説明

作業用車両の排ガス浄化装置

【課題】 作業装置の作業者に対してDPF強制再生中の作業の安全を確保できる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】 運転室41を備えた車両に搭載された内燃機関31と、前記車両に架装され前記内燃機関31で駆動される作業装置と、前記内燃機関31の排気ガス通路に備えられた連続再生型のDPF34と、前記DPF34に捕集されたPMを強制的に燃焼除去して前記DPF34を再生する強制再生手段と、前記強制再生手段を作動操作する前記運転室内に設けられた運転室内操作手段46または前記作業装置側に設けられた作業装置側操作手段51と、前記作業装置の作動を規制する作業装置作動規制手段と、を備え、前期運転室内操作手段46または前記作業装置側操作手段51により前記強制再生手段が作動操作されたときには、前記作業装置作動規制手段により前記作業装置の作動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両の排ガス浄化装置に関し、特にディーゼルパティキュレートフィルター(以下「DPF」という。)の再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートマター(粒子状物質、以下「PM」という。)を低減するために、排気ガスが流通する排気管の途中に、PMを捕捉するDPFを装備することが行われている。そして、排気ガス中のPMは前記DPFの内部に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにPMを適宜に燃焼除去してDPFの再生を図る必要がある。
【0003】
そこで、DPFを挟んだ前後に圧力センサを配置して入口側と出口側の差圧を求めること等により過捕集状態を判定し、走行中に自動的にDPFの強制再生を行う排ガス浄化装置が主流となってきた。さらに、何らかの事情によりDPFに大量のPMが溜まってしまったような場合に、運転者の意思で強制再生し得るようにした排ガス浄化装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図6は特許文献1に記載された排ガス浄化装置の概略図である。自動車のディーゼルエンジン1から排出された排気ガス3が流通している排気管4のマフラ5内に、連続再生型のDPF6が収納されている。マフラ5の入口パイプ8と出口パイプ9には、排気ガス3の入口ガス圧と出口ガス圧とを計測するための圧力センサ10、11が装備され、該各圧力センサ10、11の検出信号10a、11aが制御装置12に入力されるようになっている。制御装置12においては、検出信号10a、11aに基づきDPF6の入口側と出口側との圧力差が正常範囲内にあるか否かが判断され、その圧力差が正常範囲を超えた場合に、DPF6が過捕集状態に陥ったものと判定する。
【0005】
また、制御装置12では、ディーゼルエンジン1の各気筒に燃料を噴射する燃料噴射装置13に向け燃料の噴射タイミング及び噴射量を指令する燃料噴射信号13aが出力されるようになっている。また、運転室のアクセル開度をディーゼルエンジン1の負荷と検出するアクセルセンサ14が備えられると共に、ディーゼルエンジン1にはその回転数を検出する回転センサ15が装備されている。これらアクセルセンサ14及び回転センサ15からのアクセル開度信号14a及び回転数信号15aも前記制御装置12に入力されるようになっている。
【0006】
さらに、運転席のインストルメントパネルには、前記制御装置12でDPFが過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置12から警告信号16aを受けて点灯する警告ランプ16と、強制再生手段(制御装置12と燃料噴射装置13とにより構成)を任意に作動させるための操作手段を成す再生ボタン17とが設けられている。
【0007】
前記制御装置12で圧力センサ10、11からの検出信号10a、11aに基づきDPF6が過捕集状態に陥ったものと判定され、前記制御装置12から警告信号16aを受けて警告ランプ16が点灯した場合に、これを確認した運転者が再生ボタン17を押すと、制御装置12による燃料噴射装置13の制御が通常モードから強制再生モードに切り替えられる。その結果、主噴射に続いて圧縮上死点より遅い着火しないタイミングでポスト噴射が行われ、排気ガス3中に未燃の燃料が添加されて該燃料がDPF内で酸化反応し、その反応熱によりDPF内のPMが燃焼除去される。
【0008】
