低誘電率材料およびその調製方法
【課題】低誘電ポリマーと、その低誘電率ポリマー、誘電材料および層、および電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】コア構造および複数のアームを有する熱硬化性モノマーの異性体混合物であり、モノマーの少なくとも1つのアームに位置するエチニル基の反応を含む、熱硬化性モノマーのその異性体混合物の重合を行う。他の態様では、芳香族部分および第1反応基を有する第1主鎖、ならびに芳香族部分および第2反応基を有する第2主鎖を有するスピンオン低誘電率材料を形成させる。第1および第2の主鎖は、第1および第2反応基を介する架橋反応で、好ましくは追加の架橋剤なしで架橋され、かつ少なくとも8個の原子を有するかご状構造が、第1および第2主鎖の少なくとも1つと共有結合で結合している。
【解決手段】コア構造および複数のアームを有する熱硬化性モノマーの異性体混合物であり、モノマーの少なくとも1つのアームに位置するエチニル基の反応を含む、熱硬化性モノマーのその異性体混合物の重合を行う。他の態様では、芳香族部分および第1反応基を有する第1主鎖、ならびに芳香族部分および第2反応基を有する第2主鎖を有するスピンオン低誘電率材料を形成させる。第1および第2の主鎖は、第1および第2反応基を介する架橋反応で、好ましくは追加の架橋剤なしで架橋され、かつ少なくとも8個の原子を有するかご状構造が、第1および第2主鎖の少なくとも1つと共有結合で結合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は以下の、2001年4月6日出願のPCT/US01/11273号、2001年7月5日出願の米国特許出願第09/897936号、2001年7月10日出願の米国特許出願第09/902924号、および2001年7月13日出願のPCT/US01/22204号に対する優先権を主張するものであり、これらをすべて参照により本明細書に合体する。本出願は2000年4月7日出願の米国特許出願第09/545058号および2000年7月19日出願の米国特許出願第09/618945号にも関連し、これらをすべて参照により本明細書に合体する。
【0002】
本発明は、半導体デバイス、特に有機低誘電率材料を有する半導体デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの性能とスピードの増大に努める中で、半導体デバイス製造業者は相互接続の線幅と間隔を縮小することと同時に動作減衰量および相互接続の静電結合の最小化を探求してきた。電力消費および静電結合を減少させる1つの方法は、相互接続を隔てる絶縁材料、すなわち誘電体の誘電率(「k」とも称する)を減少させることによるものである。低誘電率を有する絶縁体材料は、一般により速い信号の伝達を可能にし、静電容量効果および導線間のクロストークを減少させ、集積回路の駆動に要する電圧を低下させることができるので、特に望ましい。
【0004】
空気が1.0の誘電率を有しているので、重要な目標は、絶縁体材料の誘電率を理論的な限界である1.0まで低下させることであり、従来技術では絶縁材料の誘電率を低下させるのにいくつかの方法が知られている。これらの技術には、フッ素などの元素を組成物に加えてバルク材料の誘電率を低下させることが含まれる。kを低下させるための他の方法には、代替的誘電材料マトリックスの使用が含まれる。
【0005】
したがって、将来の半導体デバイスに望まれる改善された性能とスピードを達成するためには、相互接続の線幅の減少につれて、これに絶縁材料の誘電率の減少が伴うことが求められる。例えば、0.13または0.10ミクロンおよびそれ以下の相互接続の線幅を有するデバイスには、誘電率(k)<3を有する絶縁材料が求められる。
【0006】
最近では、二酸化ケイ素(SiO2)、およびフッ素化した二酸化ケイ素またはフッ素化したシリコンガラス(以下FSG)などのSiO2を変性させたものが使用されている。約3.5〜4.0の範囲の誘電率を有するこれらの酸化物は、通常半導体デバイス中の誘電体として使用される。SiO2およびFSGは、半導体デバイス製造の熱サイクルおよび処理ステップに耐えるのに必要な機械的および熱的安定性は有しているが、産業界では、より小さい誘電率を有する材料が望まれている。
【0007】
誘電材料を蒸着させるのに用いられる方法は2つのカテゴリに分けられる。スピンオン(spin−on)蒸着(以下SOD)および化学蒸着(以下CVD)である。より低誘電率の材料を開発するために行われているいくつかの努力には、化学組成(有機、無機、有機/無機の混合)を変化させること、または誘電体マトリックス(多孔質、非多孔質)を変えることが含まれる。表Iに、2.0〜3.5の範囲の誘電率を有する複数の材料の開発をまとめる。(PE=プラズマ強化;HDP=高密度プラズマ)しかし、表Iに示す文献、特許出願または特許に開示されたこれらの誘電材料およびマトリックスは、機械的安定性、熱安定性、高いガラス転移温度、または適度の硬度と、同時に基板、ウエハまたは他の表面上で溶媒和やスピンオンされ得るという、効率的な誘電材料に望ましくさらに必要でもある物理的および化学的諸特性の組み合わせのうちの多くを示すことができていない。したがって、誘電材料および層として有用であり得る他の化合物および材料を、それらの化合物および材料が今の形では誘電材料として現在考えられていないとしても、研究することは有益であるかも知れない。
【0008】
【表1】
【0009】
ReichertとMathiasは、かごをベースとした分子の部類に入り、ダイヤモンドの代替品として有用であるとされている、アダマンタン分子を含む化合物およびモノマーについて述べている。(Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1993年、第34巻1号495〜6頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1992年、第33巻2号、144〜5頁;Chem.Mater.、1993年、第5巻1号、4〜5頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7030〜7034頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7015〜7023頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1995年、第36巻1号、741〜742頁;第205回ACS全国ミーティング、会議プログラム、1993年、312頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7024〜9頁;Macromolecules、1992年、第25巻9号、2294〜306頁;Macromolecules、1991年、第24巻18号、5232〜3頁;Veronica R.Reichert、PhD論文、1994年、Vol.55−06B;ACS Symp.Ser:高機能性材料用ステップ成長ポリマー(Step−Growth Polymers for High−Performance Materials)、1996年、第624巻、197〜207頁;Macromolecules、2000年、第33巻10号、3855〜3859頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1999年、第40巻2号、620〜621頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1999年、第40巻2号、577〜78頁;Macromolecules、1997年、第30巻19号、5970〜5975頁;J.Polym.Sci,PartA:Polymer Chemistry、1997年、第35巻9号、1743〜1751頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1996年、第37巻2号、243〜244頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1996年、第37巻1号、551〜552頁;J.Polym.Sci.,PartA:Polymer Chemistry、1996年、第34巻3号、397〜402頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1995年、第36巻2号、140〜141頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1992年、第33巻2号、146〜147頁;J.Appl.Polym.Sci.、1998年、第68巻3号、475〜482頁)。ReichertとMathiasにより記述されたアダマンタンをベースとした化合物およびモノマーは、アダマンタン分子を有するポリマーを熱硬化物のコアで形成するために使用することが好ましい。しかし、ReichertとMathiasが彼らの研究で開示している化合物は、設計上の選択によりアダマンタンをベースとした化合物の1つの異性体を含むだけである。構造Aはこの対称パラ異性体である1,3,5,7−テトラキス(4−フェニルエチニルフェニル)アダマンタンを示す。
【0010】
【化15】
【0011】
つまり、ReichertとMathiasは、彼らの個別および合同作業で、目標であるアダマンタンをベースとしたモノマーのただ1個の異性体形を含む有用なポリマーを考えている。しかし、アダマンタンをベースとしたモノマーの単一異性体形(対称的全パラ(all−para)異性体)の1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンでポリマーを形成させようとすると、重大な問題がある。Reichert論文(上記)およびMacromolecules、第27巻(7015〜7034頁)(上記)によれば、対称的全パラ異性体1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンは、「1H NMRスペクトルを得るのに十分なほどクロロホルムへの溶解性があることが分かった。しかし、溶液13CNMRスペクトルを得るのには非実用的なほど時間がかかることが分かった」。したがって、Reichertの対称的全パラ異性体1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンは、フローコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティングなどの、溶解性または溶媒をベースとした加工を必要とするどのような用途にも役立ちそうにない。
【0012】
当技術分野では、材料の誘電率を低下させるための様々な方法が知られているが、それらのすべてまたは殆どすべてには欠点がある。したがって、半導体産業では、a)誘電層の誘電率を低下させるための改善された組成および方法を提供すること、b)熱安定性、ガラス転移温度(Tg)、硬度などの機械的特性の改善された誘電材料を提供すること、およびc)ウエハまたは層状化された材料に溶媒和されスピンオンされ得る、熱硬化性化合物および誘電材料を製造することが依然として必要である。
【0013】
Reichertの結果(単一の全パラフェニルエチニルフェニルかごベース異性体は非溶解性であると示されている)とは反対に、我々は、新規のかごベース異性体混合物が、殆どの有機溶媒に溶解することを発見した。この発見の結果として、新規なかごベースの異性体混合物は、この材料を溶解し基板上にスピンオンさせる電子材料用途に有用である。さらに、本明細書では、Reichertらの混合物を本発明の新規なかごベース異性体混合物に転換するための方法を述べる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は一般に、少なくとも1個のかごベースの分子または化合物を含む低誘電性ポリマー、ならびにそれらの低誘電率ポリマーを製造する方法、誘電材料および層、および電子部品を目的とする。本発明の一つの態様では、コアかご状構造および複数のアームを有する熱硬化性モノマーの異性体混合物が提供され、該熱硬化性モノマーの異性体混合物は、モノマーの少なくとも1つのアーム上に位置するエチニル基の反応を含むプロセスによって重合される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主題の関連する態様では、コア構造はかご状化合物であり、好ましいアームはアリール、分枝アリールまたはアリーレンエーテルである。コア構造がかご状化合物である場合、少なくとも1個のアームがエチニル基を有することも好ましい。コア構造がアリール化合物である場合、アームのすべてがエチニル基を有することが好ましい。特に考えられるコア構造には、アダマンタン、ジアマンタン、フェニル、およびセキシフェニレンが含まれ、かつ特に考えられるアームには、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニルエーテルが含まれる。
【0016】
本発明の主題の他の態様では、かご状構造は、置換または非置換アダマンタン、あるいは置換または非置換ジアマンタンを含むことが好ましい。ここで、アダマンタンまたはジアマンタンは、懸垂基として主鎖の一部であるか、あるいは、かご状構造が4面体もしくは多面体構造を有していてもよい。
【0017】
本発明の主題の他の態様では、熱硬化性モノマーの異性体混合物の重合は、少なくとも1個のモノマーの2個以上のエチニル基上、好ましくは3個のアーム上に位置する3個のエチニル基上、より好ましくはすべてのアーム上に位置するすべてのエチニル基上の反応を含む。本発明の主題の特に好ましい態様では、重合反応は追加の分子を加えることなく起こり、かつ好ましくは付加環化反応を含む。
【0018】
本発明の主題のさらに他の態様では、芳香族部分および第1反応基を有する第1ポリマー主鎖、ならびに芳香族部分および第2反応基を有する第2のポリマー主鎖を有するスピンオン低誘電率材料を形成させる。ここで、第1および第2ポリマー主鎖は、第1および第2反応基を介する架橋反応によって、好ましくは追加の架橋剤なしで、架橋され、かつ少なくとも10個の原子を有するかご状構造が、第1および第2主鎖の少なくとも1つと共有結合で結合している。
【0019】
本発明の主題のさらに他の態様では、第1および第2主鎖は同一であって、好ましくはフェニル基を含み、より好ましくはポリ(アリーレンエーテル)を含み、最も好ましくは芳香族部分として、置換されたレゾルシノール、置換されたトラン、または置換されたフェノールを含む。他の好ましい態様では、第1および第2反応基は同一でなく、エチニル部分またはテトラサイクロン部分を含み、かつ架橋反応は付加環化反応である。
【0020】
一般に、熱硬化性モノマーの異性体は、ポリマーの主鎖に組み込まれると考えられているが、ポリマーの末端および側鎖を含む他の位置も適している。好ましいポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)および考えられた熱硬化性モノマーを含む、またはそれらから構成されるポリマーである。本発明の様々な目的、特徴、態様および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な記述ならびに添付の図面から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書では、「低誘電率ポリマー」という用語は、約3.0以下の誘電率を有する有機、有機金属、または無機のポリマーを称する。本明細書ではまた、「主鎖」という用語は、ポリマー性の鎖を形成する原子または部分の連続的な鎖を称し、これらの原子または部分は任意の原子または部分の除去が鎖の中断を招くように共有結合で結合している。
【0022】
本明細書ではさらに、「反応基」という用語は、化学反応によって他の反応基と少なくとも1個の共有結合を形成するのに十分な反応性を有する、任意の原子、官能基、または基を称する。化学反応は2個の同一の、または同一でない反応基間で起きることができ、それらの反応基は同じ主鎖または2個の別の主鎖上に位置してよい。反応基が1個または複数の第2のまたは外生性(exogenous)の架橋分子と反応して、第1主鎖と第2主鎖を架橋することも考えられる。外生性架橋剤なしの架橋は、ポリマー中の全体の反応基数を減らし、必要な反応ステップ数を減らすことを含む様々な利点をもたらすが、若干の欠点も有している。例えば一般に、架橋官能基の量はそれ以上調節できない。他方、外生性架橋剤を使用すると、重合反応と架橋反応が化学的に適合しない場合に有利であるだろう。
【0023】
本明細書ではさらに、「かご状構造」「かご状分子」、および「かご状化合物」という語句は、互換的に用いようとするもので、少なくとも1個の橋かけが環系の2個以上の原子に共有結合で結合するように配置された少なくとも8個の原子を有する分子を称する。すなわち、かご状構造、かご状分子またはかご状化合物は、共有結合で結合した原子によって形成されている複数の環を含み、そこでは、構造、分子または化合物は、容積部の中に位置する点が、環を通過することなしには容積部から出られないように容積部を規定している。橋かけおよび/または環系は、1個または複数のヘテロ原子を含むことができ、かつ芳香族、部分的に飽和された、または不飽和の基を含むことができる。さらに考えられるかご状構造には、少なくとも1個の橋かけを有するフラーレンおよびクラウンエーテルが含まれる。例えばアダマンタンまたはジアマンタンはかご状構造と考えられるが、ナフタレンまたは芳香族スピロ化合物は1個または1個以上の橋かけを有していないので、この定義の範囲ではかご状構造ではないと考えられる。
【0024】
低誘電率ポリマーの製造方法では、構造1で示す一般構造
【0025】
【化16】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーの異性体混合物が提供される。さらなるステップでは、熱硬化性モノマー混合物は、少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む反応によって重合し、それによって低誘電率ポリマーを形成する。本明細書では、「アリール」という用語は、他の指定がない限り、任意の種類のアリールを意味し、例えば分枝アリールまたはアリーレンエーテルを含むことができる。アダマンタン、ジアマンタン、およびケイ素原子を含む熱硬化性モノマーの構造の例をそれぞれ、図1A、図1B、および図1Cに示す。ここでnは、0〜5、またはそれ以上の整数である。
【0026】
低誘電率ポリマーを製造する他の方法では、構造2に示す一般構造
【0027】
【化17】
(式中、Arはアリールであり、R’1〜R’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換(個別の位置において置換されていないこと)から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーが提供される。続くステップでは、少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む反応によって熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成する。テトラ−、およびヘキサ置換のセキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例をそれぞれ、図2A〜2Bおよび図2C〜2Dに示す。
【0028】
構造1および2で一般に示されるような熱硬化性モノマーは、種々の合成ルートによって提供することができる。構造1および2のための合成方策の例を図3A〜3Cに示す。図3Aおよび実施例5では、かご状化合物としてアダマンタンを有する、考えられる熱硬化性モノマーの生成のための好ましい合成ルートを図示しかつ記述する。ここで、ブロモアレーンはパラジウム触媒を用いたヘック(Heck)反応でフェニルエチニル化される。まず、先に記述されている手順(Sollot,G.P.およびGilbert,E.E.による、J.Org.Chem.第45巻、5405〜5408頁(1980年))に従って、アダマンタン(1)を臭素化して1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(TBA)(2)とする。Reichert,V.RおよびMathias L.J.によるMacromolecules、第27巻、7015〜7022頁(1990年)の記載のようにして、TBAをフェニルブロマイドと反応させて1,3,5,7−テトラ(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)(4)を得る。続いて標準的な反応手順に従って、パラジウム触媒を用いたヘック反応でTBPAを置換エチニルアリールと反応させ、テトラ(アリールエチニル)フェニルアダマンタン(5)を得る。実施例5はさらに、技術背景の節で記したReichertの研究および化合物と,本発明で考えられた化合物との差を示す。パラジウム触媒を用いたヘック反応は、図2A〜2Dに示すように、芳香族部分としてセキシフェニレンを有する熱硬化性モノマーの合成にも利用できる。ここで、テトラブロモセキシフェニレンおよびヘキサブロモセキシフェニレンはそれぞれ、エチニルアリール化合物と反応し所望の対応熱硬化性モノマーをもたらす。
【0029】
実施例5は、(a)構造式
【0030】
【化18】
(式中、Yはかご状化合物から選択され、かつR1、R2、R3およびR4は独立に、臭素、フッ素、エチニル基ならびにすでに本明細書で指定した基などの反応基である)を有する化学反応物を提供するステップと、(b)化学反応物を熱硬化性モノマー中間体に転換するステップと、(c)熱硬化性モノマー中間体を新しい試薬溶液およびAlBr3またはAICl3を含む新しい触媒で処理し、熱硬化性モノマーを生成させるステップと、(d)反応基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させるステップとを含む、低誘電率ポリマーの製造の他の考えられる実施形態も示す。
【0031】
別法では、TBAをヒドロキシアリール化されたアダマンタンに転換させ、次いで、これを求核的芳香族置換反応で熱硬化性モノマーに変換することができる。図3Bでは、前述したようにTBA(2)をアダマンタン(1)から生成させ、さらに求電子的テトラ置換でフェノールと反応させ、1,3,5,7−テトラキス(3/4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(THPA)(7)を得る。別法では、TBAをアニソールと反応させて1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−メトキシフェニル)アダマンタン(6)を得ることもでき、さらにこれをBBr3と反応させてTHPA(7)を得ることができる。標準的手順(例えば、R.J.Cotterによるエンジニアリングプラスチックスーポリアリールエーテルハンドブック(Engineering Plastics−A Handbook of Polyarylethers)、Gordon and Breach Publishers,ISBN 2−88449−112−0)を用いて、THPAを種々の求核的芳香族置換反応で、炭酸カリウムの存在下、活性化したフルオロ芳香族と反応させて、所望の熱硬化性モノマーを生成させることができる。あるいは、THPAを標準的な芳香族置換反応(例えばエンジニアリングプラスチックス、上記)で、4−ハロ−4’−フルオロトラン(ハロ=BrまたはI)と反応させて、1,3,5,7−テトラキス{3’/4’−[4”−(ハロフェニルエチニル)フェノキシ]フェニル}アダマンタン(8)を生成することができる。さらに別の反応では、様々な代替の反応物を用いて熱硬化性モノマーを生成させることもできる。同様に、求核的芳香族置換反応も、図2Dに示したように、芳香族部分としてセキシフェニレンを有する熱硬化性モノマーの合成に使用できる。ここで、セキシフェニレンを4−フルオロトランと反応させ、熱硬化性モノマーを生成させる。別法では、フロログリシノールを、標準的芳香族置換反応で、4−[4’−(フルオロフェニルエチニル)フェニルエチニル]ベンゼンと反応させ、1,3,5−トリス{4’−[4”−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェノキシ}ベンゼンを得ることができる。
【0032】
かご状化合物がケイ素原子の場合、好ましい合成スキームの例を図3Cに示す。ここでブロモ(フェニルエチニル)芳香族アーム(9)が対応する(フェニルエチニル)アリールリチウムアーム(10)に転換し、続いてこれは四塩化ケイ素と反応してかご状化合物としてケイ素原子を有する所望の星形熱硬化性モノマーを得る。
【0033】
