説明

作業車の盗難防止装置

【課題】 作業車の盗難を防止する盗難防止装置を、既存の操作手段を用いて暗証データの入力が行えるようにして、安価に構成する。
【解決手段】 アウトリガ装置4,4をジャッキアップ状態にして作業車を保管する際に、電源スイッチ35をoff操作した時点で操作されている操作手段29,30,31,32の操作状態を暗証データとして操作状態記憶手段38に記憶し、作業車を稼働状態にする際に電源スイッチ35をon操作した時点で操作されている操作手段29,30,31,32の操作状態と前記操作状態記憶手段38に記憶されている暗証データとを照合し、両者の照合結果が同じであればアンロード弁23をオンロード状態に切換えるための弁切換信号を出力するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車や高所作業車等のアウトリガ装置を備えた作業車の盗難防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クレーン車や高所作業車等の作業車が夜間駐車場等で保管中に盗まれる盗難事件が増加しており、このための対策として作業車に盗難防止装置を取付けることが行われている。この種の作業車に取付けられる盗難防止装置としては、作業車に暗証番号を入力する暗証番号入力手段(キーボード等)を取付け、作業者が当該暗証番号入力手段で入力した番号と予め登録されている暗証番号とを照合し、照合結果が同じであれば作業車の稼働を許容し、異なっていれば稼働不能として、暗証番号を知らない第3者による盗難を防止するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)。また、作業車に盗難防止スイッチの操作で作業機駆動用の油圧回路をアンロード状態にするアンロード弁を取付け、作業車保管時に当該アンロード弁を作動させておき作業者が作業を始める際にアンロード状態を解除することで、盗難防止スイッチの取付け位置を知らない第3者による盗難を防止するようにしたものがある。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−50584号公報
【特許文献2】特開2003−261006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の盗難防止装置は、作業車に暗証番号を入力するための暗証番号入力手段や暗証番号を忘れた際の解除手段を取付ける必要があり、盗難防止装置が複雑で高価になるという問題があった。また、後者の盗難防止装置は、第3者に盗難防止スイッチの取付け位置を知られた場合には、容易に解除されるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、暗証番号入力手段等の付加装置を取付ける必要がなく作業車に装備されている既存の装置を利用して低コストに構成でき、しかも第3者による不正解除が難しい信頼性の高い作業車の盗難防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、次の如き構成を有している。
【0006】
すなわち、本発明の作業車の盗難防止装置は、車輌の運転室後方位置にジャッキアップ状態で車輌を走行不能に支持するアウトリガ装置と作業機を架装した作業車の盗難防止装置を対象にしている。
【0007】
そして、本発明の盗難防止装置は、作業機を駆動操作する複数の操作手段と電源スイッチを装備した遠隔操作装置、少なくとも前記アウトリガ装置を駆動する油圧回路に介装されアンロード状態への切換操作で駆動油をタンクに開放してアウトリガ装置の駆動を不能にするアンロード弁、前記遠隔操作装置の電源スイッチがoff操作された時点で操作されている操作手段の操作状態を記憶する操作状態記憶手段、及びコントローラとで構成され、当該コントローラはアウトリガ装置をジャッキアップ状態にして作業車を保管する際に前記電源スイッチをoff操作した時点で操作されている操作手段の操作状態を暗証データとして操作状態記憶手段に記憶させると共に、作業車を稼働状態にする際に電源スイッチをon操作した時点で操作されている操作手段の操作状態と前記操作状態記憶手段に記憶されている暗証データとを照合し、両者の照合結果が同じであれば前記アンロード弁をオンロード状態に切換えるための弁切換信号を出力するよう構成している。
