説明

低消費電力無線センサ端末およびセンサネットワークシステム

【課題】生物個体群の観察などに適するセンサネットワークシステムにおける、低消費電力タイプの無線センサ端末の固体識別技術を提供する。
【解決手段】複数の無線センサ端末と、少なくとも1つの受信装置とを有するセンサネットワークシステムであって、複数の無線センサ端末は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレート及び/又は周波数で前記フレームの送信を行うように構成され、受信装置は、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレート及び/又は周波数に対応付ける対応情報を格納しうる記憶部を有し、記憶部に記憶した前記対応情報と受信信号のボーレート及び/又は周波数とに基づいて、前記無線センサ端末の個体識別を行うように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家畜などの動物に取り付けて、動物集団の健康をモニタするために好適に使用しうる技術に関し、特に、無線センサ端末及びこれを利用したセンサネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
数年前の牛BSEの出現や鳥インフルエンザの流行などを契機に、家畜や野生動物の健康状態をモニタすることへの必要性が提起されるようになってきたが、最近は、豚インフルエンザが人間に感染し、世界的大流行に至ったこともあって、その関心はますます高まってきているようである。
【0003】
豚舎や鶏舎など、飼育場で飼われている家畜の頭数は、一般に非常に多い。もちろん、例えば管理区域内などに生息する動物の頭数も非常に多い。したがって、動物を一頭一頭(一羽一羽)手作業で検査することは、事実上困難である。そこで、例えば特開2007−306804号公報に記載のように、家畜にセンサ端末を取り付け、無線でデータを収集して分析しようとする提案がなされてきた。
【0004】
かかる目的に使用されるセンサ端末は、動物の健康状態に関する情報を継続的にセンシングし、得られた情報を無線で送信できなければならない。しかし、多数の動物へ多数の端末を取り付けることになるので、バッテリ交換の頻度が高くなると、保守・交換作業の負担が過大となり、結果的に管理を継続することをあきらめざるを得ない事態を招きかねない。従って、動物の健康管理に使用するセンサは、バッテリの交換を必要とせずとも長期間動作しうるものではなくてはならない。
【0005】
一方、センサ端末を取り付けても動物がなるべくストレスを感じないようにするためには、センサ端末は、できるだけ小型・軽量であることが望ましい。さらに、モニタしようとする動物の数が増えるほど、多数のセンサが必要となるので、センサの価格もできるだけ低く抑えたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−306804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、動物集団の健康管理用センサ端末には、小型・軽量・安価に製作されることができ、且つ、バッテリ交換なしで、長期間、情報のセンシングと無線送信を行うことができることが望ましいという、非常に難易度の高い要求が掲げられる。
【0008】
本発明は、これらの要求のうち少なくとも1つ以上に対する解決手段となりうる技術を開発しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、受信機の能力を上げることによって、無線センサ端末を簡素化し、それによって無線センサ端末を低消費電力化することに思い至った。
【0010】
その具体的な構成の1つによれば、複数の無線センサ端末と、少なくとも1つの受信装置とを有するセンサネットワークシステムにおいて、
前記複数の無線センサ端末は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレート及び/又は周波数で前記フレームの送信を行うように構成され、
前記受信装置は、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレート及び/又は周波数に対応付ける対応情報を格納しうる記憶部を有し、前記記憶部に記憶した前記対応情報と受信信号のボーレート及び/又は周波数とに基づいて、前記無線センサ端末の個体識別を行うように構成される。
【0011】
送信ボーレートや送信周波数を端末識別に利用することにより、通信フレーム内に個体識別情報を持つ必要が無くなり、通信フレームの短電文化が可能となる。送信に必要な電力は電文長にほぼ比例するので、電文長の短縮は送信電力の削減をもたらし、結果として無線センサ端末の低消費電力化に大きく寄与する。
【0012】
また、前記無線センサ端末が送信する通信フレーム長も固定化する。そして、受信装置ではソフトウェア無線技術を使用することにより、通信フレームを同定するように構成する。つまり、広帯域の受信信号を一括して周波数スペクトルに変換し、メモリに蓄積した周波数スペクトルの時間列を後で分析して、通信フレームの送信周波数やボーレートを同定する。通信フレームや通信チャネルの特定をオフラインで行うので、フレームの中にタイミング同期情報やフレーム同期情報を含める必要がない。これによって、さらに電文長を短くすることが可能となり、ひいては無線センサ端末をさらに低消費電力化することができる。広帯域の信号を一括して受信するため、受信装置は、ダイレクトコンバージョン方式にて受信を行うように構成されることが好ましい。
【0013】
ところで、複数のセンサ端末が同じ周波数で通信するように構成される場合、複数のセンサ端末が同時にデータを送信すると、送信信号が衝突して受信装置側ではこれらを区別することができなくなる。しかし、生物群に対する測定という目的においては、生体活動のランダム性により、センサ端末の送信タイミングもランダムになり、送信信号の衝突が生じにくいので、問題にならない。それよりも、上記の構成のように、通信フレームから個体識別情報や同期情報を省いて短電文化し、送信に必要な電力を節約して、センサ端末の長寿命化を図った方が、多数の生物個体を管理・測定する上では遙かに利益が大きい。
【0014】
本発明の実施形態は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成される、複数の無線センサ端末からの信号を受信する、次のような受信装置を含む。
【0015】
この受信装置は、受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、前記周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレートに対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、プロセッサと、を備える。
【0016】
そして前記プロセッサは、前記第1の記憶手段から一定時間分の周波数データを読み出すと共に、特定の周波数帯域におけるパワーの時間変動を調べ、前記特定の周波数におけるパワーが増大する期間の長さに基づいて、前記無線センサ端末が送信したデータのボーレートを判定し、さらに前記第2の記憶手段に格納した前記対応情報に基づいて、前記ボーレートが判定されたデータを送信した無線センサ端末を特定しうるように構成される。
