説明

光偏向装置

【課題】可動部を正確に揺動させることが可能な光偏向装置および光偏向装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】光偏向装置は、基板と、平板形状の可動部と、可動部を基板の上方に離反した位置で揺動軸の周りに揺動可能に支持する可撓梁と、可動部を揺動させるアクチュエータと、基板上に設置されているとともに可撓梁の下方から可撓梁に接離可能な下限規制部と、を備えている。揺動軸に垂直な断面における可撓梁の下面の形状が、下限規制部の上方に位置する領域において、曲面を有して下方へ突起している形状とされているか、または、揺動軸に垂直な断面における下限規制部の上面の形状が、曲面を有して上方へ突起している形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光ビームを偏向させる(光ビームの反射方向を変化させることをいう)光偏向装置であって、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、光ビームを偏向させる静電駆動型の光学装置500が開示されている。図45に示すように、光学装置500は、下部基板501と、上部基板502と、可動ミラー503と、可動ミラー503の外周に位置するリング部508と、可動ミラー503を揺動可能に支持するトーションスプリング504と、可動ミラー503の中央部に対向する位置において下部基板501に設置された凸部505と、可動ミラー503の中心に対向する位置において凸部505の上面に設置された支点突起506と、下部基板501の上面に設置された下部電極507を備えている。トーションスプリング504は、図45に示す位置に1対設置されており、可動ミラー503と上部基板502を接続している。図45に示す1対のトーションスプリング504と垂直な方向(紙面に対して垂直な方向)にさらに1対のトーションスプリング(図示しない)が設置されており、リング部508と上部基板502を接続している。下部電極507は、図45に示す位置に1対設置されており、図45に示す1対のトーションスプリング504と垂直な方向(紙面に対して垂直な方向)に、さらに1対の下部電極507が設置されている。合計4箇所に設置された下部電極507の中から選択した単数または複数の下部電極507に電圧を印加することによって、電圧を印加した下部電極507に対向する範囲の可動ミラー503を静電気力で基板側に引き寄せる。すなわち、下部電極507への電圧印加により、可動ミラー503に駆動トルクが作用する。これによって、可動ミラー503は揺動し、可動ミラー503に入射する光ビームの反射方向を変化させる。
【0003】
可動ミラー503は支点突起506と2対のトーションスプリング504とリング部508によって支持されており、支点突起506を中心に揺動する。可動ミラー503の中心と対向する位置に支点突起506が設置されているため、可動ミラー503が下方へ変位すること(沈み込むこと)を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−57575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光学装置500では、可動ミラー503が支点突起506を揺動支点として揺動する。可動ミラー503が平面方向に移動した場合や、支点突起506が可動ミラー503の中心に対向する位置に正確に設置されていない場合などには、揺動支点が可動ミラー503の中心に正確に位置しないことになる。すると、可動ミラー503が揺動する方向によって、同一の駆動トルクに対する揺動角が変化する。また、可動ミラー503が複数備えられる場合には、可動ミラー503間で、可動ミラー503に対する基板に沿う方向での揺動支点の位置が異なることとなる。すると、可動ミラー503間で、揺動角のばらつきが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の光偏向装置は、基板と、平板形状の可動部と、可動部を基板の上方に離反した位置で揺動軸の周りに揺動可能に支持する可撓梁と、可動部を揺動させるアクチュエータと、基板上に設置されているとともに可撓梁の下方から可撓梁に接離可能な下限規制部と、を備えた光偏向装置である。また、揺動軸に垂直な断面における可撓梁の下面の形状が、下限規制部の上方に位置する領域において、曲面を有して下方へ突起している形状とされているか、または、揺動軸に垂直な断面における下限規制部の上面の形状が、曲面を有して上方へ突起している形状とされている。
【0007】
アクチュエータは、可動部に駆動トルクを与えることで、可動部を揺動させる機構である。アクチュエータの駆動方式の例としては、静電駆動式、電磁駆動式、熱駆動式、などが挙げられる。アクチュエータによって可動部を揺動させる場合に、可動部が基板に向けて変位する(すなわち可動部が沈み込む)ことがある。しかし本願の光偏向装置では、下限規制部によって可撓梁を下方から支持することができるので、可撓梁が下限規制部の高さ以下には下方に変位しないようにすることができる。よって、可動部の沈み込み量を所定値に制限することができる。
【0008】
また可撓梁は、可動部を揺動軸の周りに揺動可能に支持している。よって可撓梁が、揺動支点の基板に沿う方向の位置を決定している。よって、下限規制部の設置位置によって、揺動支点の基板に沿う方向の位置が影響を受けることはない。すると、下限規制部が可撓梁の中心に対向する位置に正確に設置されていない場合においても、下限規制部によって揺動支点の基板に沿う方向の位置がずらされてしまうことがない。よって、同一駆動トルクに対する揺動角が可動部の揺動方向によって変化してしまう事態などを防止できるため、可動部を正常動作させることが可能となる。また、光偏向装置が複数備えられる場合においても、揺動支点の可動部に対する基板に沿う方向の位置が、光偏向装置間でばらつくことを防止できる。よって、光偏向装置間で、揺動角がばらつくことを防止することが可能となる。
【0009】
また、可撓梁が下限規制部によって支持されている状態で、可動部が揺動する場合を説明する。可撓梁の下面および下限規制部の上面が共に平面の場合には、可撓梁と下限規制部とが接触する際に、平面と平面とが接することになる。すなわち、揺動軸に垂直な断面において、両者が線接触する。すると、揺動軸を中心にして可動部を揺動させると、可撓梁と下限規制部との接触部で引っかかりが発生するため、スムーズに可動部を揺動させることができない。一方、本願の光偏向装置では、揺動軸に垂直な断面において、可撓梁の下面の形状または下限規制部の上面の形状が、曲面を有して突起している形状とされている。すると、可撓梁の下面と下限規制部の上面が接触する際に、平面と曲面との接触となる。すなわち、揺動軸に垂直な断面において、両者が常に点接触する。よって、可動部が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0010】
また、可撓梁の下面の形状および下限規制部の上面の形状の両方が、曲面を有して突起している形状とされていてもよい。この場合にも、可撓梁の下面と下限規制部の上面が接触する際に、曲面同士の接触となる。よって揺動状態に関わらず、揺動軸に垂直な断面において、接触部は常に点接触となる。これにより、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0011】
また、本願の光偏向装置では、揺動軸に垂直な断面における可撓梁の下面の形状が、可撓梁の全長に渡って、曲面を有して下方へ突起している形状とされているとしてもよい。可撓梁は、可撓梁の揺動軸に垂直な断面での、可動部に垂直な方向の厚さが厚くなることに応じて、基板方向へたわみにくくなる。そして本願の光偏向装置では、可撓梁の下面の形状が、可撓梁の全長に渡って曲面を有して下方へ突起している。すると、可撓梁の下面の形状が平面形状とされている場合に比して、可撓梁の揺動軸に垂直な断面における、可動部に垂直な方向での厚さが厚くなる。よって、可撓梁の全長に渡って下面の形状が平面形状とされている可撓梁に比して、可撓梁を基板方向へたわみにくくすることができる。
【0012】
