説明

低温炭素及び/又は分子炭素注入された歪み薄膜上の隆起型ソース/ドレインの形成

半導体構造のチャネル領域に引張応力を増大する方法が開示される。この方法は、1つ以上の低温炭素又は分子炭素イオン注入ステップを実行することを含み、炭素イオンを半導体構造中に注入して、チャネル領域の両側に歪み層を生成する。次に、隆起型ソース/ドレイン領域が歪み層上に形成され、続いて隆起型ソース/ドレイン領域をドープするためにイオン注入ステップが用いられる。ミリ秒アニールステップは、歪み層及び隆起型ソース/ドレイン領域を活性化する。歪み層は半導体構造のチャネル領域中のキャリア移動度を増大させる。一方、隆起型ソース/ドレイン領域は、隆起型ソース/ドレイン領域にその後ドーパントイオンを注入することによって引き起こされる、歪み層中のひずみの低減を最小化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トランジスタのソース/ドレイン領域における応力を増大させる分野に関する。より具体的には、本発明は、炭素を注入された歪んだフィルムに隆起型ソース/ドレイン(raised source/drain)領域を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタのチャネル領域における電場を流れる電流は、チャネル領域のキャリア(例えば、n型電界効果トランジスタ(n−FET)における電子、及びp型電界効果トランジスタ(p−FET)における正孔)の移動度に比例する。チャネル領域に対する様々な歪みが、キャリア移動度、すなわち、電流フローに影響を及ぼし得る。例えば、p−FETのチャネル領域に対する圧縮応力は正孔の移動度を高める。n−FETのチャネル領域に対する引張応力は電子の移動度を高める。n−FET及びp−FETチャネル領域に所望の応力を与えるための多くの応力工学的手法が知られている。例えば、圧縮応力(すなわち、電流の方向と平行な、一軸性の圧縮歪み)は、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)の合金でソース/ドレイン領域を形成することにより、p−FETのチャネル領域に生成される。引張応力(すなわち、電流の方向と平行な、一軸性の引張歪み)は、シリコン及び炭素(C)の合金でソース/ドレイン領域を形成することにより、n−FETのチャネル領域に生成される。
【0003】
しかしながら、残る問題は、炭素注入の後に行われるソース/ドレイン注入ステップによって引き起こされる歪みの損失である。例えば、NMOS製造の間、歪み層(SiC)の形成に続いて、ソース/ドレイン領域にリン又はヒ素ドーパント注入が行われる。ドープされたSiCの領域は、その間に、自身の歪みのかなりの部分を失う。さらに、従来の炭素注入技術は、歪み層(SiC)の形成の間にシリコン基板中に欠陥を生じることがある。もし、歪んだSiC領域上にその後隆起型ソース/ドレイン領域を成長させると、これらの欠陥が拡大し、全体の歩留まりを低減させることになる。
【0004】
従って、隆起型ソース/ドレイン領域を用いたトランジスタ構造において、効果的に歪みを与えて維持する方法が必要となっている。そのような方法は、単純、効果的で、且つデバイスの歩留まりを最大にすべきものである。
【発明の概要】
【0005】
半導体デバイスのチャネル領域における歪みを増大する方法であって、チャネル領域を有するシリコン基板を備えた半導体構造を提供する段階と、チャネル領域の両側に位置し、低温炭素イオン注入または分子炭素イオン注入を含むイオン注入ステップにより形成される歪み層を半導体構造内に形成する段階と、歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積することにより、歪み層上に隆起型ソース/ドレイン領域を形成する段階と、隆起型ソース/ドレイン領域をドープする段階と、隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するために半導体構造をアニーリングする段階とを備える方法が開示される。
【0006】
半導体デバイスのソース又はドレイン領域における歪みを増大する方法であって、半導体構造を提供する段階と、低温炭素イオン注入または分子炭素イオン注入を含む複数のイオン注入ステップを用いて、半導体構造のチャネル領域の両側に位置する複数の歪み層を半導体構造内に形成する段階と、歪み層上に複数の隆起型ソース/ドレイン領域を形成するために、複数の歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積する段階と、複数の隆起型ソース/ドレイン領域をドープする段階と、隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するためにミリ秒アニーリング技術を用いて半導体構造をアニーリングする段階とを備える方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面は、その原理を実用的に応用するためにこれまでに考案された、ここに開示する方法の好ましい実施形態を以下の通り示すものである。
【0008】
【図1】代表的なイオン注入機システムの概略図である。
