説明

作業車のキャビン取付構造

【課題】 キャビン側の部材と走行機体側の部材とが防振体を挟んで位置ズレなく連結できる作業車のキャビン取付構造を提供する。
【解決手段】 キャビンと走行機体との一方に属する防振体17に他方に属する被連係部材16を連係することによって、キャビンを走行機体に防振支持すべく構成する。走行機体に取り付けたブラケット15に防振体17とガイドピン70とを取付け、キャビン11の下部フレーム13Aに被連係部材16を取り付けるとともにガイド孔13Bを形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンと走行機体との一方に属する防振体に他方に属する被連係部材を連係することによって、前記キャビンを前記走行機体に防振支持すべく構成してある作業車のキャビン取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビンを走行機体に防振支持するに、キャビンを構成するフレームの前後4箇所に防振機構を配置することによって防振支持しているが、それらの構造は次ぎのようなものである。つまり、走行機体側に属するミッションケース(公報番号3)の左右両側から横側方に向けて支持ブラケット(公報番号13)を延出するとともに、支持ブラケットに防振体としての防振支持本体(公報番号24)、キャビン(公報番号15)に取り付けた被連係部材としてのカバー体(公報番号25)を取り付けていた。(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−129373号公報(公報第2頁左下欄第10行目から右下欄第4行目、及び、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した場合のように、走行機体側に設けた防振支持本体の上にキャビン側に設けたカバー体を被せる際に、位置ズレが起こると、防振支持本体が変形した状態のまま、連結ボルトで防振支持本体とカバー体とが連結される虞がある。
防振支持本体が変形したままで連結固定されると、防振支持本体が十分に機能を発揮せず、振動音の発生が抑制できない虞があった。また、振動が低減できないところから、操作ロッドなどのこじれ等が発生しやすくなり、更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、キャビン側の部材と走行機体側の部材とが防振体を挟んで位置ズレなく連結できる作業車のキャビン取付構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記被連係部材を前記防振体に連係させる方向に誘導する位置決め用ガイド機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
位置決め用ガイド機構を設けてあるので、その位置決め用ガイド機構が案内する方向に被連係部材又は防振体を相手側に向けて移動させることによって、被連係部材を防振体に対して設定された連係状態に導くことができる。
【0008】
〔効果〕
したがって、被連係部材が防振体に位置ズレした状態で連係することがなく、振動音の発生を抑制でき、操作ロッドなどのこじれ等が発生し難くなる。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記位置決め用ガイド機構を、前記一方に形成したガイド孔と前記他方に突設したガイドピンとで構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
キャビンを走行機体に取り付ける際に、ガイドピンをガイド孔に嵌め込む操作をすれば、防振体と被連係部材との連係状態を得ることができ、防振体のこじれ等を回避できる。
つまり、前記したように、防振体と被連係部材との関係は、位置ズレした状態でも連係されることがあるのに対して、ガイドピンとガイド孔との関係は、位置ズレした状態ではガイドピンがガイド孔に嵌め込まれない。このように、ガイドピンとガイド孔とからなる位置決め用ガイド機構を設けることによって、ガイドピンをガイド孔に嵌め込むことによって、自動的に被連係部材を防振体に設定状態にして連係することができる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項2に係る発明において、前記防振体と前記被連係部材との連係状態を維持する締結具を設けるとともに、前記ガイドピンを前記締結具より前記走行機体の横外側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
