説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置におけるトラッキング誤差信号の非線形オフセットを補正する。
【解決手段】レンズシフトに伴う差動プッシュプル信号オフセットの非線形性を、ドライブ回路の学習補正により行う。学習でオフセットカーブを測定し、補正値を記憶。サーボ中、補正値を用いてトラッキング誤差信号を補正。非線形成分を補正できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な情報記録再生装置で、光ディスク用装置に関するものであるが、光学的な信号によりトラッキング制御を行う一般的な光学サーボ機能を用いた装置に応用できる。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、特許文献1(特開2006−294189号公報)の技術がある。特許文献1の要約の課題には、「対物レンズの機械的中立位置に対する対物レンズ位置のシフト量とトラッキングエラー信号のオフセット量とが比例関係ではない等の非線形な特性がある場合でも、トラッキングエラー信号のオフセットを高い精度で補正することができる光ディスク装置のトラッキング制御方法および光ディスク装置を提供することを目的とする」と記載され、解決手段には、「本発明の光ディスク装置の制御方法は、トラッキングエラー信号を用いて制御を行うトラッキング制御方法であって、光ピックアップ4は対物レンズを備え、対物レンズの機械的中立位置に対する対物レンズ位置のシフト量が推定され、推定された対物レンズ位置のシフト量に応じて、複数の補正関数のいずれか1つを用いて、トラッキングエラー信号の補正信号が生成されることを特徴とする」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ディスク装置の信頼性で重要なものに、トラッキングサーボの安定性がある。トラッキングサーボの安定性を決めるのは、主に、トラッキング誤差信号のゼロ点が、様々な使用条件において正しく記録情報トラック中心と一致しているという、信号の安定性であり、このゼロ点からのズレを、トラッキング誤差信号のオフセットと呼んでいる。
【0005】
トラッキング誤差信号のオフセットは、限りなくゼロに近い(ズレがない)ことが理想だが、光ヘッドであるピックアップの製造ばらつきや、ディスクの反りやうねりといった媒体のばらつきによって、ズレが生じ、オフセットが発生する。信号のゼロ点がずれることで、正しくトラック中心にサーボできなくなり、ディスクの記録再生中の脱輪が発生する一因となってしまう。
【0006】
この改善策として、信号処理上で、ズレ量であるオフセットを補正する方法が上記特許文献1(特開2006−294189号公報)などに考案されているが、対物レンズアクチュエータ自身の振動特性の影響を受けるため十分な補正効果が得られず、また補正回路のコストが高くなるという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、トラッキング誤差信号のオフセットを、低コストで確実に信号処理で補正する光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、一例として、特許請求の範囲に記載の発明により達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ディスク装置は、ピックアップ出力信号同士による補正と回路側補正との組合せにより、2重の補正効果を高速に得られるため、回路側補正自体が低精度の低コストなもので済み、かつ周波数特性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従う光ディスク装置の一例の全体構成である。
【図2】従来の差動プッシュプル法における信号の処理方法である。
【図3】多層対応した光ディスク装置における信号処理の課題を示す図である。
【図4】1ビーム法における光ディスク装置の信号処理の課題を示す図である。
【図5】補正値記憶生成回路の詳細構成例である。
【図6】補間回路の動作を説明する図である。
【図7】補正値の生成までの信号の流れを説明する図である。
【図8】ディスクの周回変動の学習例を説明する図である。
【図9】異なる半径位置における学習例を説明する図である。
