説明

光半導体封止体

【課題】耐熱着色安定性、光拡散性に優れる光半導体封止体の提供。
【解決手段】(A)1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、(B)1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサン3質量部以上と、(C)ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含有する光拡散性シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体を封止するための組成物には樹脂としてエポキシ樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂を含有する組成物から得られる封止体は白色LED素子からの発熱によって色が黄変するなどの問題があった。
また、2個のシラノール基等を有するジオルガノポリシロキサンと、加水分解性基を2個以上有するシラン等と、充填剤と、金属触媒とを混合し加熱する加熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
アルコキシル基含有シリコーン化合物とシラノール基含有シリコーン化合物とを有機溶剤中で有機金属化合物存在下で脱アルコール縮合反応した後、さらに水を加えて加水分解・縮合反応させるポリシロキサン組成物の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開2007−224089号公報
【特許文献3】特開2006−206700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルコキシル基含有シリコーン化合物とシラノール基含有シリコーン化合物と有機金属化合物とを用いる組成物をプロジェクター等の装置に使用される光半導体の封止体として用いる場合、得られる封止体が透明なため装置内の素子の影がスクリーンに映ってしまうという問題がある。このようにアルコキシル基含有シリコーン化合物とシラノール基含有シリコーン化合物と有機金属化合物とを用いる組成物は光拡散性に劣ることを本願発明者は見出した。
そこで、本発明は、耐熱着色安定性、光拡散性に優れる光拡散性シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサンに対して、1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサンを用いることによって、組成物を白濁させその結果光拡散性に優れ、耐熱着色安定性に優れる組成物が得られることを見出した。
そして、(A) 1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B) 1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサン3質量部以上と、
(C) ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含有する組成物が、耐熱着色安定性、光拡散性に優れるシリコーン樹脂組成物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜12を提供する。
1. (A) 1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B) 1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサン3質量部以上と、
(C) ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含有する光拡散性シリコーン樹脂組成物を
LEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。
2. 前記オルガノポリシロキサンが、下記式(1)で表される分子量1,000〜1,000,000の直鎖状ポリジメチルシロキサンである上記1に記載の光半導体封止体。
【化1】


式中、mは10〜15,000の整数である。
3. 前記ジルコニウム金属塩が、下記式(I)で表される上記1または2に記載の光半導体封止体。
【化2】

(式中、Rは炭化水素基を表す。)
4. 前記アルコキシ基含有ポリシロキサンの量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、3〜50質量部であり、
前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物の量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部未満である上記1〜3のいずれかに記載の光半導体封止体。
5. 前記ジルコニウム金属塩が、ナフテン酸ジルコニルである上記1〜4のいずれかに記載の光半導体封止体。
6. 前記ガリウム金属化合物が、ガリウムアセチルアセトナートである上記1〜5のいずれかに記載の光半導体封止体。
7. 前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を用いて得られる硬化物の光拡散透過率が30%以上である上記1〜6のいずれかに記載の光半導体封止体。
8. 前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が実質的に水を含まない上記1〜7のいずれかに記載の光半導体封止体。
9. 前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が実質的に溶媒を含まない上記1〜8のいずれかに記載の光半導体封止体。
10. 前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が前記ポリオルガノシロキサンと前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物とを含む第1液と、前記アルコキシ基含有ポリシロキサンを含む第2液とを有する上記1〜9のいずれかに記載の光半導体封止体。
11. 前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が前記ポリオルガノシロキサンと、前記アルコキシ基含有ポリシロキサンと、前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物とからなる上記1〜9のいずれかに記載の光半導体封止体。
12. 前記加熱が、実質的に無水の条件下でなされる上記1〜11のいずれかに記載の光半導体封止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物は、耐熱着色安定性、光拡散性に優れる。
