説明

光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品

【課題】低損失、低コストでアッセンブリの容易な光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品を提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバコリメータは、SMファイバ1と、このSMファイバの先端面に光軸を一致させて光学的に接続され、屈折率が径方向に連続的に変化しているGIファイバ2とを備えている。
GIファイバ2のコア21のコア径Dは、GIファイバ2端面の最大MFDの3倍以上とされ、また、GIファイバ2の比屈折率差Δは、0.6%以上とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品に係り、特に、光ファイバ通信で使用される光デバイス部品内の光の結合部分に用いられる光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、光ファイバシステムがFTTH(Fiber To The Home)へシフトする中、光アイソレータ、光スイッチその他の光学素子を含むバルク型光デバイスの需要が増大している。
【0003】
このような構成のバルク型光デバイスにおいては、光ファイバから出射する光はレンズによってコリメートされてバルク型光デバイスへ入射され、バルク型光デバイスから出射する光は再びレンズによって集光されて光ファイバへ入射させる必要がある。
【0004】
しかしながら、このような光の結合においては、光ファイバとしてコア径が小さいシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:以下「SMファイバ」と略称する。)を使用して、例えば、図15に示すように、第1のSMファイバ10a、第1のレンズ20a、バルク型光デバイス30、第2のレンズ20bおよび第2のSMファイバ10bの組み合わせで配置した場合、第1のSMファイバ10aから出射する光が第1のレンズ20aを通過することで大きなスポット径で長い距離をコリメートできるものの、これらの第1、第2のSMファイバ10a、10b、第1、第2のレンズ20a、20bおよびバルク型光デバイス30のアライメントが複雑化するため、手間がかかり、コストアップになるという難点があった。
【0005】
このため、(イ)図16に示すように、バルク型光デバイス30の両端に第1、第2のグリンレンズ(Gradient Index Lens)40a、40bを配設し、第1、第2のグリンレンズ40a、40bの端面に第1、第2のSMファイバ10a、10bの一方の端面をそれぞれ光学的に接続したいわゆるグリンレンズ方式、(ロ)図17に示すように、バルク型光デバイス30の両端にTEC(Thermal Expanded)処理を施した第1、第2のファイバ(以下「TECファイバ」と略称する。)50a、50bの一方の端面をそれぞれ光学的に接続し、第1、第2のTECファイバ50a、50bの他方の端面にそれぞれ第1、第2のSMファイバ10a、10bの一方の端面を光学的に接続したいわゆるTEC方式、(ハ)図18に示すように、バルク型光デバイス30の両端に第1、第2のグレーデットインデックスファイバ(Graded Index Fiber:以下「GIファイバ」と略称する。)60a、60bを配設し、第1、第2のGIファイバ60a、60bの端面に第1、第2のSMファイバ10a、10bの一方の端面をそれぞれ光学的に接続したいわゆるGIF方式が案出されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0006】
しかしながら、(イ)のグリンレンズ方式においては、前述のレンズ方式と同様に、SMファイバからの出射光がGRINレンズを通過することで大きなスポット径で長い距離をコリメートできるものの、アライメントに要する工程が増え、全体的にコストアップになるという難点があった。また、(ロ)のTEC方式においては、SMファイバからの出射光がTECファイバを通過することで、比較的大きなモードフィールド径(Mode Field Diameter:以下「MFD」と略称する。)で小さい回析角が得られるものの、他方式と比べてワーキングディスタンスが短いという難点があった。さらに、(ハ)のGIF方式においては、第1に、GIファイバをレンズとして用いることで、アライメントフリーで低損失なコリメータを低コストで作製でき、第2に、GIファイバの長さが1/4ピッチ長のときMFDが最大となり、これに対応してコリメータ間のワーキングディスタンスを長くすることができるものの、MFDが一定値以上になるとコリメート特性が悪化し、GIコリメータを対向させた場合、挿入損失が悪化するという難点があった。