また、本願の光偏向装置では、可動部の下面に、下方へ突起している少なくとも1つの突起部がさらに形成されているとしてもよい。可動部の下面に突起部が形成されていない場合に、可動部に大きな駆動トルクが加えられると、可動部が大きく変形して、可動部下面と基板表面とが直接に接触する場合がある。この場合、面と面の接触であるため、接触面積が最大となり、可動部下面が基板上面に張り付くスティッキングが発生するおそれがある。一方、本願の光偏向装置では、突起部が形成されている。よって、大きな駆動トルクが加えられて可動部が大きく変形した場合においても、可動部は突起部を介して基板の上面に接触することになる。すると、接触面積を小さくすることができるため、スティッキングの発生を防止することができる。
【0013】
また、本願の光偏向装置では、揺動軸に垂直な断面における可撓梁の下面の形状が、下限規制部の上方に位置する領域において、曲面を有して下方へ突起している形状とされており、揺動軸に垂直な断面における下限規制部の上面の形状が、曲面を有して陥没している形状とされているとしてもよい。これにより、可動部に沈み込みが発生し、可撓梁の下面と下限規制部の上面が接触する場合には、可撓梁の下面の突起部と、下限規制部の上面の陥没部とが噛み合うことになる。よって、可撓梁が、基板に平行な方向であって揺動軸に垂直な方向へ移動することを規制することができる。すなわち、下限規制部に可撓梁が接する際の、可撓梁の下限規制部上での位置決めをすることができる。
【0014】
また、突起部と陥没部とは共に曲面で形成されている。よって、突起部と陥没部とが噛み合った状態で、揺動軸を中心にして可動部を揺動させる場合においても、突起部と陥没部との噛み合い部で引っかかりが発生しないため、スムーズに可動部を揺動させることができる。
【0015】
また、本願の光偏向装置では、可撓梁の下面の形状において曲面を有して下方へ突起している形状の曲面の曲率が、下限規制部の上面の形状において曲面を有して陥没している形状の曲面の曲率以上とされていてもよい。曲率は、曲面の曲がり具合を表す量であり、曲がり具合がきついほど曲率は大きくなる。可撓梁の下面の形状において曲面を有して下方へ突起している形状の曲面の曲率と、下限規制部の上面の形状において曲面を有して陥没している形状の曲面の曲率とが、同等である場合には、可撓梁の突起部と下限規制部の陥没部とが噛み合う際に、突起部の曲面全体と陥没部の曲面全体とが接触する。すると、噛み合い部に隙間が形成されにくくなる。よって、突起部と陥没部とが噛み合った状態で、揺動軸を中心にして可動部を揺動させる場合においても、突起部と陥没部との噛み合い部でがたつきが発生しにくくなる。よって、より正確に位置決めをしながら、可動部を揺動させることが可能となる。また、可撓梁の下面の形状において曲面を有して下方へ突起している形状の曲面の曲率が、下限規制部の上面の形状において曲面を有して陥没している形状の曲面の曲率よりも大きい場合には、隙間を有して、可撓梁の突起部と下限規制部の陥没部とが噛み合う。よって、可撓梁が、基板に平行な方向であって揺動軸に垂直な方向へ移動することを規制することができる。
【0016】
また、本願の光偏向装置では、可動部の表面から上方に伸びている支柱部と、支柱部の上端から支柱部から遠ざかる方向に向けて可動部の上面と平行に伸びており、光を反射する材料で形成されているミラー部とをさらに備えるとしてもよい。そして、可動部において下面側に突起部が形成されている領域の上面側に、支柱部が形成されているとしてもよい。ミラー部は、光を反射することにより、ミラーの役割を果たす。また、ミラー部は、支柱部によって可動部に固定されているため、可動部の揺動と共にミラー部が揺動する。可動部において下面側に突起部が形成されている領域の上面側には、突起部の突起形状に沿った曲面を有する陥没部が形成されている場合がある。そして、陥没部に支柱部を作成すると、支柱部と可動部との界面に曲面が存在することになる。すると、界面の全面が平面である場合に比して、支柱部と可動部との接触面積を大きくすることができるため、支柱部と可動部との接続強度を高めることができる。また、支柱部と可動部とを異なる材料で作成する場合には、接触面積を大きくすることで、異種界面の安定性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動部を正確に揺動させることが可能な光偏向装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の光偏向装置の平面図である。
【図2】図1に示す光偏向装置のII−II線における断面図である。
【図3】図1に示す光偏向装置のIII−III線における断面図である。
【図4】図1に示す光偏向装置のIV−IV線における断面図である。
【図5】光偏向装置の可動部の沈み込みを説明する図である。
【図6】光偏向装置の可動部の沈み込みを説明する図である。
【図7】実施例1の光偏向装置の可動部の沈み込みを説明する図である。
【図8】実施例1の光偏向装置の動作を説明する図である。
【図9】実施例1の光偏向装置の動作を説明する図である。
【図10】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図11】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図12】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図13】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図14】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図15】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図16】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図17】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図18】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図19】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図20】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図21】実施例1の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図22】実施例2の光偏向装置の平面図である。
【図23】図22に示す光偏向装置のXXIII−XXIII線における断面図である。
【図24】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図25】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図26】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図27】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図28】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図29】実施例2の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図30】実施例3の光偏向装置の平面図である。
【図31】図30に示す光偏向装置のXXXI−XXXI線における断面図である。
【図32】図30に示す光偏向装置のXXXII−XXXII線における断面図である。
【図33】実施例3の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図34】実施例3の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図35】実施例3の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図36】実施例3の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図37】実施例4の光偏向装置の平面図である。
【図38】図37に示す光偏向装置のXXXVIII−XXXVIII線における断面図である。
【図39】実施例4の光偏向装置の動作を説明する図である。