本発明の光半導体封止体は、耐熱着色安定性、光拡散性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図7】図7は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用した型の断面を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物は、
(A) 1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B) 1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサン3質量部以上と、
(C) ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含有する光拡散性シリコーン樹脂組成物。
なお、本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0010】
(A)オルガノポリシロキサンについて以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のシラノール基を有し骨格がポリシロキサンである化合物であり、骨格としてのポリシロキサンが有するケイ素原子に1〜2個の炭化水素基が結合している。
炭化水素基は特に制限されない。例えば、メチル基のようなアルキル基が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、アルコキシ基を有することができる。オルガノポリシロキサンがアルコキシ基を有する場合、オルガノポリシロキサン1分子中におけるアルコキシ基の量は、オルガノポリシロキサンが疎水性となり、本発明の組成物を白濁させやすく、光拡散性により優れるという観点から、20質量%以上であるのが好ましく、25〜30質量%であるのがより好ましい。
【0011】
オルガノポリシロキサンは、ポリジオルガノシロキサンであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、耐熱着色安定性、光拡散性により優れ、オルガノポリシロキサンが疎水性となり、本発明の組成物を白濁させやすく、硬化性に優れ、加熱減量が低くなるという観点から、2個のシラノール基が両末端に結合している直鎖状のポリジメチルシロキサン(直鎖状ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール)であるのが好ましい。
オルガノポリシロキサンは、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、耐熱着色安定性、光拡散性により優れ、オルガノポリシロキサンが疎水性となり、本発明の組成物を白濁させやすいという観点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0012】
【化3】


式(1)中、mは、光拡散性により優れ、作業性、耐クラック性に優れるという観点から、10〜15,000の整数であるのが好ましい。
【0013】
オルガノポリシロキサンは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
オルガノポリシロキサンの分子量は、光拡散性により優れ、本発明の組成物を白濁させやすく、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、硬化物物性に優れるという観点から、1,000〜1,000,000であるのが好ましく、5000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、オルガノポリシロキサンの分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
オルガノポリシロキサンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
(B)アルコキシ基含有ポリシロキサンについて以下に説明する。
本発明において、アルコキシ基含有ポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上である化合物であり、アルコキシ基含有ポリシロキサンの量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、3質量部以上である。
アルコキシ基含有ポリシロキサンとしては、例えば、1分子中2個以上のケイ素原子を有し、主骨格がポリシロキサン骨格であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するオルガノポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0015】
アルコキシ基含有ポリシロキサンは1分子中に1個以上の有機基を有することができる。
アルコキシ基含有ポリシロキサンが有することができる有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、アルキル基(炭素数1〜6のものが好ましい。)、(メタ)アクリレート基、アルケニル基、アリール基、これらの組合せが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基が好ましい。
【0016】
アルコキシ基含有ポリシロキサンとしては、例えば、式(3)で表される化合物が挙げられる。
mSi(OR′)n(4-m-n)/2 (3)
式(3)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、R′は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0<m<2、nは0<n<2、m+nは0<m+n<2である。
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基が好ましい。アルケニル基は、炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
式(3)で表される化合物において、R′は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基以外に、アシル基を含むことができる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基が挙げられる。
【0017】
アルコキシ基含有ポリシロキサンとしては、例えば、メチルメトキシオリゴマーのようなシリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。
アルコキシ基含有ポリシロキサンは、光拡散性により優れ、本発明の組成物を白濁させやすく、耐光性に優れるという観点から、メチルメトキシオリゴマーのようなシリコーンアルコキシオリゴマーが好ましい。