【図10】多層光ディスクにおける学習例を説明する図である。
【図11】学習の手順の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従う光ディスク装置について説明する。本発明に従う光ディスク装置は、トラッキング誤差信号のオフセットを、ピックアップ出力信号の特性を生かして、数十バイトというわずかなLSI側の学習情報により、回路側で簡易かつ確実に補正できることを特徴のひとつとする。本発明に従う光ディスク装置は、補正に対応した信号出力を持つ光ピックアップと、補正処理機能をもつ信号処理回路との組合せにより実現され得る。また、信号処理回路を復号・エラー補正の機能を持つ単一の集積回路チップに組込むことで、低コスト化と高機能・高信頼化を実現できる。
【0012】
本発明の実施の形態を、図1〜図6を用いて、以下実施例で説明する。理解を容易にするため、各図において、同じ作用を示す部分には一部同じ符号を付して説明している。
【実施例1】
【0013】
本実施例の光ディスク装置は、トラッキング誤差信号のオフセットを補正して、正しくトラッキングサーボできるようにするものである。
【0014】
まず、図2を用いて、光ディスク装置における課題について説明する。光ディスク装置では、ディスク偏芯があった場合でも正しくトラック追従するために、サーボに用いるトラッキング誤差信号を、偏芯で生じるレンズ中心ずれ(レンズシフト:LS)に対して補正する信号補正を行っている。例えば、3スポット法の場合、図2(a)の様に、メインスポット受光面50の両隣に2つのサブスポット受光面51を配置し、メインスポット受光面で検出するプッシュプル信号(メインプッシュプル信号:MPP)のオフセットを、サブスポット受光面で検出するプッシュプル信号(サブプッシュプル信号:SPP)との差分を取ることで打消して補正する、いわゆる差動プッシュプル法(ディファレンシャル・プッシュプル法:DPP法)が用いられる。この補正されたプッシュプル信号を、差動プッシュプル信号(ディファレンシャル・プッシュプル信号:DPP)と呼ぶ。通常、正しく調整された差動プッシュプル信号では、図2(b)の様に、レンズシフトに伴うDPP信号の上下変動(オフセット)が消えている。ところが、近年、2層または3層以上の記録層を持つ多層光ディスクにおいては、迷光対策の為に、図3(a)の様に、サブスポットの中央部が中抜きされた受光面が用いる必要が生じた。この場合、メインスポットとサブスポットの受光面形状が異なるために、レンズシフトしてスポットが変動した場合、MPP信号とSPP信号でアンバランスが生じる。特にSPP信号側で、レンズシフトに伴い、非直線的な上下変動(オフセット)が生じるようになる。このため、従来のDPP法で得られる信号に、レンズシフトに対する非直線的なオフセットが生じ、トラッキングサーボが脱輪しやすくなる場合が生じるようになった。
【0015】
同様の課題は、1ビーム法と呼ばれるトラッキング誤差信号の生成法でも生じる。図4(a)と図4(b)は、1ビーム法に用いる回折格子パターンの一例であり、図4(a)中の斜線部分がMPP信号、図4(b)中の斜線部分がSPP信号に相当するレンズ変位に対応した信号(レンズ誤差信号:LE信号)の生成に対応したパターンであるが、パターン形状が異なるために、大きなレンズシフトに対して図4(c)に示すようなDPP信号の非直線的なオフセットが発生する。なお、今後、この非直線的なオフセットのことを、非線形オフセットと呼ぶ。それに対して、オフセットの直線的な変化を、線形オフセットと呼ぶ。
【0016】
一般的に、線形オフセットは、DPP法で正しく調整されれば、ほぼゼロに打消しできるが、非線形オフセットは完全に補正できず、非線形成分が残ってしまう。本実施例の光ディスク装置は、この非線形オフセット成分を補正することができる。
【0017】
(本発明に従う光ディスク装置の具体構成例)
次に、本発明に従う情報再生装置の、全体構成の実施の形態の一例を、図1を用いて説明する。
【0018】
装置の全体的な構成は、光ピックアップ部1、媒体である光ディスク2とスピンドルモータ3を含む機構部、それ以外の信号処理回路部より成る。
【0019】
記録媒体である光ディスク2は、回転サーボ回路4によって回転速度が制御されたスピンドルモータ3上に取付けられている。この媒体に対して、レーザ駆動回路5により駆動された半導体レーザ6からの光を照射する。