【0007】
【特許文献1】特開平4−21803号公報
【特許文献2】特開平6−258554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、GIファイバのコリメータの屈折率プロファイルから、低損失、低コストでアッセンブリの容易な光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様である光ファイバコリメータは、SMファイバの先端に光学的に接続されたGIファイバを備え、GIファイバのコア径は、GIファイバ端面の最大MFDの3倍以上とされているものである。
【0010】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様である光ファイバコリメータにおいて、GIファイバの比屈折率は、0.6%以上とされているものである。
【0011】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様または第2の態様である光ファイバコリメータにおいて、GIファイバの屈折率分布定数は、1.5〜2.5とされているものである。
【0012】
本発明の第4の態様である光ファイバ部品は、一方に光入射端面を有し、他方に光出射端面を備える光学素子と、光学素子の両端面にそれぞれ一方の端面が光学的に接続された第1、第2のGIファイバと、第1、第2のGIファイバの他方の端面にそれぞれ一方の端面が光学的に接続された第1、第2のSMファイバとを備え、第1、第2のGIファイバのコア径は、第1、第2のGIファイバ端面の最大MFDの3倍以上とされているものである。
【0013】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様である光ファイバ部品において、光学素子は、光アイソレータ、光フィルタ、光スイッチ若しくは光可変減衰器またはこれらの組合せから構成されているものである。
【0014】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様である光ファイバ部品において、GIファイバの外径は、SMファイバの外径に対し0.6〜3倍の外径とされているものである。
【0015】
本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様である光ファイバ部品において、GIファイバの先端部に、コネクタハウジングが取り付けられているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様乃至第7態様の光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品によれば、SMファイバにGIファイバを光学的に接続することで光ファイバコリメータを実現し得ることから、低コスト、アライメントフリーでかつ低損失という面で有効であり、また、GIファイバのコア径がMFDの3倍以上とされていることから、コリメータ間のワーキングディスタンスを長くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の光ファイバコリメータおよびこれを用いた光ファイバ部品を適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の光ファイバコリメータの説明図、図2は、本発明の光ファイバコリメータにおけるGIファイバの比屈折率差Δの条件を示している。
【0018】
図1において、本発明の光ファイバコリメータは、SMファイバ1と、このSMファイバの先端面に光軸を一致させて光学的に接続され、屈折率が径方向に連続的に変化しているGIファイバ2とを備えている。
【0019】
SMファイバ1は、光を伝搬させるコア11と、コア11の外周に設けられたクラッド12とを備えており、同様に、GIファイバ2も、光を伝搬させるコア21と、コア21の外周に設けられたクラッド22とを備えている。
【0020】
SMファイバ1とGIファイバ2間は、鏡面加工した両者の接続端面をバーナーやアーク放電などで加熱することにより融着接続されている。
【0021】