このように、特許文献1に記載された排ガス浄化装置では、運転席の再生ボタン17を操作することによって、DPF6を運転者の意思で任意に強制再生することができるので、何らかの事情によりDPF6に大量のPMが溜まってしまったような場合に、直ちに強制再生手段を作動させてDPF6を再生することができる。
【特許文献1】特開2003−155914号公報(第4−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7は、上述した排ガス浄化装置が装備された車両20に高所作業装置21が架装された高所作業車22の作業中の状態を示している。高所作業車22は、車両20に旋回台23が旋回自在に搭載され、当該旋回台23には伸縮ブーム24が枢支されている。当該伸縮ブーム24は、起伏シリンダ29により起伏動作されるようになっており、伸縮ブーム24の先端にはバケット25が装着されている。当該バケット25は図示しないレベリング装置により伸縮ブーム24の起伏角度に係わり無く常に水平姿勢が保たれるようになっている。
【0010】
図7に示すように高所作業車22はアウトリガ28を接地し、伸縮ブーム24を起仰し伸長した作業状態であるので、バケット25に搭乗し高所作業を行っている作業者26には、車両20の運転室27の前記警告ランプ16が全く見えない状態である。そのため、前記制御装置12がDPF6の過捕集を判断し警告ランプ16が点灯されても、作業者26はそのことに気付かず作業を続けてしまい、その結果DPF6が再生不可能な損傷を受ける恐れがあった。そして、DPF6が損傷すると作業継続あるいは走行が不可能となり、DPF6を修理あるいは交換する必要があった。そうなると、高所作業車22が使用不可能となると共に、多額の修理費用を要することとなった。
【0011】
また、前記警告ランプ16の代わりに警告ブザーとした場合であっても、作業者26は運転室27から遠く離れた高所にいるため聞こえず、警告に気付かない恐れがあった。さらに、前記バケット25に搭乗し高所作業を行っている作業者26は、仮にDPFの強制再生中はエンジン回転数が自動的に上昇するような設定がなされていた場合、作業装置が急に速く動くなどの恐れがあり危険であった。一般に高所作業装置等の作業装置による作業中は、ディーゼルエンジン1が低速・低負荷で長時間連続回転させられる場合が多いため、その時の排気ガス3は低温でPMが多量に含まれており、DPF6にPMが溜まり易い状態が続いていた。
【0012】
そこで、本発明は、強制再生手段が作動操作されたときには、作業装置作動規制手段により作業装置の作動が規制される。これにより、作業装置による作業者に対してDPF強制再生中の作業の安全を確保しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、運転室を備えた車両に搭載された内燃機関と、前記車両に架装され前記内燃機関で駆動される作業装置と、前記内燃機関の排気ガス通路に備えられた連続再生型のDPFと、前記DPFに捕集されたPMを強制的に燃焼除去して前記DPFを再生する強制再生手段と、前記強制再生手段を作動操作する前記運転室内に設けられた運転室内操作手段または前記作業装置側に設けられた作業装置側操作手段と、前記作業装置の作動を規制する作業装置作動規制手段と、を備え、前期運転室内操作手段または前記作業装置側操作手段により前記強制再生手段が作動操作されたときには、前記作業装置作動規制手段により前記作業装置の作動が規制されることを特徴とする作業用車両の排ガス浄化装置である。
【0014】
請求項2の発明は、前記強制再生手段が作動中にも前記作業装置による作業を可能にする強制再生時作業可能化手段を備え、前記運転室内操作手段または前期作業装置側操作手段により前記強制再生手段が作動操作されても、前記強制再生時作業可能化手段により強制再生手段の作動に伴う作業装置への影響が排除され作業が継続可能であることを特徴とする請求項1の作業車両の排ガス浄化装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、前記運転室内操作手段または前期作業装置側操作手段により強制再生手段が作動操作されたときには、作業装置作動規制手段により作業装置の作動が規制される。そのため、仮にDPFの強制再生中はエンジン回転数が自動的に上昇するような設定がなされていても、強制再生中は強制的に作業が規制されるので作業装置が急に速く動くなどの恐れがなく作業の安全が確保される。
【0016】
