説明

低温タンクのガス検知システム

【課題】シールドガスの充填頻度を低く抑え、メンテナンスのコストの低減化を可能した、低温タンクのガス検知システムを提供する。
【解決手段】低温液化ガスを貯留した内槽2と、内槽を覆う外槽3とを有し、内槽2と外槽3との間に保冷剤とシールドガスとを充填して保冷層4とした低温タンク1の、内槽3からの低温液化ガスLGの漏洩を検知する低温タンクのガス検知システムである。保冷層4よりガスをサンプリングして赤外分光式センサまたは気体熱伝導式センサを備えたガス検知部12に導入し、低温液化ガス漏洩の有無を検知する工程と、ガス検知部12に導入したサンプリングガスの全量を、保冷層4に返送する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温タンクのガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNG、LPG等の低温液化ガスを貯留する低温タンクでは、安全管理として、貯蔵した低温液化ガスの漏洩の有無を検知するようにしている。具体的には、低温液化ガスを貯留した内槽とこれを覆う外槽との間からガス(窒素)を定常的に吸引してサンプリングガスとし、このサンプリングガス中に可燃性ガスが含まれていないかを検知している。その場合、通常はサンプリングガスの全量を排気し、大気に放出するようにしている。
【0003】
また、例えば特許文献1のガス漏洩検知装置では、内槽と外槽との間の保冷層からガスをサンプリングしてガス漏洩検知部に導き、サンプリングしたガスを吸引燃焼式などによるガス検知部によってその成分を検出し、低温液化ガスの漏洩の有無を検知するようにしている。そして、サンプリングガスについては、その一部を前記保冷層に戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−227100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、定常的にサンプリングを行い、その全量または一部をそのまま排出することから、内槽と外槽との間に高頻度で窒素等のシールドガスを充填しなくてはならず、その作業が煩雑であり、メンテナンスについてのコストを増大させる一因になっている。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シールドガスの充填頻度を低く抑え、メンテナンスのコストの低減化を可能した、低温タンクのガス検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の低温タンクのガス検知システムは、低温液化ガスを貯留した内槽と、該内槽を覆う外槽とを有し、前記内槽と前記外槽との間に保冷剤とシールドガスとを充填して保冷層とした低温タンクの、内槽からの低温液化ガスの漏洩を検知するガス検知システムであって、前記保冷層よりガスをサンプリングして赤外分光式センサまたは気体熱伝導式センサを備えたガス検知部に導入し、低温液化ガス漏洩の有無を検知する工程と、前記ガス検知部に導入したサンプリングガスの全量を、前記保冷層に返送する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の低温タンクのガス検知システムによれば、ガス検知部に導入したサンプリングガスの全量を保冷層に返送するようにしたので、ガス漏洩検知を行うことによるシールドガスのロスがなく、したがってシールドガスの充填頻度を低く抑え、メンテナンスのコストの低減化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の低温タンクのガス検知システムの一実施形態を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の低温タンクのガス検知システムを、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、低温タンクのガス検知システムの一実施形態を説明するための概念図であり、図1中符号1は低温タンクである。この低温タンク1は、LNG、LPG等の低温液化ガスLGを貯留した内槽2と、該内槽2を覆う外槽3とを有し、内槽2と外槽3との間に保冷層4を形成している。
【0011】
保冷層4は、内槽2と外槽3との間に保冷剤とシールドガスとが充填されて、形成されている。シールドガスとしては、通常窒素が使用され、本実施形態でも窒素が用いられているものとする。保冷層4中のシールドガスは、図示しないブリージングタンクによって常に一定の圧力に保持されている。
【0012】
保冷層4内には、適宜箇所、例えば内槽2の周方向に等間隔で4箇所〜8箇所程度、ガスサンプリング装置5が設けられている(図1では省略して一つのみ示している)。ガスサンプリング装置5は、内槽2内に貯留された低温液化ガスの漏洩の有無を検知するべく、保冷層4内のガスをガスサンプリングするためのものである。
【0013】
ガスサンプリング装置5にはサンプリング配管6が接続されており、このサンプリング配管6は保冷層4内から低温タンク1の外部に引き出されて配置されている。そして、このサンプリング配管6には低温タンク1の外部にて循環ポンプ7が接続され、さらにこの循環ポンプ7の下流側にはガス検知部12が設けられている。循環ポンプ7には図示しない制御部が接続されており、この制御部からの信号を受けることにより、循環ポンプ7は連続的にあるいは所定時間毎に作動する。これにより、前記ガスサンプリング装置5およびサンプリング配管6は、保冷層4内のガスを所定量、連続的にあるいは所定時間毎にサンプリングするようになっている。