【0020】
半導体レーザ6の光は、3スポット法用の回折格子7を通過し、3ビームに分割される。なお、1ビーム法の場合は、この回折格子はなく、代わりに、復路側に回折格子8を設けている。再び3ビーム法の場合に戻り、回折格子7を通過した光は、ビームスプリッタ9を通過し、そのままコリメートレンズ10へ向かう。コリメートレンズ10は、レンズ駆動機構の可動部上に保持されており、この可動部はステッピングモータ11により光軸と平行な方向に移動可能なように構成されている。コリメートレンズ10を通過した光は、λ/4板12を通過し、対物レンズ13により集光されて、記録媒体である光ディスク2へ照射される。対物レンズ13はアクチュエータ14上に取付けられており、焦点位置を、サーボ信号生成回路25の信号によってフォーカス方向とトラック方向に、それぞれ駆動できるようになっている。照射されたうち一部の光がディスク2によって反射され、再び対物レンズ13を通過し、λ/4板12を通過して、コリメートレンズ10を通過し、偏光ビームスプリッタ9へ入射する。この際、光束はλ/4板12を2回通過したことにより偏光が90度回転しているため、偏光ビームスプリッタ9で反射され、(1ビーム法の場合はここで回折格子8を通過し)検出レンズ15へ向かう。検出レンズ15を通過した光は、半反射鏡16を通過し、受光素子17上の検出面で検出され、電気信号に変換される。なお、再生信号の信号/ノイズ比(S/N比)を改善するため、検出レンズ15と受光素子17の間に半反射鏡16を挿入して、高S/Nの再生信号検出器18を併設している。
【0021】
受光素子17上で変換された電気信号は、受光素子内の光電流アンプで増幅され、受光信号19が出力される。サーボ信号生成回路25は、この受光信号19より、フォーカス誤差信号20と、トラッキング誤差信号21と、レンズ誤差信号22と、再生信号23(RF信号)を生成する。なお本例では、3ビーム法として、四分割光検出器を用いて、フォーカス誤差を非点収差法により検出する方法で検出している。なお、1ビーム法の場合は、ナイフエッジ法によりフォーカス誤差信号を検出する。
【0022】
サーボ信号生成回路25の出力するトラッキング誤差信号21(DPP)と、レンズ誤差信号22(LE)と、再生信号23(RF信号)より、トラッキングオフセット補正量信号生成回路24が、トラッキングオフセット補正量信号29(ΔDPP補正値)を出力する。スイッチ40は、3ビーム法と1ビーム法の切替を行う。本図では3ビーム法側の切替となっている。トラッキングオフセット補正量信号生成回路24では、まずレンズ誤差信号22と、再生信号23(RF信号)より、除算器26を用いて総光量補正されたレンズ誤差信号31(補正後LE)を生成する。これは、再生総光量の変動によるレンズシフト量の誤検出を防ぐことで、本発明による補正を高精度化するのに役立つ。また、振幅中央値生成回路27は、トラッキングサーボオフ時にトラッキング誤差信号21より得られるプッシュプル信号を元に、最大値ピーク検出による上側エンベロープ信号、最小値ピーク検出による下側エンベロープ信号を生成し、その平均値をとることによってDPPオフセット補正量信号32(ΔDPP学習値)を生成する。補正値記憶生成回路28では、前記除算器26より出力される総光量補正されたレンズ誤差信号31の信号値に応じて、前記振幅中央値生成回路27より出力されるDPPオフセット補正量信号(ΔDPP)を、記憶・読出し・補間し、トラッキングオフセット補正量信号29を出力する。このトラッキングオフセット補正量信号29を前記トラッキング誤差信号21に加減算して補正することで、前記アクチュエータ14を駆動する直流オフセット補正後のトラッキング誤差信号30が生成される。
【0023】
なお、ディスク2より再生された前記再生信号23は、スイッチ33を用いて、前記再生信号検出器18出力とどちらかが選択された後、等化回路34、レベル検出回路35、同期クロック生成回路36を経て、複号回路37にて、記録された元のデジタル信号に変換される。また、同期クロック生成回路36は同時に、再生信号を直接検知して同期信号を生成し、復号回路37へ供給する。これらの一連の回路は、主制御回路38によって統括的に制御される。なお、本構成では不揮発メモリ39を備えており、これら補正に必要な光ピックアップの初期パラメータを電源切断された間も保持し、前回の学習内容を利用することで初期化動作を高速化できるようになっている。なお、主制御回路38ではスピンドルの回転周期も検知しており、上記の学習は、スピンドルの回転と同期して上記学習行うことができる。スピンドル1回転ごとに1周のプッシュプル変動を測定し、学習することで、補正の精度向上と高速化を両立している。