請求項2の発明では、前記運転室内操作手段または前期作業装置側操作手段により前記強制再生手段が作動操作されても、前記強制再生時作業可能化手段により強制再生手段の作動に伴う作業装置への影響が排除され作業が継続可能となる。そのため、仮にDPFの強制再生中はエンジン回転数が自動的に上昇するような設定がなされていても、強制再生中は、前記強制再生時作業可能化手段が働いて作業装置が急に速く動くなどしないよう制御される。したがって、例えDPFの強制再生中であっても、作業装置による作業を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を説明するにあたって、まず第1の実施形態として運転室側に強制再生手段を作動操作する運転室内操作手段と高所作業装置の作業装置側に強制再生手段を作動操作する作業装置側操作手段を配置した場合の実施形態を説明する。次に、第2の実施形態として運転室側に強制再生手段を作動操作する運転室内操作手段とクレーン装置の作業装置側に強制再生手段を作動操作する作業装置側操作手段を配置した場合の実施形態を説明する。また、第3の実施形態として運転室側に強制再生手段を作動操作する運転室内操作手段とクレーン装置の遠隔操作手段に強制再生手段を作動操作する作業装置側操作手段を配置した場合の実施形態を説明する。そして、これら第1〜第3実施形態に前記強制再生手段が作動操作されたときに作業装置の作動を規制する実施形態を第4実施形態で説明する。さらに、第5実施形態で、第1〜第3実施形態に前記強制再生手段が作動操作されたときに作業装置の作動を継続する実施形態を第5実施形態で説明する。
【0018】
第1の実施の形態 図1に、第1の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置30の概略図を示す。車両のディーゼルエンジン31から排出された排気ガスが流通している排気管32のマフラ33内に、連続再生型のDPF34が収納されている。マフラ33の入口パイプ35と出口パイプ36には、排気ガスの入口ガス圧と出口ガス圧とを計測するための圧力センサ37、38が装備され、該各圧力センサ37、38の検出信号37a、38aが制御装置39に入力されるようになっている。制御装置39においては、検出信号37a、38aに基づきDPF34の入口側と出口側との圧力差が正常範囲内にあるか否かが判断され、その圧力差が正常範囲を超えた場合に、DPF34が過捕集状態に陥ったものと判定する。
【0019】
また、制御装置39では、ディーゼルエンジン31の各気筒に燃料を噴射する燃料噴射装置40に向け燃料の噴射タイミング及び噴射量を指令する燃料噴射信号40aが出力されるようになっている。また、運転室41のアクセル開度をディーゼルエンジン31の負荷として検出するアクセルセンサ42が備えられると共に、ディーゼルエンジン31にはその回転数を検出する回転センサ43が装備されている。これらアクセルセンサ42及び回転センサ43からのアクセル開度信号42a及び回転数信号43aも前記制御装置39に入力されるようになっている。
【0020】
さらに、運転室41のインストルメントパネル44には、前記制御装置39でDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置39から警告信号45aを受けて点灯する運転室内警告ランプ45(運転室内警告手段)と、強制再生手段(制御装置39と燃料噴射装置40とにより構成)を任意に作動させるための操作手段を成す運転室内再生ボタン46(運転室内操作手段)とが設けられている。
【0021】
図1に示した作業装置は高所作業装置であって、48は伸縮ブーム47の先端に配置された作業台である。作業台48には高所作業操作装置49が設けられており、当該高所作業操作装置49には作業台側警告ランプ50(作業装置側警告手段)と作業台側再生ボタン51(作業装置側操作手段)が設けられている。作業台側警告ランプ50は、前記制御装置39でDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置39から警告信号50aを受けて点灯するようになっている。作業台側再生ボタン51は、再生指令信号51aを前記制御装置39に送ることにより強制再生手段を任意に作動させるためのものである。
【0022】
上述した第1の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置30の作用は次の通りである。前記制御装置39で圧力センサ37、38からの検出信号37a、38aに基づきDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定され、前記制御装置39から警告信号45aを受けて運転室内警告ランプ45が点灯すると同時に、警告信号50aを受けて作業台側警告ランプ50が点灯する。
