説明

係止装置

【課題】係止部材をプリント基板等の被係止部材へ確実且つ容易に取り付けることができる上、取り外しも容易に行うことができ再利用することも可能な取り扱い性に優れた係止装置を提供する。
【解決手段】被係止部材であるプリント基板2に円孔部60及び長孔部62からなる取付孔64を穿設し、係止部材であるワイヤクリップ1に上記円孔部に回動自在に嵌合する柱部32、上記プリント基板を挟持するアーム部30及び脚部34からなる係止部30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止装置に係り、詳しくはプリント基板等の被係止部材及び当該被係止部材に実装されるワイヤクリップ等の係止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれるプリント基板等には、通常、多数の回路素子が実装されているとともに、電源線や信号線等の各種電線類をプリント基板に沿って引き回すことも多い。そして、これら多数の電線類がバラバラに敷設されると、見栄えが悪いことのみならずプリント基板上の回路素子との間で干渉が生じたり、プリント基板に対する保守等の作業性が悪くなる要因となる。
【0003】
そこで従来においては、専ら、複数本の電線をまとめて結束バンドで束ねたり、或いはプリント基板に合成樹脂製のワイヤクリップ等を実装して複数本の電線をまとめて保持するようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−247357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような合成樹脂製のワイヤクリップのプリント基板への実装は、専ら、ねじ等の固定具を用いて行われており、半田付けする場合には、予め合成樹脂製のワイヤクリップに金属製の端子ピン等を装着するようにしている。このため、一旦、プリント基板にワイヤクリップを装着した後には、プリント基板からの取り外しが非常に困難である上、そのまま再利用できない等の問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、プリント基板等の被係止部材に実装されるワイヤクリップ等の係止部材の取り付け及び取り外しを容易且つ安定的に行うことができる上、容易に再利用することもできる取り扱い性に優れた係止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の係止装置では、円孔部及び該円孔部を中心に対向した方向に延びた長孔部からなる取付孔が穿設された板状の被係止部材と、前記円孔部に軸回り方向に回動自在に嵌合可能な円柱形状の軸部、該軸部の軸方向一側に配設され、該軸部とT字状をなすように前記軸部の軸直方向に延び、且つ前記取付孔を貫通可能な脚部、及び、前記軸部の軸方向他側に配設され、前記軸部の軸直方向及び該軸方向一側に向かって延び且つ前記軸部の軸方向に弾性変形可能であり、先端と前記脚部との前記軸部の軸方向における間隔が前記被係止部材の板厚以下となるよう形成された一対のアーム部を有する係止部材とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の係止装置では、請求項1において、前記係止部材の前記アーム部は、前記軸部の軸直方向にして前記脚部とは異なる方向に延び、該アーム部の先端は前記軸部の軸方向他側に屈曲して延出し、該屈曲部分には該軸方向一側に突出した突出片が設けられており、前記被係止部材には、前記脚部を前記取付孔に貫通させ前記係止部材の前記軸部を前記円孔部に嵌合させ回動させることで描かれる前記突出片の軌跡上の所定の位置に前記突出片が係合可能なロック孔が穿設されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の係止装置では、請求項2において、前記被係止部材には、前記ロック孔が前記取付孔と一体に穿設されていることを特徴としている。
請求項4の係止装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記被係止部材は、電線類が敷設されるプリント基板であり、前記係止部材は、前記アーム部の前記軸部の軸方向他側に基台部が形成され、該基台部に前記電線類を保持可能なクリップ片が形成されたワイヤクリップであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記手段を用いる本発明の請求項1の係止装置によれば、被係止部材の取付孔に係止部材の脚部を貫通させ且つ軸部を円孔部に嵌合させるよう挿入し、脚部の長手方向と長孔部の長手方向とが異なるよう軸部を軸回りで回動させることで、被係止部材が脚部と一対のアーム部との間に挟持され、係止部材が被係止部材に対し係止状態とされる。
