説明

保護コーティングを備えた誘電バリア放電ランプ

【解決手段】本発明の主題は、DBDランプ(1)が組み込まれたシステム、誘電バリア放電(DBD)ランプ(1)、および、誘電バリア放電(DBD)ランプ(1)、特に無水銀DBDランプのルミネセンスコーティング(2)として使用される燐光体コーティングであって、複数の燐光体粒子(3a)が一緒になって、一次放電輻射を所望の輻射に変換するためのルミネセンスコーティング層(3)を形成し、燐光体コーティング(2)はさらに、DBDランプ(1)の使用中に、ルミネセンスコーティング層(3)の劣化を最小限にするため、少なくとも部分的にルミネセンスコーティング層(3)を取り囲む保護コーティング層(4)を備えている、燐光体コーティングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電バリア放電(DBD)ランプ、特に、無水銀のDBDランプでルミネセンスコーティングとして使用される燐光体コーティングに関し、一次放電輻射を所望の輻射に変換するための一緒になってルミネセンスコーティング層を形成する複数の燐光体粒子を備えた、ルミネセンスコーティングとしてそうした燐光体コーティングを組み込まれた、紫外線の輻射を発生及び放出するための誘電バリア放電(DBD)ランプ、及びDBDランプを組み込まれたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような周知の誘電バリア放電ランプが一般に知られ、様々な目的のために所定の波長の光を発生させなければならないような広範囲の用途で使用されている。ある種の用途は、例えば、約180nm〜380nmの波長のUV輻射の発生であって、廃水の処理、飲料水の殺菌、超純水の脱塩素化又は生産などの産業目的に使用される。
【0003】
良く知られた誘電バリア放電ランプには、例えば、液晶表示板(LCD)のバックライトのための平坦なランプ、複写機のための円筒状ランプ、および、表面及び水の処理の目的のための同軸ランプなどがある。
【0004】
DBDランプは、一般的に任意の形態で良い。従来技術において知られているランプは、代表的には同軸形状であり、外側管と内側管とを両端で互いに溶融させて環状の放電ギャップを形成し、放電ギャップの幅に対して比較的大きな直径を有している。他のタイプのランプは、ドーム形の形態であり、片側が閉じられた外側管と、片側が閉じられた内側管とを、閉じていない側で互いに溶融させて、環状の放電ギャップを形成し、放電ギャップの幅に対して比較的大きな直径を有している。
【0005】
EP 1048620号、EP 1154461号、及びDE 10209191号は、VUV又はUVCの光を発生させるのに適当な燐光体のコーティングを備えた、同軸電バリア放電ランプを示している。
【0006】
EP 1048620B1号が開示しているDBDランプは、流体の殺菌に適し、この事例では、燐光体であるルミネセンス層を備え、この層は、この事例では石英管であるランプの包絡線の内面に設けられ、この管は、放電空間すなわち放電ギャップを形成している。この事例では、放電ギャップは、所定圧のキセノンガスで充填され、放電ギャップでガス放電、詳細には誘電バリア放電が開始されると、すぐに、一次輻射線が放出する。
【0007】
この一次プラズマ輻射は、最大で約172nmの放出であり、ルミネセンス層によって例えば約180nm〜約380nmの所望の波長範囲に変換される。特定の用途に従って、この範囲は、超純水の生産の事例では180nm〜190nmの範囲に減少され、または、水や、空気、表面などの殺菌に使用される場合には200nm〜280nmの範囲に減少される。燐光体の層は、UV−Cの範囲の一次輻射線を放出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
DE 102 09 191 A1号、及びEP1154461A1号には、同様な構造ないし構成が示されている。それらのすべては共通して、一次輻射線であるひとつだけの輻射を放出する、ルミネセンス層又は燐光体層を有している。
【0009】
DBDランプのルミネセンスコーティングは、放電ギャップ内で発生した、いわゆる空間輻射であるエキシマー輻射を、燐光体特有の放出スペクトル、例えば、VUV、UVC、UVA、可視光、又は赤外線のスペクトルに変換する燐光体のコーティングで実現されるのが一般的である。
【0010】
DBDランプにおいて高い強度のVUV/UVCを発生させるには、2W/cm2のオーダーの高い電気壁負荷が適用され、このため、最大65%の放電効率をもった、高い強度の放電が発生する。従って、燐光体コーティングは、高いエネルギー及び帯電堆積物をもった放電にさらされ、例えば、充填物としてXeが使用される場合には、Xeイオンは壁に衝突し、燐光体の劣化につながり、もって、効率及び寿命を減少させる。
【0011】