【0023】
これを確認した作業台48の作業者により作業台側再生ボタン51が操作される。前記制御装置39では、通常はアクセル開度信号42a及び回転数信号43aに基づき通常モードの燃料噴射信号40aが決定されるようになっているが、再生指令信号46a又は再生指令信号51aが入力された際には、通常モードから強制再生モードに切り替わる。強制再生モードでは、圧縮上死点付近で行われる燃料の主噴射に続いて圧縮上死点より遅い着火しないタイミングでポスト噴射を行うような燃料噴射信号40aが決定される。
【0024】
以上のように、制御装置39と燃料噴射装置40とによりDPF34の強制再生手段が構成されるようになっており、ポスト噴射により排気ガス中に未燃の燃料が添加され、この未燃の燃料がDPF34で酸化反応し、その反応熱によりDPF34内のPMが燃焼除去される。
【0025】
このように、作業台側警告ランプ50(前記作業装置側警告手段)が高所作業装置の作業台48に設けられているので、作業台48が車両の運転室41のはるか上方にある高所作業時であっても、確実に作業台48の作業者に対してDPF34が過捕集状態に陥っており強制再生が必要なことが警告される。そして、本実施の形態のように作業台48に作業台側再生ボタン51を設けている場合には、前記作業台側警告ランプ50により強制再生が必要なことが警告された作業者は、そのまま作業台側再生ボタンによりDPF34の強制再生を行うことができる。すなわち、いちいち車両の運転室41まで降りて行って運転室内再生ボタン46により強制再生手段を手動操作する必要が無くなる。
【0026】
なお、作業台48に作業台側再生ボタン51が設けられていない場合であっても、作業台48の作業者が高所作業装置を操作して地上に降りて、車両の運転室内再生ボタン45(運転室内操作手段)を操作することにより前記強制再生手段が作動しDPF34は再生される。すなわち、この場合であってもDPF34の過捕集に気付かず作業を続けてしまってDPF34が再生不可能な損傷を受けることが防止される。
【0027】
さらに、上記作業装置側警告手段の具体的な実施技術としては、上記作業台側警告ランプ50の他にも多様なものが考えられる。一例として、作業台速度低減装置を備えるようにしてもよい。具体的には、作業台速度低減装置は、前記制御装置39でDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置39から警告信号50aを受けて作動開始するようにする。上記作業台速度低減装置が作動すると、作業者が作業台48の高所作業装置49の操作レバーを同じように操作しても、作業台の速度が大幅に低下するように構成する。これにより、作業者はDPF34が過捕集状態に陥っており強制再生が必要なことに気付くことができる。なお、少しでも早く車両の運転室内再生ボタン45(運転室内操作手段)を操作しDPF34を再生させることが望まれることより、この作業台速度低減装置が作動した場合であっても、高所作業装置の自動格納装置による自動格納作動時には通常の速度で格納されるように制御することが好ましい。
【0028】
第2の実施の形態 図2に、第2の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置60の概略図を示す。図1で示した第1の実施の形態に係る排ガス浄化装置30のものと共通する部分については、同符合を用い詳細な説明を略して、以下に本実施の形態を説明する。
【0029】
図2に示した作業装置は車両に旋回台61を搭載し、当該旋回台61にクレーン運転室62と起伏自在な伸縮ブーム63とを備えたクレーン作業装置である。クレーン運転室62にはクレーン操作装置64が設けられており、当該クレーン操作装置64にはクレーン運転室側警告ランプ65(作業装置側警告手段)とクレーン運転室側再生ボタン66(作業装置側操作手段)が設けられている。クレーン運転室側警告ランプ65は、前記制御装置39でDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置39から警告信号65aを受けて点灯するようになっている。クレーン運転室側再生ボタン66は、再生指令信号66aを前記制御装置39に送ることにより強制再生手段を任意に作動させるためのものである。
【0030】