【0017】
また本発明の実施形態は、次のような受信装置を含む。この受信装置は、それぞれ互いに異なる周波数の電波を利用してデータ送信を行う複数の無線センサ端末からの信号を受信するための受信装置であって、
受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、前記受信信号を周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定の周波数に対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、プロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記メモリから一定時間分の周波数データを読み出すと共に、前記データベースに格納された前記対応情報に基づいて、特定の周波数のパワーの変化を一定期間に亘って調べることにより、前記複数の無線センサ端末のうちの特定の無線センサ端末から送信された信号を同定するように構成される。
【0018】
本発明の実施形態は、上記の受信装置と組み合わせて使用され、該受信装置に信号を送信する無線センサ端末を含む。
【0019】
本発明の実施形態は、次のようなコンピュータ・プログラムを含む。このコンピュータ・プログラムは、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成される、複数の無線センサ端末からの信号を受信する受信装置を動作させるコンピュータ・プログラムであって、
ただし前記受信装置は、受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、前記周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレートに対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、プロセッサとを備え、
前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサを、前記第1の記憶手段から一定時間分の周波数データを読み出すと共に、特定の周波数帯域におけるパワーの時間変動を調べ、前記特定の周波数におけるパワーが増大する期間の長さに基づいて、前記無線センサ端末が送信したデータのボーレートを判定し、さらに前記第2の記憶手段に格納した前記対応情報に基づいて、前記ボーレートが判定されたデータを送信した無線センサ端末を特定しうるように動作させる。
【0020】
本発明の実施形態は、次のようなコンピュータ・プログラムを含む。このコンピュータ・プログラムは、それぞれ互いに異なる周波数の電波を利用してデータ送信を行う複数の無線センサ端末からの信号を受信するための受信装置を動作させるコンピュータ・プログラムであって、
ただし前記受信装置は、受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、前記受信信号を周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、 前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定の周波数に対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、プロセッサとを備え、
前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサを、前記メモリから一定時間分の周波数データを読み出すと共に、前記データベースに格納された前記対応情報に基づいて、特定の周波数のパワーの変化を一定期間に亘って調べることにより、前記複数の無線センサ端末のうちの特定の無線センサ端末から送信された信号を特定しうるように動作させる。
【0021】
前述のように、本発明は、動物集団の健康管理に適する技術を開発しようとしてなされた発明であるが、開発された発明は、動物集団の健康管理という目的に限らず、様々な分野へ適用が可能である。
【0022】
更なる技術的課題や新規な構成、新規な効果を、添付図面とモデル実施例を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本明細書で例示するセンサネットワークシステム100の概要を説明するための図である。
【図2】センサネットワークシステム100の構成要素である無線センサ端末102の概要を説明するための図である。
【図3A】無線センサ端末102の構成要素である振動センサ202の回路構成の例を説明するための図である。
【図3B】無線センサ端末102の構成要素である振動センサ202の回路構成の例を説明するための図である。
【図4】無線センサ端末102の構成要素である送信機204の回路構成の例を説明するための図である。
【図5】送信機204の動作をまとめたフローチャートである。
【図6】センサネットワークシステム100の構成要素である受信装置104の概要を説明するための図である。
【図7】受信装置104の受信動作の一つの側面を説明するための図である。
【図8】無線センサ端末102が送信する信号のデータ形式の一例を説明するための図である。
【図9】受信装置104の受信動作の別の側面を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、以下に詳細に説明するセンサネットワークシステム100の概要を説明するための図である。センサネットワークシステム100は、複数の無線センサ端末102と、少なくとも一つの受信装置104を有する。無線センサ端末102には各種のセンサが組み込まれ、測定したデータを無線媒体106を用いて受信装置104へ送信するように構成される。このようなセンサネットワークシステムは、様々な設備の遠隔監視に幅広く利用されているが、また、生物の遠隔監視にも利用することができる。センサネットワークシステムを利用した動物健康管理システムの一例が、特開2007−306804号公報に記載されている。以下に説明されるように、本明細書で紹介されるセンサネットワークシステム100も、家畜などの監視に特に好適に設計されている。むろん、センサネットワークシステム100の利用分野が動物の監視に限られるわけではない。
【0025】
無線センサ端末102は、人間や動物が長時間違和感なく装着し続けられるように、小型且つ軽量に構成されることが望ましい。より好適には、ニワトリなどの小型鳥獣に対しても装着可能なほどに小型化・軽量化されることが好ましい。また、無線センサ端末102を装着する個体が多数に登る場合、バッテリ交換の頻度は少なければ少ないほど管理者の作業量が減少して便利であるので、消費電力もできるだけ少ないことが望ましい。以下に説明するように、無線センサ端末102には、消費電力をできるだけ抑えるための様々な工夫が施されている。
【0026】