【0009】
【図2】隆起型ソース/ドレイン領域がSi−C歪み層上を覆う代表的なトランジスタ構造の断面図である。
【0010】
【図3】開示される方法の代表的なプロセスフローを示すフローチャートである。
【0011】
【図4】イオン注入、及びドーパント注入後の歪み損失による合成歪みのグラフ表示である。
【0012】
【図5】半導体構造中の深さの関数として歪みを示すグラフ表示である。
【0013】
【図6】半導体構造中の深さの関数として歪みを示すグラフ表示である。
【0014】
【図7A】基板物質と代表的な隆起型ソース/ドレイン領域との間の界面を示す断面図である。
【図7B】基板物質と代表的な隆起型ソース/ドレイン領域との間の界面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記した歪み損失の問題に対して有効な、Si−C層上に隆起型ソース/ドレイン(S/D)を成長させる技術が開示される。炭素の低温イオン注入及び/又は分子炭素イオン注入は、隆起型S/Dの基礎としてその後使用することのできるSi−C層の生成を可能にする。また、Si−C層上にS/Dが隆起されているので、隆起型S/D領域にドーパントイオン(例えばP、As)をその後注入することは、炭素含有領域に注入することに比べて、歪み層への影響が小さい(つまり、ドーパント注入が歪み層を緩和させない)。さらに、炭素の低温注入を用いることにより、従来の炭素注入技術を用いた場合に見られるよりも欠陥の少ない基板表面が得られる。従って、隆起型S/D領域を後で成長させるための、より良好な表面が得られる。
【0016】
開示する技術は、低減された温度における1つ又は一連の炭素イオン注入、及び/又は、低減された温度の基板を用いて、又は用いないで分子炭素を使用することを含む。基板は、歪んだフィルムを形成するために、その後アニールされる。隆起型S/Dが、歪んだフィルム上にその後形成される。開示する技術は、低温注入及び/又は炭素注入を用いて形成される歪み層と、トランジスタに導電性のドーパントを付加する間においてもチャネルにおける歪みを保持する隆起型ソース/ドレインとを組み合わせて使用する点において新規である。この技術により、はるかに小さなサイズのNMOSトランジスタにイオン注入技術を使用することが可能になる。
【0017】
開示する技術は、歪み層とドーパント層を個別に生成することにより、イオンの横方向の配置、及び熱処理(すなわちアニーリング)を含め、各層の処理を最適化することができるという、更なる恩恵をもたらすこともわかるであろう。
【0018】
イオン注入とは、一般的に、エネルギーを持ったイオンを基板に直接衝突させることにより、基板中に化学種を堆積するプロセスのことを指す。半導体製造においてイオン注入機は、ターゲット物質の種類や導電性レベルを変えるドーピングプロセスによく使用される。集積回路基板及びその薄膜構造における正確なドーピングプロファイルが、所望のデバイス特性を達成するために使用される。所望のドーピングプロファイルを得るために、1つ以上のイオン種が、異なる照射量及び異なるエネルギーレベルで注入されてよい。低温イオン注入とは、注入されるべき基板(ウェハ)が、注入プロセスの間、+15℃から−100℃の温度範囲に冷却されるプロセスのことを指す。イオン注入に先立ってウェハを事前冷却する代表的な技術は、米国特許出願公開第2008/0044938号明細書、米国特許出願公開第2008/0121821号明細書、及び、米国特許出願公開第2008/0124903号明細書に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0019】
代表的なイオン注入機システム100を図1に例示する。まず最初に理解されるべきは、システム100は、開示する方法を実行するために使用できる様々なイオン注入機システムの単なる1つであり、また、開示する方法は、いかなる点においても、例示されるシステムの仕様にその応用が限定されるものではないことである。つまり、1×1015(イオン/cm)より大きな照射量、及び、200から20,000eVの間のエネルギーで注入することができる限りにおいて、任意の種類のイオン注入機又はプラズマベースの注入機を使用してよい。さらに、システムは質量フィルタを含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。
【0020】
例示されるイオン注入機システム100は、高真空環境に収容されている。イオン注入機システム100は、電源101による電位にバイアスされたイオン源102、及びイオンビーム10が通過する一連のビームライン部品を備える。一連のビームライン部品は、例えば、引出し電極104、90°磁気解析器106、第1減速(D1)ステージ108、70°磁気コリメータ110、及び第2減速(D2)ステージ112を含む。光線を操作する一連の光学レンズと同様に、ビームライン部品は、イオンビーム10をターゲットウェハに向かって導く前に、イオンビームをフィルタし、また集中させることができる。イオン注入の間、ターゲットウェハは、時としてロプラット(roplat)と呼ばれる装置によって1つ以上の次元(例えば並進、回転、傾斜)に動くことのできるプラテン114に通常取り付けられている。