JP11−307060号は、ソーダガラスで作られた半透明のガラスバルブによって包囲された金属デュメットワイヤを有する放電ランプを示している。このバルブは、外面の全周にITOフィルムなどの透明な導電フィルムから作られた外側電極を有し、ガラスバルブの内面は、例えばMgOから作られた保護フィルムで被覆され、さらに燐光体でコーティングされている。内側電極は、ガラスバルブの内側に取付けられる。内側電極は、例えばデュメットワイヤから作られた金属導体の表面に誘電層が形成されるように形成され、その表面には保護層が形成され、保護層には燐光体が適用される。たとえ明るさを高めるために放電電流が増加したとしても、電極のスパッタリングは減少する。
【0012】
この周知の構成が有する不都合は、MgOから作られた保護フィルムが、燐光体フィルムとガラス壁との間に配置され、ガラス壁のための、または、この構成のさらなる実施形態においてはデュメットワイヤを保護するための、保護フィルムとして機能することである。さらに、保護フィルムは、低出力ランプに使用され、本発明が示唆するような、保護コーティングがルミネセンス層を保護する、高効率のDBDランプには使用できない。
【0013】
米国特許第5,604,396号は、水銀放電ランプのためのルミネセンス材料を開示していて、燐光体材料は、254nmの紫外線輻射で励起されて光束を放出する燐光体粒子と、燐光体粒子に連続的に形成され、MgO、Y23、La23、Sm23、Gd23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23、Lu23、CaO、ZrO2、SrO、BaO、α−Al23、及びBeOからなるグループから選択された少なくともひとつの金属酸化物を備えた保護層とを含んでいる。水銀放電ランプは、光伝達バルブの壁上にルミネセンス材料を有している。
【0014】
この周知の構造は、保護コーティングが水銀ランプだけに使用され、本発明のような無水銀のDBDランプ、すなわち便利な低圧ガス放電ランプには使用されないという不都合を有する。従って、保護層は異なる特性を有し、すなわち、この周知の保護層の伝達率は254nmの輻射波長において約80%であり、吸収率は約185nmの波長において少なくとも50%である。これは、水銀放出のV−UV輻射によって引き起こされる燐光体の劣化を防ぐ。
【0015】
従って、本発明の目的は、ルミネセンスコーティング、好ましくは燐光体コーティングであって、無水銀の高効率のDBDランプに使用するのに適した特性を有し、ランプの高い耐久性を保証し、及び/又は、DBDランプに使用される燐光体の劣化を最小化するルミネセンスコーティングを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、前記ルミネセンスコーティングを有するDBDランプと、前記DBDランプを組み込まれたシステムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するために、誘電バリア放電(DBD)ランプ、特に無水銀DBDランプのルミネセンスコーティングとして使用される燐光体コーティングが、一緒になって、一次放電輻射を所望の輻射に変換するルミネセンスコーティング層を形成する複数の燐光体粒子を備え、燐光体コーティングは、DBDランプの使用中に、ルミネセンスコーティング層の劣化を最小限にするため、少なくとも部分的に燐光体コーティングを取り囲む保護コーティング層を備えている。
【0018】
本発明の主な利点は、ルミネセンスコーティング層の少なくとも一部分又は燐光体粒子のまわりの追加的な保護コーティング層によって、燐光体の寿命、効率、及び/又は、劣化を最大化できることである。この保護コーティング層、特に濃い保護コーティング層によって、高い光出力と安定性の改善を有する燐光体コーティングが実現される。
【0019】
保護コーティング層は、少なくとも部分的にルミネセンスコーティング層を取り囲み、すなわち、放電ギャップに最も近いルミネセンスコーティング層の側を取り囲む。保護コーティング層は、ルミネセンスコーティング層の全体を覆い、ルミネセンスコーティング層とガラス壁との間の改良された結合のための結合手段として追加的に働く。
【0020】
燐光体コーティングは、DBDランプのルミネセンスコーティング層として使用される。本発明によるDBDランプは、外側部分と内側部分とを備えている。外側部分は、内側部分の覆いを構成し、内側部分は、DBDランプの輻射を発生し、光を放出するための手段を備える。本発明によるDBDランプの内側部分は、内側から外側へ向けて、以下のように構造的に構成されている。
【0021】
