説明

保護膜除去用溶剤およびこれを用いたホトレジストパターン形成方法

【課題】保護膜、特にはフッ素置換ポリマーからなる保護膜、を簡便かつ効率よく除去することができ、加えてリサイクル使用が可能な保護膜除去用溶剤の提供、および、該除去用溶剤を用いたホトレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】ホトレジスト膜上に積層された保護膜を除去するための溶剤であって、少なくともハイドロフルオロエーテルを含有する保護膜除去用溶剤、および該保護膜除去用溶剤を液浸露光プロセスに用いたホトレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトレジスト膜上に形成された保護膜を除去するための保護膜除去用溶剤およびこれを用いたホトレジストパターン形成方法に関する。本発明は特に、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)プロセスに好適に適用される。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造にホトリソグラフィ法が多用されている。近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の進展が著しく、ホトリソグラフィ工程におけるホトレジストパターン形成においてもより一層の微細化が要求されている。
【0003】
現在、ホトリソグラフィ法により、例えば、最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なホトレジストパターンの形成が可能となっているが、さらに線幅65nmといったより微細なパターン形成の研究・開発が行われている。
【0004】
このようなより微細なパターン形成を達成させるためには、一般に、露光装置やホトレジスト材料による対応策が考えられる。露光装置による対応策としては、F2エキシマレーザー、EUV(極端紫外光)、電子線、X線、軟X線等の光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)の増大等の方策が挙げられる。ホトレジスト材料による対応策としては、露光光の短波長化に対応する新たな材料を開発する方策が挙げられる。
【0005】
しかしながら、光源波長の短波長化は高額な新たな露光装置が必要となる。また、高NA化では、解像度と焦点深度幅がトレード・オフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度幅が低下するという問題がある。また短波長化に対応する新たなホトレジスト材料の開発にも多くのコストがかかる。
【0006】
最近、このような問題を解決可能とするホトリソグラフィ技術として、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)法が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。この方法は、露光時に、露光装置(レンズ)と基板上のホトレジスト膜との間の露光光路の、少なくとも前記ホトレジスト膜上に所定厚さの液浸媒体を介在させて、ホトレジスト膜を露光し、ホトレジストパターンを形成するというものである。この液浸露光法は、従来は空気や窒素等の不活性ガスであった露光光路空間を、これら空間(気体)の屈折率よりも大きく、かつ、ホトレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率(n)をもつ液浸媒体(例えば純水、フッ素系不活性液体など)で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の露光光を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されるとともに、焦点深度幅の低下も生じない、という利点を有する。また現在汎用されているホトレジスト材料を用いることができる。
【0007】
このような液浸露光プロセスを用いれば、現存の露光装置に実装されているレンズ、露光光波長を用いて、低コストで、より高解像性に優れ、かつ焦点深度にも優れるホトレジストパターンの形成が実現できるため、大変注目されている。
【0008】
しかし、液浸露光プロセスでは、露光用レンズとホトレジスト膜との間に液浸媒体を介在させた状態で露光を行うことから、当然のことながら、液浸媒体によるホトレジスト膜の変質、ホトレジスト膜からの溶出成分による液浸媒体自体の変質に伴う屈折率変動などが懸念される。
【0009】
そこでこれに対処すべく、ホトレジスト膜上にフッ素含有樹脂(フッ素置換ポリマー)からなる保護膜を形成し、この保護膜上に液浸媒体を介在させることによって、液浸媒体によるホトレジスト膜への変質、液浸媒体の変質に伴う屈折率変動を同時に防止することを目的とした技術が提案され、この保護膜により、液浸露光において断面形状が矩形の良好なプロファイルのホトレジストパターンが得られたことが確認されている(例えば、特許文献1参照)。このフッ素置換ポリマーからなる保護膜は、最終的には除去する必要があるが、該フッ素置換ポリマーからなる保護膜の除去には専用の特殊な除去用溶剤を用いる必要があり、より除去性能に優れる除去溶剤が求められていた。また、除去溶剤のリサイクル使用が可能であれば、地球環境保護の面からも製造コストの低減の点からも望ましい。