受信装置104は、センサネットワークシステム100に少なくとも1つ備えられ、複数の無線センサ端末102からのデータを受信する。受信装置104は、受信したデータを単体で解析しうるコンピュータ装置であることができ、実施形態によっては、解析結果を内蔵または外付けのディスプレイに表示したり、プリンタに印刷したり、USBメモリやCD−Rなどのリムーバブルメディアに出力したり、各種のインタフェースを通じて外部のコンピュータへ送信したりするように構成されることができる。別の実施形態においては、受信装置104は、受信したデータを解析せずに(またはある程度の解析を施して)、他のコンピュータへ送信する装置であってもよい。そこで、受信装置104は、有線又は無線によって、コンピュータ・ネットワークシステムへ接続されていてもよい。
【0027】
図2は、無線センサ端末102の構成の概要を説明するための図である。無線センサ端末102は、振動センサ202,送信機204,送信機204により形成された送信信号を放射するためのアンテナ206,無線センサ端末102の各要素に電力を供給するためのバッテリ208などを備えている。振動センサ202は、本明細書で初めて開示される新規な構成を有しており、後に説明されるように、振動が一定量積み上がると、電圧検出端子の電圧が変化するように構成される。この電圧変化を送信機204が検出しうるようにするために、振動センサ202と送信機204とは、電圧検出ライン212を介して接続されている。また、後に説明されるように、振動センサ202は、ほぼ無電力で動作し、且つ発電機能をも有している。そこで、その発電された電力を送信機204が利用しうるようにするために、振動センサ202と送信機204とは、電力供給ライン214を介しても接続される。
【0028】
実施形態によっては、無線センサ端末102には、振動センサ202の他にも、要求に応じて様々なセンサを搭載することができる。もちろん、実施形態によっては、振動センサ202以外のセンサは搭載されない場合もある。ここで紹介する実施例においては、図示される通り、無線センサ端末102には温度センサ220が搭載されている。
【0029】
図3Aは、振動センサ202における、振動検出のための回路構成を説明するための図である。振動センサ202は圧電素子302を有する。よく知られているように、圧電体は、力が加えられると電圧を生じる性質を有しており、圧電素子は、この性質を利用して、力を電気的な信号として捉えうるように構成した素子である。圧電素子の最も簡単な構造の一つは、圧電体の板を2枚の電極で挟んだ構造である。圧電素子は振動により変形しやすい形状を有することが好ましいが、このような目的によく知られた構造には、例えば、両面に導電膜を形成した細長の圧電体板の一端を固定して、片持ち梁状に形成したものがある。このような形状の圧電素子は、既知のMEMS製造プロセスを利用して、非常に小さく形成することができる。圧電素子にはさまざまな構造が知られているので、必要に応じて適当な構造を選択することができる。圧電素子は、外部から電力を加えることなく電圧を生じうるので、すなわち消費電力ゼロで電圧を生じるので、圧電素子の採用は、振動センサ202の省電力性に大きく貢献する。
【0030】
圧電素子302は、ダイオード304及び306からなる交直流変換回路を介して、コンデンサ308に並列に接続される。また、コンデンサ308の一方の電極の側には、CMOS論理反転回路310の入力部を接続する。
【0031】
振動に応じて圧電素子302に生じる電圧は、圧電素子302が変形する方向に応じて極性が反転するので、交流的にならざるを得ない。すなわち圧電素子302によって生じる電流は交流であるが、ダイオード304及び306によって、電流が一定方向にしか流れないようにされるため、圧電素子302が振動を受けるにつれ、コンデンサ308には徐々に電荷が蓄積される。そこで、CMOS論理反転回路310に予め電圧をかけておくと、コンデンサ308に蓄積される電荷がある量を超えた時点で、CMOS論理反転回路310への入力電圧が閾値を超え、CMOS論理反転回路310の出力部312の電圧が変化(反転)する。つまり、この電圧の変化により、圧電素子302にある量の振動が生じたことを知ることができる。
【0032】
なお、ダイオード304及び306からなる図示した整流回路以外にも、4つのダイオードを用いたダイオード・ブリッジなど、様々な整流回路が知られているので、図示した構成に変えてそれらを用いてもよいことは言うまでもない。
【0033】
コンデンサ308に所定の量の電荷が蓄積されるまで、CMOS論理反転回路310の出力部312の電圧が変化しないことから、振動センサ202は、積分型のセンサと言えるだろう。また、CMOS論理反転回路310に予め電圧をかけておかなければならないとはいえ、電圧をかけておくだけでは電力の消費は発生せず、また、出力電圧の反転自体も原理的には電力を必要としないので、振動センサ202は殆ど電力を消費しない。実際には、出力電圧の反転時に流れる電流などの影響により、回路にジュール熱が発生するので、そこで電力が消費されるが、その影響は微々たるものである。数百メガヘルツの頻度で電圧スイッチングが行われる、コンピュータ用のプロセッサなどでは、ジュール熱の影響が甚大になるが、振動センサ202ではせいぜい10Hzのオーダーであろうから、その影響は非常に小さくなる。したがって、図3Aのセンサ回路は、非常に消費電力が小さい、省電力性に極めて優れたセンサ回路となっている。
【0034】
加えて、コンデンサ308には電荷が蓄積されるため、これを有効利用することにより、振動センサ202は、発電機としての機能も提供することになる。コンデンサ308に蓄積された電荷を利用するための回路の一例を、図3Bに示す。図3Bにおいて、図3Aに示した回路と同じ要素には、同じ符号を付して説明を省略する。図3Aに示した回路との大きな相違点は、スイッチ326を介して、コンデンサ308に並列にコンデンサ328が接続されていることである。スイッチ326をオンにすることにより、コンデンサ308に蓄積された電荷をコンデンサ328に転送することができる。したがって、コンデンサ328の容量は、コンデンサ308の容量よりもかなり大きいものであることが好ましい。
【0035】
スイッチ326の開閉を制御するため、スイッチ326としてpチャネルMOSFETを使用すると共に、pチャネルMOSFETに単安定マルチバイブレータ324を接続し、さらにCMOS論理反転回路310にもう1つCMOS論理反転回路322を直列に接続し、その出力を単安定マルチバイブレータ324に接続する。この構成によれば、コンデンサ308の極間の電圧がCMOS論理反転回路310のしきい値電圧を超えると、CMOS論理反転回路310の出力電圧がHighからLowに変化し、それに応じてCMOS論理反転回路322の出力端子323の電圧がLowからHighに変化する。単安定マルチバイブレータ324は、この電圧変化に応じてパルスを1つ出力するように構成される。このパルスがpチャネルMOSFETによるスイッチ326を所定時間オンにし、コンデンサ308からコンデンサ328への電荷の転送が行われる。
【0036】
また、コンデンサ308からコンデンサ328への電荷の転送が行われることにより、コンデンサ308の電荷がクリアされ、CMOS論理反転回路310並びに322の出力電圧も元に戻る。これによって、振動センサ202は、新たに加えられた振動を、コンデンサ308への電荷の蓄積という形で、再び記憶し始めることが可能となる。