DBDランプの心臓部は、充填物を備えた放電ギャップである。放電ギャップは、取り囲む壁から形成され、これらの壁の少なくともひとつは誘電性材料から作られ、少なくともひとつの壁が少なくとも部分的に透明である。これらの壁は、その内面がルミネセンスコーティング、特にルミネセンスコーティング(層)で被覆され、放電ギャップ内で発生させられた輻射を、異なる輻射、特に長い波長に変換し、これがDBDランプの周囲に放出される。通常、ルミネセンスコーティング又はルミネセンスコーティング層で変換される前の輻射の波長、つまり一次輻射は、VUVの範囲である(<180nm)。この一次輻射は、ルミネセンスコーティング(層)によって二次輻射に変換され、二次輻射の波長は、好ましくは、≧179nm及び≦400nmの範囲であり、好ましくは、≧180nm及び≦380nmの範囲であり、最も好ましくは≧180nm及び≦280nmの範囲である。
【0022】
壁は、外面に、電気接続させ放電ギャップ内にガスの放電を発生させるエネルギーを供給する2つの対応する手段を有し、放電ギャップ内に輻射を発生させる。電気接続手段は、電気エネルギーをランプに伝達するための任意の手段であり、特に、例えば金属コーティング又は金属グリッドの形態の電極である。しかし、それにもかかわらず、例えばDBDランプが流体又は水の処理に使用されるならば、電極以外の手段を使用することもできる。この事例においては、DBDランプの少なくとも片側は、少なくとも部分的に、かかる水又は流体で取り囲まれる。取り囲む水又は流体は、電気接続手段として働いて、再び、電極は水又は流体に電気を伝達する。
【0023】
誘電性の壁の材料は、誘電性材料のグループから選択され、好ましくは、石英、ガラス、又はセラミックである。誘電性の壁のための材料は、輻射が外側及び/又は内側の壁の少なくとも一部分を通過し、DBDランプの周囲に輻射を適用するように配置されなければならない。それぞれの壁は内面と外面とを有する。それぞれの壁の内面は、放電ギャップに向けられて、この放電ギャップに面している。ひとつの壁の内面と外面との間の距離が、壁の厚みを規定し、厚みはいくつかの特別な事例では変化することがある。外面又は外面付近には、電気接続のための手段が設けられる。それらは、電気の形態のエネルギーを供給し、放電ギャップ内にガスの放電を発生させ、もって、放電ギャップ内に輻射を発生させる。輻射を発生させるには、少なくともひとつの壁に設けた電極ないし電気接続手段は、内側からの輻射が対応する電極を通過するように配置しなければならない。従って、前記電極は、好ましくは、特に電極が外壁の外面隣接して又は内側壁の外面に配置されるとき、グリッドとして配置される。そうした事例においては、電極は外壁の外面から又は内壁の外面から間隔を隔てられ、例えば、水処理の事例では、電極は、対応する環境に電気を提供するための任意の適当な材料である。
【0024】
望ましくは、ランプの幾何学形状は、平坦なランプの幾何学形状、同軸ランプの幾何学形状、ドーム形のランプの幾何学形状、平面的なランプの幾何学形状などからなるグループから選択される。産業的な目的のためには、放電ギャップの直径や対応する内壁及び外壁の内面間の距離に比べて比較的大きな直径をもった同軸DBDランプ、または、ドーム形状の同軸ランプが好まれて使用され、流体及び表面の処理のための大きな有効領域を有するランプが達成される。
【0025】
DBDランプ、特に高出力のDBDランプの最適な動作(ピーク)振幅は、必要な初期点火電圧に極めて近く、時にはそれを下回ることが見い出された。従って、確実にランプを始動させるためには、補助電極又は一時的な電圧オーバーシュートなどの追加的な手段が通常は必要になる。これらのすべては、複雑化につながり、従って、より高価なランプ電源又はランプドライバにつながる。好ましくは、燐光体コーティングは、主として、LaPO4:Pr、YPO4:Pr、LuPO4:Pr、YPO4:Bi、CaSO4:Pb、MgSO4:Pb、LuBO3:Pr、YBO3:Pr、LiYF4:Nd、LuPO4:Nd、及び/又は、YPO4:Nd Ca1-xMgx)SO4:Pb、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Pr、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Nd、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Bi、(Y1-x-yLuxLay)BO3:Pr、(ただし、1−x−y≧0、および、x及びyは≧0及び≦1の範囲である)からなる燐光体のグループから選択された材料から構成されている。
【0026】
この新しい材料は、高効率に適していて、良好なルミネセンス特性を有する。この材料は、保護コーティング層と良く協働して、燐光体と、保護コーティング層との両方の材料が、劣化に対して抵抗力があり、高いルミネセンス効率を有する、燐光体コーティングをもたらす。さらに、この材料は、保護コーティング層の材料として働くある種の材料に対して良好な結合特性を有し、保護コーティング層とルミネセンスコーティング層とは強く結合される。
【0027】