【0010】
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
【非特許文献3】「プロシーディングス・オブ・エスピーアイイー(Proceedings of SPIE)」、(米国)、2002年、第4691巻、459−465頁
【特許文献1】国際公開第2004/074937号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、保護膜、特にはフッ素置換ポリマーからなる保護膜、を簡便かつ効率よく除去することができ、加えてリサイクル使用が可能な保護膜除去用溶剤を提供すること、および、該除去用溶剤を用いたホトレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、ホトレジスト膜上に積層された保護膜を除去するための溶剤であって、少なくともハイドロフルオロエーテルを含有する保護膜除去用溶剤を提供する。
【0013】
また本発明は、液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設け、該ホトレジスト膜上に保護膜を形成した後、該基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、次いで、前記液浸露光用液体および前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光し、必要に応じて加熱処理を行った後、上記保護膜除去用溶剤を用いて前記保護膜を除去し、続いてホトレジスト膜を現像処理することによりホトレジストパターンを得るホトレジストパターンの形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、保護膜、特にはフッ素置換ポリマーからなる保護膜、を簡便かつ効率よく除去することができ、加えてリサイクル使用が可能な保護膜除去用溶剤が提供される。本発明保護膜除去用溶剤を液浸露光プロセスに適用することにより、従来のホトレジスト材料、露光装置を用いてホトリソグラフィを行った場合の解像度を超えて、極微細なホトレジストパターンの形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
【0016】
本発明に係る保護膜除去用溶剤は、少なくともハイドロフルオロエーテルを含有することを特徴とする。ここで、ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル結合を有するハイドロフルオロカーボンである。本発明では、洗浄性、工業的に製造が容易である等の点から、ハイドロフルオロエーテルとして、炭素原子数1〜4の炭化水素基と炭素原子数2〜10のフルオロアルキル基がエーテル結合された化合物の中から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0017】
このようなハイドロフルオロエーテルとして、具体的には、C25OCH3、C25OC25、C25OC37、C25OC49、C37OCH3、C37OC25、C37OC37、C37OC49、C49OCH3、C49OC25、C49OC37、C49OC49、C511OCH3、C511OC25、C511OC37、C511OC49、C613OCH3、C613OC25、C613OC37、C613OC49、C715OCH3、C715OC25、C715OC37、C715OC49、C817OCH3、C817OC25、C817OC37、C817OC49、C919OCH3、C919OC25、C919OC37、C919OC49、C1021OCH3、C1021OC25、C1021OC37、C1021OC49等が例示的に挙げられる。これらの炭化水素基およびフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造であってもよい。
【0018】
該ハイドロフルオロエーテルは1種、あるいは2種以上を混合した混合溶剤として用いてもよい。混合溶剤とする組合せは、各ハイドロフルオロエーテルの物性により適宜選択され、例えば、高沸点のハイドロフルオロエーテルに対して、低沸点のハイドロフルオロエーテルを組み合わせて用いることにより、高い剥離性能を維持したまま、溶剤種を多様化させずに、リサイクルの回収率を向上せしめることが可能である。
【0019】
上記ハイドロフルオロエーテルの中でも、C49OCH3、C49OC25、およびC613OCH3の中から選ばれる少なくとも1種が最も好ましい。
【0020】
本発明保護膜除去用溶剤は、ホトリソグラフィ工程において用いられ、特には水およびアルカリに不溶なフッ素置換ポリマーからなる保護膜を除去するために好適に用いられる。
【0021】
前記ホトリソグラフィ工程としては、具体的には、通常のホトレジストパターン形成プロセスや、液浸露光プロセスによるホトレジストパターン形成プロセス等が挙げられる。
【0022】
前記フッ素置換ポリマーからなる保護膜としては、例えば、ホトリソグラフィ工程における上記例示を含む任意のホトレジストパターン形成プロセスにおいて、ホトレジスト上層を外部汚染因子から保護するための保護膜として形成されるものが挙げられる。ここで外部汚染因子としては、通常のホトレジストパターン形成プロセスでは、ホトレジスト膜中の酸発生剤から発生する酸を失活させる原因となる大気中のアミン成分等が挙げられ、また液浸露光プロセスによるホトレジストパターン形成プロセスでは、露光用レンズとホトレジスト膜との間に配置される液浸露光用液体等が挙げられる。