このような構成の光ファイバコリメータにおいては、SMファイバ1の入力端から入射される光は、小さいMFDの状態H1でSMファイバ1中を伝搬しSMファイバ1の出力端から出射される。また、SMファイバ1から出射される光は、GIファイバ2の入力端に入射されGIファイバ2において大きいMFDの状態H2に拡大され、シングルモードでGIファイバ2中を伝搬し図示しない光学素子の光入射端面に入射される。
【0022】
ここで、GIファイバ2のコア21の外径((以下「コア径」という。)Dは、後述する理由により、GIファイバ2端面の最大MFDの3倍以上とされ、また、GIファイバ2の比屈折率差(Δ)は、図2に示すように、0.6%以上とされている。
【0023】
ところで、SMファイバ1の端面にGIファイバ2が光学的に接続されると、SMファイバ1から出射される光は、GIファイバ2中で光強度が広がり、その広がり方はGIファイバ2の屈折率分布が2乗分布(α=2)であるとすると、式1で表すことができる。
【0024】
【数1】

【0025】
但し、
【数2】

n0:クラッドの屈折率、r:径方向の位置、a:コア半径
また、式1は、GIファイバが理想的な2乗分布と仮定すると、式2のように変換することができる。
【0026】
【数3】

【0027】
但し、2w1:SMファイバ1から入射した伝搬光のMFD、w2:GIファイバが1/4ピッチ長のときのMFD、Δ:GIファイバのピーク比屈折率差、2a:コア径、λ:波長
GIファイバ2中のMFDは式2を用いると、GIファイバ2の長手方向において、図3に示すように変化する。なお、この場合のGIファイバ2の条件は、Δ=0.85%、コア径D=106μmである。
【0028】
ここで、GIファイバ2の1/4ピッチとなる長さ(以下「1/4ピッチ長」という。)は、およそ600μmでMFDが最大になるものの、実際のGIファイバ2中では屈折率分布が理想的な2乗分布(α=2)でないため式2の理論計算が当てはまらないことになる。
【0029】
次に、このような構成の光コリメータを対向させた場合に、低損失伝搬が実現する理由について説明する。
【0030】
先ず、GIファイバ2のコア径DがMFDの3倍以上とすることが好ましい理由は、GIファイバ2中の伝搬光の分布がクラッド22に重なる部分が大きくなることで、クラッド22からの反射によるモードが大きくなり損失が発生するためである。従って、GIファイバ2のコア径DがMFDの3倍以上(以下「D≧3×MFD」という。)であれば理想的なα乗分布でなくてもクラッド22からの反射によるモードの影響が受けにくくなり、コリメータとして対向させても損失が増大しないことになる。
【0031】
また、GIファイバの屈折率分布乗数αが1.5〜2.5の範囲が好ましい理由は、D≧3×MFDの条件で、αが1.5〜2.5の範囲であれば伝搬光が収差の影響を受けても損失増とならないためである。
【0032】
ところで、前述のように、GIファイバ2の理論上のMFD(以下「理論MFD」という。)と実測したMFD(以下「実測MFD」という。)とでは差があることが本発明者等の実験から明らかになった。具体的には、Δ=0.85%、コア径Dが104μmの理論MFDは58μmとなるが、実測MFDは32μmとなる。つまり、当該実験から、実測値をw2´とすると、w2´=0.55×w2という関係があることから、上記の式2は式3のように表すことができ、式3をMFDとコア径Dの関係に変化させると式4のように表すことができる。
【0033】
【数4】

【0034】
【数5】

【0035】
但し、w1=5.25μm、λ=1.55μm、n0=1.444とする。
【0036】
以上の点を考慮すると、D≧3×MFDの条件を満たすファイバ構造を式4から求めることができる。
【0037】
図4は、式4から求めたΔを変化させたときのコア径DとMFDの関係を示している。ここで、横軸はGIファイバ2のコア径D(μm)、縦軸はGIファイバ2のMFD(μm)を示しており、また、図中、L1はΔが0.1%、L2はΔが0.2%、L3はΔが0.3%、L4はΔが0.4%、L5はΔが0.5%、L6はΔが0.6%、L7はΔが0.7%、L8はΔが0.8%、L9はΔが0.9%の場合のそれぞれの設計範囲を示している。
【0038】
同図より、図中、太線のL6がD=3×MFDとなるため、D≧3×MFDの条件を満足する低損失のコリメータを作製するためには、太線L6より下の領域(例えばL6〜L9)、すなわち、Δ≧0.6%以上のGIファイバ2が設計条件を満たすことになる。