例えば、YPO4:Biから構成された、燐光体コーティング又はルミネセンスコーティング層が有する平均粒子サイズは、≧2から≦6μmであり、すべての粒子は、全体的に、薄くて閉じたMgOコーティングで被覆される。アモルファスMgOは220nm未満の波長で輻射の吸収を開始し、従って、Xeプラズマ放出光(Xeの分圧が高いとき、172nmの範囲である)を吸収するという事実のために、コーティングの厚みは、コーティングされた燐光体の光放出の効率に関連した観点である。Mg(OH)2を析出させてから、前記Mg(OH)2を完全に脱水するために、焼成する適当な手順によって、後述するように、MgOが得られ、≧5及び≦20nmの範囲の厚みを有する、密で極めて薄いコーティングが得られる。Mg(OH)2の溶解度積kLが、約1.2×10-11と比較的低く、加水分解の傾向が比較的低いため、水溶液に敏感な燐光体材料の安定化が得られる。これは、コーティングされたDBDランプの生産に、環境的な理由から、ますます水ベースの燐光体の懸濁液が使用されているという事実に関連して有利である。
【0028】
前述した手順を説明すると、以下の通りである。
1.0gのMg(NO32.62O(3.9mmol)を50mlの水に溶解させる。8.0gのYPO4:Biを懸濁させて、硝酸マグネシウム溶液を加える。pH値が約7.5である、得られた懸濁液を撹拌する。懸濁液をアンモニア溶液に結合させて、約2時間後のpH値を約9.1に上昇させる。この値に達すると、Mg(OH)2の析出が始まる。次に、撹拌して、pH値を約9.5までさらに上昇させる。最後に、燐光体を濾過して、約80℃で乾燥させ、450℃で2時間、焼成する。
【0029】
変形例として、燐光体コーティング、つまりYPO4:Biの層は、MgOの懸濁液から得られた超微粒子のMgOからなる層で覆われ、約500℃で乾燥及び加熱される。
【0030】
別の利点は、ルミネセンスコーティング層の燐光体が、一次放電輻射を、≧170nmから≦300nmの範囲、好ましくは、≧180nmから≦290nmの範囲、より好ましくは、≧183nmから≦285nm、最も好ましくは、≧185nmから≦280nmの範囲の輻射に変換する材料に適し又は主として作られる。従って、燐光体コーティングは、主として、DBDランプが使用できるすべての用途に適している。
【0031】
さらに好ましくは、保護コーティング層は、主として、MgO、Al23、MgAl24、SiO4、Y2SiO5、La2SiO5、Gd2SiO5、Lu2SiO5、YPO4、LaPO4、GdPO4、LuPO4、CaSO4、SrSO4、及び/又は、BaSO4からなる保護燐光体コーティング層のグループから選択された材料から構成される。これらの材料は、前述したように、ルミネセンスコーティング層の燐光体の材料と協働して、高い耐久性の高効率の燐光体のコーティングを実現できる。前述した材料は、燐光体コーティング層を、例えばDBDランプの壁に結合させるための良好な結合特性を有する。
【0032】
最適化された保護を実現するため、保護コーティング層は、ルミネセンスコーティング層の全体を保護するために、ルミネセンスコーティング層を完全に覆う。それにより、保護コーティング層は、一方においては、放電ギャップの方向から生じる劣化に対する保護として働き、他方においては、ルミネセンスコーティング層の燐光体と壁とを良好に結合する結合手段として働く。
【0033】
最適化された保護を実現し、ルミネセンスコーティング層の燐光体の少なくとも主たる部分を覆うため、保護コーティング層は、ルミネセンスコーティング層の全体を保護するため、ルミネセンスコーティング層の燐光体粒子のうち、少なくとも≧50%から≦100%、好ましくは、≧60%から≦100%、より好ましくは、≧75%から≦100%、最も好ましくは≧95%から≦100%を完全に覆っている。
【0034】
最適化された保護は、ルミネセンスコーティング層を完全に覆われることで実現される。これを実現するため、ルミネセンスコーティング層を全体として覆われ、または、ルミネセンスコーティング層が作られた、すなわちルミネセンスコーティング層の粒子の、すべての単一部分を覆う。すべての単一粒子、または、少なくともほとんどすべての単一粒子を被覆することで、ルミネセンスコーティング層の包囲は実現される。
【0035】
好ましくは、すべての粒子、すなわち100%の粒子は、前記保護コーティング層で完全に覆われる。これにより、ルミネセンスコーティング層の全体は覆われる。この粒子を覆うことにはさらに、利点があって、保護コーティング層の良好な結合特性に起因して、粒子はより安定して長持ちするルミネセンスコーティング層を形成する。
【0036】
好ましくは、前記燐光体コーティングを形成する、このルミネセンスコーティング層がDBDランプに使用される。
【0037】