【0024】
次に、補正値記憶生成回路28の構成について、図5〜6を用いて詳しく説明する。
【0025】
図5は、補正値記憶生成回路28の詳細構成である。補正値記憶生成回路28では、レンズシフト量(ここでは補正前のレンズ誤差信号値)に応じて、補正すべきDPPオフセット量の記憶と補間処理を行う。複数の補正値記憶回路41は、各々、総光量補正されたレンズ誤差信号31の値の範囲に対応して、どれか1つが、入力されたDPPオフセット補正量信号32(ΔDPP学習値)を、フォーカスサーボオン、トラッキングサーボオフ時の学習中に記憶するように働く。記憶した補正値42は、補間回路43に対して出力される。補間回路43では、近隣の4点の記憶した補正値42と総光量補正されたレンズ誤差信号31を用いて、対応する補間範囲が一致した補間回路43が、補間されたトラッキングオフセット補正量信号29を出力する。これにより、記憶された補正値の各点を滑らかにつないだ補間波形出力が、補正値記憶生成回路28の出力として生成される。
【0026】
図6は、補間回路43の内部動作を示している。補間処理は、スプライン補間によって行われ、その計算値は、総光量補正されたレンズ誤差信号31をx、記憶した補正値42をSとして、図6に示されるような滑らかな3次関数により近似されて出力される。学習時に、
【0027】
【数1】


で示される数式によりa、b、c、dを各区間ごとに求め、
【0028】
【数2】


で示される数式により、トラッキングサーボオン中に計算されて出力される。
【0029】
学習が行われるタイミングは、プッシュプル信号振幅が得られる時に限られることから、フォーカスサーボオン中で、かつトラッキングサーボがオフの間に限られる。各レンズシフト量(総光量補正されたレンズ誤差信号31)に対応した値を各々記憶する必要があることから、前記サーボ条件の間に、レンズシフト走査動作が行われることになる。または光ディスク装置の出荷時において本学習を予め行うことも可能である。学習は半径方向に対しても行うことができ、半径方向に走査することで、より媒体のバラツキに対応した精度の高い補正となる。
【0030】
図11に、その補正学習の手順の例を示す。半導体レーザを点灯し、レンズ上下動(レンズスウィング)によるフォーカス誤差信号の走査を行い、ディスクの種類を判別する。次にディスク回転を開始し、コリメートレンズ位置を移動して球面収差の粗調整を行う。次にフォーカスサーボをONする。この時点でDPP信号が検出できるので、レンズシフトを行って2ヶ所の可変ゲインアンプの利得を調節し、いわゆる差動プッシュプル法におけるk値調整を行う。これにより、DPP信号の線形オフセットは補正されるので、残った非線形オフセットを、補正値記憶生成回路に記憶することで学習する。この際、レンズシフト位置を、数点変化させて、各々に対応するΔDPP学習値を学習する。典型的には、各レンズシフト位置において、ディスク1回転の間のDPP振幅エンベロープ中央値を検出し、記憶する。記憶した複数の前記DPP振幅エンベロープ中央値学習より、スプライン補間係数を計算する。学習完了後、トラッキングオフセット補正量信号(ΔDPP補正値)の出力を開始し、トラッキングサーボをONし、再生動作または記録動作に入る。
【0031】
以上、本構成とその補正原理をまとめると図7のようになる。通常のDPP法では、MPP信号とSPP信号よりDPP信号とLE信号が生成されるが、本構成ではさらに、LE信号を入力として、DPP信号に残存する非線形オフセット量を、トラッキングサーボオフ中に学習して記憶し、以後、トラッキングサーボオンされて記録動作または再生動作の続く間は、リアルタイムに得られるLE信号(歪んだレンズシフト量信号)を元に、DPP信号の非線形オフセットの補正値(ΔDPP)を、スプライン補間しながら生成し、DPP信号の上下変動を補正する。補正の結果として、直流オフセット補正後のトラッキング誤差信号(DPP2)が生成される。なお、ここではレンズシフト量(LS)の正確な値は、本回路中では未知であり、レンズシフト量に代えて、歪を含むレンズ誤差信号(LE)を補正値生成に用いている。また、通常のトラッキング誤差信号として差動プッシュプル信号(DPP信号)を考えているが、1ビーム法においてMPP信号からレンズシフトに対応するレンズシフト量信号を差引いたものを、便宜上DPP信号と呼ぶ場合もあり、ここでは、3ビーム法の場合と1ビーム法の場合を兼ねて、トラッキング誤差信号として使える信号のことを、ここではDPP信号と呼んでいる。