【図40】実施例4の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図41】実施例4の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図42】実施例4の光偏向装置の製造工程を説明する図である。
【図43】光偏向装置の変形例の平面図である。
【図44】光偏向装置の動作を説明する図である。
【図45】従来例の光学装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に説明する実施例の主要な特徴を以下に列記する。
(特徴1)1対の可撓梁で可動部を揺動可能に支持している。各々の可撓梁が捻れることによって可動部が揺動する。各々の可動梁の下方に下限規制部が設置されている。
(特徴2)1対の可撓梁の両側に分けて、一対のアクチュエータが配置されている。
(特徴3)各々のアクチュエータは静電駆動型であり、アクチュエータに向かい合う範囲の可動部を基板に向けて引き付ける吸引力を生成する。一方のアクチュエータを作動させると可動部は基板に対して揺動する。下限規制部がなければ、可動部は基板に対して揺動する際に、その揺動中心が基板に接近する。下限規制部は揺動中心が基板に接近する途中で、可撓梁の下面に接触し、可撓梁がそれ以上に下方に変位することを規制する。
【実施例1】
【0020】
実施例1に係る第1の製造方法によって製造される、第1の光偏向装置20について説明する。図1は、光偏向装置20の平面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、図1のIII−III線断面図である。図2に示すように、光偏向装置20は、基板下層200と、基板下層200の上面側に積層された基板上層210を備えている。また、可動部220を基板下層200に対して揺動可能に支持する、1対の可撓梁241a、241b(図1、図3参照)が形成されている。
【0021】
可動部220は、導電層225と、導電層225の周囲に形成された絶縁層223、224とを含んでいる。絶縁層223の上面に導電層225が形成されており、導電層225の上面および側面に絶縁層224が形成されている。可動部220の導電層225は、外部端子232に電気的に接続されている。
【0022】
図1に示すように、基板上層210は可動部220の周囲を取り囲む枠状部分を備えている。基板上層210の枠状部分の内側の一端から可撓梁241aが伸びており、可動部220の第1の接続点242aに連結されている。また、基板上層210の枠状部分の内側の他端から可撓梁241bが伸びており、可動部220の第2の接続点242bに連結されている。可動部220は、可撓梁241a、241bの長手方向の側面に沿って延びる部分を有しており、平面視すると、H字形状となっている。
【0023】
図3に示すように、1対の可撓梁241a、241bは、絶縁層223、224および導電層225を備えている。可撓梁241aおよび241bは、基板上層210と可動部220とを接続している。図1および図3に示すように、可撓梁241a、241bは細長く形成されており、その長手方向を軸として捩れ易い特性を有している。可撓梁241a、241bがその長手方向軸の周りに捩れることによって、可動部220がこの長手方向軸の周りに揺動する。可撓梁241a、241bの長手方向軸が、可動部220の揺動軸240となる。図1および図3に示すように、各々の可撓梁241aおよび241bの下方に、下限規制部250aおよび250bが設置されている。
【0024】
図2に示すように、基板下層200は、ウェハ層201と、絶縁層202、203と、固定電極204a、204bとを含んでいる。ウェハ層201と、ウェハ層201の上面全体に形成されている絶縁層202と、固定電極204a、204bとは、平面状である。固定電極204a、204bは、可動部220の揺動軸240を含み可動部220に垂直な面に対して対称に形成されている。また固定電極204a、204bは互いに絶縁されている。外部端子231a、231bの各々は、絶縁層203、223および224を貫通している。固定電極204aは外部端子231aと電気的に接続されており、固定電極204bは外部端子231bと電気的に接続されている。固定電極204a、204bおよび絶縁層202の上面には、絶縁層203が形成されている。そして基板下層200は、その全体が平面状となっている。
【0025】
図3に示すように、基板上層210は、絶縁層223および224と、絶縁層223と絶縁層224との間に形成されている導電層225とを備えている。外部端子232は、絶縁層224を貫通している。外部端子232は、導電層225と電気的に接続されている。基板上層210の絶縁層223と、可動部220の絶縁層223は、可撓梁241a、241bの絶縁層223によって連続している。また、基板上層210の絶縁層224と、可動部220の絶縁層224は、可撓梁241a、241bの絶縁層224によって連続している。また、基板上層210の導電層225と、可動部220の導電層225は、可撓梁241a、241bの導電層225によって連続している。基板上層210は、基板下層200の平面部分に一体に形成されている。また、1対の可撓梁241aおよび241bと、可動部220とは、基板下層200から離反した高さに支持されている。
【0026】
可動部220の上面には傘状のミラー設置部(図示せず)が備えられている。ミラー設置部には、ミラー(図示せず)が設置される。これにより、可動部220のH字形状部分の上面側のみならず、可撓梁241a、241bの上面側にもミラーを設置することができる。よって、開口率(光偏向装置を平面視したときに、光偏向装置が占有する面積に対して、ミラーの面積が占める割合)を向上させることができる。
【0027】
図4は、図1のIV−IV線断面を拡大した図である。図4は、可撓梁241bの揺動軸240に垂直な断面についての断面図に相当する。揺動軸240に垂直な断面における可撓梁241bの下面の形状が、曲面を有して基板下層200側へ突起している形状とされていることで、突起部243bが形成されている。また、可撓梁241bの上面には、陥没部228bが形成されている。突起部243bおよび陥没部228bは、可撓梁241bの全長に渡って形成されている。なお可撓梁241aにおいても、同様にして、突起部243aおよび陥没部228aが、可撓梁241aの全長に渡って形成されている。下限規制部250bは、基板下層200の絶縁層203の上に設置された第1犠牲層251と、その側面および上面に形成された絶縁層253とを備えている。下限規制部250bの高さは高さHとされている。また、下限規制部250bの上面は、可撓梁241bの下面に形成されている突起部243bと、距離Dだけ離反している。
【0028】
図4の下部に矢印で示す可撓梁241bの幅方向において、下限規制部250bの幅W2は、可撓梁241bの幅W1よりも大きくなっている。これにより、可撓梁241bの幅方向における下限規制部250bの設置位置のマージンを確保することができる。また、図4に示すように、下限規制部250bの幅W2は、可撓梁241bを挟んで対向する位置にある可動部220の端部間の距離Bよりも小さいため、可動部220と下限規制部250bが接触することはない。よって、下限規制部250bによって可動部220の揺動が阻害されることはない。
【0029】
図1および図4に示すように、可動部220の正常動作を阻害しないように、下限規制部250aおよび250bは、可撓梁241aおよび241bの下方に設置されており、可動部220の下面には侵入していない。
【0030】
尚、本実施例においては上記のとおり、下限規制部250aおよび250bの幅W2は、可撓梁241aおよび241bの幅W1よりも大きくなっている場合を説明した。しかしこの形態に限られず、幅W2と幅W1の大きさがほぼ同程度である場合や、幅W2が幅W1よりも小さい場合であっても、可撓梁241aおよび241bの下方への変位量を規制することは可能である。
【0031】
下限規制部250aおよび250bの作用を、図5〜図7を用いて説明する。図5〜図7は、図1のIII−III線での断面図である。図5〜図7は、可動部220の変位によって、可撓梁241aおよび241bがどのように変位するかを説明する図である。図5は、下限規制部250aおよび250bが備えられていない場合において、可動部220に沈み込みが発生した場合を示している。図6は、下限規制部250aおよび250bが備えられていない場合において、可動部220が基板下層200と接触して固着した状態(スティッキング)を示している。図7は、下限規制部250aおよび250bが備えられている場合において、下限規制部250aおよび250bによって、沈み込み量が制限されている場合を示している。