紫外線の輻射を発生及び放出するDBDランプランプは、収容された放電ギャップであって、ハウジングは少なくとも2つの壁を有し、少なくともひとつの壁は誘電性の壁であり、少なくともひとつの壁は少なくとも部分的に透明な部分を有し、放電ギャップ内に配置された充填物と、関連する少なくとも2つの壁に電気接続するための少なくとも2つの電気接続手段と、一次充填放電輻射を所望の輻射に変換するための少なくともひとつのルミネセンスコーティングであって、ルミネセンスコーティングは、ルミネセンスコーティングの劣化を最小化するため、本発明の前記燐光体コーティングからなるDBD燐光体コーティングのグループから選択されたルミネセンスコーティングと、を備えている。
今日の技術水準によるDBDランプは、未だ、保護コーティングを有していない。水銀ランプにおいては、保護コーティングが使用され、水銀とルミネセンス材料との反応を防いでいる。無水銀のDBDランプにおいては、この問題点は起こらなかった。驚いたことに、本発明による特別なコーティングは、特に≧160nmの範囲の短波長の輻射に起因する、及び、例えばXeなどの放電ガスのスパッタリングに起因する、DBDランプのルミネセンス層の損傷を保護することが見い出された。
【0038】
適当な保護コーティングを実現するため、DBDランプの発光特性に悪く作用せずに、保護コーティング層の材料と協働する、ルミネセンス層の材料を見い出さなければならなかった。従って、前述したような材料の保護コーティング層と協働する、燐光体コーティング及び保護コーティング層のための材料を見い出さなければならなかった。
【0039】
従って、DBDランプは好ましくは、そうした新しい燐光体コーティングを備える。
前述した材料は、一般に、あらゆるDBDランプにおいて使用される。好ましくは、DBDランプの充填物は、環境保護のために無水銀である。
【0040】
望ましくは、ルミネセンスコーティングは、少なくとも、≧50%から≦100%、好ましくは、≧60%から≦100%、より好ましくは、≧70%から≦100%、最も好ましくは、≧75%から≦100%の範囲の伝達率を有し、及び/又は、≧0%から≦20%の範囲、好ましくは、≧0%から≦17%の範囲、より好ましくは、≧0%から≦15%、最も好ましくは、≧0%から≦10%の範囲の、一次輻射波長における吸収率を有している。
【0041】
高効率の光出力をもったDBDランプは、少なくとも≧50%、より好ましくは≧70%の伝達率を備えたルミネセンスコーティングを有する。これは、高い光出力を保証する。
【0042】
他方において、吸収、特に約172nmの波長における吸収は、可能な限り低くなければならず、好ましくは、≦20%、より好ましくは、≦15%、最も好ましくは、約10%である。
【0043】
前記特性を有するようなDBDランプを実現するため、ルミネセンスコーティングの厚みは、好ましくは、≦200nmであり、より好ましくは、≦150nmであり、最も好ましくは、≦100nmである。
【0044】
加えて、DBDランプ又はむしろルミネセンスコーティングが有する高い二次電子放出係数は、好ましくは、≧0.001の範囲であり、より好ましくは、≧0.005であり、最も好ましくは、≧0.01である。
【0045】
これらの特性は、比較的大きなバンドギャップを有する材料の使用を可能とし、これは、前記ルミネセンスコーティングの製造を、より容易にして、複雑さを少なくする。前記した新たな燐光体コーティングの材料は、これらの特性を有する。
【0046】
DBDランプは、広範囲の用途に適用される。従って本発明のDBDランプを組み込まれたシステムが提供され、ルミネセンス層として、本発明の燐光体コーティングを有し、1又は複数の以下の用途に使用され、かかる用途は、好ましくはクリーニング、殺菌及び/又は浄化のための、流体、及び/又は、硬質及び/又は軟質の表面の処理、液体の殺菌及び/又は浄化、食物及び/又は飲料の処置及び/又は殺菌、水の処理及び/又は殺菌、廃水の処理及び/又は殺菌、飲料水の処理及び/又は殺菌、水道水の処理及び/又は殺菌、超純水の生産、液体又はガスの合計有機炭素含有量の減少、ガスの処理及び/又は殺菌、空気の処理及び/又は殺菌、排気ガスの処理及び/又はクリーニング、好ましくは無機の及び/又は有機の化合物における化合物の分解及び/又は除去、半導体の表面のクリーニング、半導体の表面からの化合物の分解及び/又は除去、食品サプリメントのクリーニング及び/又は殺菌、薬品のクリーニング及び/又は殺菌、である。