【0008】
このように構成した盗難防止装置によれば、作業が終了して作業車を盗難の恐れがある駐車場等に保管する際には、まずアウトリガ装置をジャッキアップして車輌を走行不能状態(車輪が浮き上がり操舵・走行が行えない状態)にする。次に、遠隔操作装置の操作手段を通常とは異なる操作、例えば操作手段を「右旋回」と「ブーム倒伏」側に操作して電源スイッチをoff操作すればよい。これにより、コントローラは盗難防止モードに入り、電源スイッチがoff操作された時点での操作手段の操作状態(この場合は「右旋回」と「ブーム倒伏」)に対応した信号を操作状態記憶手段に出力して記憶(登録)させた後に、コントローラの主電源を絶って作業を終了するようになっている(暗証データの登録)。
【0009】
次に、作業を再開するために作業車を別の作業現場等に移動、あるいは作業車を稼働状態にするには、操作手段を電源スイッチoff操作時と同じ操作(この場合は「右旋回」と「ブーム倒伏」)をして電源スイッチをon操作すればよい。これにより、コントローラは盗難防止モードでの起動手順に従って、次の如く作業車を起動するようになっている。すなわち、コントローラは電源スイッチがon操作された時点での操作手段の操作状態(この場合は「右旋回」と「ブーム倒伏」)と、操作状態記憶手段に記憶されている電源スイッチoff操作時点での操作手段の操作状態(この場合は「右旋回」と「ブーム倒伏」)を照合し、両者の照合結果が同じであればアンロード弁をオンロード状態に切換えるための弁切換信号を出力してアウトリガ装置や作業機の駆動を可能にするようになっている。また、異なっていればアンロード弁をアンロード状態に切換えたままとしアウトリガ装置や作業機の駆動を不能にするようになっている。この場合は照合結果が「同じ」であるため、コントローラはアンロード弁をオンロード状態に切換えるための弁切換信号を出力して当該弁をオンロード状態に切換え、アウトリガ装置の格納操作や作業機の駆動再開を可能にするのである。このため、アウトリガ装置を格納すれば作業車を走行可能な状態に戻すことができ作業車の走行移動が可能になる他、作業機を駆動して作業の再開が可能になるのである(作業者による作業再開制御)。
【0010】
一方、暗証データを知らない第3者が通常通り(操作手段を何も操作しないで)遠隔操作装置の電源スイッチをon操作すれば、コントローラは盗難防止モードでの起動手順に従い電源スイッチがon操作された時点での操作手段の操作状態(この場合は「無操作」)と、操作状態記憶手段に記憶されている電源スイッチoff操作時点での操作手段の操作状態(この場合は「右旋回」と「ブーム倒伏」)とを照合し、この場合照合結果が「異なる」であるためコントローラはアンロード弁をアンロード状態に維持するための弁切換信号を出力して当該弁をアンロード状態に保持するようになっている。このため、アウトリガ装置の格納操作や作業機の駆動再開が不能になり、第3者による作業車の盗難が防止できるのである(第3者による盗難防止制御)。
【0011】
また、作業車を盗難の恐れがない管理された駐車場等で保管する場合には、作業終了時に通常通り(操作手段を何も操作しないで)電源スイッチをoff操作すればよい。この場合は、操作状態記憶手段に「無操作」が記憶(登録)されるので、作業者が作業を再開する際に、操作手段を何も操作せずに通常通り(無操作で)電源スイッチをon操作すればよい。これにより、従来と同じ操作で作業の再開が可能になるのである。
【0012】