【0032】
図5に示すように、可動部220に沈み込みが発生すると、可動部220は平面の状態を維持したまま、可撓梁241aおよび241bが歪曲することによって、可動部220の位置が下方(図中下方向)へ変位する。図5に示すように沈み込みが発生すると、図3の場合と比較して、基板下層200と可動部220との距離が小さくなってしまい、可動部220が揺動する際の揺動角の最大値が小さくなってしまう。さらに、沈み込み量が大き過ぎると図6のように、可動部220が基板下層200と固着してしまう(スティッキング)。スティッキングが起こった場合、破壊を伴わずに可動部220を基板下層200から離すことは、非常に困難である。
【0033】
一方、本実施例のように、下限規制部250aおよび250bを設置すれば、図7に示すように、可撓梁241aおよび241bが下限規制部250aおよび250bによって下方から支持される。これよって、可動部220の沈み込み量を制限することができる。
【0034】
光偏向装置20の動作を説明する。光偏向装置20は、静電駆動式の装置である。光偏向装置20では、固定電極204aに印加する駆動電圧と固定電極204bに印加する駆動電圧とを制御することによって、可動部220を揺動軸240の周りに揺動させる。例えば、外部端子232を接地し、外部端子231a、231bを駆動信号生成器(図示しない)に接続する場合を説明する。
【0035】
駆動信号生成器を用いて、固定電極204aに駆動電圧を印加する場合には、可動部220の導電層225と固定電極204aとの間に静電引力が発生する。よって、固定電極204aに対向する位置の可動部220が、基板下層200に吸引される。そして、可動部220が下方に変位して沈み込みが発生する場合には、可撓梁241a下面の突起部243aが下限規制部250aの上面に接触するとともに、可撓梁241b下面の突起部243bが下限規制部250bの上面に接触する。よって、図8に示すように、可動部220の第1端部227aの下端が固定電極204aに近づくとともに、第2端部227bが固定電極204bから離れるように、可動部220が傾く。
【0036】
次に、図8の状態において、固定電極204bに駆動電圧を印加する場合には、導電層225と固定電極204bとの間に静電引力が発生する。よって図9に示すように、可動部220の第2端部227bの下端が固定電極204bに近づくとともに、第1端部227aが固定電極204aから離れるように、可動部220が傾く。
【0037】
実施例1に係る光偏向装置20の効果を説明する。実施例1の光偏向装置20によれば、可動部220に沈み込みが発生した場合においても、図7で説明したとおり、下限規制部250aおよび250bによって可撓梁241aおよび241bを下方から支持することができる。よって、可撓梁241aおよび241bが、下限規制部250aおよび250bの高さHを越えて、さらに基板下層200側へ変位しないようにすることができる。これにより、可動部220の沈み込み量を所定値に制限することができる。
【0038】
また可撓梁241aおよび241bは、可動部220を揺動軸240の周りに揺動可能に支持している。よって可撓梁241aおよび241bは、基板下層200に沿う方向における、可動部220の揺動支点の位置を決定している。下限規制部250aおよび250bの設置位置によって、基板下層200に沿う方向での、可動部220の揺動支点の位置が影響を受けることはない。すると、下限規制部250aおよび250bが、可撓梁241aおよび241bの中心に対向する位置からずれた位置に設置されている場合においても、この設置位置ずれによって、基板下層200に沿う方向での可動部220の揺動支点の位置がずらされてしまうことがない。よって例えば、同一駆動トルクに対する揺動角が可動部220の揺動方向によって変化してしまう事態などを防止できるため、可動部220を正常動作させることが可能となる。また、光偏向装置20が複数備えられる場合においても、光偏向装置20間で、基板下層200に沿う方向での揺動支点の位置がばらつくことを防止できる。よって、光偏向装置20間で、揺動角がばらつくことを防止することが可能となる。
【0039】
また、図45の光学装置500では、可動ミラー503と支点突起506とが別体で形成されている。すると、マスク合わせずれ等の製造工程でのプロセスばらつきの影響により、支点突起506が可動ミラー503の中心に対向する位置に正確に設置されていない事態などが発生しやすくなる。すると、複数の光学装置500間における、基板に沿う方向での揺動支点の位置ばらつきが発生しやすくなる。一方、本願の光偏向装置20では、基板に沿う方向での揺動支点の位置を決定する可撓梁241aおよび241bは、可動部220と一体で形成されている。すると、基板下層200に沿う方向における可動部220の揺動支点の位置については、製造工程でのプロセスばらつきの影響を受けにくくすることができる。よって、複数の光偏向装置20間における、基板に沿う方向での可動部220の揺動支点の位置ばらつきを発生しにくくすることができる。
【0040】
また、可撓梁241aおよび241bが、下限規制部250aおよび250bによって支持されている状態で、可動部220が揺動する場合を説明する。可撓梁241aおよび241bの下面、および、下限規制部250aおよび250bの上面が共に平面の場合には、図1のIV−IV線断面図は、図44に示す形態になる。図44に示すように、可撓梁241bと下限規制部250bとは、平面と平面とで接している。すなわち、揺動軸240に垂直な断面で見た場合に、両者が線接触する。すると、可撓梁241aと下限規制部250aとの接触部、および、可撓梁241bと下限規制部250bとの接触部を支点として可動部220を揺動させると、可撓梁241aおよび241bと下限規制部250aおよび250bとの接触部で引っかかりが発生するため、スムーズに可動部220を揺動させることができない。一方、本願の光偏向装置20では、揺動軸240に垂直な断面において、可撓梁241aおよび241bの下面に、曲面を有して突起している突起部243aおよび243bが形成されている。すると、図8および図9で説明したように、可撓梁241bの下面と下限規制部250bの上面とは、曲面と平面とで接している。すなわち、揺動軸240に垂直な断面で見た場合に、両者が常に点接触する。よって、可撓梁241aと下限規制部250aとの接触部、および、可撓梁241bと下限規制部250bとの接触部を支点として可動部220が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部220を揺動させることができる。
【0041】
また、可撓梁241aおよび241bは、可撓梁241aおよび241bの揺動軸240に垂直な断面において、可動部220に垂直な方向の厚さが厚くなることに応じて、基板下層200方向へたわみにくくなる。可撓梁241aおよび241bの下面の形状が平面形状の場合には、可撓梁241aおよび241bの可動部220に垂直な方向の厚さは、絶縁層223、導電層225および絶縁層224の堆積厚さで決定される。しかし、絶縁層223、導電層225および絶縁層224の堆積厚さを厚くすると、可動部220の厚さも厚くなってしまう。一方、本願の光偏向装置20では、可撓梁241aおよび241bの全長に渡って、可撓梁241aおよび241bの下面に突起部243aおよび243bが形成されている。これにより、絶縁層223、導電層225および絶縁層224の堆積厚さを変えずに、可撓梁241aおよび241bの可動部220に垂直な方向での厚さを、さらに厚くすることができる。よって、可動部220の厚さを厚くすることなく、可撓梁241aおよび241bを基板下層200方向へよりたわみにくくすることができる。
【0042】
また、下限規制部250aおよび250bによって可動部220の沈み込みを抑止することができるため、可動部220を支持する可撓梁241aおよび241bの断面積を、従来よりも小さく設計することも可能である。可動部220の揺動角は、可撓梁241aおよび241bの捻り抵抗力と、アクチュエータによる駆動トルクによる力とが釣り合う位置によって決まる。よって、可撓梁241aおよび241bの断面積を小さくし、捻り抵抗力を低減することができれば、少ない駆動力によって大きな揺動角を得ることができる。