本発明のこれらの及びその他の観点は、後述される実施形態を参照することで、明らかになり、解明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、同軸のDBDランプ1を模式的に示していて、長手方向の断面図において、環状の形状である放電ギャップを有している。DBDランプ1の放電ギャップは、誘電性の内壁と誘電性の外壁とから形成される。この図において、放電ギャップは、内壁として機能する周壁を有する内側ランプ管と、外壁として機能する周壁を有する外側ランプ管とから形成される。ランプ管は石英ガラスで作られ、これは誘電性の材料である。内側壁は、内面と外面とを有する。内面は放電ギャップに面し、外面は逆方向に向いている。内壁の厚みは、内面と外面との間の最も短い距離によって規定される。外壁は、同様に、内面と外面とを有する。内面は、内壁の内面に対応し、放電ギャップに面している。外面は、内面とは反対方向に向いている。外壁の厚みは、内面と外面との間の最も短い距離によって規定される。DBDランプ1は、外壁と内壁とに配置された、2つの対応する電極を有する。第1の電極は、内壁の外面に配置され、第2の電極は、グリッドとして形成され、外壁の外面に配置される。内壁の内面には、燐光体コーティング2からなるルミネセンスコーティングが構成及び/又は配置される。また、内壁の内面は、燐光体コーティング2からなる、そうしたルミネセンスコーティングを有する。燐光体コーティング2は、ルミネセンスコーティング層と保護コーティング層とを備え、ルミネセンスコーティング層は、複数の単一の燐光体粒子を備える。ルミネセンスコーティング層を形成する粒子の直径は、発生させたUV輻射の波長範囲で最適な反射が実現されるように選択される。
【0048】
DBDランプ1の充填物は、充填圧力が100mbarと800mbarとの間のXe充填物である。この場合、キセノン輻射の波長範囲は、およそλ=172nmである。この反射した波長範囲は、ルミネセンスコーティングに達する。
【0049】
ルミネセンスコーティング、又は燐光体コーティング2、又はより正確にはルミネセンスコーティング層又は燐光体粒子の材料は、主として、LaPO4:Pr、YPO4:Pr、LuPO4:Pr、YPO4:Bi、CaSO4:Pb、MgSO4:Pb、LuBO3:Pr、YBO3:Pr、LiYF4:Nd、LuPO4:Nd、及び/又は、YPO4:Nd Ca1-xMgx)SO4:Pb、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Pr、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Nd、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Bi、(Y1-x-yLuxLay)BO3:Pr、(ただし、1−x−y≧0、および、x及びyは≧0及び≦1の範囲である)からなる燐光体のグループから選択された材料から構成されている。
【0050】
さらに、保護コーティング層を備えた燐光体コーティングは、主として、MgO、Al23、MgAl24、SiO4、Y2SiO5、La2SiO5、Gd2SiO5、Lu2SiO5、YPO4、LaPO4、GdPO4、LuPO4、CaSO4、SrSO4、及び/又は、BaSO4からなる保護燐光体コーティング層のグループから選択された材料から構成される。
【0051】
この特別な実施形態においては、YPO4:Biから構成された、燐光体粒子が有する平均粒子サイズは、≧2μmから≦6μmであり、すべての粒子は、全体的に、薄くて閉じたMgOコーティングで被覆される。アモルファスMgOは220nm未満の波長で輻射の吸収を開始し、従って、Xeプラズマ放出光(Xeの分圧が高いとき、172nmの範囲である)を吸収するという事実のために、粒子の保護コーティング層の厚みは、燐光体コーティングの光放出の効率に関連した観点である。Mg(OH)2を析出させてから、前記Mg(OH)2を完全に脱水するために、焼成する適当な手順によって、後述するように、MgOが得られ、≧5及び≦20nmの範囲の厚みを有する密で極めて薄いコーティングが得られる。Mg(OH)2の溶解度積kLが、約1.2×10-11と比較的低く、加水分解の傾向が比較的低いため、水溶液に敏感な燐光体材料の安定化が得られる。これは、コーティングされたDBDランプ1の生産に、環境的な理由から、ますます水ベースの燐光体の懸濁液が使用されているという事実に関連して有利である。
【0052】
前述した手順を説明すると、以下の通りである。
1.0gのMg(NO32.62O(3.9mmol)を50mlの水に溶解させる。8.0gのYPO4:Biを懸濁させて、硝酸マグネシウム溶液を加える。pH値が約7.5である、得られた懸濁液を撹拌する。懸濁液をアンモニア溶液に結合させて、約2時間後のpH値を約9.1に上昇させる。この値に達すると、Mg(OH)2の析出が始まる。次に、撹拌して、pH値を約9.5までさらに上昇させる。最後に、燐光体を濾過して、約80℃で乾燥させ、450℃で2時間、焼成する。
【0053】
変形例として、燐光体コーティング、つまりYPO4:Biの層は、MgOの懸濁液から得られた超微粒子のMgOからなる層で覆われ、約500℃で乾燥及び加熱される。
【0054】