したがって、脚部を被係止部材の取付孔に挿入し軸部を円孔部で回動させるだけの簡単な作業により係止部材を被係止部材に係止状態とすることができる。
【0010】
また、係止部材のアーム部の先端と脚部との間隔は被係止部材の板厚よりも短いことから係止状態において確実に被係止部材を挟持することができ、このように被係止部材を確実に挟持することで当該係止部材のガタツキ等も防止され、安定した係止状態を保つことができる。さらに、当該アーム部は脚部側に斜めに延びた形状をなし、弾性変形可能であることから、被係止部材の板厚が変更されても当該アーム部の弾性変形の量が変化し、当該係止部材をそのまま適用することができる。
【0011】
一方、係止部材の脚部の長手方向と取付孔の長孔部の長手方向とを合わせるよう係止部材を回動させることで係止状態は解除されることから、特に治具等を使用する必要もなく、簡単な作業で係止部材の取り外しを行うことができる。
そして、係止部材の取り付け及び取り外しに際し、当該係止部材及び被係止部材を破損等させることはないことから容易に再利用することができる。
【0012】
以上のことから、当該係止装置では、被係止部材に実装される係止部材の取り付け及び取り外しを容易且つ安定的に行うことができる上、容易に再利用することもできる。
請求項2の係止装置によれば、被係止部材の取付孔に係止部材の脚部を貫通させ且つ軸部を円孔部に嵌合させるよう挿入し、脚部の長手方向と長孔部の長手方向とが異なるよう軸部を軸回りで回動させることで、被係止部材が脚部と一対のアーム部との間に挟持され、係止部材が被係止部材に対し係止状態とされるが、この際、突出片がロック孔に係合されることで該係止部材の回動がロックされて係止ロック状態とされる。
【0013】
即ち、係止部材のアーム部先端に突出片が設けられ、被係止部材に当該突出片と係合するロック孔が穿設されていることで、係止部材を被係止部材の取付孔に挿入し回動させるだけの簡単な作業により当該係止部材を係止状態及び係止ロック状態とすることができる。
そして、このように係止状態をロックすることができることで、振動等により係止部材が回動し脚部の長手方向と長孔部の長手方向とが合い意図せずに係止状態が解除されるようなことを防止することができ、確実に係止状態を保つことができる。
【0014】
そして、係止ロック状態は、例えばアーム部の先端側から屈曲して延出した部分を摘んで持ち上げるだけの簡単な作業で解除することができる。
また、当該係止ロック及び解除に際しても、当該係止部材及び被係止部材を破損等させることはないことから容易に再利用することができる。
請求項3の係止装置によれば、被係止部材において取付孔とロック孔を一体に穿設することで、当該被係止部材の構成を簡易なものとすることができる。
【0015】
請求項4の係止装置によれば、当該被係止部材をプリント基板とし、係止部材をアーム部の一側に基台部及びクリップ片が形成されたワイヤクリップとすることで、簡単な作業で当該ワイヤクリップの取り付け取り外しを行うことができる上、当該ワイヤクリップによりプリント基板上の電線類を安定的に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まず、第1実施例について説明する。
図1乃至図4を参照すると、図1には本発明の第1実施例に係る係止装置のワイヤクリップの斜視図が、図2にはワイヤクリップの正面図が、図3にはワイヤクリップのプリント基板への取付図が、図4にはプリント基板に穿設された取付孔の上面視図がそれぞれ示されている。
【0017】
図1乃至図4に示すワイヤクリップ1は、被係止部材であるプリント基板2に係止される合成樹脂性の係止部材であり、当該プリント基板2に沿って敷設される電源線や各種信号線等の電線4を束ねて保持するものである。
ワイヤクリップ1は主として基台部10、電線4を保持するクリップ部12、及びプリント基板2に係止される係止部14から構成されている。なお、以下の説明においてワイヤクリップ1のクリップ部12側を上方(軸方向他側)、係止部14側を下方(軸方向一側)とする。
【0018】
基台部10は一方向に延びた肉厚の略直方体状をなしている。
クリップ部12には、基台部10の長手方向両端部分からそれぞれ略直角に上方に向けて延びる板状の側片部20a、20bと、当該側片部20a、20bの上端からそれぞれ内側に延びる板状の爪部22a、22bとからなる一対のクリップ片24a、24bが形成されている。