【0039】
次に、通常のSMファイバに、Δ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバ若しくはΔ≧0.6%以上の条件を満足しないGIファイバを融着接続した場合の各種事例について説明する。
【0040】
最初に、第1の接続例として、通常のSMファイバとΔ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバを融着接続した例について説明する。
【0041】
図5は、α値が2付近のGIファイバの屈折率分布とMFDの関係を示している。同図において、横軸はGIファイバの半径(μm)、縦軸は光の強度および比屈折率差を示しており、図中、L10は比屈折率差Δ、L11は1/4ピッチ長のGIファイバにおける光強度分布、L12は1/2ピッチ長のGIファイバにおける光強度分布、L13はMFDの範囲、L14はコア径Dの範囲を示している。
【0042】
α値が2であり、Δ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバ2を1/4ピッチ長で伝送用SMファイバ1に融着接続したところ、図5に示すように、コア径Dの大きさがMFDの3倍以上となった。ここで、1/4ピッチ長のGIファイバ端面のMFDは30μm、コア径Dは106μm、Δは0.85%であった。
【0043】
また、図6に示すように、1/2ピッチ長のGIファイバ2の両端にSMファイバ1(以下、図中、左側のSMファイバ1を「第1のSMファイバ1a」、右側のSMファイバ1を「第2のSMファイバ1b」という。)を融着接続し、その接続ロスを測定したところ、図7に示すように、接続損失は、図中の最小値である0.1dB以下となり、低損失のコリメータが得られ、伝送用SMファイバ中に適用しても問題のない値が得られた。なお、図6中、符号H1a、H1bは第1、第2のSMファイバ1a、1b中を小さいMFDの状態で伝搬する光の強度分布、H2はGIファイバ2中を大きいMFDの状態で伝搬する光の強度分布を示している。
【0044】
次に、第2の接続例として、通常のSMファイバとΔ≧0.6%以上の条件を満足しないGIファイバを融着接続した例について説明する。
【0045】
α値が2.4であり、Δ≧0.6%以上の条件を満足しないGIファイバ2を1/2ピッチ長で伝送用SMファイバ1に融着接続したところ、その接続ロスは図8に示すように0.5dB以上に悪化するのでコリメータとして通信システムに適用することは困難である。なお、この場合における1/2ピッチ長におけるGIファイバ端面のMFDは60μm、コア径Dが100μm、Δは0.5%で、コア径DがMFDの1.67倍となるため、下限値の3倍を大きく下回ることになる。
【0046】
次に、第3の接続例として、TEC処理したファイバとΔ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバを融着接続した例について説明する。
【0047】
α値が2であり、Δ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバ2を1/4ピッチ長で伝送用SMファイバ1の先端をTEC処理したファイバと融着接続したところ、コア径DがMFDの3倍以上となった。また、図9に示すように、GIファイバ2の両端に、第1、第2のTEC処理したファイバ3a、3bの一端を光学的に接続し、この第1、第2のTEC処理したファイバ3a、3bの他端に第1、第2の伝送用SMファイバ1a,1bを光学的に接続したところ、その接続損失は、最小値が0.1dB以下となり、低損失のコリメータが得られた。なお、図9中、符号H1a、H1bは、図6と同様に第1、第2のSMファイバ1a、1b中を小さいMFDの状態で伝搬する光の強度分布、H3a、H3bは、TEC処理したファイバ3a、3b中をH1a、H1bよりも大きいMFDの状態で伝播する光の強度分布、H2は、図6と同様にGIファイバ2中を大きいMFDの状態で伝搬する光の強度分布を示している。
【0048】
次に、第4の接続例として、コアレスファイバとΔ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバを融着接続した例について説明する。ここで、コアレスファイバとは、純石英ガラスからなる単一屈折率のファイバである。
【0049】