【0037】
図2に描かれている電力供給ライン214は、スイッチ326とコンデンサ328との間に設けられる端子327に接続されている。この端子327を通じて、図2の送信機204は、コンデンサ328に蓄積された電荷を利用することができる。なお、図2に描かれている電圧検出ライン212は、CMOS論理反転回路322の出力電圧を反映する位置に設けられる端子323に接続される。したがって、送信機204は、端子323の電圧の電圧変化を、信号送信のトリガとして利用することができる。
【0038】
以上の説明で明らかなように、振動センサ202は、電力を殆ど消費せずに振動があったことの情報を提供できるだけでなく、外部に電力を供給しうる発電機としての機能も有する。したがって、極めて省電力性に優れたセンサであると言える。また、これまで説明してきた回路や素子は、既知のMEMS製造プロセスや半導体製造プロセスを用いて、容易に、また非常に小さく作ることができる。これらの利点のため、振動センサ202は、小型・軽量・低消費電力に対する要求が極めて厳しい、無線センサ端末へ組み込む用途に非常に適している。
【0039】
次に、図4を用いて、図2に描かれている送信機204の回路構成を説明する。送信機204は、送信機204の動作を制御するCPU402や、CPU402の動作させるためのプログラムを格納するメモリ404、送信信号を形成する送信回路406、振動センサ202の電圧変化を検出するための端子408、アンテナ出力端子410などを備えている。図2に描かれるように、無線センサ端末102が温度センサ220を備える場合には、送信機204は、温度センサ220との接続端子420も備える。
【0040】
メモリ404に格納されるプログラムは、端子408の電圧を定期的にチェックするように、CPU402を動作させるように構成される。端子408は、電圧検出ライン212(図2参照)を介して、CMOS論理反転回路322(図3B参照)の出力部の端子323に接続される。メモリ404に格納されるプログラムは、端子408における電圧が、LowからHighへと変化したことを検出すると、CPU402を制御して、送信用のデータを形成し、送信回路406を用いてデータの送信を行うように構成される。すなわち、本実施例における送信機204は、振動センサ202のコンデンサ308に蓄積される電荷がCMOS論理反転回路310のしきい値電圧を超えるたびに、信号を送信するように構成される。
【0041】
なお、CPUによるチェックを利用せずに、端子408における電圧変化によって割り込みが発生するような、CMOS入力による割り込み回路を利用して、送信回路406の送信をトリガするように構成してもよい。このような、CMOS入力の割り込み回路を利用する構成によれば、電圧の監視に電力が不要となるので、端末の消費電力をより低く抑えることができる。
【0042】
コンデンサ308の電荷がクリアされてから、再びCMOS論理反転回路310のしきい値電圧を超えるまでに電荷が蓄積されるには、一定量の振動が圧電素子302に加えられる必要がある。このため、加えられる振動の加速度が低い場合には、コンデンサ308にしきい値以上の電荷が蓄積されるまでに比較的長い時間を要し、振動の加速度が高い場合には、コンデンサ308に電荷が蓄積されるまでの時間が比較的短くなる。すると、振動の加速度が低い場合には、送信機204による信号送信の間隔が短くなり、振動の加速度が高い場合には、その間隔が長くなる。
【0043】
したがって、送信機204による信号送信の間隔は、圧電素子302に加えられた振動の積分に関する情報を含んでいるものと考えられる。すなわち、例えば、無線センサ端末102が装着された動物の活動量(運動量)に関する情報を含んでいるものと考えられる。動物の活動量を反映して送信頻度を変化させるという技術は、これまでには存在しなかった新しいタイプの測定技術である。
【0044】
受信装置104(図1参照)は、特定の無線センサ端末102から受信する信号の、単位時間当たりの受信回数を判断する手段を備える。また、単位時間当たりの受信回数に関する情報を、画像やデータなど必要に応じた形態で出力しうるように構成される。かかる機能を有する手段は、例えば、プログラムとCPUとからなるソフトウェア手段によって実現することができる。
【0045】
メモリ404のプログラムは、端子408における電圧が、LowからHighへと変化したことを検出すると、温度センサ220を用いて温度情報を得るように、CPU402を制御してもよい。例えば、温度センサ220が単なる抵抗である場合、メモリ404のプログラムは、端子408における電圧変化の検出に応じて、温度センサ220に電流を流して抵抗値を測定するように、CPU402を制御してもよい。メモリ404のプログラムは、得られた温度情報を送信信号に含めるように、CPU402を制御してもよい。
【0046】
送信回路406は、CPU402によって形成された送信データを、送信用の信号に変調するように構成される。
【0047】
図5のフローチャートを用いて、これまで説明してきた送信機204の動作をまとめておく。ステップ500は送信機204の起動を示す。送信機204が起動すると、送信機204が起動すると、メモリ404のプログラムは、CPU402を制御して、端子408における電圧を定期的にチェックさせる(ステップ502,504)。電圧が所定の方向に変化したことを検出すると、メモリ404のプログラムは、温度センサ220を利用して温度に関する情報を得るようにCPU402を制御する(ステップ506)。続くステップ508において、メモリ404のプログラムは、送信用のデータを形成するようにCPU402を制御する。ステップ506で測定された温度のデータも、送信用データに含められる。送信用のフォーマットに形成されたデータは、送信回路406によって送信用の信号に変調され、アンテナ206を介して送信される(ステップ510)。その後、ステップ502に戻り、メモリ404のプログラムは、再び、端子408における電圧を定期的にチェックするように、CPU402を制御する。
【0048】
以上の構成は、本発明の実施形態の一例に過ぎないことに留意されたい。例えば、上述のステップ502,504は、端子408の電圧変化によって、CPU402に割り込みを発生させるような構成に置き換えることができる。例えば、いわゆるCMOS入力の割り込み回路による構成に置き換えることができる。そして、ステップ506以降は、その割り込みの発生に応じて実行されるように構成されることができる。かかる実施形態によれば、CPU402による定期的な電圧チェックが不要になり、消費電力ゼロで電圧が監視されることと同じになるため、図5に例示した実施形態よりも消費電力を削減することができる。
【0049】
また、これまでの説明してきた実施形態では、送信機204の動作制御にCPU402を利用してきたが、実施形態によっては、CPUを用いずに、ハードウェア回路のみで、電圧チェックと信号送信を行うように構成することもできる。この場合、送信回路406は、端子408の電圧が所定の方向に変化したことをトリガとして、所定の信号を送信するように構成される。消費電力の点からは、CPUを用いない実施形態の方が、CPUを用いる図4,図5の実施形態よりも好ましいと言えるだろう。
