は、ASTM D3124−72法に基づく。この方法には、ビニリデン基/1000C原子の測定についての詳細な説明が、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンに基づいて示されている。このサンプル調製手順は、本発明におけるビニル基/1000C原子、ビニリデン基/1000C原子およびトランスビニレン基/1000C原子の測定にも適用された。しかし、これらの3タイプの二重結合の吸光係数の測定については、以下の3化合物、すなわちビニルについて1−デセン、ビニリデンについて2−メチル−1−ヘプテンおよびトランスビニレンについてトランス−4−デセンが使用され、ASTM−D3124セクション9に記載された手順に従った。
【0073】
二重結合の全量が赤外分光測定法によって分析され、それぞれビニル結合、ビニリデン結合およびトランスビニレン結合の量として示された。
【0074】
0.5〜1.0mmの厚さを有する薄膜がプレス成形された。実際の厚さが測定された。FT−IR分析がPerkin Elmer 2000で実施された。四回の走査が4cm−1の分解能で記録された。
【0075】
980cm−1から約840cm−1までベースラインが引かれた。ビニリデンについて約888cm−1、ビニルについて約910cm−1およびトランスビニレンについて約965cm−1において、ピーク高さが測定された。二重結合の量/1000炭素原子が、以下の式を使用して計算された(ASTM D3124−72)。
ビニリデン/1000C原子=(14×A)/(18.24×L×D)
ビニル/1000C原子=(14×A)/(13.13×L×D)
トランスビニレン/1000C原子=(14×A)/(15.14×L×D)
ここで、
A:吸光度(ピーク高さ)
L:mm単位での膜厚
D:物質の密度
【0076】
(b)ホットセット、TGAおよび板の脱ガスの測定用の板のプレス成形
【0077】
まず、115℃、約20バールで2分間、ペレットが溶融された。圧力が200バールまで上げられ、引き続いて温度が165℃まで徐々に上げられた。この物質は165℃に25分間保たれ、その後15℃/分の冷却速度で室温まで冷却された。板の厚さは約1.8mmであった。
【0078】
1.架橋された板についてTGAによって測定された脱ガス実験
【0079】
HD632 A1:1998、第2部に従って、架橋の副生成物の濃度が測定された。詳細な説明は2.4.15の下に見出されることができる。
【0080】
以下の三つの特性が測定された。
−試験の最初の30分間における試験サンプルの全重量変化。規格に従うと、これは元のサンプル重量の1.6%未満でなければならない。
−試験の最初の5分間における重量の変化の速度
−試験時間15〜30分間におけるサンプル重量の変化の平均速度
【0081】
これらの測定は熱重量分析計(TGA)で実施された。架橋された板からその調製直後に取られた20±5mgの重量を有するサンプルが分析される。50℃/分の加熱速度で30℃から175℃±3℃まで温度が上げられる。175℃の一定温度で重量損失実験が実施される。
【0082】
2.板についての全重量損失として測定された脱ガス実験
【0083】
プレス成形段階の直後に、6〜7cm×6〜7cmの面積を有するより小さい片へと、板は分割された。これらのより小さい板は秤量され、それから60℃のオーブンに入れられた。その後、様々な時間後に該小板は秤量された。1週間(168時間)の脱ガス後の小板の全重量損失が測定された。
【0084】
(c)モンサント(Monsanto)スコーチ試験
【0085】
種々の配合物のスコーチ生成への耐性が、Monsanto MDR2000レオメーターで評価された。プレス成形された円板を使用して、該実験は実施された。120℃で2分間圧力をかけず、引き続いて2分間5トンの圧力で、該円板はプレスされた。それから、該円板は室温まで冷却された。モンサントレオメーターにおけるトルクの増加が、時間の関数として監視された。トルクのある増加分に到達するのに必要な時間が測定された。この場合、試験の開始から、トルク曲線の最低値から1dNmのトルクの増加に達するのにかかる時間が報告される。かかる時間が長ければ長いほど、該配合物はスコーチ生成への耐性がそれだけ大きい。三つの異なる温度、すなわち135℃、140℃および145℃においてデータが生成された。本発明の配合物並びに参照/比較配合物のデータが表3および4に提示される。
【0086】
(d)架橋度のエラストグラフ(Elastograph)測定
【0087】
架橋度がGottfert Elastographで測定された。プレス成形された円板を使用して、測定は実施された。まず、120℃で2分間圧力をかけず、引き続いて2分間5トンで、円板がプレスされた。それから、該円板は室温まで冷却された。エラストグラフで、180℃における架橋時間の関数として、トルクの増大が測定される。種々のサンプルの架橋度が同等であることを監視するために、この試験は使用された。
【0088】
報告されたトルク値は、180℃における架橋10分間後に到達されたものである。
【0089】
(e)ホットセット測定
【0090】
ホットセットの伸び並びに永久歪は、上記のように(すなわち、(b)ホットセット、TGAおよび板の脱ガスの測定用の板のプレス成形の下に)調製された、架橋された板から取られたサンプルについて測定された。これらの特性がIEC 60811−2−1に従って測定された。ホットセット試験では、試験される物質のダンベルに20N/cmに相当するおもりが付けられる。この試料片が200℃のオーブン中に入れられ、15分後、伸びが測定される。その後、おもりが除かれ、該サンプルは5分間放置緩和される。それから、サンプルはオーブンから取り出され、室温まで冷却される。永久歪が測定される。
【0091】
(f)灰分含有量
【0092】
約4gのポリマーが、正確な量が書き留められて、磁器製るつぼ中に入れられた。これは次に加熱され、サンプルは灰になる。磁器製るつぼは450℃のオーブン中に1時間入れられる。この処理後、該灰を含有する磁器製るつぼはデシケーター中で放置冷却される。該灰が秤量され、灰分含有量が計算される。
【0093】
物質
【0094】
ポリマー1:
ポリ(エチレン−コ−1,7−オクタジエン)ポリマー、灰分含有量<0.025%、MFR=2.7g/10分
【0095】
ポリマー2:
ポリ(エチレン−コ−1,7−オクタジエン)ポリマー、灰分含有量<0.025%、MFR=2.1g/10分
【0096】
ポリマー3:
低密度ポリエチレン、MFR=2.0g/10分
【0097】
ポリマー1〜3の二重結合含有量が表1にまとめられる。
【表1】