上述した第2の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置60の作用は次の通りである。前記制御装置39で圧力センサ37、38からの検出信号37a、38aに基づきDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定され、前記制御装置39から警告信号45aを受けて運転室内警告ランプ45が点灯すると同時に、警告信号65aを受けてクレーン運転室側警告ランプ65が点灯する。
【0031】
これを確認したクレーン運転室62の作業者によりクレーン運転室側再生ボタン66が操作される。すると、制御装置39と燃料噴射装置40とにより構成されたDPF34の強制再生手段が動作し、ポスト噴射により排気ガス中に未燃の燃料が添加され、この未燃の燃料がDPF34で酸化反応し、その反応熱によりDPF34内のPMが燃焼除去される。
【0032】
このように、クレーン運転室側警告ランプ65(前記作業装置側警告手段)がクレーン作業装置の運転室62に設けられているので、作業者が前記クレーン運転室内62でクレーン操作を行っているクレーン作業時であっても、確実にクレーン作業者に対してDPF34が過捕集状態に陥っており強制再生が必要なことが警告される。そして、本実施の形態のようにクレーン運転室62にクレーン運転室側再生ボタン66を設けている場合には、前記クレーン運転室側警告ランプ65により強制再生が必要なことが警告された作業者は、そのままクレーン運転室側再生ボタン66によりDPF34の強制再生を行うことができる。すなわち、いちいち車両の運転室41まで行って運転室内再生ボタン46により強制再生手段を手動操作する必要が無くなる。
【0033】
なお、クレーン運転室62にクレーン運転室側再生ボタン65が設けられていない場合は、クレーン運転室62の作業者が一旦地上に降りて、車両の運転室内再生ボタン45(運転室内操作手段)を操作することにより前記強制再生手段が作動しDPF34は再生される。すなわち、この場合であってもDPF34の過捕集に気付かず作業を続けてしまってDPF34が再生不可能な損傷を受けることが防止される。
【0034】
第3の実施の形態 図3に、第3の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置70の概略図を示す。図1で示した第1の実施の形態に係る排ガス浄化装置30のものと共通する部分については、同符合を用い詳細な説明を略して、以下に本実施の形態を説明する。
【0035】
図3に示した作業装置は車両の運転室41後部に旋回ポスト71を搭載し、当該旋回ポスト71に起伏自在な伸縮ブーム72を備えたクレーン作業装置である。このクレーン作業装置は、遠隔操作手段73によって遠隔操作可能とされている。遠隔操作手段73にはクレーン操作スイッチが設けられていると共に、遠隔操作手段側警告ランプ74(作業装置側警告手段)と遠隔操作手段側再生ボタン75(作業装置側操作手段)が設けられている。遠隔操作手段側警告ランプ74は、前記制御装置39でDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定された時に前記制御装置39から警告信号74aを受けて点灯するようになっている。遠隔操作手段側再生ボタン75は、再生指令信号75aを前記制御装置39に送ることにより強制再生手段を任意に作動させるためのものである。
【0036】
76はクレーン本体側送受信装置であって、前記遠隔操作手段73と無線によるクレーン操作信号の送受信を行うと共に、前記警告信号74aと再生指令信号75aの送受信を行うものである。クレーン本体側送受信装置76は、クレーン本体側のクレーン操作用制御装置と信号の授受を行うと共に、前記排ガス浄化装置70の制御装置39とも信号の授受を行うようになっている。
【0037】
上述した第3の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置70の作用は次の通りである。前記制御装置39で圧力センサ37、38からの検出信号37a、38aに基づきDPF34が過捕集状態に陥ったものと判定され、前記制御装置39から警告信号45aを受けて運転室内警告ランプ45が点灯すると同時に、警告信号74aを受けて遠隔操作手段側警告ランプ74が点灯する。
【0038】
これを確認した遠隔操作中の作業者77により遠隔操作手段側再生ボタン75が操作される。すると、制御装置39と燃料噴射装置40とにより構成されたDPF34の強制再生手段が動作し、ポスト噴射により排気ガス中に未燃の燃料が添加され、この未燃の燃料がDPF34で酸化反応し、その反応熱によりDPF34内のPMが燃焼除去される。
【0039】