かご状化合物は、ケイ素原子、アダマンタンまたはジアマンタンであることが好ましいが、本発明の主題の別の態様では、アダマンタンまたはジアマンタン以外の様々なかご状化合物も考えられる。アームR1〜R4またはR’1〜R’6の全体の長さとあわせて、かご状化合物の分子の大きさおよび配置が、最終的な低誘電率ポリマーの、物理的および機械的特性のいくつかを、ならびに空隙が望ましくかつ適している場合には空隙サイズを、(立体効果により)決定することになることを特に理解されたい。したがって、比較的小さいかご状化合物が望ましい場合、置換されかつ誘導体化されたアダマンタン、ジアマンタン、および比較的小さい架橋した環状脂肪族および芳香族化合物(一般に15個未満の原子を有する)が考えられる。対照的に、より大きいかご状化合物が望ましい場合、より大きい架橋した環状脂肪族および芳香族化合物(一般に15個超の原子を有する)およびフラーレンが考えられる。
【0034】
考えられるかご状化合物は必ずしも炭素原子だけからなると限定する必要はなく、N、S、O、Pなどのヘテロ原子を含むこともできる。ヘテロ原子は、非四辺形結合角配置を好都合に導入することができ、それは次に、アームR1〜R4またはR’1〜R’6が追加の結合角で共有結合連結できるようにする。考えられるかご状化合物の置換基および誘導体化に関して、多くの置換基および誘導体化が適していることを認識しておくべきである。例えばかご状化合物が比較的疎水性である場合、親水性置換基を導入して親水性溶媒中での溶解性を増大させることができ、その逆も可能である。代わりに、極性が望ましい場合、極性の側基をかご状化合物に加えることができる。さらに、適切な置換基には、熱不安定性基、求核基および求電子基も含むことができると考えられる。かご状化合物中で官能基も用いることができること(例えば、架橋反応、誘導体化反応等を容易にするために)も理解されたい。かご状化合物を誘導体化する場合、誘導体化にはかご状化合物のハロゲン化が含まれ、特に好ましいハロゲンはフッ素および臭素であることが特に考えられる。
【0035】
熱硬化性モノマーが、構造2に示すように、アームR’1〜R’6と結合したアリールを有する場合、アリールがフェニル基を含むことが好ましく、アリールが、フェニル基またはセキシフェニレンであることがさらにより好ましい。本発明の主題の他の態様では、置換および非置換の、二環および多環芳香族化合物を含む、フェニル基またはセキシフェニレン以外の種々のアリール化合物も適していると考えられる。サイズの大きい熱硬化性モノマーが好ましい場合は、置換および非置換の、二環および多環芳香族化合物が特に有利である。例えば、代替的なアリール(複数)が、別々の方向に向くよりも1つの方向に伸びることが望ましい場合、ナフタレン、フェナンスレン、およびアントラセンが特に考えられる。他のケースで、代替的なアリール(複数)が対称的に伸びることが望ましい場合、コロネンなどの多環アリールが考えられる。特に好ましい態様では、考えられる二環および多環アリールは共役芳香族系を有していて、ヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい。考えられるアリールの置換および誘導体化については、本明細書で考察したかご状化合物についてと同じ考え方があてはまる。
【0036】
アームR1〜R4およびR’1〜R’6については、R1〜R4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、かつR’1〜R’6は独立にアリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルならびに無置換から選択されることが好ましい。R1〜R4およびR’1〜R’6のための、特に考えられるアリールには、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニル部分を有するアリールが含まれる。特に好ましいアリーレンエーテルは、フェニルエチニルフェニルフェニルエーテルを含む。
【0037】
本発明の主題の別の態様では、熱硬化性モノマー異性体の適切なアームは、代替的なアームR1〜R4およびR’1〜R’6が反応基を含み、かつ、熱硬化性モノマーの重合がその反応基を伴う反応を含む限り、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルに限定する必要はない。例えば、考えられるアームは、せいぜい6個の原子の比較的短いものでよく、この原子は炭素原子であってもなくてもよい。空隙または細孔を最終の製品または材料に加えるのが望ましく、かつ空隙の大きさが比較的小さい必要がある場合、そうした短いアームが特に有利である。対照的に、特に長いアームが好ましい場合、アームは7〜40個、またはそれ以上の原子を有するオリゴマーまたはポリマーを含むことができる。これらの長いアームは、より短いアームと比べて、材料安定性、熱安定性あるいは空隙率を設計するのに有利である。さらに、考えられる熱硬化性モノマーに共有結合で結合しているアームの長さならびに化学組成は1個のモノマー内で様々であってよい。例えば、重合の際の方向的な成長を特定の方向に促進させるために、かご状化合物は2個の比較的短いアームおよび2個の比較的長いアームを有してよい。他の例では、かご状化合物は、位置選択的な誘導体化反応を促進させるために、他の2個のアームとは化学的に区別される2個のアームを有してよい。
【0038】
熱硬化性モノマー中のすべてのアームが少なくとも1個の反応基を有することが好ましいが、別の態様では、アームすべてが反応基を有する必要はない。例えばかご状化合物が4個のアームを有し、アームの内の2個か3個だけが反応基を有してよい。別法では、熱硬化性モノマーのアリールが、アームのうちの2個または1個だけが反応基を有している3個のアームを有してよい。アームR1〜R4およびR’1〜R’6のそれぞれでの反応基の数は、アームの化学的性質および所望の最終製品の品質に応じて、一般に相当変化してよいと考えられる。さらに反応基は、主鎖、側鎖またはアームの末端を含むアームの任意の部分に位置するものと考えられる。熱硬化性モノマー中の反応基の数を、架橋度を制御するための手段として使用できることを特に理解されたい。例えば比較的低い架橋度が望ましい場合、考えられる熱硬化性モノマーは1個または2個だけの反応基を有してよく、その反応基は、1個のアーム内にあってもなくてもよい。他方、比較的高い架橋度が望ましい場合、3個またはそれ以上の反応基をモノマー中に含むことができる。好ましい反応基には、求電子基および求核基、より好ましくは付加環化反応に用いられる基が含まれ、特に好ましい反応基はエチニル基である。
【0039】
アーム中の反応基に加えて、官能基を含む他の基をアーム中に含むこともできる。例えば、熱硬化性モノマーを重合してポリマーとしたあと、特定の官能性(例えば熱不安定部分)の追加が望ましい場合、そうした官能性は共有結合で官能基に結合していてよい。
【0040】
熱硬化性モノマー、モノマー混合物および異性体混合物は、多様なメカニズムによって重合させることができ、実際の重合メカニズムは主に重合プロセスに加わる反応基によって決まる。したがって、考えられるメカニズムには、求核、求電子および芳香族置換、付加、脱離、ラジカル重合反応、および付加環化反応が含まれ、特に好ましい重合メカニズムは、少なくとも1個のアームに位置する少なくとも1個のエチニル基を伴う付加環化である。例えば、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのうちの少なくとも3個が単一のエチニル基を有する、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択されるアームを有する熱硬化性モノマーでは、モノマー、異性体混合物、モノマー混合物のポリマーへの重合は、少なくとも3個のエチニル基の付加環化反応(すなわち化学反応)を含んでよい。他の例では、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルアームのすべてが単一のエチニル基を有する熱硬化性モノマーでは、重合プロセスは、すべてのエチニル基の付加環化反応(すなわち化学反応)を含んでよい。他の例では、付加環化反応(例えばディールス−アルダー反応)は、熱硬化性モノマーの少なくとも1個のアーム中のエチニル基とポリマー中にあるジエン基との間で起こってもよい。さらに、熱硬化性モノマーの重合が、追加の分子(例えば架橋剤)の参加なしで、好ましくは熱硬化性モノマーの反応基間での付加環化反応として起こることが考えられる。しかし、本発明の主題の別の態様では、架橋剤を、熱硬化性モノマーとポリマーを共有結合で結合させるのに利用することができる。したがって、そうした共有結合的な結合は、反応基とポリマー間、あるいは官能基とポリマー間のどちらの間においても起こり得る。
【0041】
熱硬化性モノマーの重合のメカニズムによって、反応条件は相当変わってよい。例えばモノマーを、少なくとも1個のアームのエチニル基を利用する付加環化反応によって重合させる場合、一般に熱硬化性モノマーを約250℃またはそれ以上で約45分間加熱すれば十分である。対照的に、ラジカル反応によってモノマーを重合させる場合、ラジカル開始剤の添加が適切である。好ましい重合方法および技術を実施例に示す。
【0042】
熱硬化性モノマーは、末端を含むポリマーの主鎖中または主鎖上の、またはポリマーの側鎖として、任意の点に位置することができる。本明細書では、「主鎖」という用語は、共有結合で結合していて、任意の原子または部分を除去すると鎖を中断することになるような、ポリマー性鎖を形成する原子または部分の連続的な鎖を称する。
【0043】
考えられるポリマーには、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドなどの非常に広範なポリマーの種類が含まれる。しかし、ポリマーがポリアリーレン、より好ましくはポリ(アリーレンエーテル)を含むことが特に考えられる。さらにより好ましい態様では、ポリマーの少なくとも一部が熱硬化性モノマーで作られ、ポリマーを全体的に熱硬化性モノマーの異性体で作ることが特に考えられる。
【0044】
図4に示す、特に考えられるアーム伸長の方法では、ADはアダマンタンまたはジアマンタン基を表す。フェニルアセチレンは、出発分子であって、TBPA(上記)と反応して(A1)、1,3,5,7−テトラキス[3’/4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンを得る。別法では,フェニルアセチレンを4−(フェニルエチニル)フェニルブロマイドに転換させ(B1)、次いでトリメチルシリルアセチレンと反応し(C1)、4−(フェニルエチニル)フェニルアセチレンを生成することができる。次いで、TBPAを、フェニルエチニルフェニルアセチレンと反応して(A2)、1,3,5,7−テトラキス{3’/4’−[4”−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニル}−アダマンタンにすることができる。さらなる伸長反応では、フェニルエチニルフェニルアセチレンを、1−ブロモ−4−ヨードベンゼンと反応させ(B2)、4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニルブロマイドを形成させ、さらに転換させて(C2)、4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]アセチレンとする。次いで、そのように形成させた4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]アセチレンをTBAと反応させて(A3)、1,3,5,7−テトラキス−{3’/4’−[4”−(4’’’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニル}アダマンタンを得ることができる。
【0045】
本発明の主題による、考えられる熱硬化性モノマーの熱硬化性モノマーおよび異性体混合物は、電子デバイスの誘電層に利用することができる。ここで好ましい誘電層は3.0未満の誘電率を有し、好ましい電子デバイスには集積回路が含まれる。したがって考えられる電気デバイスは、以下の構造
【0046】
【化19】
(式中、Yは、かご状化合物またはケイ素原子であり、Arは好ましくはアリールであり、R1〜R4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、R’1〜R’6は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテル、および無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)
を有する、少なくとも1個の熱硬化性モノマーまたは異性体モノマー混合物から作られるポリマーを含む、少なくとも1個の誘電層を含むことができる。
【0047】
より具体的には、好ましいスピンオン低誘電率材料を、第1および第2主鎖を含んで形成することができ、ここで、少なくとも1個の主鎖は、それぞれかご状構造として構造3A〜B(1個だけの主鎖の反復単位が示されている)に示すような、2個の懸垂アダマンタン基を有するポリ(アリーレンエーテル)を含む。これらの低誘電率材料は一般に以下の反復単位
【0048】
【化20】
(式中、Bはフェニルアダマンタンまたはフェニルジアマンタンポリマー(n=1〜3)であり、x=1〜103であり、Rは少なくとも1個のフェニル基を含み、Arはフェニル基である)を含む。より具体的にはBが、
【0049】
【化21】
を含むことが考えられる。
【0050】
さらにRが、
【0051】
【化22】
を含むことが考えられる。
【0052】
第1および第2芳香族部分はフェニル基を含み、かつ第1および第2反応基はそれぞれ、ディールス−アルダー反応で反応して主鎖を架橋する、エチニルおよびテトラサイクロン部分である。好ましい架橋条件は、ポリ(アリーレンエーテル)主鎖を約200〜250℃またはそれ以上の温度で約30〜180分間加熱することである。構造3Bは、以下の実施例1〜3に概略を述べるようにして合成できる。
【0053】
【化23】
【0054】
別の実施形態では、主鎖はポリ(アリーレンエーテル)に限定する必要はなく、最終低誘電率材料の所望の物理化学的特性に依存して大きく変わり得る。したがって、比較的高いTgが望ましい場合、ケイ酸塩(SiO2)および/またはアルミン酸塩(Al2O3)を含む無機ポリマーを含む無機材料が特に考えられる。屈曲性、加工のし易さ、または低応力/TCE等が必要な場合、有機ポリマーが考えられる。すなわち、具体的な用途に応じて、考えられる有機主鎖は、芳香族ポリイミド、ポリアミド、およびポリエステルを含む。
【0055】
約1000〜10000の分子量を有する低分子量ポリマーから構成されることが好ましいが、第1および第2ポリマー性主鎖の鎖長は、5またはそれ以下の反復単位から数万およびそれ以上の反復単位の間、で相当に変化してよい。好ましい主鎖は、芳香族置換反応でモノマーから合成される。合成ルートを図5および6の例で示す。さらに、別の主鎖は、分枝、超分枝、あるいは少なくとも一部が架橋していてもよいと考えられる。別法では、モノマーから主鎖をその場で合成することもできる。適切なモノマーは、好ましくは芳香族ビスフェノール系化合物およびジフルオロ芳香族化合物を含み、これらは0〜約20個の組み込まれたかご状構造を有してよい。
【0056】
適切なモノマーおよび異性体混合物は、構造4A〜Bに図示した4面体構造を有し、または含むことも考えられる。一般構造4Aでは、熱硬化性モノマーはかご状構造Gを有し、かつ側鎖R1〜R4のうち少なくとも2個は、芳香族部分および反応基を含み、ここで、第1のモノマーの少なくとも1個の反応基が、第2のモノマーの少なくとも1個の反応基と反応し、低誘電率ポリマーを生成する。一般構造4Bでは、かご状構造、好ましくはアダマンタンは、重合に加わることができる4個の芳香族部分に結合しており、R1〜R4は同じまたは異なっていてよい。
【0057】
【化24】
【0058】
4面体構造を有するモノマーを使用する場合、かご状構造は三次元配置で、4個の主鎖と共有結合で結合することになる。4面体構造を有するモノマーの例とその合成を図7に示す。別のモノマーは、かご状構造として置換または非置換アダマンタンを有する化合物に限定する必要はなく、かご状構造として置換または非置換ジアマンタンまたはフラーレンを含むこともできることを理解されたい。考えられる置換基には、アルキル、アリール、ハロゲン、および官能基が含まれる。例えばアダマンタンは、−CF3基、フェニル基、−COOH、−NO2、または−F、−Clもしくは−Brで置換されていてよい。したがって、かご状構造の化学的性質に応じて、4個以外の様々な数の芳香族部分がかご状構造に結合してよい。例えば、かご状構造を通しての比較的低い架橋度が望ましい場合、1〜3個の芳香族部分がかご状構造と結合でき、ここで、芳香族部分は架橋のための反応基を含んでも含まなくてもよい。より高い架橋度が好ましい場合、5個以上の芳香族部分がかご状構造と結合でき、ここで、すべてまたは殆どすべての芳香族部分は、1個またはそれ以上の反応基を有する。さらに、中央のかご状構造に結合した芳香族部分は、他のかご状構造を有してよいと考えられ、そのかご状構造は、中心のかご状構造と同じでも全く異なっていてもよい。例えば考えられるモノマーは、比較的多い芳香族部分および芳香族部分にあるジアマンタンをもたらすためにフラーレンかご状構造を有することができる。したがって、考えられるかご状構造は第1および第2主鎖、または3個以上の主鎖と共有結合で結合していてよい。
【0059】
芳香族部分の化学的性質については、適切な芳香族部分は、フェニル基、より好ましくはフェニル基と反応基を含むことが考えられる。例えば、芳香族部分は、トラン(フェニルエチニルフェニル)基、または置換トランを含むことができ、この置換トランは、二重結合、エチニル基、エーテル−、ケト−、もしくはエステル基を含む、炭素−炭素結合または炭素−非炭素原子結合を介して、トランと共有結合で結合している追加のフェニル基を含む。
【0060】
さらに考えられるものは、図7の例で示すような懸垂かご状構造を有するモノマーであり、その懸垂基として2個のジアマンタン基が用いられる。しかし、懸垂かご状構造が2個のジアマンタン構造に限定されないことを理解されたい。考えられる別のかご状構造には、単置換および多置換のアダマンタン基、ジアマンタン基およびフラーレンの、化学的に妥当な任意の組み合わせが含まれる。特定の溶解性、酸化安定性、または他の物理化学的特性が望ましい場合、かご状構造に置換基を導入することができる。したがって、考えられる置換基には、ハロゲン、アルキル、アリール、およびアルケニル基が含まれ、またエステル、酸基、ニトロおよびアミノ基などの官能基および極性基も含まれる。
【0061】
複数の主鎖は同じものである必要はないことも理解されたい。別の実施形態のいくつかの態様では、別の低誘電率材料が、芳香族部分、反応基、および主鎖に共有結合で結合しているかご状化合物を有する第1および第2主鎖を含む限り、低誘電率材料を作るために2個以上の化学的に別の主鎖を使用することができる。
【0062】
反応基については、代替的な反応基が、外生性架橋剤なしで、第1および第2主鎖を架橋することができる限り、エチニル基およびテトラサイクロン基以外の多数の反応基を使用できると考えられる。例えば適切な反応基にはベンゾシクロブテニルが含まれる。他の例では、第1反応基は求電子基を含むことができ、他方、第2反応基は求核基を含むことができる。さらに、反応基の数は主に、(a)第1および第2反応基の反応性と、(b)第1と第2主鎖間の架橋の強さと、(c)低誘電率材料中での所望の架橋度とに依存すると考えられる。例えば、第1および第2反応基が立体的に妨害されている(例えば、2個の誘導体化されたフェニル環間のエチニル基)場合、2個の主鎖をある程度架橋するためには、比較的多くの反応基が必要となる。同様に、水素結合またはイオン結合などの比較的弱い結合が反応基間に形成されている場合、安定した架橋を得るためには多数の反応基が必要となる。
【0063】
1個の主鎖の反応基が他の主鎖の同一反応基と反応できる場合、1種類だけの反応基があればよい。例えば、同じものであって2個の異なる主鎖に位置するエチニル基は、付加および付加環化型反応で反応し、架橋構造を形成することができる。
【0064】
反応基の数が分子間と分子内との架橋の比に影響を与えることも理解されたい。例えば、第1および第2主鎖中の反応基が比較的高濃度であって、両主鎖が比較的低濃度であると、分子内の反応に好都合である。同様に、第1および第2主鎖中の反応基が比較的低濃度であって、両主鎖が比較的高濃度であると、分子間の反応に好都合である。分子内と分子間の反応の間のバランスも、主鎖間での非同一反応基の分布によって影響される。分子間反応が望ましい場合、第1主鎖上に1種類の反応基を位置させ、他方、他の種類の反応基を第2主鎖上に位置させることができる。さらに、異なる条件での逐次的な架橋が望ましい場合(例えば2つの異なる温度)、追加の第3および第4の反応基を用いることができる。
【0065】
好ましい主鎖の反応基は付加型の反応で反応するが、代替的な反応基の化学的性質によっては、求核および求電子置換、脱離、ラジカル反応等を含む多くの他の反応も考えられる。他の代替的な反応は、静電結合、イオン結合および水素結合などの非共有結合の形成も含むことができる。したがって、第1と第2主鎖の架橋は、同じまたは2個の主鎖上に位置してよい、同一または非同一反応基間に形成された共有結合または非共有結合によってもたらされる。
【0066】
別の実施形態の他の態様では、かご状構造は、別のかご状構造が少なくとも8個の原子を有する限り、ジアマンタン、橋かけしたクラウンエーテル、またはフラーレンを含む、アダマンタン以外の構造を含むことができる。適切なかご状構造の選択は、かご状構造の望ましい立体的要求の程度によって決まる。比較的小さいかご状構造が好ましい場合、単一のアダマンタン、またはジアマンタン基で十分である。アダマンタンおよびジアマンタン基を含む、考えられる主鎖の構造を図8Aおよび図8Bに示す。大きなかご状構造はフラーレンを含んでよい。別の主鎖は、単一の種類のかご状構造に限定する必要はないことも理解されたい。適切な主鎖は、2〜5個のかご状構造、あるいは他の分子およびさらに非同一のかご状構造も含むことができる。例えばフラーレンを、ポリマー性主鎖の一方または両方の末端に加え、他方、ジアマンタン基を主鎖の他の部分に位置させることができる。さらに大きなかご状構造が望ましい場合、考えられるものは、オリゴマー化および重合したかご状構造を含む、誘導体化されたまたは多重のかご状構造である。かご状構造の化学組成は、炭素原子に限定する必要はなく、別のかご状構造が、炭素原子以外の原子(すなわちヘテロ原子)を有してよいことを理解されたい。その場合、考えられるヘテロ原子にN、O、P、S、Bなどを含んでよい。
【0067】
かご状構造の位置については、かご状構造を様々な位置で主鎖に連結できると考えられる。例えば、主鎖中の官能基末端をマスクする、または主鎖を形成する重合反応を終わらせることが望ましい場合、かご状構造を末端キャップとして利用することができる。末端キャップの構造の例を図9Aおよび図9Bに示す。他のケースで、大量のかご状構造が望ましい場合、かご状構造は、主鎖に共有結合で結合した懸垂構造であることが考えられる。共有結合の位置は様々であり、主に主鎖およびかご状構造の化学的構成によって決まる。したがって、適切な共有結合は、連結分子、または官能基を含むことができ、また、他の連結は単結合または二重結合でよい。かご基が懸垂基である場合、2個以上の主鎖が、かご状構造に連結している可能性があることが特に考えられる。例えば、単一のかご状構造は、少なくとも2個または3個あるいはそれ以上の主鎖に連結できる。代わりに、かご基は主鎖の構成部分であってよいと考えられる。
【0068】
図10を参照すると、低誘電率材料の例が示されており、ここで、第1主鎖10は、第1反応基15および第2反応基25を介して、第2主鎖20と架橋しており、この架橋が共有結合50となっている。両方の主鎖はそれぞれ、少なくとも1個の芳香族部分(図にはなし)を有する。複数の懸垂かご状構造30は、第1および第2主鎖に共有結合で結合しており、かつ第1主鎖10はさらに末端かご基32を有する。末端かご基32、および少なくとも1個の懸垂かご基30は、少なくとも1個の置換基R(40)を有している。この置換基40は、ハロゲン、アルキル、またはアリール基でよい。各かご状構造は少なくとも8個の原子を含む。
【0069】
さらに、別の低誘電率材料は追加の成分も含むことができると考えられる。例えば保護剤を加えることができる。他のケースで、誘電材料が滑らかな表面上にある場合、接着促進剤を好都合に利用することができる。さらに他の場合では、界面活性剤または消泡剤を加えることが望ましい。
【0070】