【0032】
即ち、本構成では、トラッキング誤差信号のレンズシフト依存カーブ特性といったピックアップの特徴に対応した補正が可能であり、特に非線形性の補正が低コストかつ高精度にできる。また、誤差信号そのものをゼロにフィードバック制御してしまった場合に従来例ではトラッキングサーボオン中の推定ができなくなるのに対し、本構成では、トラッキングサーボオン中もシフト量に対応するLE信号を検出しているので、補正値の正確な算出が可能である。また、レンズ誤差信号をまず生成し、レンズ誤差信号に基づいて補正量信号を生成するので、信号に対する加減算のみで生成可能であり、アッテネータは不要で低コストである。また、LE信号値が、実際のレンズシフト量(LS)に対して歪んでいる場合でも、補正時に同じLE信号を参照することによって、LE信号の歪によらず正しくDPPオフセット補正量信号(ΔDPP)を生成することができ、正確な補正が実現できる。また、対物レンズの機械的中立位置精度は不要であるため、周囲の振動の影響により学習結果が乱されることがなく、車載等、振動下においても正確な学習と補正が可能である。また、トラッキング誤差信号の非線形オフセット成分だけを補正するので、トラッキング誤差信号の補正精度が向上する。補正用の値の格納ビット数およびA/D変換のビット数が少なくて済み、補正用の線形補間の演算精度も低く済み、補正用値の演算時間(サンプリングレート)や補正出力応答周波数も低いもので済みコストが低く済む。また補正値の学習精度が低く済むので、学習に必要となる時間が短く済み、準備動作が高速となる。
【0033】
また、本構成によるDPP信号の非線形オフセット補正方法では、DPPオフセット補正量信号(ΔDPP)による補正機能は、通常の線形オフセット補正の追加補正機能として使うことができる。すなわち、通常の線形オフセット補正により生成されたDPP信号に、非線形オフセット成分が多く含まれることが振幅中央値生成回路27で検知された場合にのみ、ΔDPP信号生成のための学習動作を行う。これにより、DPP信号中の非線形オフセットが問題とならない通常時には、非線形性補正の学習動作をスキップして、より高速に光ディスク装置を起動できる。学習動作をスキップした場合には、DPPオフセット補正量信号をゼロとすればよい(ΔDPP=0)。
【0034】
また、本構成では、学習によって、個々のピックアップのバラツキにも対応した補正が低コストで可能である。
【0035】
なお、図8の様に、ディスク回転に同期して学習することで、回転方向に応じたムラのあるディスクでも再現性良く周内変動を把握して安定な補正値学習ができる。具体的には、DPP信号は、正しくk値調整できていても、ディスクの反りなどの影響によって、時間70に対し一回転周期71で上下に変動する場合がある。そのため、ピックアップのレンズシフト特性以外の要因によらない、これらの変動を、ディスク回転同期で学習することで、補正値の学習を安定化できる。
【0036】
または、スピンドル1回転ごとに1点ずつ学習することにより、最速かつディスク1周全体の変動を把握して安定な補正値学習ができる。この場合も一回転の間の時間平均を取ることによって、補正値の学習を安定化できる。
【0037】
また、本構成では、図9の様に、ディスクの半径方向位置に応じたディスクのバラツキ(反り・うねり・膜厚変化)に対応した補正値学習をすることで、ディスクの個別バラツキに対応した安定な制御の可能な補正値学習ができる。この場合、補正値の学習シーケンスを、各ディスク半径位置で繰返す。これらは、トラッキング信号が安定しないディスクであることが検出された場合のみ行うようにし、通常のディスクでは学習をスキップすることで、初期化動作を高速化している。
【0038】
また、本構成では、スプライン補間を用いて学習するため、学習するレンズシフト位置の数を最低限として、高精度な最適補正値の予測ができるため、学習に必要となる時間を最小に抑えて、光ディスクの準備動作を高速化できる。補正値を予めフィッティング処理することにより、ノイズによる異常な補正値を平均化により防ぐことができ、制御が高精度化できる。また、学習結果を記憶できる不揮発メモリ39を備えており、トラッキングサーボオン後の処理を前もって済ませておける為、サーボ処理を高速化できる。