締結具によって、防振体と被連係部材との連係状態を確立した後には、ガイドピンとガイド孔との連係状態を解除して、防振体の自由な作動状態を確保する必要がある。このように連係後に解除する必要のあるガイドピンを、締結具より走行機体の横側方に配置してあるので、ガイドピンに対する取外し操作も走行機体の外側から容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項3に係る発明において、前記走行機体に取り付けたブラケットに前記防振体とガイドピンとを取付け、前記キャビンの下部フレームに前記被連係部材を取り付けるとともに前記ガイド孔を形成し、前記ガイドピンを下向きに取り外し可能に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
防振体とガイドピンとをブラケットに設けることによって、防振体とガイドピンとの位置関係を容易に設定することができるとともに、キャビンの下部フレームに取り付けられた被連係部材とガイド孔との位置合わせを行う為に、ブラケットの走行機体に対する取り付け位置の調整によっても行うことができ、位置決めが容易である。
しかも、ガイドピンを取外すのに、ブラケットの下方に取外す構成を採っているので、機器の輻輳することが少ない十分な作業空間を確保した状態で、ガイドピンの取外し作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には作業車の一例として耕耘作業を主作業とするトラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、走行機体1を構成する前部フレーム1Aに防振搭載したエンジン2からの動力を、フレーム兼用のミッションケース3に内装した走行用の変速装置(図示せず)などからなる走行伝動系を介して左右一対の前輪4及び後輪5に伝達する四輪駆動型に構成されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、ミッションケース3の後部には、その後上部に内装した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)の作動で上下方向に揺動駆動される左右一対のリフトアーム6や、エンジン動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸7、などが装備されている。
【0017】
動力取出軸7には、エンジン2からの動力が、走行伝動系とは別系統のミッションケース3に内装した作業用の変速装置(図示せず)や作業クラッチ(図示せず)などからなる作業伝動系を介して伝達されている。
【0018】
図示は省略するが、左右のリフトアーム6には、ミッションケース3の後部に昇降揺動可能に連結装備されるリンク機構が連結され、動力取出軸7には、そのリンク機構に連結されるロータリ耕耘装置などの作業装置に備えた入力軸が伝動軸などを介して接続される。
【0019】
図1及び図2に示すように、走行機体1の後半部には、ステアリングホイール8や運転座席9などを備えて搭乗運転部10が形成され、その搭乗運転部10を覆うキャビン11が装備されている。
【0020】
図1に示すように、キャビン11は、キャビンフレーム19に、透明の曲面ガラスなどからなるウインドシールド20、透明の平面ガラスなどからなる外開き式の左右一対のドアパネル21、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式の左右一対のサイドウインド22、及び、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式のリヤウインド23、などを備えて構成されている。
【0021】
図1、図6及び図7に示すように、キャビンフレーム19は、異形パイプからなる左右一対のフロントピラー24、左右一対のクォータピラー25、角パイプからなる左右一対のリヤピラー26、断面形状コの字状のフロントクロスメンバー27、断面形状コの字状の左右一対のサイドメンバー28、及び、断面形状コの字状のリヤクロスメンバー29、サイドリヤメンバー12、左右のサイドリヤメンバー12,12に渡って設けられている下部フレームとしてのフロアプレート13などを溶接して構成される。
【0022】
図6及び図7に示すように、サイドリヤメンバー12は、ステップ部分12c、ステップ部分12cから後輪フェンダ80に沿った円弧状を呈する左右サイド部分12a、及び、ステップ部分12cより上方に位置するリヤ部分12bを一体で形成している。
そして、フロントクロスメンバー27、左右の上サイドメンバー28、及び、リヤクロスメンバー29に、インナルーフ30やアウタルーフ31などを取り付けてルーフ部32が形成されている。
【0023】
図1に示すように、左右のドアパネル21は、対応するクォータピラー25に上下一対のヒンジ33を介して開閉揺動可能に連結されている。
