説明

体積ホログラム積層体、体積ホログラム転写用シート、体積ホログラム貼着体および体積ホログラム積層体の製造方法

【課題】本発明は、単一波長のレーザー光でコンタクトコピーを試みても、体積ホログラムの模倣を困難とする体積ホログラム積層体および簡易な工程で製造できるその製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明の体積ホログラム積層体は、基材上に部分的に樹脂層が設けられると共に、該樹脂層上に隣接し、かつ前記基材上に体積ホログラム層が積層された体積ホログラム積層体であって、前記樹脂層には体積ホログラムが形成されると共に、体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分と樹脂層が設けられていない部分とで再生中心波長が相違するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止(再利用防止)性、デザイン性に優れる体積ホログラム積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体積ホログラムは、情報を厚み方向に記録でき、また、立体的な画像の記録・再生が可能な手段であり、また、光の干渉色で表現されるため、他の画像形成手段では得られにくい外観を有している。体積ホログラムの製造方法自体は知られているが、製造に際しては光学機器を使用した精密な作業を要するため、体積ホログラムの模倣は困難であり、このような体積ホログラムの持つ上記の特性を利用し、身分証明書、銀行カード等の模倣防止に利用されている。
【0003】
本発明者等はこの種の模倣防止技術に関して、例えば特許文献1、特許文献2に示すように体積ホログラム層を貼着した身分証明書から体積ホログラム層を剥離不能とし、剥離しようとすれば体積ホログラムが破壊されるようにして偽造防止を図ることを種々検討をしてきたが、体積ホログラムを記録した体積ホログラム積層体を原版として、単一波長のレーザー光でコンタクトコピーを試みた場合に体積ホログラムを模倣される可能性があり、体積ホログラムの模倣を困難とする体積ホログラム積層体の開発が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−284586号公報
【特許文献2】特開2002−358018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、単一波長のレーザー光でコンタクトコピーを試みても、体積ホログラムの模倣を困難とする体積ホログラム積層体および簡易な工程で製造できるその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の体積ホログラム積層体は、基材上に部分的に樹脂層が設けられると共に、該樹脂層上に隣接し、かつ前記基材上に体積ホログラム層が積層された体積ホログラム積層体であって、前記樹脂層には体積ホログラムが形成されると共に、体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分と樹脂層が設けられていない部分とで再生中心波長が相違することを特徴とする。
【0007】
上記樹脂層と、上記基材とが隣接していることを特徴とする。また、上記樹脂層と、前記基材との間にプライマー層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
体積ホログラム層がラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料由来の体積ホログラム層であると共に、樹脂層には隣接した体積ホログラム記録材料からの重合性モノマーの移行に基づく体積ホログラムが形成されることを特徴とする。
【0009】
樹脂層がポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる樹脂からなると共に体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長が樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長に比して長波長側にあることを特徴とする。
【0010】
樹脂層がポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選ばれる樹脂からなると共に体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長が樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長に比して短波長側にあることを特徴とする。
【0011】
体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長と樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長との差が少なくとも10nm以上あることを特徴とする。
【0012】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、基材上に樹脂層を部分的に塗布形成した後、該樹脂層上に隣接し、かつ前記基材上にラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料層を塗布形成した後、得られる積層体に、
(1) エージング処理を施して前記体積ホログラム記録材料層における重合性モノマー
を樹脂層に移行させる工程、
(2) 基材側からのレーザー露光によるホログラム露光工程、
(3) 加熱処理及び紫外線照射処理を施して前記重合性モノマーを樹脂層と体積ホログラム記録材料層との間で移動させる共にホログラムを固定化する工程
を順次施し、前記樹脂層には、隣接した体積ホログラム記録材料層から移行した重合性モノマーに基づく体積ホログラムを形成すると共に、前記積層体における樹脂層が設けられた部分と樹脂層が設けられていない部分とで再生中心波長を相違させることを特徴とする。
【0013】
本発明の第1の体積ホログラム転写用シートは、本発明の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に接着剤層を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の体積ホログラム転写用シートは、本発明の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に剥離可能に第2基材が設けられると共に、前記体積ホログラム積層体における基材を剥離して表出する樹脂層および体積ホログラム層上に接着剤層を設けたことを特徴とする。あるいは、本発明の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に剥離可能に第2基材が設けられると共に、前記体積ホログラム積層体における基材を剥離した面上に接着剤層を設けたことを特徴とする。
【0015】
第1また第2の体積ホログラム転写用シートがその接着剤層をヒートシール層とする体積ホログラム転写箔であるか、または、その接着剤層を粘着剤層とする体積ホログラム転写ラベルであることを特徴とする。
【0016】
本発明の体積ホログラム貼着体は、上記の第1の体積ホログラム転写用シートにおける接着剤層側から被着体に貼着されると共に、基材が剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされることを特徴とする。
【0017】
本発明の体積ホログラム貼着体は、上記の第2の体積ホログラム転写用シートにおける接着剤層側から被着体に貼着されると共に、第2基材が剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の体積ホログラム積層体、また、体積ホログラム貼着体においては、部分的に設けられた樹脂層に層方向で隣接する体積ホログラム層の干渉縞周期が、樹脂層に層方向で隣接しない部分における体積ホログラム層の干渉縞周期に比較して、拡大、または縮小した干渉縞周期の体積ホログラムが形成されるので、体積ホログラムにおける樹脂層が設けられた部位と設けられていない部位とで再生中心波長を相違するものとでき、デザイン性において従来にないものとできる。
