説明

偏光イメージセンサー及び製造方法

【課題】微小フィルターと対応する受光素子との間で発生するクロストークを低減して、画質を向上させる偏光イメージセンサーを提供する。
【解決手段】この偏光イメージセンサー50は、複数の受光素子6が1次元的、または2次元的に配列されたイメージセンサー7と、各受光素子6に対向配置されたマイクロレンズ(光学素子)3と、イメージセンサー7の受光素子6と対応する複数の領域に、少なくとも2種類以上の異なる偏光特性を有する微小フィルター21、22によって構成される偏光フィルター1と、を備え、各微小フィルター21、22と各マイクロレンズ3との間を透明な樹脂部材2により接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光イメージセンサーに関し、さらに詳しくは、微小フィルターと受光素子間のクロストークを低減する技術と製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通常の白黒画像やカラー画像では得られない対象物の情報を得るために、汎用のイメージセンサーに特殊なフィルターを実装して利用することが検討されている。これをイメージセンシングというが、その一例として、イメージセンサーに偏光フィルターを組み合わせて画像取得を行い、画像処理によって通常の白黒画像やカラー画像では得られない対象物のひずみや、面の傾きなどの情報を取得する方法が検討されている。偏光は直交する2つの成分に分けられるため、偏光画像を取得する際は、2つの成分それぞれに対応した画像を取得する必要がある。その方法として、フィルターを変えて2回に分けて画像を取得するか、特許文献1に開示されているように、偏光ビームスプリッター等で2つの成分を分離し、2台のイメージセンサーを用いて画像を取得する方法がある。これに対して特許文献2では、図4に示すとおり、異なる偏光が透過するフィルター403、405、406をイメージセンサー402の個々の画素に対応させて配列したタイプの偏光フィルター401をイメージセンサー402に取り付けることで、ひとつのイメージセンサーから同時に異なる成分の偏光画像を取得できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実際のイメージセンサーは図5のような形状を有しており、偏光フィルター401を取り付けた場合は、対向するイメージセンサー402の1つの画素(受光部)31に対して、隣接する複数のフィルターから光が回り込む(クロストークする)ため、画質が低下するといった問題があった。クロストークを防ぐには偏光フィルター401をできるだけイメージセンサー402に近接させる必要があるが、一画素のサイズが数μmであるのに対し、受光部31の上に形成された配線パターン30などの厚みが既に2、3μm程度であるため、偏光フィルター401をイメージセンサー402の表面に密着させてもクロストークの成分が残ってしまう。また、イメージセンサー402の画素サイズは通常数ミクロン程度であるため、偏光フィルター401とイメージセンサー402を正確にアライメントすることが困難であり、クロストーク発生の原因となる。
同様にクロストークの問題がある多チャンネルの光接続でも対策が検討されている。例えば、特許文献3では、多数の微細穴を形成した樹脂基板を導波路として利用し、隣接する受光素子と光源の間でのクロストークを防止しているが、受光素子の間隔が100μmのオーダーであり、同様の技術はイメージセンサーの画素間隔では利用が困難であるといった問題がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、イメージセンサーの画素に対応した光学素子と、それに対応する微小フィルターとを透明な樹脂部材によって光学的に接続することにより、微小フィルターと対応する受光素子との間で発生するクロストークを低減して、画質を向上させる偏光イメージセンサーを提供することを目的とする。
また、他の目的は、フィルターとイメージセンサーのアライメントを容易にできる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、複数の受光素子が1次元的、または2次元的に配列されたイメージセンサーと、前記各受光素子に対向配置された光学素子と、前記イメージセンサーの受光素子と対応する複数の領域に配置され、少なくとも2種類以上の異なる偏光特性を有する微小フィルターによって構成される偏光フィルターと、を備えた偏光イメージセンサーであって、前記各微小フィルターと前記各光学素子との間を透明な樹脂部材により接続したことを特徴とする。
請求項2は、前記微小フィルターがワイヤグリッドであることを特徴とする。
請求項3は、前記受光素子と前記光学素子との間にカラーフィルターが積層されていることを特徴とする。