【0021】
イオン注入機システム100は、システム100の1つ以上の部品を制御するようにプログラムされたシステムコントローラ116を備えてもよい。システムコントローラ116は、上記のシステム部品のいくつか、あるいは全てと接続され、これらと通信することができる。例えば、システムコントローラ116は、所望の注入深さを得るために、イオンを注入するエネルギーを調節することができる。システムコントローラ116は、開示する方法の1つ以上のステップを行うための命令を実行するプロセッサ118を含んでよい。
【0022】
図示されてはいないが、システム100は、注入プロセスの前、あるいは注入プロセスの間、所望の温度で基板を保持するための基板冷却部をさらに含むことができる。基板冷却は、分子炭素の注入と組み合わせて使用してもよい。これは、分子炭素注入の照射量が比較的低い場合に、特に有利である。
【0023】
次に図2には、基板122、歪み(すなわち炭素含有)層128、歪み層128を覆う隆起型S/D領域130、ゲート領域132、及びチャネル領域134を備える、典型的な半導体構造120の断面が示されている。歪み層128(実効的にはトランジスタのS/D領域)は、テクノロジーノード(すなわちマイルストーン)に応じて、様々な厚さ及び面積で設けられてよい。例えば、32ナノメートル(nm)ノードCMOSにおいては、歪み層128の厚さは約40から約140nmであってよい。隆起型S/D層は、典型的にはこの値の約25−30%であるが、隆起型S/Dが担うべき他の要求に応じて、より厚いものであってもよい。32nmノードにおける隆起型S/D構造は、約30から40nm以下であるだろう。しかしながら、もしシリコンのシリサイド消費が高い場合は、この値はより厚くてよい。
【0024】
図3には、図2の構造を形成するプロセスが説明されている。ステップ200において、半導体基板が提供され、指定されたチャネル領域134上にマスク層(不図示)が適用される。マスク層は、その後チャネル領域に炭素イオンが注入されることを防ぐために設けられる。
【0025】
ステップ300において、低温イオン注入技術及び/又は分子炭素注入技術を用いて、炭素イオンが基板122に注入される。注入ステップは、基板中の所望の深さに炭素イオンを位置させるのに十分な注入エネルギーを使用することができる。前述したように、ステップ300は、多数回のイオン注入ステップを含むことができる。多数回の注入ステップを使用する場合には、半導体構造中に所望の最終的な注入プロファイルを得るために、エネルギーレベル及び/又は注入時間は、異なるステップ間で変更してよい。
【0026】
炭素注入ステップは、チャネルキャリアの歪みを最大化するために、チャネル領域134に密接して隣接する歪み層128を生じるように実行されるべきであることが理解されるであろう。チャネルの歪みを最大化することによって、チャネル領域における電子移動度が増し、従って導電性が増大する。
【0027】
炭素注入プロセスが完了すると、構造はステップ400においてアニールされて、注入した炭素イオンがシリコン基板格子の位置を占め、これにより所望の応力を誘起する。アニーリングステップはまた、炭素イオンが凝集するよりも格子に残留することを確実にする。ステップ400は1つ以上のアニーリングステップを含んでよい。アニーリングステップは、スパイク状アニーリング、レーザアニーリング、及び/又はフラッシュアニーリングを含むミリ秒アニールステップを含んでよい。その他の適当な種類のアニールの例としては、大抵は比較的長く、低温アニールである、固相エピタキシアニールを含む。アニールプロセスが許容されるべき基準としては、原子が別の注入されたイオンへと拡散し凝集を形成するのに要する平均時間よりも再結晶化が速いことである。これは、注入される照射量、温度、時間、並びにアモルファス中及び結晶性物質中におけるイオンの拡散性の関数である。
【0028】
1つの実施形態においては、アニーリングステップ(ステップ400)は、炭素イオン注入ステップ(ステップ300)に続いて直ちに行われるわけではない。その代わりに、隆起型S/D領域の形成及びドーピングに続いて単一のアニーリングステップが行われてもよい(下記ステップ700を参照)。この単一のアニーリングステップは、S/D領域を活性化し、歪み層に注入された炭素イオンにシリコン基板格子の位置を占めさせて、所望の応力を誘起するために使用することができる。
【0029】
ステップ500において、隆起型S/D領域が形成される。隆起型S/D領域を形成するための代表的なプロセスは、(1)ドープされた/ドープされていないシリコンのS/D領域上への化学気相蒸着(CVD)、(2)シリコンのエピタキシャル成長、(3)シリコンの原子層蒸着(ALD)、又は(4)シリコンのプラズマ気相蒸着(PVD)を含んでよい。
【0030】
ステップ600において、ゲート領域132の両側にある歪み層128上の隆起型S/D領域130に、1つ以上のドーパント物質を注入するイオン注入ステップを行い、隆起型S/D領域がドープされる。適当なドーパントの例としては、ヒ素、リン、及びアンチモン(Sb)が含まれる。この注入プロセスの間、チャネル領域134にドーパントイオンが存在することを最小限にするために、チャネル領域134は再びマスクされる。