なお、この盗難防止装置における暗証データ、すなわち電源スイッチoff操作時点での操作手段の操作状態は、例示した2操作の組合せに限定されるものでなく、第3者による解読が困難で、かつ作業者自身が覚え易い組合せであれば、単一操作(例えば、「ブーム縮小」操作のみ)や3操作以上の組合せ(例えば、「右旋回」と「ブーム倒伏」、「ブーム縮小」等の複合操作)にすることが可能である。このため、暗証データの組合せを比較的多く設定することができ、第3者が順次組合せを変更して解除しようとしても時間がかかり、高い盗難防止効果が得られるのである。また、暗証データの登録変更が容易であるため、暗証データの変更を定期的に行うようにすれば第3者が作業者の操作状態を見て暗証データを解読する危険性が減り、より高い盗難防止効果が得られるのである。
【発明の効果】
【0013】
以上の如く構成した作業車の盗難防止装置は、作業車に装備されている既存の操作手段を用いて暗証データの入力が行えるようにしたので、暗証番号入力手段を別途取付ける必要がなく構造が簡単で安価に構成することができる他、暗証データの組合せを比較的多く設定することができ第3者による不正解除が困難な信頼性の高い作業車の盗難防止装置が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、トラックの運転室と荷台間に小型クレーンを搭載して主として荷台上への荷物の積降し作業を行うよう構成したクレーン搭載式作業車に装備可能な盗難防止装置を例に、図1〜図2に基づき説明する。なお、本発明の盗難防止装置は、例示したクレーン搭載式作業車の他にジャッキアップ状態でトラックを走行不能に支持可能なアウトリガ装置を備えた高所作業車や、ホイールクレーン等の作業車に同様に装備可能である。
【実施例1】
【0015】
図1において、Aはトラック1の運転室2と荷台3間に位置するシャーシフレーム1a上にアウトリガ装置4,4を備えた小型クレーン5を搭載したクレーン搭載式作業車である。当該作業車Aにおける小型クレーン5は、左右に張出して設置可能なアウトリガ装置4,4を備えたクレーン基台6、当該クレーン基台6上に旋回モータ7によって旋回自在に取付けられた旋回ポスト8、当該旋回ポスト8の上部に起伏シリンダ9によって起伏自在に枢支され基端ブーム101内に先端側ブーム102,103・・を摺動自在に嵌挿して成る伸縮ブーム10、当該伸縮ブーム10内に配設され基端ブーム101に対し先端側ブーム102,103・・を伸縮駆動する伸縮シリンダ11、旋回ポスト8あるいは基端ブーム101に取付けられウインチモータ12によってフック吊持用ワイヤロープ13を巻上げ巻下げ駆動するウインチ装置14、及び当該ワイヤロープ13によって伸縮ブーム先端部10aから吊下げられたフックブロック15とで構成されている。
【0016】
前記アウトリガ装置4,4は、クレーン基台6に取付けられた外筒4aと、当該外筒4aの両端開口部から側方に張出し可能に嵌挿された左右の内筒4b,4b、当該左右の内筒4b,4bの先端部に垂設固着された左右のジャッキ4c,4cとで構成されている。このように構成されたアウトリガ装置4,4は、左右の内筒4b,4bを車輌側方に張出してジャッキ4c,4cをジャッキアップ状態にすれば、ジャッキ4c,4cと後輪1b,1bで作業車が安定支持され、クレーン作業が可能になるのである(図1鎖線図示状態)。また、ジャッキ4c,4cと左右の内筒4b,4bを格納すれば、作業車が走行可能状態となって作業現場等への走行移動が可能になるのである。なお、このアウトリガ装置4,4は、作業車を駐車場等に保管する際に左右のジャッキ4c,4cをジャッキアップ状態にしておけば、前輪1c,1c が浮上して走行不能状態となるため、作業車のエンジンを不正な手段で始動して作業車を盗む車輌盗難に対し大きな防止効果が得られるのである。
【0017】