【0023】
上記水およびアルカリに対して不溶であるフッ素置換ポリマーとしては、例えば鎖式フルオロアルキルエーテルポリマー、環式フルオロアルキルエーテルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0024】
上記フッ素置換ポリマーの中でも、鎖式フルオロアルキルエーテルポリマーおよび環式フルオロアルキルエーテルポリマーが好ましく用いられる。特には環式フルオロアルキルエーテルポリマーと鎖式フルオロアルキルエーテルポリマーの混合ポリマー、若しくは環式フルオロアルキルエーテルポリマーを単独で用いるのが最も好ましい。鎖式フルオロアルキルエーテルポリマーは「デムナムS−20」、「デムナムS−65」、「デムナムS−100」、「デムナムS−200」(以上、ダイキン工業(株)製)等として市販されており、また環式ペルフルオロアルキルポリエーテルは「サイトップ」シリーズ(旭硝子(株)製)、「テフロンTM−AF1600」、「テフロンTM−AF2400」(以上、デュポン社製)等として市販されており、これらを好適に用いることができる。
【0025】
上記フッ素置換ポリマーからなる被膜は、該フッ素置換ポリマーをフッ素系有機溶剤に溶解して用いるのが好ましい。かかるフッ素系有機溶剤としては、フッ素置換ポリマーを溶解し得る溶剤であればよく、特に限定されないが、例えば、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロテトラペンチルアミン、ペルフルオロテトラヘキシルアミン等が好適例として挙げられる。
【0026】
また、上記フッ素系有機溶剤に対して相溶性を有する他の有機溶剤、界面活性剤等も適宜混合して用いることが可能である。
【0027】
フッ素置換ポリマーをフッ素系有機溶剤に溶解してフッ素置換ポリマー含有溶液として用いる場合、該溶液の濃度は、被膜を形成し得る範囲であれば特に限定されないが、塗布性等を考慮した場合、濃度0.1〜30質量%程度とするのが好ましい。
【0028】
本発明の保護膜除去用溶剤は、特に液浸露光プロセスに好適に用いられる。本発明に適用される液浸露光プロセスでは、基板上に設けたホトレジスト膜上に、水およびアルカリに不溶なフッ素置換ポリマーからなる被膜(保護膜)を形成し、該保護膜と露光装置(レンズ)との間に、所定厚さの液体(液浸露光用液体)を介在させ、この状態でホトレジスト膜を露光することによって、ホトレジストパターンの解像度を向上させる。そして露光後、フッ素置換ポリマーからなる被膜(保護膜)を、本発明除去溶剤を用いることによって、簡易かつ効率的に溶解除去するというものである。
【0029】
本発明の保護膜除去用溶剤を用いた液浸露光法によるホトレジストパターン形成方法は、具体的には例えば以下のように行う。
【0030】
まず、シリコンウェーハ等の基板上に、慣用のホトレジスト組成物をスピナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)し、ホトレジスト膜を形成する。なお、基板上に有機系または無機系の反射防止膜(下層反射防止膜)を1層設けてから、ホトレジスト膜を形成してもよい。
【0031】
ホトレジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型およびポジ型ホトレジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なホトレジストを任意に使用できる。
【0032】
次に、上記ホトレジスト膜の表面に、前記フッ素置換ポリマー含有溶液を均一に塗布した後、加熱などにより硬化させることによって、フッ素置換ポリマーからなる保護膜(被膜)を形成する。
【0033】
次いで、この保護膜と露光装置(レンズ)との間に液浸露光用液体を配置する。この状態でマスクパターンを介してホトレジスト膜に対して選択的に露光を行う。
【0034】
したがって、露光光は、液浸露光用液体と保護膜とを通過してホトレジスト膜に到達することになる。
【0035】
このとき、ホトレジスト膜は保護膜によって、液浸露光用液体から遮断されており、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸露光用液体中に成分を溶出させて液浸露光用液体自体の屈折率等の光学的特性を変質させることが防止される。
【0036】
露光光は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EB、EUV、VUV(真空紫外線)などの放射線を用いて行うことができる。これら露光光の選択は、主にホトレジスト膜の特性によって決定される。
【0037】