シリコーンアルコキシオリゴマーは、主鎖がポリオルガノシロキサンであり、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されたシリコーンレジンである。
メチルメトキシオリゴマーは、式(3)で表される化合物に該当し、メチルメトキシオリゴマーとしては、具体的には例えば、下記式(4)で表されるものが表されるものが挙げられる。
【化4】


式(4)中、R″はメチル基であり、aは1〜1000の整数であり、bは0〜1000の整数である。
メチルメトキシオリゴマーは、市販品を使用することができる。メチルメトキシオリゴマーの市販品としては、例えば、x−40−9246(重量平均分子量6,000、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0018】
アルコキシ基含有ポリシロキサンは、光拡散性により優れ、本発明の組成物を白濁させやすく、硬化性、耐熱クラック性に優れるという観点から、式(3)で表されるものが好ましい。
【0019】
アルコキシ基含有ポリシロキサン1分子が有するアルコキシ基の量は、光拡散性に優れ、本発明の組成物を白濁させやすいという観点から、20質量%以上である。
アルコキシ基含有ポリシロキサン1分子が有するアルコキシ基の量は、アルコキシ基含有ポリシロキサンの極性が高くなり、光拡散性により優れ、本発明の組成物を白濁させやすく、硬化性に優れるという観点から、20〜50質量%であるのが好ましく、25〜45質量%であるのがより好ましい。アルコキシ基含有ポリシロキサン1分子が有するアルコキシ基の量は、アルコキシ基含有ポリシロキサンの安定性、組成物の貯蔵安定性に優れるという観点から、50質量%以下であるのが好ましく、25〜45質量%であるのがより好ましい。
【0020】
アルコキシ基含有ポリシロキサンの分子量は、1000以上であり、本発明の組成物を白濁させやすく、光拡散性により優れるという観点から、好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上である。
アルコキシ基含有ポリシロキサンの分子量は、本発明の組成物を白濁させやすく、光拡散性により優れ、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れるという観点から、1000〜1000000であるのが好ましく、2000〜100000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、アルコキシ基含有ポリシロキサンの分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
アルコキシ基含有ポリシロキサンはその製造について特に制限されず、例えば従来公知のものが挙げられる。アルコキシ基含有ポリシロキサンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
アルコキシ基含有ポリシロキサンの量は、本発明の組成物を白濁させやすく、光拡散性により優れ、耐クラック性、相溶性、貯蔵安定性に優れるという観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、3〜50質量部であるのが好ましく、5〜20質量部であるのがより好ましい。
また、アルコキシ基含有ポリシロキサンの量が、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、3〜20質量部である場合、組成物のモルフォロジーが、オルガノポリシロキサンをマトリックス樹脂とし、アルコキシ基含有ポリシロキサンがドメインとなる海島構造を形成し、本発明の組成物を白濁させやすく、光拡散性により優れる。
【0022】
本発明の組成物は、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物を含有する。
本発明の組成物は、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物を含有することによって光拡散性に優れ、加熱減量を抑制することができる。
本発明において、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物は硬化触媒として使用される。
ジルコニウム金属塩について以下に説明する。
本発明の組成物に含有することができるジルコニウム金属塩は、金属としてジルコニウム原子を有する塩である。
ジルコニウム金属塩が有するジルコニウム原子は、加熱減量、硬化性に優れるという観点から、ジルコニル[(Zr=O)2+]を形成しているのが好ましい。
ジルコニウム金属塩を製造するために使用される酸は特に制限されない。例えば、カルボン酸塩が挙げられる。カルボン酸塩としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ノナン酸、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪族カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸のような脂環式カルボン酸;安息香酸のような芳香族カルボン酸が挙げられる。
ジルコニウム金属塩は、加熱減量を抑制できるという観点から、カルボン酸塩であるのが好ましく、脂肪族カルボン酸塩、脂環式カルボン酸塩であるのがより好ましく、脂環式カルボン酸塩であるのがさらに好ましい。
【0023】
ジルコニウム金属塩としては、例えば、下記式(I)で表されるジルコニル金属塩、式(II)で表されるで表されるジルコニウム金属塩が挙げられる。
【化5】


式中、Rは炭化水素基を表す。Rとしての炭化水素基はカルボン酸の残基を示す。Rは同じでも異なっていてもよい。
【0024】
ジルコニル金属塩は、加熱減量を抑制でき、硬化性に優れるという観点から、式(I)で表される化合物であるのが好ましい。
式(I)で表されるジルコニル金属塩はZr=Oの構造を有するため、式(II)で表されるジルコニウム金属塩よりも硬化性に優れる。
式(I)で表される化合物としては、ジオクチル酸ジルコニル、ジネオデカン酸ジルコニルのような脂肪族カルボン酸塩;ナフテン酸ジルコニル、シクロヘキサン酸ジルコニルのような脂環式カルボン酸塩;安息香酸ジルコニルのような芳香族カルボン酸塩が挙げられる。
ジルコニウム金属塩は、光拡散性により優れ、加熱減量を抑制でき、硬化性に優れるという観点から、ナフテン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニルであるのが好ましい。
ジルコニウム金属塩は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
ガリウム金属化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有することができるガリウム金属化合物は、金属原子としてガリウムを含む化合物であれば特に制限されない。例えば、酸化物、塩、キレートが挙げられる。