左右のサイドウインド22は、対応するリヤピラー26に上下一対のヒンジ34を介して開閉揺動可能に連結されている。
図1に示すように、リヤウインド23は、リヤクロスメンバー29に左右一対のヒンジ35を介して開閉揺動可能に連結されている。
左右のリヤピラー26は、それらの間隔が、左右のフロントピラー24の間隔や左右のクォータピラー25の間隔よりも狭くなるように設定されている。
【0024】
リヤクロスメンバー29は、アウタルーフ31との間に空調ユニット36の配置空間を確保するために、左右のリヤピラー26の上端部から所定距離だけ下げた高さ位置に配置設定され、その上部には空調ユニット36を支持する3つの支持ステー37が装備されている。
【0025】
図1、図3及び図4に示すように、インナルーフ30は、その周縁部がフロントクロスメンバー27、左右のサイドメンバー28、及び、リヤクロスメンバー29の下面に接合されており、その周縁部とアウタルーフ31との間に空調ダクト配設用の空間を確保しながら居住空間を極力広くするために、その中央部がアウタルーフ31に向けて膨出する形状に形成されている。
【0026】
図1、図3及び図4に示すように、アウタルーフ31は、その周縁部がフロントクロスメンバー27及び左右のサイドメンバー28の上面で支持され、その前後中間部に外気導入経路38を有するように、又、その後端部が、リヤウインド23よりも後方に延出して、空調ユニット36の上部を覆う上部カバーとして機能するように形成されている。
【0027】
図1〜図4に示すように、アウタルーフ31及び支持ステー37には、空調ユニット36の後下部を覆う下部カバー39が連結され、インナルーフ30の後端部とアウタルーフ31の後部と下部カバー39とで、空調ユニット36の収納空間40が形成されている。
【0028】
図2〜図5に示すように、インナルーフ30の後部中央には、キャビン内気の空調ユニット36への供給を可能にする左右一対の内気供給口41が形成されている。
アウタルーフ31の後部中央には、外気の空調ユニット36への供給を可能にする左右一対の外気供給口42が、インナルーフ30の内気供給口41に対向する状態で形成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、アウタルーフ31の後部には、左右のサイドウインド22を開けた際のキャビン内部への雨水の入り込みを阻止する左右一対の庇43が形成されている。
左右の庇43は、外気導入経路38に連通する中空状に形成され、左側の庇43の底壁にのみ、外気導入口44が形成され、エアフィルタ45が装備されている。
このように、左側の庇43にのみ外気導入口44を形成し、エアフィルタ45を装備したことで、圃場でエアフィルタ45の掃除や交換などを行う場合には、車体の左側を畦に隣接させた状態で車体を停止させるようにすれば、左側の乗降口から畦に降車して直ぐに、庇43に手が届き易い畦上で、エアフィルタ45の掃除や交換などを行うことができる。
【0030】
図2、図4及び図5に示すように、内気供給口41と外気供給口42の間には、外気供給口42を開放して空調ユニット36への外気の供給を許容するとともに、内気供給口41の開口面積を小さくして内気供給口41からのキャビン内気の供給を抑制する外気混入状態と、外気供給口42を閉塞して空調ユニット36への外気の供給を阻止するとともに内気供給口41を大きく開放する内気循環状態とに切り換え可能に構成された上下揺動式のシャッタ46が配備されている。
【0031】
図2、図4及び図5に示すように、シャッタ46は、電動モータ47の作動で左右向きの支軸48を支点にして上下揺動する電動式で、その遊端部に備えた連係軸49が、前後向きの支点ピン50を支点にして揺動するクランクアーム51、及び連係ワイヤ52を介して、電動モータ47の操作アーム53に操作連係され、図外のバネによって内気循環状態に復帰付勢されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、空調ユニット36は、右上部に吸気部54が開口され、前部に左右一対のパイプ状の吹出部55が形成されたケーシング56に、シロッコファン57、エバポレータ58、及びヒータ59、などを内装して構成され、左右のリヤピラー26、26の間で、その後端部がキャビン11のリヤウインド23よりも大きく後方に位置するように各支持ステー37で支持されることで、その全体が運転座席9よりも後方に位置するようになっている。
【0033】
図2及び図3に示すように、空調ユニット36を配置したことで、空調ユニット36をルーフ部32の前端部に配置する場合に比較して、キャビン11の全高を極力低くしながら居住空間を大きく確保することができ、又、能力の高い大型の空調ユニット36を装備することが可能になり、更に、前上方に対する視界が広がることから、例えば、フロントローダ(図示せず)を連結装備したローダ作業時には、上昇させたバケット位置の視認が容易になり、作業性が向上する。