得られる溶液が、基板、ウエハまたは層状化材料上に、スピンコートされる、または他の方法で機械的に層状化され得る限り、本明細書で記したモノマー、モノマー混合物およびポリマーは、任意の適切な溶媒中に溶媒和または溶解するように設計することができ、それには多くの方法がある。本明細書で考えられる基板は、任意の望ましい実質的固体の材料を含むことができる。特に望ましい基板層には、フィルム、ガラス、セラミック、プラスチック、金属もしくはコーティングした金属、または複合材料が含まれる。好ましい実施形態では、基板は、シリコンもしくはヒ化ガリウムのダイまたはウエハ表面、銅,銀,ニッケルもしくは金をめっきしたリードフレームに見られるパッケージング表面、回路板またはパッケージ相互接続トレースに見られる銅表面、バイアウォール(via−wall)または補強インターフェース(「銅」には裸銅およびその酸化物の考慮を含む)、ポリイミドベースのフレックスパッケージなどに見られるポリマーベースのパッケージングまたはボードインターフェース、鉛もしくは他の金属合金はんだ球表面、ガラスおよびポリマーを含む。より好ましい実施形態では、基板はシリコン、銅、ガラスおよびポリマーなどのパッケージングおよび回路板産業で一般的な材料を含む。
【0071】
好ましい溶液は、ウエハ、基板または層状化材料上に、スピンコートし、ロールし、滴下またはスプレーされるように設計し考慮する。最も好ましい溶液は、ウエハ、基板または層状化材料上に、スピンコートされるように設計する。一般的な溶媒は、誘電材料、層状部品または電子部品の分野で容易に利用できる溶媒である。
【0072】
モノマー、異性体モノマー混合物およびポリマーを溶媒和できるものも典型的な溶媒である。考えられる溶媒には、所望の温度で揮発する有機、有機金属性または無機分子の任意の適切な単品または混合物が含まれる。溶媒には、極性または非極性化合物の任意の適切な単品または混合物を含むことができる。好ましい実施形態では、溶媒には、水、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、エーテル、シクロヘキサノン、ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコールメチルエーテル、メシチレン、およびアニソールが含まれる。
【0073】
本発明の組成物は、Michael E.Thomasの「低keff誘電体用スピンオン積層フィルム(Spin−On Stacked Films for Low keff Dielectrics)」、Solid State Technology(2001年7月)で教示されるすべてのスピンオン積層フィルムに使用することができる。その文献全体を参照により本明細書に組み込む。
【0074】
(実施例)
分析試験方法
誘電率:誘電率は、硬化させた層の上にアルミニウムの薄膜をコーティングし、次いで1MHzでキャパシタンス−電圧測定を行い、層厚みに基づいてk値を計算し決定した。
【0075】
ガラス転移温度(Tg):薄膜のガラス転移温度は、薄膜応力を温度の関数として測定して求める。薄膜応力測定はKLA3220Flexusで行う。フィルム測定の前に、ウエハ自体の中での応力緩和によるいかなるエラーも避けるため、未コーティングのウエハを500℃で60分間アニールする。次いで、試験する材料をウエハに被着し、必要なすべてのプロセスステップにわたって処理する。次いで、応力ゲージ上にウエハを置いてウエハの湾曲(bow)を温度の関数として測定する。この計器は、ウエハ厚みおよびフィルム厚みが既知であることを前提として、応力対温度のグラフを算出することができる。結果をグラフの形で図示する。Tg値を求めるために水平接線を引く(応力対温度グラフ上で勾配値がゼロ)。Tg値はグラフ線分と水平接線が交差する点である。
【0076】
最大温度を用いた第1温度サイクルまたは続くサイクルの後にTgを求めた場合、測定プロセス自体がTgに影響することがあることを報告しておきたい。
【0077】
収縮:フィルム収縮は、プロセス前後のフィルム厚みを測って決定する。収縮は元のフィルム厚みに対する割合で表す。フィルム厚みが減少すれば、収縮は正である。実際の厚み測定はJ.A.Woollam M−88分光エリプソメーターを用いて光学的に行う。プサイ(Psi)およびデルタ(Delta)に最もよく適合するものを計算するために、コーシーのモデルを用いる(エリプソメトリーに関する詳細は例えば、H.G.ThompkinsおよびWilliam A.McGahanによる「分光エリプソメトリーおよび反射光測定(Spectroscopic Ellipsometry and Reflectometry)」に出ている)。
【0078】
屈折率:屈折率測定は厚み測定と一緒に、J.A.Woollam M−88分光エリプソメーターを用いて行う。プサイおよびデルタに最もよく適合するものを計算するために、コーシーのモデルを用いる。特に言及しない限り、屈折率は633nmの波長(エリプソメトリーに関する詳細は例えば、H.G.ThompkinsおよびWilliam A.McGahanの「分光エリプソメトリーおよび反射光測定」に出ている)で報告する。
【0079】
(実施例1)
4,6−ビス(アダマンチル)レゾルシノールの合成
窒素入口、熱電対および凝縮器を備えた250−mL三つ口フラスコ中に、レゾルシノール(11.00g、100.0ミリモル)、ブロモアダマンタン(44.02g、205.1ミリモル)およびトルエン(150mL)を加えた。混合物を110℃に加熱し、溶液は透明になった。反応を48時間継続させ、その時点で、TLCはレゾルシノールがすべて消失したことを示した。溶媒を除去し固体をヘキサン(150mL)から晶出させた。二置換生成物を白色固体として66.8%の収率(25.26g)で得た。最初の収量の後に、さらに5.10gの生成物を濃厚母液のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって得た。生成物の合計収率は80.3%であった。生成物の特性評価をプロトンNMR、HPLC、FTIRおよび質量分析(MS)で行った。
【0080】
【化25】
【0081】
4,6−ビス(アダマンチル)レゾルシノールのポリ(アリーレンエーテル)主鎖への重合
窒素入口、熱電対およびディーンスターク(Dean−Stark)トラップを備えた250−mL三つ口フラスコに、ビス(アダマンチル)レゾルシノール(7.024g、18.57ミリモル)、FBZT(5.907g、18.57ミリモル)、炭酸カリウム(5.203g、36.89ミリモル)およびDMAC(50mL)、トルエン(25mL)を加えた。反応混合物を135℃に加熱し、透明な溶液が生成した。この温度で1時間反応を続け、トルエンの一部を除くことによって温度を165℃に上昇させた。重合の過程をGPCでモニターした。MW=22,000で反応を停止させた。DMACの別の50mL部を反応フラスコに加えた。固体を室温でろ過し、熱ジクロロメタン(2×150mL)で抽出した。メタノール(150mL)を溶液に加え、白色固体を沈澱させ、これをろ別した。収率は65.8%(8.511g)であった。固体をTHF(150mL)中に溶解し、メタノール(300mL)を溶液に徐々に加えた。沈澱した白色固体をろ別し真空中90℃で乾燥した。
【0082】
【化26】
【0083】
(実施例2)
【0084】
【化27】
【0085】
別のポリマーの合成
主鎖1のための合成手順は、実施例1の手順に従う。ただし、ジフルオロ化合物として4,4’−ジフルオロトランを使用する。
【0086】
(実施例2A)
【0087】
【化28】
【0088】
ジフルオロ化合物として3,4−ジフルオロテトラフェニルシクロジエノンを使用すること以外は、実施例1の合成手順に従う。
【0089】
(実施例3)
考えられる別の主鎖
以下の構造は、実施例1および2での一般的合成手順によって作ることができる、考えられる主鎖の例である。
【0090】
【化29】
【0091】
(実施例4)
図5Aおよび5Bに示すアダマンタニル末端キャップモノマーを、C.M.Lewis、L.J.Mathias、N.Wiegal、ACS Polymer Preprints、第36巻2号、140頁(1995年)に記載されているようにして合成した。
【0092】
(実施例5)
【0093】
【化30】
【0094】
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(TBA)の合成
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン合成は、市販のアダマンタンから出発し、続いてG.P.SollottおよびE.E.Gilbert,J.Org.Chem.、第45巻、5405〜5408頁(1980年)、B.Schartel,V.Stumpflin,J.Wendling,J.H.Wendorff,W.Heitz、およびR.Neuhaus,Colloid Polym.Sci.、第274巻、911〜919頁(1996年)、あるいはA.P.Khardin,I.A.Novakov、およびS.S.Radchenko,Zh.Org.Chem.、第9巻、435頁(1972年)に記載されている手順に従って合成を行った。バッチ当たり最大150gの量が定常的に合成された。
【0095】
1,3,5,7−テトラキス(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)の合成
最初のステップで、Macromolecules、第27巻、7015〜7023頁(1994年)(上記)に記載のように、TBAをブロモベンゼンと反応させ1,3,5,7−テトラキス(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)を得た。HPLC−MS分析では、全反応生成物のうち、所望のTBPAの割合は約50%であり、40%のトリブロム化テトラフェニルアダマンタンおよび約10%のジブロム化テトラフェニルアダマンタンを副生していた。
【0096】
【化31】
具体的には、上記についての実験手順は以下の通りである。
【0097】
装置
1.乾燥した5L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.マグネチック攪拌子。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0098】
手順
160.00±0.30gのTBAおよび4,800.00±1.0gのブロモベンゼンを計量する。全容積は3220mLでd=1.49である。32.25±0.30gの臭化アルミニウムを計量する。2L(全容積の62容積%)のブロモベンゼンをフラスコに注ぐ。攪拌子を作動させる。
【0099】
TBA全量を加え、ロートを1L(全容積の31容積%)のブロモベンゼンで洗う。出発材料のHPLC用サンプルを採取する。標準HPLCクロマトグラムと比較する。
【0100】
臭化アルミニウム全量を溶液に加え、ロートを220mL(全容積の7容積%)のブロモベンゼンで洗う。この時点での溶液は、沈澱のない暗紫色のはずである。反応混合物を室温で1時間攪拌する。
【0101】
1時間後、反応混合物の温度を40℃に上げる。温度が40℃に達した後、反応混合物を3時間攪拌する。HPLC用のサンプルを40℃で1+3.0時間でそれぞれ採取する。注:HPLCクロマトグラム上でTBAの痕跡が残っていなければ、反応の終了と判定する。
【0102】
反応が終了したら、暗色の反応混合物を、7L(ブロモベンゼン全容積に対し217容積%)のD.I.水、2L(ブロモベンゼン全容積に対し62容積%)の氷、および300mL(37%)のHCl(ブロモベンゼン全容積に対し9容積%)の入った20L容器に注ぐ。オーバーヘッド型攪拌機を用いて1時間±10分間強く攪拌する。
【0103】
有機層を分離用の槽に移し、700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)の脱イオン水で2回洗浄する。洗浄した有機層を4Lの分離用ロートに置き、それをゆっくりした流れで、オーバーヘッド型攪拌機の下に置かれた30L容器中の16L(ブロモベンゼン全容積の5倍量)のメタノールに加え、25±5分間で固体を析出させる。
【0104】
添加が完了したら、メタノール懸濁液を1時間±10分間強く攪拌する。メタノール懸濁液を、ブフナーロート(185mm)で吸引してろ過する。600mL(ブロモベンゼン全容積に対し19容積%)のメタノールで3回、ろ過ケーキ上でその固体を洗浄する。固体を30分間吸引乾燥する。
【0105】
ピンク色の粉体をスパチュラで結晶皿に空け、真空オーブンに入れ、一夜間乾燥する。乾燥後計量する。真空オーブン中でさらに2時間再乾燥し再秤量する。必要であれば重量変化が<1%となるまで乾燥を続ける。固体が乾燥した後、最終的な重量を記録し収率を計算する。見込収量は176.75〜192.80g(66〜72%)である。
【0106】
しかし、予想外に、生成混合物を新しい試薬および触媒(ブロモベンゼンおよびAlCl3、1分間20℃)で処理した場合、TBPAが約90〜95%の収率で得られた。この結果が非常に驚くべきことであったので、我々は確認のため数回これを繰り返した。その結果、以下および図11に示すような、前記の混合物を有用な生成物に転換させるための本発明の方法がもたらされた。
【0107】
【化32】
具体的には、上記のための実験手順は以下の通りである。
【0108】
装置
1.乾燥した5L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.マグネチック攪拌子。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0109】
手順
上記/従来の合成法で合成されたTBPAの収量に基づいて、必要なブロモベンゼンおよび臭化アルミニウムの相当量を計算する。
【0110】
適切な量(全容積の80容積%)のブロモベンゼンをフラスコ中に注加する。攪拌子を作動させる。
【0111】
上記合成によるTBPAの全量を加え、適切な量(全容積の10容積%)のブロモベンゼンでロートを洗う。
【0112】
出発材料のHPLCサンプルを採取する。標準HPLCクロマトグラムと比較する。
【0113】
臭化アルミニウムの全量を溶液に加え、残り(全容積の10容積%)のブロモベンゼンでロートを洗う。この時点での溶液は、沈澱のない暗紫色のはずである。
【0114】
反応混合物を室温で17分間攪拌する。5分後HPLC用サンプルを採取する。17分後HPLC用サンプルを採取する。
【0115】
注:HPLCクロマトグラム中で、TBPAに対応するピーク群が主体となった時点で、反応が終了していると判定する。
【0116】
反応が終了したら、暗色の反応混合物を、7L(ブロモベンゼン全容積に対し217容積%)のD.I.水、2L(ブロモベンゼン全容積に対し62容積%)の氷、および300mL(37%)のHCl(ブロモベンゼン全容積に対し9容積%)の入った20L容器に注加する。
【0117】
オーバーヘッド型攪拌機を用いて1時間±10分間強く攪拌する。
【0118】
有機層を分離槽に移し、700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)のD.I.水で2回、次いで700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)部の飽和NaCl溶液で3回洗浄する。
【0119】
洗浄した有機層を4Lの分離用ロートに置き、それをゆっくりした流れで、オーバーヘッド型攪拌機の下に置かれた30L容器中の適切な量(ブロモベンゼン全容積の5倍量)のメタノールに加え、25±5分間で固体を析出させる。
【0120】
添加が完了したら、メタノール懸濁液を1時間±10分間強く攪拌する。
【0121】
メタノール懸濁液を、ブフナーロート(185mm)で吸引してろ過する。
【0122】
600mL(ブロモベンゼン全容積に対し19容積%)のメタノールで3回、ろ過ケーキ上で固体を洗浄する。
【0123】
固体を30分間吸引乾燥する。
【0124】
ピンク色の粉体をスパチュラで結晶皿に空け、それをオーブンに入れ、一夜間乾燥する。乾燥後計量する。真空オーブン中でさらに2時間再乾燥し再秤量する。必要であれば重量変化が<1%となるまで乾燥を続ける。固体が乾燥した後、最終的な重量を記録し収率を計算する。見込収率は85〜91%である。
【0125】
1,3,5,7−テトラキス(フェニルエチニルフェニル)アダマンタン(TPEPA)の合成
【0126】
【化33】
【0127】
パラジウム触媒によるヘックエチニル化の一般的反応処方に従って、TBPAをフェニルアセチレンと反応し、最終生成物1,3,5,7−テトラキス[(3,4−フェニルエチニル)フェニル)]アダマンタン(TPEPA)(異性体の混合物として)を得た。反応で得られたTBPAを含むTPEPAはシクロヘキサノンに溶解する。TPEPAは、TBPAの代わりに、1,3,5,7−テトラキス(4−ヨードフェニル)アダマンタン(TIPA)からも得ることができる。TIPAから合成された場合、TPEPAはシクロヘキサノンに不溶性である。
【0128】
具体的には、このステップは以下の通りである。
【0129】
装置
1.乾燥した2L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.オーバーヘッド型攪拌機。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.滴下ロート。8.二口アダプター。9.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0130】
手順
上記第2の合成手順からのTBPAを計量する。
【0131】
以下の各化合物について必要な量を計算する。a)フェニルアセチレン、b)(Ph3P)2PdCl2、c)トリフェニルホスフィン、d)ヨウ化銅(I)、およびe)トリエチルアミン。
【0132】
適切な量のトリエチルアミン(全容積は1−eマイナス300mL)を反応フラスコに加え、オーバーヘッド型攪拌機を作動させ、続いて、以下の化合物を次に列挙した順に添加する。
【0133】
(Ph3P)2PdCl2、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0134】
トリフェニルホスフィン、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0135】
ヨウ化銅(I)、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0136】
上記の第2のTBPA合成からのTBPA全量を加え、ロートを100mL(全容積の8%)のTEAで洗う。フラスコを80℃へ加熱開始する。
【0137】
50mL(全容積の4%)のTEAで希釈された計量ずみのフェニルアセチレンを、二口アダプターに取り付けた滴下ロート中に置く。
【0138】
反応混合物の温度が80℃になった後、HPLC分析用サンプルを採取する。これが出発材料である。
【0139】
希釈フェニルアセチレンを反応混合物に30±10分間かけて滴下する。
【0140】
注:この反応は発熱反応である。温度をウォーターバスで制御する。
【0141】
加熱を3時間継続する。80℃で3時間加熱後反応を停止する。80℃、3時間でHPLC用サンプルを採取する。
【0142】
反応混合物を50℃に冷却し、次いでブフナーロート(185mm)でろ過する。粗製固体を600mLのTEA(容積%=52%対1−e)で2回洗浄する。
【0143】
ろ過ケーキを4Lビーカに仕込み、内容物を1L(容積%=87%対1−e)のTEAと室温で15分間混合する。
【0144】
ブフナーロート(185mm)でろ過し、粗製固体を300mLTEA(容積%=26%対1−e)で2回洗浄する。
【0145】
固体を一夜間吸引ろ過する。
【0146】
注:粗生成物3gを(TLC、HPLC、DSC、微量金属、UV−VIS)分析用に採取する。
【0147】
発明の背景の節で簡単に述べたように、Reichertの目標は、明確な構造の1,3,5,7−テトラキス[4−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン、すなわち、この化合物の単一のp−異性体である、1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)を調製することであった。明確な構造(分析的方法によって特性評価できる)を有する、この化合物、そしてこの化合物だけがReichertの研究の目標であった。図11および12が、以下に考察する異性体の調製を示し、本実施例の本文中のローマ数字が、図11および12のローマ数字に対応することに留意されたい。
【0148】
Reichertの計画は、以下の系列を実現することであった。
【0149】
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(I)→1,3,5,7−テトラキス(4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(II)(p−異性体)→1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)(p−異性体)
Reichertは、アダマンタンのコア(以下参照)に結合したp−およびm−ブロモフェニル基の組み合わせを含む、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)−1,3,5,7−テトラキス(ブロモフェニル)−アダマンタンの異性体混合物を得たと考え、彼女の研究の目標は達成されていないと考えた点で、彼女はステップ(I)→(II)に関して失敗した。これを裏付けるように彼女は、「アリール化の際の位置選択の欠如が、アダマンタンについてさらにフリーデルクラフツ反応を試みようとする意欲をなくさせてしまい、容易に形成される1,3,5,7−テトラフェニルアダマンタン(VI)の誘導体化の研究を進めるに至った」と記している。単一のp−異性体−1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)を調製するために、彼女は、「迂回方法」を以下のように設計した。
【0150】
1,3,5,7−テトラフェニルアダマンタン(VI)→1,3,5,7−テトラキス(4’−ヨードフェニル)−アダマンタン(VII)→1,3,5,7−テトラキス[4’−フェニルエチニル(フェニル)]−アダマンタン(VIII)
Reichertはこの系列を実現し、単一のp−異性体(VIII)を単離するのに成功したが、この化合物の溶解度が非常に低い結果となり、そのためこの化合物の13CNMRスペクトルを得ることができなかった。Reichertは、彼女の論文(上記)で「化合物3[(VIII)]はクロロホルムに十分溶解し、1H NMRスペクトルが得られることが分かった。しかし、13CNMRスペクトルを得るための時間は非実用的であることが分かった。生成物を特定するのに固体状態でのNMRを用いた」と述べている。またこの結果を確認するため、Reichertの化合物を複数の標準有機溶媒で試験し、試験したどの有機溶媒にも、本質的に溶解しないことが判明した。
【0151】
したがって、Reichertは、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)を調製したと考えたが、この生成物は明確な構造を有する単一異性体ではなかったので、その方向には進まなかった。そのかわり彼女は、1,3,5,7−テトラキス(4’−ヨードフェニル)アダマンタン(VII)の単一異性体を調製し、それを、1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(VIII)の単一異性体に転換した。これは溶解性がなく(そのために)有用でないものとなった。
【0152】
我々は、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応を何度も繰り返し、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンの反応生成物の分析から、それが(Reichertが示唆したように)1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)ではなく、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)とおよそ等量の1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)との混合物であることが分かった。この結論は、LC−MS研究および元素分析によって確認された。
【0153】
我々は、そうした反応経過の原因を見出すことができた。ブロモベンゼンは、フリーデルクラフツ反応の条件下で本質的に不均化することが知られている(G.A.Olah,W.S.Tolgyesi、R.E.A.Dear.J.Org.Chem.、第27巻、3441〜3449頁(1962年))。
【0154】
2PhBr→PhH+Br2Φ