ガリウム金属化合物は、光拡散性により優れ、シリコーン樹脂の表面タック性に優れるという観点から、ガリウムのキレートまたは塩であるのが好ましい。
【0026】
ガリウム金属化合物がキレートである場合、有機基としては、例えば、β−ジケトン型化合物、o−ヒドロキシケトン型化合物のような有機配位子が挙げられる。
β−ジケトン型化合物としては、例えば、下記式(1)〜式(3)が挙げられる。
3−CO−CH2−CO−R3 (1)
3−CO−CH2−CO−OR3 (2)
3O−CO−CH2−CO−OR3 (3)
式中、R3はメチル基のようなアルキル基またはハロゲン置換アルキル基を表わす。
【0027】
o−ヒドロキシケトン型化合物としては、例えば、下記式(4)が挙げられる。
【化6】


式中、それぞれのR4は独立に、アルキル基、ハロゲン化置換アルキル基、アルコキシ基を表す。
キレートが有する配位子としては、アセチルアセトナート、エチルアセチルアセトナートが好ましい態様として挙げられる。
【0028】
ガリウム金属化合物が塩である場合、塩は、カルボン酸塩であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
カルボン酸は特に制限されない。例えば、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0029】
ガリウム金属化合物としては、例えば、オクチル酸ガリウム、ラウリン酸ガリウムのようなカルボン酸塩;ガリウムアセチルアセトナートのようなキレートが挙げられる。
なかでも、光拡散性により優れ、硬化性に優れるという観点から、キレートが好ましく、ガリウムアセチルアセトナートがより好ましい。
【0030】
ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物の量は、光拡散性により優れ、加熱減量を抑制することができるという観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部未満であるのが好ましく、0.0005〜0.05質量部であるのがより好ましい。
ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物は、組成物を硬化させるための初期の加熱や初期硬化後の加熱の際、ルイス酸として作用し、オルガノポリシロキサンとアルコキシ基含有ポリシロキサンとの架橋反応を促進すると考えられる。
【0031】
本発明の組成物は、耐熱着色安定性、光拡散性により優れ、本発明の組成物を白濁させやすく、加熱減量が抑制できるという観点から、オルガノポリシロキサンと、アルコキシ基含有ポリシロキサンと、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とからなる組成物であるのが好ましい。
【0032】
従来、シリコーン樹脂組成物を白濁させるためには(光拡散させる方法)組成物にフィラーを入れる方法が一般的であった。
しかしながら、本発明においては、充填剤(フィラー)を使用せずとも、(A)オルガノポリシロキサンに対して(B)特定のアルコキシ基含有ポリシロキサンを用いることによって、シリコーン樹脂組成物を白濁させることができる。
【0033】
また、本発明の組成物は、オルガノポリシロキサンと、アルコキシ基含有ポリシロキサンと、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0034】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、貯蔵安定性に優れるという観点から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に水を含まないとは、本発明の組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
また、本発明の組成物は、作業環境性に優れるという観点から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に溶媒を含まないとは、本発明の組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0036】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、オルガノポリシロキサンと、アルコキシ基含有ポリシロキサンと、ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物と、必要に応じて使用することができる、アルコキシ基の量が20質量%未満のポリシロキサン、添加剤とを混合することによって製造することができる。
本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。本発明の組成物を2液型とする場合、オルガノポリシロキサンとジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含む第1液と、アルコキシ基含有ポリシロキサン、必要に応じて使用することができるアルコキシ基の量が20質量%未満のポリシロキサンを含む第2液とを有するものとするのが好ましい態様の1つとして挙げられる。添加剤は第1液および第2液のうちの一方または両方に加えることができる。
【0037】
本発明の組成物は、光半導体封止用組成物として使用することができる。
本発明の組成物を適用することができる光半導体は特に制限されない。例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、光半導体に本発明の組成物を付与し、本発明の組成物が付与された光半導体を加熱して本発明の組成物を硬化させることが挙げられる。
本発明の組成物を付与し硬化させる方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物は加熱によって硬化させることができる。
加熱温度は、加熱減量により優れ、硬化性に優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
加熱温度が上記の場合、本発明の組成物を穏やかな条件下で硬化させることができ縮合反応の副生成物であるアルコールによって硬化物が発泡するのを抑制することができる。
加熱は、硬化性、硬化物の白濁の維持に優れるという観点から、実質的に無水の条件下でなされるのが好ましい。本発明において、加熱が実質的に無水の条件下でなされるとは、加熱における環境の大気中の湿度が10%RH以下であることをいう。
【0039】
本発明の組成物を加熱し硬化させることによって得られる硬化物(つまりシリコーン樹脂)は、光拡散性に優れ、長期のLED(なかでも白色LED)による使用に対して、光拡散性(つまり硬化物の白濁)を保持することができ、耐熱着色安定性、耐熱クラック性に優れ、加熱減量が低い。
【0040】
本発明において、光拡散性は、JIS K0115:2004に準じて光拡散透過率を測定することによって評価することができる。