α値が2であり、Δ≧0.6%以上の条件を満足するGIファイバ2を1/4ピッチ長で伝送用SMファイバ1の先端に接続したコアレスファイバと融着接続したところ、コア径DがMFDの3倍以上となった。また、図10に示すように、GIファイバ2の両端に、第1、第2のコアレスファイバ4a、4bの一端を光学的に接続し、この第1、第2のコアレスファイバ4a、4bの他端に第1、第2の伝送用SMファイバ1a,1bを光学的に接続したところ、その接続損失は最小値が0.1dB以下となり、低損失のコリメータが得られた。なお、図10中、符号H1a、H1bは、図6と同様に第1、第2のSMファイバ1a、1b中を小さいMFDの状態で伝搬する光の強度分布、H4a、H4bはコアレスファイバ4a、4b中をH1a、H1bよりも大きいMFDの状態で伝播する光の強度分布、H2は、図6と同様にGIファイバ2中を大きいMFDの状態で伝搬する光の強度分布を示している。ここで、SMファイバ、コアレスファイバ、GIファイバの外径は125μmである。なお、本接続例ではコアレスファイバを用いているが、コアレスファイバの代わりに空気層(空間伝播層)としてもよい。
【0050】
以上の各種事例より、本発明の光ファイバコリメータによれば、コア径Dの大きさがMFDの3倍以上となり、また、その接続損失が0.1dB以下となり、低損失なコリメータが得られることがわかる。
【0051】
次に、本発明の光ファイバコリメータを用いた光ファイバ部品について説明する。
【0052】
図11は、本発明の第1の実施例における光ファイバ部品の概略図を示している。なお、同図において、図1〜図10と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
図11において、本発明の光ファイバ部品は、光アイソレータ、光フィルタ、光スイッチ若しくは光可変減衰器またはこれらの組合せから構成される光学素子5と、Δ≧0.6%以上の条件を満足する一対のGIファイバ2(以下、図中、左側のGIファイバ2を「第1のGIファイバ2a」、右側のGIファイバ2を「第2のGIファイバ2b」という。)、第1、第2のSMファイバ1a、1bとを備えており、光学素子5の一方の端面には、第1のGIファイバ2aの一方の端面(出力端)が光学素子5の光軸と一致させて光学的に接続され、他方の端面には、第2のGIファイバ2bの一方の端面(入力端)が光学素子5の光軸と一致させて光学的に接続されている。また、第1のGIファイバ2aの他方の端面(入力端)には、第1のSMファイバ1aの一方の端面(出力端)が第1のGIファイバ2aの光軸と一致させて光学的に接続され、第2のGIファイバ2bの他方の端面(出力端)には、第2のSMファイバ1bの一方の端面(入力端)が第2のGIファイバ2bの光軸と一致させて光学的に接続されている。なお、第1、第2のGIファイバ2a,2bと第1、第2のSMファイバ1a、1b間は、鏡面加工した両者の接続端面をバーナーやアーク放電などで加熱することにより融着接続することができ、また、第1、第2のGIファイバ2a、2bと光学素子5間は、光学的な接着剤またはマッチングオイルなどの塗布により光学的に接続することができる。なお、SMファイバの外径は125μm、GIファイバの外径は250μmである。ここで、GIファイバの外径はSMファイバの外径の0.6〜3倍の外径とすることが好ましい。0.6倍未満若しくは3倍を超えると安定的な接続が困難となり、接続界面での損失が増大するおそれが生じるためである。
【0054】
このような構成の光ファイバ部品においては、第1のSMファイバ1aに入射した光は、小さいMFDの状態で第1のSMファイバ1a中を伝搬し第1のGIファイバ2aへ入射され、第1のGIファイバ2aにおいて大きいMFDの状態に拡大され、シングルモードで第1のGIファイバ2a中を伝搬し光学素子5へ入射される。また、光学素子5に入射した光は、第2のGIファイバ2bへ入射され、この第2のGIファイバ2b中を大きいMFDの状態で伝搬し、第2のSMファイバ1bへ入射され、この第2のSMファイバ1bにおいて小さいMFDの状態に縮小され、第2のSMファイバ1b中を伝搬する。
【0055】
このような光ファイバ部品によれば、第1、第2のSMファイバ1a,1bに第1、第2のGIファイバ2a,2bを接続するだけで光ファイバコリメータを実現し得ることから、低コスト、アライメントフリーでかつ低損失という面で有効であり、また、第1、第2のGIファイバ2a,2bのコア径DがMFDの3倍以上とされていることから、コリメータ間のワーキングディスタンスを長くすることが可能となる。
【0056】