反応混合物中のベンゼン濃度が増大すると、(I)中の臭素[または(III)中のブロモフェニル]の置換が始まる。ベンゼンの割合が非常に高いので、迅速に平衡に到達し、およそ等量の(III)と(IV)がもたらされる。
【0155】
したがって、Reichertは、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)を(彼女が考えていたようには)得ないで、そのかわり、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)とl−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)とのほぼ1:1の混合物を得たのである。
【0156】
1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)側の方へ平衡を移すために、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応の固体生成物[1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)と1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)の1:1の混合物]を、臭化アルミニウムの存在下で、新たな量のブロモベンゼンによって処理した。高純度のブロモベンゼンが、1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)中のフェニル基を直ちに置換し、それによって、30秒間で溶液中の生成物が約90〜95%の1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)を含む結果となった。室温で約5〜10分間この状態に保ち、その後ベンゼン濃度を徐々に増加させると、1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)濃度の増加をもたらし、数時間で1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)と1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)がほぼ等濃度となり、平衡が再度達成される。
【0157】
したがって、臭化アルミニウムの存在下での、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応固体生成物の2回目の処理によって、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)(Reichertはこれを合成したと思っていた)を調製することができる。
【0158】
1,3,5,7−テトラ(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)に、フェニルアセチレンでヘック反応を施すことによって、新規の1,3,5,7−テトラ[(3’/4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(V)(p−およびm−異性体の混合物)が得られ、それはNMRおよびHPLCによって確認された。これは、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、アニソール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メシチレン、酢酸シクロヘキシル等に非常によく溶解する。例えばシクロヘキサノン中へのその溶解度は>20%である。必要とされるこの特性が、スピンコートされる能力を可能にし、それによって、この材料、特に層状化材料および半導体の分野での実用的な使用を確実なものとする。
【0159】
したがって、我々が調製した中間体1,3,5,7−テトラ(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)は、スピンオン低k誘電材料として使用できる、1,3,5,7−テトラ[(3’/4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(V)(p−およびm−異性体からなる溶解性混合物)を製造する機会をもたらしたのである。
【0160】
(実施例6)
m−およびp−ブロモトラン異性体の合成
【0161】
【化34】
【0162】
添加ロートおよび窒素ガス入口を備えた500mL三つ口丸底フラスコ中に、4−ヨードブロモベンゼン(25.01g、88.37ミリモル)、トリエチルアミン(300mL)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[II]クロライド(0.82g)およびヨウ化銅[I](0.54g)を加えた。次いで、フェニルアセチレン(9.025g、88.37ミリモル)のトリエチルアミン(50mL)溶液を徐々に加え、溶液の温度を攪拌下で35℃以下に保持した。添加終了後、混合物をさらに4時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣を200mLの水に加えた。生成物をジクロロメタン(2×150mL)で抽出した。有機層を一緒にして溶媒をロータリーエバポレータで除去した。残渣を80mLのヘキサンで洗浄しろ過した。TLCおよびHPLCは高純度の生成物(収量、19.5g、86%)であることを示した。短いシリカカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘキサンの1:2混合物)で追加の精製を行った。溶媒を除去後、白色の結晶固体を得た。生成物の純度をアセトン溶液でGC/MSによって評価し、さらにプロトンNMRで評価した。
【0163】
m−およびp−エチニルトランの合成
【0164】
【化35】
【0165】
p−ブロモトランからのp−エチニルトランの合成は、2ステップで行った。第1ステップで、トリメチルシリルアセチレン(TMSA、上記に示す)を用いて、p−ブロモトランをトリメチルシリルエチニル化し、第2ステップで、第1ステップの反応生成物を最終目的生成物に転換した。
【0166】
ステップ1(4−ブロモトランのトリメチルシリルエチニル化):4−ブロモトラン(10.285g、40.0ミリモル)、エチニルトリメチルシラン(5.894g、60.0ミリモル)、0.505g(0.73ミリモル)のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[II]触媒、40mLの無水トリエチルアミン、0.214g(1.12ミリモル)のヨウ化銅[I]、および0.378g(1.44ミリモル)のトリフェニルホスフィンを、オーバーヘッド機械攪拌機、凝縮器を備え、かつ加熱用マントル内に置かれ、N2パージされた5Lの4つ口丸底フラスコに仕込んだ。その混合物を加熱し穏やかに還流(約88℃)させ1.5時間還流を維持した。反応混合物は、粘度の高い黒色ペーストになりこれを冷却した。薄層クロマトグラフィー分析では、出発材料4−ブロモトランが単一生成物に転換したことが示された。固体をろ過し50mLのトリエチルアミンで洗浄し、400mLの水と混合して30分間撹拌した。固体をろ過し40mLメタノールで洗浄した。粗製固体を500mLのメタノールで再結した。静置し、光沢のある銀色の結晶が析出した。これをろ過して単離し2×50mLのメタノールで洗浄した。4.662gが回収された(収率42.5%)。
【0167】
ステップ2(4−(トリメチルシリル)エチニルトランの4−エチニルトランへの転換):窒素入口、オーバーヘッド機械攪拌機を備えた1L三つ口丸底フラスコに、800mLの無水メタノール、12.68g(46.2ミリモル)の4−(トリメチルシリル)エチニルトラン、および1.12gの無水炭酸カリウムを仕込んだ。混合物を50℃に加熱した。HPLC分析(約3時間)で出発材料が検出されなくなるまで撹拌を継続した。反応混合物を冷却した。粗製固体を40mLのジクロロメタン中で30分間撹拌しろ過した。HPLCで、ろ過された懸濁固体は主に不純物であることが分かった。ジクロロメタンのろ液を乾燥し蒸発させ8.75gの固体を得た。オーブン中でさらに乾燥し、最終重量は8.67gで、収率が92.8%であった。
【0168】
1,3,5,7−テトラキス[(3’/4’−ビスフェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(TBPEPA)の合成
【0169】
【化36】
【0170】
パラジウム触媒を用いたヘックエチニル化反応の一般的処方に従って、TBPA(上記)を4−エチニルトランと反応させ、最終生成物1,3,5,7−テトラキス−[{3’/4’−[4”−(フェニルエチニル)]フェニルエチニル]フェニル}アダマンタン(TBPEPA)を得た。
【0171】
このように調製したTBTAをシクロヘキサノン中に溶解し10重量%溶液を得た。当技術分野でよく知られた標準的手順を用いて、そのうちの5mLを2枚のシリコンウエハ上にスピンした。ウエハ上でTBTAを、約300℃の温度に加熱して重合させ、400℃の温度で1時間硬化させた。k値は2.57と測定された。k値をTPEPA(これは長さを短くしたアームを有するTBTAの構造類似体である)のk値と比較した場合、TPEPAのk値は約2.60でより高かったことを特に理解されたい。したがって、かご状化合物から伸びるアームの長さを増大させたことによる考えられるk値の減少が実験的に確認された。
【0172】
(実施例7)
TBPA先駆体(実施例6)から調製したTPEPAのフィルム試験
TPEPA(約10gまたはそれ以上)をシクロヘキサノン(CHN)中に12%溶液として溶解した。得られた溶液をシリコンウエハ上にスピンし、次いで焼成し硬化させてフィルムとした。測定の結果、誘電率はおよそ2.60でTgは420℃以上であった。フィルムの収縮はなく、400℃で20時間フィルムを焼成した後のIRの変化もなかった。
【0173】
典型的または代表的なスピンコーティング条件を以下に示す。
【0174】
【表2】
加圧ガス:ヘリウム
給液圧力:0.08Mpa
給液速度:1.0mL/秒
インラインフィルター:0.1ミクロン、PFFV01D8S(Millipore,Fuluoroline−S)
コーター:DNS SC−W80A−A VFDLP
【0175】
考えられる化合物のための典型的な焼成および硬化条件:
焼成条件:150〜200〜250℃、窒素ガス(<50ppm酸素)下で各1分間。
【0176】
加熱炉硬化条件:典型的には、窒素(15L/分)中で400℃で60分間;5K/分で250℃からランピングアップ(Ramping up);硬化温度範囲350〜450℃。
【0177】
ホットプレート硬化条件:(加熱炉による硬化の代替として)窒素中で350〜450℃、1〜5分間。
【0178】
考えられる化合物の物理特性:
屈折率:
焼成後:1.702
硬化後:1.629
厚み(オングストローム):
焼成後:8449
硬化後:9052
厚み変化(%):
焼成から硬化へ:7.1
以上、低誘電率ポリマーを製造するための組成物および方法の具体的な実施形態および応用について開示してきた。しかし、当分野の技術者には、すでに述べてきたこれらの他に、本明細書に記載された発明概念から逸脱することなく、より多くの改変が可能であることは明らかなはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨を外れない限り、制限されるべきではない。さらに、明細書および特許請求の範囲を解釈する場合のどちらも、すべての用語は、文脈と矛盾しないで可能な最も広い形で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、要素、成分、またはステップを、他を排除しない形で称しており、言及された要素、成分、またはステップは、明白に言及されていない他の要素、成分、またはステップと、共に存在する、または共に使用する、または組み合わせることができることを示していると解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1A】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図1B】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図1C】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図2A】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2B】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2C】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2D】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図3A】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図3B】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図3C】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図4】置換アダマンタンを製造するための合成スキームを示す図である。
【図5】懸垂型かご状構造を有する低分子量ポリマーを製造するための合成スキームを示す図である。
【図6】懸垂型かご状構造を有する低分子量ポリマー製造するための合成スキームを示す図である。
【図7】熱硬化性モノマーを製造するための合成スキームを示す図である。
【図8A】考えられるポリマーの構造を示す図である。
【図8B】考えられるポリマーの構造を示す図である。
【図9A】懸垂型かご状構造を有する末端キャッピング分子を製造するための合成スキームを示す図である。
【図9B】懸垂型かご状構造を有する末端キャッピング分子を製造するための合成スキームを示す図である。
【図10】考えられる低誘電率材料の概略構造を示す図である。
【図11】熱硬化性モノマーの異性体混合物の調製のための合成スキームを示す図である。
【図12】1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(p−異性体)の調製のための合成スキームを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は以下の、2001年4月6日出願のPCT/US01/11273号、2001年7月5日出願の米国特許出願第09/897936号、2001年7月10日出願の米国特許出願第09/902924号、および2001年7月13日出願のPCT/US01/22204号に対する優先権を主張するものであり、これらをすべて参照により本明細書に合体する。本出願は2000年4月7日出願の米国特許出願第09/545058号および2000年7月19日出願の米国特許出願第09/618945号にも関連し、これらをすべて参照により本明細書に合体する。
【0002】
本発明は、半導体デバイス、特に有機低誘電率材料を有する半導体デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの性能とスピードの増大に努める中で、半導体デバイス製造業者は相互接続の線幅と間隔を縮小することと同時に動作減衰量および相互接続の静電結合の最小化を探求してきた。電力消費および静電結合を減少させる1つの方法は、相互接続を隔てる絶縁材料、すなわち誘電体の誘電率(「k」とも称する)を減少させることによるものである。低誘電率を有する絶縁体材料は、一般により速い信号の伝達を可能にし、静電容量効果および導線間のクロストークを減少させ、集積回路の駆動に要する電圧を低下させることができるので、特に望ましい。
【0004】
空気が1.0の誘電率を有しているので、重要な目標は、絶縁体材料の誘電率を理論的な限界である1.0まで低下させることであり、従来技術では絶縁材料の誘電率を低下させるのにいくつかの方法が知られている。これらの技術には、フッ素などの元素を組成物に加えてバルク材料の誘電率を低下させることが含まれる。kを低下させるための他の方法には、代替的誘電材料マトリックスの使用が含まれる。
【0005】
したがって、将来の半導体デバイスに望まれる改善された性能とスピードを達成するためには、相互接続の線幅の減少につれて、これに絶縁材料の誘電率の減少が伴うことが求められる。例えば、0.13または0.10ミクロンおよびそれ以下の相互接続の線幅を有するデバイスには、誘電率(k)<3を有する絶縁材料が求められる。
【0006】
最近では、二酸化ケイ素(SiO2)、およびフッ素化した二酸化ケイ素またはフッ素化したシリコンガラス(以下FSG)などのSiO2を変性させたものが使用されている。約3.5〜4.0の範囲の誘電率を有するこれらの酸化物は、通常半導体デバイス中の誘電体として使用される。SiO2およびFSGは、半導体デバイス製造の熱サイクルおよび処理ステップに耐えるのに必要な機械的および熱的安定性は有しているが、産業界では、より小さい誘電率を有する材料が望まれている。
【0007】
誘電材料を蒸着させるのに用いられる方法は2つのカテゴリに分けられる。スピンオン(spin−on)蒸着(以下SOD)および化学蒸着(以下CVD)である。より低誘電率の材料を開発するために行われているいくつかの努力には、化学組成(有機、無機、有機/無機の混合)を変化させること、または誘電体マトリックス(多孔質、非多孔質)を変えることが含まれる。表Iに、2.0〜3.5の範囲の誘電率を有する複数の材料の開発をまとめる。(PE=プラズマ強化;HDP=高密度プラズマ)しかし、表Iに示す文献、特許出願または特許に開示されたこれらの誘電材料およびマトリックスは、機械的安定性、熱安定性、高いガラス転移温度、または適度の硬度と、同時に基板、ウエハまたは他の表面上で溶媒和やスピンオンされ得るという、効率的な誘電材料に望ましくさらに必要でもある物理的および化学的諸特性の組み合わせのうちの多くを示すことができていない。したがって、誘電材料および層として有用であり得る他の化合物および材料を、それらの化合物および材料が今の形では誘電材料として現在考えられていないとしても、研究することは有益であるかも知れない。
【0008】
【表1】
【0009】
ReichertとMathiasは、かごをベースとした分子の部類に入り、ダイヤモンドの代替品として有用であるとされている、アダマンタン分子を含む化合物およびモノマーについて述べている。(Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1993年、第34巻1号495〜6頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1992年、第33巻2号、144〜5頁;Chem.Mater.、1993年、第5巻1号、4〜5頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7030〜7034頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7015〜7023頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1995年、第36巻1号、741〜742頁;第205回ACS全国ミーティング、会議プログラム、1993年、312頁;Macromolecules、1994年、第27巻24号、7024〜9頁;Macromolecules、1992年、第25巻9号、2294〜306頁;Macromolecules、1991年、第24巻18号、5232〜3頁;Veronica R.Reichert、PhD論文、1994年、Vol.55−06B;ACS Symp.Ser:高機能性材料用ステップ成長ポリマー(Step−Growth Polymers for High−Performance Materials)、1996年、第624巻、197〜207頁;Macromolecules、2000年、第33巻10号、3855〜3859頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1999年、第40巻2号、620〜621頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1999年、第40巻2号、577〜78頁;Macromolecules、1997年、第30巻19号、5970〜5975頁;J.Polym.Sci,PartA:Polymer Chemistry、1997年、第35巻9号、1743〜1751頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1996年、第37巻2号、243〜244頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1996年、第37巻1号、551〜552頁;J.Polym.Sci.,PartA:Polymer Chemistry、1996年、第34巻3号、397〜402頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1995年、第36巻2号、140〜141頁;Polym,Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.)、1992年、第33巻2号、146〜147頁;J.Appl.Polym.Sci.、1998年、第68巻3号、475〜482頁)。ReichertとMathiasにより記述されたアダマンタンをベースとした化合物およびモノマーは、アダマンタン分子を有するポリマーを熱硬化物のコアで形成するために使用することが好ましい。しかし、ReichertとMathiasが彼らの研究で開示している化合物は、設計上の選択によりアダマンタンをベースとした化合物の1つの異性体を含むだけである。構造Aはこの対称パラ異性体である1,3,5,7−テトラキス(4−フェニルエチニルフェニル)アダマンタンを示す。
【0010】
【化15】
【0011】
つまり、ReichertとMathiasは、彼らの個別および合同作業で、目標であるアダマンタンをベースとしたモノマーのただ1個の異性体形を含む有用なポリマーを考えている。しかし、アダマンタンをベースとしたモノマーの単一異性体形(対称的全パラ(all−para)異性体)の1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンでポリマーを形成させようとすると、重大な問題がある。Reichert論文(上記)およびMacromolecules、第27巻(7015〜7034頁)(上記)によれば、対称的全パラ異性体1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンは、「1H NMRスペクトルを得るのに十分なほどクロロホルムへの溶解性があることが分かった。しかし、溶液13CNMRスペクトルを得るのには非実用的なほど時間がかかることが分かった」。したがって、Reichertの対称的全パラ異性体1,3,5,7−テトラキス[(4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンは、フローコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティングなどの、溶解性または溶媒をベースとした加工を必要とするどのような用途にも役立ちそうにない。
【0012】
当技術分野では、材料の誘電率を低下させるための様々な方法が知られているが、それらのすべてまたは殆どすべてには欠点がある。したがって、半導体産業では、a)誘電層の誘電率を低下させるための改善された組成および方法を提供すること、b)熱安定性、ガラス転移温度(Tg)、硬度などの機械的特性の改善された誘電材料を提供すること、およびc)ウエハまたは層状化された材料に溶媒和されスピンオンされ得る、熱硬化性化合物および誘電材料を製造することが依然として必要である。
【0013】