本発明の組成物を用いて得られる硬化物(硬化物の厚さが2mmである場合)は、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された光拡散透過率が、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
【0041】
また、本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、初期硬化の後耐熱試験(初期硬化後の硬化物を150℃下に10日間置く試験)を行いその後の硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された光拡散透過率が、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
【0042】
本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、その光拡散透過率保持率(耐熱試験後の光拡散透過率/初期硬化の際の光拡散透過率×100)が、80〜100%であるのが好ましく、90〜100%であるのがより好ましい。
【0043】
本発明において、平行光線透過率は、JIS K0115:2004に準じて評価することができる。
本発明の組成物を用いて得られる硬化物(硬化物の厚さが2mmである場合)は、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された平行光線透過率が、0〜70%であるのが好ましく、0〜50%であるのがより好ましい。
【0044】
また、本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、初期硬化の後耐熱試験(初期硬化後の硬化物を150℃下に10日間置く試験)を行いその後の硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された平行光線透過率が、0〜70%であるのが好ましく、0〜50%であるのがより好ましい。
【0045】
本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、その平行光線透過率保持率(耐熱試験後の平行光線透過率/初期硬化の際の平行光線透過率×100)が、80〜100%であるのが好ましく、90〜100%であるのがより好ましい。
【0046】
本発明において加熱減量は、本発明の組成物を150℃下で240分間加熱して硬化させて得られた初期の硬化物と、初期の硬化物をさらに200℃で1,000時間加熱をすることによって得られた加熱後の硬化物とを用いて、両方の硬化物の重量を測定し、得られた重量を下記計算式にあてはめることによって求めた値とする。
加熱減量(質量%)
=100−(加熱後の硬化物の重量/初期の硬化物の重量)×100
加熱減量の値が20質量%以下の場合、加熱減量を抑制することができており、光拡散性シリコーン樹脂組成物として実用的であるといえる。
本発明において、本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物を加熱をすることによって得られる初期硬化物を200℃の条件下で1,000時間加熱をし、前記200℃の加熱後の硬化物の加熱減量が前記初期硬化物の20質量%以下であるのが好ましく、0〜10質量%であるのがより好ましい。
【0047】
本発明の組成物は、光半導体以外にも、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0048】
次に本発明の光半導体封止体について以下に説明する。
本発明の光半導体封止体は、本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物を用いてLEDチップを封止したものである。
本発明の光半導体封止体は、本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得ることができる。
【0049】
本発明の光半導体封止体に使用される組成物は本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
本発明の光半導体封止体において組成物として本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物を使用することによって、本発明の光半導体封止体は、LEDチップからの発熱や発光等に対する耐熱着色安定性、光拡散性に優れ、LEDチップからの発熱や光半導体封止体の製造時における加熱等による加熱減量を抑制することができる。
【0050】
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップは、発光素子として発光ダイオードを有する電子回路であれば特に制限されない。
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。例えば、白色、青色、赤色、緑色が挙げられる。本発明の光半導体封止体は、LEDチップからの発熱による高温下に長時間さらされても、耐熱着色安定性に優れ、加熱減量を抑制することができるという観点から、白色LEDに対して適用することができる。
LEDチップの種類は、特に制限されない。例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LEDが挙げられる。
【0051】
本発明の光半導体封止体はその製造方法について光拡散性シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱するものであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0052】
本発明の光半導体封止体の態形としては、例えば、硬化物が直接LEDチップを封止しているもの、砲弾型、表面実装型、複数のLEDチップまたは光半導体封止体の間および/または表面を封止しているものが挙げられる。
【0053】
本発明の光半導体封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明の光半導体封止体は添付の図面に限定されない。図1は本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図2は図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図1において、600は本発明の光半導体封止体であり、光半導体封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止する硬化物603とを備える。本発明の組成物は加熱後硬化物603となる。なお、図1において基板609は省略されている。
図2において、LEDチップ601は基板609に例えば接着剤、はんだ(図示せず。)によってボンディングされ、またはフリップチップ構造とすることによって接続されている。なお、図2において、ワイヤ、バンプ、電極等は省略されている。