【0019】
当該クリップ片24a、24bの爪部22a、22bの先端側は、基台部10側に向けて斜めに傾斜した形状をなしている。そして、一方の爪部22aは先端まで直線形状であるのに対し、他方の爪部22bは一方の爪部22aとの近接部分において、当該一方の爪部22aの先端と所定の間隔を有しつつ、当該一方の爪部の22bの先端を覆うように湾曲しながら下方へ延びた形状をなしている。
【0020】
このようにクリップ部12は、上方部分に爪部22a、22bにより形成された浅いV字形状の凹部を有しており、クリップ部12全体としては前記基台部10とともに略矩形状の枠を形成している。
当該一対のクリップ片24a、24bは弾性変形可能であり、爪部22a、22bによって形成される前記V字形状部分に電線4を押し込むことにより爪部22a、22bが弾性変形し、これに伴って拡がる爪部22a、22b間の隙間を通して電線4が枠内に押し込まれる。電線4が押し込まれた後には、爪部22a、22bの弾性復帰に伴って当該爪部22a、22b間の隙間が狭められ、また上述した如く斜めに傾斜した爪部22a、22bの形状と相俟って、電線4が枠内から抜け出るのを阻止するようになっている。
【0021】
一方、係止部14は、基台部10の下面に配設されているアーム部30、当該アーム部30の下面から下方に延びている軸部32、及び当該軸部32の下面に連結されている脚部34から構成されている。
詳しくは、アーム部30には、基台部10の下面中央部から所定の間隔を有しつつ平行に下方に延びた一対の柱部40a、40bが形成されており、それぞれの柱部40a、40bの側面からは基台部10の長手方向外側に向かって延びたアーム片42a、42bが形成されている。
【0022】
当該アーム片42a、42bは柱部40a、40bから円弧状に湾曲しながら斜め下方に延びた板形状をなしている。また、当該アーム片42a、42bの付根部分の下部には幅方向に延びた溝部44a、44bが形成されており、当該アーム片42a、42bは上下方向に弾性変形可能である。
当該アーム片42a、42bの先端は基台部10の両端よりも長手方向外側に位置している。そして、当該アーム片42a、42bの先端は略L字状に上方に屈曲しており、当該屈曲部分からは延出部46a、46bが形成されている。
【0023】
当該延出部46a、46bの外側面には、幅方向に延びた複数の溝からなる蛇腹面が形成されており、一対の延出部46a、46bを摘みやすくなっている。なお、当該アーム部30の柱部40a、40b、アーム片42a、42b、及び延出部46a、46bの幅寸法は上記基台部10下面の幅寸法と同じである。
また、アーム片42a、42b先端の屈曲部分の下面には、当該アーム片42a、42bの幅方向中央部分から下方に突出した突出片48a、48bが形成されている。当該突出片48a、48bは正面視において下方に鋭角な略三角柱形状をなしている。
【0024】
軸部32には、上記アーム部30の柱部40a、40bのそれぞれの下面から下方に延びる一対の半円柱部50a、50bが形成されている。当該半円柱部50a、50bは、上記アーム部30の柱部40a、40bと同様に所定の間隔を有し、一対で上下方向を軸方向とした一つの円柱形状を形成するものである。なお、当該半円柱部50a、50bにより形成される円柱の直径は上記基台部10の幅寸法よりも小に形成されている。
【0025】
脚部34は、上記軸部32における一対の半円柱部50a、50bのそれぞれの下面に跨り、基台部10の幅方向を長手方向として延びる略直方体状の棒形状をなしている。
つまり、当該脚部34は、軸部32とT字状をなすように上記基台部10及びアーム部30に対して垂直方向に延びている。また、当該脚部34の長手方向長さは上記基台部10の幅寸法よりも長く、方向は異なるが上記アーム部30の一対の突出片48a、48b間の間隔よりも短く形成されている。また、当該脚部34の幅寸法は上記軸部32の半円柱部50a、50b間の間隔よりも僅かに長く、方向は異なるが上記アーム部30の突出片48a、48bの幅寸法より僅かに短く形成されている。
【0026】
さらに、当該脚部34の上面位置は、上下方向においてアーム部30の突出片48a、48bの先端位置よりも僅かに上側に位置している。
一方、図3、4に示すようにプリント基板2には、円孔部60及び当該円孔部60を中心に対向した方向に延びた長孔部62からなる取付孔64が穿設されている。
当該取付孔64の円孔部60は、上記ワイヤクリップ1における係止部14の軸部32の径よりも僅かに大径であり、当該軸部32が回動自在に嵌合するよう形成されている。