次に、図2の作業車駆動回路について説明する。17は、電磁三位置切換弁で構成された旋回制御弁であり、右旋回位置への切換操作で油圧ポンプPが吐出する圧油を旋回モータ7に給排して旋回ポスト8を右旋回させ、左旋回位置への切換操作で圧油を旋回モータ7に給排して旋回ポスト8を左旋回させるようになっている。また、18は同様に電磁三位置切換弁で構成された起伏制御弁であり、起仰位置への切換操作で圧油を起伏シリンダ9に給排して伸縮ブーム10を起仰させ、倒伏位置への切換操作で圧油を起伏シリンダ9に給排して伸縮ブーム10を倒伏させるようになっている。また、19は同様に電磁三位置切換弁で構成された伸縮制御弁であり、伸長位置への切換操作で圧油を伸縮シリンダ11に給排して伸縮ブーム10を伸長させ、縮小位置への切換操作で圧油を伸縮シリンダ11に給排して伸縮ブーム10を縮小させるようになっている。また、20は同様に電磁三位置切換弁で構成されたウインチ制御弁であり、巻上げ位置への切換操作で圧油をウインチモータ12に給排してフックブロック15を巻上げ駆動させ、巻下げ位置への切換操作で圧油をウインチモータ12に給排してフックブロック15を巻下げ駆動させるようになっている。
【0018】
また、21は手動操作式三位置切換弁で構成されたアウトリガ制御弁であり、伸長位置への切換操作で左右のジャッキ4c,4c(ジャッキシリンダ22,22)に圧油を給排して作業車をジャッキアップし、格納位置への切換操作で左右のジャッキ4c,4cに圧油を給排して格納駆動するようになっている。
【0019】
23は、油圧ポンプPの吐出油路24に介装した主リリーフ弁であり、当該主リリーフ弁23のベント回路23aにはパイロットリリーフ弁23bとアンロード用開閉弁26が並列に介装されている。このため、当該開閉弁26を非励磁状態にして開弁すれば主リリーフ弁23の設定圧がタンク圧になってアンロード状態となり、励磁状態にして閉弁すれば主リリーフ弁23の設定圧がパイロットリリーフ弁23bの設定圧である高圧になってオンロード状態になる。このため、主リリーフ弁23はアンロード用開閉弁26の開弁・閉弁でアンロード状態とオンロード状態が切換わり、アンロード用開閉弁26と協働して請求項1におけるアンロード弁を構成するのである。なお、アンロード用開閉弁26は、非励磁状態で閉弁するよう構成した場合、第3者がアンロード用開閉弁26の励磁回路を切断すれば主リリーフ弁23がオンロード状態に切換わり作業車が自由に稼働可能な状態になるため、非励磁状態で開弁して主リリーフ弁23がアンロード状態になるよう使用するのがよい。また、クレーンにフックブロック15が過巻き状態(巻上げ上限位置)を超えて巻上げられるのを防止する過巻き防止装置が装備されており、この過巻き防止装置に過巻き検出スイッチの検出信号でクレーンの作動を停止させる作動停止手段として上記アンロード弁が装備されている場合には、当該アンロード弁を援用して用いることが可能である。この場合には、新しくアンロード弁を準備する必要がなく、より安価に構成することが可能である。
【0020】
28は、有線あるいは無線操作式の遠隔操作装置である。当該遠隔操作装置28の操作パネル28aには、旋回制御弁17を右あるいは左旋回位置に切換操作するための旋回操作手段29、起伏制御弁18を起仰あるいは倒伏位置に切換操作するための起伏操作手段30、伸縮制御弁19を伸長あるいは縮小位置に切換操作するための伸縮操作手段31、ウインチ制御弁20を巻上げあるいは巻下げ位置に切換操作するためのウインチ操作手段32が夫々取付けられている。また、グリップ裏面28bには、旋回・起伏・伸縮・ウインチの各駆動速度を指示する共通の速度指示レバー33が取付けられている。そして、当該遠隔操作装置28は、各操作手段29,30,31,32からの弁選択信号と共通の速度指示レバー33からの速度指令信号に基づき、操作した操作手段に対応した制御弁17,18,19,20を速度指示レバー33の操作量に対応した弁切換量に切換えるための操作信号を生成して後述するコントローラ36に送信するようになっている。このため、作業者は遠隔操作装置28の操作手段29,30,31,32を駆動したい方向に切換え共通の速度指示レバー33を操作して駆動速度を指示すれば、対応した操作信号がコントローラ36に出力されて作業機が駆動されるのである。なお、この実施形態では、弁の切換方向を指示する複数の操作手段と駆動速度を指示する共通の速度指示レバーを備えた遠隔操作装置を例に説明したが、複数の操作手段を操作量に応じた弁切換信号が出力されるポテンショメータ式の操作手段等で構成してもよい。また、制御弁の切換えが2値制御(on・off)で可能なアウトリガ装置等の操作には、弁の切換方向のみを指示するスイッチ式の操作手段で構成してもよい。この場合には、共通の速度指示レバーが不要となるのである。また、35は操作パネル28aに取付けた押ボタン式の電源スイッチであり、押操作によりコントローラ36の主電源37を操作するon・off信号を出力するようになっている。