【0031】
ステップ700において、隆起型S/D領域130が、1つ以上のアニーリングステップを用いて活性化される。これらのアニーリングステップの1つ以上は、レーザアニーリング又はフラッシュアニーリング、固相エピタキシ、及び/又はRTPスパイクアニールを含むミリ秒アニールステップであってよい。
【0032】
特定されたアニーリング手段(すなわち、歪み層及び隆起型S/D領域をアニールするために、個別のアニーリングステップが使用される場合)の代わりに、隆起型S/D領域が形成及びドープされた後に全てのアニーリングステップを実行することができる。この技術は、歪み層128に所望の歪みを与えながらも、全体としてより効果的なプロセスをもたらすことができる。
【0033】
図4は、様々な異なる歪み誘起注入イオン及び歪み誘起注入イオンの組み合わせに対し、歪み層128中の深さの関数としてパーセント歪みを示した歪みプロットの例である。図示されたプロットにおいて、Csは炭素置換濃度を表す(Y軸)。トランジスタのチャネル領域中の横歪みは、この濃度に比例する。X軸はトランジスタ中の深さを表す。
【0034】
図4は、トランジスタの断面に沿って変化するチャネル領域中の歪み分布のプロファイルを間接的に示している。このプロットは、様々な注入候補(例えば、炭素(800)、低温炭素(900)、エタン(1000)、低温エタン(1100)、ゲルマニウム−炭素(1200)、ゲルマニウム−低温炭素(1300)、ゲルマニウム−エタン(1400)、ゲルマニウム−低温エタン(1500))に対し、約60nmの深さまでどのように基板中に歪みが作り上げられるかを示す。
【0035】
図からわかるように、様々なイオン及びイオンの組み合わせを基板に注入し、続いて再結晶化(つまりアニーリング)することで歪み層が形成され、構造中に高レベルの歪みが得られる。しかしながら一般的には、完成したデバイスを作り上げるために、付加的な処理ステップが構造に対して実行されなくてはならない。例えば、S/D領域がその後ドーパントを用いて注入及びスパイクアニールされる場合には、歪み層中の歪みが実質的に減少して、歪み層の有効性に影響を及ぼしかねない。
【0036】
図5は、ドーパント注入後における歪み層128中の歪み損失を示す代表的な歪みプロットである。図4と比べた場合に図5は、歪み層注入とS/D領域注入との特定の組合わせによって、歪み層128中の歪みがどのように影響を受けるかを示す。図5において、S/D領域はリン(例えば、Ge−C−P(1600)、C−P(1700)、Ge−低温C−P(1800)、Ge−エタン−P(1900)、エタン−P(2000)、Ge−低温エタン−P(2100)、低温エタン−P(2200)、Ge−HiC−P(2300)、Ge−低温HiC−P(2400))を用いてドープされている。
【0037】
図からわかるように、リンを加えることによりCs(従って歪み)が著しく減少する。例えば、図4の第1のデータセット(C(800)と表示)を図5の第2のデータセット(C−P(1700)と表示)と比べると、深さ0−35nmの領域における置換炭素濃度(歪みに類似)が約1%から約0.3%に減少していることがわかる。
【0038】
開示する方法は、そのようなドーパントイオンが歪み層128中の歪みに及ぼす影響を低減する。開示する方法を用いると、隆起型S/D領域130中にドーパントイオン(例えばリン)を位置させることによって歪み層128中のドーパントイオンが削減され、その結果、歪み層中の歪みをより高いレベルで維持することができる。これは、より大きなチャネルキャリア移動度及び電流フローをもたらす。
【0039】
図6は、下層シリコン基板との間に良好な界面を持ち、相対的に高いレベルの置換炭素を有するSi:Cの厚い層を示す高分解能XRDロッキングカーブを示している。開示される方法を用いると、高品質のSiC層(すなわち、エピタキシャル技術を用いて形成された層と比べて、同様に又はより以上に良好なSiC層)が形成されることをこの図は示している。
【0040】
炭素イオンの低温注入とそれに続く隆起型S/D領域の形成を用いたここで開示する方法は、シリコン基板格子に存在する炭素原子の量を最大化し、注入プロセスにより引き起こされる基板への全体的ダメージを低減する。炭素を用いて歪み層を形成する場合、シリコン格子サイトを占めることのできる炭素原子数を最大化するためには、できるだけ多くのシリコン原子を取り除くことが有利である。低温注入技術は、他の注入技術と比べて、より完全な基板のアモルファス化(つまり、より多くのシリコン原子が取り除かれ、炭素原子によって置換される)をもたらす。アニーリング後、低温注入された基板は、より小さな残存ダメージを示す。これは、低温注入によって炭素原子がより高い濃度で存在するので、空孔、非占有サイト等のような欠陥が、再結晶化(つまりアニーリング)の間に埋められる可能性がより高いためである。その結果、シリコン基板中の欠陥数が低減されるだけでなく、アニーリングステップの間に基板表面がより良好に修復され、これによって、その後隆起型S/D領域が形成される表面の滑らかさを向上させる。
【0041】