このように、遠隔操作手段側警告ランプ74(作業装置側警告手段)が遠隔操作手段73に設けられているので、作業者77が遠隔操作手段73でクレーン操作を行っているクレーン作業時であっても、確実にクレーン作業者77に対してDPF34が過捕集状態に陥っており強制再生が必要なことが警告される。そして、本実施の形態のように遠隔操作手段73に遠隔操作手段側再生ボタン75を設けている場合には、前記遠隔操作手段側警告ランプ74により強制再生が必要なことが警告された作業者77は、そのまま遠隔操作手段側再生ボタン74によりDPF34の強制再生を行うことができる。すなわち、いちいち車両の運転室41まで行って運転室内再生ボタン46により強制再生手段を手動操作する必要が無くなる。
【0040】
さらに、遠隔操作手段73に遠隔操作手段側再生ボタン75が設けられていない場合は、遠隔操作中の作業者77が一旦車両の運転室41まで行って、車両の運転室内再生ボタン45(運転室内操作手段)を操作することにより前記強制再生手段が作動しDPF34は再生される。すなわち、この場合であってもDPF34の過捕集に気付かず作業を続けてしまってDPF34が再生不可能な損傷を受けることが防止される。
【0041】
第4の実施の形態 図4に、第4の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置80の一部を示す。この排ガス浄化装置80は既述した第1から第3の実施の形態に係る排ガス浄化装置30、60又は70と組み合わされて構成されるものである。82は作業装置の油圧アクチュエータ84に圧油を供給する油圧ポンプであって、前記車両のディーゼルエンジン31とPTO81を介して駆動されるようになっている。85は前記油圧ポンプ82と油圧アクチュエータ84とを連絡するポンプ油路であり、86は前記油圧アクチュエータ84とタンク91とを連絡するタンク油路である。83は前記ポンプ油路85とタンク油路86とに介装された油圧制御手段である。当該油圧制御手段83は、方向切換弁、圧力制御弁、流量制御弁等から構成されている。
【0042】
87は前記油圧ポンプ82と油圧制御手段83との間のポンプ油路85とタンク油路86との間に介装されたリリーフ弁である。リリーフ弁87とタンク油路86とを結ぶベント油路88には2位置切換型のソレノイド弁89が介装されている。ソレノイド弁89は、前述した排ガス浄化装置の制御装置39からの切換信号89aにより切換操作されるようになっている。上記リリーフ弁87とソレノイド弁89とによってアンロード回路(作業装置作動規制手段)が構成されている。図4に示したリリーフ弁89は非通電状態を示しており、この時には前記ベント油路88は非連通となるため、油圧回路はオンロード状態となっている。
【0043】
上述した排ガス浄化装置80の作用は、以下の通りである。図1〜図3に示した作業装置側操作手段51、66、75が操作され、再生指令信号51a、66a、75aが制御装置39に入力されると、制御装置39はソレノイド弁89に対し切換信号89aを出力する。すると、ソレノイド弁89が切換わり、前記ベント油路88が連通され油圧回路はアンロード状態となる。このため、作業装置の油圧アクチュエータ84は作動が規制されるようになる。
【0044】
以上のように、前記作業装置側操作手段51、66、75により強制再生手段が作動操作されたときには、作業装置作動規制手段により作業装置の作動が規制される。そのため、仮にDPF34の強制再生中はエンジン回転数が自動的に上昇するような設定がなされていても、強制再生中は作業が規制されるので作業装置が急に速く動くなどの恐れがなく作業の安全が確保される。
【0045】
第5の実施の形態 図5に、第5の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置90の一部を示す。この排ガス浄化装置90は上記排ガス浄化装置80と同じように、既述した第1から第3の実施の形態に係る排ガス浄化装置30、60又は70と組み合わされて構成されるものである。したがって、第4の実施の形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0046】
方向切換弁、圧力制御弁、流量制御弁等から構成されている油圧制御手段83には、前記制御装置39から制御信号83aが入力されるようになっている。油圧制御手段83に油圧制御信号83aが入力されると、前記油圧ポンプ82の吐出油量に関わりなく、操作信号に応じた油量の圧油が前記油圧アクチュエータ84に送られるようになっている。上記制御装置39と油圧制御手段83とにより、強制再生時作業可能化手段が構成されている。