【0098】
多不飽和コモノマー(すなわち、この実施例では1,7−オクタジエン)から生じるビニル基の量毎1000炭素原子は、以下のように測定された。
【0099】
本発明のポリマー1および2および参照ポリマー3は、同じ反応器で、基本的に同じ条件、すなわち同じような温度、圧力および製造速度を使用して製造された。各ポリマーのビニル基の全量は、上記のようにFT−IR測定法によって測定された。ここで、ビニル基の基礎レベル、すなわちビニル基をもたらす連鎖移動剤を添加しない、および多不飽和コモノマーを存在させない方法によって生成されるビニル基は、参照ポリマーおよびポリマー1および2について同じであると仮定される。この基礎レベルが次にポリマー1および2中のビニル基の測定量から引かれて、これによって多不飽和コモノマーからもたらされたビニル基の量/1000C原子が得られる。
【0100】
高圧管状反応器中で1000〜3000バールの圧力および100〜300℃の温度において、全てのポリマーが重合された。0.920〜0.925g/cmの範囲内の密度を、全てのポリマーが有する。
【0101】
ポリマー1〜3を含んでいる最終配合物が表2にまとめられる。
【表2】

【0102】
表2にまとめられている配合物について、以下の化合物がそれぞれ酸化防止剤、架橋剤およびスコーチ防止剤として使用された。
酸化防止剤:4,4'−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)(CAS番号96−69−5)
架橋剤:過酸化ジクミル(CAS番号80−43−3)
スコーチ防止剤:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(CAS番号6362−80−7)
【0103】
スコーチの比較をできるだけ明確にするために、ホットセット試験によって測定された40〜70%の範囲内の架橋度まで、これらの配合物は架橋された。
【0104】
結果の概要
【実施例1】
【0105】
実施例1では、スコーチ生成の抑制に関して本発明の配合物5および6が、参照物質および比較配合物3と比較された。この結果が表3に提示される。
【表3】