図12は、本発明の第2の実施例における光ファイバ部品の説明図を示している。なお、同図において、図1〜図11と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
この実施例においては、図1に示す光ファイバコリメータを備えている。
【0058】
GIファイバ2の外径は、例えば80μm〜2.5mmの間で適宜選択することができる。同様に、SMファイバ1の外径も例えば80μm〜2.5mmの間で適宜選択することができる。ここで、SMファイバ、GIファイバの外径がどちらか一方い若しくは双方とも1.25mmの場合には、MUコネクタのフェルールの外径1.25mmと同径であるためにスリーブを介してPC(Physical Contact)が可能となる。なお、SMファイバ、GIファイバとも外径が80μm〜2.5mmの範囲を好ましいとしたが、これは、80μm未満ではファイバが細くなりすぎて強度上問題が生じ、取り扱いが困難になるからであり、2.5mmを越えると加撓性が悪くなりやはり取り扱いが困難になるからである。
【0059】
図13は、本発明の第3の実施例における光ファイバ部品の説明図を示している。なお、同図において、図1〜図12と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
この実施例においては、図12に示す一対の光ファイバ部品を備えている。
【0061】
この実施例においては、アダプタ6を介して図1に示す光ファイバコリメータをフェルール7a、7bに挿入して対向配置させており、第2の実施例と同様に、コネクタ形状でアダプタ6との光結合を容易に行なうことができる。
【0062】
図14は、本発明の第4の実施例における光ファイバ部品の説明図を示している。なお、同図において、図1〜図13と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
この実施例において、図1に示す光ファイバコリメータを備えている。
【0064】
GIファイバ2の一方の端部(先端部)の外周には、コネクタハウジング8が取り付けられており、GIファイバ2の先端面は、コネクタハウジング8の端面より若干突出する如くして配設されている。なお、図中、符号9はねじ部を示している。
【0065】
この実施例においては、コネクタハウジング8の取り付けにより、GIファイバ2の先端部がプラグ形状とされていることから、当該GIファイバ2の先端部をアダプタ6に接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は前述の実施例に限定されず、本発明の特許請求の範囲内で例えば次のように変形、修正を加えることができる。
【0067】
第1に、前述の実施例においては、GIファイバの外径とSMファイバの外径を同径にした場合、および前者の外径と後者の外径を異ならせている場合について述べているが、作業性および材料コストを考慮すれば、ファイバ径125μmの通常のSMと、ファイバ径125μmのGIファイバを融着接続することが最適である。
【0068】
第2に、本発明におけるGIファイバとしては、屈折率が2乗屈折率分布(α=2)を理想とするが、分布関数αがコア径全域をフィッティングしたとき、1.5<α<2.5の範囲でも構わない。
【0069】
第3に、本発明におけるGIファイバのコア径は、特に規定されない。
【0070】
第4に、本発明におけるGIファイバの入射側に用いるSMファイバは、通常のシングル モード光ファイバ(SMF28または同等品)と同等のものだけでなく、高NA(開口数)−SMファイバ、フォトニック結晶ファイバ、DSF(分散シフト光ファイバ)、NZ−DSF(ノンゼロ分散シフトファイバ)、NSP(Non-Strippable Primary Coated)ファイバとしてもよい。
【0071】
第5に、本発明におけるGIファイバの材料としては、石英ベースガラスにGeを添加して屈折率を上げるものを通常使用するが、P(リン)、B(ホウ素)、La(ランタン)、Al(アルミニウム)、F(フッ素)を共添加してもよい。また、プラスチック樹脂を用いた材料を用いて屈折率分布を調整してもよい。
【0072】
第6に、本発明におけるGIファイバの長さは、コア径、ピーク屈折率、入射側のMFDの大きさにより異なるが、作業性の関係上50μm〜5cm程度としてもよい。
【0073】
第7に、SMファイバとGIファイバの接続は、融着接続したものに限定されず、例えばPCコンタクト、もしくはメカニカルスプライスとしてもよい。
【0074】