また、図2におけるTは、硬化物603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向に硬化物603の厚さを測定したときの値である。
本発明の光半導体封止体は、光拡散性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図2におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0054】
本発明の光半導体封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。図3は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。図4は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【0055】
図3において、光半導体封止体200は基板210の上にパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部にキャビティー202が設けられている。キャビティー202内には、青色LEDチップ203と硬化物202とが配置されている。硬化物202は、本発明の組成物を硬化させたものである。この場合本発明の組成物は光半導体封止体200を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)と外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
キャビティー202において、斜線部206まで本発明の組成物で充填してもよい。
または、キャビティー202内を他の組成物で充填し、斜線部206を本発明の組成物で充填することができる。
【0056】
図4において、本発明の光半導体封止体300は、ランプ機能を有する樹脂306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
基板310の頭部にはキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティーには、青色LEDチップ303と硬化物302とが配置されている。硬化物302は、本発明の組成物を硬化させたものである。この場合本発明の組成物は光半導体封止体300を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。また、樹脂306を本発明の組成物を用いて形成することができる。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。
青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とはそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0057】
なお、図3、図4においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色、緑色および青色の3色のLEDチップを配置すること、赤色、緑色および青色の3色のLEDチップのうちの1色または2色を選択してキャビティー内に配置し、選択したLEDの色に応じてLEDチップを白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を組成物に添加することができる。キャビティー内に本発明の組成物を例えばポッティング法によって充填し加熱することによって光半導体封止体とすることができる。
【0058】
本発明の光半導体封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。図5は、本発明の光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。なお、本発明の光半導体封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0059】
図5において、LED表示器(本発明の光半導体封止体)400は、白色LEDチップ401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LEDチップ401を硬化物406で封止し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。本発明の組成物を硬化物406に使用することができる。また、白色LEDチップ401として本発明の光半導体封止体を使用することができる。
【0060】
図6において、LED表示装置500は、白色LEDを用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本発明の光半導体封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0061】
本発明の光半導体封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
以下に示す方法で、初期硬化状態、光拡散性、耐熱着色安定性、クラックの有無、粘度、ポットライフ、貯蔵安定性および加熱減量について評価した。結果を第1表に示す。
(1)初期硬化状態
下記のようにして得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物(厚さが2mm。)について目視で初期硬化状態(白濁しているか、透明か)を確認した。
(2)光拡散性評価試験
下記のようにして得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物をさらに150℃の条件下で10日間加熱する試験)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける光拡散透過率および平行光線透過率を測定した。
また、耐熱試験後の光拡散透過率の初期の光拡散透過率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
光拡散透過率保持率(%)=(耐熱試験後の光拡散透過率)/(初期の光拡散透過率)×100
【0063】
(3)耐熱着色安定性評価試験
下記のようにして得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物を150℃の条件下で10日間加熱する試験)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)について、耐熱試験後の硬化物が、初期硬化物と比較して黄変したかどうかを目視で観察した。
(4)クラックの有無
下記のようにして得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物についてそれぞれ目視で硬化の際のクラックの発生の有無を確認した。