【0047】
上述した排ガス浄化装置90の作用は、以下の通りである。図1〜図3に示した作業装置側操作手段51、66、75が操作され、再生指令信号51a、66a、75aが制御装置39に入力されると、制御装置39は前記油圧制御手段83に対し油圧制御信号83aを出力する。すると、油圧制御手段83は、前記油圧ポンプ82の吐出油量に関わりなく、操作信号に応じた油量の圧油が前記油圧アクチュエータ84に送られるようになる。
【0048】
以上のように、前記作業装置側操作手段51、66、75により強制再生手段が作動操作されたときには、作業装置の油圧アクチュエータ84は油圧ポンプ82の吐出量の変化の影響を受けなくなる。そのため、仮にDPF34の強制再生中はエンジン回転数が自動的に上昇するような設定がなされていても、作業装置が急に速く動くなどの恐れがなく作業の継続が確保される。すなわち、作業装置による作業中であっても、前記強制再生時作業可能化手段によってDPF34の強制再生を問題なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置30の概略図である。
【図2】第2の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置60の概略図である。
【図3】第3の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置70の概略図である。
【図4】第4の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置80の一部である。
【図5】第5の実施の形態に係る作業用車両の排ガス浄化装置90の一部である。
【図6】特許文献1に記載された排ガス浄化装置の概略図である。
【図7】特許文献1の排ガス浄化装置が装備された高所作業車22の作業中の状態を 示している。
【符号の説明】
【0050】
30:排ガス浄化装置
31:ディーゼルエンジン
34:DPF
39:制御装置
40:燃料噴射装置
41:運転室
45:運転室内警告ランプ
46:運転室内再生ボタン
50:作業台側警告ランプ
51:作業台側再生ボタン
60:排ガス浄化装置
61:旋回台
62:クレーン運転室
63:伸縮ブーム
65:クレーン運転室側警告ランプ
66:クレーン運転室側再生ボタン
70:排ガス浄化装置
71:旋回ポスト
72:伸縮ブーム
73:遠隔操作手段
74:遠隔操作手段側警告ランプ
75:遠隔操作手段側再生ボタン
80:排ガス浄化装置
83:油圧制御手段
87:リリーフ弁
89:ソレノイド弁
90:排ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を備えた車両に搭載された内燃機関と、
前記車両に架装され前記内燃機関で駆動される作業装置と、
前記内燃機関の排気ガス通路に備えられた連続再生型のDPFと、
前記DPFに捕集されたPMを強制的に燃焼除去して前記DPFを再生する強制再生手段と、
前記強制再生手段を作動操作する前記運転室内に設けられた運転室内操作手段または前記作業装置側に設けられた作業装置側操作手段と、
前記作業装置の作動を規制する作業装置作動規制手段と、
を備え、
前記運転室内操作手段または前記作業装置側操作手段により前記強制再生手段が作動操作されたときには、前記作業装置作動規制手段により前記作業装置の作動が規制されることを特徴とする作業用車両の排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記強制再生手段が作動中にも前記作業装置による作業を可能にする強制再生時作業可能化手段を備え、
前記運転室内操作手段または前記作業装置側操作手段により前記強制再生手段が作動操作されても、前記強制再生時作業可能化手段により強制再生手段の作動に伴う作業装置への影響が排除され作業が継続可能であることを特徴とする作業車両の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241607(P2010−241607A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152822(P2010−152822)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2007−181505(P2007−181505)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】