Reichertの結果(単一の全パラフェニルエチニルフェニルかごベース異性体は非溶解性であると示されている)とは反対に、我々は、新規のかごベース異性体混合物が、殆どの有機溶媒に溶解することを発見した。この発見の結果として、新規なかごベースの異性体混合物は、この材料を溶解し基板上にスピンオンさせる電子材料用途に有用である。さらに、本明細書では、Reichertらの混合物を本発明の新規なかごベース異性体混合物に転換するための方法を述べる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は一般に、少なくとも1個のかごベースの分子または化合物を含む低誘電性ポリマー、ならびにそれらの低誘電率ポリマーを製造する方法、誘電材料および層、および電子部品を目的とする。本発明の一つの態様では、コアかご状構造および複数のアームを有する熱硬化性モノマーの異性体混合物が提供され、該熱硬化性モノマーの異性体混合物は、モノマーの少なくとも1つのアーム上に位置するエチニル基の反応を含むプロセスによって重合される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主題の関連する態様では、コア構造はかご状化合物であり、好ましいアームはアリール、分枝アリールまたはアリーレンエーテルである。コア構造がかご状化合物である場合、少なくとも1個のアームがエチニル基を有することも好ましい。コア構造がアリール化合物である場合、アームのすべてがエチニル基を有することが好ましい。特に考えられるコア構造には、アダマンタン、ジアマンタン、フェニル、およびセキシフェニレンが含まれ、かつ特に考えられるアームには、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニルエーテルが含まれる。
【0016】
本発明の主題の他の態様では、かご状構造は、置換または非置換アダマンタン、あるいは置換または非置換ジアマンタンを含むことが好ましい。ここで、アダマンタンまたはジアマンタンは、懸垂基として主鎖の一部であるか、あるいは、かご状構造が4面体もしくは多面体構造を有していてもよい。
【0017】
本発明の主題の他の態様では、熱硬化性モノマーの異性体混合物の重合は、少なくとも1個のモノマーの2個以上のエチニル基上、好ましくは3個のアーム上に位置する3個のエチニル基上、より好ましくはすべてのアーム上に位置するすべてのエチニル基上の反応を含む。本発明の主題の特に好ましい態様では、重合反応は追加の分子を加えることなく起こり、かつ好ましくは付加環化反応を含む。
【0018】
本発明の主題のさらに他の態様では、芳香族部分および第1反応基を有する第1ポリマー主鎖、ならびに芳香族部分および第2反応基を有する第2のポリマー主鎖を有するスピンオン低誘電率材料を形成させる。ここで、第1および第2ポリマー主鎖は、第1および第2反応基を介する架橋反応によって、好ましくは追加の架橋剤なしで、架橋され、かつ少なくとも10個の原子を有するかご状構造が、第1および第2主鎖の少なくとも1つと共有結合で結合している。
【0019】
本発明の主題のさらに他の態様では、第1および第2主鎖は同一であって、好ましくはフェニル基を含み、より好ましくはポリ(アリーレンエーテル)を含み、最も好ましくは芳香族部分として、置換されたレゾルシノール、置換されたトラン、または置換されたフェノールを含む。他の好ましい態様では、第1および第2反応基は同一でなく、エチニル部分またはテトラサイクロン部分を含み、かつ架橋反応は付加環化反応である。
【0020】
一般に、熱硬化性モノマーの異性体は、ポリマーの主鎖に組み込まれると考えられているが、ポリマーの末端および側鎖を含む他の位置も適している。好ましいポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)および考えられた熱硬化性モノマーを含む、またはそれらから構成されるポリマーである。本発明の様々な目的、特徴、態様および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な記述ならびに添付の図面から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書では、「低誘電率ポリマー」という用語は、約3.0以下の誘電率を有する有機、有機金属、または無機のポリマーを称する。本明細書ではまた、「主鎖」という用語は、ポリマー性の鎖を形成する原子または部分の連続的な鎖を称し、これらの原子または部分は任意の原子または部分の除去が鎖の中断を招くように共有結合で結合している。
【0022】
本明細書ではさらに、「反応基」という用語は、化学反応によって他の反応基と少なくとも1個の共有結合を形成するのに十分な反応性を有する、任意の原子、官能基、または基を称する。化学反応は2個の同一の、または同一でない反応基間で起きることができ、それらの反応基は同じ主鎖または2個の別の主鎖上に位置してよい。反応基が1個または複数の第2のまたは外生性(exogenous)の架橋分子と反応して、第1主鎖と第2主鎖を架橋することも考えられる。外生性架橋剤なしの架橋は、ポリマー中の全体の反応基数を減らし、必要な反応ステップ数を減らすことを含む様々な利点をもたらすが、若干の欠点も有している。例えば一般に、架橋官能基の量はそれ以上調節できない。他方、外生性架橋剤を使用すると、重合反応と架橋反応が化学的に適合しない場合に有利であるだろう。
【0023】
本明細書ではさらに、「かご状構造」「かご状分子」、および「かご状化合物」という語句は、互換的に用いようとするもので、少なくとも1個の橋かけが環系の2個以上の原子に共有結合で結合するように配置された少なくとも8個の原子を有する分子を称する。すなわち、かご状構造、かご状分子またはかご状化合物は、共有結合で結合した原子によって形成されている複数の環を含み、そこでは、構造、分子または化合物は、容積部の中に位置する点が、環を通過することなしには容積部から出られないように容積部を規定している。橋かけおよび/または環系は、1個または複数のヘテロ原子を含むことができ、かつ芳香族、部分的に飽和された、または不飽和の基を含むことができる。さらに考えられるかご状構造には、少なくとも1個の橋かけを有するフラーレンおよびクラウンエーテルが含まれる。例えばアダマンタンまたはジアマンタンはかご状構造と考えられるが、ナフタレンまたは芳香族スピロ化合物は1個または1個以上の橋かけを有していないので、この定義の範囲ではかご状構造ではないと考えられる。
【0024】
低誘電率ポリマーの製造方法では、構造1で示す一般構造
【0025】
【化16】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーの異性体混合物が提供される。さらなるステップでは、熱硬化性モノマー混合物は、少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む反応によって重合し、それによって低誘電率ポリマーを形成する。本明細書では、「アリール」という用語は、他の指定がない限り、任意の種類のアリールを意味し、例えば分枝アリールまたはアリーレンエーテルを含むことができる。アダマンタン、ジアマンタン、およびケイ素原子を含む熱硬化性モノマーの構造の例をそれぞれ、図1A、図1B、および図1Cに示す。ここでnは、0〜5、またはそれ以上の整数である。
【0026】
低誘電率ポリマーを製造する他の方法では、構造2に示す一般構造
【0027】
【化17】
(式中、Arはアリールであり、R’1〜R’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換(個別の位置において置換されていないこと)から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーが提供される。続くステップでは、少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む反応によって熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成する。テトラ−、およびヘキサ置換のセキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例をそれぞれ、図2A〜2Bおよび図2C〜2Dに示す。
【0028】
構造1および2で一般に示されるような熱硬化性モノマーは、種々の合成ルートによって提供することができる。構造1および2のための合成方策の例を図3A〜3Cに示す。図3Aおよび実施例5では、かご状化合物としてアダマンタンを有する、考えられる熱硬化性モノマーの生成のための好ましい合成ルートを図示しかつ記述する。ここで、ブロモアレーンはパラジウム触媒を用いたヘック(Heck)反応でフェニルエチニル化される。まず、先に記述されている手順(Sollot,G.P.およびGilbert,E.E.による、J.Org.Chem.第45巻、5405〜5408頁(1980年))に従って、アダマンタン(1)を臭素化して1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(TBA)(2)とする。Reichert,V.RおよびMathias L.J.によるMacromolecules、第27巻、7015〜7022頁(1990年)の記載のようにして、TBAをフェニルブロマイドと反応させて1,3,5,7−テトラ(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)(4)を得る。続いて標準的な反応手順に従って、パラジウム触媒を用いたヘック反応でTBPAを置換エチニルアリールと反応させ、テトラ(アリールエチニル)フェニルアダマンタン(5)を得る。実施例5はさらに、技術背景の節で記したReichertの研究および化合物と,本発明で考えられた化合物との差を示す。パラジウム触媒を用いたヘック反応は、図2A〜2Dに示すように、芳香族部分としてセキシフェニレンを有する熱硬化性モノマーの合成にも利用できる。ここで、テトラブロモセキシフェニレンおよびヘキサブロモセキシフェニレンはそれぞれ、エチニルアリール化合物と反応し所望の対応熱硬化性モノマーをもたらす。
【0029】
実施例5は、(a)構造式
【0030】
【化18】
(式中、Yはかご状化合物から選択され、かつR1、R2、R3およびR4は独立に、臭素、フッ素、エチニル基ならびにすでに本明細書で指定した基などの反応基である)を有する化学反応物を提供するステップと、(b)化学反応物を熱硬化性モノマー中間体に転換するステップと、(c)熱硬化性モノマー中間体を新しい試薬溶液およびAlBr3またはAICl3を含む新しい触媒で処理し、熱硬化性モノマーを生成させるステップと、(d)反応基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させるステップとを含む、低誘電率ポリマーの製造の他の考えられる実施形態も示す。
【0031】
別法では、TBAをヒドロキシアリール化されたアダマンタンに転換させ、次いで、これを求核的芳香族置換反応で熱硬化性モノマーに変換することができる。図3Bでは、前述したようにTBA(2)をアダマンタン(1)から生成させ、さらに求電子的テトラ置換でフェノールと反応させ、1,3,5,7−テトラキス(3/4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(THPA)(7)を得る。別法では、TBAをアニソールと反応させて1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−メトキシフェニル)アダマンタン(6)を得ることもでき、さらにこれをBBr3と反応させてTHPA(7)を得ることができる。標準的手順(例えば、R.J.Cotterによるエンジニアリングプラスチックスーポリアリールエーテルハンドブック(Engineering Plastics−A Handbook of Polyarylethers)、Gordon and Breach Publishers,ISBN 2−88449−112−0)を用いて、THPAを種々の求核的芳香族置換反応で、炭酸カリウムの存在下、活性化したフルオロ芳香族と反応させて、所望の熱硬化性モノマーを生成させることができる。あるいは、THPAを標準的な芳香族置換反応(例えばエンジニアリングプラスチックス、上記)で、4−ハロ−4’−フルオロトラン(ハロ=BrまたはI)と反応させて、1,3,5,7−テトラキス{3’/4’−[4”−(ハロフェニルエチニル)フェノキシ]フェニル}アダマンタン(8)を生成することができる。さらに別の反応では、様々な代替の反応物を用いて熱硬化性モノマーを生成させることもできる。同様に、求核的芳香族置換反応も、図2Dに示したように、芳香族部分としてセキシフェニレンを有する熱硬化性モノマーの合成に使用できる。ここで、セキシフェニレンを4−フルオロトランと反応させ、熱硬化性モノマーを生成させる。別法では、フロログリシノールを、標準的芳香族置換反応で、4−[4’−(フルオロフェニルエチニル)フェニルエチニル]ベンゼンと反応させ、1,3,5−トリス{4’−[4”−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェノキシ}ベンゼンを得ることができる。
【0032】
かご状化合物がケイ素原子の場合、好ましい合成スキームの例を図3Cに示す。ここでブロモ(フェニルエチニル)芳香族アーム(9)が対応する(フェニルエチニル)アリールリチウムアーム(10)に転換し、続いてこれは四塩化ケイ素と反応してかご状化合物としてケイ素原子を有する所望の星形熱硬化性モノマーを得る。
【0033】
かご状化合物は、ケイ素原子、アダマンタンまたはジアマンタンであることが好ましいが、本発明の主題の別の態様では、アダマンタンまたはジアマンタン以外の様々なかご状化合物も考えられる。アームR1〜R4またはR’1〜R’6の全体の長さとあわせて、かご状化合物の分子の大きさおよび配置が、最終的な低誘電率ポリマーの、物理的および機械的特性のいくつかを、ならびに空隙が望ましくかつ適している場合には空隙サイズを、(立体効果により)決定することになることを特に理解されたい。したがって、比較的小さいかご状化合物が望ましい場合、置換されかつ誘導体化されたアダマンタン、ジアマンタン、および比較的小さい架橋した環状脂肪族および芳香族化合物(一般に15個未満の原子を有する)が考えられる。対照的に、より大きいかご状化合物が望ましい場合、より大きい架橋した環状脂肪族および芳香族化合物(一般に15個超の原子を有する)およびフラーレンが考えられる。
【0034】
考えられるかご状化合物は必ずしも炭素原子だけからなると限定する必要はなく、N、S、O、Pなどのヘテロ原子を含むこともできる。ヘテロ原子は、非四辺形結合角配置を好都合に導入することができ、それは次に、アームR1〜R4またはR’1〜R’6が追加の結合角で共有結合連結できるようにする。考えられるかご状化合物の置換基および誘導体化に関して、多くの置換基および誘導体化が適していることを認識しておくべきである。例えばかご状化合物が比較的疎水性である場合、親水性置換基を導入して親水性溶媒中での溶解性を増大させることができ、その逆も可能である。代わりに、極性が望ましい場合、極性の側基をかご状化合物に加えることができる。さらに、適切な置換基には、熱不安定性基、求核基および求電子基も含むことができると考えられる。かご状化合物中で官能基も用いることができること(例えば、架橋反応、誘導体化反応等を容易にするために)も理解されたい。かご状化合物を誘導体化する場合、誘導体化にはかご状化合物のハロゲン化が含まれ、特に好ましいハロゲンはフッ素および臭素であることが特に考えられる。
【0035】
熱硬化性モノマーが、構造2に示すように、アームR’1〜R’6と結合したアリールを有する場合、アリールがフェニル基を含むことが好ましく、アリールが、フェニル基またはセキシフェニレンであることがさらにより好ましい。本発明の主題の他の態様では、置換および非置換の、二環および多環芳香族化合物を含む、フェニル基またはセキシフェニレン以外の種々のアリール化合物も適していると考えられる。サイズの大きい熱硬化性モノマーが好ましい場合は、置換および非置換の、二環および多環芳香族化合物が特に有利である。例えば、代替的なアリール(複数)が、別々の方向に向くよりも1つの方向に伸びることが望ましい場合、ナフタレン、フェナンスレン、およびアントラセンが特に考えられる。他のケースで、代替的なアリール(複数)が対称的に伸びることが望ましい場合、コロネンなどの多環アリールが考えられる。特に好ましい態様では、考えられる二環および多環アリールは共役芳香族系を有していて、ヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい。考えられるアリールの置換および誘導体化については、本明細書で考察したかご状化合物についてと同じ考え方があてはまる。
【0036】
アームR1〜R4およびR’1〜R’6については、R1〜R4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、かつR’1〜R’6は独立にアリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルならびに無置換から選択されることが好ましい。R1〜R4およびR’1〜R’6のための、特に考えられるアリールには、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニル部分を有するアリールが含まれる。特に好ましいアリーレンエーテルは、フェニルエチニルフェニルフェニルエーテルを含む。
【0037】
本発明の主題の別の態様では、熱硬化性モノマー異性体の適切なアームは、代替的なアームR1〜R4およびR’1〜R’6が反応基を含み、かつ、熱硬化性モノマーの重合がその反応基を伴う反応を含む限り、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルに限定する必要はない。例えば、考えられるアームは、せいぜい6個の原子の比較的短いものでよく、この原子は炭素原子であってもなくてもよい。空隙または細孔を最終の製品または材料に加えるのが望ましく、かつ空隙の大きさが比較的小さい必要がある場合、そうした短いアームが特に有利である。対照的に、特に長いアームが好ましい場合、アームは7〜40個、またはそれ以上の原子を有するオリゴマーまたはポリマーを含むことができる。これらの長いアームは、より短いアームと比べて、材料安定性、熱安定性あるいは空隙率を設計するのに有利である。さらに、考えられる熱硬化性モノマーに共有結合で結合しているアームの長さならびに化学組成は1個のモノマー内で様々であってよい。例えば、重合の際の方向的な成長を特定の方向に促進させるために、かご状化合物は2個の比較的短いアームおよび2個の比較的長いアームを有してよい。他の例では、かご状化合物は、位置選択的な誘導体化反応を促進させるために、他の2個のアームとは化学的に区別される2個のアームを有してよい。
【0038】
熱硬化性モノマー中のすべてのアームが少なくとも1個の反応基を有することが好ましいが、別の態様では、アームすべてが反応基を有する必要はない。例えばかご状化合物が4個のアームを有し、アームの内の2個か3個だけが反応基を有してよい。別法では、熱硬化性モノマーのアリールが、アームのうちの2個または1個だけが反応基を有している3個のアームを有してよい。アームR1〜R4およびR’1〜R’6のそれぞれでの反応基の数は、アームの化学的性質および所望の最終製品の品質に応じて、一般に相当変化してよいと考えられる。さらに反応基は、主鎖、側鎖またはアームの末端を含むアームの任意の部分に位置するものと考えられる。熱硬化性モノマー中の反応基の数を、架橋度を制御するための手段として使用できることを特に理解されたい。例えば比較的低い架橋度が望ましい場合、考えられる熱硬化性モノマーは1個または2個だけの反応基を有してよく、その反応基は、1個のアーム内にあってもなくてもよい。他方、比較的高い架橋度が望ましい場合、3個またはそれ以上の反応基をモノマー中に含むことができる。好ましい反応基には、求電子基および求核基、より好ましくは付加環化反応に用いられる基が含まれ、特に好ましい反応基はエチニル基である。
【0039】
アーム中の反応基に加えて、官能基を含む他の基をアーム中に含むこともできる。例えば、熱硬化性モノマーを重合してポリマーとしたあと、特定の官能性(例えば熱不安定部分)の追加が望ましい場合、そうした官能性は共有結合で官能基に結合していてよい。
【0040】
熱硬化性モノマー、モノマー混合物および異性体混合物は、多様なメカニズムによって重合させることができ、実際の重合メカニズムは主に重合プロセスに加わる反応基によって決まる。したがって、考えられるメカニズムには、求核、求電子および芳香族置換、付加、脱離、ラジカル重合反応、および付加環化反応が含まれ、特に好ましい重合メカニズムは、少なくとも1個のアームに位置する少なくとも1個のエチニル基を伴う付加環化である。例えば、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのうちの少なくとも3個が単一のエチニル基を有する、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択されるアームを有する熱硬化性モノマーでは、モノマー、異性体混合物、モノマー混合物のポリマーへの重合は、少なくとも3個のエチニル基の付加環化反応(すなわち化学反応)を含んでよい。他の例では、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルアームのすべてが単一のエチニル基を有する熱硬化性モノマーでは、重合プロセスは、すべてのエチニル基の付加環化反応(すなわち化学反応)を含んでよい。他の例では、付加環化反応(例えばディールス−アルダー反応)は、熱硬化性モノマーの少なくとも1個のアーム中のエチニル基とポリマー中にあるジエン基との間で起こってもよい。さらに、熱硬化性モノマーの重合が、追加の分子(例えば架橋剤)の参加なしで、好ましくは熱硬化性モノマーの反応基間での付加環化反応として起こることが考えられる。しかし、本発明の主題の別の態様では、架橋剤を、熱硬化性モノマーとポリマーを共有結合で結合させるのに利用することができる。したがって、そうした共有結合的な結合は、反応基とポリマー間、あるいは官能基とポリマー間のどちらの間においても起こり得る。
【0041】
熱硬化性モノマーの重合のメカニズムによって、反応条件は相当変わってよい。例えばモノマーを、少なくとも1個のアームのエチニル基を利用する付加環化反応によって重合させる場合、一般に熱硬化性モノマーを約250℃またはそれ以上で約45分間加熱すれば十分である。対照的に、ラジカル反応によってモノマーを重合させる場合、ラジカル開始剤の添加が適切である。好ましい重合方法および技術を実施例に示す。
【0042】
熱硬化性モノマーは、末端を含むポリマーの主鎖中または主鎖上の、またはポリマーの側鎖として、任意の点に位置することができる。本明細書では、「主鎖」という用語は、共有結合で結合していて、任意の原子または部分を除去すると鎖を中断することになるような、ポリマー性鎖を形成する原子または部分の連続的な鎖を称する。
【0043】
考えられるポリマーには、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドなどの非常に広範なポリマーの種類が含まれる。しかし、ポリマーがポリアリーレン、より好ましくはポリ(アリーレンエーテル)を含むことが特に考えられる。さらにより好ましい態様では、ポリマーの少なくとも一部が熱硬化性モノマーで作られ、ポリマーを全体的に熱硬化性モノマーの異性体で作ることが特に考えられる。
【0044】
図4に示す、特に考えられるアーム伸長の方法では、ADはアダマンタンまたはジアマンタン基を表す。フェニルアセチレンは、出発分子であって、TBPA(上記)と反応して(A1)、1,3,5,7−テトラキス[3’/4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタンを得る。別法では,フェニルアセチレンを4−(フェニルエチニル)フェニルブロマイドに転換させ(B1)、次いでトリメチルシリルアセチレンと反応し(C1)、4−(フェニルエチニル)フェニルアセチレンを生成することができる。次いで、TBPAを、フェニルエチニルフェニルアセチレンと反応して(A2)、1,3,5,7−テトラキス{3’/4’−[4”−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニル}−アダマンタンにすることができる。さらなる伸長反応では、フェニルエチニルフェニルアセチレンを、1−ブロモ−4−ヨードベンゼンと反応させ(B2)、4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニルブロマイドを形成させ、さらに転換させて(C2)、4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]アセチレンとする。次いで、そのように形成させた4−[4’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル]アセチレンをTBAと反応させて(A3)、1,3,5,7−テトラキス−{3’/4’−[4”−(4’’’−(フェニルエチニル)フェニルエチニル)フェニルエチニル]フェニル}アダマンタンを得ることができる。
【0045】
本発明の主題による、考えられる熱硬化性モノマーの熱硬化性モノマーおよび異性体混合物は、電子デバイスの誘電層に利用することができる。ここで好ましい誘電層は3.0未満の誘電率を有し、好ましい電子デバイスには集積回路が含まれる。したがって考えられる電気デバイスは、以下の構造