【0043】
次に、下限規制部250aおよび250bを備えている光偏向装置20の、第1の製造方法について、図10〜図21を用いて説明する。図10〜図21は、光偏向装置20の製造工程の各工程における材料ウェハ、または材料ウェハの上面に絶縁層等を積層した積層体の状態を、図4と同じ断面で図示している。尚、光偏向装置20のその他の構成については、従来用いられている一般的なMEMS技術を用いた光偏向装置の製造方法を適用することができる。
【0044】
第1の製造方法では、最初に基板下層200を構成する各層を形成する。まず、図10に示すような材料ウェハ201を準備する。材料ウェハ201の材料には、例えば単結晶シリコン基板を用いることができる。次に、熱酸化等を行い、材料ウェハ201の上面に酸化膜から成る絶縁層202を形成する。次に、絶縁層202の上面にポリシリコン等を材料とする導電層を成膜し、フォトエッチングを行ってパターニングして、固定電極204a、204b(図1、図2参照)を形成する。ここで、フォトエッチングとは、フォトリソグラフィーからエッチングまでの一連の処理を意味する。さらに熱酸化等を行うことで、絶縁層202、固定電極204a、204bの上面に、絶縁層203を形成する。これにより、図11に示す基板下層200を形成することができる。
【0045】
図11の状態の基板下層200に対して、ポリシリコン等を用いて、第1犠牲層251を形成する。第1犠牲層251の厚さは、下限規制部250aおよび250bの高さHに応じて設計すればよい。次に、第1犠牲層251上にレジスト層252を塗布する。そして、レジスト層252をフォトエッチングによりパターニング処理する。パターニング処理は、下限規制部250bの大きさおよび形状に合わせて行われる。これにより、図12に示すようにパターニングされたレジスト層252が得られる。
【0046】
パターニングされたレジスト層252を通して、第1犠牲層251を異方性エッチング処理する。異方性エッチングの例としては、RIE(Reactive Ion Etching)が挙げられる。その後、レジスト層252を除去する。そして、積層体に熱酸化処理を行い、第1犠牲層251の表面に酸化膜からなる絶縁層253を成膜する。これにより、図13に示すように、第1犠牲層251および絶縁層253によって、下限規制部250bが形成される。
【0047】
図13に示す積層体に、ポリシリコン等を材料とする第2犠牲層260を形成する。第2犠牲層260を形成した段階では、固定電極204a、204bおよび下限規制部250bによる段差によって、第2犠牲層260の上面にも段差が形成される。そして、第2犠牲層260の上面に形成されている段差を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって平坦化する。これにより、図14に示す平坦な第2犠牲層260を形成することができる。第2犠牲層260の上面に段差が残った状態で可動部220を作成すると、可動部220の表面に段差が残る。そして、可動部220に段差が残った状態で、可動部220上面に反射膜を形成すると、当該段差によって反射膜の反射率が低下してしまう。よって、第2犠牲層260の上面をCMPで平坦化することで、このような事態が発生することを防止できる。なお、絶縁層253の上表面と第2犠牲層260の上表面との距離dは、図4に示す可撓梁241bの下表面の突起部243bと下限規制部250bの上表面との距離Dに応じて設計すればよい。
【0048】
次に、熱酸化等を行い、第2犠牲層260の上面に酸化膜から成るエッチング用マスク261を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク261にパターニング処理することによって、エッチングホール262を形成する。これにより、図15に示すように、エッチングホール262を有する、エッチング用マスク261が形成される。図15において、エッチングホール262の中心位置は、可撓梁241aおよび241bの中心位置と一致している。また、エッチングホール262の開口幅W5は、可撓梁241aおよび241bの幅W1よりも小さい。これは後述するように、等方性エッチングにより、エッチングホール262の横方向へのエッチングが発生するためである。
【0049】
次に、エッチングホール262を通して、第2犠牲層260に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチングの例としては、XeF(二フッ化キセノン)ガス等を用いたドライエッチングが挙げられる。また、界面活性剤入りTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)等を用いたウェットエッチングが挙げられる。等方性エッチング処理により、図16に示すように、エッチングホール262の開口部を中心として、窪み部263が形成される。等方性エッチングでは、縦横方向に同時にエッチングされるため、アンダーカット(エッチングホール262の横方向へのエッチング)が発生する。よって、エッチングによって第2犠牲層260に形成される窪み部263の断面形状を、半円形状にすることができる。また、窪み部263の半円形状における半径の値は、等方性エッチング処理の処理時間によって調整することができる。その後、エッチング用マスク261を除去することにより、図17に示すように、第2犠牲層260に窪み部263が形成されている形状が得られる。
【0050】
図17に示す積層体に熱酸化処理を行うことにより、図18に示すように、第2犠牲層260の上面に、絶縁層223を形成する。窪み部263に絶縁層223が形成されることで、突起部243bの形状が形成される。すなわち、窪み部263の窪み形状が、突起部243bの突起形状として転写される。次に、絶縁層223の上面にポリシリコン等の導電層225を成膜する。そして、可動部220、可撓梁241aおよび241bの形状に合わせて、フォトエッチングにより導電層225をパターニングする。これにより、図19に示す構造が形成される。図19において、中央部の導電層225の幅W4は、図4に示す可撓梁241aおよび241bの幅W1に応じて設計される。具体的には、後述する工程で中央部の導電層225の両側に絶縁層224を形成した後の厚さが幅W1となるように、中央部の導電層225の幅W4を設計すればよい。また、両側の導電層225間の距離bは、図4に示す可動部220間の距離Bに応じて設計される。
【0051】
図19に示す積層体に熱酸化処理を行うことにより、絶縁層223および導電層225の上面に絶縁層224を形成する。これにより、図20に示す構造が形成される。また、フォトエッチングにより、図2に示すコンタクトホール258aおよび258bと、図3に示すコンタクトホール259を形成する。そしてスパッタリング等の方法を用いて、コンタクトホール258a、258b、259が形成されている積層体の上面にAl等の金属を材料として金属層を成膜した後、フォトエッチングを行ってパターニングする。これにより、図1ないし図3に示すように、外部端子231a、231b、232が形成される。
【0052】
さらに、図21に示すように、絶縁層223の一部をフォトエッチングによって除去することで、エッチングホール226を形成する。エッチングホール226によって、図1、図2に示すように、基板上層210と可動部220と可撓梁241a、241bがパターニングされる。また、エッチングホール226の底面に、第2犠牲層260が露出する。
【0053】
図21に示す積層体に対して、XeFガスによる等方性エッチング等を行うと、エッチングホール226を通して第2犠牲層260が除去される。なお、図21の工程で行われる等方性エッチング処理は、第2犠牲層260が完全に除去されるまで行なわれる。これによって、図4に示すように、可動部220を基板下層200から離反させることができる。これにより、図1ないし図3に示す光偏向装置20が完成する。
【0054】
実施例1に係る第1の製造方法の効果を説明する。第1の製造方法では、図19で説明したように、絶縁層223、導電層225および絶縁層224を形成する工程により、可撓梁241aおよび241bと突起部243aおよび243bとを、同時に作成することができる。よって、可撓梁241aおよび241bの下面に突起部243aおよび243bを形成する工程を、簡略化することが可能となる。また、突起部243aおよび243bを作成するために必要な工程は、図15のエッチング用マスク形成工程と、図16および図17の等方性エッチング工程のみである。よって、大幅に製造工程を変更することなく、突起部243aおよび243bを有する可撓梁241aおよび241bを製造することが可能である。