【0050】
ところで、図1に描かれるように、本明細書で例示されるセンサネットワークシステム100は、1台の受信装置104に対して複数の無線センサ端末102が存在する。したがって、受信装置104は、受信したデータがどの送信機102から送信されたものであるかを区別しなければならない。本実施例では、無線センサ端末102の個体識別のために、ボーレートを利用している。具体的には、各無線センサ端末102は、それぞれ、互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成される。
【0051】
例えば、8ビットの電文を、FSK(周波数変調)を用いて送信する例を考える。これを、無線センサ端末102うちの1台が10000bpsで、別の1台が1000bpsで送信するとする。ボーレートとは1bitの電文を送る時間であるので、10000bpsのボーレートは、1bitのデータを送信するのに100マイクロ秒かかることを意味する。すると、8ビットの電文を10000bpsのボーレートで送信すると、変調に用いられる周波数において、800マイクロ秒の間、電界強度が高くなることが観測できる。
【0052】
一方、1000bpsのボーレートは、1bitのデータを送信するのに1000マイクロ秒かかることを意味する。従って、同じデータをボーレート1000bpsで送信すると、変調周波数において、8000マイクロ秒の間、電界強度が高くなることが観測される。受信装置104は、このような信号持続時間(例えば800マイクロ秒や8000マイクロ秒)を認識できるように構成され、その持続時間に基づいて、信号のボーレートを判断し、判断したボーレートに基づいて、送信端末の個体識別を行いうるように構成される。
【0053】
図6を用いて、受信装置104の構成の概要を説明する。受信装置104は、送信電波を受信するための受信アンテナ602及び受信回路604,受信信号をA/D変換するためのA/D変換回路606,A/D変換された受信信号を周波数変換するFFT回路608,CPU610などを備える。また受信装置104は、少なくとも3つの記憶領域612〜616を備える。第1の記憶領域612は、CPU610に所望の機能を発揮させるためのプログラムを格納するために使用されうる。第2の記憶領域614は、複数の無線センサ端末102の特定の個体を特定のボーレートに対応付ける対応情報を記憶するデータベースを格納するために使用される。第3の記憶領域616は、受信したデータを格納するために使用される。第1〜第3の記憶領域612〜616は、実施形態によっては、物理的に同一の記憶媒体上に実現されることができ、また実施形態によっては、物理的に異なる記憶媒体によって構成されることもできる。第1〜第3の記憶領域612〜616として使用しうる記憶媒体は、容量や速度などの要求を満たせば、いかなる媒体を用いてもよく、例えば、DRAMやSDRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどであることができる。
【0054】
図7を用いて、受信装置104の受信動作の一つの側面を説明する。
【0055】
ステップ700は、受信装置104の起動を示す。信号の受信が可能になると、受信装置104は、受信アンテナ602及び受信回路604によって信号を受信し、A/D変換回路606によって次々にA/D変換し、所定の数のサンプルが蓄積されると、それをFFT回路608によって次々に周波数のデータへと変換するように構成される(ステップ702)。後述のように、受信回路604は、ダイレクトコンバージョン方式を利用して信号を復調するように構成されることが好ましい。記憶手段612に格納されるプログラムは、FFT回路608が周波数変換したデータを、次々に記憶手段616に格納するように、CPU610を制御する(ステップ704)。したがって、記憶領域616は、複数回のFFT処理に相当する量の周波数データを格納しうるだけの容量を備えていなければならない。
【0056】
記憶領域612のプログラムの制御により、CPU610は、記憶領域616に、所定の時間分の周波数データが蓄積されたか否かをチェックする(ステップ706)。蓄積されていたなら、CPU610は、上記プログラムの制御に従い、記憶領域616から所定の時間分の周波数データを読み出す(ステップ708)。
【0057】
ステップ710において、CPU610は、上記プログラムに従い、無線センサ端末102が使用する変調周波数における周波数パワーの時間変動を調べる。したがって、無線センサ端末102はFSKを利用してデータを送信することが仮定されている。また、無線センサ端末102が使用する変調周波数は、受信装置104において既知であることが好ましい。当該変調周波数における周波数パワーの増大が、一定期間以上持続していれば、それは複数の無線センサ端末102のいずれかからの信号であると判定し、次のステップ712へと進む。当該変調周波数において周波数パワーの増大がみられなければ、その期間には無線センサ端末102からの信号の受信は無かったものとして、ステップ702に戻る。
【0058】
ステップ712において、CPU610は、上記プログラムに従い、周波数パワーが増大している期間と、送信データの電文長とから、受信した信号のボーレートを判定する。ここで、送信データの電文長も、受信装置104で予め知られている必要がある。また、受信装置104へ信号を送信する全ての無線センサ端末102が、同じ電文長でデータ送信を行うように構成される必要がある。つまり、前述のように、受信装置104へ信号を送信する全ての無線センサ端末102は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成されている。
【0059】
ステップ714では、CPU610が、記憶領域612のプログラムの指示に従い、第2の記憶領域614に格納される上記データベースを利用して、前のステップで判定した特定のボーレートに対応する、特定の無線センサ端末102を同定する。ステップ716において、上記プログラムは、ステップ710で同定したデータを、ステップ714で同定した無線センサ端末102に関連づけて、例えば記憶領域616へ格納するように、CPU610を動作させてもよい。
【0060】
符号718は、処理が再びステップ702に戻ることを表している。しかし、CPU610の処理がステップ702に戻るのは、図示された位置に限らず、例えばステップ710と712の間でもよいし、ステップ712と714の間でもよい。これらはCPU610の処理能力と記憶領域612のプログラムの構成によって、適宜定められる。
【0061】
実施形態によっては、受信装置104は、画像信号を形成するための回路622を備え、CPU610及び上記のプログラムは、特定の無線センサ端末102に関連付けられた受信データを所定の記憶領域616から読み出し、それを表示するための信号を画像信号形成回路622で形成し、画像信号出力端子624から出力するように構成されてもよい。
【0062】