【0027】
また、当該取付孔64の長孔部62の長手方向長さは、上記ワイヤクリップ1におけるアーム部30の一対の突出片48a、48b間の間隔よりも僅かに長く、幅寸法は当該突出片48a、48bの幅寸法より長く且つアーム片42a、42bの幅寸法よりも短く形成されている。したがって、当該取付孔64には、上記ワイヤクリップ1の脚部34が貫通可能である。
【0028】
そして、取付孔64を有するプリント基板2に上記ワイヤクリップ1は取り付けられる。
以下このように構成された本発明の第1実施例に係る係止装置におけるワイヤクリップの取り付け方法及び取り外し方法について説明する。
図5乃至図7を参照すると、図5には図3(b)の状態における下面視図が、図6には図3(c)の状態における正面図が、図7にはワイヤクリップの係止ロック解除時における正面図が、図8にはプリント基板の板厚を変更した場合におけるワイヤクリップの係止状態の正面図がそれぞれ示されている。以下、上記図3乃至図8に基づき説明する。
【0029】
まず、図3(b)及び図5に示すように、プリント基板2の取付孔64にワイヤクリップ1を挿入し、係止部14の脚部34を貫通させ且つ軸部32を円孔部60に嵌合させる。このとき、当該ワイヤクリップ1が取付孔64に挿入されていくことで、脚部34上面より下側に位置しているアーム部30の突出片48a、48bはプリント基板2の上面と当接し、当該突出片48a、48bはアーム片42a、42bが上方に弾性変形する弾性力によりプリント基板2の上面を押圧することとなる。
【0030】
そして、ワイヤクリップ1の脚部34が取付孔64を貫通するまで挿入された後、軸部32の軸回り方向にワイヤクリップ1を回動させる。これにより、脚部34はプリント基板2の下面を、アーム部30の突出片48a、48bはプリント基板2の上面を、それぞれ摺動しながら回動する。つまり、ワイヤクリップ1は、脚部34及びアーム部30の突出片48a、48bによりプリント基板2の上下面を挟持しながら回動する。
【0031】
そして、このようにワイヤクリップ1を回動させ、当該ワイヤクリップ1の脚部34の長手方向と、取付孔64の長孔部62の長手方向とを異ならせることで、当該ワイヤクリップ1の抜けが防止された係止状態となる。
また、図3(c)及び図6に示すように、当該ワイヤクリップ1を取付孔64に挿入した位置から軸部32の軸回り方向に90度回動させることでアーム部30の突出片48a、48bが取付孔64の長孔部62の両端部分に到達し、アーム片42a、42bの弾性力により突出片48a、48bは当該長孔部62に係合する。このように突出片48a、48bが長孔部62に係合することで、当該ワイヤクリップ1のそれ以上の回動はロックされ、係止ロック状態となる。
【0032】
また、突出片48a、48bが長孔部62に係合すると当該突出片48a、48bの周辺部分、即ちアーム片42a、42b先端の屈曲部分がプリント基板2の上面と当接し、当該アーム片42a、42bの屈曲部分においてプリント基板2を押圧することとなる。なお、突出片48a、48bが長孔部62に係合する際、弾性力によりアーム片42a、42bが突出片48a、48bの高さ分下がり、且つアーム片42a、42bの屈曲部分がプリント基板2と接触することで振動や音が発生し、作業者に係止ロック状態となったことが伝達される。
【0033】
そして、当該係止ロック状態のワイヤクリップ1のクリップ部12に電線4を押し込み、当該電線4を保持させる。
一方、当該ワイヤクリップ1の係止ロック状態の解除は、図7に示すように、アーム部30の一対の延出部46a、46bの外側面を摘み持ち上げることで、アーム片42a、42bを上方に弾性変形させ突出片48a、48bを長孔部62から離脱させることで可能である。
【0034】
そして、係止ロック状態を解除し、ワイヤクリップ1を再度90度回動させ脚部34の長手方向と長孔部62の長手方向とを合わせることで係止状態は解除され、当該ワイヤクリップ1の取り外しが可能となる。
また、当該ワイヤクリップ1はプリント基板2の板厚が変更した場合にも、そのまま適用が可能である。
【0035】
例えば図8に示すように、上記取付孔64と平面視同形状の取付孔64’が穿設され、上記プリント基板2よりも板厚を厚くしたプリント基板2’にワイヤクリップ1を取り付ける場合でも、当該ワイヤクリップ1のアーム片42a、42bの弾性変形量が増加するだけで、上記と同じ方法で取り付け及び取り外しを行うことができる。