【0021】
36は、クレーン本体に取付けたコントローラである。当該コントローラ36は、前記遠隔操作装置28から送信された操作信号を受信する受信部36aと、当該受信部36aで受信した操作信号に基づき対応する各制御弁17,18,19,20に弁切換操作信号を出力する弁切換信号出力部36b、受信部36aからの操作信号に基づき所定の盗難防止プログラムを実行する盗難防止制御部36cとで構成されている。
【0022】
38は、EEPROM等の不揮発性メモリで構成された暗証データ記憶用の操作状態記憶手段である。当該操作状態記憶手段38は、作業が終了して作業者が遠隔操作装置28の電源スイッチ35をoff操作した時に、コントローラ36からの指令信号に基づきoff操作信号入力時点で操作されている各操作手段29,30,31,32の操作状態を暗証データとして記憶すると共に、作業車を稼働状態にするため作業者が電源スイッチ35をon操作した時には、コントローラ36からの指令信号に基づき記憶した暗証データを盗難防止制御部36cに出力するようになっている。
【0023】
盗難防止制御部36cは、受信部36aから入力された操作信号と操作状態記憶手段38から読み出された暗証データに基づき、次の如き盗難防止プログラムを実行するようになっている。すなわち、盗難防止制御部36cは、作業が終了して作業車を保管するため作業者が遠隔操作装置28の電源スイッチ35をoff操作すれば、このoff操作信号に基づき当該信号入力時点で操作されている各操作手段29,30,31,32の操作状態、例えば作業者が暗証データを登録するため旋回操作手段29を「右旋回」側に、起伏操作手段30を「倒伏」側に夫々操作して電源スイッチ35をoff操作した場合には、off操作信号入力時点で操作されている「右旋回」と「倒伏」に対応した信号を前記操作状態記憶手段38に出力して当該信号を暗証データとして記憶(登録)させ、その後主電源37にoff信号を出力してコントローラ36の電源を絶つようになっている。これにより、電源スイッチoff操作時の各操作手段29,30,31,32の操作状態が盗難防止用の暗証データとして操作状態記憶手段38に記憶されるのである。そして、この暗証データは、不揮発性メモリで構成された操作状態記憶手段38に記憶されるため、コントローラ36の電源を絶つ作業車保管中も記憶が保持されるのである。
【0024】
また、盗難防止制御部36cは、作業車を稼働状態にするために作業者が遠隔操作装置28の電源スイッチ35をon操作すれば、先ず主電源37にon信号を出力してコントローラ36の電源を入れ、その後操作状態記憶手段38に読出指令信号を出力して登録されている暗証データ(電源スイッチoff操作時点での各操作手段29,30,31,32の操作状態に対応した信号)を読出し、この読出した暗証データと電源スイッチon操作時点で操作されている各操作手段29,30,31,32の操作状態を照合して、両者の照合結果が「同じ」であれば前記アンロード用開閉弁26に励磁信号(閉弁信号)を出力して主リリーフ弁23をオンロード状態に切換え、照合結果が「異なる」であればアンロード用開閉弁26を非励磁状態(開弁状態)に維持して主リリーフ弁23をアンロード状態に保持するようになっている。
【0025】