【0064】
(5)粘度
第1表に示す成分を同表に示す量で混合して製造した直後における23℃の条件下での組成物の粘度と、得られた組成物を23℃の条件下に置き製造から24時間経過した後の組成物の粘度とを、E型粘度計を用いてRH50%、23℃の条件下で測定した。
(6)ポットライフ
初期粘度(第1表に示す成分を同表に示す量で混合して製造した直後の23℃の条件下での組成物の粘度)に対する24時間後の粘度(得られた組成物を23℃の条件下に置き製造から24時間経過した後の組成物の粘度)の相対値と、組成物を23℃の条件下において製造から24時間が経過した後の混合液の外観とをポットライフとして評価した。
ポットライフの評価基準としては、初期粘度に対する24時間後の粘度の相対値が1.2以下であり、混合液を23℃の条件下において製造から24時間が経過した後の状態が製造時と変化していない場合を良好とする。
また、得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を23℃の条件下において製造から24時間が経過した後の粘度の初期粘度に対する相対値が1.2を超える場合、評価結果を「不良」と示す。
【0065】
(7)貯蔵安定性
下記のようにして得られた光拡散性シリコーン樹脂組成物を23℃の条件下において、24時間後の組成物の状態を目視で確認した。光拡散性シリコーン樹脂組成物が分離している場合を「×」、分離していない場合を「○」とした。
【0066】
(8)加熱減量評価試験
加熱減量評価試験において、光拡散性シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物をさらに200℃で1,000時間加熱をした。初期硬化物と加熱減量評価試験後の硬化物とについて重量計を用いて硬化物の重量を測定した。
加熱減量は下記計算式によって求めた。
加熱減量(質量%)=100−(加熱減量評価試験後の硬化物の重量/初期硬化物の重量)×100
加熱減量の値が20質量%以下の場合、光半導体封止体用組成物として実用的である。
【0067】
2.サンプルの作製
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図7は、実施例において本発明の光拡散性シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
図7において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスーペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
型8を用いてスーペーサー1の内部6に組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行った。
【0068】
組成物6が充填された型8を電気オーブンに入れて、上記の評価の条件で加熱して組成物6を硬化させ、厚さ2mmの硬化物6(初期硬化物)を製造した。
得られた硬化物6を評価用のサンプルとして用いた。
【0069】
3.光拡散性シリコーン樹脂組成物の製造
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し光拡散性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0070】
【表1】

【0071】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・(A)オルガノポリシロキサン1:下記式(1)で表されるポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(重量平均分子量1,000)、商品名x−21−5841、信越化学工業社製
【化7】


・(A)オルガノポリシロキサン2:上記式(1)で表されるポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール、商品名ss10、重量平均分子量45000(信越化学工業社製)
・(A)オルガノポリシロキサン3:上記式(1)で表されるポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール、商品名x−21−5848(信越化学工業社製)重量平均分子量56000
・エポキシシリコーン:エポキシ変性ポリシロキサン(商品名:KF101、信越化学工業社製)
・(B)アルコキシ基含有ポリシロキサン1:アルコキシ基がメトキシ基であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基以外の基がメチル基であるポリシロキサン、商品名SR−2402 (東レ・ダウコーンニングシリコーン社製)重量平均分子量1500、アルコキシ含有量31wt%
・(B)アルコキシ基含有ポリシロキサン2:アルコキシ基がメトキシ基であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基以外の基がメチル基であるポリシロキサン、商品名x−40−9246、重量平均分子量6,000、アルコキシ含有量12wt%(信越化学工業社製)
・(B)アルコキシ基含有ポリシロキサン3:アルコキシ基がメトキシ基であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基以外の基がメチル基であるポリシロキサン、商品名x−40−9250、重量平均分子量2100、アルコキシ含有量25wt%(信越化学工業社製)
・(B)アルコキシ基含有ポリシロキサン4:アルコキシ基がメトキシ基であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基以外の基がメチル基であるポリシロキサン、商品名x−40−9225、アルコキシ含有量24wt%、重量平均分子量3600(信越化学工業社製)
・(B)アルコキシ基含有ポリシロキサン5:アルコキシ基がメトキシ基であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基以外の基がメチル基であるポリシロキサン、商品名KC−89S、アルコキシ含有量45wt%、重量平均分子量700、信越化学工業社製
・(C)ジルコニウム金属塩:ナフテン酸ジルコニル(日本化学産業社製)
・(C)ガリウム金属化合物:ガリウムアセチルアセトナート[Ga(acac)3](ヤマナカヒューテック社製)
・カチオン重合触媒:BF3・Et2O(BF3エチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
【0072】
第1表に示す結果から明らかなように、アルコキシ基の量が20質量%未満のアルコキシ基含有ポリシロキサンを含有する比較例1は、初期硬化状態が透明で光拡散透過率が低く光拡散性に劣った。
エポキシシリコーンを含有する比較例2は耐熱着色安定性に劣った。