上記液浸露光用液体は、空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるホトレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば、特に限定されるものでない。このような液浸露光用液体としては、水(純水、脱イオン水)、フッ素系不活性液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸露光用液体も使用可能である。フッ素系不活性液体の具体例としては、C3HCl25、C49OCH3、C49OC25、C537等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。液浸露光用液体として、コスト、安全性、環境問題および汎用性の観点からは、水(純水、脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光(例えばF2エキシマレーザーなど)を用いた場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
【0038】
前記液浸状態での露光工程が完了したら、液浸露光用液体を取り除き、基板から液体を除去する。
【0039】
次いで、露光したホトレジスト膜上に保護膜を積層したまま、ホトレジスト膜に対してPEB(露光後加熱)処理を行い、続いて、本発明保護膜除去用溶剤を露光後の基板に接触させて保護膜を除去する。接触の方法は、パドル法、浸漬法、シャワー法等いずれでもよい。
【0040】
保護膜を除去した後、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理を行う。アルカリ現像液は慣用のものを任意に用いることができる。なお、現像処理に続いてポストベークを行ってもよい。続いて、純水等を用いてリンスを行う。この水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解したホトレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、ホトレジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、ホトレジストパターンが得られる。
【0041】
このようにしてホトレジストパターンを形成することにより、微細な線幅のホトレジストパターン、特にピッチが小さいライン・アンド・スペースパターンを良好な解像度により製造することができる。なお、ここで、ライン・アンド・スペースパターンにおけるピッチとは、パターンの線幅方向における、ホトレジストパターン幅とスペース幅の合計の距離をいう。
【0042】
本発明保護膜除去用溶剤は、リサイクル使用が可能であり、環境面、製造コスト低減の点からも優れる。
【0043】
具体的には、ホトリソグラフィ工程において洗浄処理後の使用済み保護膜除去用溶剤を回収し、精製することによりリサイクル除去溶剤を得、このリサイクル除去溶剤を用いて、ホトリソグラフィ工程における保護膜除去処理に供することができる。
【0044】
上記フッ素置換ポリマーからなる被膜(保護膜)の除去処理に用いた使用済み除去溶剤を回収した回収除去溶剤中には、フッ素置換ポリマーやフッ素系有機溶剤が不純物として混入されている。回収除去用溶剤の精製は、蒸留によりこれら不純物を分別することで、不純物を含む留出分を除いて、ハイドロフルオロエーテルを含む留出分を採取し、この採取した留出分をリサイクル除去溶剤として用いる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものでない。
【0046】
〈保護膜除去用溶剤〉
以下の保護膜除去用溶剤を用意した。
保護膜除去用溶剤1: C49OCH3からなる溶剤
保護膜除去用溶剤2: C49OC25からなる溶剤
保護膜除去用溶剤3: C613OCH3からなる溶剤
保護膜除去用溶剤4: C49OC25とC613OCH3の混合溶剤(質量比50:50)
【0047】
(実施例1)
本実施例では、保護膜除去用溶剤の基本特性評価として、本発明保護膜除去用溶剤の、フッ素置換ポリマーからなる保護膜に対する溶解除去性について評価した。
【0048】
具体的には、基板上に形成されたホトレジスト膜上に、「サイトップCTX−809SP2」(旭硝子(株)製)をペルフルオロトリブチルアミンに溶解させ、濃度2.5質量%としたフッ素置換ポリマー含有溶液(保護膜形成用材料)を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚28nmの保護膜を形成した。
【0049】
上記保護膜に、保護膜除去用溶剤1、2、3、および4をそれぞれ、23℃にて60秒間接触させ、保護膜の除去処理を行った。このときの除去性能を、溶解に要した時間で評価したところ、いずれも40秒以内で溶解除去ができ、保護膜除去性能は良好であった。
【0050】
(実施例2)
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(Brewer Science社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型ホトレジストである「TArF−P6111ME」(東京応化工業(株)製)をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚225nmのホトレジスト膜を形成した。
【0051】
該ホトレジスト膜上に、前記保護膜を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。
【0052】