【0019】
また、本発明の体積ホログラム積層体を原版とし、これに体積ホログラム記録材料層を密着させて、樹脂層が設けられていない部分における体積ホログラムのコピーを目的として単一波長のレーザーでコンタクトコピーを試みても、樹脂層が設けられ再生中心波長を相違する部分では暗くなり、うまくコピーできないので、偽造防止に優れる体積ホログラム積層体とできる。
【0020】
また、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、デザイン性、偽造防止に優れる体積ホログラム積層体を簡易な工程で製造でき、また、本発明の体積ホログラム転写用シートを使用すると、体積ホログラム貼着体を転写により容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の体積ホログラム積層体の断面模式図であり、基材1上に部分的に設けられた樹脂層2、さらに前記基材1上および樹脂層2上に隣接してラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料由来の体積ホログラム層3が積層されたものである(図1(a))。
ここで、上記図1(a)においては、上記基材1と樹脂層2とが隣接している態様について例示したが、本発明の体積ホログラム積層体はこのような対応に限定されるものではなく、例えば基材1と樹脂層2との間にプライマー層8が形成された態様であってもよい(図1(b))。
【0022】
基材1は、樹脂層2、体積ホログラム層3を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフイルム、ポリフッ化エチレン系フイルム、ポリフッ化ビニリデンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムが例示される。基材の厚みは、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0023】
また、後述する体積ホログラム貼着体において、基材を保護フィルムとして機能させてもよいし、また、剥離除去してもよい。保護フィルムとして機能させる場合には、基材と樹脂層や体積ホログラム記録材料層との密着性が必要であり、基材の表面を例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカーまたはプライマー処理等の表面処理を施すとよい。アンカー剤またはプライマー剤としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体系等が例示される。但し、アンカー剤またはプライマー剤は後述する樹脂層とは異なるものを使用することが好ましい。もし同じものを使用した場合、体積ホログラムにおける樹脂層が設けられた部位と設けられていない部位とで再生中心波長を相違することができなくなるからである。また、剥離除去される場合には、基材は離型処理されるとよく、保護層を介するか、介さないで樹脂層と体積ホログラム層が設けられるとよい。
【0024】
次に、樹脂層2は、透明性を有する樹脂層であり、基材上の一部、例えばロゴ等のパターン状に樹脂溶液を塗布形成して得られる。樹脂層を形成する樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等のビニル樹脂、ポリエステル樹脂またポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が例示される。
【0025】
樹脂層を形成する樹脂がポリメチルメタクリレート樹脂やポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等であると、その詳細な理由は不明であるが、体積ホログラム積層体における樹脂層2が積層された部分(基材1/樹脂層2/体積ホログラム層3′)における再生中心波長を、樹脂層が積層されてない部分(基材/体積ホログラム層3″)における再生中心波長に比して長波長側に相違させることが見いだされた。相違の程度は樹脂の重量平均分子量の大小により影響され、重量平均分子量が5,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜300,000であると、より長波長側で再生中心波長を相違させることができる。なお、樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0026】
樹脂層が設けられた部分の再生中心波長と、樹脂層が設けられていない部分における再生中心波長との差は、少なくとも10nm以上あるとよく、好ましくは15nm以上とするとよい。なお、その差は最大でも100nmである。
【0027】
また、樹脂層を形成する樹脂がポリビニルブチラール樹脂やポリビニルアセタール樹脂等であると、その詳細な理由は不明であるが、上記と相違して樹脂層が設けられた部分における再生中心波長を、樹脂層が積層されてない部分における再生中心波長に比して短波長側に相違させることが見いだされた。相違の程度は上記と同様に樹脂の重量平均分子量の大小により影響され、重量平均分子量が5,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜300,000であると、より短波長側に再生中心波長を相違させることができる。
【0028】
樹脂層が設けられた部分の再生中心波長と、樹脂層が設けられていない部分における再生中心波長との差は、少なくとも10nm以上あるとよく、好ましくは15nm以上とするとよい。なお、その差は、最大でも100nmである。
【0029】
樹脂層が設けられた部分と設けられていない部分における各再生中心波長は、分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)を使用して透過率を測定して分光透過率曲線を得、その分光透過率曲線から、回折効率、半値幅と共に以下の方法によって算出されるもので、図6を使用して説明する。
【0030】
(回折効率)
分光透過率のピーク透過率A及びベース透過率Bを求め、|B−A|/B(%)とする。
(半値幅)
ピーク透過率Aにベース透過率Aとピーク透過率Bとの差の半分を加えた透過率(A+|B−A|/2)における分光透過率曲線の左端(C)及び右端(D)を求め、半値幅=|D−C|(nm)とする。
(再生中心波長)
半値幅の算出時に求めたCに半値幅の半分を加えた波長(=C+|D−C|/2)を再生中心波長とする。
【0031】
樹脂層2には、上記した再生中心波長の相違に影響を与えない範囲で、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等を添加してよい。酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系・シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが、例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、滑石、蝋石、カオリン等をそれぞれ挙げることができる。
【0032】
樹脂層2は、上記樹脂等の成分をメチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等に溶解した樹脂溶液を、基材上に0.1μm〜10μm、好ましくは0.5μm〜5μm、特に好ましくは0.5μm〜3μmの乾燥膜厚となるように、グラビア印刷、スクリーン印刷等により基材上に部分的に塗布形成される。
なお、樹脂層2は、上記基材1と隣接するように形成されてもよく、あるいは、例えばプライマー層のような基材1上に隣接するように形成された他の層に隣接するように形成されてもよい。
【0033】
次に、図1に示すように、基材1上に形成された樹脂層2上には、中間層を介さないで、直接、体積ホログラム記録材料層が塗布形成される。
【0034】
本発明に用いられる体積ホログラム記録材料層は、光重合性材料を含有し、コントラストの高いホログラム像を記録することが可能になるという観点から、特にラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーとを併用することが好ましく、光ラジカル重合開始剤系、光カチオン重合開始剤系と共に用いられる。