請求項4は、前記偏光フィルターに前記カラーフィルターを密着配置したことを特徴とする。
請求項5は、前記イメージセンサーが裏面照射型であることを特徴とする。
請求項6は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の偏光イメージセンサーの製造方法であって、前記偏光フィルターに透明な熱可塑性樹脂により画素ごとに分離したパターンを形成する工程と、前記偏光フィルターを前記イメージセンサー上に配置する工程と、前記熱可塑性樹脂に該熱可塑性樹脂が軟化する温度以上の熱を加える工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィルターの微小領域を通過した光が、樹脂部材中を導波してイメージセンサーの画素まで到達するため、クロストークの発生を低減させることができる。
また、樹脂部材のリフローにより接続部分を形成しているので、製造が容易であり、自己整合的にアライメント位置が補正されるため、アライメントも容易に行うことができる。
また、偏光フィルターとしてワイヤグリッドを用いているので、フィルター自身の厚みが薄く、イメージセンサーの受光素子とフィルターの間隔を狭くなり、クロストークを減らすことが可能になる。
また、カラーフィルターを偏光フィルター側に形成しておくことで、フィルターと受光素子の間隔が狭められ、クロストークを低減しつつ光利用効率を改善することができる。
また、イメージセンサーとして、センサー表面から受光素子までの距離が近い裏面照射型を用いているため、クロストークを低減しつつ光利用効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る偏光イメージセンサーの構成を示す断面図、(b)入射光の光路を説明する図である。
【図2】(a)は工程1を示す図、(b)は工程2を示す図、(c)は工程3を示す図、(d)は工程4を示す図、(c)’は工程3でアライメントがずれた図、(d)’はアリメントが補正される図である。
【図3】(a)は偏光フィルターとしてワイヤグリッドを利用した場合について示す図、(b)はイメージセンサー側にあったカラーフィルターを偏光素子フィルター側に移動した例を示す図、(c)はイメージセンサーに裏面照射型を利用した構成を示す図である。
【図4】特許文献2の構成を示す図である。
【図5】クロストークが発生する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る偏光イメージセンサーの構成を示す断面図である。この偏光イメージセンサー50は、複数の受光素子6が1次元的、または2次元的に配列されたイメージセンサー7と、各受光素子6に対向配置されたマイクロレンズ(光学素子)3と、イメージセンサー7の受光素子6と対応する複数の領域に、少なくとも2種類以上の異なる偏光特性を有する微小フィルター21、22によって構成される偏光フィルター1と、を備え、各微小フィルター21、22と各マイクロレンズ3との間を透明な樹脂部材2により接続した。
即ち、本実施形態の偏光イメージセンサー50は、対応する微小フィルター21、22の微小領域とイメージセンサー7の1画素が、個別に透明な樹脂部材で接続されていることを特徴とする。このような構成の場合、図1(b)のように、微小フィルター21、22の微小領域を通過した入射光10〜13は、樹脂部材2中を導波してイメージセンサー7の受光素子(画素)6まで到達するため、クロストークの発生を低減できる。
このような形状を作成するためには、イメージセンサー7の表面に画素単位で分離されたマイクロレンズ等の構造を形成し、偏光フィルター側にも画素単位で分離された熱可塑性樹脂パターン形成し、それらをアライメントして重ね合わせたのち、加熱して熱可塑性樹脂をリフローさせればよい。
【0010】
また、偏光フィルター1としてワイヤグリッドを用いれば、偏光フィルター自身の厚みを薄くし、イメージセンサー7の受光素子6と偏光フィルター1の間隔を狭くすることができるので、よりクロストークを減らせる(図3(c)参照)。また、カラーのイメージセンサーでは通常、イメージセンサー7表面にカラーフィルター4が形成されているため、そのカラーフィルター4を偏光フィルター1側に形成しておくことで、偏光フィルター1と受光素子6の間隔を狭めて光利用効率を改善できる(図3(b)参照)。イメージセンサーとして、センサー表面から受光素子6までの距離が近い裏面照射型を用いれば、さらに光利用効率を改善できる(図3(d)参照)。
【0011】
図2は本発明の偏光イメージセンサーの製造工程を説明する図である。