従来技術を用いた場合は、注入ステップによって誘起されたシリコン基板中の数多くの欠陥が、その上を覆う隆起型S/D領域をその後エピタキシャル形成する間に悪化しかねない。これは、全体歩留まりの望ましくない低下をもたらし得る。図7Aには、従来技術を用いて注入された典型的な基板136が示されている。基板136は、基板136と典型的な隆起型S/D領域140との間の界面を形成する平坦ではない上部表面138を有している。図7Bには、ここで開示する方法を用いて処理された典型的な基板142が示されている。基板の上部表面144は遥かに滑らかであり、欠陥が少なく、従って、基板142と隆起型S/D領域146との間に、より良好な界面を形成する。注入されたシリコン基板がより滑らかな表面を有するので、基板142と隆起型S/D領域146との間により良好な界面が形成される。これは、隆起型S/Dのより良好な性質、及び、より良好なデバイスの歩留まりをもたらす。
【0042】
炭素イオンは、歪み層128に歪みを誘起することに加えて、隆起型S/D領域130中のドーパントとしてリン(P)が使用された場合に、リンに対する拡散バリアとして作用できるという更なる利点を与えることも理解されるであろう。リンはドーパントとして望ましい特性(例えば、低シート抵抗R)を有するものの、注入された物質の全体に拡散する傾向も併せ持つ。ショートチャネル効果やリーク等の否定的な効果を最小限にするためには、ドーパントの拡散を最小にすることが望ましい。そのため、ヒ素(As)はリンと同じ拡散傾向を持たないので、ヒ素がリンの代わりによく使用されてきた。しかしながら、歪み層128中に炭素を使用することにより、上記のような拡散を伴うことなく、ドーパント層にリンを使用することが可能になる。ヒ素よりもリンを使用することによってより低いシート抵抗を得ることができるため、隆起型S/D領域130に使用するのは、リンであることがより望ましい。
【0043】
例えば、命令を実行可能な機械によって読み取ることのできるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体中の命令プログラムを具体的に実現することで、ここで開示する方法は自動化される。汎用コンピュータはそのような機械の1つの例である。適当な記憶媒体の非制限的な例としては、当該分野でよく知られた、読み取り可能又は書き込み可能なCD,フラッシュメモリチップ(例えばサムドライブ)、様々な磁気記憶媒体等のデバイスが含まれる。
【0044】
本発明は特定の実施形態を参照して開示されているが、添付の請求項に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に対して様々な修正、改良、及び変更を加えることが可能である。従って、本発明は、記載された実施形態に限定されることを意図するものではなく、続く請求項の記載及びその均等物により定義される全範囲を有するものである。
【0045】
ここでの機能及びプロセスステップは、自動的に、あるいは完全又は部分的にユーザコマンドに対応して実行されてよい。自動的に実行される動作(ステップを含む)は、ユーザが直接動作を始動させずとも、実行可能な命令又は装置の操作に対応して実行される。
【0046】
図1−図3のシステム及びプロセスは排他的ではない。同じ目的を果たすため、他のシステム、プロセス、及びメニューが発明の原理に従って導き出されてよい。特定の実施形態を参照してこの発明を記載してきたが、ここで示された、また記載された実施形態や変形例は、単に説明を目的としたものであることが理解されるべきである。現在の設計に対する変更は、発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって実行されてよい。代替的な実施形態においては、プロセスやアプリケーションは、図1の構成要素をつなぐネットワークにアクセスする1つ以上の(例えば、分散型の)処理装置に設置されてよい。さらに、図面に規定された機能及びステップのいずれも、ハードウェア、ソフトウェア、あるいは両者の組み合わせによって実行されてよく、また、図1の構成要素をつなぐネットワーク、又はインターネットを含むその他の接続されたネットワーク上の任意の場所に設置された1つ以上の処理装置に存在してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隆起型ソース/ドレイン領域を有する半導体デバイスを形成する方法であって、
チャネル領域を有するシリコン基板を備えた半導体構造を提供する段階と、
前記チャネル領域の両側に位置し、低温炭素イオン注入または分子炭素イオン注入を含むイオン注入ステップにより形成される歪み層を前記半導体構造内に形成する段階と、
前記歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積することにより、前記歪み層上に隆起型ソース/ドレイン領域を形成する段階と、
前記隆起型ソース/ドレイン領域をドープする段階と、
前記隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するために前記半導体構造をアニーリングする段階と
を備える方法。
【請求項2】