【0035】
以下、本発明に用いられるラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤系について順に説明する。
【0036】
本発明に用いられるラジカル重合性モノマーは、体積ホログラム層を形成する際に、例えばレーザー照射等によって、光ラジカル重合開始剤系から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であり、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。
【0037】
ラジカル重合性モノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、N−アクリロイルモルホリン、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、イソボニルアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ベンジルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、2,3−ジブロムプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジブロムネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ビス〔2−アクリロキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ〕ベンゼン、N−ビニルカルバゾール、2−(9−ガルバゾリル)エチルアクリレート、ジフェン酸(2−メタクリロキシエチル)モノエステル、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2、3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエスチル、4,5−フェナントレンジカルボン酸(2−アクリロキシ)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン、ジエチレンジチオグリコールアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、2−(トリシクロ(5,2,102.6 )ジブロモデシルチオ)エチルアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホンおよび上記における「アクリレート体」を「メタクリレート体」に、また、「アクリロキシ」基を「メタクリロキシ」基に変えた化合物、さらに特開昭61−72748号公報に開示されている硫黄含有アクリル化合物を使用することもでき、例えば、4,4′−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4′−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)−3,3′,5,5′−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトンおよび上記における「アクリロイル」基を「メタクリロイル」基に変えた化合物や、特開平2−247205号公報や特開平2−261808号公報に記載されているような分子内に少なくともS原子を2個以上含む、エチレン性不飽和二重結合含有化合物が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して用いることができる。
【0038】
光ラジカル重合開始剤系としては、例えば米国特許第4、766、055号、同第4,868,092号、同第4,965,171号、特開昭54−151024号公報、同58−15,503号公報、同58−29,803号公報、同59−189,340号公報、同60−76735号公報、特開平1−28715号公報、特願平3−5569号および「プロシーディングス・オブ・コンフェレンス・オン・ラジエーション・キュアリング・エイジア」(PROCEEDINGS OF CONFERENCE ON RADIATION CURING ASIA)」(P.461〜477、1988年)等に記載されている開始剤系等を挙げることができる。
【0039】
次に、本発明に用いられるカチオン重合性モノマーは、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤系の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。
【0040】
ここで、体積ホログラム層は、例えばレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光等によってラジカル重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、ホログラム像を形成するものである。したがって、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物は、通常、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられるとよい。本発明に用いられるラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の大小関係は特に限定されるものではないが、なかでも材料選択性の面からラジカル重合性化合物の平均屈折率が上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きいことが好ましく、具体的には、平均屈折率の差が0.02以上であることが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物と上記カチオン重合性化合物との平均屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細なホログラム像を形成することが困難となる場合がある。なお、ここでいう平均屈折率とは、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。また、本発明における平均屈折率は、アッペ屈折計により測定された値を意味するものとする。
【0041】
また、光重合性材料としてラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とが用いられる場合、本工程における体積ホログラムの記録は、通常、干渉露光した際に干渉縞の光強度の大きい部分にてラジカル重合性化合物を重合させた後、全面にエネルギーを照射することによりカチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させることによって行われる。このとき、ホログラム像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常、異なる波長のものが用いられることから、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、ホログラム像を形成する際に用いられる光源の波長で重合しない化合物であることが好ましい。また、上記ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、常温で液状であることが好ましい。
【0042】
このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ケムテク・オクト・(Chemtec.0ct.)J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁(1980)、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌(第26巻、No.5、第179−187頁(1990))等に記載されているような化合物を挙げることができる。
【0043】