また、実施形態によっては、受信装置104は、有線または無線の手段によって、外部の機器と通信するためのインタフェース626を備え、CPU610及び上記のプログラムは、受信したデータを、特定の無線センサ端末102に関連づけて、外部の機器へ出力するように構成されてもよい。このような外部機器は、例えば、USBメモリや他のコンピュータなどであってもよい。
【0063】
以上の流れや構成は、本発明の実施形態の一例に過ぎないことに留意されたい。例えば、A/D変換回路606のサンプリング周波数や、FFT回路608が周波数変換を行うサンプル数は既知であるので、上述のステップ706のチェック処理は省略し、単に、所定時間毎に、記憶領域616から所定の時間分の周波数データを読み出すという構成に、ステップ706および708をまとめることが可能である。
【0064】
上述のように、受信装置104へ信号を送信する全ての無線センサ端末102は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成されている。また、受信装置104は、その電文長を、CPU610が利用可能な形態で予め記憶しうるように構成されており、また、特定のボーレートを特定の無線センサ端末102に関連づける情報を、CPU610が利用可能な形態で予め記憶しうるように構成されている。かかる構成によれば、受信装置104は、受信したデータのボーレートに基づいて、そのデータを送信してきた無線センサ端末102の個体識別を行うことが可能となる。
【0065】
受信装置104は、ボーレートにより個体識別が可能であるので、各無線センサ端末102は、全て、同じ変調周波数を用いることも可能である。しかし、その場合は、複数の無線センサ端末102が同時にデータを送信すると、それらを分離することはできなくなる。
【0066】
つまり、複数のセンサ端末が同じ周波数で通信するように構成される場合、複数のセンサ端末が同時にデータを送信すると、送信信号が衝突して受信装置側ではこれらを区別することができなくなる。しかし、生物群に対する測定という目的においては、生体活動のランダム性により、センサ端末の送信タイミングもランダムになり、送信信号の衝突が生じにくいので、あまり問題にならない。それよりも、上記の構成のように、通信フレームから個体識別情報や同期情報を省いて短電文化し、送信に必要な電力を節約して、センサ端末の長寿命化を図った方が、多数の生物個体を管理・測定する上では遙かに利益が大きい。
【0067】
しかし、実施形態によっては、無線センサ端末102の送信周波数も、端末によって異なるようにしてもよい。その場合、受信装置104は、ボーレートと共に、送信周波数についても各端末との対応付けが可能であるような情報を格納しておくことが好ましい。かかる情報は、例えば、{端末ID,ボーレート,周波数}のような、非常に単純な形式のデータであることができるだろう。記憶領域612のプログラムは、かかる情報を用いて、特定した周波数とボーレートとからデータを送信してきた端末を特定するように構成される。
【0068】
また、ステップ710に関連して説明したように、上記の構成では、無線センサ端末102から送信されたデータフレームや送信周波数の特定は、記憶領域616から読み出したデータを解析することによって行われる。従って、通信フレームや通信周波数の特定のためのハードウェア回路は必要ではなく、受信機は、受信信号の帯域を絞り込むことなく、一括して周波数スペクトルに変換し、記憶領域616へ溜めていけばよい。従って、受信装置104は、ダイレクトコンバージョン方式にて信号受信を行うように構成されることが好ましい。
【0069】
このように、受信機側でダイレクトコンバージョン方式およびソフトウェア無線技術を使用することにより、無線センサ端末の送信データに個体識別情報やタイミング同期情報・フレーム同期情報を含める必要がなくなり、送信データが短電文化され、送信に必要な電力を節約することができるようになる。
【0070】
図8Aは、無線通信でよく用いられる送信データ形式を図示したものである。送信データの1個のフレーム800は、大きく分けて、クロック同期用のプリアンブル802,フレーム同期用のユニークワード804,個体識別情報806,データ部808,エラー検出・訂正用情報部810の5つの部分から構成される。このうち、プリアンブル802,ユニークワード804,個体識別情報806には、それぞれ、16ビット,16ビット,8ビットの計40ビットが使用されることが多い。しかし、上に無線センサ端末102及び受信装置104に関連して開示した構成によれば、クロック同期情報やフレーム同期情報を含めることは不要であり、また、個体識別情報を含めることも不要である。開示した構成によれば、受信装置104がフレームの開始を判定できさえすればよいので、部分802〜806の40ビットを、例えば、僅か2ビットのフレーム開始情報に置き換えることができる。
【0071】
送信に必要な電力はビット数にほぼ比例する。したがって、40ビットを2ビットに縮めることを可能にしたということは、送信電力をほぼ20分の1に減少させることに成功したということである。もちろん、送信信号には、フレーム開始情報などの他に、伝えるべき情報(例えば温度など)や、エラー検出用の情報なども含まれるため、フレーム全体のビット数を20分の1に縮めることができたわけではない。しかし、データ部に先立って送信されるヘッダ部に関しては、ビット数を20分の1に削減し、その部分に関しては、送信電力をほぼ20分の1に削減することが可能となった。
【0072】
図8Bは、無線センサ端末102から受信装置104へ送信される信号のフレーム構成の例を図示したものである。この例では、1つのフレーム820は、フレームの開始を教えるための2ビットのプリアンブル822と、8ビットのデータ部824、それにエラー検出用の1ビットのパリティビット826からなる。ビット数をできるだけ削減するため、エラー検出用の情報には、1ビットで済むパリティビットを採用した。これによって、データ部に8ビットを使用しても、フレームあたりのビット数を11ビットに抑えることができた。図8Aの例ではフレームあたりのビット数が60ビットであるので、およそ82%のビット数を削減し、それに相当する送信電力を節約することができた。なお、このクレーム構成が単なる例示に過ぎないことは言うまでもない。
【0073】
ある実施形態において、無線センサ端末102は、前述のように温度センサ220を備える。そこで、データ部824には、温度の情報を含めることができる。バッテリ残量などの情報を含めてもよい。
【0074】
別の実施形態では、無線センサ端末102には、振動センサ202以外は何のセンサも搭載されず、無線センサ端末102は、コンデンサ308に所定の電荷が蓄積されるたびに信号を送信するだけである。このような実施形態においては、データ部824に含めるべき情報は特に存在しない。その場合は、フレーム820のビット数が、受信装置104においてボーレートによる個体識別を可能とする長さとなるように、プリアンブル822およびデータ部のビット数を決定すればよいであろう。また、かかる実施形態においては、送信すべきビットは、単に0か1の羅列で構わないであろう。
【0075】