当該ワイヤクリップ1のように弾性変形可能なアーム片42a、42bが斜め下方に延びており、当該アーム片42a、42bの先端に形成されている突出片48a、48bが脚部34の上面位置より下側に位置した構成であれば、係止状態において必ず当該プリント基板を挟持することができ、板厚を変更したプリント基板にもそのまま適用することが可能である。
【0036】
以上のように、本発明に係る係止装置では、ワイヤクリップ1をプリント基板2の取付孔64に挿入し回動させるだけの簡単な作業により係止状態及び係止ロック状態とすることができる。
即ち、当該係止装置は取付孔64にワイヤクリップ1の突出片48a、48bを係合させるだけで係止ロック状態とすることができ、特にロック機構等を設ける必要なくプリント基板2の構成を簡易なものにすることができる。
【0037】
また、ワイヤクリップ1は係止状態においてプリント基板2の上下面を挟持することで当該ワイヤクリップ1のガタツキ等が防止され、安定した係止状態を保つことができる。
さらに、ワイヤクリップ1の係止状態において、プリント基板2の下方には脚部34が存在するのみであることから、当該プリント基板2下の省スペース化を図ることもできる。
【0038】
また、ワイヤクリップ1の取り外しに関しても、特に治具等を使用する必要もなく、アーム部30の一対の延出部46a、46bを摘んで持ち上げるだけで係止ロック状態を解除することができ、さらに脚部34の長手方向と長孔の長手方向とを合わせるよう回動させるだけで係止状態を解除することができることから、簡単な作業でワイヤクリップ1の取り外しを行うことができる。
【0039】
また、ワイヤクリップ1の取り付け及び取り外しに際し、当該ワイヤクリップ1及びプリント基板2に破損等はないことから、当該ワイヤクリップ1及びプリント基板2を容易に再利用することができる。
このように、当該係止装置では、プリント基板2に実装されるワイヤクリップ1の取り付け及び取り外しを容易且つ安定的に行うことができる上、容易に再利用することができる。
【0040】
次に第2実施例について説明する。
図9を参照すると、本発明の第3実施例に係る係止装置のワイヤクリップ挿入時のプリント基板下面視図が示されている。
当該第2実施例では、係止部材として上記第1実施例と同様のワイヤクリップ1を使用している。
【0041】
一方、被係止部材であるプリント基板70には、図9に示すように、円孔部72及び当該円孔部72を中心に対向した方向に延びた長孔部74からなる取付孔76が穿設されている。当該長孔部74の長手方向長さは、ワイヤクリップ1の脚部34の長手方向より僅かに長く、アーム部30の一対の突出片48a、48b間の間隔よりも短く形成されている。また、当該長孔部74の幅寸法は、ワイヤクリップ1のアーム部30の突出片48a、48bの幅寸法より長く且つアーム片42a、42bの幅寸法よりも短く形成されている。
【0042】
このように、当該2実施例における取付孔76の長孔部74は上記第1実施例の取付孔64の長孔部62よりも長手方向に短い形状をなしており、ワイヤクリップ1の脚部34の貫通は可能であるが、突出片48a、48bの係合は不可能である。
一方、当該プリント基板70には、取付孔76とは別に一対のロック孔78a、78bが穿設されている。
【0043】
当該ロック孔78a、78bは、長孔部74より外側且つ長手方向に対し円孔部72を中心に45°の位置に穿設されている。つまり、当該ロック孔78a、78bは、軸部32を円孔部72に嵌合させたワイヤクリップ1を、45°回動させたときに突出片48a、48bが位置する位置に穿設されている。
当該ロック孔78a、78bはワイヤクリップ1の回動方向に沿った矩形状をなしており、長孔部74の幅方向と同様の幅寸法に形成されている。したがって、ロック孔78a、78bは当該ワイヤクリップ1の突出片48a、48bが係合可能である。
【0044】
このように構成された本発明の第2実施例に係る係止装置におけるワイヤクリップ1の取り付け方法では、ワイヤクリップ1を取付孔76に挿入した位置から軸部32の軸回り方向に45°回動させることでアーム部30の突出片48a、48bがロック孔78a、78bに係合し、当該ワイヤクリップ1は係止ロック状態となる。当該係止ロック状態の解除やワイヤクリップ1の取り外し等は上記第1実施例と同様である。
【0045】
以上のように当該第2実施例では、取付孔76とロック孔78a、78bとが別体に穿設されており、これにより、例えばプリント基板70のレイアウト上ワイヤロックを90°回動させることができない場合等であっても当該係止装置を適用することができ、レイアウト性を向上させることができる。