より具体的には、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーデル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポ
キシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1、4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、および、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

【0046】
なお、上記式においてnは1〜5の整数を表す。また、mは3もしくは4であり、Rはエチル基もしくはヒドロキシメチル基を表す。
【0047】
本発明においては、これらのいずれのカチオン重合性化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも1分子あたり3官能以上の重合性官能基を有するカチオン重合性化合物を使用することが好ましい。これにより、体積ホログラム層中の架橋密度を高くすることができることから、体積ホログラム層の箔切れ性を良好なものとすることができるからである。なお、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は1種類のみであってもよく、あるいは、2種以上であってもよい。
【0048】
次に、光カチオン重合開始剤系は、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記カチオン重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては上記ラジカル重合性化合物を重合させるレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光する低感光性のものであることが好ましい。これにより、上記ラジカル重合性化合物が重合する際、カチオン重合性化合物を、ほとんど反応させないで残存させることができるため、体積ホログラム層において大きな屈折率変調を得ることができる
からである。
【0049】
ここで、レーザー光やコヒーレンス性の優れた光に対して、低感光性である光カチオン重合開始剤とは、以下の条件で熱分析を行った際、光カチオン重合開始剤系によって開始された光重合に起因するDSC値の最大値が測定試料1mgあたり500mW以下(0mWを含む)であるものを指すものとする。
【0050】
(測定条件)
測定装置:セイコー電子工業(株〉製SSC5200H熱分析システムにおいて示差走査熱計量DSC220と光源装置UV−1を使用。測定試料:対象となる光カチオン重合開始剤系をユニオンカーバイド社製UVR−6110(カチオン重合性化合物)に対して3質量%溶解させることにより調製(有機溶剤を加えて溶解させた後に有機溶剤を蒸発させてもよい。)。照射光:干渉フィルター(半値幅約10nm)を使用してレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光と同程度に調節した光を200mJ/cm2照射。
【0051】
このような光カチオン重合開始剤系としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UV Curing:Science and Technology)」、第23〜76頁、エス・ピーター・パーパス(S.Peter Pappas)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A Technology Marketing Publication)および「コメンツ・インオーガニック・ケミストリ(Coments Inorg.Chem.)」、ビー・クリンゲルト、エム・リーディーカーおよびエイ・ロロフ(B.Klingert,M.Riediker and A.Roloff)、第7巻、第3号、第109〜138頁(1988年)などに記載されているもの等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0052】
また、上記の中でもジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセンスルホネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフエニルスルホニウムなどのスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。
【0053】
なお、本発明においては、上記光ラジカル重合開始剤系あるいは光カチオン重合開始剤系として、上記光ラジカル重合開始剤系としての性質と光カチオン重合開始剤系としての性質とを有する開始剤系を用いてもよい。このような開始剤系としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフツ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−プチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル・−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3、5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等を挙げることができる。
【0054】
本発明に用いられる体積ホログラム層には、上述した光重合性材料以外に、例えば、増感色素、微粒子、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤、および、高分子結合剤等を挙げることができる。なかでも本発明においては、特にバインダー樹脂、微粒子、および、増感色素が用いられることが好ましい。
【0055】
バインダー樹脂が用いられることによって、体積ホログラム層を均一にすることができ、また上記ラジカル重合性化合物の重合により形成されたホログラム像を保つことが容易になるからである。バインダー樹脂としては、例えば、ポリメタアクリル酸エステルまたはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、ポリビニルアルコールまたはその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドンまたはその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体またはその半エステル等を挙げることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、および酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。さらに、本発明においてはこれらのバインダー樹脂の1種または2種以上の混合物を用いることもできる。
【0056】
また、本発明においては上記バインダー樹脂としてオリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラツク、o−クレゾールノボラツク、p−アルキルフェノールノボラツク等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0057】
さらに、本発明においては上記バインダー樹脂として、ゾルーゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。このような樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0058】
Rm M(OR′)n ・・・ (1)
(ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、A1、Se等の金属、Rは炭素数1〜100)ビニル基または(メタ)アクリロイル基、R′は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である。)
金属MがSiである場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0060】