【実施例2】
【0055】
実施例2に係る第2の製造方法によって製造する第2の光偏向装置30について説明する。図22は、光偏向装置30の平面図である。図23は、図22のXXIII−XXIII線断面図である。図23に示すように、揺動軸340に垂直な断面における下限規制部350bの上面の形状が、曲面を有して上方へ突起している形状とされている。また、揺動軸340に垂直な断面における可撓梁341bの下面の形状が、平面形状とされている。下限規制部350bの高さは、高さH2とされている。また、下限規制部350bの上面は、可撓梁341bの下面と距離D2だけ離反している。なお、下限規制部350aの形状も、下限規制部350bの形状と同様とされている。また、可撓梁341aの下面形状も、可撓梁341bの下面形状と同様とされている。また、光偏向装置30のその他の構造は、実施例1の光偏向装置20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
実施例2に係る光偏向装置30の効果を説明する。実施例2の光偏向装置30によれば、可動部320に沈み込みが発生した場合に、下限規制部350aおよび350bによって、可撓梁341aおよび341bを下方から支持することができる。よって、可撓梁341aおよび341bが、下限規制部350aおよび350bの高さH2を越えて、さらに基板下層300側に変位しないようにすることができる。これにより、可動部320の沈み込み量を所定値に制限することができる。
【0057】
また、可撓梁341aおよび341bが下限規制部350aおよび350bによって支持されている状態で、可動部320が揺動する場合を説明する。実施例2の光偏向装置30では、揺動軸340に垂直な断面において、下限規制部350aおよび350bの上面の断面形状が、曲面を有して突起している形状とされている。すると、可撓梁341aおよび341bの下面と、下限規制部350aおよび350bの上面が接触する際に、平面と曲面との接触となる。すなわち、揺動軸340に垂直な断面で見た場合に、両者が常に点接触する。よって、可撓梁341aと下限規制部350aとの接触部、および、可撓梁341bと下限規制部350bとの接触部を支点として可動部320が揺動する際に、引っかかりが発生することがないため、スムーズに可動部320を揺動させることができる。
【0058】
次に、実施例2に係る第2の製造方法について、図24〜図29を用いて説明する。実施例2に係る第2の製造方法は、実施例1に係る第1の製造方法(図10〜図21)と比して、下限規制部350aおよび350bの上面を曲面に形成する工程を有している点が異なっている。よって以下では、実施例1に係る第1の製造方法と異なる点を、重点的に説明する。
【0059】
実施例1に係る第1の製造方法の図10および図11の工程によって形成された積層体に、ポリシリコン等を材料とする第1犠牲層351を形成し、さらに第1犠牲層351上にレジスト層352を塗布することで、図24に示す積層体が形成される。次に、レジスト層352を、グレースケールマスクという特殊なマスクを用いて露光をすることで、パターニング処理を行う。パターニングは、下限規制部350bの大きさおよび形状に合わせて行われる。グレースケールマスクは、マスク部分に濃淡を有しており、濃淡により露光時の光の透過量を制御することが可能なマスクである。レジスト層352の露光工程では、マスクの光の透過量が大きい部分ほど、より深い部分のレジストが露光される。すると、ポジ型のレジスト(露光されると現像液に対して溶解性が増大し、露光部が除去されるレジスト)を用いる場合には、光の透過量が大きい部分ほど、現像後に残るレジスト層352の高さが低くなる。
【0060】
実施例2で用いられるグレースケールマスクは、下限規制部350bの上面の中央部(図25、点P1)での光の透過量が小さく、下限規制部350bの両端部(図25、点P2)に行くほど光の透過量が大きくなるように作られている。すると、露光後のレジスト層352を現像することで、図25に示すように、下限規制部350bを形成する領域の上面に、曲面を有して突起している3次元形状のレジスト層352を形成することができる。
【0061】
なお、ネガ型のレジスト(露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残るレジスト)を用いることも可能である。この場合は、下限規制部350bの上面の中央部(図25、点P1)での光の透過量が大きく、下限規制部350bの端部(図25、点P2)に行くほど光の透過量が小さくなるようなグレースケールマスクを用いればよい。
【0062】
次に、3次元形状にパターニングされたレジスト層352を通して、第1犠牲層351を異方性エッチング処理する。このとき、レジスト層352の3次元形状が、下層の第1犠牲層351に転写される。よって、図26に示すように、揺動軸340に垂直な断面において、上面が曲面を有して上方へ突起している形状を有する、第1犠牲層351が形成される。そして、図26に示す積層体に熱酸化処理を行うことで、第1犠牲層351の表面に酸化膜からなる絶縁層353を成膜する。これにより、図27に示すように、下限規制部350bが形成される。
【0063】
図27に示す積層体に、ポリシリコン等を材料とする第2犠牲層360を形成する。そして、第2犠牲層360の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって平坦化する。これにより、図28に示す平坦な第2犠牲層360を形成することができる。なお、絶縁層353の上表面と、第2犠牲層360の上表面との距離d2は、図23に示す可撓梁341bの下表面と下限規制部350bの上表面との距離D2と同等となるように設計すればよい。
【0064】
図28に示す積層体に熱酸化処理を行うことにより、第2犠牲層360の上面に、絶縁層323を形成する。次に、絶縁層323の上面にポリシリコン等の導電層325を成膜する。そして、可動部320、可撓梁341aおよび341bの形状に合わせて、フォトエッチングにより導電層325をパターニングする。これにより、図29に示す構造が形成される。
【0065】
なお、図29以降に実施される可動部形成工程の詳細な内容は、実施例1の光偏向装置20の製造過程における可動部形成工程(図20、図21)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0066】
実施例3に係る第3の製造方法によって製造する第3の光偏向装置40について説明する。図30は、光偏向装置40の平面図である。図31は、図30のXXXI−XXXI線断面図である。図32は、図30のXXXII−XXXII線断面図である。図31において、可動部420の下面には、基板下層400側へ突出している突起部428aないし428gが形成されている。突起部428aは、可動部420において、第1の接続点442a(図30)から第2の接続点442bへ至る全長に渡って、連続して形成されている。突起部428bないし428gは、可動部420の端部420a(図30)から可動部420の端部420bへ至る全長に渡って、連続して形成されている。また、可撓梁441aおよび441bの下面には、可撓梁441aおよび441bの全長に渡って、突起部443aおよび443bが形成されている。突起部428a、443aおよび443bが形成されている領域の上面側には、陥没部429aが形成されている。また、突起部428bないし428gが形成されている領域の上面側には、陥没部429bないし429gが形成されている。
【0067】
図31において、支柱部470が、可動部420の中央部の表面から上方に伸びるように形成されている。支柱部470は、陥没部429aが形成されている領域の上面側に形成されている。支柱部470の上端には、可動部420の上面と平行に伸びているミラー部471が形成されている。支柱部470およびミラー部471は、光を反射する材料であるアルミニウムで形成されている。ミラー部471は、光を反射することにより、ミラーの役割を果たす。また、光偏向装置40のその他の構造は、実施例1の光偏向装置20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0068】