【0106】
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンのようなスコーチ防止剤と組み合わされた不飽和ポリマーにおいて達成されることができるスコーチ防止上の有意の差を、これらのデータは明確に示す。同じ架橋度に到達するために比較配合物3では同じ過酸化物添加量が使用されることができるとしても、本発明に従う配合物5および6と比較して、スコーチ時間はいくぶん短い。
【0107】
スコーチの生成に対する改良された耐性が、あるトルクに達するまでの稼動時間を増加するために使用されることができるか、あるいは押出機がより高い溶融温度で稼動され、それでもなお慣用のコンパウンドと同じスコーチ生成を示すことができるかのいずれかがある。より高い溶融温度は、押出機内の溶融温度と加硫する管の架橋温度との差がより小さくなるから、後で架橋性能を改良する。これらの二つの選択肢の両方とも生産性を増加するので、両選択肢ともケーブル製造業者にとって利点である。第一の選択肢は、押出機が停止され洗浄されなければならなくなるまでの稼動時間をより長くすることを可能にする(押出機が使用されない停止時間を最低限にする)ので生産性を増加し、第二の選択肢は、温度の差、すなわち押出機溶融温度から実際の架橋温度までの温度差がより小さく、それによってケーブルラインの生産速度が増加されるので生産性を増加する。温度に敏感な外側の半導電物質が使用されるならば、この第二の選択肢はさらにより多くの利益をもたらす。
【実施例2】
【0108】
この実施例でも、種々のサンプルのスコーチ性能が試験された。結果が表4に示される。
【表4】

【0109】
この実施例でも、たとえ不飽和ポリオレフィンが多量の二重結合を有しているとしても、本発明に従う組成物が使用されると、スコーチ性能が改良されることを、これらのデータは明確に示す。
【実施例3】
【0110】
この実施例では、全重量損失が上記のように測定された。結果が表5にまとめられる。
【表5】

【0111】
さらに、ポリマー組成物が60℃の熱処理に付されたときに、0.5重量%の副生成物レベルを得るために必要な時間のデータを、表5は提供する。該表に示された値は以下のように得られた。すなわち、サンプルが60℃で保存され、その重量が連続的に測定されて、最後に2の連続した測定値間にさらなる測定可能な重量変化がなくなった。普通にはこれらの条件は、168時間の脱ガス時間後に得られた。試験片のこの重量が、副生成物の0.5重量%レベルの計算のためのベースラインとして使用された。参照物質が0.5重量%の残留副生成物レベルに到達する時間は、19時間であった。6〜7cm×6〜7cmの面積および約1.8mmの厚さを有する架橋された板について、これらの測定は実施された。
【0112】
より少ない過酸化物添加量が使用されて、同じ架橋度をもたらすことができるならば、脱ガス段階の際に除去されなければならない副生成物がより少ないから、このことは脱ガス挙動にも有益な影響を及ぼすだろう。表5に示された結果によって、この効果は例証される。
【0113】
さらに、揮発性副生成物は、本発明の配合物からはるかにより速く除去されることができることを、表5の結果は明確に実証する。ホットセット値によって示されるように、全ての物質は同じような架橋度を有するけれども、それから揮発性副生成物がより速く除去されることができるところのポリマー状網目構造を、本発明の配合物はもたらす。したがって、ケーブルの層内に少ない量の有害な揮発性副生成物を有する高品質ケーブルが、より大きい製造速度で得られることができる。
【実施例4】
【0114】
この実施例では、重量損失速度の変化が上記のように測定された。結果が表6に示される。
【表6】