本発明の体積ホログラム積層体において、体積型ホログラムは、干渉縞が屈折率変調または透過率変調として記録され、形成されるものであるので、バインダー樹脂と上記光重合性材料との屈折率差が大きいことが好ましい。本発明においては、バインダー樹脂と光重合性材料との屈折率差を大きくするために、下記一般式(2)で表される有機金属化合物を添加することができる。
【0061】
M′(OR″)k ・・・ (2)
(ここで、M′はTi、Zr、Zn、In、Sn、A1、Se等の金属、R″は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは、金属Mの価数である)。
【0062】
上記(2)式で表される化合物を添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダー樹脂と網目構造を形成するため、バインダ樹脂の屈折率を高くするたけでなく、層の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。したがって、光重合性材料との屈折率差を大きくするには金属M′は高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。
【0063】
また、微粒子を用いることによって、体積ホログラム層に所望の箔切れ性を容易に付与することができる。微粒子としては、例えば樹脂骨格として低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエポキシまたはポリウレタン、また、これらのコポリマーを含む有機微粒子、シリカ、マイカ、タルク、クレー、グラファイト、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、フェライト、チャイナクレー、カオリン、二酸化チタン、ガラスフレーク、アスベスト、ろう石粉、けい石粉、硫酸バリウム、シェルベン、シャモット、チタニア等の無機粒子等を用いることができ、これらの微粒子を1種、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
上記光重合性材料は紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を用いることによって可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて体積型ホログラムを記録することが可能となる。増感色素としては、干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであり、特に限定されるものではない。本発明に用いられる増感色素の例としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンチン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0065】
シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨ−ジド、3−エチル−5−〔(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
【0066】
可視光活性な増感色素は、光学素子のような高透明性が要求される場合には、干渉縞記録後の後工程での加熱や紫外線照射により分解されるなどして無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。
【0067】
このような体積ホログラム記録材料は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じてメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて例えば高速撹拌機を使用して混合することにより調製され、塗工液とした後、アプリケーターを使用して、1μm〜50μm、好ましくは3μm〜40μm、特に好ましくは5μm〜30μmの乾燥膜厚で、基材および樹脂層上に塗布されるとよい。
【0068】
体積ホログラム転写箔とされる場合には、体積ホログラム層はガラス転移点(Tg)が100℃以上(最大でも200℃程度)のものとするとよく、熱転写法等により転写する際に、体積ホログラム層に熱が加えられた場合であっても、体積ホログラム記録を安定なものとすることができる。なお、ガラス転移点(Tg)はJISK 7121に基づき測定されるものである。
【0069】
次に、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について説明する。
本発明の体積ホログラム積層体は、まず、基材上に部分的に樹脂層を塗布形成した後、基材上および樹脂層上にそれぞれ隣接してラジカル重合性モノマー及びカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料層を塗布形成して積層体とする。
【0070】
(1) 得られた積層体にエージング処理を施す。エージング処理は、積層体を室温下で放置するか、40℃〜80℃で1〜48時間、加熱することにより行われる。この処理により、基材/樹脂層/体積ホログラム記録材料層の層構成において、体積ホログラム記録材料層中のモノマー等が樹脂層中に移行する。実施例1で後述するように、エージング処理後の樹脂層をIR分析すると、体積ホログラム記録材料層中におけるラジカル重合性モノマーやカチオン重合性モノマーが樹脂層中に移行していることが確認される。
【0071】
(2) 次いで、積層体をエージング処理した後、その体積ホログラム記録材料層側に、ホログラム原版を密着させた後、積層体における基材側からレーザー照射によりホログラム露光し、ホログラム記録された体積ホログラム層とする。
【0072】
体積型ホログラムは、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として光重合性材料を固定化することによってホログラム像を記録するものである。このため、本工程において体積型ホログラムを記録する方法としては、例えば、体積ホログラム形成用基板の基材側から参照光を入射し、体積ホログラム層側から物体光を入射し、上記体積ホログラム層内においてこれらの光を干渉させる方法や、体積ホログラム層上にホログラム原版を配置し、基材側から光を入射することによって、当該入射光と上記ホログラム原版によって反射された反射光とを上記体積ホログラム層内において干渉させる方法等を挙げることができる。中でも上述したホログラム原版を用いる方法が好ましく、これにより、簡便に体積型ホログラムを記録することができる。
【0073】
(3) ホログラム露光後、ホログラム原版を剥離し、剥離面にPETフイルムを積層する。そして、積層体を50℃〜150℃、5分〜120分間加熱した後、紫外線を500mJ/cm〜5,000mJ/cmで照射する。加熱処理工程は、ホログラム露光後に残留する重合性モノマーの一部を再度拡散させ、また、他のモノマーは加熱処理−紫外線照射処理により固定化され、安定したホログラムとされるものと考えられる。
【0074】
本発明においては、樹脂層をポリメチルメタクリレート樹脂やポリ酢酸ビニル樹脂を使用して形成すると、体積ホログラム積層体における樹脂層を設けない部分に比して、基材/樹脂層/体積ホログラム層の積層部分において、再生中心波長が長波長側に相違するものとなることが見いだされた。その詳細な理由は不明であるが、後述する実施例1の電子顕微鏡断面写真から、体積ホログラム層における干渉縞周期(干渉縞間隔)が樹脂層における干渉縞周期(干渉縞間隔)より拡大することが看取されることから、上記の(3)の加熱工程により樹脂層から体積ホログラム層へとモノマーの再移動が生じ、これにより基材/樹脂層/体積ホログラム層の積層部分における再生中心波長が、樹脂層を設けていない基材/体積ホログラム層の積層部分における再生中心波長に比して長波長側に相違したものとなるのではないかと考えられる。
【0075】