【0046】
【化19】
(式中、Yは、かご状化合物またはケイ素原子であり、Arは好ましくはアリールであり、R1〜R4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、R’1〜R’6は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテル、および無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)
を有する、少なくとも1個の熱硬化性モノマーまたは異性体モノマー混合物から作られるポリマーを含む、少なくとも1個の誘電層を含むことができる。
【0047】
より具体的には、好ましいスピンオン低誘電率材料を、第1および第2主鎖を含んで形成することができ、ここで、少なくとも1個の主鎖は、それぞれかご状構造として構造3A〜B(1個だけの主鎖の反復単位が示されている)に示すような、2個の懸垂アダマンタン基を有するポリ(アリーレンエーテル)を含む。これらの低誘電率材料は一般に以下の反復単位
【0048】
【化20】
(式中、Bはフェニルアダマンタンまたはフェニルジアマンタンポリマー(n=1〜3)であり、x=1〜103であり、Rは少なくとも1個のフェニル基を含み、Arはフェニル基である)を含む。より具体的にはBが、
【0049】
【化21】
を含むことが考えられる。
【0050】
さらにRが、
【0051】
【化22】
を含むことが考えられる。
【0052】
第1および第2芳香族部分はフェニル基を含み、かつ第1および第2反応基はそれぞれ、ディールス−アルダー反応で反応して主鎖を架橋する、エチニルおよびテトラサイクロン部分である。好ましい架橋条件は、ポリ(アリーレンエーテル)主鎖を約200〜250℃またはそれ以上の温度で約30〜180分間加熱することである。構造3Bは、以下の実施例1〜3に概略を述べるようにして合成できる。
【0053】
【化23】
【0054】
別の実施形態では、主鎖はポリ(アリーレンエーテル)に限定する必要はなく、最終低誘電率材料の所望の物理化学的特性に依存して大きく変わり得る。したがって、比較的高いTgが望ましい場合、ケイ酸塩(SiO2)および/またはアルミン酸塩(Al2O3)を含む無機ポリマーを含む無機材料が特に考えられる。屈曲性、加工のし易さ、または低応力/TCE等が必要な場合、有機ポリマーが考えられる。すなわち、具体的な用途に応じて、考えられる有機主鎖は、芳香族ポリイミド、ポリアミド、およびポリエステルを含む。
【0055】
約1000〜10000の分子量を有する低分子量ポリマーから構成されることが好ましいが、第1および第2ポリマー性主鎖の鎖長は、5またはそれ以下の反復単位から数万およびそれ以上の反復単位の間、で相当に変化してよい。好ましい主鎖は、芳香族置換反応でモノマーから合成される。合成ルートを図5および6の例で示す。さらに、別の主鎖は、分枝、超分枝、あるいは少なくとも一部が架橋していてもよいと考えられる。別法では、モノマーから主鎖をその場で合成することもできる。適切なモノマーは、好ましくは芳香族ビスフェノール系化合物およびジフルオロ芳香族化合物を含み、これらは0〜約20個の組み込まれたかご状構造を有してよい。
【0056】
適切なモノマーおよび異性体混合物は、構造4A〜Bに図示した4面体構造を有し、または含むことも考えられる。一般構造4Aでは、熱硬化性モノマーはかご状構造Gを有し、かつ側鎖R1〜R4のうち少なくとも2個は、芳香族部分および反応基を含み、ここで、第1のモノマーの少なくとも1個の反応基が、第2のモノマーの少なくとも1個の反応基と反応し、低誘電率ポリマーを生成する。一般構造4Bでは、かご状構造、好ましくはアダマンタンは、重合に加わることができる4個の芳香族部分に結合しており、R1〜R4は同じまたは異なっていてよい。
【0057】
【化24】
【0058】
4面体構造を有するモノマーを使用する場合、かご状構造は三次元配置で、4個の主鎖と共有結合で結合することになる。4面体構造を有するモノマーの例とその合成を図7に示す。別のモノマーは、かご状構造として置換または非置換アダマンタンを有する化合物に限定する必要はなく、かご状構造として置換または非置換ジアマンタンまたはフラーレンを含むこともできることを理解されたい。考えられる置換基には、アルキル、アリール、ハロゲン、および官能基が含まれる。例えばアダマンタンは、−CF3基、フェニル基、−COOH、−NO2、または−F、−Clもしくは−Brで置換されていてよい。したがって、かご状構造の化学的性質に応じて、4個以外の様々な数の芳香族部分がかご状構造に結合してよい。例えば、かご状構造を通しての比較的低い架橋度が望ましい場合、1〜3個の芳香族部分がかご状構造と結合でき、ここで、芳香族部分は架橋のための反応基を含んでも含まなくてもよい。より高い架橋度が好ましい場合、5個以上の芳香族部分がかご状構造と結合でき、ここで、すべてまたは殆どすべての芳香族部分は、1個またはそれ以上の反応基を有する。さらに、中央のかご状構造に結合した芳香族部分は、他のかご状構造を有してよいと考えられ、そのかご状構造は、中心のかご状構造と同じでも全く異なっていてもよい。例えば考えられるモノマーは、比較的多い芳香族部分および芳香族部分にあるジアマンタンをもたらすためにフラーレンかご状構造を有することができる。したがって、考えられるかご状構造は第1および第2主鎖、または3個以上の主鎖と共有結合で結合していてよい。
【0059】
芳香族部分の化学的性質については、適切な芳香族部分は、フェニル基、より好ましくはフェニル基と反応基を含むことが考えられる。例えば、芳香族部分は、トラン(フェニルエチニルフェニル)基、または置換トランを含むことができ、この置換トランは、二重結合、エチニル基、エーテル−、ケト−、もしくはエステル基を含む、炭素−炭素結合または炭素−非炭素原子結合を介して、トランと共有結合で結合している追加のフェニル基を含む。
【0060】
さらに考えられるものは、図7の例で示すような懸垂かご状構造を有するモノマーであり、その懸垂基として2個のジアマンタン基が用いられる。しかし、懸垂かご状構造が2個のジアマンタン構造に限定されないことを理解されたい。考えられる別のかご状構造には、単置換および多置換のアダマンタン基、ジアマンタン基およびフラーレンの、化学的に妥当な任意の組み合わせが含まれる。特定の溶解性、酸化安定性、または他の物理化学的特性が望ましい場合、かご状構造に置換基を導入することができる。したがって、考えられる置換基には、ハロゲン、アルキル、アリール、およびアルケニル基が含まれ、またエステル、酸基、ニトロおよびアミノ基などの官能基および極性基も含まれる。
【0061】
複数の主鎖は同じものである必要はないことも理解されたい。別の実施形態のいくつかの態様では、別の低誘電率材料が、芳香族部分、反応基、および主鎖に共有結合で結合しているかご状化合物を有する第1および第2主鎖を含む限り、低誘電率材料を作るために2個以上の化学的に別の主鎖を使用することができる。
【0062】
反応基については、代替的な反応基が、外生性架橋剤なしで、第1および第2主鎖を架橋することができる限り、エチニル基およびテトラサイクロン基以外の多数の反応基を使用できると考えられる。例えば適切な反応基にはベンゾシクロブテニルが含まれる。他の例では、第1反応基は求電子基を含むことができ、他方、第2反応基は求核基を含むことができる。さらに、反応基の数は主に、(a)第1および第2反応基の反応性と、(b)第1と第2主鎖間の架橋の強さと、(c)低誘電率材料中での所望の架橋度とに依存すると考えられる。例えば、第1および第2反応基が立体的に妨害されている(例えば、2個の誘導体化されたフェニル環間のエチニル基)場合、2個の主鎖をある程度架橋するためには、比較的多くの反応基が必要となる。同様に、水素結合またはイオン結合などの比較的弱い結合が反応基間に形成されている場合、安定した架橋を得るためには多数の反応基が必要となる。
【0063】
1個の主鎖の反応基が他の主鎖の同一反応基と反応できる場合、1種類だけの反応基があればよい。例えば、同じものであって2個の異なる主鎖に位置するエチニル基は、付加および付加環化型反応で反応し、架橋構造を形成することができる。
【0064】
反応基の数が分子間と分子内との架橋の比に影響を与えることも理解されたい。例えば、第1および第2主鎖中の反応基が比較的高濃度であって、両主鎖が比較的低濃度であると、分子内の反応に好都合である。同様に、第1および第2主鎖中の反応基が比較的低濃度であって、両主鎖が比較的高濃度であると、分子間の反応に好都合である。分子内と分子間の反応の間のバランスも、主鎖間での非同一反応基の分布によって影響される。分子間反応が望ましい場合、第1主鎖上に1種類の反応基を位置させ、他方、他の種類の反応基を第2主鎖上に位置させることができる。さらに、異なる条件での逐次的な架橋が望ましい場合(例えば2つの異なる温度)、追加の第3および第4の反応基を用いることができる。
【0065】
好ましい主鎖の反応基は付加型の反応で反応するが、代替的な反応基の化学的性質によっては、求核および求電子置換、脱離、ラジカル反応等を含む多くの他の反応も考えられる。他の代替的な反応は、静電結合、イオン結合および水素結合などの非共有結合の形成も含むことができる。したがって、第1と第2主鎖の架橋は、同じまたは2個の主鎖上に位置してよい、同一または非同一反応基間に形成された共有結合または非共有結合によってもたらされる。
【0066】
別の実施形態の他の態様では、かご状構造は、別のかご状構造が少なくとも8個の原子を有する限り、ジアマンタン、橋かけしたクラウンエーテル、またはフラーレンを含む、アダマンタン以外の構造を含むことができる。適切なかご状構造の選択は、かご状構造の望ましい立体的要求の程度によって決まる。比較的小さいかご状構造が好ましい場合、単一のアダマンタン、またはジアマンタン基で十分である。アダマンタンおよびジアマンタン基を含む、考えられる主鎖の構造を図8Aおよび図8Bに示す。大きなかご状構造はフラーレンを含んでよい。別の主鎖は、単一の種類のかご状構造に限定する必要はないことも理解されたい。適切な主鎖は、2〜5個のかご状構造、あるいは他の分子およびさらに非同一のかご状構造も含むことができる。例えばフラーレンを、ポリマー性主鎖の一方または両方の末端に加え、他方、ジアマンタン基を主鎖の他の部分に位置させることができる。さらに大きなかご状構造が望ましい場合、考えられるものは、オリゴマー化および重合したかご状構造を含む、誘導体化されたまたは多重のかご状構造である。かご状構造の化学組成は、炭素原子に限定する必要はなく、別のかご状構造が、炭素原子以外の原子(すなわちヘテロ原子)を有してよいことを理解されたい。その場合、考えられるヘテロ原子にN、O、P、S、Bなどを含んでよい。
【0067】
かご状構造の位置については、かご状構造を様々な位置で主鎖に連結できると考えられる。例えば、主鎖中の官能基末端をマスクする、または主鎖を形成する重合反応を終わらせることが望ましい場合、かご状構造を末端キャップとして利用することができる。末端キャップの構造の例を図9Aおよび図9Bに示す。他のケースで、大量のかご状構造が望ましい場合、かご状構造は、主鎖に共有結合で結合した懸垂構造であることが考えられる。共有結合の位置は様々であり、主に主鎖およびかご状構造の化学的構成によって決まる。したがって、適切な共有結合は、連結分子、または官能基を含むことができ、また、他の連結は単結合または二重結合でよい。かご基が懸垂基である場合、2個以上の主鎖が、かご状構造に連結している可能性があることが特に考えられる。例えば、単一のかご状構造は、少なくとも2個または3個あるいはそれ以上の主鎖に連結できる。代わりに、かご基は主鎖の構成部分であってよいと考えられる。
【0068】
図10を参照すると、低誘電率材料の例が示されており、ここで、第1主鎖10は、第1反応基15および第2反応基25を介して、第2主鎖20と架橋しており、この架橋が共有結合50となっている。両方の主鎖はそれぞれ、少なくとも1個の芳香族部分(図にはなし)を有する。複数の懸垂かご状構造30は、第1および第2主鎖に共有結合で結合しており、かつ第1主鎖10はさらに末端かご基32を有する。末端かご基32、および少なくとも1個の懸垂かご基30は、少なくとも1個の置換基R(40)を有している。この置換基40は、ハロゲン、アルキル、またはアリール基でよい。各かご状構造は少なくとも8個の原子を含む。
【0069】
さらに、別の低誘電率材料は追加の成分も含むことができると考えられる。例えば保護剤を加えることができる。他のケースで、誘電材料が滑らかな表面上にある場合、接着促進剤を好都合に利用することができる。さらに他の場合では、界面活性剤または消泡剤を加えることが望ましい。
【0070】
得られる溶液が、基板、ウエハまたは層状化材料上に、スピンコートされる、または他の方法で機械的に層状化され得る限り、本明細書で記したモノマー、モノマー混合物およびポリマーは、任意の適切な溶媒中に溶媒和または溶解するように設計することができ、それには多くの方法がある。本明細書で考えられる基板は、任意の望ましい実質的固体の材料を含むことができる。特に望ましい基板層には、フィルム、ガラス、セラミック、プラスチック、金属もしくはコーティングした金属、または複合材料が含まれる。好ましい実施形態では、基板は、シリコンもしくはヒ化ガリウムのダイまたはウエハ表面、銅,銀,ニッケルもしくは金をめっきしたリードフレームに見られるパッケージング表面、回路板またはパッケージ相互接続トレースに見られる銅表面、バイアウォール(via−wall)または補強インターフェース(「銅」には裸銅およびその酸化物の考慮を含む)、ポリイミドベースのフレックスパッケージなどに見られるポリマーベースのパッケージングまたはボードインターフェース、鉛もしくは他の金属合金はんだ球表面、ガラスおよびポリマーを含む。より好ましい実施形態では、基板はシリコン、銅、ガラスおよびポリマーなどのパッケージングおよび回路板産業で一般的な材料を含む。
【0071】
好ましい溶液は、ウエハ、基板または層状化材料上に、スピンコートし、ロールし、滴下またはスプレーされるように設計し考慮する。最も好ましい溶液は、ウエハ、基板または層状化材料上に、スピンコートされるように設計する。一般的な溶媒は、誘電材料、層状部品または電子部品の分野で容易に利用できる溶媒である。
【0072】
モノマー、異性体モノマー混合物およびポリマーを溶媒和できるものも典型的な溶媒である。考えられる溶媒には、所望の温度で揮発する有機、有機金属性または無機分子の任意の適切な単品または混合物が含まれる。溶媒には、極性または非極性化合物の任意の適切な単品または混合物を含むことができる。好ましい実施形態では、溶媒には、水、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、エーテル、シクロヘキサノン、ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコールメチルエーテル、メシチレン、およびアニソールが含まれる。
【0073】
本発明の組成物は、Michael E.Thomasの「低keff誘電体用スピンオン積層フィルム(Spin−On Stacked Films for Low keff Dielectrics)」、Solid State Technology(2001年7月)で教示されるすべてのスピンオン積層フィルムに使用することができる。その文献全体を参照により本明細書に組み込む。
【0074】
(実施例)
分析試験方法
誘電率:誘電率は、硬化させた層の上にアルミニウムの薄膜をコーティングし、次いで1MHzでキャパシタンス−電圧測定を行い、層厚みに基づいてk値を計算し決定した。
【0075】
ガラス転移温度(Tg):薄膜のガラス転移温度は、薄膜応力を温度の関数として測定して求める。薄膜応力測定はKLA3220Flexusで行う。フィルム測定の前に、ウエハ自体の中での応力緩和によるいかなるエラーも避けるため、未コーティングのウエハを500℃で60分間アニールする。次いで、試験する材料をウエハに被着し、必要なすべてのプロセスステップにわたって処理する。次いで、応力ゲージ上にウエハを置いてウエハの湾曲(bow)を温度の関数として測定する。この計器は、ウエハ厚みおよびフィルム厚みが既知であることを前提として、応力対温度のグラフを算出することができる。結果をグラフの形で図示する。Tg値を求めるために水平接線を引く(応力対温度グラフ上で勾配値がゼロ)。Tg値はグラフ線分と水平接線が交差する点である。
【0076】
最大温度を用いた第1温度サイクルまたは続くサイクルの後にTgを求めた場合、測定プロセス自体がTgに影響することがあることを報告しておきたい。
【0077】
収縮:フィルム収縮は、プロセス前後のフィルム厚みを測って決定する。収縮は元のフィルム厚みに対する割合で表す。フィルム厚みが減少すれば、収縮は正である。実際の厚み測定はJ.A.Woollam M−88分光エリプソメーターを用いて光学的に行う。プサイ(Psi)およびデルタ(Delta)に最もよく適合するものを計算するために、コーシーのモデルを用いる(エリプソメトリーに関する詳細は例えば、H.G.ThompkinsおよびWilliam A.McGahanによる「分光エリプソメトリーおよび反射光測定(Spectroscopic Ellipsometry and Reflectometry)」に出ている)。
【0078】
屈折率:屈折率測定は厚み測定と一緒に、J.A.Woollam M−88分光エリプソメーターを用いて行う。プサイおよびデルタに最もよく適合するものを計算するために、コーシーのモデルを用いる。特に言及しない限り、屈折率は633nmの波長(エリプソメトリーに関する詳細は例えば、H.G.ThompkinsおよびWilliam A.McGahanの「分光エリプソメトリーおよび反射光測定」に出ている)で報告する。
【0079】
(実施例1)
4,6−ビス(アダマンチル)レゾルシノールの合成
窒素入口、熱電対および凝縮器を備えた250−mL三つ口フラスコ中に、レゾルシノール(11.00g、100.0ミリモル)、ブロモアダマンタン(44.02g、205.1ミリモル)およびトルエン(150mL)を加えた。混合物を110℃に加熱し、溶液は透明になった。反応を48時間継続させ、その時点で、TLCはレゾルシノールがすべて消失したことを示した。溶媒を除去し固体をヘキサン(150mL)から晶出させた。二置換生成物を白色固体として66.8%の収率(25.26g)で得た。最初の収量の後に、さらに5.10gの生成物を濃厚母液のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって得た。生成物の合計収率は80.3%であった。生成物の特性評価をプロトンNMR、HPLC、FTIRおよび質量分析(MS)で行った。
【0080】
【化25】
【0081】
4,6−ビス(アダマンチル)レゾルシノールのポリ(アリーレンエーテル)主鎖への重合
窒素入口、熱電対およびディーンスターク(Dean−Stark)トラップを備えた250−mL三つ口フラスコに、ビス(アダマンチル)レゾルシノール(7.024g、18.57ミリモル)、FBZT(5.907g、18.57ミリモル)、炭酸カリウム(5.203g、36.89ミリモル)およびDMAC(50mL)、トルエン(25mL)を加えた。反応混合物を135℃に加熱し、透明な溶液が生成した。この温度で1時間反応を続け、トルエンの一部を除くことによって温度を165℃に上昇させた。重合の過程をGPCでモニターした。MW=22,000で反応を停止させた。DMACの別の50mL部を反応フラスコに加えた。固体を室温でろ過し、熱ジクロロメタン(2×150mL)で抽出した。メタノール(150mL)を溶液に加え、白色固体を沈澱させ、これをろ別した。収率は65.8%(8.511g)であった。固体をTHF(150mL)中に溶解し、メタノール(300mL)を溶液に徐々に加えた。沈澱した白色固体をろ別し真空中90℃で乾燥した。
【0082】
【化26】
【0083】
(実施例2)
【0084】
【化27】
【0085】
別のポリマーの合成
主鎖1のための合成手順は、実施例1の手順に従う。ただし、ジフルオロ化合物として4,4’−ジフルオロトランを使用する。
【0086】
(実施例2A)
【0087】
【化28】
【0088】
ジフルオロ化合物として3,4−ジフルオロテトラフェニルシクロジエノンを使用すること以外は、実施例1の合成手順に従う。
【0089】
(実施例3)
考えられる別の主鎖
以下の構造は、実施例1および2での一般的合成手順によって作ることができる、考えられる主鎖の例である。
【0090】
【化29】
【0091】
(実施例4)
図5Aおよび5Bに示すアダマンタニル末端キャップモノマーを、C.M.Lewis、L.J.Mathias、N.Wiegal、ACS Polymer Preprints、第36巻2号、140頁(1995年)に記載されているようにして合成した。
【0092】
(実施例5)
【0093】
【化30】
【0094】
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(TBA)の合成
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン合成は、市販のアダマンタンから出発し、続いてG.P.SollottおよびE.E.Gilbert,J.Org.Chem.、第45巻、5405〜5408頁(1980年)、B.Schartel,V.Stumpflin,J.Wendling,J.H.Wendorff,W.Heitz、およびR.Neuhaus,Colloid Polym.Sci.、第274巻、911〜919頁(1996年)、あるいはA.P.Khardin,I.A.Novakov、およびS.S.Radchenko,Zh.Org.Chem.、第9巻、435頁(1972年)に記載されている手順に従って合成を行った。バッチ当たり最大150gの量が定常的に合成された。
【0095】
1,3,5,7−テトラキス(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)の合成
最初のステップで、Macromolecules、第27巻、7015〜7023頁(1994年)(上記)に記載のように、TBAをブロモベンゼンと反応させ1,3,5,7−テトラキス(3/4−ブロモフェニル)アダマンタン(TBPA)を得た。HPLC−MS分析では、全反応生成物のうち、所望のTBPAの割合は約50%であり、40%のトリブロム化テトラフェニルアダマンタンおよび約10%のジブロム化テトラフェニルアダマンタンを副生していた。
【0096】
【化31】
具体的には、上記についての実験手順は以下の通りである。
【0097】
装置
1.乾燥した5L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.マグネチック攪拌子。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0098】
手順
160.00±0.30gのTBAおよび4,800.00±1.0gのブロモベンゼンを計量する。全容積は3220mLでd=1.49である。32.25±0.30gの臭化アルミニウムを計量する。2L(全容積の62容積%)のブロモベンゼンをフラスコに注ぐ。攪拌子を作動させる。
【0099】
TBA全量を加え、ロートを1L(全容積の31容積%)のブロモベンゼンで洗う。出発材料のHPLC用サンプルを採取する。標準HPLCクロマトグラムと比較する。
【0100】
臭化アルミニウム全量を溶液に加え、ロートを220mL(全容積の7容積%)のブロモベンゼンで洗う。この時点での溶液は、沈澱のない暗紫色のはずである。反応混合物を室温で1時間攪拌する。
【0101】
1時間後、反応混合物の温度を40℃に上げる。温度が40℃に達した後、反応混合物を3時間攪拌する。HPLC用のサンプルを40℃で1+3.0時間でそれぞれ採取する。注:HPLCクロマトグラム上でTBAの痕跡が残っていなければ、反応の終了と判定する。
【0102】
反応が終了したら、暗色の反応混合物を、7L(ブロモベンゼン全容積に対し217容積%)のD.I.水、2L(ブロモベンゼン全容積に対し62容積%)の氷、および300mL(37%)のHCl(ブロモベンゼン全容積に対し9容積%)の入った20L容器に注ぐ。オーバーヘッド型攪拌機を用いて1時間±10分間強く攪拌する。
【0103】
有機層を分離用の槽に移し、700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)の脱イオン水で2回洗浄する。洗浄した有機層を4Lの分離用ロートに置き、それをゆっくりした流れで、オーバーヘッド型攪拌機の下に置かれた30L容器中の16L(ブロモベンゼン全容積の5倍量)のメタノールに加え、25±5分間で固体を析出させる。
【0104】
添加が完了したら、メタノール懸濁液を1時間±10分間強く攪拌する。メタノール懸濁液を、ブフナーロート(185mm)で吸引してろ過する。600mL(ブロモベンゼン全容積に対し19容積%)のメタノールで3回、ろ過ケーキ上でその固体を洗浄する。固体を30分間吸引乾燥する。