次に、マスクパターンを介して、露光装置「NSR−S302A」((株)ニコン製、NA(開口数)=0.60、σ=2/3輪体)により、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて、パターン光を照射(露光処理)した。露光処理後基板を回転させながら、保護膜上に23℃にて純水を2分間滴下し続け、擬似液浸環境下においた。
【0053】
前記純水の滴下工程の後、130℃、90秒間の条件でPEB処理した後、保護膜を前記除去溶剤1に23℃にて60秒間接触させることにより除去し、続いて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて23℃にて60秒間現像しホトレジストパターンを形成した。
【0054】
このようにして得た130nmのライン・アンド・スペースが1:1となるホトレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好な矩形形状であり、パターニングに対する悪影響は観察されなかった。
【0055】
(実施例3)
前記実施例2と同様に、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(Brewer Science社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型ホトレジストである「TArF−P6111ME」(東京応化工業(株)製)をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚150nmのホトレジスト膜を形成した。
【0056】
該ホトレジスト膜上に、前記保護膜を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。
【0057】
次に、液浸露光を液浸露光用実験機「LEIES 193−1」((株)ニコン製)により二光束干渉実験を行った。その後、130℃、90秒間の条件でPEB処理し、保護膜を前記除去溶剤4に23℃にて60秒間接触させることにより除去し、続いて2.38質量%TMAH水溶液を用いて23℃にて60秒間現像しホトレジストパターンを形成した。
【0058】
このようにして得た130nmのライン・アンド・スペース・パターンが1:1となるホトレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好な矩形形状であり、パターニングに対する悪影響は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の保護膜除去用溶剤は、ホトレジスト膜上に形成される保護膜、特にはフッ素置換ポリマーからなる保護膜を効率よく溶解除去することができ、さらにはリサイクル使用が可能である。本発明の保護膜除去用溶剤は液浸露光プロセスに適用することができ、これにより、従来のホトレジスト材料、露光装置を用いてホトリソグラフィを行った場合の解像度を超えて、極微細なホトレジストパターンの形成が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホトレジスト膜上に積層された保護膜を除去するための溶剤であって、少なくともハイドロフルオロエーテルを含有する保護膜除去用溶剤。
【請求項2】
前記保護膜が液浸露光プロセスに用いられる保護膜形成用材料を用いて形成したものである、請求項1記載の保護膜除去用溶剤。
【請求項3】
前記保護膜が水およびアルカリに不溶なフッ素置換ポリマーからなる被膜である、請求項1または2記載の保護膜除去用溶剤。
【請求項4】
前記フッ素置換ポリマーが少なくとも環式フルオロアルキルエーテルポリマーを含有する、請求項3記載の保護膜除去用溶剤。
【請求項5】
前記ハイドロフルオロエーテルが、炭素原子数1〜4の炭化水素基と炭素原子数2〜10のフルオロアルキル基がエーテル結合された化合物の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護膜除去用溶剤。
【請求項6】
前記ハイドロフルオロエーテルがC49OCH3、C49OC25、およびC613OCH3の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護膜除去用溶剤。
【請求項7】
液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設け、該ホトレジスト膜上に保護膜を形成した後、該基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、次いで、前記液浸露光用液体および前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光し、必要に応じて加熱処理を行った後、請求項1〜6のいずれかに記載の保護膜除去用溶剤を用いて前記保護膜を除去し、続いてホトレジスト膜を現像処理することによりホトレジストパターンを得るホトレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2007−241270(P2007−241270A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31368(P2007−31368)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】