また、樹脂層をポリビニルブチラール樹脂やポリビニルアセタール樹脂を使用して形成すると、体積ホログラム積層体における基材/樹脂層/体積ホログラム層の積層部分においては、再生中心波長が樹脂層を設けない部分に比して短波長側に相違するものとなることが見いだされた。その詳細な理由は不明であるが、ポリビニルブチラール樹脂層やポリビニルアセタール樹脂では、上記の(3)の加熱工程により、PMMA樹脂層とは相違したモノマーの移動が生じるものと考えられ、基材/樹脂層/体積ホログラム層の積層部分における再生中心波長が、樹脂層を設けていない基材/体積ホログラム層の積層部分における再生中心波長に比して短波長に相違するものになると考えられる。
【0076】
このように、本発明の体積ホログラム積層体は、再生中心波長を相違した部分を部分的に有する体積ホログラム積層体とできる。また、得られた体積ホログラム積層体を原版とし、これに体積ホログラム記録材料層を密着させて、単一波長のレーザー光でコンタクトコピーを試みても、再生中心波長が相違する部分は暗くなり、うまくコピーできないものとなり、偽造防止に優れる体積ホログラム積層体とできる。
【0077】
次に、本発明の体積ホログラム転写用シートについて、図2、図4を用いて説明する。図2は、第1の体積ホログラム転写用シートで、図1の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層3上に接着剤層4を設けたものである。接着剤層4は粘着剤層、またはヒートシール層であり、特に図2においては粘着剤層とする場合に剥離性シート5をさらに積層した場合を図示するものであり、体積ホログラム転写ラベルとする場合である。ヒートシール層とする場合は、剥離性シート5は省略することができ、体積ホログラム転写箔とするものである。
【0078】
図4は、第2の体積ホログラム転写用シートで、図1の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に剥離可能に第2基材7が設けられると共に、図1の体積ホログラム積層体における基材1を剥離して表出する樹脂層2および体積ホログラム層3上に接着剤層4を設けたものである。接着剤層4は粘着剤層、またはヒートシール層であり、特に図4においては粘着剤層とする場合に剥離性シート5をさらに積層した場合を図示するものであり、体積ホログラム転写ラベルとする場合である。ヒートシール層とする場合は、剥離性シート5は省略することができ、体積ホログラム転写箔とするものである。
【0079】
体積ホログラム転写ラベルにおける粘着剤としては、アクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、クロマンインデン樹脂、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂等が例示され、また、アルファ−シアノアクリレート系、シリコーン系、マレイミド系、スチロール系、ポリオレフィン系、レゾルシノール系、ポリビニルエーテル系粘着剤が使用される。粘着剤は溶媒として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等を使用して塗布液とし、剥離性シート上に乾燥膜厚0.5μm〜20μmで塗布して粘着剤層を形成した後、体積ホログラム層3上に剥離性シートと共にラミネートされるとよい。剥離性シートとしては、通常使用される剥離紙の他に、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、もしくはポリプロピレン樹脂フィルム等をフッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等により離型処理して得たフィルムを使用してもよい。
【0080】
また、体積ホログラム転写箔におけるヒートシール剤としては、熱可塑性樹脂でヒートシール性を有するものであり、有機溶剤溶液としてヒートシール層を形成しうる樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、SBS、SIS、SEBS、SEPS等の熱可塑性エラストマー、又は反応ホットメルト系樹脂等が例示される。有機溶剤としてはトルエン、メチルエチルケトン等が例示され、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等により乾燥膜厚2〜10μmで体積ホログラム層3上に塗布形成されるとよい。
【0081】
本発明の体積ホログラム貼着体について、図3、図5を用いて説明する。図3に示すように、本発明の体積ホログラム貼着体は、上述した図2に示す体積ホログラム転写用シートにおける剥離性シート5を剥離した後、接着剤層4側から被着体6に貼着され、また、基材1は剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされる。
【0082】
また、図5に示す本発明の他の体積ホログラム貼着体は、上述した図4に示す体積ホログラム転写用シートにおける剥離性シート5を剥離した後、接着剤層4側から被着体6に貼着され、また、第2基材7は剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされる。
【0083】
本発明の体積ホログラム貼着体における被着体6としては、例えばガラス、プラスチック等の透明のものもしくは不透明なものが挙げられる。プラスチックとしては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示されるが、特に、ポリエステル樹脂からなるカード、シート、フィルムとする場合に適している。体積ホログラム転写用シートは、身分証明書、受験票の如きシート、またIDカードのようなカード、また、パスポートのような小冊子に貼ってもよく、また、防火、消毒もしくは防火等の保安、衛生上の等級を示す証書として、あるいはそのための処置を施した事の証書に使用するのに適している。このほか、従来、紙製の証書を貼って封印した用途であって、対象物品が透明で、かつ、ほぼ平板状か、または2次曲面であるものには、原則的に証書に置き換えての使用が可能である。さらに、体積ホログラム転写用シートを貼る対象としては、広く、紙、合成紙、合成樹脂、金属からなるフイルムやシート、あるいはガラス板等で出来た部分を持つ物品に用いることができる。また、体積ホログラムの持つ独特で立体が表現できる特性等を利用して、本や中綴じの週刊誌等の雑誌や、自動車等のガラス窓、プレミアム商品等に貼付するラベルとしても利用できる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0085】
(実施例1)
(1) 体積ホログラム積層体の作製
基材として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラー50T60;東レ(株)製)を用い、上記基材上に重量平均分子量が100,000であるポリメチルメタクリレートのメチルエチルケトン溶媒に溶解された樹脂層形成用途工液を用い、グラビア印刷法によりパターン状に樹脂層を塗布形成し、乾燥膜厚が2μmのパターニングされた樹脂層を形成した。
【0086】
次に、上記樹脂層上に、以下の組成を有する体積ホログラム層形成用塗工液をアプリケータを使用して、乾燥膜厚10μmとなるように直接塗工して体積ホログラム層を形成した。
(体積ホログラム層形成用塗工液)
・ポリ酢酸ビニル(デンカサクノールSN−08H:重合度800;電気化学工業(株)製)
・・・ 35重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX−212;ナガセケムテックス(株)製)
・・・ 25重量部
・ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(BPEFA;大阪ガスケミカル(株)製)
・・・ 35重量部
・ジアリールヨードニウム塩(PI2074;ローディア製)
・・・ 4重量部
・2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン
・・・ 1重童部
・メチルイソブチルケトン 100重量部
・1−ブタノール 100重量部
【0087】
(2) エージング工程
得られた体積ホログラム積層体を室温で24時間放置してエージング処理した。エージング処理後、樹脂層をIR分析装置(日本分光(株)製FT/IR−610)により分析したところ、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートが含まれていることが確認された。