次に第3実施例について説明する。
【0046】
図10を参照すると、本発明の第3実施例に係る係止装置の係止部材の正面図が示されている。
図10に示すように、当該第3実施例における係止部材80は、上記第1実施例のプリント基板2等に実装されるワイヤピンである。
詳しくは、当該係止部材80は、円柱状の基台部82を有しており、当該基台部82の下面に上記第1実施例のワイヤクリップ1の係止部14と同様の係止部84が配設されている。
【0047】
当該係止部材80の基台部82の上面には嵌合孔86が形成されており、当該嵌合孔86に棒状体88の一端が嵌合されている。
当該棒状体88は屈曲自在であり、好ましくは棒状体88の周囲を絶縁体のチューブで被覆される。
当該係止部材80は、係止部84を上記第1実施例のようにプリント基板2に係止及び係止ロックさせることで取り付けられ、棒状体88を電線4の周囲に巻きつけるよう屈曲させることで、当該プリント基板2に敷設されている電線類を保持する。
【0048】
次に第4実施例について説明する。
図11を参照すると、本発明の第4実施例に係る係止装置の係止部材の正面図が示されている。
図11に示すように、当該第4実施例における係止部材90は、上記第1実施例のプリント基板2等に実装される雌ねじ部材である。
【0049】
詳しくは、当該係止部材90は、円柱状の基台部92を有しており、当該基台部92の下面に上記第1実施例のワイヤクリップ1の係止部14と同様の係止部94が配設されている。
当該係止部材90の基台部92の上面にはねじ孔部96が螺刻されている。
当該係止部材90は、係止部94を上記第1実施例のようにプリント基板2に係止及び係止ロックさせることで取り付けられ、ねじ孔部96に対応する雄ねじを備えた部材が螺合される。
【0050】
なお、変形例として当該係止部材90のねじ孔部96に代えて、基台部92上面に例えばタッピンビス用の下孔を形成した構成としてもよい。
次に第5実施例について説明する。
図12を参照すると、本発明の第5実施例に係る係止装置の係止部材の正面図が示されている。
【0051】
図12に示すように、当該第5実施例における係止部材100は、上記第1実施例のプリント基板2等に実装される結束バンド止具である。
詳しくは、当該係止部材100は、矩形状の基台部102を有しており、当該基台部102の下面に上記第1実施例のワイヤクリップ1の係止部14と同様の係止部104が配設されている。
【0052】
当該係止部材100の基台部102には、幅方向に貫通した矩形孔106が穿設されている。当該矩形孔106の上面及び下面には、図示しない結束バンドの一側面に複数形成された係合凹部を係止する係止爪108が形成されている。
当該係止部材100は、係止部104を上記第1実施例のようにプリント基板2に係止及び係止ロックされることで取り付けられ、電線等を結束した結束バンドを係止する。
【0053】
上記第3実施例乃至第5実施例に示すように、本発明に係る係止装置は、基台部の形状を他の形態とすることで、様々な用途に適用させることができる。
以上で本発明に係る係止装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、係止部14の脚部34は棒形状をなしているが、当該脚部の形状はこれ限られるものではなく、板形状等であっても構わない。
【0054】
また、上記実施形態のワイヤクリップ1のクリップ部12は一対のクリップ片24a、24bから構成されているが、クリップ部の形状はこれに限られるものではなく、他の形状のクリップ部であっても構わない。
また、上記実施形態では、ワイヤクリップ1のアーム部30の突出片48a、48bは脚部34の上面よりも下側に位置しているが、突出片及び脚部の上下方向の位置関係は係止状態時にプリント基板を挟持することができればよく、突出片及び脚部との間隔がプリント基板の板厚よりも短ければよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ワイヤクリップ1のアーム部30の柱部40a、40b及び軸部32の半円柱部50a、50bは、それぞれ間に所定の間隔を有しているが、アーム部及び軸部の形状はこれに限られるものではなく、例えばアーム部の軸部を基台部から下方に延びる1つの柱部としたり、軸部を1つの円柱形状としても構わない。
また、上記実施形態では、ワイヤクリップのアーム部に突出片を形成し、当該突出片をプリント基板2、2’、70の取付孔64、64’やロック孔78a、78bに係合させることで係止ロックしているが、当該突出片やロック孔等を設けず係止ロックしない構成としても構わない。