例えば、暗証データを知っている作業者が作業車を稼働状態にするために電源スイッチoff操作時と同じ操作である旋回操作手段29を「右旋回」側に、起伏操作手段30を「倒伏」側に夫々操作して電源スイッチ35をon操作した場合には、盗難防止制御部36cは操作状態記憶手段38から読み出した暗証データ(この場合は、「右旋回」と「倒伏」に対応した信号)と、遠隔操作装置28から入力されている「右旋回」と「倒伏」に対応した信号を照合し、この場合照合結果が「同じ」であるのでアンロード用開閉弁26に励磁信号を出力して主リリーフ弁23をオンロード状態に切換えるようになっている。これにより、油圧ポンプPからの駆動油が各制御弁17,18,19,20に供給され、作業機が稼働状態になるのである。
【0026】
一方、暗証データを知らない第三者が通常通り何も操作せずに(あるいは、電源スイッチoff操作時とは異なる操作をして)電源スイッチ35をon操作した場合には、遠隔操作装置28から「無操作」(あるいは、異なる操作)に対応した信号が入力されるので、盗難防止制御部36cはこの入力信号と操作状態記憶手段38から読み出した暗証データ(この場合は、「右旋回」と「倒伏」に対応した信号)とを照合し、この場合照合結果が「異なる」であるのでアンロード用開閉弁26に非励磁信号を出力して主リリーフ弁23をアンロード状態に保持し、油圧ポンプPからの駆動油をタンクに開放して作業機の駆動を不能にするようになっている。
【0027】
このため、例え第3者が不正な手段で作業車のエンジンを始動し作業車を盗もうとしても、暗証データと同じ解除操作(電源スイッチoff操作時と同じ操作をして電源スイッチをon操作する)をしない限り作業車を稼働状態にすることができず、第3者による盗難が効果的に防止できるのである。また、暗証データの入力手段として、遠隔操作装置に通常装備されている複数の操作手段を利用したので、専用の暗証番号入力手段を別途用意する必要がなく、安価に構成することができるのである。また、通常この種の作業車には、複数の操作手段が装備されているため、暗証データの組合せ数を実用上充分な数に設定可能である。このため、第3者による解読が難しい信頼性の高い盗難防止装置とすることができるのである。
【0028】
なお、この盗難防止装置では、電源スイッチon操作時点での各操作手段29,30,31,32の操作状態で作業者の認証を行うようになっているため、電源スイッチ35のon操作でコントローラ36の電源が投入された時には、少なくとも1以上の操作手段が操作状態になっている。このため、コントローラ36の電源投入と同時に操作状態にある操作手段29,30,31,32に対応した制御弁17,18,19,20に弁切換信号が出力されると、作業車が作業者の意図しない動きをして危険である。このため、弁切換信号出力部36bからの弁切換信号を、作業者が意図して遠隔操作装置28の速度指示レバー33を操作しない限り出力されないよう構成するのがよい。なお、速度指示レバー33の中立位置調整不良や誤操作等により速度指令信号が出力される懸念がある場合には、主電源37投入直後の弁切換操作信号の出力を規制し、一旦全ての操作手段29,30,31,32を中立位置に戻した後に再び操作手段29,30,31,32を操作した時に初めて対応する制御弁17,18,19,20に弁切換操作信号を出力するよう構成してもよい。
【0029】
また、作業者が暗証データを忘れる恐れがある場合には、「無操作」以外の緊急解除用の暗証データを設定しておき、作業者が暗証データを忘れた場合にはこの緊急解除用暗証データに基づいて操作手段29,30,31,32を操作して電源スイッチ35をon操作することで、盗難防止モードを解除可能に構成してもよい。
【0030】
次に、この盗難防止装置の作動について説明する。
【0031】
始めに、作業が終了して作業車を駐車場等に保管する手順について説明する。
【0032】
作業車を保管する際に盗難防止機能を働かせておきたい場合には、まず作業車の左右のジャッキ4c,4cをジャッキアップ状態にして、車輌1前部を浮上させた走行不能状態にする。これは、作業車保管時に車輌1前部を浮上させた走行不能状態にすることで、第3者が不正な手段でエンジンを始動して作業車を盗もうとした場合でも、一旦ジャッキ4c,4cを格納して走行可能状態に戻さなければ走行することができず盗難防止効果が高くなるためである。次に、伸縮ブーム10を所定の格納旋回位置に旋回し、最縮小・最倒伏させた作業車格納状態にする(図1参照)。この際、故意に伸縮ブーム10を起仰、あるいは伸長させた状態にしておけば、第3者が作業車を盗もうとした場合に更に伸縮ブーム10を格納駆動する必要があり、盗難者がこの時間を嫌って盗むのを諦める可能性が高くなるという効果か期待できるのである。なお、アウトリガ装置4,4の左右への張出しは、駐車状態であるため車幅内に格納した格納状態で充分である。