前記歪み層を形成する段階は、複数のイオン注入ステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低温イオン注入ステップは、略+15℃から−100℃の温度で行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン注入ステップは、分子炭素を用いたイオン注入技術を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ドープする段階は、リン、ヒ素、及びアンチモンの少なくとも1つを有するイオンを前記隆起型ソース/ドレイン領域に注入することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記歪み層を形成する段階の後であって、前記歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積するステップの前に、歪み層アニーリングステップを行う段階を更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記歪み層アニーリングステップを行う段階は、ミリ秒アニール技術を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記歪み層に歪みを生成するために前記半導体構造をアニーリングする段階は、複数のアニーリングステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するために前記半導体構造をアニーリングする段階は、ミリ秒アニール技術を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記歪み層を形成する段階は、前記基板中の異なる深さに炭素イオンを注入する複数のイオン注入ステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
隆起型ソース/ドレイン領域を有する半導体デバイスを形成する方法であって、
半導体構造を提供する段階と、
低温炭素イオン注入または分子炭素イオン注入を含む複数のイオン注入ステップを用いて、前記構造のチャネル領域の両側に位置する複数の歪み層を前記半導体構造内に形成する段階と、
前記歪み層上に複数の隆起型ソース/ドレイン領域を形成するために、前記複数の歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積する段階と、
前記複数の隆起型ソース/ドレイン領域をドープする段階と、
前記隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するためにミリ秒アニーリング技術を用いて前記半導体構造をアニーリングする段階と
を備える方法。
【請求項12】
前記複数の歪み層を形成する段階は、複数のイオン注入ステップを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記低温イオン注入ステップは、略+15℃から−100℃の温度で行われる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン注入ステップは、分子炭素を用いたイオン注入技術を含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ドープする段階は、リン、ヒ素、及びアンチモンの少なくとも1つを有するイオンを前記隆起型ソース/ドレイン領域に注入することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の歪み層を形成する段階の後であって、前記複数の歪み層のそれぞれの上にシリコン層を堆積する段階の前に、歪み層アニーリングステップを行う段階を更に備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記歪み層アニーリングステップを行う段階は、ミリ秒アニール技術を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記歪み層アニーリングステップを行う段階は、複数のアニーリングステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記隆起型ソース/ドレイン領域を活性化するために前記半導体構造をアニーリングする段階は、ミリ秒アニール技術を含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の歪み層を形成する段階は、前記半導体構造中の異なる深さに炭素イオンを注入する複数のイオン注入ステップを含む請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−525709(P2012−525709A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508551(P2012−508551)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032241
【国際公開番号】WO2010/126793
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】