まず、各微小フィルター21、22(図2(a))に透明な熱可塑性樹脂2で画素ごとに分離したパターンを形成する(図2(b))。パターンの形状は円形でも四角形でもよいが、リフロー時に近接したパターンが結合しない程度に分離させておく。樹脂部材としては、透明で熱可塑性を持ち、パターニングしやすいものであればよい。ここではリフロー後にそのままマイクロレンズとして利用できるタイプのアクリル系のフォトレジストを利用した。つぎに、微小フィルターに熱可塑性樹脂2で形成したパターンをイメージセンサー7上に配置する(図2(c))。このとき、イメージセンサー7の受光素子6に対して、所定の微小フィルターが配置されるようにアライメントしておく。最後に加熱し、樹脂部材2をリフローさせれば、画素単位でイメージセンサー7とフィルターが結合される(図2(d))。リフロー時には表面張力によりもっと表面積が小さくなるように力が働くため、たとえば図2(c)’のようにアライメントずれが発生していたとしても、リフロー後にずれ量を小さく補正することができる(図2(d)’)。
【0012】
図3(a)は偏光フィルターとしてワイヤグリッドを利用した場合について示す図である。ワイヤグリッド23は金属の細線をアレイ状に並べた偏光フィルターで、可視光用には厚さ0.2μm程度、周期150のアルミの細線パターンが利用できる。ワイヤグリッドを利用した場合、フィルター自身が非常に薄くできるので、たとえば図3(a)に示したようなパスで光14が受光素子6に到達する場合、厚さ方向で偏光特性の異なる2つの領域を通過した光が受光素子6に到達するが、ワイヤグリッド23ではフィルター厚が薄いので、このようなパスを通る光の影響を少なくすることが可能である。
図3(b)はイメージセンサー側にあったカラーフィルターを偏光素子フィルター側に移動した例を示す図である。このような構成にすると、イメージセンサー7内での光路長が短くできるので、配線層5の金属で反射や吸収される光が少なくなり光利用効率を改善できる。
図3(c)はイメージセンサーに裏面照射型を利用した構成を示す図である。この場合もイメージセンサー内での光路長が短くなり、また、配線層5の影響が全くなくなるため、偏光イメージセンサー53の光利用効率を改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0013】
1 偏光フィルター、2 樹脂部材、3 マイクロレンズ、4 カラーフィルター、5 配線層、6 受光素子、7 イメージセンサー、10〜13 入射光、20 基板、21、22 微小フルター、23 ワイヤグリッド、50〜53 偏光イメージセンサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−035403公報
【特許文献2】特開2007−086720公報
【特許文献3】特開2008−199055公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子が1次元的、または2次元的に配列されたイメージセンサーと、前記各受光素子に対向配置された光学素子と、前記イメージセンサーの受光素子と対応する複数の領域に配置され、少なくとも2種類以上の異なる偏光特性を有する微小フィルターによって構成される偏光フィルターと、を備えた偏光イメージセンサーであって、
前記各微小フィルターと前記各光学素子との間を透明な樹脂部材により接続したことを特徴とする偏光イメージセンサー。
【請求項2】
前記微小フィルターがワイヤグリッドであることを特徴とする請求項1に記載の偏光イメージセンサー。
【請求項3】
前記受光素子と前記光学素子との間にカラーフィルターが積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光イメージセンサー。
【請求項4】
前記偏光フィルターに前記カラーフィルターを密着配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光イメージセンサー。
【請求項5】
前記イメージセンサーが裏面照射型であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の偏光イメージセンサー。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の偏光イメージセンサーの製造方法であって、
前記偏光フィルターに透明な熱可塑性樹脂により画素ごとに分離したパターンを形成する工程と、
前記偏光フィルターを前記イメージセンサー上に配置する工程と、
前記熱可塑性樹脂に該熱可塑性樹脂が軟化する温度以上の熱を加える工程と、
を備えたことを特徴とする偏光イメージセンサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185782(P2011−185782A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52088(P2010−52088)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】