【0056】
また、被係止部材はプリント基板2、2’、70に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施例に係る係止装置の係止部材の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る係止装置の係止部材の正面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る係止装置の係止部材の取付図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る係止装置の取付孔の上面視図である。
【図5】図3(b)の状態における下面視図である。
【図6】図3(c)の状態における正面図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る係止装置の係止部材の係止ロック解除時における正面図である。
【図8】プリント基板の板厚を変更した場合におけるワイヤクリップの係止状態の正面図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る係止装置のワイヤクリップ挿入時のプリント基板下面視図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る係止装置の係止部材の正面図である。
【図11】本発明の第4実施例に係る係止装置の係止部材の正面図である。
【図12】本発明の第5実施例に係る係止装置の係止部材の正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ワイヤクリップ(係止部材)
2、2’、70 プリント基板(被係止部材)
10、82、92、102 基台部
12 クリップ部
14、84、94、104 係止部
30 アーム部
32 軸部
34 脚部
40a、40b 柱部
42a、42b アーム片
46a、46b 延出部
48a、48b 突出片
60、72 円孔部
62、74 長孔部
64、64’、76 取付孔
78a、78b ロック孔
80、90、100 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円孔部及び該円孔部を中心に対向した方向に延びた長孔部からなる取付孔が穿設された板状の被係止部材と、
前記円孔部に軸回り方向に回動自在に嵌合可能な円柱形状の軸部、
該軸部の軸方向一側に配設され、該軸部とT字状をなすように前記軸部の軸直方向に延び、且つ前記取付孔を貫通可能な脚部、
及び、前記軸部の軸方向他側に配設され、前記軸部の軸直方向及び該軸方向一側に向かって延び且つ前記軸部の軸方向に弾性変形可能であり、先端と前記脚部との前記軸部の軸方向における間隔が前記被係止部材の板厚以下となるよう形成された一対のアーム部を有する係止部材と
を備えたことを特徴とする係止装置。
【請求項2】
前記係止部材の前記アーム部は、前記軸部の軸直方向にして前記脚部とは異なる方向に延び、該アーム部の先端は前記軸部の軸方向他側に屈曲して延出し、該屈曲部分には該軸方向一側に突出した突出片が設けられており、
前記被係止部材には、前記脚部を前記取付孔に貫通させ前記係止部材の前記軸部を前記円孔部に嵌合させ回動させることで描かれる前記突出片の軌跡上の所定の位置に前記突出片が係合可能なロック孔が穿設されていることを特徴とする請求項1記載の係止装置。
【請求項3】
前記被係止部材には、前記ロック孔が前記取付孔と一体に穿設されていることを特徴とする請求項2記載の係止装置。
【請求項4】
前記被係止部材は、電線類が敷設されるプリント基板であり、
前記係止部材は、前記アーム部の前記軸部の軸方向他側に基台部が形成され、該基台部に前記電線類を保持可能なクリップ片が形成されたワイヤクリップであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の係止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−258363(P2008−258363A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98279(P2007−98279)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000162342)協伸工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】