図2は、ルミネセンスコーティング層3と、ルミネセンスコーティング層3を全体として被覆する保護コーティング層4を有してなる、そうした燐光体コーティング2の構造を模式的に示している。この図には、2つの異なる燐光体コーティングが示され、内壁にある第1の燐光体コーティング2aと、DBDランプの外壁にある第2の燐光体コーティング2bとを有している。外壁における第2の燐光体コーティング2bのルミネセンスコーティング層3は、ルミネセンスコーティング層3のそれぞれの単一の燐光体粒子が、保護コーティング層4で覆われたルミネセンスコーティング層3として示される。
【0055】
図2は、同軸的なDBDランプの層の構造を示した長手方向の詳細断面図であって、図1による層の構造によって、内側及び外側の石英管で放電ギャップが形成され、内側管の内側にある第1の燐光体コーティング2aは、複数の燐光体粒子と、放電ギャップとルミネセンスコーティング層3との間に隣接して配置された、保護コーティング層4とを備えた、ルミネセンスコーティング層3から構成されている。DBDランプ又はむしろDBDランプの壁は、回転対称的に構築されている。破線は、回転軸線を示している。層の構造について、内側から、すなわち回転軸線から外側へと説明する。内側層は、内壁である。内壁には、第1の燐光体コーティング2aが配置され、主として複数の単一の燐光体粒子から作られた、ルミネセンスコーティング層3から構成されている。ルミネセンスコーティング層3は、保護コーティング層4で被覆されている。両方は、第1の燐光体コーティング2aを形成する。
【0056】
放電ギャップは、ここではXeである充填物を含んでいる。第2の燐光体コーティング層2bは、主として複数の単一の燐光体粒子と保護コーティング層4とから作られたルミネセンスコーティング層3から構成され、保護コーティング層4はすべての単一の燐光体粒子を覆い、外壁に配置されている。第1の燐光体コーティング2aは、全体として保護コーティング層4で被覆されたルミネセンスコーティング層3から構成され、第2の燐光体コーティング2bは、主として複数の単一の燐光体粒子から構成されて、それぞれ保護コーティング層4で覆われている。後者の構造は、図3に模式的に示している。
【0057】
図3は、保護コーティング層4で覆われた単一の燐光体粒子3aの断面を拡大して模式的に示している。保護コーティング層4は、燐光体粒子3aを完全に覆い、ないし取り囲む。すべての覆われた燐光体粒子が一緒になって、第2の燐光体コーティング2bを形成している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、DBDランプを模式的に示した長手方向の断面図であって、壁の内面にはルミネセンスコーティングを備えている。
【図2】図2は、同軸的なDBDランプの層の構造を模式的に示した長手方向の詳細断面図であって、内側及び外側の石英管によって放電ギャップが形成され、管の内側のルミネセンス層と、保護コーティング層とを備えている。
【図3】図3は、保護コーティング層で覆われた燐光体粒子を模式的に示した拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電バリア放電(DBD)ランプ(1)、特に無水銀DBDランプのルミネセンスコーティング(2)として使用される燐光体コーティングであって、
一緒になって、一次放電輻射を所望の輻射に変換するためのルミネセンスコーティング層(3)を形成する複数の燐光体粒子(3a)を備え、
前記燐光体コーティング(2)は、DBDランプ(1)の使用中に、ルミネセンスコーティング層(3)の劣化を最小限にするため、少なくともルミネセンスコーティング層(3)を部分的に取り囲む保護コーティング層(4)を、さらに備えている、
ことを特徴とする燐光体コーティング。
【請求項2】
ルミネセンスコーティング層(3)は、LaPO4:Pr、YPO4:Pr、LuPO4:Pr、YPO4:Bi、CaSO4:Pb、MgSO4:Pb、LuBO3:Pr、YBO3:Pr、LiYF4:Nd、LuPO4:Nd、YPO4:NdCa1-xMgx)SO4:Pb、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Pr、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Nd、(Y1-x-yLuxLay)PO4:Bi、及び/又は、(Y1-x-yLuxLay)BO3:Pr、(ただし、1−x−y≧0、および、x及びyは≧0及び≦1の範囲である)からなる燐光体のグループから選択された材料から構成されている、
請求項1に記載の燐光体コーティング(2)。
【請求項3】
前記ルミネセンスコーティング層(3)の燐光体は、一次放電輻射を、≧170nmから≦300nmの範囲、好ましくは、≧180nmから≦290nmの範囲、より好ましくは、≧183nmから≦285nmの範囲、最も好ましくは、≧185nmから≦280nmの範囲の輻射に変換するのに適している、