前述のように、ある無線センサ端末102から受信する信号の頻度は、その無線センサ端末102が装着された対象物の活動量に関する情報を含んでいるものと解釈できる。そこで、受信装置104は、かかる情報を出力しうるように構成されている。そのような構成に係る動作を、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
ステップ900は処理の開始を示す。ステップ902において、CPU610は、記憶領域612に格納されるプログラムの制御に基づいて、記憶領域616から、特定の無線センサ端末102に関連づけられて記憶されている受信データを読み出す。これらの受信データは、図7のステップ716において格納されたものである。図7のステップ716では、これらの受信データを、それを送信した無線センサ端末102に関する情報だけでなく、受信した時間に関する情報と共に、格納している。この時間情報に基づいて、CPU610は、上記のプログラムに従って、単位時間あたりの受信回数を計算する(ステップ904)。ステップ906では、計算した結果を所定の形式に整形し、ステップ908において、整形したデータを出力する。ステップ906において、CPU610は、上記のプログラムに従って、上記の計算結果を特定の送信機102に関連づけて画像を出力するためのデータを作成してもよい。また、外付けメモリや外部のコンピュータへ出力するための形式に整形してもよい。ステップ908における出力先は、ディスプレイ装置やプリンタ装置、USBメモリ等のリムーバブルメディア、有線または無線のネットワークシステムなどであることができる。
【0077】
本明細書によって、消費電力が極めて少なく、発電機能まで有する、符号202で例示された新しい振動センサ構成が開示された。この振動センサを用いることによって、省電力性に極めて優れた無線センサ端末が実現される。この振動センサは、既存のMEMS製造プロセスや半導体製造プロセスを用いて、極めて小さく製造することができ、装置の小型軽量化・低価格化にも有利である。また、ボーレートを端末識別に利用し、受信電波からのデータの抽出もオフラインで行うという新規な構成を採用することにより、送信データのビット数を著しく縮めることが可能となり、送信に必要な電力を大幅に節約することができる。この特徴によっても、無線センサ端末の省電力性能をさらに向上させることができる。さらに、無線センサ端末が、振動エネルギーを電気エネルギーに変換してコンデンサ308に蓄積し、一定量のエネルギーが蓄積されるたびに信号を送信するという新しい構成を有しているため、活動量や運動量を、無線センサ端末からの送信頻度という形で検出することが可能となった。
【0078】
上記の実施形態の他にも、本発明は、様々な実施形態を取りうる。例えば、実施形態によっては、無線センサ端末及び受信装置を、変調周波数の違いに基づいて識別するように構成してもよい。すなわち、複数の無線センサ端末を、それぞれ互いに異なる周波数の電波を利用してデータの送信を行うように構成し、受信装置の側では、特定の周波数を特定の送信機に関連づける情報を(例えば記憶領域614に)格納しておき、特定の周波数のパワーの変化を一定期間に亘って調べることにより、当該測定の周波数を変調周波数に利用する無線センサ端末からの信号を同定するように構成してもよい。むろん、周波数による個体識別と、ボーレートによる個体識別の、両方を用いるように構成してもよい。
【0079】
無線センサ端末102は、回路をできるだけ小さくするため、また消費電力をできるだけ少なくするため、送信機のみを搭載し、受信機は搭載しないように構成することが好ましい。
【0080】
これまでの説明に登場したプログラムは、CD−ROMやUSBメモリ等の記憶媒体に格納されて販売されたり、ネットワークを通じたダウンロードなどの手法により販売されたりすることができる。
【0081】
センサネットワークシステム100を用いて本発明の実施形態の例を説明してきたが、これらの説明や添付図面は、本発明の範囲を限定する意図で提供されたものではなく、本発明の深い理解に資する目的で提供されたに過ぎない。本発明は、本発明の技術思想を逸脱することなく、様々な実施形態を取り得ることは言うまでもない。本発明の好適な実施形態の一例は、添付の特許請求の範囲に記載の各請求項に示されているが、本明細書には、請求項に特定された発明以外にも新規な発明が開示されていることに留意されたい。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や方法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする発明を、添付の特許請求の範囲に特定したが、発明者は、現在のところは特許請求の範囲に特定されていない発明であっても、本明細書に開示される発明を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0082】
100 センサネットワークシステム
102 無線センサ端末
104 受信装置
106 無線媒体
202 振動センサ
204 送信機
206 アンテナ
208 バッテリ
212 電圧検出ライン
214 電力供給ライン
220 温度センサ
302 圧電素子
304,306 ダイオード
308,328 コンデンサ
310,322 CMOS論理反転回路
324 単安定マルチバイブレータ
326 スイッチ
404 メモリ
406 送信回路
602 受信アンテナ
604 受信回路
606 A/D変換回路
608 FFT回路
610 CPU
612,614,616 記憶領域
622 画像信号形成回路
626 インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線センサ端末と、少なくとも1つの受信装置とを有するセンサネットワークシステムであって、
前記複数の無線センサ端末は、それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレート及び/又は周波数で前記フレームの送信を行うように構成され、
前記受信装置は、前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレート及び/又は周波数に対応付ける対応情報を格納しうる記憶部を有し、前記記憶部に記憶した前記対応情報と受信信号のボーレート及び/又は周波数とに基づいて、前記無線センサ端末の個体識別を行うように構成される、
センサネットワークシステム。
【請求項2】
前記受信装置は、ダイレクトコンバージョン受信方式により広帯域の信号を一括してA/D変換し、該A/D変換により得られたデジタルデータを周波数スペクトルに変換すると共に、メモリに蓄積した前記周波数スペクトルの時間列をオフラインで分析して、通信フレームの送信周波数及び/又はボーレートを同定するように構成される、請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成される、複数の無線センサ端末からの信号を受信する受信装置であって、
受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、
A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、
前記周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、