【0014】
ガス検知部12は、赤外分光式センサ、または気体熱伝導式センサを備えた分析装置からなるもので、例えばサンプリングガスを燃焼させる吸引燃焼式などとは異なり、サンプリングガスを消費することなくその成分を分析し、低温タンク1に貯留した低温液化ガスLGの有無を検知するように構成されている。したがって、このガス検知部12に導入されたサンプリングガスは、成分分析の際に消費されることがないため、分析後、その全量がガス検知部12から導出されるようになっている。
【0015】
ガス検知部12の導出側には、返送配管8が接続されており、返送配管8は、その先端が保冷層4内にまで延びて配置されている。これによって返送配管8は、サンプリング配管6を流れ、さらにガス検知部12で低温液化ガスLGの有無が検知された後ガス検知部12から導出されたサンプリングガスを、保冷層4内に返送するようにしている。
【0016】
また、返送配管8には分岐配管9が設けられている。この分岐配管9は、返送配管8を流れるサンプリングガスを保冷層4内に返送することなく、系外、例えば大気中に放出するように構成されている。返送配管8には第1開閉弁10が設けられ、分岐配管9には第2開閉弁11が設けられている。したがって、これら第1開閉弁10、第2開閉弁11が切り換えられることにより、サンプリングガスが保冷層4内に返送され、あるいは大気中に放出されるようになっている。なお、これら第1開閉弁10、第2開閉弁11に代えて、返送配管8と分岐配管9との分岐点に三方弁を配置し、この三方弁の切り換えでサンプリングガスを保冷層4内に返送するか、大気中に放出するかを設定できるようにしてもよい。
【0017】
このような構成のもとに、本実施形態の低温タンクのガス検知システム、すなわち漏洩ガスの検知を行う方法では、まず、循環ポンプ7を作動させることにより、ガスサンプリング装置5およびサンプリング配管6によって保冷層4内のガスを所定量、連続的にあるいは所定時間毎にサンプリングする。サンプリングしたガスは、循環ポンプ7の下流側に設けられたガス検知部12に導入される。
【0018】
ガス検知部12では、導入したサンプリングガスの成分を分析し、特に内槽2内に貯留した低温液化ガスLGの有無を検知する。これにより、ガス検知部12は低温液化ガスLGの漏洩の有無を検知することになる。
【0019】
ガス検知部12が低温液化ガスLGを検知せず、したがってその漏洩がないことを検知した場合には、定常状態にあるため、第1開閉弁10は開き、第2開閉弁11は閉じた状態となる。これにより、ガス検知部12を導出したサンプリングガスを全量、保冷層4に返送する。ここで、ガス検知部12は、前述したように成分分析の際にサンプリングガスを消費しないため、サンプリング配管6でサンプリングしたガスの全量が、ガス検知部12を経てそのまま保冷層4に返送されることになる。
【0020】
なお、ガス検知部12が低温液化ガスLGを検知し、したがってその漏洩があることを検知した場合には、例えばガス検知部12に接続された制御部がガス漏洩の信号を発し、所定部署にその旨を伝える。また、必要に応じ、第1開閉弁10、第2開閉弁11を切り換え、漏洩した低温液化ガスを含むサンプリングガスを全量、分岐配管9から放出する。
【0021】
このような低温タンクのガス検知システムにあっては、ガス検知部12に導入したサンプリングガスの全量を保冷層4に返送するようにしたので、ガス漏洩検知を行うことによるシールドガスのロスがなく、したがってシールドガスの充填頻度を低く抑え、メンテナンスのコストを低減化することができる。また、シールドガス(窒素)の消費量も少なくすることができるため、低温タンク1の運転コストも低減化することができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1…低温タンク、2…内槽、3…外槽、4…保冷層、6…サンプリング配管、8…返送配管、12…ガス検知部、LG…低温液化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留した内槽と、該内槽を覆う外槽とを有し、前記内槽と前記外槽との間に保冷剤とシールドガスとを充填して保冷層とした低温タンクの、内槽からの低温液化ガスの漏洩を検知するガス検知システムであって、
前記保冷層よりガスをサンプリングして赤外分光式センサまたは気体熱伝導式センサを備えたガス検知部に導入し、低温液化ガス漏洩の有無を検知する工程と、
前記ガス検知部に導入したサンプリングガスの全量を、前記保冷層に返送する工程と、を備えたことを特徴とする低温タンクのガス検知システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−87848(P2013−87848A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228131(P2011−228131)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】