分子量が1000未満であるアルコキシ基含有ポリシロキサンを含有する比較例3は初期硬化状態が透明で光拡散透過率が低く光拡散性に劣った。
アルコキシ基含有ポリシロキサンをオルガノポリシロキサン100質量部に対して、3質量部未満含有する比較例4は、初期硬化状態が透明で光拡散透過率が低く光拡散性に劣った。
これに対して、実施例1〜4は、黄変がなく耐熱着色安定性に優れ、初期硬化状態が白濁であり光拡散透過率(30%以上)、光拡散透過率保持率が高く光拡散性に優れる。
また、実施例1〜4は、クラックの発生がなく、作業性(作業中における増粘が抑制されている。)に優れ、ポットライフが良好であり、混合後24時間以内に組成物が分離することがなく貯蔵安定性に優れ、加熱減量を20質量%以下に抑制することができる。なかでも、ジルコニウム金属塩としてナフテン酸ジルコニルを含有する実施例1、3は加熱減量をより抑制することができた。
アルコキシ基含有ポリシロキサンの量がオルガノポリシロキサン100質量部に対して5質量部以上である実施例1〜3は、実施例4に比べて、初期硬化状態がより白濁し、光拡散透過率がより高く光拡散性により優れる。
本発明の組成物から得られるシリコーン樹脂は、架橋部分および骨格がすべてシロキサン結合なので従来のシリコーン樹脂より耐熱着色安定性に優れる。また、本発明の組成物はオルガノポリシロキサンとアルコキシ基含有ポリシロキサンとの混合によって白濁する。しかしながら本発明の組成物は分離することがない(具体的にはオルガノポリシロキサンとアルコキシ基含有ポリシロキサンとは分離しない。)。
【符号の説明】
【0073】
1 スーペーサー
3 ガラス
5 PETフィルム
6 本発明の組成物(内部、硬化後硬化物6となる)
8 型
200、300 本発明の光半導体封止体
201、301 マウント部材
202 キャビティー、硬化物
203、303 青色LEDチップ
302 硬化物
204 パッケージ
206 斜線部
306 樹脂
207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極
210、310 基板
305 インナーリード
400、501 LED表示器
401 白色LEDチップ
404 筐体
405 遮光部材
406 硬化物
500 LED表示装置
502 ドライバー
501 LED表示器
503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM)
600 本発明の光半導体封止体
601 LEDチップ
603 硬化物
605 点
607 点605が属する面
609 基板
T 硬化物603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B) 1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有し、前記アルコキシ基の量が1分子中の20質量%以上であり、分子量が1000以上であるアルコキシ基含有ポリシロキサン3質量部以上と、
(C) ジルコニウム金属塩および/またはガリウム金属化合物とを含有する光拡散性シリコーン樹脂組成物を
LEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンが、下記式(1)で表される分子量1,000〜1,000,000の直鎖状ポリジメチルシロキサンである請求項1に記載の光半導体封止体。
【化1】


式中、mは10〜15,000の整数である。
【請求項3】
前記ジルコニウム金属塩が、下記式(I)で表される請求項1または2に記載の光半導体封止体。
【化2】

(式中、Rは炭化水素基を表す。)
【請求項4】
前記アルコキシ基含有ポリシロキサンの量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、3〜50質量部であり、
前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物の量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部未満である請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項5】
前記ジルコニウム金属塩が、ナフテン酸ジルコニルである請求項1〜4のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項6】
前記ガリウム金属化合物が、ガリウムアセチルアセトナートである請求項1〜5のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項7】
前記光拡散性シリコーン樹脂組成物を用いて得られる硬化物の光拡散透過率が30%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項8】
前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が実質的に水を含まない請求項1〜7のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項9】
前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が実質的に溶媒を含まない請求項1〜8のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項10】
前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が前記ポリオルガノシロキサンと前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物とを含む第1液と、前記アルコキシ基含有ポリシロキサンを含む第2液とを有する請求項1〜9のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項11】
前記光拡散性シリコーン樹脂組成物が前記ポリオルガノシロキサンと、前記アルコキシ基含有ポリシロキサンと、前記ジルコニウム金属塩および/または前記ガリウム金属化合物とからなる請求項1〜9のいずれかに記載の光半導体封止体。
【請求項12】
前記加熱が、実質的に無水の条件下でなされる請求項1〜11のいずれかに記載の光半導体封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153910(P2010−153910A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64085(P2010−64085)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【分割の表示】特願2008−258909(P2008−258909)の分割
【原出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】