【0088】
(3) ホログラム撮影工程
体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上にホログラム原版をラミネートし、基材側から532nmレーザー光を80mJ/cm入射して、体積型ホログラムを記録した。記録後、ホログラム原版を剥離し、厚み50μmのPETフィルムを体積ホログラム層上にラミネートした。
【0089】
(4) 加熱処理−紫外線照射処理工程
ホログラム記録後の体積ホログラム積層体を、100℃で10分間加熱処理した後、紫外線(3,000mJ/cm)を全面に照射し、ホログラムを固定し、体積ホログラム積層体を得た。
【0090】
図7は、得られた体積ホログラム積層体において、樹脂層が積層されている箇所における縦断面の走査型電子顕微鏡写真(15,000倍)の70%縮小複写物である。図7における1は基材、2は樹脂層、3は体積ホログラム層であり、樹脂層2には間隔116nmで干渉縞が記録され、また、体積ホログラム層3には間隔186nmで干渉縞が記録されていることがわかる。
【0091】
樹脂層がパターニングされた部分とパターニングされていない部分とについて、分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)にて透過率を測定した結果を、図8に分光透過率曲線として示す。
【0092】
樹脂層がパターニングされた部分の分光透過率曲線(A)の再生中心波長は、544nm、パターニングされていない部分の分光透過率曲線(B)の再生中心波長は527nmであった。
【0093】
(偽造防止性について)
上記で記載した体積ホログラム層形成用塗工液を、膜厚50μmのPETフイルム上に乾燥膜厚10μmとなるようにアプリケータにて塗工して積層体を得、その体積ホログラム記録材料層側から、上記で体積ホログラムを記録した体積ホログラム積層体を原版としてそのPETフイルム上に貼着した後、532nmのレーザー光を使用して体積ホログラムを撮影したところ、樹脂層がパターニングされた部分が暗くなっており、上手くホログラムが撮影できなかった。
【0094】
(実施例2)
樹脂層用塗工液として、ポリビニルアセタール樹脂(エスレックBH−6:重量平均分子量約92,000、積水化学社製)のメチルエチルケトン溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を得た。
【0095】
樹脂層がパターニングされた部分とパターニングされていない部分とについて、分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)にて透過率を測定し、図9に分光透過率曲線を示す。
【0096】
樹脂層がパターニングされた部分の分光透過率曲線(C)の再生中心波長は、490nm、パターニングされていない部分の分光透過率曲線(D)の再生中心波長は、527nmであった。
【0097】
また、偽造防止性について、実施例1と同様に、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を原版として体積ホログラムを撮影したところ、樹脂層がパターニングされた部分が暗くなっており、上手くホログラムが撮影できなかった。
【0098】
(実施例3)
樹脂層用塗工液として、ポリ酢酸ビニル樹脂(重量平均分子量約500,000;ALDRICH製)のメチルエチルケトン溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を得た。
【0099】
樹脂層がパターニングされた部分とパターニングされていない部分とについて、分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)にて透過率を測定したところ、樹脂層がパターニングされた部分の再生中心波長は、554nm、パターニングされていない部分の分光透過率曲線の再生中心波長は、527nmであった。
【0100】
また、偽造防止性について、実施例1と同様に、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を原版として体積ホログラムを撮影したところ、樹脂層がパターニングされた部分が暗くなっており、上手くホログラムが撮影できなかった。
【0101】
(実施例4)
樹脂層用塗工液として、ポリエステル樹脂(バイロン270:重量平均分子量40,000;東洋紡績社製)のメチルエチルケトン溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を得た。
樹脂層がパターニングされた部分とパターニングされていない部分とについて、分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)にて透過率を測定したところ、樹脂層がパターニングされた部分の再生中心波長は、556nm、パターニングされていない部分の分光透過率曲線の再生中心波長は、527nmであった。
また、偽造防止性について、実施例1と同様に、体積ホログラムが記録された体積ホログラム積層体を原版として体積ホログラムを撮影したところ、樹脂層がパターニングされた部分が暗くなっており、上手くホログラムが撮影できなかった。
【0102】
(実施例5)
実施例1で作製した体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に、下記組成
・ アクリル系粘着剤(ニッセツPE−118;日本カーバイド工業(株)製)
・・・ 100質量部
・ イソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101;日本カーバイド工業(株)製)
・・・ 2質量部
・ 溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(質量比)
・・・ 60質量部
からなる粘着剤溶液をアプリケーターにより乾燥後膜厚20μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて粘着剤層を形成した。そして、粘着剤層上に剥離性シート(SPPET(75μm);東セロ(株)製)をラミネートして、本発明の第1の体積ホログラム転写用シートである体積ホログラム転写用ラベルを得た。
【0103】
体積ホログラム転写用ラベルにおける剥離性シートを剥離した後、粘着剤層側から被着体であるPVCカード上に、ハンドラミネーターを使用して貼着し、本発明の体積ホログラム貼着体を得た。体積ホログラムにおける樹脂層が設けられた部位と設けられていない部位とで再生中心波長をパターン状に相違し、デザイン性に優れるものが得られた。
【0104】
(実施例6)
未処理PETフィルム{ルミラーT60(25μm);東レ(株)製}上に、下記組成
・ ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量100,000)
・・・ 97質量部
・ ポリエチレンワックス(重量平均分子量10,000)
・・・ 3質量部
・ 溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(質量比))
・・・ 60質量部
からなる剥離性保護層形成用溶液をバーコーターにて、乾燥後膜厚が1μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させ、PETフィルム/剥離性保護層の積層体を得た。
【0105】
実施例1の体積ホログラム積層体の製造方法における(4)加熱処理−紫外線照射処理工程で処理される前の体積ホログラム積層体(PETフィルム/樹脂層/体積ホログラム層/PETフィルム)を使用し、その体積ホログラム層側のPETフィルムを剥離し、その体積ホログラム層側から上記で得たPETフィルム/剥離性保護層の積層体における剥離性保護層面と向かい合わせて80℃のローラに通した後に、紫外線を全面照射して、PETフィルム/剥離性保護層/体積ホログラム層/樹脂層/PETフィルムからなる体積ホログラム積層体を得た。
【0106】
得られた体積ホログラム積層体における樹脂層側のPETフィルムを剥離した後、その体積ホログラム層と部分的に設けられた樹脂層上に、下記組成
・ ポリエステル樹脂(バイロナールMD1985;東洋紡(株)製)