【0033】
次に、作業者は遠隔操作装置28の操作手段29,30,31,32を、第3者による解読が難しくかつ自分が覚え易い組合せ(なるべく2操作以上の組合せが良い)に操作して、電源スイッチ35をoff操作すればよい。これにより、各操作手段29,30,31,32の操作状態に対応した信号は、暗証データとしてコントローラ36に送信され、これを受けた盗難防止制御部36cはoff操作信号入力時点で操作されている操作手段29,30,31,32の操作状態、例えば作業者が旋回操作手段29を「右旋回」側に、起伏操作手段30を「倒伏」側に夫々操作して電源スイッチ35をoff操作した場合には、off操作信号入力時点で操作されている「右旋回」と「倒伏」に対応した信号を操作状態記憶手段38に出力して暗証データとして記憶し、その後主電源37にoff信号を出力してコントローラ36の電源を絶つようになっている。これにより、電源スイッチoff操作時点での各操作手段29,30,31,32の操作状態が、暗証データとして操作状態記憶手段38に記憶されるのである。
【0034】
次に、作業を再開するために作業車を別の作業現場に移動、あるいは作業車を稼働状態にする手順について説明する。
【0035】
作業車を稼働状態にするには、作業者は遠隔操作装置28の操作手段29,30,31,32を暗証データとして登録した電源スイッチoff操作時と同じ操作をして電源スイッチ35をon操作すればよい。これにより、盗難防止制御部36cは、操作状態記憶手段38から読み出した暗証データに対応した信号と、電源スイッチon操作時点で入力されている操作手段29,30,31,32の操作状態に対応した信号とを照合し、照合結果が「同じ」であればアンロード用開閉弁26に励磁信号(閉弁信号)を出力して主リリーフ弁23をオンロード状態に切換え、照合結果が「異なる」であればアンロード用開閉弁26に非励磁信号を出力して主リリーフ弁23をアンロード状態に保持するようになっている。例えば、電源スイッチoff操作時に旋回操作手段29を「右旋回」側に、起伏操作手段30を「倒伏」側に夫々操作して、暗証データとして「右旋回」と「倒伏」に対応した信号が登録されている場合には、作業者が電源スイッチoff操作時と同じ操作である旋回操作手段29を「右旋回」側に、起伏操作手段30を「倒伏」側に夫々操作して電源スイッチ35をon操作すれば、これを受けた盗難防止制御部36cは操作状態記憶手段38から読出した暗証データ(この場合は、「右旋回」と「倒伏」に対応した信号)と遠隔操作装置28から入力されている「右旋回」と「倒伏」に対応した信号とを照合し、この場合照合結果が「同じ」であるのでアンロード用開閉弁26に励磁信号を出力して主リリーフ弁23をオンロード状態に切換えるようになっている。このため、油圧ポンプPからの駆動油が各制御弁17,18,19,20に供給されて作業機の駆動が可能になり、アウトリガ装置4,4を格納駆動して作業車を走行可能状態に戻せば作業現場等への走行移動が可能になり、また作業機を駆動して作業再開が可能になるのである。
【0036】
次に、暗証データを知らない第3者が作業車を盗もうとした場合について説明する。
【0037】
暗証データを知らない第3者が、電源スイッチoff操作時とは異なる操作、例えば操作手段29,30,31,32を何も操作せずに通常通り電源スイッチ35をon操作した場合には、遠隔操作装置28から「無操作」に対応した信号が入力されているので、盗難防止制御部36cはこの入力信号と操作状態記憶手段38から読み出した暗証データ(この場合は、「右旋回」と「倒伏」に対応した信号)とを照合し、この場合照合結果が「異なる」であるのでアンロード用開閉弁26に非励磁信号を出力して主リリーフ弁23をアンロード状態に保持するようになっている。これにより、油圧ポンプPからの駆動油がタンクに開放されて作業機の駆動が不能になり、アウトリガ装置4,4の格納駆動ができなくなるので第3者による作業車の盗難が未然に防止できるのである。