請求項1又は2に記載の燐光体コーティング(2)。
【請求項4】
前記保護コーティング層(4)は、MgO、Al23、MgAl24、SiO4、Y2SiO5、La2SiO5、Gd2SiO5、Lu2SiO5、YPO4、LaPO4、GdPO4、LuPO4、CaSO4、SrSO4、及び/又は、BaSO4からなる保護燐光体コーティング層のグループから選択された材料から構成されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燐光体コーティング(2)。
【請求項5】
保護コーティング層(4)は、ルミネセンスコーティング層(3)の全体を保護するため、ルミネセンスコーティング層(3)を完全に覆っている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の燐光体コーティング(2)。
【請求項6】
保護コーティング層(4)は、ルミネセンスコーティング層(3)の全体を保護するため、ルミネセンスコーティング層(3)の燐光体粒子(3a)のうち、少なくとも≧50%から≦100%、好ましくは、≧60%から≦100%、より好ましくは、≧75%から≦100%、最も好ましくは≧95%から≦100%を完全に覆っている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燐光体コーティング(2)。
【請求項7】
紫外線の輻射を発生及び放出する誘電バリア放電(DBD)ランプであって、
収容された放電ギャップであって、ハウジングは少なくとも2つの壁を有し、少なくともひとつの壁は誘電性の壁であり、少なくともひとつの壁は少なくとも部分的に透明な部分を有し、
放電ギャップ内に配置された充填物と、
関連する少なくとも2つの壁に電気接続するための少なくとも2つの電気接続手段と、
一次充填放電輻射を所望の輻射に変換するための少なくともひとつのルミネセンスコーティングであって、ルミネセンスコーティングは、ルミネセンスコーティングの劣化を最小化するため、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の前記燐光体コーティング(1)からなるDBD燐光体コーティングのグループから選択されたルミネセンスコーティングと、を備えている、
ことを特徴とするDBDランプ(1)。
【請求項8】
DBDランプ(1)の充填物は、環境保全に配慮したDBDランプ(1)のため、無水銀になっている、
請求項7に記載のDBDランプ(1)。
【請求項9】
ルミネセンスコーティングは、少なくとも、≧50%から≦100%、好ましくは、≧60%から≦100%、より好ましくは、≧70%から≦100%、最も好ましくは、≧75%から≦100%の範囲の伝達率を有し、及び/又は、≧0%から≦20%の範囲、好ましくは、≧0%から≦17%の範囲、より好ましくは、≧0%から≦15%、最も好ましくは、≧0%から≦10%の範囲の、一次輻射波長における吸収率を有している、
請求項7又は8に記載のDBDランプ(1)。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1項に記載のDBDランプ(1)を組み込まれたシステムであって、ルミネセンス層として、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燐光体コーティング(2)を有し、1又は複数の以下の用途に使用され、かかる用途は、
好ましくはクリーニング、殺菌及び/又は浄化のための、流体、及び/又は、硬質及び/又は軟質の表面の処理、
液体の殺菌及び/又は浄化、
食物及び/又は飲料の処置及び/又は殺菌、
水の処理及び/又は殺菌、
廃水の処理及び/又は殺菌、
飲料水の処理及び/又は殺菌、
水道水の処理及び/又は殺菌、
超純水の生産、
液体又はガスの合計有機炭素含有量の減少、
ガスの処理及び/又は殺菌、
空気の処理及び/又は殺菌、
排気ガスの処理及び/又はクリーニング、
好ましくは無機の及び/又は有機の化合物における化合物の分解及び/又は除去、
半導体の表面のクリーニング、
半導体の表面からの化合物の分解及び/又は除去、
食品サプリメントのクリーニング及び/又は殺菌、
薬品のクリーニング及び/又は殺菌、
であることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−527102(P2008−527102A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549984(P2007−549984)
【出願日】平成18年1月2日(2006.1.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050002
【国際公開番号】WO2006/072893
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】