【0105】
ピンク色の粉体をスパチュラで結晶皿に空け、真空オーブンに入れ、一夜間乾燥する。乾燥後計量する。真空オーブン中でさらに2時間再乾燥し再秤量する。必要であれば重量変化が<1%となるまで乾燥を続ける。固体が乾燥した後、最終的な重量を記録し収率を計算する。見込収量は176.75〜192.80g(66〜72%)である。
【0106】
しかし、予想外に、生成混合物を新しい試薬および触媒(ブロモベンゼンおよびAlCl3、1分間20℃)で処理した場合、TBPAが約90〜95%の収率で得られた。この結果が非常に驚くべきことであったので、我々は確認のため数回これを繰り返した。その結果、以下および図11に示すような、前記の混合物を有用な生成物に転換させるための本発明の方法がもたらされた。
【0107】
【化32】
具体的には、上記のための実験手順は以下の通りである。
【0108】
装置
1.乾燥した5L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.マグネチック攪拌子。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0109】
手順
上記/従来の合成法で合成されたTBPAの収量に基づいて、必要なブロモベンゼンおよび臭化アルミニウムの相当量を計算する。
【0110】
適切な量(全容積の80容積%)のブロモベンゼンをフラスコ中に注加する。攪拌子を作動させる。
【0111】
上記合成によるTBPAの全量を加え、適切な量(全容積の10容積%)のブロモベンゼンでロートを洗う。
【0112】
出発材料のHPLCサンプルを採取する。標準HPLCクロマトグラムと比較する。
【0113】
臭化アルミニウムの全量を溶液に加え、残り(全容積の10容積%)のブロモベンゼンでロートを洗う。この時点での溶液は、沈澱のない暗紫色のはずである。
【0114】
反応混合物を室温で17分間攪拌する。5分後HPLC用サンプルを採取する。17分後HPLC用サンプルを採取する。
【0115】
注:HPLCクロマトグラム中で、TBPAに対応するピーク群が主体となった時点で、反応が終了していると判定する。
【0116】
反応が終了したら、暗色の反応混合物を、7L(ブロモベンゼン全容積に対し217容積%)のD.I.水、2L(ブロモベンゼン全容積に対し62容積%)の氷、および300mL(37%)のHCl(ブロモベンゼン全容積に対し9容積%)の入った20L容器に注加する。
【0117】
オーバーヘッド型攪拌機を用いて1時間±10分間強く攪拌する。
【0118】
有機層を分離槽に移し、700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)のD.I.水で2回、次いで700mL(ブロモベンゼン全容積に対し22容積%)部の飽和NaCl溶液で3回洗浄する。
【0119】
洗浄した有機層を4Lの分離用ロートに置き、それをゆっくりした流れで、オーバーヘッド型攪拌機の下に置かれた30L容器中の適切な量(ブロモベンゼン全容積の5倍量)のメタノールに加え、25±5分間で固体を析出させる。
【0120】
添加が完了したら、メタノール懸濁液を1時間±10分間強く攪拌する。
【0121】
メタノール懸濁液を、ブフナーロート(185mm)で吸引してろ過する。
【0122】
600mL(ブロモベンゼン全容積に対し19容積%)のメタノールで3回、ろ過ケーキ上で固体を洗浄する。
【0123】
固体を30分間吸引乾燥する。
【0124】
ピンク色の粉体をスパチュラで結晶皿に空け、それをオーブンに入れ、一夜間乾燥する。乾燥後計量する。真空オーブン中でさらに2時間再乾燥し再秤量する。必要であれば重量変化が<1%となるまで乾燥を続ける。固体が乾燥した後、最終的な重量を記録し収率を計算する。見込収率は85〜91%である。
【0125】
1,3,5,7−テトラキス(フェニルエチニルフェニル)アダマンタン(TPEPA)の合成
【0126】
【化33】
【0127】
パラジウム触媒によるヘックエチニル化の一般的反応処方に従って、TBPAをフェニルアセチレンと反応し、最終生成物1,3,5,7−テトラキス[(3,4−フェニルエチニル)フェニル)]アダマンタン(TPEPA)(異性体の混合物として)を得た。反応で得られたTBPAを含むTPEPAはシクロヘキサノンに溶解する。TPEPAは、TBPAの代わりに、1,3,5,7−テトラキス(4−ヨードフェニル)アダマンタン(TIPA)からも得ることができる。TIPAから合成された場合、TPEPAはシクロヘキサノンに不溶性である。
【0128】
具体的には、このステップは以下の通りである。
【0129】
装置
1.乾燥した2L三つ口丸底フラスコ。2.水凝縮器。3.オーバーヘッド型攪拌機。4.加熱マントル。5.熱電対。6.熱制御ユニット。7.滴下ロート。8.二口アダプター。9.30%KOH溶液へのN2出入口。上記装置を組み立て、フラスコをN2で10分間パージする。
【0130】
手順
上記第2の合成手順からのTBPAを計量する。
【0131】
以下の各化合物について必要な量を計算する。a)フェニルアセチレン、b)(Ph3P)2PdCl2、c)トリフェニルホスフィン、d)ヨウ化銅(I)、およびe)トリエチルアミン。
【0132】
適切な量のトリエチルアミン(全容積は1−eマイナス300mL)を反応フラスコに加え、オーバーヘッド型攪拌機を作動させ、続いて、以下の化合物を次に列挙した順に添加する。
【0133】
(Ph3P)2PdCl2、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0134】
トリフェニルホスフィン、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0135】
ヨウ化銅(I)、ロートを50mL(全容積の4%)のトリエチルアミン(TEA)で洗い5分間攪拌する。
【0136】
上記の第2のTBPA合成からのTBPA全量を加え、ロートを100mL(全容積の8%)のTEAで洗う。フラスコを80℃へ加熱開始する。
【0137】
50mL(全容積の4%)のTEAで希釈された計量ずみのフェニルアセチレンを、二口アダプターに取り付けた滴下ロート中に置く。
【0138】
反応混合物の温度が80℃になった後、HPLC分析用サンプルを採取する。これが出発材料である。
【0139】
希釈フェニルアセチレンを反応混合物に30±10分間かけて滴下する。
【0140】
注:この反応は発熱反応である。温度をウォーターバスで制御する。
【0141】
加熱を3時間継続する。80℃で3時間加熱後反応を停止する。80℃、3時間でHPLC用サンプルを採取する。
【0142】
反応混合物を50℃に冷却し、次いでブフナーロート(185mm)でろ過する。粗製固体を600mLのTEA(容積%=52%対1−e)で2回洗浄する。
【0143】
ろ過ケーキを4Lビーカに仕込み、内容物を1L(容積%=87%対1−e)のTEAと室温で15分間混合する。
【0144】
ブフナーロート(185mm)でろ過し、粗製固体を300mLTEA(容積%=26%対1−e)で2回洗浄する。
【0145】
固体を一夜間吸引ろ過する。
【0146】
注:粗生成物3gを(TLC、HPLC、DSC、微量金属、UV−VIS)分析用に採取する。
【0147】
発明の背景の節で簡単に述べたように、Reichertの目標は、明確な構造の1,3,5,7−テトラキス[4−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン、すなわち、この化合物の単一のp−異性体である、1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)を調製することであった。明確な構造(分析的方法によって特性評価できる)を有する、この化合物、そしてこの化合物だけがReichertの研究の目標であった。図11および12が、以下に考察する異性体の調製を示し、本実施例の本文中のローマ数字が、図11および12のローマ数字に対応することに留意されたい。
【0148】
Reichertの計画は、以下の系列を実現することであった。
【0149】
1,3,5,7−テトラブロモアダマンタン(I)→1,3,5,7−テトラキス(4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(II)(p−異性体)→1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)(p−異性体)
Reichertは、アダマンタンのコア(以下参照)に結合したp−およびm−ブロモフェニル基の組み合わせを含む、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)−1,3,5,7−テトラキス(ブロモフェニル)−アダマンタンの異性体混合物を得たと考え、彼女の研究の目標は達成されていないと考えた点で、彼女はステップ(I)→(II)に関して失敗した。これを裏付けるように彼女は、「アリール化の際の位置選択の欠如が、アダマンタンについてさらにフリーデルクラフツ反応を試みようとする意欲をなくさせてしまい、容易に形成される1,3,5,7−テトラフェニルアダマンタン(VI)の誘導体化の研究を進めるに至った」と記している。単一のp−異性体−1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]−アダマンタン(VIII)を調製するために、彼女は、「迂回方法」を以下のように設計した。
【0150】
1,3,5,7−テトラフェニルアダマンタン(VI)→1,3,5,7−テトラキス(4’−ヨードフェニル)−アダマンタン(VII)→1,3,5,7−テトラキス[4’−フェニルエチニル(フェニル)]−アダマンタン(VIII)
Reichertはこの系列を実現し、単一のp−異性体(VIII)を単離するのに成功したが、この化合物の溶解度が非常に低い結果となり、そのためこの化合物の13CNMRスペクトルを得ることができなかった。Reichertは、彼女の論文(上記)で「化合物3[(VIII)]はクロロホルムに十分溶解し、1H NMRスペクトルが得られることが分かった。しかし、13CNMRスペクトルを得るための時間は非実用的であることが分かった。生成物を特定するのに固体状態でのNMRを用いた」と述べている。またこの結果を確認するため、Reichertの化合物を複数の標準有機溶媒で試験し、試験したどの有機溶媒にも、本質的に溶解しないことが判明した。
【0151】
したがって、Reichertは、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)を調製したと考えたが、この生成物は明確な構造を有する単一異性体ではなかったので、その方向には進まなかった。そのかわり彼女は、1,3,5,7−テトラキス(4’−ヨードフェニル)アダマンタン(VII)の単一異性体を調製し、それを、1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(VIII)の単一異性体に転換した。これは溶解性がなく(そのために)有用でないものとなった。
【0152】
我々は、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応を何度も繰り返し、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンの反応生成物の分析から、それが(Reichertが示唆したように)1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)ではなく、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)とおよそ等量の1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)との混合物であることが分かった。この結論は、LC−MS研究および元素分析によって確認された。
【0153】
我々は、そうした反応経過の原因を見出すことができた。ブロモベンゼンは、フリーデルクラフツ反応の条件下で本質的に不均化することが知られている(G.A.Olah,W.S.Tolgyesi、R.E.A.Dear.J.Org.Chem.、第27巻、3441〜3449頁(1962年))。
【0154】
2PhBr→PhH+Br2Φ
反応混合物中のベンゼン濃度が増大すると、(I)中の臭素[または(III)中のブロモフェニル]の置換が始まる。ベンゼンの割合が非常に高いので、迅速に平衡に到達し、およそ等量の(III)と(IV)がもたらされる。
【0155】
したがって、Reichertは、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)を(彼女が考えていたようには)得ないで、そのかわり、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)とl−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)とのほぼ1:1の混合物を得たのである。
【0156】
1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)側の方へ平衡を移すために、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応の固体生成物[1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)と1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(IV)の1:1の混合物]を、臭化アルミニウムの存在下で、新たな量のブロモベンゼンによって処理した。高純度のブロモベンゼンが、1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)中のフェニル基を直ちに置換し、それによって、30秒間で溶液中の生成物が約90〜95%の1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)を含む結果となった。室温で約5〜10分間この状態に保ち、その後ベンゼン濃度を徐々に増加させると、1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)濃度の増加をもたらし、数時間で1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)と1−フェニル−3,5,7−トリス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(IV)がほぼ等濃度となり、平衡が再度達成される。
【0157】
したがって、臭化アルミニウムの存在下での、1,3,5,7−テトラブロモアダマンタンとブロモベンゼンとの反応固体生成物の2回目の処理によって、1,3,5,7−テトラキス(3’/4’−ブロモフェニル)−アダマンタン(III)(Reichertはこれを合成したと思っていた)を調製することができる。
【0158】
1,3,5,7−テトラ(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)に、フェニルアセチレンでヘック反応を施すことによって、新規の1,3,5,7−テトラ[(3’/4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(V)(p−およびm−異性体の混合物)が得られ、それはNMRおよびHPLCによって確認された。これは、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、アニソール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メシチレン、酢酸シクロヘキシル等に非常によく溶解する。例えばシクロヘキサノン中へのその溶解度は>20%である。必要とされるこの特性が、スピンコートされる能力を可能にし、それによって、この材料、特に層状化材料および半導体の分野での実用的な使用を確実なものとする。
【0159】
したがって、我々が調製した中間体1,3,5,7−テトラ(3’/4’−ブロモフェニル)アダマンタン(III)は、スピンオン低k誘電材料として使用できる、1,3,5,7−テトラ[(3’/4’−フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(V)(p−およびm−異性体からなる溶解性混合物)を製造する機会をもたらしたのである。
【0160】
(実施例6)
m−およびp−ブロモトラン異性体の合成
【0161】
【化34】
【0162】
添加ロートおよび窒素ガス入口を備えた500mL三つ口丸底フラスコ中に、4−ヨードブロモベンゼン(25.01g、88.37ミリモル)、トリエチルアミン(300mL)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[II]クロライド(0.82g)およびヨウ化銅[I](0.54g)を加えた。次いで、フェニルアセチレン(9.025g、88.37ミリモル)のトリエチルアミン(50mL)溶液を徐々に加え、溶液の温度を攪拌下で35℃以下に保持した。添加終了後、混合物をさらに4時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣を200mLの水に加えた。生成物をジクロロメタン(2×150mL)で抽出した。有機層を一緒にして溶媒をロータリーエバポレータで除去した。残渣を80mLのヘキサンで洗浄しろ過した。TLCおよびHPLCは高純度の生成物(収量、19.5g、86%)であることを示した。短いシリカカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘキサンの1:2混合物)で追加の精製を行った。溶媒を除去後、白色の結晶固体を得た。生成物の純度をアセトン溶液でGC/MSによって評価し、さらにプロトンNMRで評価した。
【0163】
m−およびp−エチニルトランの合成
【0164】
【化35】
【0165】
p−ブロモトランからのp−エチニルトランの合成は、2ステップで行った。第1ステップで、トリメチルシリルアセチレン(TMSA、上記に示す)を用いて、p−ブロモトランをトリメチルシリルエチニル化し、第2ステップで、第1ステップの反応生成物を最終目的生成物に転換した。
【0166】
ステップ1(4−ブロモトランのトリメチルシリルエチニル化):4−ブロモトラン(10.285g、40.0ミリモル)、エチニルトリメチルシラン(5.894g、60.0ミリモル)、0.505g(0.73ミリモル)のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[II]触媒、40mLの無水トリエチルアミン、0.214g(1.12ミリモル)のヨウ化銅[I]、および0.378g(1.44ミリモル)のトリフェニルホスフィンを、オーバーヘッド機械攪拌機、凝縮器を備え、かつ加熱用マントル内に置かれ、N2パージされた5Lの4つ口丸底フラスコに仕込んだ。その混合物を加熱し穏やかに還流(約88℃)させ1.5時間還流を維持した。反応混合物は、粘度の高い黒色ペーストになりこれを冷却した。薄層クロマトグラフィー分析では、出発材料4−ブロモトランが単一生成物に転換したことが示された。固体をろ過し50mLのトリエチルアミンで洗浄し、400mLの水と混合して30分間撹拌した。固体をろ過し40mLメタノールで洗浄した。粗製固体を500mLのメタノールで再結した。静置し、光沢のある銀色の結晶が析出した。これをろ過して単離し2×50mLのメタノールで洗浄した。4.662gが回収された(収率42.5%)。
【0167】
ステップ2(4−(トリメチルシリル)エチニルトランの4−エチニルトランへの転換):窒素入口、オーバーヘッド機械攪拌機を備えた1L三つ口丸底フラスコに、800mLの無水メタノール、12.68g(46.2ミリモル)の4−(トリメチルシリル)エチニルトラン、および1.12gの無水炭酸カリウムを仕込んだ。混合物を50℃に加熱した。HPLC分析(約3時間)で出発材料が検出されなくなるまで撹拌を継続した。反応混合物を冷却した。粗製固体を40mLのジクロロメタン中で30分間撹拌しろ過した。HPLCで、ろ過された懸濁固体は主に不純物であることが分かった。ジクロロメタンのろ液を乾燥し蒸発させ8.75gの固体を得た。オーブン中でさらに乾燥し、最終重量は8.67gで、収率が92.8%であった。
【0168】
1,3,5,7−テトラキス[(3’/4’−ビスフェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(TBPEPA)の合成
【0169】
【化36】
【0170】
パラジウム触媒を用いたヘックエチニル化反応の一般的処方に従って、TBPA(上記)を4−エチニルトランと反応させ、最終生成物1,3,5,7−テトラキス−[{3’/4’−[4”−(フェニルエチニル)]フェニルエチニル]フェニル}アダマンタン(TBPEPA)を得た。
【0171】
このように調製したTBTAをシクロヘキサノン中に溶解し10重量%溶液を得た。当技術分野でよく知られた標準的手順を用いて、そのうちの5mLを2枚のシリコンウエハ上にスピンした。ウエハ上でTBTAを、約300℃の温度に加熱して重合させ、400℃の温度で1時間硬化させた。k値は2.57と測定された。k値をTPEPA(これは長さを短くしたアームを有するTBTAの構造類似体である)のk値と比較した場合、TPEPAのk値は約2.60でより高かったことを特に理解されたい。したがって、かご状化合物から伸びるアームの長さを増大させたことによる考えられるk値の減少が実験的に確認された。
【0172】
(実施例7)
TBPA先駆体(実施例6)から調製したTPEPAのフィルム試験
TPEPA(約10gまたはそれ以上)をシクロヘキサノン(CHN)中に12%溶液として溶解した。得られた溶液をシリコンウエハ上にスピンし、次いで焼成し硬化させてフィルムとした。測定の結果、誘電率はおよそ2.60でTgは420℃以上であった。フィルムの収縮はなく、400℃で20時間フィルムを焼成した後のIRの変化もなかった。
【0173】
典型的または代表的なスピンコーティング条件を以下に示す。
【0174】
【表2】
加圧ガス:ヘリウム
給液圧力:0.08Mpa
給液速度:1.0mL/秒
インラインフィルター:0.1ミクロン、PFFV01D8S(Millipore,Fuluoroline−S)
コーター:DNS SC−W80A−A VFDLP
【0175】
考えられる化合物のための典型的な焼成および硬化条件:
焼成条件:150〜200〜250℃、窒素ガス(<50ppm酸素)下で各1分間。
【0176】
加熱炉硬化条件:典型的には、窒素(15L/分)中で400℃で60分間;5K/分で250℃からランピングアップ(Ramping up);硬化温度範囲350〜450℃。
【0177】
ホットプレート硬化条件:(加熱炉による硬化の代替として)窒素中で350〜450℃、1〜5分間。
【0178】
考えられる化合物の物理特性:
屈折率:
焼成後:1.702
硬化後:1.629
厚み(オングストローム):
焼成後:8449
硬化後:9052
厚み変化(%):
焼成から硬化へ:7.1
以上、低誘電率ポリマーを製造するための組成物および方法の具体的な実施形態および応用について開示してきた。しかし、当分野の技術者には、すでに述べてきたこれらの他に、本明細書に記載された発明概念から逸脱することなく、より多くの改変が可能であることは明らかなはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨を外れない限り、制限されるべきではない。さらに、明細書および特許請求の範囲を解釈する場合のどちらも、すべての用語は、文脈と矛盾しないで可能な最も広い形で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、要素、成分、またはステップを、他を排除しない形で称しており、言及された要素、成分、またはステップは、明白に言及されていない他の要素、成分、またはステップと、共に存在する、または共に使用する、または組み合わせることができることを示していると解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1A】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図1B】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図1C】熱硬化性モノマーの考えられる構造を示す図である。