第8に、SMファイバはテーパー状のものを使用しても良く、伝送用GIファイバとの光接続の状況に応じて使い分けても良い。
【0075】
第9に、光ファイバコリメータの機能部分はMFDの大きなSMファイバを融着接続、PC接続またはメカニカルスプライスによって追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の光ファイバコリメータの説明図
【図2】本発明の光ファイバコリメータにおけるGIファイバのコアの屈折率分布を示す説明図。
【図3】GIファイバ中における長手方向のMFDの変化状態を示す説明図。
【図4】GIファイバの設計範囲例を示す説明図。
【図5】α値が2付近のGIファイバの屈折率分布とMFDの関係を示す説明図。
【図6】SMファイバとGIファイバの接続ロス測定系を示す説明図。
【図7】SMファイバとGIファイバの接続ロス測定結果を示す説明図。
【図8】SMファイバと所定の条件を満足しないGIファイバの接続ロス測定結果を示す説明図。
【図9】TECファイバとGIファイバの接続ロス系を示す説明図。
【図10】コアレスファイバとGIファイバの接続ロス系を示す説明図。
【図11】本発明の第1の実施例における光ファイバ部品の示す説明図。
【図12】本発明の第2の実施例における光ファイバ部品の示す説明図。
【図13】本発明の第3の実施例における光ファイバ部品の示す説明図。
【図14】本発明の第4の実施例における光ファイバ部品の示す説明図。
【図15】従来の光ファイバ部品の説明図。
【図16】従来の光ファイバ部品の説明図。
【図17】従来の光ファイバ部品の説明図。
【図18】従来の光ファイバ部品の説明図。
【符号の説明】
【0077】
1、1a、1b・・・SMファイバ
2、2a、2b・・・GIファイバ
5・・・光学素子
8・・・コネクタハウジング
D・・・コア径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモードファイバの先端に光学的に接続されたグレーデットインデックスファイバを備え、
前記グレーデットインデックスファイバのコア径は、前記グレーデットインデックスファイバ端面の最大モードフィールド径の3倍以上であることを特徴とする光ファイバコリメータ。
【請求項2】
前記グレーデットインデックスファイバの比屈折率は、0.6%以上であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバコリメータ。
【請求項3】
前記グレーデットインデックスファイバの屈折率分布定数は、1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ファイバコリメータ。
【請求項4】
一方に光入射端面を有し、他方に光出射端面を備える光学素子と、前記光学素子の両端面にそれぞれ一方の端面が光学的に接続された第1、第2のグレーデットインデックスファイバと、前記第1、第2のグレーデットインデックスファイバの他方の端面にそれぞれ一方の端面が光学的に接続された第1、第2のシングルモードファイバとを備え、
前記第1、第2のグレーデットインデックスファイバのコア径は、前記第1、第2のグレーデットインデックスファイバ端面の最大モードフィールド径の3倍以上であることを特徴とする光ファイバ部品。
【請求項5】
前記光学素子は、光アイソレータ、光フィルタ、光スイッチ若しくは光可変減衰器またはこれらの組合せから構成されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバ部品。
【請求項6】
前記グレーデットインデックスファイバの外径は、前記シングルモードファイバの外径に対し0.6〜3倍の外径とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載の光ファイバ部品。
【請求項7】
前記グレーデットインデックスファイバの先端部に、コネクタハウジングが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載の光ファイバ部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−113488(P2006−113488A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303275(P2004−303275)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】