前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレートに対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、前記第1の記憶手段から一定時間分の周波数データを読み出すと共に、特定の周波数帯域におけるパワーの時間変動を調べ、前記特定の周波数におけるパワーが増大する期間の長さに基づいて、前記無線センサ端末が送信したデータのボーレートを判定し、さらに前記第2の記憶手段に格納した前記対応情報に基づいて、前記ボーレートが判定されたデータを送信した無線センサ端末を特定しうるように構成される、受信装置。
【請求項4】
それぞれ互いに異なる周波数の電波を利用してデータ送信を行う複数の無線センサ端末からの信号を受信するための受信装置であって、
受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、
A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、
前記受信信号を周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、
前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定の周波数に対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、前記メモリから一定時間分の周波数データを読み出すと共に、前記データベースに格納された前記対応情報に基づいて、特定の周波数のパワーの変化を一定期間に亘って調べることにより、前記複数の無線センサ端末のうちの特定の無線センサ端末から送信された信号を同定するように構成される、受信装置。
【請求項5】
前記第1の記憶手段と前記第2の記憶手段は物理的に同一の記憶媒体に実現される、請求項3または4に記載の受信装置。
【請求項6】
ダイレクトコンバージョン方式を用いて広帯域の信号を一括して受信するように構成される、請求項3から5のいずれかに記載の受信装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかの受信装置と組み合わせて使用され、該受信装置に信号を送信する無線センサ端末。
【請求項8】
前記送信する信号が、フレーム単位で区分される信号であり、前記フレームは、
・ フレームの開始を示すビットと、
・ 通信しようとする情報を表すビットと、
・ 誤り検出用のビットと、
から構成される、請求項7に記載の無線センサ端末。
【請求項9】
前記誤り検出用のビットは1ビットのパリティビットである、請求項8に記載の無線センサ端末。
【請求項10】
前記フレームの開始を示すビットの長さは2ビットである、請求項8または9に記載の無線センサ端末。
【請求項11】
前記フレームは、個体識別用のビットを含まない、請求項8から10のいずれか1項に記載の無線センサ端末。
【請求項12】
前記フレームは、クロック同期用のビットおよび/またはフレーム同期用のビットを含まない、請求項8から11のいずれか1項に記載の無線センサ端末。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1項に記載の無線センサ端末を複数備える無線センサ端末セットであって、該無線センサ端末セットに含まれる無線センサ端末は、それぞれ、互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレート及び/又は周波数で前記フレームの送信を行うように構成される、無線センサ端末セット。
【請求項14】
請求項3から6のいずれかのいずれか1項に記載の受信装置と、請求項13に記載の無線センサ端末セットとを有する、センサネットワークシステム。
【請求項15】
それぞれ互いに同一の電文長のフレームを送信するように構成されると共に、互いに異なるボーレートでデータの送信を行うように構成される、複数の無線センサ端末からの信号を受信する受信装置を動作させるコンピュータ・プログラムであって、ただし前記受信装置は、
受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、
A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、
前記周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、
前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定のボーレートに対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、
プロセッサと、
を備え、前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサを、前記第1の記憶手段から一定時間分の周波数データを読み出すと共に、特定の周波数帯域におけるパワーの時間変動を調べ、前記特定の周波数におけるパワーが増大する期間の長さに基づいて、前記無線センサ端末が送信したデータのボーレートを判定し、さらに前記第2の記憶手段に格納した前記対応情報に基づいて、前記ボーレートが判定されたデータを送信した無線センサ端末を特定しうるように動作させる、コンピュータ・プログラム。
【請求項16】
それぞれ互いに異なる周波数の電波を利用してデータ送信を行う複数の無線センサ端末からの信号を受信するための受信装置を動作させるコンピュータ・プログラムであって、ただし前記受信装置は、
受信信号をA/D変換しうるA/D変換回路と、
A/D変換した前記受信信号を所定のサンプル数毎に周波数のデータに変換しうるフーリエ変換回路と、
前記受信信号を周波数変換したデータを格納しうる第1の記憶手段と、
前記複数の無線センサ端末の特定の個体を特定の周波数に対応付ける対応情報を格納しうる第2の記憶手段と、
プロセッサと、
を備え、前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサを、前記メモリから一定時間分の周波数データを読み出すと共に、前記データベースに格納された前記対応情報に基づいて、特定の周波数のパワーの変化を一定期間に亘って調べることにより、前記複数の無線センサ端末のうちの特定の無線センサ端末から送信された信号を特定しうるように動作させる、コンピュータ・プログラム。
【請求項17】
請求項15または16に記載のコンピュータ・プログラムを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−81529(P2011−81529A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232154(P2009−232154)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人科学技術振興機構委託研究「安全・安心のためのアニマルウォッチセンサの開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】