【0034】
図2及び図3に示すように、シロッコファン57は、エバポレータ58の右側方に配置され、吸気部54から取り込んだ未調節空気を、エバポレータ58とそれに対向するケーシング56の後壁60との間に形成された給気経路61を介して、エバポレータ58及びヒータ59に供給する。
【0035】
図2及び図3に示すように、ケーシング56の後壁60は、シロッコファン57からの未調節空気をエバポレータ58の全域に略均一に案内する案内壁として機能するように、シロッコファン57から離れる左端側ほどエバポレータ58に接近する多段形状に形成されている。
【0036】
このように、ケーシング56の後壁60を多段形状に形成したことで、後壁60における左端部の外面と、ルーフ部32における後部の壁面との間には比較的大きい空間62が形成されることになる。
【0037】
そこで、この空間を有効利用して、ケーシング56の後壁60にシャッタ操作用の電動モータ47を装備するようにしてあり、これによって、電動モータ47を収納する専用の空間を形成することによるルーフ部形状の複雑化やルーフ部32の大型化などを回避することができる。
【0038】
又、シロッコファン57は、エバポレータ58の右側方に配置されたことで、アウタルーフ31の左端部に形成された外気導入口44とは反対側の右端部に位置することになり、これによって、外気混入状態では、外気導入口44から導入された外気が、外気導入経路38と給気経路61とを介して、キャビン11の内温で予熱された状態でエバポレータ58及びヒータ59に供給されるようになることから、外気導入口44の近傍にシロッコファン57を配置する場合に比較して、空調効率の向上を図ることができる。
【0039】
図2及び図3に示すように、ケーシング56の各吹出部55には、対応する吹出部55からの調節空気をキャビン11の前端部に向けて案内する左右一対の空調ダクト63が外嵌されている。
【0040】
左右の空調ダクト63は、それらの前端部が、フロントクロスメンバー27に対する近接位置で、フロントクロスメンバー27に略沿った姿勢となるように、略L字状に形成された樹脂成型品からなる。
【0041】
図2に示すように、左右の空調ダクト63の中間部には、案内した調節空気を、操縦者の前横上方から操縦者に向けて吹き出させる第1吹出口64と第2吹出口65とが形成されている。
【0042】
図2に示すように、左右の空調ダクト63の前端部には、案内した調節空気を、キャビン11における前端上部の横側端部から下方に向けて吹き出させる第3吹出口66と、キャビン11における前端上部の左右中間部から下方に向けて吹き出させる第4吹出口67とが形成されている。
【0043】
図2に示すように、左右の空調ダクト63において、第1吹出口64と第3吹出口66との間には、第1吹出口64より前方への調節空気の流量を低下させることで、第1吹出口64から吹き出される調節空気の流量を確保する第1絞り部73が形成され、第2吹出口65と第3吹出口66との間には、第2吹出口65より前方への調節空気の流量を低下させることで、第2吹出口65から吹き出される調節空気の流量を確保する第2絞り部74が形成されている。
【0044】
この構成から、空調ユニット36をルーフ部32の後部に配備して居住性の向上などを図りながらも、調節空気を、操縦者や、左右のドアパネル21におけるサイドミラー72の目視領域、あるいは、ウインドシールド20の前方視界領域、などに優先的に供給することが可能となり、これによって、キャビン11の内部での快適性を向上させることができ、又、ウインドシールド20の前方視界領域や、左右のドアパネル21におけるサイドミラー目視領域などを晴らすことができて、前方確認やサイドミラー72による後方確認などが行い易くなることから、操縦性や作業性の向上を図ることができる。
【0045】
特に、第1吹出口64の前方に第1絞り部73が位置し、第2吹出口65の前方に第2絞り部74が位置することで、第1吹出口64及び第2吹出口65から操縦者に向けた調節空気の後方向きの吹き出しを良好に行える。
【0046】
図2及び図3に示すように、エバポレータ58には、そのケース内で発生した結露水を排出する排水機構Aが設けられている。排水機構Aは、エバポレータ58からの結露水を排出する機器側排水ホース65と、機器側排水ホース65に接続されている金属製の配管66と、配管66に接続された先端側排水ホース67とで構成される。
【0047】
図2及び図3に示すように、機器側排水ホース65は、下部カバー39の内面に沿って略水平でかつ横側方に向かう姿勢に形成され、金属製の配管66と接続される部分を機体前方側下方に向けて傾斜させてある。