【0038】
なお、作業車を盗難の恐れがない管理された駐車場等に保管する場合には、操作手段29,30,31,32を何も操作せずに通常通り電源スイッチ35をoff操作すればよい。この場合は、操作状態記憶手段38に暗証データとして「無操作」に対応した信号が登録されるので、作業車を稼働状態にする際には電源スイッチoff操作時と同じ操作である操作手段29,30,31,32を何も操作せずに通常通り電源スイッチ35をon操作すればよいのである。これにより、従来の作業車と同じ手順による作業車の保管と、稼働状態への移行が可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の盗難防止装置を装備した作業車の構成を説明する説明図である。
【図2】同、盗難防止装置の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0040】
A 作業車、
1 トラック、
1a シャーシフレーム、
2 運転室、
3 荷台、
・ アウトリガ装置、
5 小型クレーン、
6 クレーン基台、
7 旋回モータ、
8 旋回ポスト、
9 起伏シリンダ、
10 伸縮ブーム、
101 基端ブーム、
102,103 先端側ブーム、
11 伸縮シリンダ、
12 ウインチモータ、
13 フック吊荷用ワイヤロープ、
14 ウインチ装置、
15 フックブロック、
17 旋回制御弁、
18 起伏制御弁、
19 伸縮制御弁、
20 ウインチ制御弁、
21 アウトリガ制御弁、
23 主リリーフ弁、
23a ベント回路、
23b パイロットリリーフ弁、
26 アンロード用開閉弁、
28 遠隔操作装置、
28a 操作パネル、
29 旋回操作手段、
30 起伏操作手段、
31 伸縮操作手段、
32 ウインチ操作手段、
33 速度指示レバー、
35 電源スイッチ、
36 コントローラ、
36a 受信部、
36b 弁切換信号出力部、
36c 盗難防止制御部、
37 主電源、
38 操作状態記憶手段、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の運転室後方位置にジャッキアップ状態で車輌を走行不能に支持するアウトリガ装置と作業機を架装した作業車の盗難防止装置であって、
作業機を駆動操作する複数の操作手段と電源スイッチを装備した遠隔操作装置、少なくとも前記アウトリガ装置を駆動する油圧回路に介装されアンロード状態への切換操作で駆動油をタンクに開放してアウトリガ装置の駆動を不能にするアンロード弁、前記遠隔操作装置の電源スイッチがoff操作された時点で操作されている操作手段の操作状態を記憶する操作状態記憶手段、及びコントローラとで構成され、当該コントローラはアウトリガ装置をジャッキアップ状態にして作業車を保管する際に前記電源スイッチをoff操作した時点で操作されている操作手段の操作状態を暗証データとして操作状態記憶手段に記憶させると共に、作業車を稼働状態にする際に電源スイッチをon操作した時点で操作されている操作手段の操作状態と前記操作状態記憶手段に記憶されている暗証データとを照合し、両者の照合結果が同じであれば前記アンロード弁をオンロード状態に切換えるための弁切換信号を出力するよう構成したことを特徴とする作業車の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−1421(P2006−1421A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180177(P2004−180177)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】