【0039】
また、本構成では、レンズ誤差信号に対して、再生総光量による補正を行っているため、レンズシフト量信号自体の補正回路との組合せにより、ディスク上の記録未記録域の違い/記録再生など動作条件の違いによらず、正確なレンズシフト位置に応じた信号を補正により得られるので、再現性の高い正確なトラッキングオフセット補正量信号を得られ、補正が高精度化できる。
【0040】
また、本構成は、1ビーム方式にも用いることができ、1ビーム方式は、レンズシフトと共に原理的に視野(ビーム有効径内光束の往路・復路間のズレ)が変化するため、通常3ビーム方式等他の方式に比べ、レンズシフトに伴うレンズシフト量信号変化の非線形性が大きく、非線形成分補正の改善の効果が大きい。
【0041】
また、本構成は、サブスポット中抜きを行った3ビーム方式にも用いることができ、通常3ビーム方式は、レンズシフトに対するレンズシフト量信号変化の線形性は比較的良いため非線形性が小さいが、2層干渉光対策のためにサブスポット受光面一部が中抜きされた、変形型3ビーム方式の場合、サブスポットとメインスポットの受光面形状が違うことにより通常3ビーム方式等他の方式に比べ、レンズシフトに伴うレンズシフト量信号変化の非線形性が大きく、非線形成分補正の改善の効果が大きい。
【0042】
また、本構成は、図10の様な多層光ディスクでも大きい効果を得ることができる。特に3層以上の多層光ディスクでは、各層間の反射光により、受光素子上に多くの迷光が入射する。迷光の影響により、各層で得られるレンズシフト時のトラッキングオフセットの非線形性・歪が、各層ごとに異なる症状が発生する。各層で各々補正することで、多層光ディスク媒体使用時でも、本補正の効果を生かして良好なトラッキングサーボ安定性が得られる。この場合、例えば、各層ごとに、各ディスク半径位置において、ΔDPP値の学習を行うことで、多層特有の迷光によるトラッキング誤差信号の非線形オフセットを補正することができる。
【0043】
本発明は、例えば、干渉を利用してトラッキング検出する他の光記録装置にも応用可能である。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 光ピックアップ部
2 光ディスク
3 スピンドルモータ
4 回転サーボ回路
5 レーザ駆動回路
6 半導体レーザ
7 回折格子
8 回折格子
9 ビームスプリッタ
10 コリメートレンズ
11 ステッピングモータ
12 λ/4板
13 対物レンズ
14 アクチュエータ
15 検出レンズ
16 半反射鏡
17 受光素子
18 再生信号検出器
19 受光信号
20 フォーカス誤差信号
21 トラッキング誤差信号
22 レンズ誤差信号
23 再生信号
24 トラッキングオフセット補正量信号生成回路
25 サーボ信号生成回路
26 除算器
27 振幅中央値生成回路
28 補正値記憶生成回路
29 トラッキングオフセット補正量信号
30 直流オフセット補正後のトラッキング誤差信号
31 総光量補正されたレンズ誤差信号
32 DPPオフセット補正量信号
33 スイッチ
34 等化回路
35 レベル検出回路
36 同期クロック生成回路
37 複号回路
38 主制御回路
39 不揮発メモリ
40 スイッチ
41 補正値記憶回路
42 補正値
43 補間回路
50 メインスポット受光面
51 サブスポット受光面
60 時間
61 一回転周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップと信号処理回路とを有する光ディスク装置であって、
前記光ピックアップは、対物レンズを駆動するアクチュエータと、
加減算によりトラッキング誤差信号とレンズシフト量信号が生成可能な受光信号出力部とを有し、
前記信号処理回路は、前記受光信号出力部からの信号からトラッキング誤差信号とレンズ誤差信号とを生成するサーボ信号生成回路と、前記レンズ誤差信号を入力とするトラッキングオフセット補正量信号生成回路とを有し、