金属製の配管66は、機体前方側下方に向かう傾斜姿勢で設けてあり、作業灯84を支持するブラケットに一体形成されている。作業灯84の近傍にはウインカー83が備えられている。
【0048】
先端側排水ホース67は、サイドウインド22とリヤウインド23との間でリヤピラー26の外面に沿った状態で上下向き姿勢で垂下されており、後車輪5に対する後輪フェンダー80位置まで延出してある。
【0049】
キャビン11に対する防振構造について説明する。図1、図6及び図7に示すように、キャビン11に対する防振構造は、キャビン11の前端近くで左右のステップ近くに夫々設けられている前防振機構X、Xと、キャビン11の後端近くで後車軸ケース14に支持される左右の後防振機構Y、Yとで構成されている。
【0050】
図6及び図7に示すように、後防振機構Y、Yのキャビン側に属するものは、サイドリヤメンバー12のリヤ部12bから上下向き姿勢で平行に垂下されている補強メンバー71にマウントブラケット71Aを取り付け、後防振機構Yのキャビン側の防振ゴムをそのマウントブラケット71Aに取り付けて構成する。
【0051】
図6及び図7に示すように、後防振機構Y、Yの走行機体側に属するものは、後車軸ケース14から立設したブラケット14Aに取り付けた防振ゴム等で構成する。
【0052】
前防振機構Xについて説明する。図6及び図7に示すように、前防振機構Xは、キャビン11のフロアプレート13におけるハンドルポストを回避する凹入部分13Aの両側部に設けてあり、フロアプレート13の下向き面13Aに取り付けた被連係部材16と、ミッションケース3から延出されたマウントブラケット15に取り付けた防振体17とで構成する。
【0053】
フロアプレート13は、前記サイドリヤメンバー12の左右ステップ部分12c、12cに亘って架設されているプレートである。図8に示すように、フロアプレート13の下向き面13Aに、周縁部16Aを湾曲状にして下向き開放凹状部16Bを形成した皿状の被連係部材16を取り付け固定してある。被連係部材16としては、金属材料で構成するが、強度的に十分であれば硬質樹脂材料を用いてもよい。
【0054】
防振体17の取付構造について説明する。図8及び図9に示すように、ミッションケース3より機体横側方に向けてマウントブラケット15を延出する。マウントブラケット15を、一端にミッションケース3に対する上下向き姿勢の取付用板部15Bとその取付用板部15Bより水平に延出された平板部15Aと平板部15Aの片持ち状先端に設けてある上下向き姿勢の補強板部15Cとで構成する。平板部15Aの中心位置に貫通孔15aを形成し、貫通孔15aの周縁部の4箇所に取り付け用のネジ孔15bが形成してある。
【0055】
図8及び図9に示すように、マウントブラケット15の構成として、平板部15Aの両側端に夫々上下向き姿勢の取付用板部15Bと補強板部15Cとを一体形成しているので、平板部15A両端が中心位置に比べて機械的強度が強化され、平板部15Aの中心位置において撓み易い構成となっている。これによって、振動を受けた場合に中心位置において振動吸収能力が高くなり、この中心位置に後記する防振体17を設けてあるので、キャビン11への振動伝播を抑制する構成となっている。
【0056】
マウントブラケット15に取り付けられる防振体17は、防振本体17Aにフランジ部17Bと筒状体部17Cとを一体形成して、構成されている。図8及び図9に示すように、防振本体17Aは、ゴム製のものであり、上方部分が山形状の穏かな傾斜面17aを有する緩円錐台状を呈する形状に形成されるとともに、傾斜面17aの裾部分に前記したフランジ部17Bを一体形成している。防振本体17Aの傾斜面17aより下方の部分は一定高さの円形突出部17bであり、この円形突出部17b内にフランジ部17Bの一部が折り曲げ形成されて差し込み装着されている。
【0057】
このような防振体17をマウントブラケット15に取り付けるには、マウントブラケット15の上面から、円形突出部17bを貫通孔15a内に嵌め込むとともに、フランジ部17Bを上面に載置して、ボルトaで取り付け固定する。
【0058】
図8に示すように、フロアプレート13の下面に取り付けた被連係部材16を、マウントブラケット15に取り付けた防振体17の傾斜面17aの上端部分に被せることによって、被連係部材16と防振体17とを組み付けることができる。
防振体17に傾斜面17aを設け、被連係部材16の周縁部16Aに湾曲面を形成することによって、防振体17と被連係部材16との間に、多少の位置ズレがあっても、周縁部16Aの湾曲面と傾斜面17aとが接触することによって、位置ズレを修正する機能が働き、防振体17と被連係部材16とが位置ズレした状態で組付けられることを抑制できる。