実施例3に係る光偏向装置40の効果を説明する。可動部420の下面に突起部428aないし428gが形成されていない場合に、大きな駆動トルクが加えられると、可動部420が大きく変形して、可動部420下面と基板下層400表面とが直接に接触する場合がある。この場合、面と面の接触であるため、接触面積が最大となり、可動部420下面が基板下層400上面に張り付くスティッキングが発生するおそれがある。一方、実施例3に係る光偏向装置40では、可動部420の下面に、突起部428aないし428gが形成されている。よって、大きな駆動トルクが加えられて可動部420が大きく変形した場合においても、可動部420は突起部428aないし428gを介して基板下層400の上面に接触することになる。すると、接触面積を小さくすることができるため、スティッキングの発生を防止することが可能となる。
【0069】
また、実施例3に係る光偏向装置40では、可動部420において下面側に突起部428aが形成されている領域の上面側に、支柱部470が形成されている。よって、陥没部429a上に支柱部470が形成されている。これにより、陥没部が存在しない平面上に支柱部470を作成する場合に比して、支柱部470と可動部420との接触面積を大きくすることができるため、支柱部470と可動部420との接続強度を高めることができる。また、支柱部470(アルミニウム)と可動部420表面の絶縁層424(シリコン酸化膜)とは異なる材料であるため、接触面積を大きくすることで、異種界面の安定性を高くすることができる。
【0070】
次に、実施例3に係る第3の製造方法について、図33〜図36を用いて説明する。図33〜図36は、図30のXXXII−XXXII線断面図である。実施例3に係る第3の製造方法は、実施例1に係る第1の製造方法(図10〜図21)と比して、可動部420の下面に、突起部428aないし428gを形成する工程をさらに有している点が異なっている。よって以下では、実施例1に係る第1の製造方法と異なる点を、重点的に説明する。
【0071】
実施例1に係る第1の製造方法の図10〜図14の工程の後、図33に示すように、熱酸化等を行い、第2犠牲層460の上面に酸化膜から成るエッチング用マスク461を成膜する。フォトエッチングによりエッチング用マスク461をパターニング処理することによって、エッチングホール462aないし462eを形成する。これにより、エッチングホール462aないし462eを有する、エッチング用マスク461が形成される。エッチングホール462aの中心位置は、可撓梁441aおよび441bの中心位置と一致している。
【0072】
次に、エッチングホール462aないし462eを通して、第2犠牲層460に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチング処理により、図34に示すように、エッチングホール462aないし462eの開口部を中心として、窪み部463aないし463eが形成される。その後、エッチング用マスク461を除去する。
【0073】
次に、熱酸化処理を行うことにより、図35に示すように、第2犠牲層460の上面に、絶縁層423を形成する。図35に示すように、窪み部463aないし463eに、絶縁層423が形成されることで、突起部428aないし428gの形状が形成される。すなわち、窪み部463aないし463eの窪み形状が、突起部428aないし428gの突起形状として転写される。
【0074】
次に、絶縁層423の上面にポリシリコン等の導電層425を成膜する。そして、可動部420、可撓梁441aおよび441bの形状に合わせて、フォトエッチングにより導電層425をパターニングする。これにより、図36に示す構造が形成される。
【0075】
なお、図36以降に実施される可動部形成工程の詳細な内容は、実施例1の光偏向装置20の製造過程における可動部形成工程(図20、図21)と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、図31および図32に示す構造を製造することができる。
【実施例4】
【0076】
実施例4に係る第4の製造方法によって製造する第4の光偏向装置60について説明する。図37は、光偏向装置60の平面図である。図38は、図37のXXXVIII−XXXVIII線断面図である。
【0077】
図38に示すように、揺動軸640に垂直な断面における可撓梁641bの下面に、曲面を有して基板下層600側へ突起している突起部644bが形成されている。また、下限規制部650bの上面に、曲面を有して陥没している陥没部654bが形成されている。そして、突起部644bの曲面の曲率と、陥没部654bの曲面の曲率とが、同等の曲率とされている。また、揺動軸640に垂直な断面で見た場合に、突起部644bの中心位置と陥没部654bの中心位置とが、一致している。これにより、可動部620が垂直下方へ沈み込んだ際に、突起部644bと陥没部654bとが噛み合うことになる。なお、可撓梁641aの形状も、可撓梁641bの形状と同様の形状とされている。また、下限規制部650aの形状も、下限規制部650bの形状と同様とされている。また、光偏向装置60のその他の構造は、実施例1の光偏向装置20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
光偏向装置60の動作を説明する。駆動信号生成器を用いて、固定電極604aに駆動電圧を印加する場合には、可動部620の導電層625と固定電極604aとの間に静電引力が発生する。よって、固定電極604aに対向する位置の可動部620が、基板下層600に吸引される。そして、可動部620が下方に変位して沈み込みが発生する場合には、突起部644aと陥没部654aとが噛み合うとともに、突起部644bと陥没部654bとが噛み合う。そして、図39に示すように、可動部620の第1端部627aの下端が固定電極604aに近づくとともに、第2端部627bが固定電極604bから離れるように、可動部620が傾く。
【0079】
実施例4に係る光偏向装置60の効果を説明する。光偏向装置60によれば、突起部644bと陥没部654bとは共に曲面で形成されている。よって、突起部644bと陥没部654bとが噛み合った状態で、揺動軸640を中心にして可動部620を揺動させる場合においても、突起部644bと陥没部654bとの噛み合い部で引っかかりが発生しないため、スムーズに可動部620を揺動させることができる。
【0080】
また、突起部644bの曲面の曲率と、陥没部654bの曲面の曲率とが、同等の曲率とされている。すると、突起部644bと陥没部654bとが噛み合う際に、突起部644bの曲面全体と陥没部654bの曲面全体とが接触するため、噛み合い部に隙間が形成されにくくなる。よって、可動部620を揺動させる場合においても、突起部644bと陥没部654bとの噛み合い部でがたつきが発生しにくくなる。これにより、より正確に位置決めをしながら、可動部620を揺動させることが可能となる。
【0081】
なお、突起部644bの曲面の曲率が、陥没部654bの曲面の曲率よりも大きくてもよい。この場合には、隙間を有して、突起部644bと陥没部654bとが噛み合うことになる。よって、可撓梁641bが、基板下層600に平行な方向であって揺動軸640に垂直な方向へ、移動することを規制することができる。
【0082】
次に、実施例4に係る第4の製造方法について、図40〜図42を用いて説明する。実施例4に係る第4の製造方法は、実施例1に係る第1の製造方法(図10〜図21)と比して、下限規制部650aおよび650bに陥没部654aおよび654bを形成する工程を有している点が異なっている。よって以下では、実施例1に係る第1の製造方法と異なる点を、重点的に説明する。
【0083】
実施例1に係る第1の製造方法の図10および図11の工程によって形成された積層体に、ポリシリコン等を材料とする第1犠牲層651を形成し、さらに第1犠牲層651の上面に酸化膜から成るエッチング用マスク671を成膜する。そしてフォトエッチングにより、エッチング用マスク671にエッチングホール672を形成する。これにより、図40に示す積層体が形成される。なお、エッチングホール672の中心位置は、下限規制部650aおよび650bの中心位置と一致している。
【0084】