【図2A】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2B】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2C】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図2D】セキシフェニレンを含む熱硬化性モノマーの構造の例を示す図である。
【図3A】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図3B】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図3C】熱硬化のために考えられる合成スキームを示す図である。
【図4】置換アダマンタンを製造するための合成スキームを示す図である。
【図5】懸垂型かご状構造を有する低分子量ポリマーを製造するための合成スキームを示す図である。
【図6】懸垂型かご状構造を有する低分子量ポリマー製造するための合成スキームを示す図である。
【図7】熱硬化性モノマーを製造するための合成スキームを示す図である。
【図8A】考えられるポリマーの構造を示す図である。
【図8B】考えられるポリマーの構造を示す図である。
【図9A】懸垂型かご状構造を有する末端キャッピング分子を製造するための合成スキームを示す図である。
【図9B】懸垂型かご状構造を有する末端キャッピング分子を製造するための合成スキームを示す図である。
【図10】考えられる低誘電率材料の概略構造を示す図である。
【図11】熱硬化性モノマーの異性体混合物の調製のための合成スキームを示す図である。
【図12】1,3,5,7−テトラキス[4’−(フェニルエチニル)フェニル]アダマンタン(p−異性体)の調製のための合成スキームを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の構造
【化1】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する少なくとも1個のモノマーを含む異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項2】
前記Yがアダマンタンおよびジアマンタンからなる群から選択される請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項3】
前記混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項4】
請求項1に記載の前記異性体熱硬化性モノマー混合物をその中に溶解している溶媒。
【請求項5】
溶媒がシクロヘキサノンである請求項4に記載の溶媒。
【請求項6】
請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物を含むスピンオンポリマー。
【請求項7】
ポリマーが3.0未満の誘電率を有する請求項6に記載のスピンオンポリマー。
【請求項8】
ポリマーが2.7未満の誘電率を有する請求項6に記載のスピンオンポリマー。
【請求項9】
次式の構造
【化2】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマー。
【請求項10】
請求項9に記載の熱硬化性モノマーを含むスピンオンポリマー。
【請求項11】
次式の構造
【化3】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する少なくとも1個のモノマーを含む異性体熱硬化性モノマー混合物を提供すること、および
エチニル基の化学反応を含む熱硬化性モノマー混合物の重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させること
を含む低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項12】
Yがアダマンタンおよびジアマンタンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アリールが、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニルからなる群から選択される部分を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
アリーレンエーテルがフェニルエチニルフェニル−フェニルエーテルを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのうちの少なくとも3個がエチニル基を有し、かつ重合が少なくとも3個のエチニル基の化学反応を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
すべてのアリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルがエチニル基を有し、かつ重合がすべてのエチニル基の化学反応を含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
R1、R2、R3およびR4が全長Lを有し、かつ低誘電率ポリマーが、Lの増大とともにkが減少するような誘電率kを有する請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーがポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
熱硬化性モノマー混合物を重合するステップが、追加の架橋分子が加わることなしで起こる請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物が溶媒中に溶解している請求項11に記載の方法。
【請求項22】
次式の構造
【化4】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーを提供すること、および
少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させること
を含むスピンオン低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項23】
アリールがフェニル基を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6が全長Lを有し、かつ低誘電率ポリマーが、Lの増大とともにkが減少するような誘電率kを有する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
熱硬化性モノマーを重合してポリマーにするステップが、第2の分子が加わることなしに起こる請求項22に記載の方法。
【請求項26】
ポリマーがポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
【化5】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)および
【化6】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテル、および無置換から選択され、該アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)
を含む群の少なくとも1種の熱硬化性モノマーから加工されるスピンオンポリマーを含む誘電層を含む電気デバイス。
【請求項28】
前記熱硬化性モノマーが異性体熱硬化性モノマー混合物を含む請求項27に記載の電気デバイス。
【請求項29】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項28に記載の電気デバイス。
【請求項30】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物が溶媒中に溶解されている請求項27に記載の電気デバイス。
【請求項31】
第1芳香族部分および第1反応基を有する第1主鎖と、
第1および第2主鎖が架橋反応で第1および第2反応基によって架橋されている、第2芳香族部分および第2反応基を有する第2主鎖と、
少なくとも8個の原子を含み、第1および第2主鎖の少なくとも1個と共有結合で結合しているかご状構造
とを含むスピンオン低誘電率材料。
【請求項32】
架橋反応が第2の架橋剤なしで起こる請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項33】
芳香族部分がフェニルを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項34】
芳香族部分がアリーレンエーテルを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項35】
第1主鎖がポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項36】
第1反応基が求電子基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項37】
第1反応基がテトラサイクロンを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項38】
第2反応基が求核基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項39】
第2反応基がフェニルエチニルフェニル基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項40】
第1反応基と第2反応基が同一である請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項41】
反応が付加環化である請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項42】
付加環化がディールス−アルダー反応である請求項41に記載の低誘電率材料。
【請求項43】
かご状構造が少なくとも1個の炭素原子を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項44】
第1反応基または第2反応基のうちの少なくとも1つがエチニル基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項45】
かご状構造がアダマンタンおよびジアマンタンの少なくとも1つを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項46】
かご状構造が置換基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項47】
置換基がハロゲン、アルキル、およびアリールからなる群から選択される請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項48】
かご状構造が、第1および第2主鎖と共有結合で結合している請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項49】
かご状構造が、第1および第2主鎖の末端の少なくとも1つと共有結合で結合している請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項50】
以下の構造
【化7】
(式中、Bは、
【化8】
または
【化9】
(式中、n=1〜3で、x=1〜103)であり、
Rは
【化10】
であり、Arは
【化11】
である)
を有するスピンオン低誘電率ポリマー。
【請求項51】
次式の構造
【化12】
(式中、n=1〜103である)を有する低誘電率ポリマー。
【請求項52】
次式の構造
【化13】
(式中、Yはかご状化合物から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に反応基である)を有する化学反応物を提供するステップと、
化学反応物を熱硬化性モノマー中間体に転換するステップと、
熱硬化性モノマー中間体を新しい試薬溶液および新しい触媒で処理して熱硬化性モノマーを生成させるステップと、
反応基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させるステップ
とを含む低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項53】
試薬がブロモベンゼンを含み、触媒がAlBr3またはAlCl3を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
試薬が芳香族またはフェニル基を含み、触媒がルイス酸である請求項52に記載の方法。
【請求項55】
次式の構造
【化14】
(式中、n=1〜103である)を有する低誘電率ポリマー。
【請求項1】
次式の構造
【化1】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する少なくとも1個のモノマーを含む異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項2】
前記Yがアダマンタンおよびジアマンタンからなる群から選択される請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項3】
前記混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物。
【請求項4】
請求項1に記載の前記異性体熱硬化性モノマー混合物をその中に溶解している溶媒。
【請求項5】
溶媒がシクロヘキサノンである請求項4に記載の溶媒。
【請求項6】
請求項1に記載の異性体熱硬化性モノマー混合物を含むスピンオンポリマー。
【請求項7】
ポリマーが3.0未満の誘電率を有する請求項6に記載のスピンオンポリマー。
【請求項8】
ポリマーが2.7未満の誘電率を有する請求項6に記載のスピンオンポリマー。
【請求項9】
次式の構造
【化2】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマー。
【請求項10】
請求項9に記載の熱硬化性モノマーを含むスピンオンポリマー。
【請求項11】
次式の構造
【化3】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)を有する少なくとも1個のモノマーを含む異性体熱硬化性モノマー混合物を提供すること、および
エチニル基の化学反応を含む熱硬化性モノマー混合物の重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させること
を含む低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項12】
Yがアダマンタンおよびジアマンタンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アリールが、フェニルエチニルフェニル、フェニルエチニルフェニルエチニルフェニル、およびフェニルエチニルフェニルフェニルからなる群から選択される部分を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
アリーレンエーテルがフェニルエチニルフェニル−フェニルエーテルを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのうちの少なくとも3個がエチニル基を有し、かつ重合が少なくとも3個のエチニル基の化学反応を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
すべてのアリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルがエチニル基を有し、かつ重合がすべてのエチニル基の化学反応を含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
R1、R2、R3およびR4が全長Lを有し、かつ低誘電率ポリマーが、Lの増大とともにkが減少するような誘電率kを有する請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーがポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
熱硬化性モノマー混合物を重合するステップが、追加の架橋分子が加わることなしで起こる請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物が溶媒中に溶解している請求項11に記載の方法。
【請求項22】
次式の構造
【化4】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテルおよび無置換から選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)を有する熱硬化性モノマーを提供すること、および
少なくとも1個のエチニル基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させること
を含むスピンオン低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項23】
アリールがフェニル基を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6が全長Lを有し、かつ低誘電率ポリマーが、Lの増大とともにkが減少するような誘電率kを有する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
熱硬化性モノマーを重合してポリマーにするステップが、第2の分子が加わることなしに起こる請求項22に記載の方法。
【請求項26】
ポリマーがポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
【化5】
(式中、Yはかご状化合物およびケイ素原子から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に、アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルから選択され、該アリール、分枝アリール、およびアリーレンエーテルのうちの少なくとも1つがエチニル基を有する)および
【化6】
(式中、Arはアリールであり、R’1、R’2、R’3、R’4、R’5およびR’6は独立に、アリール、分枝アリール、アリーレンエーテル、および無置換から選択され、該アリール、分枝アリールおよびアリーレンエーテルのそれぞれが少なくとも1個のエチニル基を有する)
を含む群の少なくとも1種の熱硬化性モノマーから加工されるスピンオンポリマーを含む誘電層を含む電気デバイス。
【請求項28】
前記熱硬化性モノマーが異性体熱硬化性モノマー混合物を含む請求項27に記載の電気デバイス。
【請求項29】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物がメタおよびパラ異性体を含む請求項28に記載の電気デバイス。
【請求項30】
前記異性体熱硬化性モノマー混合物が溶媒中に溶解されている請求項27に記載の電気デバイス。
【請求項31】
第1芳香族部分および第1反応基を有する第1主鎖と、
第1および第2主鎖が架橋反応で第1および第2反応基によって架橋されている、第2芳香族部分および第2反応基を有する第2主鎖と、
少なくとも8個の原子を含み、第1および第2主鎖の少なくとも1個と共有結合で結合しているかご状構造
とを含むスピンオン低誘電率材料。
【請求項32】
架橋反応が第2の架橋剤なしで起こる請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項33】
芳香族部分がフェニルを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項34】
芳香族部分がアリーレンエーテルを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項35】
第1主鎖がポリ(アリーレンエーテル)を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項36】
第1反応基が求電子基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項37】
第1反応基がテトラサイクロンを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項38】
第2反応基が求核基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項39】
第2反応基がフェニルエチニルフェニル基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項40】
第1反応基と第2反応基が同一である請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項41】
反応が付加環化である請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項42】
付加環化がディールス−アルダー反応である請求項41に記載の低誘電率材料。
【請求項43】
かご状構造が少なくとも1個の炭素原子を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項44】
第1反応基または第2反応基のうちの少なくとも1つがエチニル基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項45】
かご状構造がアダマンタンおよびジアマンタンの少なくとも1つを含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項46】
かご状構造が置換基を含む請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項47】
置換基がハロゲン、アルキル、およびアリールからなる群から選択される請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項48】
かご状構造が、第1および第2主鎖と共有結合で結合している請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項49】
かご状構造が、第1および第2主鎖の末端の少なくとも1つと共有結合で結合している請求項31に記載の低誘電率材料。
【請求項50】
以下の構造
【化7】
(式中、Bは、
【化8】
または
【化9】
(式中、n=1〜3で、x=1〜103)であり、
Rは
【化10】
であり、Arは
【化11】
である)
を有するスピンオン低誘電率ポリマー。
【請求項51】
次式の構造
【化12】
(式中、n=1〜103である)を有する低誘電率ポリマー。
【請求項52】
次式の構造
【化13】
(式中、Yはかご状化合物から選択され、R1、R2、R3およびR4は独立に反応基である)を有する化学反応物を提供するステップと、
化学反応物を熱硬化性モノマー中間体に転換するステップと、
熱硬化性モノマー中間体を新しい試薬溶液および新しい触媒で処理して熱硬化性モノマーを生成させるステップと、
反応基の化学反応を含む熱硬化性モノマーの重合を行い、それによって低誘電率ポリマーを形成させるステップ
とを含む低誘電率ポリマーの製造方法。
【請求項53】
試薬がブロモベンゼンを含み、触媒がAlBr3またはAlCl3を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
試薬が芳香族またはフェニル基を含み、触媒がルイス酸である請求項52に記載の方法。
【請求項55】
次式の構造
【化14】
(式中、n=1〜103である)を有する低誘電率ポリマー。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−332373(P2007−332373A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153763(P2007−153763)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【分割の表示】特願2002−579926(P2002−579926)の分割
【原出願日】平成13年10月18日(2001.10.18)
【出願人】(501228624)ハネウエル・インターナシヨナル・インコーポレーテツド (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【分割の表示】特願2002−579926(P2002−579926)の分割
【原出願日】平成13年10月18日(2001.10.18)
【出願人】(501228624)ハネウエル・インターナシヨナル・インコーポレーテツド (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]