前記トラッキング誤差信号が、前記レンズ誤差信号と前記トラッキングオフセット補正量信号の両方と加減算されることにより、前記トラッキング誤差信号の直流オフセットのレンズ位置に対する非線形性が補正されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ピックアップと信号処理回路とを有する光ディスク装置であって、
前記光ピックアップは、対物レンズを駆動するアクチュエータと、
加減算によりトラッキング誤差信号とレンズシフト量信号が生成可能な受光信号出力部とを有し、
前記信号処理回路は、前記受光信号出力部からの信号からメインプッシュプル信号とサブプッシュプル信号とを生成するサーボ信号生成回路と、前記メインプッシュプル信号とサブプッシュプル信号より差動プッシュプル信号とレンズ誤差信号を生成する信号生成回路と、前記レンズ誤差信号を入力とするトラッキングオフセット補正量信号生成回路とを有し、
前記差動プッシュプル信号のレンズ位置に対する非線形性が、前記トラッキングオフセット補正量信号と加減算されることにより補正されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキングオフセット補正量信号生成回路は、複数のレンズシフト位置に対応した複数のトラッキングオフセット補正値を記憶する記憶手段を有し、
再生動作開始前または記録動作開始前に、学習動作により、前記複数のレンズシフト位置に対応した複数のトラッキングオフセット補正値が前記記憶手段に記憶されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記学習動作は、フォーカスサーボオン時に、トラッキングサーボオフの状態で行われ、
ディスクを回転するスピンドルの回転に同期して、前記複数のレンズシフト位置を走査し、検出されるトラッキング誤差信号振幅のエンベロープ検出を行って、
トラッキングオフセット補正値を記憶することにより行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記学習動作は、フォーカスサーボオン時に、トラッキングサーボオフの状態で行われ、
スピンドル1回転ごとに1点ずつ前記複数のレンズシフト位置を走査し、検出されるトラッキング誤差信号振幅のエンベロープ検出を行って、
トラッキングオフセット補正値を記憶することにより行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記学習動作は、異なるディスク半径位置において、複数回実施されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキングオフセット補正量信号生成回路は、各トラッキングオフセット補正値が記憶された前記複数のレンズシフト位置における補正値のスプライン補間を行って、トラッキングオフセット補正量信号を生成することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光ディクス装置であって、
前記レンズシフト量信号を、受光信号出力の総和に基づき補正する、レンズシフト量信号補正回路を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキング誤差信号と前記レンズシフト量信号が1ビーム方式により生成されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項2に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキング誤差信号と前記レンズシフト量信号が、
サブスポット受光面が中抜きされた3ビーム方式により生成されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項3に記載の光ディスク装置であって、
対応する光ディスク媒体として、3層以上の記録面を持つ多層光ディスク媒体に対応する光ディスク装置であり、前記学習動作を各層において走査実行し補正学習することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−192369(P2011−192369A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60119(P2010−60119)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】