【0115】
本発明に従う全ての配合物は、参照物質よりも低い重量変化の速度を示し、脱ガスによって除去されるべき物質がより少ないことを、これは示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子の比を有する不飽和ポリオレフィン
(ii)少なくとも1のスコーチ防止剤、および
(iii)少なくとも1の架橋剤
を含んでいる、架橋性ポリマー組成物。
【請求項2】
不飽和ポリオレフィンが、少なくとも0.35の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する、請求項1に従うポリマー組成物。
【請求項3】
炭素−炭素二重結合の少なくとも一部がビニル基である、請求項1または2に従うポリマー組成物。
【請求項4】
不飽和ポリオレフィンが、少なくとも0.04のビニル基の全量/1000炭素原子を有する、請求項3に従うポリマー組成物。
【請求項5】
不飽和ポリオレフィンが、オレフィンモノマーと少なくとも1の多不飽和コモノマーとを共重合することによって調製されている、請求項1〜4のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項6】
不飽和ポリオレフィンが、1000炭素原子当り少なくとも0.03の、多不飽和コモノマーから生じるビニル基の量を有する、請求項5に従うポリマー組成物。
【請求項7】
少なくとも1の多不飽和コモノマーがジエンである、請求項5または6に従うポリマー組成物。
【請求項8】
ジエンが、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはこれらの混合物から選択される、請求項7に従うポリマー組成物。
【請求項9】
ジエンが、以下の式
CH=CH−[Si(CH−O]−Si(CH−CH=CH(ここで、n=1以上である。)
を有するシロキサンから選択される、請求項7に従うポリマー組成物。
【請求項10】
少なくとも1の架橋剤が過酸化物である、請求項1〜9のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項11】
オレフィンモノマーがエチレンである、請求項5〜10のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項12】
不飽和ポリエチレンが、高圧ラジカル重合によって製造されている、請求項11に従うポリマー組成物。
【請求項13】
不飽和ポリオレフィンが、0.030重量%未満の灰分含有量を有する、請求項5〜12のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項14】
スコーチ防止剤の量が、ポリマー組成物の重量当たり0.005〜1重量%である、請求項1〜13のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項15】
スコーチ防止剤が、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、置換若しくは非置換ジフェニルエチレン、キノン誘導体、ハイドロキノン誘導体、単官能性ビニル含有エステルおよびエーテル、またはこれらの混合物から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に従うポリマー組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に従うポリマー組成物を架橋条件下に処理することによって調製されている、架橋されたポリマー組成物。
【請求項17】
参照物質中の揮発物のレベルを同一の値に下げるために必要である時間と比較して少なくとも10%短い時間後において、架橋されたポリマー組成物中に残留する除去可能揮発物のパーセントレベルが、該架橋されたポリマー組成物の0.5重量%以下であり、該参照物質が、0.37の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する不飽和ポリオレフィンと架橋剤とから、しかしスコーチ防止剤なしで調製された架橋されたポリマー組成物である、請求項16に従う架橋されたポリマー組成物。
【請求項18】
1.8mmの厚さを有する板についてHD632 A:1 1998、第2部に従って測定された1.12重量%未満の、175℃における0〜30分間の全重量変化を有する、請求項16または17に従う架橋されたポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に従う架橋性ポリマー組成物が用意され、引き続いて該ポリマー組成物が架橋条件下に処理される、架橋されたポリマー組成物の調製方法。
【請求項20】
架橋性ポリマー組成物が、少なくとも部分的な架橋を達成するために十分な温度に付される、請求項19に従う方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に従う架橋性ポリマー組成物を含んでいる少なくとも1の層を有する、多層物品。
【請求項22】
物品が電力ケーブルである、請求項21に従う多層物品。
【請求項23】
請求項16〜18のいずれか1項に従う架橋されたポリマー組成物を含んでいる少なくとも1の層を有する、架橋された多層物品。
【請求項24】
物品が電力ケーブルである、請求項23に従う架橋された多層物品。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか1項に従う架橋性ポリマー組成物が、押出によって1以上の層として基体上に施与される、多層物品の製造方法。
【請求項26】
押出が、以下の関係

(ここで、
T:℃単位での押出温度、および
t:押出温度Tにおいて、トルクの測定の開始から、トルク曲線の最低値から1dNmのトルクの増加に達するのにかかる分単位での時間
である。)
を満たす温度において実施される、請求項25に従う方法。
【請求項27】
不飽和ポリオレフィン、架橋剤およびスコーチ防止剤が単一段階でブレンドされ、引き続いて、得られた混合物が押出機中へと供給される、請求項25または26に従う方法。
【請求項28】
最初に不飽和ポリオレフィンとスコーチ防止剤とをブレンドすることによって架橋性ポリマー組成物が調製され、引き続いて、得られた混合物が架橋剤とブレンドされ、そして最終混合物が押出機中へと供給される、請求項25または26に従う方法。
【請求項29】
不飽和ポリオレフィンの溶融物が押出機中に用意され、引き続いてスコーチ防止剤および架橋剤がホッパー中へまたは該溶融物に、同時にか、あるいは後続する段階で加えられる、請求項25または26に従う方法。
【請求項30】
多層物品が電力ケーブルであり、かつ架橋性ポリマー組成物が金属性導体および/またはその少なくとも1のコーティング層の上へと施与される、請求項25〜29のいずれか1項に従う方法。
【請求項31】
架橋性ポリマー組成物が架橋条件下に処理される、請求項25〜30のいずれか1項に従う方法。
【請求項32】
架橋段階後に脱ガス段階が実施されて、揮発性生成物が除去される、請求項25〜31のいずれか1項に従う方法。
【請求項33】
少なくとも0.1の炭素−炭素二重結合の全量/1000炭素原子を有する不飽和ポリオレフィンを押出すためにスコーチ防止剤を使用する方法。

【公表番号】特表2008−531794(P2008−531794A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557380(P2007−557380)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001649
【国際公開番号】WO2006/089744
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】