・・・ 100質量部
・ 溶剤(水/イソプロピルアルコール=1/1(質量比))
・・・ 100質量部
からなるヒートシール層形成用溶液をバーコーターにて、乾燥後膜厚が4μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させてPETフィルム/剥離性保護層/体積ホログラム層/樹脂層/ヒートシール層からなる本発明の第2の体積ホログラム転写用シートである体積ホログラム転写箔を得た。
【0107】
得られた体積ホログラム転写箔を、ヒートシール層側から被着体であるPVCカード上に、ホットスタンプ機(V−08:ナビタス社製)を使用し、転写温度150℃、転写時間0.5sec、プレス圧125kgf/cmで重ね、その後PETフィルムを剥離して、剥離性保護層/体積ホログラム層/樹脂層/ヒートシール層/PVCカードからなる体積ホログラム貼着体を得た。体積ホログラムにおける樹脂層が設けられた部位と設けられていない部位とで再生中心波長がパターン状に相違し、デザイン性に優れるものが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の体積ホログラム積層体の断面図である。
【図2】本発明の第1の体積ホログラム転写用シートの断面図である。
【図3】本発明の第1の体積ホログラム転写用シートを使用して作製される体積ホログラム貼着体の断面図である。
【図4】本発明の第2の体積ホログラム転写用シートの断面図である。
【図5】本発明の第2の体積ホログラム転写用シートを使用して作製される体積ホログラム貼着体の断面図である。
【図6】分光透過率曲線から回折効率、半値幅、および再生中心波長を算出する方法を説明するための図である。
【図7】実施例1で得られた体積ホログラム積層体において、樹脂層積層部における縦断面の走査型電子顕微鏡写真(15,000倍)の70%縮小複写物である。
【図8】実施例1で得た体積ホログラム積層体における樹脂層がパターニングされた部分、およびパターニングされていない部分の分光透過率曲線を示す。
【図9】実施例2で得た体積ホログラム積層体における樹脂層がパターニングされた部分、およびパターニングされていない部分の分光透過率曲線を示す。
【符号の説明】
【0109】
1 … 基材
2 … 樹脂層
3 … 体積ホログラム層
4 … 接着剤層
5 … 剥離性シート
6 … 被着体
7 … 第2基材
8 … プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に部分的に樹脂層が設けられると共に、該樹脂層上に隣接し、かつ前記基材上に体積ホログラム層が積層された体積ホログラム積層体であって、前記樹脂層には体積ホログラムが形成されると共に、体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分と樹脂層が設けられていない部分とで再生中心波長が相違することを特徴とする体積ホログラム積層体。
【請求項2】
前記樹脂層と、前記基材とが隣接していることを特徴とする、請求項1記載の体積ホログラム積層体。
【請求項3】
前記樹脂層と、前記基材との間にプライマー層が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の体積ホログラム積層体。
【請求項4】
体積ホログラム層がラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料由来の体積ホログラム層であると共に、樹脂層には隣接した体積ホログラム記録材料からの重合性モノマーの移行に基づく体積ホログラムが形成されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム積層体。
【請求項5】
樹脂層が、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる樹脂からなると共に、体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長が樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長に比して長波長側にあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム積層体。
【請求項6】
樹脂層が、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選ばれる樹脂からなると共に、体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長が樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長に比して短波長側にあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム積層体。
【請求項7】
体積ホログラム積層体における樹脂層が設けられた部分の再生中心波長と樹脂層が設けられていない部分の再生中心波長との差が少なくとも10nm以上あることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の体積ホログラム積層体。
【請求項8】
基材上に樹脂層を部分的に塗布形成した後、該樹脂層上に隣接し、かつ前記基材上にラジカル重合性モノマーおよびカチオン重合性モノマーを含有する体積ホログラム記録材料層を塗布形成した後、得られる積層体に、
(1) エージング処理を施して前記体積ホログラム記録材料層における重合性モノマーを樹脂層に移行させる工程、
(2) 基材側からのレーザー露光によるホログラム露光工程、
(3) 加熱処理及び紫外線照射処理を施して前記重合性モノマーを樹脂層と体積ホログラム記録材料層との間で移動させる共にホログラムを固定化する工程、
を順次施し、前記樹脂層には、隣接した体積ホログラム記録材料層から移行した重合性モノマーに基づく体積ホログラムを形成すると共に、前記積層体における樹脂層が設けられた部分と樹脂層が設けられていない部分とで再生中心波長を相違させることを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に接着剤層を設けたことを特徴とする体積ホログラム転写用シート。
【請求項10】
請求項1または請求項3記載の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に剥離可能に第2基材が設けられると共に、前記体積ホログラム積層体における基材を剥離した面上に接着剤層を設けたことを特徴とする体積ホログラム転写用シート。
【請求項11】
請求項2記載の体積ホログラム積層体における体積ホログラム層上に剥離可能に第2基材が設けられると共に、前記体積ホログラム積層体における基材を剥離して表出する樹脂層および体積ホログラム層上に接着剤層を設けたことを特徴とする体積ホログラム転写用シート。
【請求項12】
体積ホログラム転写用シートがその接着剤層をヒートシール層とする体積ホログラム転写箔であるか、または、その接着剤層を粘着剤層とする体積ホログラム転写ラベルであることを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写用シート。
【請求項13】
請求項9記載の体積ホログラム転写用シートにおける接着剤層側から被着体に貼着されると共に、基材が剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされることを特徴とする体積ホログラム貼着体。
【請求項14】
請求項10または請求項11記載の体積ホログラム転写用シートにおける接着剤層側から被着体に貼着されると共に、第2基材が剥離除去されるか、または残置されて体積ホログラム層の保護層とされることを特徴とする体積ホログラム貼着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−104099(P2009−104099A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48187(P2008−48187)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】