【0059】
図8に示すように、被連係部材16を防振体17に被嵌させた状態で、フロアプレート13の上面から締結具18としてのボルト18Aを筒状体部17C内に差込みナット18Bで締付け固定することによって、防振体17と被連係部材16とが組付けられる。つまり、キャビン11が走行機体に防振支持されることとなる。
【0060】
被連係部材16を前記防振体17に被嵌する方向に誘導する位置決め用ガイド機構Aについて説明する。図8及び図9に示すように、位置決め用ガイド機構Aは、防振体17を装着するマウントブラケット15の貫通孔15aより機体横側方側に螺着してあるガイドピン70と、キャビン11のフロアプレート13に形成したガイド孔13Bとで構成されており、左右の前防振機構X、X毎に設けられているが、後防振機構Y、Yに対しては設けられてはいない。
【0061】
図8及び図9に示すように、ガイドピン70は、ボルト状の頭部70Aからボルト状のネジ部70Bを形成するとともに、ネジ部70Bの一端に円形棒状部70Cを形成し、円形棒状部70Cの先端に棒状ガイド部70Dを形成してある。
このようなガイドピン70を、マウントブラケット15の下方から差込み、ネジ部70Bをネジ孔15bに螺着して、円形棒状部70Cと棒状ガイド部70Dをマウントブラケット15より上方に突出させる。
【0062】
以上のような構成により、キャビン11を走行機体に取り付ける場合には、左右に位置するガイドピン70の棒状ガイド部70Dの先端突起部70dがガイド孔13Aに係合した時点から、キャビン11をマウントブラケット15に向けて係合移動させることによって、皿状の被連係部材16の下向き開放凹状部16Bを防振本体17Aの傾斜面17aに被嵌させることができる。
被連係部材16と防振体17との組付けが完了した場合には、ガイドピン70の螺合状態を解除し、マウントブラケット15の下方に落として取外すことができる。
【0063】
〔別実施形態〕
〔1〕 ガイドピン70を係合するガイド孔13Bに対して、図示してはいないが、そのガイド孔13Bの縁部にガイドピン70をガイド孔13Bに誘導する傾斜面を備えたコーン状のガイド体を設けてもよい。
〔2〕 ガイドピン70をブラケットに、ガイド孔13Bをキャビン11の下部フレーム13Aに形成したが、ガイドピン70を下部フレーム13Aに、ガイド孔13Bをブラケット15に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】農用トラクタの全体側面図
【図2】キャビン内の空調ユニット、空調ダクト、インナールーフを示す平面図
【図3】キャビン内の空調ユニットを示す平面図
【図4】シャッタを示す縦断側面図
【図5】シャッタ駆動用クランクアーム等を示す構成図
【図6】キャビンの内部構造を示す平面図
【図7】キャビンの下部構造を示す側面図
【図8】キャビンに対する前防振機構と位置決めガイド機構を示す縦断側面図
【図9】前防振機構と位置決めガイド機構との分解縦断側面図
【符号の説明】
【0065】
1 走行機体
11 キャビン
13B ガイド孔
15 ブラケット
16 被連係部材
17 防振体
18 締結具
70 ガイドピン
A 位置決めガイド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと走行機体との一方に属する防振体に他方に属する被連係部材を連係することによって、前記キャビンを前記走行機体に防振支持すべく構成してある作業車のキャビン取付構造であって、
前記被連係部材を前記防振体に連係させる方向に誘導する位置決め用ガイド機構を設けてある作業車のキャビン取付構造。
【請求項2】
前記位置決め用ガイド機構を、前記一方に形成したガイド孔と前記他方に突設したガイドピンとで構成してある請求項1記載の作業車のキャビン取付構造。
【請求項3】
前記防振体と前記被連係部材との連係状態を維持する締結具を設けるとともに、前記ガイドピンを前記締結具より前記走行機体の横外側に配置してある請求項2記載の作業車のキャビン取付構造。
【請求項4】
前記走行機体に取り付けたブラケットに前記防振体とガイドピンとを取付け、前記キャビンの下部フレームに前記被連係部材を取り付けるとともに前記ガイド孔を形成し、前記ガイドピンを下向きに取り外し可能に構成してある請求項3記載の作業車のキャビン取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−80872(P2008−80872A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260673(P2006−260673)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】