次に、エッチングホール672を通して、第1犠牲層651に等方性エッチング処理を行う。等方性エッチング処理により、図41に示すように、エッチングホール672の開口部を中心として、窪み部673が形成される。また、窪み部673の半円形状における半径の値は、等方性エッチング処理の処理時間によって調整することができる。その後、エッチング用マスク671を除去する。
【0085】
次に、第1犠牲層651上にレジスト層を塗布した後に、レジスト層をフォトエッチングによりパターニング処理する。パターニング処理は、下限規制部650bの大きさおよび形状に合わせて行われる。パターニングされたレジスト層を通して、第1犠牲層651を異方性エッチング処理する。そして、積層体に熱酸化処理を行い、パターニング後の第1犠牲層651の表面に酸化膜からなる絶縁層653を成膜する。このとき、窪み部673の窪み形状に基づいて、陥没部654bの陥没形状が形成される。これにより、図42に示すように、陥没部654bを有する下限規制部650bが形成される。
【0086】
なお、図42以降に実施される製造工程の詳細な内容は、実施例1の光偏向装置20の製造過程(図14〜図21)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0088】
実施例1ないし4では、基板上層が可動部の周囲を取り囲む枠形状に形成されており、基板上層の枠状部分の内側の2点からそれぞれ可撓梁が伸びている構造を説明したが、この形態に限られない。図43の平面図に示す光偏向装置70のように、可動部720が基板上層710の周囲を取り囲む枠形状に形成されており、基板上層710の外周の2点から可撓梁741aおよび741bが伸びている構造においても、本願の技術を適用することができる。光偏向装置70では、可撓梁741aおよび741bによって、可動部720が揺動可能に支持されている。そして、各々の可撓梁741aおよび741bの下方に、下限規制部750aおよび750bが設置されている。これにより、可動部720に沈み込みが発生した場合においても、下限規制部750aおよび250bによって、可撓梁741aおよび741bを下方から支持することができる。よって、可動部720の沈み込み量を所定値に制限することができる。
【0089】
また実施例1ないし4では、基板上層が可動部の周囲を取り囲む枠形状に形成されており、基板上層の枠状部分の内側の2点からそれぞれ可撓梁が伸びている構造を説明したが、この形態に限られない。可動部の外側であって、可動部に対して対称となる2つの位置に、柱形状の基板上層が形成されており、各々の基板上層から可撓梁が伸びている構造においても、本願の技術を適用することができる。
【0090】
また実施例1では、可撓梁241aおよび241bの下面が、曲面を有して突起している形状とされている場合を説明した。また実施例2では、下限規制部350aおよび350bの上面が、曲面を有して突起している形状とされている場合を説明した。しかし、これらの形態に限られない。可撓梁の下面および下限規制部の上面が、共に曲面を有して突起している形状であってもよい。この場合においても、可撓梁の下面と下限規制部の上面が接触する際に、曲面同士の接触となる。よって、揺動軸に垂直な断面で見た場合に、揺動状態に関わらず接触部は常に点接触となる。よって、スムーズに可動部を揺動させることができる。また、可撓梁の下面および下限規制部の上面が共に曲面を有する場合には、一方の曲面の曲率を他方の曲面の曲率よりも小さくすることが好ましい。下限規制部の上面に可撓梁の下面が接触した状態で、基板に平行な方向であって揺動軸に垂直な方向へ可撓梁が移動すると、曲面に沿って可撓梁が下方へ移動してしまう。すると、可動部に沈み込みが発生してしまう。しかし、可撓梁の下面または下限規制部の上面の一方の曲率が小さくなるほど、なだらかな曲面となるため、可撓梁が移動した場合の可動部の沈み込み量を、小さくすることができる。よって、可動部の揺動角をより安定させることが可能となる。また、より好ましくは、可撓梁の下面の曲率よりも下限規制部の上面の曲率の方が小さいことがよい。図4に示すように、下限規制部250bの幅W2は、可撓梁241bの幅W1よりも大きくなっているため、下限規制部250bの方が曲面の曲率を小さくしやすいためである。
【0091】
また実施例1では、可撓梁241aおよび241bにおいて、突起部243aおよび243bを形成する領域が、可撓梁241aおよび241bの全長に渡っている場合を説明した。しかし、これらの形態に限られない。突起部243aおよび243bを形成する領域が、下限規制部250aおよび250bが存在する領域のみである形態としてもよい。
【0092】
また、実施例1ないし4では、可動部を揺動させるアクチュエータが静電駆動式である場合を説明したが、この形態に限られない。本願の技術は、可動部の揺動に関する技術である。よって、電磁駆動式や熱駆動式などの他の駆動方式に対しても、本願の技術を適用することが可能である。
【0093】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0094】
20、30、40、60、70 光偏向装置
200、300、400、600 基板下層
220、320、420、620、720 可動部
241a、241b、341a、341b、441a、441b、641a、641b、741a、741b 可撓梁
250a、250b、350a、350b、650a、650b、750a、750b、 下限規制部
470 支柱部
471 ミラー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平板形状の可動部と、
前記可動部を前記基板の上方に離反した位置で揺動軸の周りに揺動可能に支持する可撓梁と、
前記可動部を揺動させるアクチュエータと、
前記基板上に設置されているとともに前記可撓梁の下方から前記可撓梁に接離可能な下限規制部と、
を備えた光偏向装置であって、
前記揺動軸に垂直な断面における前記可撓梁の下面の形状が、前記下限規制部の上方に位置する領域において、曲面を有して下方へ突起している形状とされているか、または、前記揺動軸に垂直な断面における前記下限規制部の上面の形状が、曲面を有して上方へ突起している形状とされていることを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
前記揺動軸に垂直な断面における前記可撓梁の下面の形状が、前記可撓梁の全長に渡って、曲面を有して下方へ突起している形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記可動部の下面に、下方へ突起している少なくとも1つの突起部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光偏向装置。
【請求項4】
前記揺動軸に垂直な断面における前記可撓梁の下面の形状が、前記下限規制部の上方に位置する領域において、曲面を有して下方へ突起している形状とされており、
前記揺動軸に垂直な断面における前記下限規制部の上面の形状が、曲面を有して陥没している形状とされていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の光偏向装置。
【請求項5】
前記可撓梁の下面の形状において曲面を有して下方へ突起している形状の曲面の曲率が、前記下限規制部の上面の形状において曲面を有して陥没している形状の曲面の曲率以上とされていることを特徴とする請求項4に記載の光偏向装置。
【請求項6】
前記可動部の表面から上方に伸びている支柱部と、
前記支柱部の上端から前記支柱部から遠ざかる方向に向けて前記可動部の上面と平行に伸びており、光を反射する材料で形成されているミラー部とをさらに備え、
前記可動部において下面側に前記突起部が形成されている領域の上面側に、前記支柱部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光偏向装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2012−32481(P2012−32481A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170267(P2010−170267)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】